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◎安倍はひしめく重要日程で成果を


 ◎安倍はひしめく重要日程で成果を
  任期内解散も視野に入れよ
    改憲は合区、非常事態を突破口に
  自民党総裁選は今は盛りの横綱に小結がかかったようなもので、勝負は初めからついていた。総裁・安倍晋三が石破茂の倍以上553票を獲得し、議員票では82%に達したたことは、今後の政権運営にとって紛れもない安定材料であり、内政・外交に亘る安倍路線に何ら支障は生じない。20日で2461日目を迎えた安倍は2021年9月までの3年の任期中に伊藤博文の2720日、佐藤栄作の2798日、桂太郎の2886日を越え史上最長の政権となる。安倍を支持した政調会長・岸田文男がポスト安倍の最有力候補となり、たてつく石破は今回の254票は限界だろう。岸田が出馬したら安倍支持票の大勢は岸田に向かうからだ。
 総裁選は党員・党友による地方票と合わせて開票された結果、安倍が69%にあたる553票、石破は254票となった。安倍はほとんどの派閥の支持を集め、国会議員票(402票)では8割を超える329票に達した。その一方、地方票(405票)では224票と伸び悩みを見せた。事務総長甘利明が55%と予想していたが、55.3%で辛うじてクリアした。
  安倍の勝因は何と言っても国会議員の大半の支持を得る流れを5年半の政権運営で定着させ、それによって党員票も掘り起こした結果であろう。地方票は従来からポピュリズムに流れる傾向があり、石破の「善戦」は、政治判断力が未熟な地方党員には石破の存在が大きく映った結果であろう。
 常に反安倍傾向の強いテレビ朝日、TBSなど民放番組は、悔し紛れの論評が多かった。コメンテーターが「終わりの決まったリーダーは求心力が弱くなる」としたり顔で述べていたが、相変わらずの素人の淺読みだ。民間会社でも3年もの任期がある社長が軽んじられることはない。経営権と人事権を握っているから社員は従来同様に従うのだ。安倍も毎年改造して引き締め、3年の任期中での解散を断行すべきだろう。勝てば中曽根が党規約改正によって総裁任期を1年延長した例もあり、延長してもおかしいことではあるまい。
   しかし、今後の政治日程を見れば、政局にうつつを抜かしているときは終わった。重要政治日程がひしめいている。まず来週には日米首脳会談があるし内閣改造も想定内だ。安倍は25日には国連総会出席を契機にトランプとの首脳会談を行う方向で日程を調整している。欧州、中国に黒字削減で厳しい要求を繰り返しきたトランプが、安倍と仲が良いからといって日本だけ例外にする可能性は少ない。経済再生担当相茂木敏充が、米通商代表部(USTR)代表ライトハイザーとの21日の閣僚協議でどこまで事前調整できるかがカギだ。安倍は国連総会から帰国後10月にも、内閣改造に着手し、安倍改造内閣を発足させる方向だ。副総理・麻生太郎、幹事長・二階俊博、官房長官・菅義偉は続投となりそうだ。石破派からも人材を閣僚などに起用して党内融和を取り戻すことが必要だろう。小泉進次郎は、安倍批判が目立ちすぎた。そろそろ入閣待機児童だが、閣内不一致を招く危険がある。
 30日には沖縄県知事選がある。安倍としては与党候補を勝利に導き、普天間基地の辺野古への移転を推進したい考えだろう。訪中も重要テーマだ。安倍は12日、訪問先のウラジオストクで、中国国家主席の習近平と会談、10月の訪中に向けて調整することで一致した。10月23日が平和友好条約発効40年となるため、これに合わせて訪中することになろう。安倍は来年6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた習の来日を想定しているようだ。
 改憲問題も安倍政権の重要テーマだ。10月26日にも招集する臨時国会で論戦の火ぶたが切られる。安倍は「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と、秋の臨時国会への自民党改憲案提出を明言している。今後、改憲論議を加速させる構えだ。しかし、各種世論調査では国民の間に改憲志向が生じていない。共同の調査によると、秋の臨時国会に改憲案を提出したいとする安倍の提案に「反対」が49%で、「賛成」の36.7%を12.3ポイント上回った。日経の調査はもっと厳しく、「反対」が73%で「賛成」の17%を大きく上回っている。国民の間には改憲イコール9条という認識が強く、改憲内容をどうするかによって変わってくる。改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。改憲アレルギーを除去するためには9条を後回しにして、石破の主張するように、参院選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを手始めに考えるのも良いかも知れない。
 
◎俳談
【裏を詠む】
 「裏を読む」と言えば筆者の仕事の政局原稿のようだが、「詠む」と書けば俳句のこととなる。物事の裏には真実が隠されているが、俳句でも表の現象だけにとらわれずに裏を詠むのも一手だ。永井荷風の作といわれる「四畳半襖の下張」という春本は、かつて裁判にもなり有名だが、昔は衾や屏風の下張りに良質の和紙の古文書を張ったものだ。荷風は浅草の歓楽街や玉の井の私娼街を好み、そんな成果が実ったのか、1937年『濹東綺譚』を朝日新聞に連載、好評を得た。人情の裏に目が届く文豪だ。俳句もうまく
葉桜や人に知られぬ昼遊び   
など玉の井を詠んだとみられる句も多い。さて本題の「裏を詠む」だが荷風は
羽子板や裏絵さびしき夜の梅
と詠んだ。羽子板の表の豪華絢爛に比べて裏絵は寂しいと言っているのだが、これは人生にも通ずる。玉の井の女性を詠んだと思えば哀しさも一段と増す。夜の梅が趣を深くする。 
 昔浅草の演芸場の楽屋を見せてもらったことがあった。
楽屋裏女形(おやま)寂しき咳漏らす 産経俳壇入選
寒夕焼はなにか哀しさが伴うが、後ろを見ればもっと哀しい。
ふりむけば東は哀し寒夕焼 産経俳壇入選
 落語に「裏は花色木綿」があるが、江戸っ子は裏地を大事にした。
江戸っ子の裏地に凝れり秋袷(あわせ)  杉の子
袷は夏の季語だが、秋袷は裏地をつけて仕立てる。俳句も裏地が大事なテーマになり得る。

