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◎俳談

◎俳談
【着眼点】
指先に宿る矜持や風の盆   毎日俳談入選
おわら風の盆は、富山市八尾町で毎年9月1日から3日にかけて行なわれている祭りである。越中おわら節の哀切感に満ちた旋律にのって、坂が多い町の道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露する。哀調のある音色を奏でる胡弓の調べが来訪者を魅了する。女性は鳥追笠を深く被って踊るから、顔はほとんど見えない。従って勢い手の動作に視線がいくが、指を反らして凛とした矜持を感じさせる。その優雅さにおいては日本一であろう。鳥追い笠は昔、農村行事で、田畑に害を与える鳥獣を追い払うため、若者達が歌を歌い、鳥獣を脅すように農機具などを打ち鳴らして家々を廻り歩いた。その時にに被ったので鳥追い笠と呼ばれる。掲句は視線を迷わずに指先に当てたことが良かった。

 

◎北情勢緊迫で首脳会談は歴史的重要性

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◎北情勢緊迫で首脳会談は歴史的重要性
  日米、北への“瀬戸際戦略”を確認へ
 融和の文在寅にクギを刺す
 5日からの首相・安倍晋三と米大統領トランプの会談は、アジア太平洋地域の安全保障にとって歴史的な重要性を帯びるだろう。掛け声倒れに終わったオバマ政権によるアジア重視のリバランス(再均衡)戦略に代わって、トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」がクローズアップする。東・南シナ海で海洋進出が著しい中国と暴発を続ける北朝鮮への安全保障上の封じ込め戦略が俎上(そじょう)にのぼる公算が高い。とりわけ北朝鮮情勢に関してはギリギリまで軍事圧力を強め、徹底した経済制裁で金正恩を追い詰め、半島の非核化につなげる方針を確認する方向だろう。事態は筆者が既に指摘したように「極東冷戦」の構図で推移する流れだろう。
 「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは日米同盟、米豪同盟などを基軸に、インドなどを加えて安全保障上の協力を拡大する極めて大きな戦略的な構想だ。その主眼は民主主義という共通の価値観を有する国家群の「結束による対中圧力」に置かれるだろう。折から中国は共産党大会で習近平の独裁色の強い体制を樹立し、習は南沙諸島の軍事基地化を誇示して、評価された。今度は尖閣諸島へと触手を伸ばすであろうことは目に見えている。既にオバマは尖閣への中国進出阻止抑止についてコミットしているが、トランプも同様にコミットするだろう。
 こうした中で米国の有名な戦略家エドワード・ルトワックの北朝鮮政策での日本への提言が関心を呼んでいるが、総じて極東の安全保障に対する無知をさらけ出しており、一顧だに値しない。ルトワックの構想は①日本政府が何もしなければアメリカは何もしない、アメリカは日本の反応を見て決めるので日本が動けばアメリカも動く②日本は行動すべきであり対話をやめて行動に向け準備を始めなければならない③日本に残された時間はあまりなく、北はまだ日本を攻撃できる核弾頭ミサイルを持っていないと思が、しかし1年か1年半後に持つーというものだ。基本はあいまいな用語を使いつつ日本の軍事行動を促しているとしか考えられないが、その根底には米軍の対北軍事行動によって日本の人命被害が多数にのぼることへの決意を促す“扇動”があるような気がする。アメリカが単独で軍事行動を起こせば、東京にミサイルが飛ぶ可能性があり、そのための日本の「覚悟」を促しているのだ。おまけに事実誤認がある。北のノドン200発は日本に向けられたものであり、ノドンには核だけでなく、細菌兵器や毒ガスも積載されうることを知らない。総じて論旨が荒っぽく、極東安保を理解していないように見える。日本にミサイルが飛ぶ事態への覚悟などは論外だ。
 そこで首相・安倍晋三とトランプとの会談だが、トランプはあくまで北の核保有を容認せず、非核化を目指すための軍事的な備えは万全を期す方針を表明するだろう。もちろん北が核兵器を使用すれば軍事的な対応を直ちに取れる体制を維持することを約束する。いわば対ソ冷戦時代に米国が取った「瀬戸際戦略」である。米軍が北の中枢はもちろん、核ミサイル基地、ソウルを狙う通常兵器などを壊滅させる作戦を練り上げていることは確かだ。しかし、対ソ冷戦ではベトナム戦争など代理戦争やキューバ危機はあったが、一発の弾もソ連に向けて発射されていない。偶発事態がなければ、この路線を踏襲するものとみられる。安倍はトランプに軍事行動はよほどの事態でなければ成り立たないことを、公表せずに表明すべきであろう。
 また対北締め付けには日米韓3国の結束が不可欠だが、北との融和路線を時々のぞかせる韓国左傾化大統領文在寅を如何に日米側に引きつけるかが焦点だ。トランプは文との会談でクギを刺すことになろう。
米国防長官ジェームズ・マティスは「米国は北の核保有を認めない。我々は外交による解決を目指すが外交は軍事力に支えられてこそ効果的だ」と述べているが、もっともだ。軍事力行使の“寸止め”戦略が続くことになる。
 一方南シナ海への戦略も立て直しの必要がある。オバマはリバランスは口だけで、結局何も出来ずにパラセル諸島やスプラトリー諸島への中国進出を許してしまった。フィリピン沖のスカボロー礁も危うい状況であり、中国が目指すのは3カ所を結ぶ軍事基地化で南シナ海の支配を確立することだ。習近平は党大会で自慢げに南シナ海への進出を報告している。安倍は30日のフィリピン大統領ドゥテルテとの会談で、対北問題で連携の方針を確認した。今後米国は南シナ海への軍事的プレゼンスを高めることになろう。自衛隊も艦船の頻繁なる派遣で協力せざるを得ないだろう。

◎俳談 

◎俳談
【芭蕉のDNAを継ぐ】
室蘭発直江津航路大銀河 産経俳壇2席
 <荒海や佐渡に横たふ天の川>は人口に膾炙(かいしゃ)した芭蕉の句だ。芭蕉が荒海という日本海を天の川に結びつけた結果、銀河と言えば日本海ということになった。この芭蕉のDNAは現代の俳人に心にもしっかりと植え付けられている。従って日本海と銀河と聞けばプロの俳人は「ぼー」となってしまうのだ。そこを狙って投句すると良く当たる。掲句は日本海航路のフェリーで作った。確かに満天の星空であった。全部漢字にしたのは漢詩の効果を狙った。しかし下手にやると名詞ばかりの3段切れとなってリズムを壊す。掲句の場合「発」の一字で中7以下がスムーズに働いた。懲りずにやったのが
弔問の羽越本線大銀河  月刊俳句入選
新潟と銀河は入選を稼げる。

◎自作自演の「習思想」で権力誇示ー共産党大会

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◎自作自演の「習思想」で権力誇示ー共産党大会
  鄧小平を超え毛沢東と並ぶ姿を演出
 最高指導部に後継者なし
 2期でさらに5年どころではない。習近平は自らの任期を永遠なものとして確立しようとしている。その最大の武器は今回の第19回党大会で決めた「習思想」である。自らを、建国の父である毛沢東の「思想」と同列に高め、改革開放を推進したトウ小平の「理論」を超えた理念を、共産党の憲法である党規約に盛り込むことに成功した。「思想」は「理論」を遙かに上回るのだ。大会は国家主席の指導理念を「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」と、習の名前を冠した形で、党規約の中に盛り込んだのだ。規約に個人名が書かれたのは史上3人目である。中国共産党指導者にとって自らの名前を党規約に盛り込むことは極めて重要な権力誇示となる。しかも、これまでの指導者と比べると異例の早さである。習が掲げる今世紀半ばまでの「社会主義現代化強国」実現に向けた理論的な支えを構築した形だ。もうトウ小平時代は終わって、これからは習時代だということを強く印象ずけるものだ。後継者と目させる人物を最高指導部に入れないのも、超長期政権を目指す姿と映る。
 総じて党大会は中国歴代政権が自粛してきた個人礼賛の傾向を帯び、習は臆面もない自作自演の権力確立を成し遂げて見せた。共産党の事実上の独裁どころか、自らの独裁による政治体制を築き上げたのだ。その証拠が北京の街でも見られた。大会の期間中、北京市内の公園では習近平国家主席をたたえる歌を合唱するグループの姿が見られた。メンバーらが「習おじさん、習おじさん、みんなが愛している習おじさん」とか「習主席は、全国人民とともにある」などといった歌詞の歌を合唱したのだ。禁止されてきた個人崇拝を、紛れもなく“官製”で実践したのだ。市民運動を起こしてまでムードを演出したのだ。
 さらに南シナ海での南沙諸島への人口島建設による軍事拠点化や、習近平就任以来顕著になった東シナ海における領海侵犯などその対外姿勢は、歴代中国皇帝が絶頂期に成し遂げた覇権国家のように、社会主義国家と民主主義国家の対峙の構図を推進するかのようである。この紛れもない富国強兵路線は「中国の発展はいかなる国の脅威にもならない」という習自身の言葉と矛盾し、第二次大戦後欧米と日本が主導した民主主義の国際秩序に社会主義で対抗する姿を浮かび上がらせた。
 習近平がここまで自らの権力の確立に執着した背景には、「トラもハエも叩く」として推進した汚職摘発キャンペーンがある。このキャンペーンは汚職摘発の名を借りた権力基盤の確立が背景にあることは言うまでもない。次官級280人、局長級8600人、地方幹部6万6000人、全国で150万人の摘発・処分は、結果として権力基盤を絶大なものとした。この恨みから「腐敗撲滅の鬼」と呼ばれ、今回最高指導部から退任する王岐山は、これまで27回も暗殺されそうになったといわれる。習近平は、当初王岐山を留任させようと画策したが、長老の反発が予想外に強く、あきらめた形だ。党大会で唯一垣間見えた反習近平の動きと言える。習もあまりに多くの政敵を葬ってきたのであり、引退したら殺害される危険が常に存在する。やめるにやめられない立場となっているとも言えるのだ。
 国家主席の任期は中華人民共和国憲法79条で被選出年齢は45歳以上、任期は2期10年を限度とすると定められている。これ以上延ばすには3つの方法があるとされる。1つは今後2期以上を目指す習近平が多分来年3月の全国人民代表大会で憲法改正を実現しようとするという見方である。2つ目は、憲法解釈で延期する方法もある。憲法83条は「人民代表大会の任期は次の人物を決めるまでやり続ける」とあり、また60条は「非常事態の場合は任期の延長を認める」という規定もある。これらの条文を根拠にするのだ。さらに3つ目は84年にトウ小平が廃止した主席の神格化を復活させる方法である。
 こうして中国の政治は集団指導体制が原則にとどまり、習近平の独裁色が強まり、専制政治や社会に対する抑圧が強まることが懸念される。言論封殺も続くだろう。その最初のケースを毎度のことながらNHKが被った。NHKの放送が習近平への権力集中を伝えた瞬間に暗黒画面となった。
 対米関係は対峙の傾向を強めるだろう。習はさる4月のフロリダでのトランプとの会談で借りてきた猫のような様子を見せた。トランプは華麗で和やかなる晩餐会の最中にトマホーク巡航ミサイル59発をシリアのシャイラート飛行場へと発射してみせたのだ。トランプのアッパーカットを食らって、習は目を回したが、党大会でのすごみ方はその裏返しでもある。またトランプの体たらくで、それほどでもない指導者だと感じた気配がある。
 一方、対日関係についてはウオールストリートジャーナル紙が興味深い社説を掲載した。「日本の民意が示した中国への警告」と題する社説は安倍自民党の総選挙圧勝の意味を説いている。北朝鮮の核・ミサイル実験の横暴に「日本は巡航ミサイルの購入を検討している。また自前の核抑止力を求める可能生もある」と強調。「だから」と続けて「習近平氏が日本の再軍備を望まないのであれば金正恩への食料と石油を遮断することも出来る。さもなければ北東アジアの勢力地図は中国が望まないようにシフトするだろう」と日本を使ってどう喝したのだ。中国と北の出方によってはまんざらあり得ないことでもない。習近平は内弁慶で国内ばかりを見て、「資本主義現代化強国」の日米同盟があることを忘れない方がよい。

