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◎トランプのごり押しに手をこまねく必要はない

◎トランプのごり押しに手をこまねく必要はない
 日本はグローバリズムの流れを推し進めよ
   EPA、TPP11の発効を急げ
 「どうしてくれる」と片肌脱いで開き直っているトランプの姿はまるで超大国ヤクザである。首相・安倍晋三との会談で「2国間交渉」をもぎ取って、直面する中間選挙ばかりか2020年の大統領選まで有利に運ぼうとしているかに見える。トランプのグローバリズムへの拒絶反応は、選挙ばかりに目を奪われる独善的な米大統領の姿を鮮明にさせ、歴代大統領が大切にしてきた世界のリーダーとしての信望をかなぐり捨てた姿を浮かび上がらせた。日本はEPA、TPP11の発効を急ぐ必要がある
 米紙ワシントン・ポストは「トランプは世界の笑いものになった」との識者のコラムを掲載した。トランプが25日の国連演説の冒頭で「2年足らずの間に、我が政権は米国史上かつてないほど多くのことを成し遂げてきた」と自賛すると、会場の各国首脳らからは失笑が漏れた。まるで成金が金歯を自慢するような演説だからだ。さすがのトランプもしまったと思ったのか「こんな反応は想像していなかったが、まあいいだろう」と胸を張り、会場のさらなる冷笑を生んだ。
  国連憲章の基本を流れる精神はグローバリズムだが、トランプは臆面もなく「我々はグローバリズムのイデオロギーを拒絶し、愛国主義を尊重する。モンロー主義が我が国の公式な政策だ」と言ってのけた。歴代大統領の外交方針はおおむね独善的なモンロー主義の否定から始まったものだ。米国の外交主流派はこの方針採用をトランプに進言したが、トランプは臆面もなく無視したといわれる。演説の最中大統領補佐官ジョン・ケリーが「オー、ノー!」とばかりに片手で顔を覆ってうつむいていた。その写真が評判になり、ソーシャルメディアでは「全てを物語っている」など絶妙なコメントが相次いだ。
 各国首脳が黙っているわけがなく、仏大統領マクロンは「身勝手な主権を振り回し、他国を攻撃する国家主義を我々は目撃している」と手厳しく批判。国連事務総長グテーレスは演説で、トランプを名指しこそしなかったものの、「世界が20世紀史の、特に1930年代の教訓を無視して再び大衆主義と孤立主義の道を突き進み、またしても世界的な紛争に転落していく危険がある」と警告した。2016年の大統領選挙でトランプと争ったクリントンも、「トランプ大統領の発言は危険だ」と警告した。まさに藪を突いて蛇を出し、四面楚歌に導いたのがトランプ演説であった。
  多国間貿易交渉の枠組みを重視してきた日本に対しても、トランプは2国間交渉で譲歩を迫った。結局安倍との首脳会談ではとりあえず2国間の交渉に入ることで合意した。日本はこれまで環太平洋経済連携協定(TPP)への米国の復帰を求めてきた。2国間交渉だと米国に有利となるとの判断が背景にあったためだ。しかしトランプは日本の対米貿易黒字の6─7割を占める自動車・同部品に目を付けており、日本側に高関税や輸出数量規制を突きつけたようだ。このため日本側は交渉に入らざるを得ないと判断に至った。当然ながら首脳会談では交渉中は、輸入車への高関税を日本に対してはかけないことで合意した。
 ただ、米国が折に触れて自動車への関税をほのめかし、対日交渉を有利に運ぼうとすることは確実であろう。このためこの際日本は対米追随だけでなく、トランプの「米国第一主義」に対抗するグローバリズムの旗を欧州やアジア諸国と共に掲げる必要に迫られている。既に進展している豪州などとのTPP11の発効を来年早期に達成する必要があるのではないか。世界GDPの13%、域内人口5億人をカバーし、日本にとっては輸出や海外展開の環境が整い、消費者にとっても食品値下げなどの恩恵がある。また欧州との経済連携協定(EPA)の発効も急ぐべきだ。自由貿易を尊重する国々の協力は、米国内の孤立化反対論やマスコミを勢いづけ、変化へと導く有効な手段となるに違いない。 
◎俳談
【人情の機微を詠む】
 人情を俳句に詠めば 
いたわりの初電話ある夜勤かな 日経俳壇入選
昔は、正月勤務の記者に「ご苦労さん」と電話したものだ。ニュースは休んでくれない。報道機関の編集局は正月からデスクの番をする記者が必ず居る。いたわりの電話は上に立つ者の義務だ。
春灯下妻の臍繰り借りにけり 毎日俳壇入選
毎度のことだが、小遣いがなくなると、妻に借りる。
 究極の人情俳句は男女関係だ。昔女性を泣かせたことがあるが、泣くなと言えばもっと泣くのが女だ。
春宵の泣くなと言へばなほ泣いて 産経俳壇1席
  連れ合いをなくした友人が居た。
つらいねとかける電話や鰯雲 日経俳壇入選
一茶の人情句
わんぱくや縛られながらよぶ螢
昔は腕白をすると父親に縛られて押入に入れられたものだ。それでも腕白小僧は「螢来い」などと声を張り上げる。一茶の句には人情味に加えてペーソスがある。