◎安倍3選につけいる隙がないー自民総裁選

◎安倍3選につけいる隙がないー自民総裁選
   200票超えないと石破は沈没
 荒ぶるトランプをどうなだめるかが最初の課題
 政局が自民党総裁選を軸に動き始めた。総裁・安倍晋三が20日に再選される方向は間違いないが、水銀柱の下降と反比例するかのようにボルテージが上がりはじめた。対立候補石破茂派の農水相斎藤健が「安倍陣営から石場さんを応援するなら辞表を書いてやれと言われた」と「圧力」を暴露。安倍は石破とのテレビ党論で「あるはずはない。そういう人がいるのであれば名前を言ってもらいたい」全面否定したが、石破は「被害者に名乗り出よというのは財務相のセクハラ疑惑に似ている」とかみついた。自民党幹部らが「まあまあ」とおさめたが、近頃にない“茶番”が見られて、茶の間は喜んだ。
 それでは総裁選の展開を予想すると、石破にとっては200票を上回るかどうかが今後の展望が開けるかの分岐点となる。総裁選は議員票405票と地方票405票の合計810票の奪い合いとなる。安倍の圧勝は決まっているが、得票によって政治的効果に大きな違いが生ずる。安倍は議員票では80%350票を突破する勢いであり、石破は自派と竹下派を加えて50票前後がよいところだろう。地方票で安倍は、70%突破を目指すことになる。少なくとも国会議員票と地方票の合計は70%に達したい考えだ。安倍が70%をとれなければ石破に200票獲得を許すことになる。安倍が55%を下回った場合は石破が250票を上回り今後に存在感を示すと言って良い。従って焦点はまず石破の200票超えが実現するかどうかだ。しかし、石破人気が沸くにはほど遠く、超えなければ石破は政治的に大打撃を受ける。
 地方票の動向も最大の見所だ。6年前の総裁選で石破は55%を獲得している。安倍選対事務総長の甘利明が「55%を超えたい」という理由はここにある。しかしこのパーセントは安倍がまだ首相になっていない時点であり、首相・総裁としての存在感を示している現在ではラインを低く設定しすぎだろう。議員票で80%取っておきながら、地方票で55%そこそこでは、永田町と一般党員との乖離(かいり)が目立つことになる。
 投票結果がどうあれ総裁選後の内閣改造はあるのかが焦点となる。 安倍は16日のNHK番組で「来年は皇位の継承もあり、G20(主要20カ国・地域首脳会議)と、その先に東京五輪・パラリンピックがある。しっかりした人材を登用したい」と述べ、3選を果たした場合、内閣改造・党役員人事を行う方針を表明した。人事をほのめかされては入閣候補らの動きは当然安倍に向かう。巧妙なる“一本釣り”だ。
 首相の信任にとって最も重要なポイントは景気の動向だが、安倍の就任以来戦後まれにみる好景気が継続しており、石破はつけいる隙がない。昨年末には、安倍が首相に就任した2012年12月に始まった景気回復局面が高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さとなったことが確定した。今の景気回復が2019年1月まで続けば、02年2月から73カ月間続いた戦後最長の景気回復を抜く。戦後最長の景気を維持しようとする首相を降ろそうとすれば、降ろす方が“悪人”となる。石破の人相はどうみても良いとは言えず損している。
 一方安倍の地球儀俯瞰外交は、歴代首相の中でももっとも活発であり、これもつけいる隙がない。同外交は安全保障と経済の両面から戦略的見地に立って推進している。その「積極的平和主義」路線は「一国平和主義」から脱して、世界平和を俯瞰して、必要ならば自衛隊の活用を含め貢献する形だ。しかし難題は日米関係だ。トランプは、中国からの輸入品すべてに制裁関税を課す可能性に再び言及した。3弾の関税発動を24日にも最終判断するが、早くも「第4弾」をちらつかせている。トランプの対中関税攻撃はとどまるところを見せない。中国も対抗措置を取っており、貿易戦争がさらに激しくなる危険をはらむ。日本も対岸の火災視できない。中国で製品を作って対米輸出している日本企業も多いし、トランプは例外を認めない姿勢だ。この“荒ぶる”トランプをどうなだめるかは、安倍とトランプの個人的な関係が重要となるだろう。日米両国は首脳会談を9月25日に米国で行う方向で調整に入った。米ニューヨークでの国連総会に首相が出席するのに合わせて開くが、これまでにない難問を抱え、世界が注視する会談となりそうだ。
 ◎俳談
【人間観察句】
俳句にするには人間ほど面白い対象はない。人のしぐさや、習癖などを観察すれば一句をものにできる。
指確(しか)と曲げてシンクロスイミング 東京俳壇二席
シンクロナイズドスイミングで女子選手が水中から突き出すつま先を観察した。指が合わさって、しっかりと内向きに曲がっている。
小児科の老医叱りてあたたかし 俳句四季入選
町に昔老いた小児科医が居た。母親たちが熱の子を抱いて駈け込むと深夜でも診療してくれた。母親を慈父のような優しさで叱った。
死んだときには長い行列ができた。
雪飛礫(つぶて)うけしは好かれゐる証拠 月刊俳句四季入選
学校の庭で雪合戦をすると、みよちゃんから雪飛礫がとんでくる。きっとみよちゃんはボクが好きなんだとほくそ笑む。
鷹匠の鷹の眼をして老ひにけり 日経俳壇一席
鷹匠が鷹を操るところを公園で実演したが、その鷹匠の目は鷹の眼のように鋭く遠くを見ていた。