◎俳談

◎俳談
【頭脳の引き出しからひねり出す】
何処より旅せる虫やフェリーの夜 産経俳壇1席
 昔学生時代に、室蘭発の直江津航路に乗ったら、満天の星。ベンチに座ると何とコオロギが鳴いていた。どこからこの大きなフェリーに乗り込んだのだろうか。何とも言えない寂寞感で胸が一杯になった。半世紀後にその寂寞感がわき起こり、一句となった。年を重ねると言うことは得である。現場を見ずとも、分かる事が多い。経験が積み重なって頭脳の引き出しを形作っているのだ。訓練すればパソコンの検索と同じで言葉の一つ二つのヒントで目的の感情を引き出せる。


◎希望内部は分裂含みの様相

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◎希望内部は分裂含みの様相
   進退窮まる民進党系が発火点か
 先に小池百合子を「百叩きの上遠島」と書いたが、仏高級紙フィガロからまで「流刑地の女王」と言われてしまっては形無しだ。無理もない。民進党を希望の党と立憲民主党に分断させた張本人である上に、希望は分裂含みだから、江戸時代なら八丈島に流刑となっても文句は言えない立場だ。フィガロは「一番の敗者は小池氏」とも書いたが、さすがによく日本の政治を見ている。野党は苦悩の再編へと動く。一方圧勝した安倍は1日の特別国会で第4次安倍内閣を発足させる。通算で4度以上首相に選出されるのは明治の伊藤博文と吉田茂だけだ。長期政権へと踏み出す。その基本姿勢は憲法改正に軸足を置いているが、与党だけでなく野党を含めた幅広い合意形勢を目指す柔軟性も見せている。
 しかし、一口に改憲と言っても難所の多い谷川岳を登るようなもので、たとえ衆参で自公が3分の2の多数を獲得していても一筋縄ではいかない。安倍は「合意形成のための努力は(野党の)第1党でであろうと第2党、第3党、第4党であろうと行っていかなければならない」と野党も含めた取り組みに意欲を見せた。これは公明党が野党第1党との話し合いを重視していたのを、ご破算にした感じだ。なぜなら立憲は55年体制以来最小議席とはいえ野党第1党となり、改憲問題について自民党と鋭く対立しているから話し合いの対象になりにくいのだ。代表枝野幸男は、安部発言に強く反発して「権力は憲法で縛られるという立憲主義の原則を理解出来ていない人に、憲法を変えさせるわけにはいかない」と言ってのけたのである。従って安倍が立憲抜きでの改憲を目指さざるを得ないのは当然である。安倍の狙いは希望と維新の改憲勢力の抱き込みにある。
 ところが安倍発言が意図したかどうかは定かでないが、これが希望の分裂含みの流れを加速しそうなのである。なぜなら希望内部は改憲志向の保守派と安倍ペースでの改憲に強く反対する旧民進党系に分断されつつあるからだ。議席欲しさに安保反対の理念を曲げて希望へ参集した民進党系の当選者24人は、無節操がたたって窮地に追い込まれつつあるとも言える。立憲がこれだけ伸びるのなら立憲に回ればよかったというわけだが、後悔は先に立たずである。希望の衣をかぶって有権者を欺けば、たちまち正体がばれてしまうと言う物語はイソップのロバの逸話と似ている。
 いずれにしても希望の内部は遠心力が強く作用しており、これが野党再編の発火点になる公算が高い。自らのブームが総選挙まで続くとみた大誤算の小池は、都知事をやりながら、希望の党のたがを絞めなければならないという、苦境に陥る事は必定だ。パリで小池は「国政のことは国会議員で決めればよい」と発言しているが、そこにはもう投げ出したいという気持ちがありありとうかがえる。代表を投げ出して代わりがいるかと言えば、求心力のある人物はほとんどいない。細野豪志もベテランだが、線が細い。代表代行の樽床伸二もカリスマ性ゼロで、代表が務まるか。前原誠司を代表に迎えると言う線も考えられるが、実現性は未定だ。もたもたしているうちに党が持つかどうかに直面するから、もう誰でもいいということになりかねない。
 こうした中で何らかの調整役として民進党の籍を残して無所属で出馬した野田佳彦、岡田克也、江田憲司らが院内会派を作り、そこにとりあえず希望から合流するという方式や、民進党が新しい名前で政党を作り、そこに希望の離党者を受け入れる構想などがささやかれている。枝野は立憲を解体する気は更々無いが、来る者は拒まずが基本姿勢であろう。俯瞰すればいずれも民進党勢力再結集を模索する動きと言えそうである。
 いわば理念をそっちのけにしての数合わせ先行と言えるが、野党が繰り返してきた目先を変えるだけの新党が国民の理解を得ることは困難である。枝野も「間違っても数合わせとみられてはならない」と発言したが、本人は元をただせば悪名高き民主党政権の官房長官であり、その体たらくの責任者の一人だ。やはり悪名高き革マルの根城となっているJR.東労組などとの交流も過去にあったといわれる。産経新聞の過去の報道によると1996年の第41回衆議院議員総選挙への立候補の際、JR東労組大宮支部執行委員長と「私はJR総連及びJR東労組の掲げる綱領(活動方針)を理解し、連帯して活動します」などが記された覚書を交わした、と『新潮45』に掲載されたという。枝野は、覚書は「一般的な政策協定を結ぶ一定のひな型の通り」と述べ問題がないとの考えを示し、JR東労組との関係は「連合の各産別とお付き合いする範囲でお付き合いしているが、それ以上でも以下でもない」と述べた。しかし、枝野は昔JR東労組から4年間にわたって総額404万円の資金提供を受けていたという説もある。これに関連して安倍は去る7月に、「鳩山由紀夫内閣の時に、JR総連やJR東労組について革マル派活動家が相当浸透しているとの答弁書を、枝野氏が行政刷新担当相として署名している」、などと指摘している。その枝野が一部有権者の、判官びいきで脚光を浴びた。理念無き数合わせがやがては分裂を招くことは目に見えているが、枝野の発言に反して「数合わせ」をしなければ、野党は力を得ない。いずれにしても先に指摘したように1月1日に政党が成立していなければ政党交付金はもらえないから当面の期限は年内と区切られている。矛盾撞着を抱えて野党は再編へと動かざるを得まい。

T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」浅野勝人

検証・・・T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」
ー2017/10月5日、安保研ネット掲載。総選挙公示5日前
安保政策研究会理事長 浅野勝人

T君、総選挙いよいよ10日、公示ですね。
東京都議選で自民党が惨敗した後、お目にかかってお昼に天丼食いながら、「都議選の小池百合子は怖かったが、国政選挙の小池は怖くない」と申し上げた私の見解が当たりそうな気配ですね。

都議選の折、多くのマスコミが世論調査、その他の情勢を分析して、自民党は減っても30議席台と踏んでいたのに、T君ご承知の通り、私は20議席そこそこと予測しました。結果は19議席でみんなびっくり仰天でした。
種明かしをしますと、「都民ファースト」が全員当選すると予測して、民進党も減る。共産党が増える。公明党は現状維持。これを総合して逆算すると自民には20議席位しか残らない。結局、「都民ファースト」で落選したのは1人だけだったので、大当たりしたという仕掛け。

都議選で勝利の女神だった小池百合子が、国政選挙で輝くのは無理と推測した理由(わけ)は、
あの方は、どの選挙も「大統領選挙」と勘違いしている。
だから、小池人気が、全国津々浦々、衆議院小選挙区に行き渡り、特に比例区では圧勝して、都議選の再現となる。総理大臣就任も夢ではないと錯覚してしまう。

自民党内では、外交・安保政策に関して右派の論客だったから、時間の経過とともにその地金が滲(にじ)み出る。そうなると、右派の安倍晋三と同質なことが改めてわかってしまうので、「政権選択選挙」という唯一の訴えが売り物にならない。小池を支える膨大な無党派層が失望して離反する。
その証拠に、党公認に際して民進党リベラル派を除外する表現を「全員公認するつもりはさらさらない」と失言して馬脚を現した。

このひと言は重い。選挙戦を左右する重大なミスショットと予言しておきます。いや、ミスショットではなくて、「本音」を最悪な言葉使いで表現した。有権者は容易に「小池百合子の本音」と見破るから、このひと言で「希望の党」は失速する。非自民の有権者に、「第2自民党」は要らないと映るからです。

つまりは、安倍自民党と対峙することによって人気を倍増するつもりが、まるで補完勢力と映って当初の意図が崩れてしまいました。
だから、出馬の可能性を匂わしていた姿勢から一転して「不出馬」を明言して逃げました。どうやら思惑が外れかねないとみて「私自身は出ないと最初から言っている」と苦し紛れのウソを言わざるを得なくなりました。
与党をめざして「希望の党」を立ち上げた政党の代表・党首が、自身は出馬しない。国会の首班指名を目指さないという人がいたかどうか、憲政史上の事例をどなたか調べて教えて下さい。( 選挙の結果 ― 220人余立てて当選49人。当選率20%。惨敗 )

これに比べて、安保法制、憲法9条改正に反対する基本姿勢を堅持して筋を通し、自民党との対決を鮮明にしている「立憲民主党」の候補者と「希望の党」への参加を避けて「無所属」で出馬する前民進党の候補者が、非自民票の受け皿になる可能性が強まります。( 選挙の結果 ー 80人立てて50人当選。当選率60%。躍進)
選挙後の野党再編は、立憲民主党を立ち上げた枝野幸男を軸に小ぶりな勢力からの再出発になると思われますが、候補者を降ろして立憲民主党に選挙協力をした共産党は無視できない存在になります。
現役時代、議員会館の部屋が隣同士だったから褒めるわけではありませんが、小池晃が書記局長になってからの共産党は柔軟でいい。


T君、安倍自民党の不人気は、君の想像をはるかに超えています。私の周りでも、まさかと思う方が「今回は自民党には投票しない」と明言して驚かされます。
T君も当初は肝を冷やしていたでしょうが、小池百合子のおかげで、野党が「馬糞の川流れ」(政治勢力がバラバラになって求心力を失う様子を金丸信らしい表現で言った)となりました。
自民党が、近年、厳しく批判されている傲慢な政治姿勢を反省して、国家、国民の平穏と繁栄に真摯に取り組む姿を示せば、情況は好転。わずかな減員ですみそうです。( 選挙結果―4人減って280人当選。現状維持 )