国民投票をクリアする唯一の9条改正『 浅野試案 』

国民投票をクリアする唯一の9条改正『 浅野試案 』
安保政策研究会理事長 浅野勝人

戦い終えて日は暮れて、憲法改正をめぐる齟齬(そご)だけが残りました。
なんとも収穫の乏しい戦でした。
安倍3選首相としては、9条を改正する発議をしないわけにはまいらないでしょう。国会は数の力でパスしても、国民投票で敗れたら退陣するのが憲政の常道です。

現行9条、1項、2項を手づかずにして、新たに3項を設けて自衛隊を加憲する「安倍案」は、無難だが安逸に過ぎます。

☆自衛隊が違憲だと思っている人は、1割もいません。従って、自衛隊の存在を憲法に明記することに反対する世論は10%以下と推定されます。公明党の加憲方式を尊重して3項を追加する手法は、確かに妙案のひとつです。1項、2項を残して平和主義を貫き、その上で自衛隊の存在を明記するのですから、国民投票で圧倒的に支持されるはずです。ところが、なんとも予測困難で、際どい結果になりそうだというのが私の見立てです。

☆2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあります。
これをそのままにして、3項で「自衛隊を明記」したら、自衛隊は戦力ではないという自己撞着を憲法で表明することになります。自衛隊は、核武装、他国を攻撃する足の長い兵器を所有していないだけで、アメリカ、ロシア、中国に伍して世界有数の戦力を保有している軍隊です。どのような詭弁を弄しても「陸海空軍は保持しない」と矛盾します。後項優位の原則を振りかざしても、整合性の説明はつきません。あなた、孫に何と言って取り繕いますか。お爺ちゃんの信用を失うだけです。

こんな幼稚な事柄を先刻承知の上で「3項、自衛隊、加憲」を提議したと国民は容易に判断します。悪くすると愚弄していると受け取られかねません。小学生でもわかる矛盾に目を瞑(つむ)って自衛隊の必要性を優先してくれるかどうか。これが過半数の支持に疑問を抱く私の素朴な疑念です。


『 浅野試案 』は、改正を機に、理屈をこねないで、あっさりと簡単明瞭に、この根幹的矛盾の解消を試みています。
第2章 戦争の放棄
1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、国の交戦権はこれを認めない。
但し、わが国の存立を危うくする明白な事態に対処するため、必要最小限度の戦力は保持する。

☆1項は現状のまま残して、平和主義の根幹を堅持する。
1項の担保として、ことさら2項の「国の交戦権は認めない」を残す。その上で、「国を防衛するための戦力は保持する」と述べて、自衛隊の存在、維持、継続を明記する。
☆「戦力不所持」を削除して、実存する自衛隊との整合性をはかる。
☆必要最小限度の戦力とは、存亡危急に面したわが国の領域を守るに足る戦力を指し、他国を攻撃する目的の戦力は含まない。
これは集団的自衛権を一部認めた安保法制と矛盾しない。