◎党員・党友票でも安倍が優勢

◎党員・党友票でも安倍が優勢
  石破「正直・公正」撤回でつまずく
 次期首相を狙う以上、安倍政治の欠陥をつき、自らの主張を鮮明にすべきだと思うが、石破の10日の発言からはそれがうかがえなかった。むしろ主張があいまいで「挑戦の限界」すら感ずる立ち会い演説会であった。肝心の改憲論にしても自衛隊条項新設の姿勢を鮮明にさせた首相・安倍晋三に対して、石破茂は参院選の合区解消など緊急性の薄い問題を取り上げ9条問題の本質に迫ることを避けた。相次ぐ災害など緊急事態を前にして、挑戦者が首相交代という“政争” ばかりにうつつを抜かせない現状を鮮明にさせた演説会であった。
 首相の座に挑戦する政治姿勢について石破は「なにものも恐れずただ国民のみを恐れて戦っていく」と意気込みを述べたが、当初の「正直・公正」をキャッチコピーとして打ち出すことには陣営内で個人攻撃に対する異論が生じ、結局採用を避けた。安倍のどこが不正直でどこが不公平なのかは指摘しにくく、もともとこのコピーには無理があり、最初からつまずいた形だ。
 安倍の「現職がいるのに総裁選に出るというのは現職にやめろと言うのと同じだ」という主張に対しても、石破からは明確な理由の説明がなかった。石破の「政治の信頼を取り戻す」と言う発言からは、意気込みばかりが先行して、具体策に欠ける姿勢が鮮明になるだけだった。石破は記者会見で「安定した政権運営は特筆すべきだ」と安倍政権をたたえたが、賞賛しながら立候補という矛盾は総裁選の歴史から見ても珍しい。
 焦点の憲法改正について、安倍は「あと3年間でチャレンジしたい」と、任期中の9条改正に意欲を表明。これに対し、石破は「丁寧に説明していかないといけない」と拙速な動きをけん制、首相との対立軸を明確にした。改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。石破は従来「9条改正が緊急性があるとは考えていない。9条改正は国民の理解を得て行うべきであり、スケジュールありきで行うべきではない」との立場である。しかし、安倍は「いよいよ憲法改正に取り組むときがきた。自衛隊が憲法違反ではないと言いきることができる憲法学者はわずか2割に過ぎない。自衛隊員が誇りを持って任務をまっとうできる環境を作るのは政治家の使命だ」と9条の改正に踏み込んでおり、石破の姿勢とは異なる。憲法改正をめぐって、安倍が意欲を示す「自衛隊の明記」について、石破は、かねてから「緊急性があるとは思わない」と指摘している。
 石破は「憲法改正は必要なもの急ぐものから取り組むべきだ」として参院選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを「喫緊の課題」とした。石破は従来から9条改正について「国民の理解を得て世に問うべきだ。理解なき改正をスケジュールありきで行うべきではない」と、その緊急性を否定している。しかし、9条改正は自民党の結党以来の党是であり、改憲する以上は9条に取り組むべきであろう。
石破が主張している「防災省」の設置についても、安倍は「防災省を作っても、自衛隊や海上保安庁、厚生労働省を動かすには総理大臣が指示しなければならない。そこをどう考えるかだ」と指摘するとともに、「スピーディに政府を糾合できるのは首相だけだ」と屋上屋を重ねることに否定的な考えを示した。
 総裁選の進展状況は、まず国会議員票で安倍が石破を圧倒的にリードしている。選挙は議員票405票と地方票405票で争われる。安倍陣営には党内7派閥中、安倍の出身である細田派など5派と竹下派の一部が参加。国会議員405人の85%は安倍支持に回るとみられている。
  一方、石破に接近しているのは参院竹下派。尾辻秀久元参院副議長が選対本部長として旗振り役を演ずる。尾辻は「武士道を真ん中に据え、正々堂々、真正面から戦おう」と宣言しているが、広がりが見られないようだ。一方石破が唯一活路を見出そうとしている地方党員・党友票についても首相が先行しているとみられている。6年前は石破を大きく下回ったが、今回は完勝を目指して安倍は47都道府県のうち7割超の地方議員と面会するなど先行している。安倍選対の事務総長を務める元経済再生担当相甘利明は10日、党員・党友票について「6年前に石破茂元幹事長が取った得票率は超えたい」と述べ、55%以上の得票率を目指す考えを示している。安倍の圧勝は動かない情勢だ。
◎俳談
【セルフィー俳句】
 米国では自分の写真を撮ることを称してセルフィーと言う。最近使われ出した言葉だ。画家もよく自画像を描くがゴッホは、まるで私小説を書くように何枚も描いている。耳を切った後の顔は天才の狂気が凝縮されてすさまじい。自分をモデルにするのは手っ取り早いし、モデルを雇うカネのない貧乏画家にとっては格好のモデルだ。写真も同様で、近ごろは自分の表情を見ながら撮れるから便利だ。一方で俳句も材料に困ったら自分を観察して作ってみるのもよい。細見綾子は
きさらぎが眉のあたりに来る如し 
と詠んだ。鏡の前で化粧をしながら、きさらぎを感じたのであろう。それも「眉のあたり」とは言い得て妙。岡本差知子は
頓服の首反らすとき紫木蓮
と詠んだが、これは鏡を見ていない。庭の紫木蓮に目が行ったのだ。病気の治癒(ちゆ)を暗喩(あんゆ)で示している。対象は何も鏡の自分だけではない。差知子は
子に呼ばれゐつつ夕べの葱を切る
と詠んだ。夕飯の支度で猫の手も借りたいが、また子が「お母さん」と呼んでいる。背景には幸福な自分の姿が映る。
芭蕉には 
酔うて寝ん撫子(なでしこ)咲ける石の上
がある。時には李白、杜甫のごとく深酒をして撫子が涼しげに咲く庭で寝転ぼうというのだ。
夜長に退屈で鏡を見た。
ぬぬぬぬと写楽顔する夜長かな
自分で言うのも何だが結構いい男だ。
毎日が自由の刑や懐手 日経入選
自由もありすぎると刑罰を食らったような感じになる。

◎トランプ暴露本の波紋広がる

◎トランプ暴露本の波紋広がる
  マティス国防長官「トランプは、小学5,6年生」
  ワシントンポストの著名記者ボブ・ウッドワードが、短気で予測不可能なトランプを制御しようと苦闘する米政府高官の実態を暴露した。11日に出版される「Fear(恐怖)」は、米政府高官らの生々しいトランプ批判を報じている。ウオーターゲート事件以来の内部告発である。内容はトランプの愚かさを告発しているが、一種の“舌禍事件”であり、政権にとってはイメージダウンになっても致命傷にはなるまい。
 ウッドワードは74歳になるが、ウオーターゲート事件でカール・バーンスタイン記者と共に内部告発者“デイープスロート”から数々のスクープを掲載、ニクソンを退陣に追い込んだ。筆者はワシントンポスト紙が販売になる午前零時過ぎにワシントンの街角で購入、両記者の署名入りの特ダネ記事を度々転電したものだ。
  「Fear(恐怖)」の抜粋を報じたウオールストリートジャーナル紙などによると、トランプ側近らが、いかにトランプを軽蔑しているかが分かる。抜粋はまずトランプが、今年1月の国家安全保障会議(NSC)で、在韓米軍の常駐に関し「あの地域にどうして軍事資源を投入する必要があるのだ」と疑問を提起。これに対してマティス国防長官は「我々は第3次世界大戦を防ぐためにやっている」と米軍のプレゼンスの重要性を説いたが、トランプの退席後、側近に「行動も理解力も、まるで小学5年生か6年生だ」と漏らしたという。この席でトランプはあきれたことに「我々は愚かなことをしなければ、もっと金持ちになれる」など発言して、不満気であったという。「金持ち」になることが政権運営の尺度であるとは恐れ入った。
 トランプはダンフォード統合作戦本部長に対して北朝鮮への先制攻撃計画を策定するよう指示するという、驚くべき行動もとった。 政権発足当時から問題になったロシア疑惑に関しても、マーラー特別検察官の事情聴取を想定して弁護士と打ち合わせたが、事実認識が全くなく、作り上げでお茶を濁そうとして、弁護士をあきれさせた。
 こうしたトランプについて、「Fear(恐怖)」は、トランプの側近や閣僚からも不満の声が漏れ聞こえるようになっているという。大統領首席補佐官のジョン・ケリーまでがトランプを「ばか」「錯乱している」「かれに何かを理解させるのは無理」と述べたという。これについてケリーは声明で、自身がトランプ氏をばか呼ばわりしていたというのは事実ではないと打ち消した。「トランプ氏との関係は強固で率直に何でも言い合える」とも述べ、不和説の打ち消しに懸命になっている。トランプも4日のツイッターで「Fear(恐怖)の証言は嘘ばかりで国民をだますものだ」と憤りをあらわにした。
 この舌禍事件はトランプ政権の裏側を余すことなく伝えていて興味深いが、その本質はニクソン政権が倒れたウオーターゲート事件とは天地の違いがある。ウオーターゲート事件は1972年6月17日にワシントンD.C.の民主党本部で起きた盗聴侵入事件に始まったアメリカの一大政治スキャンダルである。盗聴、侵入、司法妨害、証拠隠滅、特別検察官解任、大統領弾劾発議、大統領辞任と続いたが、盗聴、侵入は犯罪であり、今回の側近の不平不満とは性格を異にする。久しぶりに名前が登場したウッドワードも、老記者の健在ぶりを示したが、本人が「この本で政権は終わる」と予言するほど簡単には政権は倒れまい。ただ2か月後に控えた議会の中間選挙には民主党が下院で過半数を取る可能性が出てきており、そうなればトランプの政権運営は苦しくなる。
◎俳談
【オノマトペ】  
ざつざつとバターを塗りて立夏かな 産経俳壇一席
擬音語、擬態語のことをオノマトペという。作句に行き詰まったときはそのオノマトペ辞典を繰るとヒントが出てくる。オノマトペ俳句の名手は秋元不死男だろう。
鳥わたるこきこきこきと罐切れば
へろへろとワンタンすするクリスマス
寒卵コツと割る聖女学院
にんまりと蜂は死ぬべし雪催
石田波郷も
百日紅ごくごく水を呑むばかり
飯田蛇笏
をりとりてはらりとおもきすすきかな
それぞれに達人は趣の深い俳句を作っている。オノマトペ俳句はまず言葉ありきで作句するとよい。小学館の「日本語オノマトペ辞典」などをぱらりぱらりとめくっていると、俳句のできそうなオノマトペが出てくる。ある日パンパカパーンに巡り会った。辞典には「ファンファーレの音、晴れがましいさま」などと書いてある。では一句というわけで
遠足やパンパかパーンと弁当開け 読売俳壇一席
最近では「ゆるゆる」を発見。
さて猫とゆるゆるしよう夏衣
をものにした。
昔、背広を注文したとき生地を切る音がさくさくと聞こえた。
さくさくと羅紗切る音や春隣 毎日俳壇三席
房総に卯波を見物に行った。
老夫婦よつちらよつちら卯波見る
といった具合だ。オノマトペ俳句はなぜか楽しい。