二階幹事長は、大軍の将ですから、自信を持ってもっとはっきり発言した方がいい。
「世の中のために政治家が要(い)る。政治家のために世の中があるのではない」(思いあがるな)と明確な小池批判をする。
「国会で戦争法案反対と言っていた人たちが、政党を変わったら賛成という。我が党にとっては有り難いが、有権者の方々がそれを許すだろうか」とはっきり批判して、野党の中では一番強いと予測されている「希望の党」の票を離散させる戦術が重要です。(結果は野党第2党)

私は、来週から中国です。11回目になった北京大学での講義。それに北京外国語大学大学院、首都師範大学へ講義にまいります。選挙前に決まっていた日程ですから出かけますが、投票日前には戻ってまいります。
T君、加油! 加油! (2017/10月5日)

(22日、台風の中で総選挙終了)
T君、お互い予測はドンピシャリでしたが、何のためにやった選挙だったのか私には今でも理解不能です。勝つためにやって、小池百合子のミスショットで勝ったから、安倍晋三は結果オーライだったと理解すれば、それでいいのでしょうか。 

莫大なお金とエネルギーを費やして選挙をやって、世の中のために何がどう変わるのか、変わらないのか、何も無い。立憲民主党の当選者50人の内35人が前職以外の新らしい人だったというだけで、無所属を含めて各党とも、ほぼ全員選挙前の顔ぶれがそっくり再選されただけのことです。政策も顔ぶれも何も変わらない。野党に「馬糞の川流れ」現象が起きて、日本の政治を退化させただけでした。

T君、自民党は、現状維持をして自・公与党で300議席の大台に乗せて事実上の大勝利でした。但し、競争相手の票が二分され、比較多数で有利な情況が造られた敵失による勝利に過ぎないことを忘れないでください。

議会制民主主義、主権在民の根幹を理解していないほどの政治家の劣化。政党助成金をめぐって右往左往するほどの政党政治の劣化を招いたのは「衆議院小選挙区比例代表・落選者救済制度付きシステム」によります。世界に類のない悪法です。選挙は1票でも負けたら負けです。

安倍政権は、ことによったら佐藤栄作政権を越える長期政権になると思われます。
安倍首相のやるべき第1の課題は、もともと選挙制度の改正を強行することでした。衆議院を定員3人の中選挙区、全国100選挙区に改正する。公明党を含めて、賛否が政党によって入り乱れますが、自民党の過半数で押し切ることができる。2/3は要らない。
安定した政権の持続と何よりも有能な新人議員が、選挙ごとに1/4を占めて、もう一度政界に人材が集まります。(2017/10月23日、元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【夏は来ぬ】
山の子の合唱遠く夏は来ぬ     毎日俳談入選
 夏は来ぬは佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲の日本の唱歌である。2007年に日本の歌百選に選出されている。卯の花、ホトトギス、五月雨、早乙女、タチバナ、ホタル、クイナといった季語が満載で、初夏を彩っている。掲句は山の子が唱歌「夏は来ぬ」を歌っているのか、それとも作者が「夏が来た」と言っているのか判然としない。<山の子の合唱遠く/夏は来ぬ>と切れを入れれば作者が言っている方だが、どちらとも受け取れる。筆者はどちらでもいいと思う。
なぜなら誰でも知っている唱歌の風情を一句に活用しようとしたことは確かであるからだ。

◎勝ったからこそ「平衡の感覚」が不可欠

【筆者より=ソネットの障害により掲載が遅延しました。今後は常に障害のないブログhttp://suginoko.progoo.com/bbs/でご覧になることをおすすめします。将来的には

当ブログを廃止しブログを一本化します。早めにお気に入りに追加願います】

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◎勝ったからこそ「平衡の感覚」が不可欠
  明治以来一位の長期政権も視野に
 第一の勝因は極東情勢の激変
 史上最長の「天孫降臨景気」も
  86年に衆参同日選で大勝したとき中曽根康弘は、「自民党は左にウイングを伸ばした」と発言したが、安倍自民党による5回にわたる国政選挙の大勝は自民党が農村型政党から完全に脱皮し、都市型政党としてのポジションを確立したことを意味する。都市化の波は農村部対都市労働者対峙の構図を崩壊させ、自民党の左ウイングを固定させた。歴代まれに見る長期政権が視野に入り、戦前戦後を通じて7年8カ月で2位の佐藤栄作はもちろんのこと、7年11カ月で1位の桂太郎をも抜いて歴代1位の政権まで見通せるようになった。来年9月の自民党総裁選で3選されるということは、これまでの5年間に4年をプラスすることになるからである。今後政治的には首相・安倍晋三は、日本全体を俯瞰しつつsense of  proportion(平衡の感覚)を堅持した政権運営が求められる。
 敵対する論陣を張って選挙を自民党不利に導こうと散々苦闘した朝日は、顔面蒼白紙面であった。一面で「安倍一強の変化を求める変化の兆しが見えた」と書いたが、事前に行った各種の世論調査をよりどころにしても科学的でない。最大でもっとも正確な世論調査は総選挙であるからだ。安倍政権の普段の努力が何よりの支持獲得に結びついたのである。加えて、希望の党代表の小池百合子と民進党代表の前原誠司の“政略至上主義”は、有権者が見事に見破った結果となった。小池は厚化粧の化けの皮をはがされたのだ。立憲の躍進も、あまりの与党の強さに判官びいきがあったからに過ぎない。将来的には社会党系野党は消滅の流れをたどる。
  今回の場合、有権者が左ウイングを強化、固定した第一の理由は激変する極東情勢にある。中国の一国至上主義と北朝鮮の横暴を抱える極東において、如何に国民の生命と財産を守り続けるかという困難極まりない課題は、安倍政権でなければ克服できないと有権者は判断したのだ。北朝鮮の異常な指導者が繰り返す核・ミサイル実験が佳境に達しようとしているなかで、多くの国民が、これに対応できるのは自民党政権しかないと判断したことにどう応えるかである。安倍政権としても北が狙うどう喝による「極東支配」を座視するわけにはいくまい。米国と共に「力による抑止」政策を維持して暴発を防ぐことが最大の責務であろう。
 安倍は間違ってもトランプに戦争に突入させてはならない。なぜなら、たとえ北の政権を壊滅させることが出来ても、1発でもミサイルが東京に落ちれば戦争は「敗北」なのである。米国が練り上げている作戦の1つは北の中枢、国境沿いの通常兵器、核ミサイル基地などを、爆撃や巡航ミサイルで一挙に叩き潰すものだと言われるが、苦し紛れの北のミサイルでソウルと東京が火の海ばかりか毒ガス、細菌汚染まみれになる可能性は否定出来ない。米国に打撃を与える核ミサイルはまだ完成されていないから、何をしようと米本土は安全とトランプが考える危険は計算に入れなければならない。第二次朝鮮戦争の構図ははじめから成り立たないと安倍は見るべきであろう。安倍は来月5日のトランプとの会談で刺すべきクギは刺さなければなるまい。基本戦略は軍事圧力や金正恩暗殺などによって北の政権を崩壊に導くことであり、そのためにも自民党が主張する敵基地攻撃能力も保持すべきであろう。専守防衛の時代は大きく転換させなければならない。その第一歩が敵基地攻撃能力なのである。保持することにより北への圧力は格段に向上する。
 一方、北の暴走に勝るとも劣らないのは5年ぶりの共産党大会で、習近平がその独裁色を一段と強化しようとしていることだ。党大会を見る限り、中国は民主化などという言葉をかなぐり捨てて、ひたすら習近平の下に力を集中、中国を社会主義国家として完成させようとしている。その政治報告で際立つのは①共産党結党から100年の2021年に向けて社会主義の近代化を実現させる②中国建国から100年の2049年までに社会主義近代化強国を作り上げる③同時に軍隊を世界一にするというものだ。
 これらの方針は米国などにあった「半世紀もたてば中国は民主主義国になる」とする予想を覆し、民主主義と対峙する理念の国家へと邁進する方向を強めたことを意味する。驚くべき事は習近平が「中華民国が世界の諸民族の中でそびえ立つ国になる」と言ってのけたことだ。これはかつての中国王朝がそうであったように、世界的な規模での覇権を目指すことを意味する。習近平は南シナ海における軍事拠点建設を誇らしげに成果として強調したが、まさにスターウオーズのアンチヒーローである「ダース・ベイダー」的な存在になろうとしている。その臆面もない覇権主義からみれば、東シナ海への進出も今後激しさを増すとみなければならない。
 このような中国の一国至上の覇権主義は、好むと好まざるとにかかわらず安倍政権時代に顕著なものへと発展し、極東における民主主義大国日本とダースベーダーに率いられる社会主義大国中国の政治的対峙の構図は強まるだろう。もちろん米国もやがてはこの構図に気付き、米ソ対決の冷戦時代に似た構図が東アジアで生ずる可能性も否定出来ない。幸い安倍はトランプと極めて親しい関係を築き上げており、日米で中国の膨張をけん制する流れが生ずるだろう。
 一方、経済面ではアベノミクスが絶頂期に入ろうとしている。安倍政権の12年12月に始まった景気回復は今年9月まで回復していれば、65年11月~70年7月までの57カ月間に及んだ「いざなぎ景気」を抜いているだろう。今後は2000年までオリンピック景気がこれに上乗せされるから、史上空前の「天孫降臨景気」も夢ではない。雇用は史上初めて1人に対して正社員の有効求人倍率が1に達した。希望すれば正規社員になれる時代となった。東京での倍率は2であり、全国的にも1.5と好調だ。しかし、ここに来て経済界に“慢心”とみられる不祥事が出始めた。神戸製鋼所や日産自動車で発生した品質管理をめぐる問題だ。安倍は22日「優れた日本のものづくり、失われた信用を取り戻すべく、政府と産業界一丸で取り組んでいきたい」と述べたが、蟻の一穴から崩れないとも言えない。徹底した行政指導が必要だろう。
 国会運営は「勝って兜の緒を締めよ」であり、「実るほど頭を垂れる稲穂かな 」でもあろう。慢心してはならない。とりわけ不祥事多発であった前二年生議員など若手議員の問題が気になる。昔は派閥が教育の役割を果たしたが、今後は党が議員のイロハからマスコミ対策まで徹底した教育を3か月にわたってし直す必要があるのではないか。改憲問題も、可能になったからこそ、一部でも野党が入る形で広い合意を目指す方がよい。原発問題は5回目の支持獲得であり、安全基準を達成すれば稼働を推進すべきであろう。

事実上の“ 殺人罪 ”を処罰せよ! 浅野勝人

事実上の“ 殺人罪 ”を処罰せよ!
安保政策研究会理事長  浅野勝人

「子どもを教える立場にありながら、自らが犯した、重大な責任に気付かず、悪いとも思わず、反省もしない。あの時の担任、副担任の教諭が一人でも違う先生だったならわが子は死なずに済んだ」
これは今年(2017年)3月、福井県池田町立池田中学校で自殺した2年・男子生徒(当時14才)の母親の手記です。息子を失った悔しさや学校への怒りが11枚にわたって綴られており、癒えない悲しみが滲んでいます。