素直に、国情および現下の国際情勢に合致する、わかり易い表現と組み立てが望ましいと考えた試案です。

― 幼児のいがみ合い
「なにが善戦だ」「党員の45%が私に投票したことをどう考えるかだ」 これは麻生太郎財務相と石破茂候補のいがみ合いです。
勝負が決まっている八百長相撲を見る気がしないのと同じで、まるで興味の湧かない総裁選挙でした。相も変らぬ派閥の合従連合による談合試合だからです。
6つある派閥のうち、頭数の多い順に1位から5位まで組めば勝つに決まっています。自民党国会議員(有権者)402人のうち安倍晋三を支持する出陣式に出席した332人にカツカレーをふるまったところ、得票数は329票だったから、3人食い逃げしたヤツがいる勘定になります。3人漏れたとみるか、3人しか漏れなかったとみるか、派閥の締め付けは中選挙区時代より、むしろ厳しくなっているように私には映ります。そうだとしたら小選挙区制のせいでしょう。あとは地方票がどんな配分に割れるか、わずかに興味を残すだけでした。

こんな政治環境の中ですから、総数807票のうち250票取ったら石破の目標達成。200票に届かなかったら石破の政治生命は危ういと見ていました。下限の200票は、国会議員の票は50そこそこ、安倍批判の多い地方票が150前後と踏んだ最低ラインです。
結果は、国会議員票73(18%)、地方票181(45%)= 254票(31%)


石破は「ひとり旅の合格点に達した。よくやった」と慰労できますが、個人的評価はポスト安倍に待つしかありません。緊急な課題は地方票の結果を自民党がどのように受け止めるかが肝要です。
はっきり言えることは、自民党員でさえ真っ二つに割れている政治意識を引きずったまま、来年の参議院選挙を迎える現実を直視して、なににどう対応するが真剣に分析、対処する必要を感じます。
それでも、戦後政治史の中で野党不在の稀有な政治情勢が続く限り、安倍自民党は勝利します。しかし、32ある1人区で野党が1本にまとまって統一候補を立てたら、情況は一変します。野党勢力が「オリーブの木」に結集して勝利した例がイタリアにあります。
政府・自民党は今回の総裁選挙の教訓を生かす努力を 即刻 始めることが肝要です。いがみ合っている暇などありません。(元内閣官房副長官)