◎石破立候補は“消化試合”か

◎石破立候補は“消化試合”か
  3年後には「岸田の壁」
 「我が胸の燃ゆる思ひにくらぶれば煙はうすし桜島山」ー首相・安倍晋三の桜島を背景にした出馬表明を聞いて、筑前(現在の福岡県)の勤王志士・平野国臣が詠んだの短歌を思い起こした。安倍が意図したかどうかは別として、薩長同盟が明治維新という歴史の舞台を回転させたことを意識するかのように、激動期の難関に立ち向かう政治姿勢を鮮明にさせたのだ。日々水銀柱の高止まりに連動するかのように安倍批判を繰り返している石破茂に対して頂門の一針を打ち込んだ形でもある。今後9月20日の総裁選に向けてボルテージは高まる一方となった。
 安倍の26日の演説は、総じて「格調」を重視したかのようであった。堰を切ったように「まさに日本は大きな歴史の転換点を迎える。今こそ日本のあすを切り開く時だ。平成のその先の時代に向けて、新たな国造りを進めていく。その先頭に立つ決意だ」と3選への決意を鮮明にさせた。その背景には自民党国会議員の大勢と、地方票の多くが安倍に向かうとの自信があるようだ。
 既に固まっている議員票は自派の細田派(94)を筆頭に麻生派(59)、岸田派(48)二階派(44)衆院竹下派(34)をほぼ確保。さらに73人いる無派閥へと浸食しつつある。今回は議員票405票、地方票405票合計810票の争奪戦だ。前回12年の総裁選では石破に地方票で大差を付けられたことから、安倍は夏休み返上で地方行脚を続けている。しかし地方票が前回のような石破支持に回るかと言えば、そうではあるまい。地方票は議員票に連動する傾向が強いからだ。前回石破に地方票が流れたのは安倍が首相になる前であったからだ。現職の総理総裁は、油断しなければ地方票の出方を大きく左右させるだろう。総裁選後足を引っ張られないためにも最低でも半分以上は取る必要がある。
 これに対して石破は自派20と反安倍に動く元参院議員会長・青木幹雄の支援を得て参院竹下派の大勢の支持を得つつある。しかし、議員票は不満分子を含めてもせいぜい50票弱を獲得するする方向にとどまるものとみられる。石破は愛知県での講演で「自由闊達(かったつ)に議論する自民党を取り戻さなければいけない」と首相の党運営を批判した。
 この石破の置かれた立場を分析すれば将来的な展望がなかなか開けないことに尽きる。なぜならポスト安倍の本命は岸田と受け止めるのが党内常識であるからだ。岸田が今回の総裁選に立候補しなかったのは3年待てば安倍支持グループの支持を得られるという計算がある。従って今後安倍が3年、岸田が2期6年やった場合、10年近く石破政権は実現しないことになる。立ちはだかる「岸田の壁」は今後ことあるごとに石破を悩ますだろう。石破派幹部は佐藤3選阻止に立候補した三木武夫が、田中角栄の後政権についた例を指摘するが、田中の場合はロッキード疑惑に巻き込まれて短期政権にとどまったのであり、慎重な岸田が高転びに転ぶ可能性は少ない。
 石破は憲法改正でも安倍と異なる路線を歩んでいる。焦点の憲法9条改正で、戦力不保持を定義した2項の扱いをめぐって対立が先鋭化しているのだ。石破は9条改正で2項の削除を主張しているのに対して安倍は2項を維持した上で自衛隊の合憲を明確化させる方針だ。「憲法改正に取り組むべきときを迎えている」とする安倍は、年内に自民党の改憲案をまとめ、来年の通常国会で発議する図式を描いていると言われる。夏の参院選挙に合わせた国民投票構想があるが、まだ流動性がある。
 いずれにしても、今回の総裁選は野球で優勝チームが確定してから行う“消化試合”のような色彩が濃厚である。なぜなら例えば石破が地方票の半分を確保しても安倍が810票の過半数を確保する流れに変化は生じないからだ。石破が得をしていることと言えば、軽佻(けいちょう)浮薄な民放テレビ番組が、まともな対立候補として取り上げ、面白おかしくはやし立てることしかない。世論調査で石破支持が安倍を上回るケースがある理由は、民放番組にある。安倍陣営は気にする必要はない。石破はなんとかしてテレビ討論を実現したいようだが、軽々に応ずる必要はない。石破を実体以上に大きく見せてしまう。やるなら両者が日本記者クラブと会見して、それをテレビが中継すれば良い。
 ◎俳談
【蚊,蚤(のみ),蠅】
頼朝の鎌倉の蚊をぽんと打つ 産経俳壇入選
 小林一茶の虫好きは極めて興味深い。とりわけ人から憎まれている蚊,蚤,蠅を多く詠んでいる。生まれ育った環境を反映してのことであろう。小さな虫たちを慈(いつく)しむ視点があるが、また蚊,蚤,蠅に托して自らの境涯を詠んだ句も多い。
通し給へ蚊蠅の如き僧一人
も、恐らく関所を通るときに作ったものであろう。有名な
やれ打つな蝿が手をすり足をする
も、観察句であると同時に、「世の人よハエのような自分を打ってくれるな」と言っているとも受け止められる。
一茶の昆虫を詠んだ句は、ある研究によると、蝶299,螢246,蚊165,蚤106,蠅97,蝉94の順だという。総じてユーモアがある。
昼の蚊やだまりこくつてうしろから 
あたりはまさに蚊の本質を突いている。蚤の句は
ふくれ蚤腹ごなしかや木にのぼる
があるが、よく観察しているものである。
蚊柱やこんな家でもあればこそ
は自嘲(じちょう)が興味深い。
それでは筆者も
「を」はをんな座れる姿蚊遣香 読売俳壇入選
文字の形から正座する女性を連想した。