3月14日、午前8時頃、男子生徒が校舎3階の窓から飛び降りて自殺した。池田町教育委員会は「担任と副担任から繰り返し強い叱責を受け、追い詰められた末の自殺」と発表した。担任は30代男性、副担任は30代女性という。
担任、副担任から大声で叱責されているところを目撃した同級生は、調査委員会に「(聞いている者が)身震いするぐらい怒鳴っていた」と証言している。しかもたびたびである。報告書が「度重なる厳しい叱責による精神的ストレスと孤独感が自殺の原因」と断定している背景だ。

更に許しがたいのは、母親が「自殺した日に自宅に来た校長は頭を下げることもなく、『家族が悪い』といわれているような言動だった」と堀口修一校長に対する不信感を語っている点である。
この男の子は、草むしりをする祖母のために椅子を手作りするような家族にやさしい少年で、生徒会役員としても申し分なかったという。
堀口校長は、自殺直後の記者会見で「そんな事態は把握していなかった」と述べ、保護者説明会で「問題はなかった」と説明していた。ところが、検証が進むにつれて校長、教頭とも叱責の現場を何回も目撃していることが判明している。責任感の欠片もない。

もっと情けないのは、生徒が自殺した後、原因を振り返るための職員会議で、担任、副担任の行き過ぎた叱責を指摘し、諫めた教員は一人もいなかった。こんな人たちが大切な子どもを教育しているかと思うと寒気がします。ここだけの例外であってほしいと念じますが、どんなものでしょうか。

事実を知れば知るほど、これでは事実上の殺人罪ではないかと思われてしまいます。担任、副担任は獄門、校長は殺人幇助で遠島、教頭は閉門蟄居です。わたしの孫が同じような扱いをうけて自殺したら、担任、副担任を刺し殺して、自首します。

その上、事もあろうに、有識者らによる調査委員会が作成した調査報告書から、「管理職(校長と教頭)としての職責を果たしたとは言えない」という文言を町教育委員会が削除して発表した。まさに学校と教育委員会がグルになって隠ぺい工作をしている醜態を見るにおよんで、怒りを通り越して情けなくなる。
町教育委員会・内藤徳博教育長は「管理職の責任に関する内容が省かれた理由は分からない」と取材に答えている。自分たちで削除しておいて「なぜ削除されたかわからない」とは盗っ人猛々しい。あなたは、その椅子に座っている価値は爪の垢ほどもない。即刻、引責辞任してはいかがでしょう。

マスコミ各社、とりわけ新聞各社には、1面トップで徹底的に追及する問題意識が求められる課題と考えるがいかがだろう。徹底した事実の解明と当事者の責任の明確化、厳しい処分が何よりも再発防止につながると考えるからです。マスコミの社会的使命です。

むかし噺になりますが、現職の時、自民党政策審議委員だった折、いじめによる少年の自殺問題を取り上げ「知りませんでした。遺憾ですというだけの教育委員会は、屁のツッパリにもならない。小・中学校の校長が委員会の長になり、委員も教職員が多い。いわば学校の先生の再就職口に過ぎない。だから教育行政を監視、注意すべき機関が学校の不始末をかばうことしか考えない堕落した存在になる。地方自治体の教育委員も公選制にして選出し、その中から委員長を互選したらいい」と指摘したことがあります。
「屁のツッパリにもならない」という発言がゲラゲラと笑われただけで、それっきりでした。
明後日投票の総選挙が終わったら、遅まきながら、政府・与党は立法措置も視野に真剣に取り組んでみたらどうだろう。(2017/10月20日、元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【なりすまし】
吾は古希兄は十九の終戦日 産経俳壇一席
 古希の友人の兄が特攻隊で死んだ話を聞いた。お骨のない墓には十九歳と彫ってあるという悲しい話だ。掲句の場合誰が見ても自分のことように受け取れるが、実際にはそうではない。これに人から聞いた話だ。しかし五七五の中に、聞くところによるとなどと書き加えることは極めて難しい。こういう場合は自らが友人の心境になりきって作句すれば良い。俳句は一人で歩き出す。
空蒼き故の不安や終戦日 毎日俳談入選
 この句は蒼い空から敵機が来襲した記憶が作らせた。感性の句だ。

◎北の“貢献”で自民の選挙戦が有利に

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◎北の“貢献”で自民の選挙戦が有利に
  若年有権者層の反北感情も影響
 野党は時代錯誤の極み
 隠れて見えない「影」から衆院選で自民党を応援してくれる国がある。どんどん応援しても外国だから公職選挙法違反にならない。貧乏国だから資金援助はないが、トップや幹部の発言が全て票に結びつく。与党にとってこんなありがたい国はないのが北朝鮮だ。最近一番利いたのが外相李容浩が、「金正恩委員長が声明で言及した『超強硬対応措置』とは過去最大の水爆実験を太平洋上ですること」と言明したことだ。防衛相小野寺五典は「水爆を運搬する手段が弾道ミサイルであれば、日本上空を通過することも否定できない」と応じたが、これを聞いた有権者は自民党に投票しようと“決意”する。なぜかと言えば傍若無人にも日本を超えたミサイルで日本の庭の太平洋で水爆実験を行うなどと言うことは、国民感情の琴線に触れる最たるものだからだ。多くの国民は、野党、とりわけ立憲民主、共産、社民の各党は北朝鮮と同じ社会主義に根源を発していることもあり、北に関して何を言おうと信頼できない傾向がある。希望の党も大挙して元社会党の民進党から押しかけているから油断が出来ない。やはり頼りになるのは自民党ということになってしまうのだ。
 安倍も抜け目がない。歴代首相は、“ありがたい票田効果”が北朝鮮にあるのに気がつかず、手を付けなかった。しかし、安倍は国連総会で北朝鮮対策一色の演説をした流れをそのまま、選挙戦の演説に直結させた。安倍は北朝鮮のミサイル発射について「動きを完全に捕捉している。私たちは、しっかりと国民の命と幸せな暮らしを守り抜いていく」と訴え、米国とも連携していることに触れ、「強い外交力で核・ミサイル問題や拉致問題を解決していく」と主張。経済制裁を強化していることについては「しっかり圧力をかけ、政策を変えさせていく」と理解を求めた。聴衆の中からは批判勢力が秋葉原の例にならって「やめろ」のシュプレヒコールを繰り返すケースがあるが、最近では一般の聴衆が「選挙妨害だ」「黙れ」と憤りの声を上げる事例が相次いでいる。
 野党各党は、この最大の争点になっている北朝鮮問題には触れないようにして演説を展開しているが、これがまた信用がおけないということになる。安倍が強行突破した安保法制についても、今ほど必要とされている時はない。同法制に基づき政府は自衛隊の艦船で米軍の補給艦を守る平時の米艦防護や、補給艦による米軍イージス艦への給油を行っている。公式発表がないケースも増えてきているようだ。こうした政府の「日米共同作戦」に対して、批判すれば野党は不利になるとみて沈黙を続けている。確かに「給油反対」などと言える雰囲気ではないからだ。そもそも野党は安倍政権が成立させた安保法制には反対であり、共産、社民は「安保法制は憲法違反。廃止を求める」と選挙で主張することになっているが、公言はしない。しかし選挙民の選択は共産党を“マイナス成長”にさせようとしている。減りそうなのだ。一方立憲も「北朝鮮対策としては個別的自衛権で対応できる。領域警備法と周辺事態法の強化で対処出来る」としているが、今そこにある危機に対しては説得力がない。まさに北朝鮮問題で野党は時代錯誤の極みの状態にあるのだ。
 そもそも根本的に与野党が異なるのは、自民党が北朝鮮への圧力に重点を置くのに対して、野党は対話に重点を置く傾向にあり、その基本姿勢の差は大きい。具体的には自民党が「全ての核ミサイル計画を放棄させる」としているのに対して、立憲は「北をテーブルに着かせるための圧力を強める」としている。この主張は、空想的社会主義のからが抜けないのか、今そこにある危機に対して空想的で現実感が伴わない。話し合いに応じない金正恩に対して「話し合いを」という空々しさと無責任さを感ずる。
 一方、憲法改正への取り組みも、安保がらみで各党主張が異なる。与党も割れる。自民党が9条に自衛隊を明記する方向での改正を主張しているが、公明党は「多くの国民は自衛隊を憲法違反と考えていない」として消極的だ。安倍も「国会の議論を活発化させるために投じた一石」として、それほどこだわる気配がない。従って、総選挙の大きな争点として浮上しているとは言えないだろう。
 このように、最近では珍しく北朝鮮が、大きなテーマとなっているが、野党の主張が総じて現実性に乏しく、与党側を有利に導いている事は確かだ。とりわけ18歳選挙権で若い世代が選挙に影響を生ずる傾向が増えることが予想されるが、高校、大学生は北に対して「むかつく」と反応する傾向が強い。若い世代ほど右に寄っているのが世論調査でも如実に現れている。その作用が大きい気がする。

◎俳談  

◎俳談
【人生の黄金期】
恐ろしき昭和を見たり昼寝醒  朝日俳壇年間秀句
 何と言っても人生の黄金期は退職後にある。何しろ働かなくてもメシを食っていける。筆者の場合は連日、前人未踏の4000字に達するニュース解説をブログに書くことを自らに義務づけているから、ほっとするのは金曜と土曜だけだ。それでも開放感はすばらしい。退職後最大の醍醐味は昼寝だ。筆者は徹夜で執筆する関係から午前と午後の2度寝る場合がある。ほとんど夢など見ないが、見る場合もある。
 掲句は原爆や戦争の夢を見たわけではないが、昭和を回顧すれば「恐ろしき」と形容するしかない。実際に見たように嘘を言い切るのが俳句だ。ただし、たいていの嘘の句はばれる。嘘のつきかたが下手だからだ。達人芭蕉は蛙の飛び込む水の音がしようがしまいが、絶対にばれない。凡人は少なくともばれるかばれないかすれすれの嘘をつかなければならない。昼寝覚も昼寝も夏の季語。次の句は嘘ではない。
猫の舌仕舞ひ忘れて昼寝かな 産経俳壇入選

◎“進次郎節”が安倍顔負けの“集票力”