◎安倍はひしめく重要日程で成果を


 ◎安倍はひしめく重要日程で成果を
  任期内解散も視野に入れよ
    改憲は合区、非常事態を突破口に
  自民党総裁選は今は盛りの横綱に小結がかかったようなもので、勝負は初めからついていた。総裁・安倍晋三が石破茂の倍以上553票を獲得し、議員票では82%に達したたことは、今後の政権運営にとって紛れもない安定材料であり、内政・外交に亘る安倍路線に何ら支障は生じない。20日で2461日目を迎えた安倍は2021年9月までの3年の任期中に伊藤博文の2720日、佐藤栄作の2798日、桂太郎の2886日を越え史上最長の政権となる。安倍を支持した政調会長・岸田文男がポスト安倍の最有力候補となり、たてつく石破は今回の254票は限界だろう。岸田が出馬したら安倍支持票の大勢は岸田に向かうからだ。
 総裁選は党員・党友による地方票と合わせて開票された結果、安倍が69%にあたる553票、石破は254票となった。安倍はほとんどの派閥の支持を集め、国会議員票(402票)では8割を超える329票に達した。その一方、地方票(405票)では224票と伸び悩みを見せた。事務総長甘利明が55%と予想していたが、55.3%で辛うじてクリアした。
  安倍の勝因は何と言っても国会議員の大半の支持を得る流れを5年半の政権運営で定着させ、それによって党員票も掘り起こした結果であろう。地方票は従来からポピュリズムに流れる傾向があり、石破の「善戦」は、政治判断力が未熟な地方党員には石破の存在が大きく映った結果であろう。
 常に反安倍傾向の強いテレビ朝日、TBSなど民放番組は、悔し紛れの論評が多かった。コメンテーターが「終わりの決まったリーダーは求心力が弱くなる」としたり顔で述べていたが、相変わらずの素人の淺読みだ。民間会社でも3年もの任期がある社長が軽んじられることはない。経営権と人事権を握っているから社員は従来同様に従うのだ。安倍も毎年改造して引き締め、3年の任期中での解散を断行すべきだろう。勝てば中曽根が党規約改正によって総裁任期を1年延長した例もあり、延長してもおかしいことではあるまい。
   しかし、今後の政治日程を見れば、政局にうつつを抜かしているときは終わった。重要政治日程がひしめいている。まず来週には日米首脳会談があるし内閣改造も想定内だ。安倍は25日には国連総会出席を契機にトランプとの首脳会談を行う方向で日程を調整している。欧州、中国に黒字削減で厳しい要求を繰り返しきたトランプが、安倍と仲が良いからといって日本だけ例外にする可能性は少ない。経済再生担当相茂木敏充が、米通商代表部(USTR)代表ライトハイザーとの21日の閣僚協議でどこまで事前調整できるかがカギだ。安倍は国連総会から帰国後10月にも、内閣改造に着手し、安倍改造内閣を発足させる方向だ。副総理・麻生太郎、幹事長・二階俊博、官房長官・菅義偉は続投となりそうだ。石破派からも人材を閣僚などに起用して党内融和を取り戻すことが必要だろう。小泉進次郎は、安倍批判が目立ちすぎた。そろそろ入閣待機児童だが、閣内不一致を招く危険がある。