◎首相、「改憲」軸に政局運営へ

◎首相、「改憲」軸に政局運営へ
  求心力維持し、来年発議の構え
 総裁3選後をにらんで、自民党総裁・安倍晋三が12日、憲法改正戦略を一層鮮明にした。改憲案の「次の国会提出」を明言したのだ。安倍の5年半を超えた政権では経済は長期にわたり景気を維持し、外交安保でも積極路線で日本の存在感を高めており、大きな失政もない。自民党内は3選で政権を継続させることに依存も少ない。9月の総裁選は、石破茂が立候補しても安倍の圧勝となる方向は事実上確定しており、求心力は「改憲」軸に維持されよう。
 新聞や民放はただ一人の対立候補石破が安倍総裁との一騎打ちになるとはやし立てるが、「一騎打ち」とは 敵味方ともに1騎ずつで勝負を争うことである。結果としてそうなったにしても彼我の力量の差は歴然としており、アリが巨像に向かう事を一騎打ちとは言うまい。なぜアリ対巨像かといえば、まず自民党内の議員勢力に雲泥の差がある。安倍支持は自派の細田派(94人)を筆頭に、麻生派59人、岸田派48人、二階派44人、石原派12人と圧倒している。石破支持は同派の20人と参院竹下派の21人程度に過ぎない。前回安倍が大敗した地方票も、安倍自身の地方行脚で基礎を固めており、支持も広がっている。陳情一つとっても石破では話が通じないからだ。今回の総裁選は、まるでプロスポーツの“消化試合”の様相だ。
 長期政権はその求心力をいかに維持するかが最大の問題となる。7年半続いた佐藤栄作政権は「沖縄返還なくして選後は終わらない」をキャッチフレーズに求心力を維持した。安倍の叔父の佐藤は72年5月の返還実現を見て、同年7月に退陣している。安倍はここに来て自民党結党以来の悲願である憲法改正を推し進める姿勢を鮮明にしている。12日の講演で「憲法改正は全ての自民党員の悲願であり、その責任を果たして行かなければならない。いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と改憲発議への姿勢を明確に打ち出した。改正の焦点は「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」という9条2項だ。まぎれおなく羹(あつもの)に懲りた米占領軍の影響下にある条項だが、独立国の常識としてまさに噴飯物の内容を構成しているといえる。
 自民党は今年の春に戦力不保持を定めた9条2項を維持した上で、「9条の2」を新設して自衛隊を明記する案を固めた。これは安倍のかねてからの主張に沿ったものだ。安倍は2項を維持した上で、自衛隊の合憲を明確にするとしている。自衛隊を憲法に明記して古色蒼然たる違憲論争に終止符を打とうとするものだ。国内の違憲論争に決着を付ける意味は大きく、世界の標準に合致することになる。これに対して石破は「2項を削除して自衛隊の保持を明記し、『通常の軍隊』と位置づける」としており、首相と「維持と削除」で決定的な差がある。石破の削除案には党内右派の一定の支持はあるが、首相案の方の支持が大勢の流れとなっている。加えて大規模災害時などに政府による国民の生命・財産の保護義務を明確にする緊急事態条項も創設される方向だ。
 自民党が総裁選での最大の焦点に改憲問題をテーマとするケースは珍しい。これは自民、日本維新の会など改憲勢力が衆参両院で必要な3分の2を占めていることが、現実味を帯びさせているのだろう。安倍戦略は、9月の総裁選を機に改憲への基盤を固め、秋以降の国会を改憲にとって千載一遇のチャンスと位置づけ、自民党の改憲案を提示し、通常国会での発議に持ち込む構えであろう。そして2020年の新憲法施行へとつなげたい考えのようだ。
 この結果、最大の政治課題は、既定路線の3選そのものにはなく、3選後に何をやるかに焦点が移行しつつあり、改憲は佐藤が沖縄返還で最後まで求心力を維持したこととオーバーラップする。ただ、連立を組む公明党は来年の参院選を控えて慎重論が強く、安倍の憲法改正発言に警戒を強めている。今後折に触れ、クギを刺したり、横やりを入れる動きを見せそうだ。野党も立憲民主党や国民民主党を中心に警戒論が高まろうとしている。
◎俳談
【歳時記を“携帯”する】
 俳句とは季語そのものを活かす短詩である。従って先に短詩を作って適当に季語を取って付けるのでは、だいたいが陳腐な句となる。あくまで「季語様」を盛り立てるのが俳句である。しかし、この熱いのに歳時記を持ち歩くのもうっとうしい。小生は長い間三省堂の「季寄せ」を使っている。ワイシャツのポケットに入る大きさで使いやすい。表紙は良質な革製で長い間使っていると皮が手の脂で磨かれ貫禄(かんろく)が出てくる。
 しかし最近では、これでも面倒になってきた。考えたら「そうだ
スマートフォンがある」と気付いた。毎日肌身離さず持ち歩くものの典型だ。案の定Web上のストアに歳時記があった。ちょっと高いが角川の俳句歳時記を買った。これで全てが事足りることが分かった。しかし俳句を書き留めるには手帳がいる。これも「i手帳」というソフトがあって、手帳の機能を全て備えている。おまけに指で文字を書けるから、いちいち面倒なアルファベットを使った書き込みなど不要だ。一句を思いついたらスマフォの手帳を開いて指で文字を書く。歳時記が必要になったらスマフォの歳時記を開く。これで万事OKだ。夏は省力に限る。
これしきはジュラ紀の冬と炎天下 読売俳壇一席