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◎“進次郎節”が安倍顔負けの“集票力”
 清新さを武器に“とどめの一撃”
 今更ながらびっくりしたのは今をときめく小泉進次郎の18日の演説だ。あまりに名演説なので録画を書き取った。少し長くなるが紹介する。小泉は沖縄県南風原町で、「自民党が優勢に戦いを進めているという報道もあるが、仮にそうだとしても、それは、野党が分裂して、お互い食い合っているだけであって、私たち自民党が皆さんから完全に信頼を回復できたわけでもない。8年前に失った私たち自民党の信頼は、まだまだ回復の道半ばにある。決して私たち自民党が、得点を挙げてきたわけではなく、野党があまりにもひどすぎた。ものごとに反対することは簡単で、言うことも簡単だ。しかし、それを形にするのはそう簡単なことではない。私たちは、諦めないで一つ一つ形にしてくことを、いくら時間がかかってもぶれずにその道をまっすぐ進んでいきたい」と述べた。この演説から分かることは、まず、明らかに全国向けの演説を意識していることだ。小さな自治体向けの演説ではない。NHKのカメラを意識して、“狙った”のだ。
 加えて 小泉は政局観がしっかりしている。自民党が、現在置かれている立場を十分すぎるほど理解しているのだ。置かれた立場とは「勝って兜の緒を締めよ」である。このままなら野党の体たらくで圧勝の流れだが、この流れはちょっとでも慢心が出ると崩れる。なぜなら、野党は民進党の瓦解で立憲民主党以外は総崩れだが、これは自民党にとって“敵失”による漁夫の利である。これを知り抜いた小泉が逆張りで「自民党が、得点を挙げてきたわけではなく、野党があまりにもひどすぎた」と謙虚に反省すれば、迷っていた有権者や、今回は自民党が有利だからバランスを取って野党に投票しようとしていたいいかげんな有権者も「そうか」と納得する。
 以前から小泉は街頭演説では「財政赤字は民主政権で悪化したが、もとをたどれば自民党の責任。しっかり反省しなければならない」などとまず反省を前面に打ち出して訴えている。この意図は、自民党内にも若い世代が存在し、旧態依然たる党幹部と異なり、自らを批判する謙虚さを持っていることを訴える必要があるからだ。新鮮さをフルに活用しているのだ。加えて「諦めない。いくら時間がかかってもぶれずにその道をまっすぐ進む」と決意を表明して、締めくくる。これにすがすがしささが加わって、NHKが報じた他党党首の演説は色あせた。食卓でテレビを見ていた家内が、リビングでやはり見ていた小生のところに飛んできて、「すごい」と宣うた。選挙終盤の夜7時のニュースの冒頭だから、自民党にとっては「とどめの一撃」とも言えるほどのスピーチだ。
 小泉の選挙戦術は演説内容ばかりではない。何と「無言作戦」まで展開している。スポニチなどによると、12日の千葉県松戸市で応援演説をしようとしたところ、50メートル先で立憲代表の枝野幸男が演説を開始してしまった。普通なら街頭で鉢合わせすればボリュームを上げてがなり立てるところだが、小泉は逆であった。街宣カーに上がった進次郎は、聴衆に向かってあいさつすると、2人の声が交錯することを知った。すると小泉は「みなさん、今、あそこで枝野さんがやってますから、終わるまで枝野さんの話を聞きましょう」と聴衆に呼びかけ、枝野の演説が終わるのを待つ余裕を見せたのだ。予期せぬ事態に聴衆からは驚きの声が上がったが、進次郎は10分以上にわたり、「無言」で聴衆に手を振り続けた。枝野の演説が終わろうとするころ、「立憲民主党の街頭演説を聞いているみなさんにも大変申し訳ありませんが、ぶつかる形になりますけども、今から短くやらせていただきます」と断り、ようやく口を開いたのだという。
 両陣営によるとお互いの演説場所が重なっていることを知ったのは10日夜。事前に知っていた小泉は、練りに練って“無言作戦”を取ったことになる。相当なテクニシャンでもある。いずれにしても、こうした小泉の態度からは、すがすがしさを感ずる国民が多いに違いない。テレビのニュースに露出するのは、首相・安倍晋三か小泉のどちらかであり、安倍はオーソドックスだ。首相としては当然だろう。一方“新次郎節”はその安倍もタジタジの貢献ぶりである。自民党は掛け値なしで大輪の花を咲かせ、集票に貢献をさせていることになる。まさに政界のサラブレッド、肝が据わって度胸のある男が登場したものだ。

◎俳談

◎俳談       
【着眼はちぬのしなり】
庄内竿ちぬのしなりを見せにけり 産経俳壇一席
 作家藤沢周平の「たそがれ清兵衛」の映画の中のワン・シーンに庄内竿でハヤを釣るシーンがある。庄内藩は藩士の釣りを奨励し、藩士は競って名竿(めいかん)を求めた。「名竿は名刀より得難し」と言われて、そのしなりや震えで即座にかかった魚の種類が分かるという。私の父は庄内竿を愛用していた。掲句のみそは「ちぬのしなり」と形容したところにある。釣り人の用語を拝借したのだ。

◎野党は立憲軸に再編の流れ

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◎野党は立憲軸に再編の流れ
 民進軸の再結集は潰れた
 江戸時代の刑罰には、重い順に火あぶり、磔(はりつけ)、獄門、打ち首、遠島、江戸所払い、百叩きがある。昔の政界では大失政をした議員を「火あぶり磔の刑だ」とよく言ったものだが、今は社会が緩やかになったから極刑はやめておく。さしずめ小池百合子は百叩きの上遠島。前原誠司は江戸所払いといったところか。
 小池は女だてらに丁半ばくちに手を出して「丁!」と張ったが「半」と出た。希望の党は小選挙区、比例代表で計235人を擁立し、野党再編の核を目指した。しかし、小選挙区では最大でも23議席程度しか見込めず、10議席台にとどまる可能性がある。比例代表と合わせても57議席の公示前勢力はとても無理の感じだ。小池自身の「排除の論理」がたたって、政治の本流から「排除」されつつあるのだ。前原の誤判断も大きい。希望の党がブームを呼ぶと見て、本当に希望を抱いて民進党をなだれ込ませたが、これが大失敗。希望どころか地獄の苦しみを民進党議員にあわせてしまった。この結果、小池と前原の双方に責任問題が発生する公算が大きい。両者は政治家としての判断力を問われる事態に発展しよう。小池は世論調査では「都政に専念を期待する」声が70%に達していたにもかかわらず、危ない“火遊び”に手を出した責任は免れまい。都民の信頼は地に落ち、都議会でも与党の公明党が反小池の色彩を強めることが予想され、都政の運営は困難を極めるだろう。
 それでは選挙後野党は一体どうなるかだが、社会党以来の左派系有権者のよりどころとなりつつある枝野幸男が率いる立憲民主党を核に離合集散を始めざるを得ないだろう。野党が国会で共闘を組む形が考えられるが、年末までに政党を組織しないと1月1日に国からの資金が入らないから、急ぐ必要があるが、早くも野党のコップの中に嵐が生じつつある。問題は勢力を温存している参院民進党から提起された。同党参院会長の小川敏夫がしゃしゃり出たが、与野党から「参院は引っ込んでいろ」(立憲幹部)と総スカンを食らって敗退した。小川は「民進党は解党しない。民進党を守り、再びリベラル勢力を結集する」と民進党の参院議員の一部が衆院選後、希望の党に合流せずに民進党に残り、民進党を党として維持する動きをみせた。民進党を軸に再結集して再出発しようというわけだ。小川にしてみれば民進党には全国組織も残っており、政党交付金も100億円ある。これを武器にすれば、再編が可能とふんだのだ。
 しかし、小川は甘かった。民進党を捨てて希望に合流した連中は発言権など全くない。一方、立憲を組織した枝野にしてみれば、「一か八か」の勝負に出た結果、ようやく40台後半の議席を獲得しそうなのに、参院ごときから、かっさらわれてはたまらないというわけだ。枝野は「選挙が終わったので元のサヤに戻るのではなく、立憲民主を軸に民進とどう連携が取れるかを考えてゆく」とはねつけたのだ。首相・安倍晋三も分かりやすい批判を展開。「当選するためにどこかの党へ行く。選挙が終われば元に戻るという話もある。一体どうなっているのか」と皮肉った。
 民進党員ながら無所属で立つという、わけの分からない立候補をした元党幹部らも行き場がない状態だ。苦し紛れか岡田克也が「選挙が終われば無所属を軸に大きな塊を作っていかねばならない」と発言したが、何でも「軸」になればいいというものでもない。無所属とはヌエのごとき存在であることを知らない。まるで噴飯物だ。
 こうして小川の“先走り構想”は、ぽしゃったが、小川は後になって「私は存続している民進党を軸に自民党に対抗するリベラル勢力を結集する必要性を述べただけで、民進党への再結集とは述べていない」と逃げの手を打った。こうしてコップの嵐は曲がりなりにも左翼バネで政党を立ち上げた枝野を軸に進む方向となった。希望の党は民進党からの離党組が、常に党存続の危機をもたらす傾向をおびるだろう。しかし、希望の党を装って安保反対をベールにかけて当選しても、国民からはそっぽを向かれるのが落ちだ。小池ポピュリズムにすがって当選しても末路は哀れだと言うことだ。

◎俳談

◎俳談
【意外性】
トレーラー降りしは女黄鶺鴒 俳句朝日入選
 あっと驚くものをそのまま詠むのも俳句の修業方法だ。掲句は
トレーラーの運転席からうら若き女性が降りてきたのを見て作った。季語の黄鶺鴒(キセキレイ)は秋の季語。若い女性と良く響くので使った。あらゆる事象を即座に俳句に写し取る技術を身につけることは簡単だ。毎朝10句作れば良い。
 国境のトンネル戻り小春かな NHK俳壇入選
猛吹雪の新潟から湯沢町を経て清水トンネルを抜けると、そこは小春日であった。川端康成の「雪国」の全く逆であった。その意外性を一句にした。日本人なら「国境の長いトンネル」と聞いただけで「雪国」を思い出し、また詩情を感ずる。掲句はその日本人共通の感性にあえて軸足を置いた。康成の作った心情を借用したのだ。