 30日には沖縄県知事選がある。安倍としては与党候補を勝利に導き、普天間基地の辺野古への移転を推進したい考えだろう。訪中も重要テーマだ。安倍は12日、訪問先のウラジオストクで、中国国家主席の習近平と会談、10月の訪中に向けて調整することで一致した。10月23日が平和友好条約発効40年となるため、これに合わせて訪中することになろう。安倍は来年6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた習の来日を想定しているようだ。
 改憲問題も安倍政権の重要テーマだ。10月26日にも招集する臨時国会で論戦の火ぶたが切られる。安倍は「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と、秋の臨時国会への自民党改憲案提出を明言している。今後、改憲論議を加速させる構えだ。しかし、各種世論調査では国民の間に改憲志向が生じていない。共同の調査によると、秋の臨時国会に改憲案を提出したいとする安倍の提案に「反対」が49%で、「賛成」の36.7%を12.3ポイント上回った。日経の調査はもっと厳しく、「反対」が73%で「賛成」の17%を大きく上回っている。国民の間には改憲イコール9条という認識が強く、改憲内容をどうするかによって変わってくる。改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。改憲アレルギーを除去するためには9条を後回しにして、石破の主張するように、参院選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを手始めに考えるのも良いかも知れない。
 
◎俳談
【裏を詠む】
 「裏を読む」と言えば筆者の仕事の政局原稿のようだが、「詠む」と書けば俳句のこととなる。物事の裏には真実が隠されているが、俳句でも表の現象だけにとらわれずに裏を詠むのも一手だ。永井荷風の作といわれる「四畳半襖の下張」という春本は、かつて裁判にもなり有名だが、昔は衾や屏風の下張りに良質の和紙の古文書を張ったものだ。荷風は浅草の歓楽街や玉の井の私娼街を好み、そんな成果が実ったのか、1937年『濹東綺譚』を朝日新聞に連載、好評を得た。人情の裏に目が届く文豪だ。俳句もうまく
葉桜や人に知られぬ昼遊び   
など玉の井を詠んだとみられる句も多い。さて本題の「裏を詠む」だが荷風は
羽子板や裏絵さびしき夜の梅
と詠んだ。羽子板の表の豪華絢爛に比べて裏絵は寂しいと言っているのだが、これは人生にも通ずる。玉の井の女性を詠んだと思えば哀しさも一段と増す。夜の梅が趣を深くする。 
 昔浅草の演芸場の楽屋を見せてもらったことがあった。
楽屋裏女形(おやま)寂しき咳漏らす 産経俳壇入選
寒夕焼はなにか哀しさが伴うが、後ろを見ればもっと哀しい。
ふりむけば東は哀し寒夕焼 産経俳壇入選
 落語に「裏は花色木綿」があるが、江戸っ子は裏地を大事にした。
江戸っ子の裏地に凝れり秋袷(あわせ)  杉の子
袷は夏の季語だが、秋袷は裏地をつけて仕立てる。俳句も裏地が大事なテーマになり得る。