◎竹下派、「自主投票」と言う名の「分裂投票」

◎竹下派、「自主投票」と言う名の「分裂投票」
  竹下(亘)の力量不足が主因ー自民総裁選
 名門竹下派の総裁選への対応が空中分解して、自民党総裁・安倍晋三の事実上独走態勢が固まった。安倍は9月の総裁選挙で所属国会議員8割以上の支持を受けて3選される流れとなっている。安倍3選は筆者がもともと「決まり」と報じてきたが、ますます「決まり」となった。国会議員の安倍支持勢力は細田派94人、麻生派59人、岸田派48人、二階派44人、石原派12人の大勢となる見通しだ。405票ある国会議員票の8割近くを安倍がまとめつつある。一方竹下派の参院議員は大勢が元幹事長・石破茂を支持する方向だ。立候補の意欲を見せる石破は、自派と参院の竹下派21人程度の支持で、せいぜい50票弱を獲得するする方向にとどまる。石破の狙いは3年後の総裁選にあるが、安倍の圧勝は、立候補を見送り安倍支持に回った前外相・岸田文男に勝てない流れを生じさせそうだ。岸田が立候補する際には安倍派が岸田に雪崩を打つからだ。
 竹下派の内部事情は衆参で月とすっぽんほど異なる。その原因は総務会長・竹下亘の指導力欠如に如実に表れている。同派の衆院側は、経済再生担当相・茂木敏充、厚生労働相・加藤勝信ら8割超が安倍支持へ動いている。一方参院は元参院議員会長・青木幹雄が反安倍路線であり、政界引退後も影響力を保持している。その理由は極めて個人的で、青木の長男一彦がは2016年参院選から合区された「鳥取・島根」選挙区で、石破の手厚い支援を受けていることだ。青木としては、石破の協力を得て、一彦の選挙基盤を盤石にしたい思惑があるのだ。
 竹下はこのほど同派衆参両院議員らから総裁選への対応を聴取したが、衆院23人が安倍支持を表明、石破支持は竹下自身を含めて6人程度にとどまっている。参院側は21人の大半が石破支持であり、青木の影響を感じさせる。「鉄の結束」を誇り、遠く佐藤栄作派に源流を置く竹下派も、近年では総裁選で自派候補を出せないままとなっている。異母兄に当たる故竹下登と亘の政治力の差が如実に出ているのだろう。竹下は自分自身が石破支持のようであり、この方向で派内をまとめようとしたが、安倍支持勢力の反発を食らい、力量の不足を見せつけた。8日の幹部会でも竹下は一本化を試みたが、実現に至らなかった。結局竹下派は「自主投票」という名の分裂投票に突入するしかない方向となって来た。福田康夫の任期途中での総裁辞任に伴う2008年総裁選挙でも、派内の支持は3候補に分断されている。自民党内7派閥のうち態度を表明していなかった石原派12人は9日の幹部会合で安倍支持を打ち出す方向だ。
◎俳談
【無季俳句鑑賞】
 季語は江戸時代の連歌の発句に由来する。発句は連歌の詠み手たちへの挨拶句であり、挨拶として時候が含まれるのが常であった。この流れをくんで現在の俳壇の主流は有季定型といって、季語を入れた五七五で形成される。戦前には季語の概念がない「無季俳句」や「自由律俳句」の流れも生じたが、いまや傍流である。有能な無季俳句の達人がいなくなったことが原因であろう。
 自由律俳句の筆頭が種田山頭火だ。もっとも有名な句が
分け入っても分け入っても青い山 
である。この句には季語が全くないが、どこからともなく初夏から夏にかけての季節感を感ずる。青い山に分け入るのだから冬でも、春でも、秋でもない。このように季語がなくても季語を感じさせるところに山頭火の非凡な才能を感じさせる。象徴しているのは俳句の道の険しさであろう。
 昭和14年に渡辺白泉が26歳で作ったのが
戦争が廊下の奥に立ってゐた
である。詩人で評論家の大岡信は「廊下の奥というささやかな日常生活に、 戦争という巨大な現実は容赦なく進入してくる」と鑑賞しているが、見事だ。反戦句として取り上げられる場合が多いが、反戦句と言うより、自身の恐怖感を率直に述べたのだろう。
 女のさがを詠んだのが中村苑子だ。
黄泉(よみ)に来てまだ髪梳くは寂しけれ
あの世に行っても髪を梳くであろう自らの姿を、おそらく鏡の前で髪を梳きながら想像しているのであろう。下五の「寂しけれ」が女の業を見事に表現している。読者に幽霊の姿まで連想させて、特異な感慨に導く。
 こうした「無季俳句」や「自由律俳句」は、とても一般の俳人が真似られるものではない。新聞俳壇でこの種の俳句が入選することは極めてまれである。

◎竹下派が“分裂総裁選”へ

◎竹下派が“分裂総裁選”へ
 “ラスプーチン”も暗躍
 自らの将来を思うと暗然とした気分にならざるを得ないのが元幹事長・石破茂だろう。依然として自民党総裁、すなわち首相への道は見えてこないと言わざるを得ないからだ。ジタバタすればするほど、先が見えなくなるのが石破の置かれた立場のように見える。それにもかかわらず参院竹下派が、たった21人とはいえ石破支持に動くのも解せない。どうも暑さで政治家も、意識が朦朧として判断力が鈍っているかのようだ。
 竹下派は保守本流を行く名門派閥だ。遠く吉田派に端を発し、佐藤→田中→竹下→小渕→橋本→津島→額賀→竹下派と続いてきたが、常に時の政権の基盤となる動きが目立ったものだ。ところがここにきて9月の総裁選で参院側が各派のトップを切って総裁選への態度を決定、石破を押す流れとなった。参院竹下派は31日、幹部8人が会合、石破支持の方向を確認したのだ。「反旗」をかかげたが、一方で、竹下派の衆院議員は、経済再生担当相茂木敏充らをはじめ首相支持派が8割以上に上る見込み。同派は分裂投票となる。派閥会長竹下亘は、板挟み状態となった。判断力が試されている。総裁選の大勢は、事実上細田、麻生、岸田、二階の4派の支持を取り付けている安倍の圧倒的優位は変わらない。
 新聞はすぐにこうした動きを「森友・加計を抱える安倍への国民の不信感」に結びつけたがるが、森友・加計は1年半たっても何も政権直撃の疑惑など生ぜず、朝日と野党の結託が生じさせた虚構にすぎない。加えてこの参院竹下派の動きの背景には政局と言えば顔を出す怪僧ラスプーチンの暗躍がある。政界引退後も竹下派に影響を持つ元参院議員会長・青木幹雄だ。今回の青木の“仕掛け”は極めて個人的な原因に根ざしているようだ。鳥取出身の石破が、前回の参院選における「鳥取・島根」合区選挙区で青木の長男、一彦の再選に尽力したことへの“返礼” の意味があるといわれているのだ。
 引退後も“参院のドン” は健在ということになる。竹下派の参院議員らも「石破を支持して安倍に圧力をかける」と威勢は良いが、この選択は得るものが少ないことを分かっていない。というのも大きな政局の流れは安倍の3選が確実であり、安倍政権はあと3年継続する。安倍の後は岸田が本命であり、岸田政権は6年は続くだろう。当然安倍の後を石破も目指そうとするだろうが、安倍支持グループの大勢が石破を推すことはまずあり得ない。岸田を推す者が多いだろう。そうなれば、石破派と支持グループは、かれこれ10年冷や飯を食らうことになりかねないのだ。10年の冷や飯ということは、政治家にとっては夢も希望も失せるのであり、致命傷だ。従って石橋支持の選択肢はいずれ潰れるのが落ちだ。青木も「真夏の夜の夢」を見るのは自由だが、議席を失ってまで政局に口を出すのは「年寄りの冷や水」と心得た方がよい。
  こうした中で幹事長二階俊博が31日、ソウルで「安倍総理への絶対的支持を表明する。国民が真のリーダーシップを託せるのは安倍総理をおいて他にない」と支持を表明。衆参で総裁選対応が割れる可能性が出てきた竹下派についても、「私らのグループはこっちが安倍さんを支持し、そっちが誰かを支持するとか、そんな器用なことはやらせたことはない。そんなのは派閥とは言えない」と酷評した。確かに総裁の選択という重要局面で衆参の判断が異なるとは、派閥の体をなしていない。名門竹下派も凋落したものだ。
 こうした中で派閥間の動きも活発化しはじめており、31日夜には岸田、石破、前経済再生相・石原伸晃、元防衛相・中谷元が会合。石破が岸田に「私が立候補の際はよろしく」と支援を要請するなど、水銀柱の上昇と比例するかのように生臭さが一段と強まってきた。
★筆者より 8月は原則夏休みとします。
◎俳談
【老の暮らしを詠む】
 引退後の老人は、何と言っても時間がある。筆者のように現役に互して生々しい政治記事を書き続ける“異能老人”はほとんどいないから、大抵は暇を持て余す。その暇を持て余しているところを開き直って一句に仕立てると、結構新聞俳壇が使ってくれる。単に暇なのではなく、老の静かな暮らしや、哀感などがそこはかとなく盛り込まれると使われる。
甚平で夕刊待てる暮らしかな 毎日俳談入選
実際には夕刊なんかニュースがないから全然待ってはいないのだが、そういうことにすれば、静かな暮らしが浮き上がる。
鴨来しと聞けば見に行く暮しかな 産経俳壇入選
近くの森の池に鴨が来たというニュースが、老にとっては大きいものでなくてはならない。だからそうした。
玉葱に涙などして暮らしゐる 産経俳壇一席
台所にはしょっちゅう立つ。玉葱切って涙を流すのが唯一の涙腺活用術なのだ。
葱刻む平穏いまだ続きをり 毎日俳壇一席。
葱刻むという平穏のなかに、魔物が潜んでいるのが人生だ。そこを詠んだら褒められた。