アンダードッグ効果が懸念材料

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◎アンダードッグ効果が懸念材料ー衆院選あれこれ
  民放テレビの「禅譲説」に慌てた岸田
 「時事放談」が放送法すれすれの不公平報道
 総選挙も佳境に入ると“敗者復活”を目指して与太情報が乱れ飛び、各党幹部もあの手この手の“秘術”を尽くして舌戦を展開するから面白い。
 与太情報の最たるものはなんと民放番組から飛び出した。フジテレビの報道2001で去る7月にに「安倍政権の支持率が下がったことで、全国の悪いやつらが喜んでいる」と発言した解説委員平井文夫が、またまたびっくり発言。今度は政調会長岸田文雄に「自民党が予想通りに勝てば安倍首相は岸田さんに禅譲するとの説が流れている」と爆弾質問。これにはさすがの岸田もオタオタして「安倍総裁の下で選挙戦を戦っている。安倍総裁の下で今の顔ぶれで政権を支えてゆくことで選挙を戦っている」と全面否定。「安倍総裁の下で」を2度も繰り返した慌て方は見物であったが、想定外の質問であった。選挙に圧勝しようとする首相が、事もあろうに選挙後に岸田に禅譲するだろうか。100%ない。来年9月の安倍総裁3選がますます濃厚になっているなかで、民放とはいえ放送のレベルが問われる発言であった。
 驚いたのが希望の党代表の小池百合子が大阪弁の応援演説をやったことだ。もともと兵庫県芦屋市生まれだから、流ちょうなものだが、どこか違和感を感ずるのはなぜだろうか。別に大阪弁の演説が悪いなどというつもりは更々ないし、大阪弁は大阪勤務で好きになった。しかし、党首の演説である。NHKの全国放送で放映されたから、東京や東北や九州の各県の有権者は違和感を覚える者も多いだろう。大阪の友人が電話してきて、「票欲しさが鼻につく。見え見えだ」と批判していた。たしかに小池は東北では東北弁で応援するのかと思いたくなる。貧すれば鈍するの破れかぶれの姿勢が垣間見えるのである。標準語の演説でも安倍に比べると具体性と“深味”を感じさせない。知識の浅さをより際立たせる小池戦略であった。
 概して民放の番組をつぶさに分析すれば、TBSなどが放送法すれすれの自民党批判を繰り返している。その象徴的な例がTBSの時事放談だ。大体この種の番組は公平を期するため自民党側と反自民を並べてしゃべらせるのが常だが、15日の時事放談では新党さきがけ代表だった武村正義と元民主党政調会長の仙谷由人という札付きの反自民人間にまくし立てさせた。司会の御厨貴は例によって中立を装いながらけしかけた。問題は自民党と希望の党を散々批判した上で、選挙の投票行為に触れて仙谷が「5年後10年後の日本を、日本人を考えて投票すべきだ」と強調したことだ。武村も負けじと「これまでの政治をだらだらと続けるのか変えようとするのか」と同調した。あきらかに有権者を野党の投票へとけしかけ、誘導する発言である。公職選挙法は新聞雑誌に関しては選挙の公正を害すれば二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に当たるとしているが、テレビ番組には規定がない。しかし、ひどいものは放送法による免許停止が可能だ。自民党は14年に①出演者の発言回数や時間に公平を期していただきたい②ゲスト出演者の選定についても中立公平を期していただきたい③テーマについても特定の出演者への意見が集中しないよう中立公正を期していただきたいーなどの要望書をテレビ各社に出している。放送法の免停を考慮した上でのことだ。そんなことは知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいる。
 ここにきて自公で300議席以上の流れが確実視され、安倍政権続投の方向が固まっているが、問題は「アンダードッグ効果」だ。直訳すると「負け犬効果」となるが「負け犬への同情効果」とすれば分かりやすい。負けそうな党や候補者への同情票が情勢を変える恐れがあるのだ。この効果は選挙で世論調査が実施されるようになった米国で戦後に指摘されたものだ。日本における顕著な例は森喜朗が2000年6月の衆院選挙での演説で、自民党優勢を伝える各報道機関の世論調査を評して「まだ決めていないとか関心がないとかいうのが40%くらいあり、これは大変大きい数字なんです。そのまま有権者が関心がない、と言って寝てしまってくれれば、それでいいんですけれども、そうはいかんでしょうね」などと発言した。この挑発発言が一挙に情勢を覆した。「自民が安定多数うかがう」と分析していた新聞の予想に反して、解散前271議席を233議席にまで減らしてしまったのだ。危ないケースも散見されはじめた。自民党幹事長二階俊博が14日大阪での街頭演説で、ヤジに反応してしまい「分かったから黙っておれ」と発言した。幸いにも新聞は大きく報じていないが、「黙れ」は軍部が議会を脅迫した戦前の「黙れ事件」を思わせる。二階は寡黙なくせに、ときどき舌禍間際の発言をする。終盤に向けて何が飛び出すか分からない寸前暗黒の事態を物語る。自民党は兜の緒を締めなおす必要がある。

◎俳談

◎俳談
【世界一の短詞に含まれる大きなもの】
子の腹に鉄棒の錆梅雨晴間 小澤
掲句で浮かぶ情景は紛れもなく鉄棒の練習をしている子どもの姿である。逆上がりの練習であるが、逆上がりという言葉は使っていない。「鉄棒」と「子の腹」ですべてを物語らさせている。「梅雨晴れ間」は夏の季語である。長雨で錆がついているのに、晴れたから「鉄棒やろう」と誘い合って校庭に出た姿だ。たった五七五の中身を語ればこれだけで120字となる。世界一の短詞に語らせれば、泉の如く解釈が湧く。芭蕉の俳句なら長編小説でも書ける。それが俳句の神髄だ。

◎自民優勢で安倍長期政権が視野に

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◎自民優勢で安倍長期政権が視野に
 261の絶対安定多数も確保か
 大衆迎合の小池新党は伸び悩み
 総選挙序盤の形勢は自民党が小選挙区、比例区の双方で優勢な選挙を展開しており、233議席の単独過半数を大きく上回りそうな情勢だ。このまま推移すれば公明党とともに、首相・安倍晋三の政権維持が可能となる。安倍の長期政権が視野に入ったとも言える。絶対安定多数の261議席も可能な情勢で、公示前勢力の284にも近づきそうだ。逆に小池百合子の希望の党は最初から「失速」状態であり、選挙後政局に関与出来る可能性は薄らいでいる。総じて有権者の多くが北朝鮮情勢などを考慮した外交安保重視の選択をしようとしており、浮ついたポピュリズムの象徴小池新党には「ノー」の判断を下しそうだ。よほどの無責任な有権者は別として、総じて堅実なる選択をしつつあるようだ。革新政党に先祖返りした立憲民主党は一定の支持を確保して健闘している。
 「ショボい」のはどちらだろうか。希望の党代表の小池百合子が、首相・安倍晋三の消費税の使い道を「ショボい」と形容した。安倍が表明した「増税分を子育て支援や教育無償化の財源に充てる」ことに噛みついたのだ。しかし、そんなにショボいだろうか。消費税の使い道は重要な争点であり、ショボいというなら対案を示してから言うべきだ。逆に小池新党が「消費増税凍結」などという無責任なポピュリズムを前面に打ち出したのはショボすぎるのではないか。小池のショボさの核心部分は、小池新党に民進党から現、元合わせて110人を公認したことだ。これは新党の実態が第二民進党となったことを意味する。安保法制反対のプラカードを掲げて委員会になだれ込んだ連中が、今度は安保法制賛成で入党する。当選すれば再び反対に回って、党を割るのは目に見えている。小池新党の欺瞞(ぎまん)性はプロなら簡単に見抜くが、有権者が見抜くのは時間がかかるが、今回は見抜かれた感じが濃厚だ。
 加えて小池は安倍政権に真っ向から反旗を掲げながら、党首討論では自民党との連立を否定しなかった。こんなご都合主義が通るだろうか。これまでに聞いたことがない。新党を結成するなら当然自分が衆院選に出馬して戦うべきだが、事もあろうに都知事職とかねて選挙戦を戦う。大阪などの地方都市と違って、東京都知事は片手間で出来るものではない。都知事職は失いたくないが、国会には議席を獲得して影響力を行使したいという「欲張り婆さん」の姿勢がありありだ。7割以上が都知事にとどまることを求める都民は、この二股膏薬知事の本質をやっと知る事になった。ショボさの極致のような知事を選んでしまったことに気付き始めたのだ。
 こうした有権者の傾向は世論調査の結果となった現れている。NHKの調査によると政党支持率は自民党が31.2%でダントツで、2位の希望の党は4.8%にとどまった。「希望の党」に期待するかどうかは期待するが36%、期待しないが57%に達した。こうした調査を勘案して、選挙区事情も考慮して筆者は議席数を分析した。その結果自民党270±15,公明党32±3、希望の党55±10,維新9±3,立憲民主党40±5、共産18±3と言う結果が出た。自民党は単独で過半数の233議席に達するのはもちろん、絶対安定多数の261議席も視野に入る。公示前勢力の284も夢ではないかもしれない。この結果小池新党が政権に介入できる要素はなくなった。従って、総選挙は当初から政権交代選挙の色彩が薄れ、安倍政権信任選挙の方向が強くなっている。要するに「小池失速」で、既存の政権や現職候補者に対する 信任・不信任を問う選挙となる傾向を示しているのだ。従って、石破茂を小池が切り崩すような事態には至るまい。石破にしてみても沈む「タヌキの泥舟」に乗る気は当初からない。
 さらに選挙は北朝鮮の核・ミサイル実験の影響が強く反応されたものとなりそうだ。読売新聞の世論調査では、重視したい政策として、「北朝鮮問題など外交や安全保障」を挙げた人が71%で最多となり、景気や雇用64%を抜いた。外交・安全保障が景気や社会保障を上回って最多となるのは異例のことだ。日本人の意識の変化を感じさせる。安倍は今回の選挙を北朝鮮の度重なる核実験や弾道ミサイル発射を踏まえ、「国難突破選挙」と位置づけたが、この判断が利いていることになる。さすがに小池も「リアルな安全保障が必要。北朝鮮の危機が迫る中でどうするのか。同じ方向性を持っていないと、党としての対応が揺れてはまずい」と発言して、安倍政権の方向性を認めざるを得ない状況だ。
 概して小池の演説は貧すれば鈍するで、長屋のおかみさんががなり立てるような調子であり、キンキン声のうるささが先に立つ。まるでどこかの県に昔いた騒音婆さんのようで品がない。自民党は池袋などで小池にぶつけて小泉進次郎を演説させているがこれがうまい。「小池さんに感謝する」と逆説論法で迫っている。「緊張感を与えてくれて有り難う」「希望という言葉を使って真の希望とは何かを考える機会をくれた」とやり返し、「有権者は選挙目当てを見抜いている」と小池ポピュリズムを切っている。このところ敗色濃厚のTBSやテレビ朝日などリベラル民放のトーク番組も、「小泉演説」を取り上げる場面が多い。安倍並みに露出度を稼いでおり、自民党幹事長・二階俊博などどこでないをやっているのか分からない状態だが、かえってこれがプラスに働いている。

◎俳談

◎俳談
【オタマジャクシ】
蝌蚪(かと)入れてペットボトルの黒くなる 東京俳壇入選
 蝌蚪はおたまじゃくし。最近は子どもの自由な遊びが珍しくなった。昔は一日中おたまじゃくし取りやザリガニ釣りに夢中になったものだ。最近森でそんな子にお目にかかった。飲み干したペットボトルにオタマジャクシをいっぱい入れて歩いていた。顔は日に焼けて、たくましさを感じた。掲句はその驚きをそのまま詠んだ。子どものころ川でシジミ取りに夢中になって、Tシャツの端を結んで袋にして、担いで帰ったこともあった。
空蝉(うつせみ)を付ければ泣いて取れば泣く 産経俳壇2席
 空蝉は蟬の脱殻。子どもの仕草を観察すれば俳句の題材には事欠かない。子どもは軟弱に育ててはいけない。