◎安倍3選につけいる隙がないー自民総裁選

◎安倍3選につけいる隙がないー自民総裁選
   200票超えないと石破は沈没
 荒ぶるトランプをどうなだめるかが最初の課題
 政局が自民党総裁選を軸に動き始めた。総裁・安倍晋三が20日に再選される方向は間違いないが、水銀柱の下降と反比例するかのようにボルテージが上がりはじめた。対立候補石破茂派の農水相斎藤健が「安倍陣営から石場さんを応援するなら辞表を書いてやれと言われた」と「圧力」を暴露。安倍は石破とのテレビ党論で「あるはずはない。そういう人がいるのであれば名前を言ってもらいたい」全面否定したが、石破は「被害者に名乗り出よというのは財務相のセクハラ疑惑に似ている」とかみついた。自民党幹部らが「まあまあ」とおさめたが、近頃にない“茶番”が見られて、茶の間は喜んだ。
 それでは総裁選の展開を予想すると、石破にとっては200票を上回るかどうかが今後の展望が開けるかの分岐点となる。総裁選は議員票405票と地方票405票の合計810票の奪い合いとなる。安倍の圧勝は決まっているが、得票によって政治的効果に大きな違いが生ずる。安倍は議員票では80%350票を突破する勢いであり、石破は自派と竹下派を加えて50票前後がよいところだろう。地方票で安倍は、70%突破を目指すことになる。少なくとも国会議員票と地方票の合計は70%に達したい考えだ。安倍が70%をとれなければ石破に200票獲得を許すことになる。安倍が55%を下回った場合は石破が250票を上回り今後に存在感を示すと言って良い。従って焦点はまず石破の200票超えが実現するかどうかだ。しかし、石破人気が沸くにはほど遠く、超えなければ石破は政治的に大打撃を受ける。
 地方票の動向も最大の見所だ。6年前の総裁選で石破は55%を獲得している。安倍選対事務総長の甘利明が「55%を超えたい」という理由はここにある。しかしこのパーセントは安倍がまだ首相になっていない時点であり、首相・総裁としての存在感を示している現在ではラインを低く設定しすぎだろう。議員票で80%取っておきながら、地方票で55%そこそこでは、永田町と一般党員との乖離(かいり)が目立つことになる。
 投票結果がどうあれ総裁選後の内閣改造はあるのかが焦点となる。 安倍は16日のNHK番組で「来年は皇位の継承もあり、G20(主要20カ国・地域首脳会議)と、その先に東京五輪・パラリンピックがある。しっかりした人材を登用したい」と述べ、3選を果たした場合、内閣改造・党役員人事を行う方針を表明した。人事をほのめかされては入閣候補らの動きは当然安倍に向かう。巧妙なる“一本釣り”だ。
 首相の信任にとって最も重要なポイントは景気の動向だが、安倍の就任以来戦後まれにみる好景気が継続しており、石破はつけいる隙がない。昨年末には、安倍が首相に就任した2012年12月に始まった景気回復局面が高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さとなったことが確定した。今の景気回復が2019年1月まで続けば、02年2月から73カ月間続いた戦後最長の景気回復を抜く。戦後最長の景気を維持しようとする首相を降ろそうとすれば、降ろす方が“悪人”となる。石破の人相はどうみても良いとは言えず損している。
 一方安倍の地球儀俯瞰外交は、歴代首相の中でももっとも活発であり、これもつけいる隙がない。同外交は安全保障と経済の両面から戦略的見地に立って推進している。その「積極的平和主義」路線は「一国平和主義」から脱して、世界平和を俯瞰して、必要ならば自衛隊の活用を含め貢献する形だ。しかし難題は日米関係だ。トランプは、中国からの輸入品すべてに制裁関税を課す可能性に再び言及した。3弾の関税発動を24日にも最終判断するが、早くも「第4弾」をちらつかせている。トランプの対中関税攻撃はとどまるところを見せない。中国も対抗措置を取っており、貿易戦争がさらに激しくなる危険をはらむ。日本も対岸の火災視できない。中国で製品を作って対米輸出している日本企業も多いし、トランプは例外を認めない姿勢だ。この“荒ぶる”トランプをどうなだめるかは、安倍とトランプの個人的な関係が重要となるだろう。日米両国は首脳会談を9月25日に米国で行う方向で調整に入った。米ニューヨークでの国連総会に首相が出席するのに合わせて開くが、これまでにない難問を抱え、世界が注視する会談となりそうだ。
 ◎俳談
【人間観察句】
俳句にするには人間ほど面白い対象はない。人のしぐさや、習癖などを観察すれば一句をものにできる。
指確(しか)と曲げてシンクロスイミング 東京俳壇二席
シンクロナイズドスイミングで女子選手が水中から突き出すつま先を観察した。指が合わさって、しっかりと内向きに曲がっている。
小児科の老医叱りてあたたかし 俳句四季入選
町に昔老いた小児科医が居た。母親たちが熱の子を抱いて駈け込むと深夜でも診療してくれた。母親を慈父のような優しさで叱った。
死んだときには長い行列ができた。
雪飛礫(つぶて)うけしは好かれゐる証拠 月刊俳句四季入選
学校の庭で雪合戦をすると、みよちゃんから雪飛礫がとんでくる。きっとみよちゃんはボクが好きなんだとほくそ笑む。
鷹匠の鷹の眼をして老ひにけり 日経俳壇一席
鷹匠が鷹を操るところを公園で実演したが、その鷹匠の目は鷹の眼のように鋭く遠くを見ていた。

