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◎安倍はG7で「習近平銀行」の実態を語れ

◎安倍はG7で「習近平銀行」の実態を語れ
  AIIBの独善性を検証する
 アジアインフラ投資銀行(AIIB)参加でG7に亀裂を生じさせたと中国国家主席・習近平の高笑いが聞こえるようだが、その「危うさ」から見ればやがて顔面蒼白の時が訪れるだろう。紛れもなくAIIBは「中華民族の偉大なる復興」を掲げた習の「中国の夢」の具体化であり、やはり2013年に打ち出した海と陸の「シルクロード経済圏」(一帯一路)構想と直結する。しかし裏から見れば国内経済の疲弊を「大風呂敷」で挽回しようとする意図だけが目立つ。中国側は日米間に亀裂を生じさせようと、「別のバスがある」と親中派を通じて日本の参加を働きかけているようだが、首相・安倍晋三は「別のバス」にも乗らない方がよい。むしろ逆に6月のG7では米国とともに西欧諸国の慎重なる対応を働きかけるべきだ。
 そもそも新シルクロード計画は、斬新な構想のように聞こえるが、たまに駱駝が鈴を鳴らして通るような辺境の地を舗装したり、鉄道を通したりしてペイするのかということだ。西アジアや中央アジアの地の果ては、地の果てになるゆえんがあって地の果てになっているのだ。ジャンボ貨物機で極東と欧州の物流は13時間のフライトで結ばれているのであり、現在のように重慶とドイツ・デュイスブルクの1万1000キロを16日間かけて貨物列車で運ぶメリットがどれほどあるかと言うことだ。海路にしても途上国の港湾設備に融資して、中国海軍に“活用”されては、それこそアジア諸国は庇(ひさし)を貸して母家をとられかねない。要するに西欧もアジア諸国も、にわか成金が貸金業に転ずる華やかさに目くらましを食らって、雪崩を打っている側面があるのだ。
 物事には表があれば裏がある。習の時代になって中国経済の停滞は著しく、GDPも公式の数字で7%そこそこ。実態は5%を割っているという説すらある。こうした中で国内の過剰投資がもたらした過剰生産の処理をしなければ、それこそデフォルトの危機すらあり得るとささやかれている。翻ってAIIBの構成を見れば、中国が50%を出資するが、これはアジア開発銀行の米国と日本の出資比率がそれぞれ、15.65%であるのと比べても驚くほどの比率だ。
 出資額が半分で総裁も中国が出すのだから、ガバナンスも含めて、完全に中国が主導権を握ることは火を見るよりも明らかだ。要するに中国の銀行が常習的に行っている、お手盛り融資など訳はないといってもよい。これを中国国内の“過剰生産の処理”に活用し、建築資材、鉄鋼、セメント、設備、運搬車両など過剰在庫を西アジア、中央アジア、東南アジア諸国に輸出する。国内経済の危機を「シルクロード経済圏」で活用して、切り抜けようという、よく言えば深謀遠慮、悪く言えば策略があるといわれるのだ。本質的に中国経済の延命策であることも間違いない。「一帯一路」構想は、海外の投資を引き寄せる甘い蜜なのであるが、その実態は国内が潤うことに比重が置かれている可能性が否定出来ないのだ。この路線が進めばAIIBでは甘い条件で貸付けが安易に行われ、不良債権の山を積むことになりかねないのだ。参加する場合の日本の負担は1800億円から3600億円とまちまちだが、政府の計算ではAIIBが資金繰りで危機的状態の陥った場合の分担は1兆円に達する見込みであり、政府筋は「とても付き合えない」と漏らしている。
 英国など欧州勢の参加により、そのノウハウが働き、中国の独善的な運営は難しくなると言う説もあるが、習近平の思惑は米欧日本などが確立した世界の金融秩序にくさびを打ち込むことにあり、世界金融での覇権確立が狙いだ。結局は中国ペースで機能することは避けられないだろう。こうした中国の投げたボールに、例によって日本国内は泡を食らってうろたえている。とりわけ親中派に「バスに乗り遅れるな」論が強い。その筆頭格が元首相・福田康夫だ。福田は「先進国として拒否する理由はない。拒否すれば途上国いじめになる。基本的には賛成せざるを得ない案件」ともろ手を挙げて賛成している。新聞論調も親中派の朝日が「公正な運営が担保されるなら参加も選択肢」、毎日が「日本の提案が反映されるよう中から発言を」といずれも参加論。これに対して読売は「国際金融秩序に責任を持つ日米が参加を見送ったのは適切な判断」、産経は「国際金融秩序を壊す狙いがあり参加見送りは妥当」だ。真っ向から割れている。
 ここは大蔵省アジア通貨室長を務めた衆院議員(民主党)の岸本周平
の主張が最も説得力がある。岸本は「AIIBに参加したからと言って、ビジネスチャンスがにわかに増大するものでもない。むしろ、日本の企業は国際金融銀行(JBIC)を中心に日本の民間銀行とともに、アジアに打って出る方がしがらみがなくて良い」と述べている。このあたりが最も冷静で妥当な見方だろう。参加派はことあるごとに「参加しなければ、アジアで必要とされるインフラ投資約800兆円規模の新興市場が遠のく」などと主張するが、AIIBに参加したからと言って中国がおいしい蜜を山分けしてくれると思うのが甘い。これまで通り独自に800兆円の市場を開拓すればよいのだ。800兆円は逃げては行かない。有利な方に付くのだ。
 安倍は6月のサミットに臨むに当たり、米国と協調して西欧主要国に「習近平銀行」の実態を伝え、少なくとも既存の国際金融機関との協調路線の必用を説くべきであろう。安全保障で中国の膨張主義に直面している日本の立場を堂々と主張すべきである。