◎総選挙「小池失速」を軸に展開

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◎総選挙「小池失速」を軸に展開
  自公の過半数が見えてきた
 「コイケノミクス」は「小池のミス」に
 どうしてこう予想が当たるかといえば「頭がいいからだ」などというと、うぬぼれになるから、「動物勘が鋭いのだ」と言っておこう。筆者が小池新党について「早くも失速感」と報じたのは3日だ。9日になって読売がやっと追いつき「希望失速」。産経も「期待値に陰り」だそうだ。これくらいの政局は55年もやっているとすぐに読める。今日は公示日だから、22日の開票日までに失速は深まりこそすれ挽回することはないだろう。なぜなら、希望の党には致命的とも言える欠陥があるからだ。それは有権者欺瞞の構図だ。その最たるものは安保法制反対のプラカードをついせんだってまで掲げてデモをしていた革新系衆院議員を安保賛成の“踏み絵”をして入党させて保守新党を形成したという愚挙だ。日本の政治史上に残る前代未聞・驚天動地の数合わせであり、これが多くの国民のひんしゅくを買い始めたのだ。有権者を馬鹿にするのも休み休みにせよと言いたい。
 小池百合子の度しがたい権力欲は恥も外聞もかなぐり捨てて、議席を確保し、何が何でも安倍政権を覆したいという、一種の“民主主義クーデター”ともいえる側面がある。まるで徳川幕藩体制を覆そうとした由井正雪の乱だ。歌舞伎で、お堀の深さを石を投げて測った丸橋忠弥はさしずめ前原忠弥だ。石が底に当たる音から深さを測ったが、今度の堀は深くて音がしないのだ。そこには系統だった政策などなく、あるのは野望と政局のみである。高々と「コイケノミクス」として掲げるその政策の「消費税凍結、原発ゼロ」には、大衆に迎合するポピュリズムのみが存在する。原発ゼロで東京都の電力はまかないきれるのか。消費税凍結で国家の財政は維持出来るのか。小池にとってはそんなことはどうでもよい。議席を取って政権を覆し、自分の息のかかった者を担いで首相にして、裏で政権を牛耳ることだけが真の狙いだ。しかし、「コイケノミクス」はやがて「小池のミス」として嘲笑の対象になるだろう。
 小池の判断ミスはかっての福田赳夫の判断ミスと似ている。再選に臨むに当たって「全国津々浦々で『福田さん引き続きやってくれ』と言う声が満ちている。福田再選は天の声だ」と述べたものだが、予備選に敗退。「天の声にも変な声がたまにはある」とぼやいたものだ。小池も「全国津々浦々」と言う言葉をよく使うが、東京ばかりか地方の方がもっと冷めていることに気付かない。
 おまけに小池は、例えば自民党内反主流の石破茂の選挙区に候補を立てないなど、見え透いた自民党分断作戦も行った。石破にしてみれば悪い感じはしないだろうが、最近では小池の舟が「沈む泥舟」と分かって来て、後ずさりし始めた。石破の出番は自公が過半数割れした場合に、野党からの甘言に乗って自民党を割るケースだが、その気配はみられない。かって自民党を離れて辛酸をなめ、こりごりしたといわれており、慎重だ。田中角栄は中川一郎の立候補を評して「池から飛び跳ねた鯉は地面に落ちて干物になる。鯉の干物など誰も食わない」と述べたものだが、小池の鯉も跳ねまくっているからやがて地面に落ちかねない。
 さすがのテレビのコメンテーター達もリベラル丸出しの伊藤惇夫が最初は小池の立候補の可能性を「78%」と述べていたが、そのうちに「50%」になり、9日には「0%ではない」とまでに変節した。口から出任せのトーク番組の質の低さを如実に物語るものであり、いまや同番組がオオカミ少年となって邪道を歩いていることに視聴者は気付かなければならない。コメンテーターらの口からようやく「負け」の言葉が漏れはじめた。
 こうして大きな流れは「小池失速」を軸に展開しそうな雲行きとなって来ているが、読売の世論調査でもこの数字は如実に表れてきている。衆院比例選の投票先は、自民党32%でトップ。希望の党は13%で6ポイント下がった。重要なことは「下がった」ことなのである。有権者が気付きはじめたことを意味する。立憲民主党が7%で続いた。次いで公明党5%(前回6%)、共産党4%(同5%)、日本維新の会3%(同2%)などの順だ。希望の党に「期待する」は36%で、「期待しない」の58%を下回った。枝野幸男らが結成した立憲民主党に「期待する」は、全体の28%で、「期待しない」が64%に上った。小池が希望の党の代表を務めていることについては、「都知事の仕事に専念すべきだ」が71%(前回62%)に上昇した。朝日の調査もほぼ同様の傾向を示している。
 一方首相・安倍晋三は8日の日本記者クラブとの会見で勝敗ラインを「自公で過半数(233議席)」と設定した。「50議席減が退陣の一つのメドではないか」と問われた安倍は、「過半数を維持すれば、政権を継続していく。世界中そうだ。自公で過半数を追いかけて戦っている」と明確に否定した。これは自公は解散時に323議席あるから、両党で90議席近く減らしても続投できるとの認識を示したものだ。自民党内は政権を維持出来た場合には、議席数にかかわらず、安倍首班で行く流れが大勢だろうと思う。政権を維持したのに首相をひきづり降ろしたケースはない。来年9月の総裁選への動きは出るだろうが、それも獲得した数による。一にかかって政局の安定度は自公の獲得数による。街頭演説や党首討論で安倍は“衝突回避作戦”を展開しているが、大音響でがなり立てて選挙妨害をする左翼勢力の挑発に乗って誤解を生じさせた都議選の二の舞を避ける作戦で、巧妙だ。それにしても選挙妨害を当局が取り締まらないのはおかしい。問題があるなら法改正してでも取り締まるべきだ。

◎小生のブログが1000万を突破

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◎小生のブログが1000万を突破
  毎日が「瓦版狂老人」
 毎日知人に送る「今朝のニュース解説」は時事通信を退職後開始して10年余りとなる。メールと同時に掲載しているブログ「永田町幹竹割り」の総閲覧数累計が1000万を突破した。これにメール送信分や他の掲示板への転載分を加えると総閲覧数は10倍の1億近いのではないかと思われる。ソネットのニュース部門での読者数は6126ブログ中1位を続けている。若い頃から政治部に配属され、以後編集局長で退社するまでニュース一筋の人生であったが、なおも続いている。我ながらよく継続したと思う。
 ニュース評論といっても空想小説の類いと異なり、ファクトを抑えなければならないから、一本の記事を書くのに丸一日かかる。朝からネットのニュースやTVのニュース番組やトークショウなどを見てひっかかるものを全てメモにする。土日は原則書かないが、ニュースの収集を続ける。夕方5時には食事を取って、ビール一缶と焼酎かウイスキーの水割りを一杯飲む。食後電動「乗馬」を15分やり、一時間電気マッサージにかかる。午後7時には床につき、5時間ぐっすり眠る。この方式は田中角栄の仕事のやり方から学んだ。角さんも夜中に起き出して書類を読んだり仕事をするタイプであった。大平正芳の総裁選の時には投票依頼の電話を午前3時から明け方まで北海道から鹿児島まで全国各地の知人にかけたものだ。
 筆者は午前2時頃から執筆にかかり4時頃までには4千字の記事を書き上げる。取っている新聞5紙に目を通し、それから1時間仮眠を取る。原稿を最終チェックして午前7時頃までに送信する。昔1970年代のワシントン特派員時代に、評論家ジャック・アンダーソンが書く政治評論「ワシントン・メリーゴーラウンド」を読んでその読みの深さと裏からの切り口に感動して、いつか真似をしようと心に誓ったものだった。
 年末で77歳になるがまだまだ、政治判断力と洞察力は若い記者などには負けない。1760年から1849年まで生きた葛飾北斎は60を超えて天才の領域に達し、90歳で死ぬまで名作を数多く残している。「神奈川沖浪裏図」は1823年の作だ。小生もこの「画狂老人」の域に達さなければならないと思っている。確かに年を取ると見えないものが見えてくるのだ。縷々(るる)こまごまと、自ら築いた「その日に分かるニュース解説」のノウハウを教えたが、報道機関出身の優秀な政治記者なら誰でも可能だ。しかしほとんどの記者は退社すると疲れ果ててふぬけ老人状態に陥るから「瓦版狂老人」は無理かもな。第一無料奉仕など誰もしない。とばかりに煽る。(*^O^*)

T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」浅野勝人

T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」
安保政策研究会理事長 浅野勝人

東京都議選で自民党が惨敗した後、お目にかかってお昼に天丼食いながら、「都議選の小池百合子は怖かったが、国政選挙の小池は怖くない」と申し上げた私の見解が当たりそうな気配ですね。

都議選の折、多くのマスコミが世論調査、その他の情勢を分析して、自民党は減っても30議席台と踏んでいたのに、T君ご承知の通り、私が20議席そこそこと予測しました。結果は19議席でみんなびっくり仰天でした。
種明かしをしますと、「都民ファースト」が全員当選すると予測して、民進党も減る。共産党が増える。これを総合して逆算すると自民には20議席位しか残らない。結局、「都民ファースト」で落選したのは1人だけだったので、大当たりしたという仕掛け。

都議選で勝利の女神だった小池百合子が、国政選挙で輝くのは無理と推測した理由(わけ)は、
あの方は、どの選挙も「大統領選挙」と勘違いしているのではないか。だから、小池人気が、全国津々浦々、衆議院小選挙区に行き渡り、特に比例区では圧勝して、都議選の再現となる。総理大臣就任も夢ではないと錯覚してしまう。

自民党内では、外交・安保政策に関して右派の論客だったから、時間の経過とともにその地金が滲(にじ)み出る。そうなると、右派の安倍晋三と同質なことが改めてわかってしまうので、「政権選択選挙」という唯一の訴えが売り物にならない。小池を支える膨大な無党派層が失望して離反する。
その証拠に、党公認に際して民進党リベラル派を除外する表現を「全員公認するつもりはさらさらない」と失言して馬脚を現した。

つまりは、安倍自民党と対峙することによって人気を倍増するつもりが、まるで補完勢力と映って当初の意図がくれてしまいました。
だから、出馬の可能性を匂わしていた姿勢から一転して「不出馬」を明言して逃げました。与党をめざして「希望の党」を立ち上げた政党の代表・党首が選挙には出ない。国会の首班指名には加わらないという事例が憲政史上あったでしょうか。どなたか調べて教えて下さい。

これに比べて、安保法制、憲法9条改正に反対する基本姿勢を堅持して筋を通し、自民党との対決を鮮明にしている「立憲民主党」の候補者と「希望の党」への参加を避けて「無所属」で出馬する候補者が、非自民票の受け皿になる可能性が強まります。

T君、安倍自民党の不人気は、君の想像をはるかに超えています。私の周りでも、まさかと思う方が「今回は自民党には投票しない」と明言して驚かされます。
T君も当初は肝を冷やしていたでしょうが、小池百合子のおかげで、野党が「馬糞の川流れ」(政治勢力がバラバラになって求心力を失う様を金丸信らしい表現で言った)となりました。自民党が、近年、厳しく批判されている傲慢な政治姿勢を反省して、国家、国民の平穏と繁栄に真摯に取り組む姿を示せば、情況は好転します。

二階幹事長は、大軍の将ですから、自信を持ってもっとはっきり発言した方がいい。
T君、君から幹事長にアドバイスしたら?
「世の中のために政治家が要(い)る。政治家のために世の中があるのではない」(思いあがるなの意)と明確な小池批判をする。
「国会で戦争法案反対と言っていた人たちが、政党を変わったら賛成という。我が党は有り難いが、有権者の方々がそれを許すだろうか」とはっきり批判して、野党の中では一番強い「希望の党」の票を離散させる。

私は、来週から中国です。11回目になった北京大学での講義。それに北京外国語大学大学院、首都師範大学へ講義にまいります。選挙前に決まっていた日程ですからまいりますが、投票日前には戻ってまいります。
T君、加油! 加油! (元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【見る・聞く・思ふは使わない】
地下鉄の出口夕立真つ盛り 毎日俳談入選
 例外はあるがまず「見る・聞く・思ふ」は言い回しがくどくなる。初心者はどうしても入れたがるが、間違いだ。例えば掲句を<地下鉄の出口を見れば夕立かな>としたら、確実に入選しない。わざわざ「見る」などという言葉はいれる必要がない。入れなくても意味は通ずるからだ。
 例えば<秋の日の煌(きら)めく如き窓辺見る>は<秋の日の煌めく如き窓辺かな>に。
<荒梅雨や全員無事のニュース聞く>は<荒梅雨や全員無事のニュースかな>に。
<あひ傘のうれしと思ふ梅雨の街>は<あひ傘のうれしや梅雨の交差点>にすべきである。要するに「見る・聞く・思ふ」を使うと回りくどくなるのだ。五七五の短詩の中に無駄な言葉は絶対に入れてはならない。あひ傘とは相合い傘のこと。