◎党員・党友票でも安倍が優勢

◎党員・党友票でも安倍が優勢
  石破「正直・公正」撤回でつまずく
 次期首相を狙う以上、安倍政治の欠陥をつき、自らの主張を鮮明にすべきだと思うが、石破の10日の発言からはそれがうかがえなかった。むしろ主張があいまいで「挑戦の限界」すら感ずる立ち会い演説会であった。肝心の改憲論にしても自衛隊条項新設の姿勢を鮮明にさせた首相・安倍晋三に対して、石破茂は参院選の合区解消など緊急性の薄い問題を取り上げ9条問題の本質に迫ることを避けた。相次ぐ災害など緊急事態を前にして、挑戦者が首相交代という“政争” ばかりにうつつを抜かせない現状を鮮明にさせた演説会であった。
 首相の座に挑戦する政治姿勢について石破は「なにものも恐れずただ国民のみを恐れて戦っていく」と意気込みを述べたが、当初の「正直・公正」をキャッチコピーとして打ち出すことには陣営内で個人攻撃に対する異論が生じ、結局採用を避けた。安倍のどこが不正直でどこが不公平なのかは指摘しにくく、もともとこのコピーには無理があり、最初からつまずいた形だ。
 安倍の「現職がいるのに総裁選に出るというのは現職にやめろと言うのと同じだ」という主張に対しても、石破からは明確な理由の説明がなかった。石破の「政治の信頼を取り戻す」と言う発言からは、意気込みばかりが先行して、具体策に欠ける姿勢が鮮明になるだけだった。石破は記者会見で「安定した政権運営は特筆すべきだ」と安倍政権をたたえたが、賞賛しながら立候補という矛盾は総裁選の歴史から見ても珍しい。
 焦点の憲法改正について、安倍は「あと3年間でチャレンジしたい」と、任期中の9条改正に意欲を表明。これに対し、石破は「丁寧に説明していかないといけない」と拙速な動きをけん制、首相との対立軸を明確にした。改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。石破は従来「9条改正が緊急性があるとは考えていない。9条改正は国民の理解を得て行うべきであり、スケジュールありきで行うべきではない」との立場である。しかし、安倍は「いよいよ憲法改正に取り組むときがきた。自衛隊が憲法違反ではないと言いきることができる憲法学者はわずか2割に過ぎない。自衛隊員が誇りを持って任務をまっとうできる環境を作るのは政治家の使命だ」と9条の改正に踏み込んでおり、石破の姿勢とは異なる。憲法改正をめぐって、安倍が意欲を示す「自衛隊の明記」について、石破は、かねてから「緊急性があるとは思わない」と指摘している。
 石破は「憲法改正は必要なもの急ぐものから取り組むべきだ」として参院選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを「喫緊の課題」とした。石破は従来から9条改正について「国民の理解を得て世に問うべきだ。理解なき改正をスケジュールありきで行うべきではない」と、その緊急性を否定している。しかし、9条改正は自民党の結党以来の党是であり、改憲する以上は9条に取り組むべきであろう。
石破が主張している「防災省」の設置についても、安倍は「防災省を作っても、自衛隊や海上保安庁、厚生労働省を動かすには総理大臣が指示しなければならない。そこをどう考えるかだ」と指摘するとともに、「スピーディに政府を糾合できるのは首相だけだ」と屋上屋を重ねることに否定的な考えを示した。
 総裁選の進展状況は、まず国会議員票で安倍が石破を圧倒的にリードしている。選挙は議員票405票と地方票405票で争われる。安倍陣営には党内7派閥中、安倍の出身である細田派など5派と竹下派の一部が参加。国会議員405人の85%は安倍支持に回るとみられている。
  一方、石破に接近しているのは参院竹下派。尾辻秀久元参院副議長が選対本部長として旗振り役を演ずる。尾辻は「武士道を真ん中に据え、正々堂々、真正面から戦おう」と宣言しているが、広がりが見られないようだ。一方石破が唯一活路を見出そうとしている地方党員・党友票についても首相が先行しているとみられている。6年前は石破を大きく下回ったが、今回は完勝を目指して安倍は47都道府県のうち7割超の地方議員と面会するなど先行している。安倍選対の事務総長を務める元経済再生担当相甘利明は10日、党員・党友票について「6年前に石破茂元幹事長が取った得票率は超えたい」と述べ、55%以上の得票率を目指す考えを示している。安倍の圧勝は動かない情勢だ。
◎俳談
【セルフィー俳句】
 米国では自分の写真を撮ることを称してセルフィーと言う。最近使われ出した言葉だ。画家もよく自画像を描くがゴッホは、まるで私小説を書くように何枚も描いている。耳を切った後の顔は天才の狂気が凝縮されてすさまじい。自分をモデルにするのは手っ取り早いし、モデルを雇うカネのない貧乏画家にとっては格好のモデルだ。写真も同様で、近ごろは自分の表情を見ながら撮れるから便利だ。一方で俳句も材料に困ったら自分を観察して作ってみるのもよい。細見綾子は
きさらぎが眉のあたりに来る如し 
と詠んだ。鏡の前で化粧をしながら、きさらぎを感じたのであろう。それも「眉のあたり」とは言い得て妙。岡本差知子は
頓服の首反らすとき紫木蓮
と詠んだが、これは鏡を見ていない。庭の紫木蓮に目が行ったのだ。病気の治癒(ちゆ)を暗喩(あんゆ)で示している。対象は何も鏡の自分だけではない。差知子は
子に呼ばれゐつつ夕べの葱を切る
と詠んだ。夕飯の支度で猫の手も借りたいが、また子が「お母さん」と呼んでいる。背景には幸福な自分の姿が映る。
芭蕉には 
酔うて寝ん撫子(なでしこ)咲ける石の上
がある。時には李白、杜甫のごとく深酒をして撫子が涼しげに咲く庭で寝転ぼうというのだ。
夜長に退屈で鏡を見た。
ぬぬぬぬと写楽顔する夜長かな
自分で言うのも何だが結構いい男だ。
毎日が自由の刑や懐手 日経入選
自由もありすぎると刑罰を食らったような感じになる。

