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◎トランプ金正恩に核兵器解体を要求へ

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  米朝、首脳会談でギリギリの応酬か
 極東に緊迫の外交シーズン
  複雑怪奇を地で行く北朝鮮情勢の糸をとぎほぐせば、核心は国連制裁で経済的に追い詰められた金正恩が核実験と長距離ミサイル実験を中止するが、完成した核ミサイル攻撃システムを手放すことはしないということで妥協を求めている点に尽きる。日本にとってはとんでもない話で、中距離ミサイルノドン200発を突きつけられ続けることになる。ちょっと筋が違うのではないかということだろう。トランプはさすがに状況を見極めており、金正恩との会談で核兵器の解体を速やかに進めるよう求める。しかし、金正恩がやすやすと応じることはあるまい。会談は双方の極東戦略が激突のコースをたどる様相だ。
 金正恩の軟化路線は20日の労働党総会の発言に集約される。金正恩は核実験と長距離ミサイル実験を中止し核実験場も閉鎖すると述べた。加えて「核弾頭を弾道ミサイルに搭載するという作業が完成していることを考えると大陸間弾道弾の発射実験は必要なくなった」と発言した。もちろん完全非核化に動く文言などはどこにも含まれていなかった。
 トランプの超大国トップとしての最大の欠陥は、こうした事態に単純に反応してしまうことだ。ネットで「北と政界にとって素晴らしいニュースだ。大きな前進だ。会談を楽しみにしている」と諸手を挙げて歓迎した。しかし米国のマスコミの判断はトランプより数段上回る。ニューヨークタイムズ紙は「金正恩発言の最大の疑問は北が核兵器そのものを放棄するかどうかだ。譲歩を引き出すために相手を混乱におとしめる北朝鮮の古くからの戦術の焼き直しに過ぎない」と看破したのだ。トランプは急きょトーンダウンし「アメリカは何も譲歩してはいない。北朝鮮については結論は遠い。うまくいくかも知れないが、うまくいかないかも知れない。時間がたてば分かる」と元に戻った。
今後は「核廃棄」を実現するまで圧力を継続する構えだ。
 一方、ウオールストリート・ジャーナル紙によると、トランプ政権高官は22日、「トランプ氏は過去の過ちを再び犯さないとしているが、これは北朝鮮が核プログラムの解体を大幅に進めない限り、米国は制裁解除など大幅な歩み寄りをしないことを意味している」と述べた。そのうえで「もし北朝鮮が非核化に迅速に動く意志があるのであれば、可能性は無限大だ。あらゆる素晴らしいことが起きるかもしれない」と誘い水を差した。金正恩は21日の発表の中で、核兵器を手放す意向はないことも示唆。中国外務省によれば、正恩氏は習近平国家主席と先月会談を行った際、「平和の実現に向けて段階的かつ歩調を合わせた手段」なら支持すると述べていた。
 もともと北朝鮮の外交は常に「罠」を用意しているとみるべきものだろう。朝鮮戦争は休戦協定の状態が続いており、法的にはまだ継続している。その戦争継続の当事者が「罠」を仕掛けてくることくらいは日常茶飯事ととらえるべきなのだ。過去の歴史を見れば1994年には米大統領クリントンと枠組み合意をしたが、テポドンやムスダンを発射。2005年には6か国協議で経済支援を決めたが、翌年核実験だ。2008年には冷却塔を破壊して見せたが、裏では着々と核兵器製造を進めた。北の指導者には核で世界を欺くという「遺伝子」がしっかりと植え付けられているかのようである。
 こうした北の出方に対してしゃにむに北との関係改善を目指す韓国大統領文在寅は「凍結を当面の目標とし、第二段階として核兵器の完全放棄に持ち込めば良い」として「段階的包括的アプローチ」という“非核二段階構想”の立場を取っている。しかしこの構想の甘さは北が世界外交を展開するにあたって、最大の原動力となる核ミサイルを放棄しうると見ている点であろう。北の「やらずぶったくり路線」を理解していないかのようだ。過去において段階的なアプローチは全て失敗している。
 この点首相・安倍晋三が「今の段階で圧力を解除することはない。見極めなければならない」との立場を表明しているのは正しい。防衛相・小野寺五典も「中距離・短距離の弾道ミサイルの放棄は触れていない。少なくとも核の放棄にも触れていない。これでは不十分だ」と分析した。そのうえで「引き続き最大限の圧力を加え、私どもが求める最終的な大量破壊兵器、核・ミサイルの放棄をめざす姿勢には変わりない」と強調した。この姿勢が今の政府の立場としては最も適切なものであろう。
 今後北東アジアをめぐる情勢はめまぐるしく展開する。まず27日には南北首脳会談が開催される。軍事境界線上の板門店での会談は、次に予定される金委員長とトランプ米大統領の首脳会談のお膳立てをする場となりそうだ。韓国大統領府は声明を出し、朝鮮半島の安定化取り組みへの中国の関与をたたえた。習近平が金正恩を対話路線への転換を説得した可能性が大きいのだ。一方、日本が議長国を務める日中韓3カ国首脳会談については、5月上旬に開催する方向で調整されている。確定すれば、文在寅と中国首相・李克強が初来日となり、日本外交にとって大きな行事となる。同時に日韓、日中の2国間首脳会談もそれぞれ開く見通しだ。
 こうした動きの後6月上旬までには米朝首脳会談が行われる。会談場所はまだ未定だ。また習近平の訪朝、5月26日には首相・安倍晋三の訪露なども予定されている。極東は慌ただしい“外交の季節”の到来だ。
◎俳談
【類想句とは】
 よく似通った句を類想句という。有名な例では
山口誓子の
沖に出て木枯らし帰るところなし
が、池西言水の
凩の果てはありけり海の音
の類想であるというものである。
 言水の句は江戸時代の有名な句であり、言水は俗に「凩の言水」と言われた。誓子はそれを承知の上で作ったものとされている。誓子の句は特攻を暗喩で描いたものとされ、名句中の名句と言ってもよい。いまは特攻は忘れられ、時事詠と離れて解釈されるケースが多い。
 これについて故飯田龍太は「作品が前者をしのいだら問題はない。いわば相撲で兄弟子を負かすようなもの」と断定している。誓子は言水を大きくしのいでいるというのである。
 昔はおおらかだった、芥川龍之介は飯田蛇笏の句を真似たと言って
癆咳(ろうがい)の頬美しや冬帽子
を作ったが、そのモデルの句は
死病得て爪美しき火桶かな
だ。これを類想と言えば類想だらけになるが、むしろヒントにしたと言った方が適切だろう。芭蕉が和歌から「本歌取り」した俳句は数知れぬと言われているが、批判する者は居ない。龍太の言うとおり、モデルの句を越える力量があればよいということだ。
人口に膾炙した芭蕉の晩年の句
此道や行人なしに秋の暮 
を蕪村が  
門を出れば吾も行人秋の暮   
と詠み変えているが、これは類想というより、芭蕉への敬慕の念をあえて芭蕉の俳句を借りて現したものであろう。