◎野党分裂で自民が漁夫の利の兆し

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  小池はまるで“野合選挙”
 立憲が意外と健闘か
 安倍政権が泰然自若としているのに対して、野党は小池新党に逆風が吹き始めており、民進党の分裂が液状化現象を生じさせている。民進系支持労組連合の混乱に波及している。公認決定で浮かび上がった希望の党による選挙戦略は、戦略というより行き当たりばったりの「野合選挙」の実態をあらわにしている。野党で堅調なのは苦し紛れに枝野幸男が結成した立憲民主党のみである。しかし、今のところ擁立候補は50人を上回る程度とみられており、リベラル系が主軸となって政権を左右する可能性は少ない。この結果自公連立が政権を維持できる公算が強まっている。
 安倍は野党の体たらくについて「新しいブームからは何も生まれない。政策こそが未来を切り開く。愚直に政策を訴える」と強調している。これは選挙戦の王道を行く姿勢であり、行き当たりばったりで野合を繰り返そうとしている希望などとの違いを鮮明にさせている。安倍の解散戦略は野党にくさびを打ち込み、そのうろたえぶりからいって成功の部類に入りそうだ。
 しかし、注目すべきは枝野の立憲民主党だ。革新であるはずの民進党の大勢が保守の希望の党へと臆面もなくひざまずくなかで、リベラルを屹立させている。泣きの涙で枝野が結成に結びつけたにもかかわらず、リベラル勢力の“核”となりつつあるからだ。リベラル系の希望への逆襲が立憲を軸に始まろうとしているのだ。社会党から連綿と続く左派勢力が西南戦争の西郷隆盛に集まった行き場のない浪人達のごとく、集まりだしたのだ。ツイッターでのフォロワーの数は2日間で10万人に達しており、12万人の自民党に迫る勢いだ。もっともツイッターのフォロワーは政党支持率ではないからそのままの勢いが出るわけではない。立憲は既に候補者を50人近く確保しており、まだ増える可能性がある。これに左翼総本山の共産党が“すり寄り”はじめており、枝野の選挙区埼玉5区の候補を降ろし、エールを送った。逆に同選挙区には希望が刺客を送るから行ってこいではある。しかし、左翼リベラルの結集といっても容易ではない。民進支持母体であった労組連合が共産党との共闘には反対の路線をとり続けているからだ。その連合は政党支持をどうするかで八つ裂きの刑を受けるかのようであり、特定政党は支持できず、結局、希望、立憲、無所属に票が分散する流れだ。
  一方小池の場当たり選挙は佳境に達しているようである。まるで好き嫌いで公認を決めているかのようだ。例えば、自らの都議会の与党勢力である公明党が立つ9選挙区では候補は立てない。都議会与党を維持したいのであり、ここからも小池自身の立候補はないのだろう。また同期当選で仲のよい自民党の鴨下一郎の地盤東京13区には立てない。民進の野田佳彦、岡田克也、安住淳、江田憲司らの選挙区には立てず、選挙後の連携の可能性を残す。そうかと思うと自民党の下村博文、萩生田光一の選挙区には30代の女性候補をぶつける。落下傘候補による空中戦だ。自民党との象徴的選挙に持ち込む戦略だ。この小池の公認作戦には主義主張に基づく整合性などあらばこそであり、なりふり構わず選挙に勝ちたいという「野望」だけが目立つ。小池の希望は9割くらいが議員バッジ欲しさに「議席」にすがりつく節操のなさをあらわにしている面々だ。小池の言葉も「排除の論理でリベラルは入れない」「民進党の全員受け入れなどさらさらない」と、まるでトランプに絶対勝つ秘策を知っているスペードの女王のように権勢をほしいままにしている。小泉進次郎が「小池さんは出ても出なくても無責任。出たら出たで都政を投げ出して無責任。どっちの無責任を取るかということ」と正論を述べたことがよほど口惜しかったと見えて「キャンキャン言っている」とこき下ろした。
  こうして小池には相当な逆風が吹き始めているのだ。さすがの民放のトーク番組も持ち上げてばかりはいなくなった。小池は都知事選や都議選の夢よもう一度とばかりに衆院選に打って出たのであろうが、衆院選で首班指名に誰に投票するかがあいまいなままというのは、政党政治のイロハを知らない。そこには3度目の夢とはほど遠い状況が展開している。
 こうした中で目立つのは自公の落ち着いた選挙戦だ。野党のようなしっちゃかめっちゃかな対応はなく、雑魚が一匹逃げただけで新党問題で動揺は見られない。5日付けの朝日の調査ですら比例区投票先は自民35%、希望12%で立憲、公明が7%だ。この段階で希望との差が大きく出ているのは、もうこのまま与党側に大失言でもない限り終盤戦に向かうということかも知れない、野党の分裂は自民党に漁夫の利をもたらしているのだ。

◎俳談

◎俳壇
【パンパカパーン】
遠足やパンパカパーンと弁当開け 読売俳壇1席
 俳句だって不屈の魂はある。過ぎし春<地震(ない)の子にパンパカパーンと花開く>が句会で1票しか入らなかったことを嘆いた。そして、表現を変えてあちこちの新聞にパンパカパーンを使った俳句を投稿した。そうしたら「超選句能力」のある読売俳壇様で採ってもらえた。森で遠足の少年達の昼餉を見て、思いついたのだ。頭の中に作った俳句を置き、心の「修正モード」を「オン」にしておく。すると“修正案”が向こうから来るから不思議だ。
【矢島渚男選評】遠足の楽しみの昼ごはん。どんなおかずが入っているのかな。中七は子供たちの期待そのままに明るい響き。きっと晴れた日だろう。

◎小池新党に早くも失速感

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◎小池新党に早くも失速感
 野党「細分化」で勢い喪失
 小池は「出ない無責任」を選択
 政界関ヶ原の朝霧が晴れようとしている。両陣営の姿が見え始めた。自公連合軍は徳川軍のように一糸乱れもない布陣だ。ところが野党軍は豊臣方がそうであったように、思惑が割れて動揺を隠しきれないざわめきがある。勝負は開戦前から着きつつあるかのように見える。淀君小池百合子は大阪城にこもって、出馬は100%ない。寄せ集めの西軍は殿ご出馬の馬印もしかと見えない。西軍の枝野幸男守の新党も、大きく形勢を動かす様には見えない。逆に失速感すら台頭している。むしろ西軍を分裂させて細分化して、東軍有利に導いている。その東軍の安倍家康は泰然自若として采配を振ろうとしており、格段の安定感を見せている。司馬遼太郎も息をのむ名文で書き始めたが、この勝負は自公連立政権の勝ちだろう。
 安倍は、決戦が迫る中で小池や枝野が新党結成に走ったことを揶揄(やゆ)して「急いで成功しようとする人は急いで失敗する」 と発言したが、的を射ている。安倍の主張も「如何にして国民の平和な暮らしを守り抜くかの選挙であり、誠実・愚直に戦う」と平易で分かりやすい。野党が分裂、再統合など敵前で右往左往しているなかで、安倍発言は落ち着きと訴求力がある。一方、小池は陣営とりまとめにやっきだ。そもそも小池は自らのカリスマ性を最大の武器として、希望の党を躍進させようとしているが、これはおそらく大誤算だろう。まずTBSやテレビ朝日など「集票能力」のある左傾化民放の様子がおかしい。都知事選や都議選で見せた、「小池仏」礼拝の構図が一変したのだ。礼賛だけでなく批判的な発言をするコメンテーターらを出している。トーク番組も元気がないのだ。「小池知事の出馬の可能性は72%」と意気軒昂だった左翼コメンテータの伊藤惇夫も「5分5分」 と語るに至った。これらのコメンテーターなるもののいい加減さは、自分の発言をくるくる変えても何ら恥じることがないことだ。公平中立などという概念はなく、テレビを使って臆面もなく“陰謀”を企てる連中が多い。小池が立たなければ勝てないことが分かっているから、無理にでも立たせようとしていたのだ。
 民放がこのざまでは「新党」と名がつけば飛びつく有権者の「衆愚」もさすがに今回ばかりは躊躇しそうだ。民進で食っていけなくなった連中が、希望を隠れ蓑にしようとしていることがバレバレだからだ。小池陣営も基本戦略で割れている。前衆院議員若狭勝がNHKで立候補者数について「次の次の選挙で確実に政権交代出来ればよく、233人が必要とは思わない」と、今回は政権交代を目指さない発言をしたのだ。正直に実情を述べたものだろうが、小池は慌てて「宝くじは買わないと当たらない」と発言、訂正に回った。233人擁立を宣言したのだ。この場合若狭の判断は、民進党の難破船から逃げ出した程度の低い連中を抱えるだけでも大変なのに、233人をどうやって集めるかというジレンマを背景にしている。新党からの合流組は130人くらいとしても、あと100人もの“候補”を集めるのは大変だ。小池新党がブームを巻き起こすならそれでもいいが、とてもその勢いはない。一気に小池ブームを作って選挙戦を有利に戦うはずが、逆に失速感のみが目立つ。自民党は敵失を待てばよいような立場に置かれはじめた。衆議院議員・小泉進次郎は35歳にしては急成長しているが、その発言もなかなか聞かせる。「小池さんは出ても出なくても無責任。出たら出たで都政を投げ出して無責任。どっちの無責任を取るかということ」だそうだ。どうやら出ない無責任をとることになるようだ。それにつけても小池は安保法制への賛否を入党の判断基準にするそうだが、民主党(民進党)、共産党、社民党は同法制を「戦争法」と称して反対した。判断基準そのものがおかしいのだ。
 希望の風が吹かない方向が世論調査にも出ている。選挙に関する世論調査は5000人を対象に出来るカネのあるNHKが一番信頼できる。その結果は各党の支持率が、自民党が30.8%、希望の党が5.4%、民進党が3.9%、公明党が3.8%、共産党が3.3%、日本維新の会が1.0%、自由党が0.3%、社民党が0.6%の順だった。この自民30.8%、希望5.4%という数字が物語るものは新党ブームが起きていないということだ。なぜ起きないかといえば、国際情勢の厳しさがまず第一に挙げられる。北朝鮮が狂ったように核・ミサイル実験を繰り返し、国民は戦時中のような防空訓練をしなければならない。この危機的状況下でさすがの有権者も海のものとも山のものとも分からない希望に投票するだろうかということだ。一方で枝野が結成した立憲民主党はリベラル系の前衆院議員10人程度、新顔を含めて80人程度を擁立したいようだ。立憲と共産党を併せて一極と数え、3極の戦いと見る新聞も多いが、褒めすぎだ。野党は細分化の傾向を示しているのであって、せいぜい2.5極の戦いだ。スケールに雲泥の差がある。