◎トランプ暴露本の波紋広がる

◎トランプ暴露本の波紋広がる
  マティス国防長官「トランプは、小学5,6年生」
  ワシントンポストの著名記者ボブ・ウッドワードが、短気で予測不可能なトランプを制御しようと苦闘する米政府高官の実態を暴露した。11日に出版される「Fear(恐怖)」は、米政府高官らの生々しいトランプ批判を報じている。ウオーターゲート事件以来の内部告発である。内容はトランプの愚かさを告発しているが、一種の“舌禍事件”であり、政権にとってはイメージダウンになっても致命傷にはなるまい。
 ウッドワードは74歳になるが、ウオーターゲート事件でカール・バーンスタイン記者と共に内部告発者“デイープスロート”から数々のスクープを掲載、ニクソンを退陣に追い込んだ。筆者はワシントンポスト紙が販売になる午前零時過ぎにワシントンの街角で購入、両記者の署名入りの特ダネ記事を度々転電したものだ。
  「Fear(恐怖)」の抜粋を報じたウオールストリートジャーナル紙などによると、トランプ側近らが、いかにトランプを軽蔑しているかが分かる。抜粋はまずトランプが、今年1月の国家安全保障会議(NSC)で、在韓米軍の常駐に関し「あの地域にどうして軍事資源を投入する必要があるのだ」と疑問を提起。これに対してマティス国防長官は「我々は第3次世界大戦を防ぐためにやっている」と米軍のプレゼンスの重要性を説いたが、トランプの退席後、側近に「行動も理解力も、まるで小学5年生か6年生だ」と漏らしたという。この席でトランプはあきれたことに「我々は愚かなことをしなければ、もっと金持ちになれる」など発言して、不満気であったという。「金持ち」になることが政権運営の尺度であるとは恐れ入った。
 トランプはダンフォード統合作戦本部長に対して北朝鮮への先制攻撃計画を策定するよう指示するという、驚くべき行動もとった。 政権発足当時から問題になったロシア疑惑に関しても、マーラー特別検察官の事情聴取を想定して弁護士と打ち合わせたが、事実認識が全くなく、作り上げでお茶を濁そうとして、弁護士をあきれさせた。
 こうしたトランプについて、「Fear(恐怖)」は、トランプの側近や閣僚からも不満の声が漏れ聞こえるようになっているという。大統領首席補佐官のジョン・ケリーまでがトランプを「ばか」「錯乱している」「かれに何かを理解させるのは無理」と述べたという。これについてケリーは声明で、自身がトランプ氏をばか呼ばわりしていたというのは事実ではないと打ち消した。「トランプ氏との関係は強固で率直に何でも言い合える」とも述べ、不和説の打ち消しに懸命になっている。トランプも4日のツイッターで「Fear(恐怖)の証言は嘘ばかりで国民をだますものだ」と憤りをあらわにした。
 この舌禍事件はトランプ政権の裏側を余すことなく伝えていて興味深いが、その本質はニクソン政権が倒れたウオーターゲート事件とは天地の違いがある。ウオーターゲート事件は1972年6月17日にワシントンD.C.の民主党本部で起きた盗聴侵入事件に始まったアメリカの一大政治スキャンダルである。盗聴、侵入、司法妨害、証拠隠滅、特別検察官解任、大統領弾劾発議、大統領辞任と続いたが、盗聴、侵入は犯罪であり、今回の側近の不平不満とは性格を異にする。久しぶりに名前が登場したウッドワードも、老記者の健在ぶりを示したが、本人が「この本で政権は終わる」と予言するほど簡単には政権は倒れまい。ただ2か月後に控えた議会の中間選挙には民主党が下院で過半数を取る可能性が出てきており、そうなればトランプの政権運営は苦しくなる。
◎俳談
【オノマトペ】  
ざつざつとバターを塗りて立夏かな 産経俳壇一席
擬音語、擬態語のことをオノマトペという。作句に行き詰まったときはそのオノマトペ辞典を繰るとヒントが出てくる。オノマトペ俳句の名手は秋元不死男だろう。
鳥わたるこきこきこきと罐切れば
へろへろとワンタンすするクリスマス
寒卵コツと割る聖女学院
にんまりと蜂は死ぬべし雪催
石田波郷も
百日紅ごくごく水を呑むばかり
飯田蛇笏
をりとりてはらりとおもきすすきかな
それぞれに達人は趣の深い俳句を作っている。オノマトペ俳句はまず言葉ありきで作句するとよい。小学館の「日本語オノマトペ辞典」などをぱらりぱらりとめくっていると、俳句のできそうなオノマトペが出てくる。ある日パンパカパーンに巡り会った。辞典には「ファンファーレの音、晴れがましいさま」などと書いてある。では一句というわけで
遠足やパンパかパーンと弁当開け 読売俳壇一席
最近では「ゆるゆる」を発見。
さて猫とゆるゆるしよう夏衣
をものにした。
昔、背広を注文したとき生地を切る音がさくさくと聞こえた。
さくさくと羅紗切る音や春隣 毎日俳壇三席
房総に卯波を見物に行った。
老夫婦よつちらよつちら卯波見る
といった具合だ。オノマトペ俳句はなぜか楽しい。