◎石破の仕掛けは“無理筋”だ

◎石破の仕掛けは“無理筋”だ
  地方党員票でも“劣勢”の可能性
 オリンピックの始祖クーベルタンではないが、元自民党幹事長石破茂も「参加することに意義がある」のか。9月7日告示、20日投開票予定の総裁選が岸田文雄の不出馬宣言で、自民党総裁・安倍晋三と石破の一騎打ちとなる。一騎打ちと言っても、国会議員票はもちろん地方議員票も大勢は安倍支持であり、石破が大逆転を起こす可能性はゼロだ。石破は次につなげる狙いだが、次は安倍の支持を得るであろう岸田が圧倒的に有利であり、石破への展望は開けない。要するに石破は“無理筋”の仕掛けをしようとしているのだろう。一方、女だてらに出馬への意欲を見せる野田聖子は、推薦人もままならずもともと無理。
 焦点は最近3回行われた安倍・岸田会談だ。特に23日夜のすぐにばれた“極秘会談” が岸田不出馬の決め手となったのだろう。自民党内ではこの場で3年後の禅譲を自民党総裁・安倍晋三がほのめかしたとの噂があるが、疑わしい。そもそも首相が禅譲を明言した例は過去にも少ない。よく知られている例は1946年敗戦後の占領下で鳩山一郎から吉田茂の間で政権移譲の約束が交わされた例がある。有名なのは福田赳夫と大平正芳による いわゆる「大福密約」だ。禅譲約束が少ないのは首相が禅譲をいったん表明してしまったら、政治は次に向かって動き始めてしまうからだ。まだ3年も任期があるのに、安倍が自らの手足を縛ることはあり得ない。
 ただここで岸田が「出馬せず」を選択したことは、ポスト安倍の総裁候補としての道を開いたことは確かだ。自民党内の大勢はそう見ている。出馬すれば、安倍に敗退して「非主流派」への転落が不可避であり、選択はそれしかなかったにせよ、結果としては安倍に「恩を売る」ことになるからだ。また岸田が地方選で石破に負けて、3位になる場合もあり得るし、これもまずい選択だ。3位では将来への弾みになりにくいからだ。岸田派内では不出馬について侃々諤々(かんかんがくがく)の賛否両論があったが、結果的には派閥の結束を優先しつつ安倍支持しか方途はなかった。岸田は次の総裁選で細田、麻生、二階3派の支持を得る戦略を選択したのだろう。
 自民党総裁選挙は新規定により国会議員票405票と党員票も同じ405票で争われる。安倍支持は第1派閥の細田派(94人)、第2派閥の麻生派(59人)、第4派閥の岸田派(48人)、第5派閥の二階派(44人)が明確にしつつある。これに石原派や谷垣グループも大勢が支持して300票を超える圧倒的な多数を形成しようとしている。態度表明が遅れている竹下派も、安倍支持の幹部が多く大勢は安倍に回るだろう。 
 これに対して石破派は2015年に旗揚げしたときは、石破を含めて20人であったが、それ以来増えていないのである。立候補するには本人を除いて20人の推薦人が必要だが、誰か派閥以外から引っ張り込まないと立候補できない。今後石破は必死の勧誘をする方針だが、推薦人の数が確保出来ても議員票で優位に立つ可能性はゼロだ。石破としては、負けを承知で「3年後」につなげるための総裁選と位置づけざるを得ないのだ。
 焦点は地方票の動向に絞られる。来年は統一地方選挙と参院選が行われる年であり、地方党員にとっても、誰を選挙の顔の総裁にするかが重要となる。今回も地方票がどの程度石破に向かうかが興味深いところだ。2012年の総裁選では石破が党員票165票を獲得して、87票の安倍の心胆を寒からしめた。安倍が議員票で押し返して総裁に選出された。従って石破は、夢よもう一度とばかりにこのところ地方行脚を活発化している。目の付け所は悪くはないが、地方党員が前回のように石破を支持するかと言えば、ことはそう簡単ではない。地方党員は選挙を意識して、物心両面での支援を党執行部に求める傾向があるのだ。安倍だけでなく、党幹部や派閥首脳の応援が必要となるのであり、これは政権側が強い。石破は一人で孤立気味だ。したがって、石破が地方票に突破口を求めても、実情はそう簡単ではない。石破は国会議員票でも地方党員票でも劣勢を余儀なくされているのだ。こうして由井正雪の変ならぬ「石破の変」は、「安倍幕藩体制」を揺るがすほどの事態に陥ることはあり得ず、安倍政権は9月の自民党総裁選で3選すれば来年2月に吉田茂、20年8月に佐藤栄作をそれぞれ抜いて超長期政権となる流れだ。
◎俳談
【扇風機と冷房】
 酷暑はどうしても冷房と扇風機にお世話になる。蒸し暑い夜は冷房を一時間で止まるようにして、扇風機を一晩中天井に向けてつけておく。私の場合はこれでぐっすり眠れる。扇風機も冷房も季語の歴史から見ればまだ新しい。従って人口に膾炙(かいしゃ)した名句はないが、さすがに岡本眸あたりに作らせると
冷房車大河に沿ひてすぐ離る
である。炎天下を走る冷房車の快適さを見事に詠んでいる。筆者は一仕事終えると猫と遊ぶ。
さて猫とゆるゆるしよう冷房下  杉の子
といった具合だ。
扇風機の場合の名句は
卓布(たくふ)吹きやがてわれ吹き扇風機  星野立子
であろうか。静かに扇風機が首を回している様子が浮かぶ。
筆者が毎日俳談の年間大賞をもらったのが
丈夫なり妻と昭和の扇風機  
丈夫な妻と昭和時代から使っている扇風機を詠んだ。いまやアンチークの扇風機だが、愛着を感じて電気屋で一部直してもらって使っている。最初は「今もあり妻と昭和の扇風機」としたが、恐れ多いので直した。
山荘の天井高く扇風機 産経俳壇入選
昔、上高地のホテルで詠んだ。

横綱つぶした“ 横審の大罪 ”

横綱つぶした“ 横審の大罪 ”
安保政策研究会理事長 浅野勝人

大相撲名古屋場所は、3横綱と今が旬の大関を欠いた寂しい土俵となりました。在位の横綱全員休場は19年ぶりのことだそうです。
初日から3勝した白鵬は、右膝を痛めて4日目から休場。鶴竜は右肱の故障で7日目から休場。左肩痛の稀勢の里は連続全休で次の9月・秋場所、土俵に上がれなければ引退。優勝最有力候補だった大関・栃ノ心は古傷が再発して7日目、無念の休場。残った力士のなかでは実力トップの関脇・御嶽海が順当に初優勝しました。但し、休場前の3横綱、大関とは対戦していません。

去年の九州場所(2017/11月)で40回目の優勝をした横綱・白鵬に対するバッシングが集中して以来のことです。
明けて1月、初場所を控え、私の著書「宿命ある人々 ― 第3章、白鵬翔とチンギス・ハーン」を読んで、白鵬とのショートメールのやり取りを知った友人、知人から、
☆横綱審議委員長の「横綱の張り手、かち上げは見苦しい。見たくない」という白鵬に当てつけた発言は許容できない。まるで相撲規則で禁じられている違反をしているような誤解を招く。横綱の使命は勝つことにある。品格にこだわって負け続けるのが立派な横綱か、堂々と荒ワザを駆使して勝ち続けるのが真の横綱か、横審に惑わされないよう本人に伝えてください。
☆強烈な張り手を食ったり、立ち合いにガツンとかち上げられると思うような相撲が取れない、と泣き言をいうのは関取ではありません。それに勝るワザを磨いて勝ち上がるのが力士です。横審発の雑音は無視して、ガンガンかち上げて勝負に集中するよう申してください。
そのほか多数。

「張り手、かち上げ、本場所はやめます。頑張ります。白鵬翔」(1月8日、ショートメール)
1月14日が初日の初場所。3日目、4日目、白鵬連敗。左足親指を捻(ひね)って5日目から休場。こんな姿は見たことない。
「自らの相撲に迷いが生じています。
場所前、『かち上げ』『張り手』は技(わざ)のひとつ。それに負ける力士が未熟と申しました。横綱から封印すると聞かされ、意思は尊重しますが、迷いを払しょくするには封印解除を含めて一切白紙で、勝負師の真の勇気を求めてください。浅野勝人」(1月18日)

3月春場所(全休)、5月・夏場所と不振続き。
満を持しての7月・名古屋場所。
ところが「白・稀 時代」を期待された稀勢の里は引き続き全休。白鵬はしゃにむに3連勝したものの、ケガをして休場。頼みの鶴竜、横綱に代わって場所を引っ張るはずの栃ノ心まで故障で休場。とりわけ3横綱の休場には、勝つための焦りと無理がケガに連動していると思えてなりません。勝負に徹することを無意識に躊躇させる“ 横審 ”の見えざる圧力が在るのではないでしょうか。

6日目、カド番大関・豪栄道は立ち合い左を張って阿炎の出足を止め、有利な体勢から横転させました。久しぶりに強い大関の取り口を見せてくれました。
期待の遠藤は、終盤、右から張り手を食い、翌日は左から張られて瞬時に土俵の外へ突き飛ばされて優勝戦線から脱落しました。
貴景勝のパチッと響く張り手は効き目があります。先輩力士だろうが誰彼かまわず張って出るのがいい。
14日目、千代大龍はモンゴル出身の小結・玉鷲を強烈にかち上げて、ウランバートルまでふっ飛ばしました。
「張り手」「かち上げ」ともに有効且つ貴重なワザです。

横綱が「張り手」「かち上げ」を技として使うのは悪いことでしょうか。
特に、年月をかけて最高位まで上り詰めた横綱は、おのずと幕内力士の平均年齢を上回ります。アスリートは年令と共にやって来る体力の衰えを技の開発と錬磨でしのぎます。あの努力の人・イチロー選手でさえ、歳にはかないません。
自らの年令の限界を補うために磨いた横綱の技を“ 横綱審議委員長 ”に封じる権利があるとは思わない。どうしてもダメというのなら、相撲規則を変えて、「張り手」「かち上げは」を48手の技から除外して、禁止したらいい。横審さん、冷静に考え直してみたらいかがでしょう。(元内閣官房副長官)

◎石破の仕掛けは“無理筋”だ

◎石破の仕掛けは“無理筋”だ
  地方党員票でも“劣勢”の可能性
 オリンピックの始祖クーベルタンではないが、元自民党幹事長石破茂も「参加することに意義がある」のか。9月7日告示、20日投開票予定の総裁選が岸田文雄の不出馬宣言で、自民党総裁・安倍晋三と石破の一騎打ちとなる。一騎打ちと言っても、国会議員票はもちろん地方議員票も大勢は安倍支持であり、石破が大逆転を起こす可能性はゼロだ。石破は次につなげる狙いだが、次は安倍の支持を得るであろう岸田が圧倒的に有利であり、石破への展望は開けない。要するに石破は“無理筋”の仕掛けをしようとしているのだろう。一方、女だてらに出馬への意欲を見せる野田聖子は、推薦人もままならずもともと無理。
 焦点は最近3回行われた安倍・岸田会談だ。特に23日夜のすぐにばれた“極秘会談” が岸田不出馬の決め手となったのだろう。自民党内ではこの場で3年後の禅譲を自民党総裁・安倍晋三がほのめかしたとの噂があるが、疑わしい。そもそも首相が禅譲を明言した例は過去にも少ない。よく知られている例は1946年敗戦後の占領下で鳩山一郎から吉田茂の間で政権移譲の約束が交わされた例がある。有名なのは福田赳夫と大平正芳による いわゆる「大福密約」だ。禅譲約束が少ないのは首相が禅譲をいったん表明してしまったら、政治は次に向かって動き始めてしまうからだ。まだ3年も任期があるのに、安倍が自らの手足を縛ることはあり得ない。
 ただここで岸田が「出馬せず」を選択したことは、ポスト安倍の総裁候補としての道を開いたことは確かだ。自民党内の大勢はそう見ている。出馬すれば、安倍に敗退して「非主流派」への転落が不可避であり、選択はそれしかなかったにせよ、結果としては安倍に「恩を売る」ことになるからだ。また岸田が地方選で石破に負けて、3位になる場合もあり得るし、これもまずい選択だ。3位では将来への弾みになりにくいからだ。岸田派内では不出馬について侃々諤々(かんかんがくがく)の賛否両論があったが、結果的には派閥の結束を優先しつつ安倍支持しか方途はなかった。岸田は次の総裁選で細田、麻生、二階3派の支持を得る戦略を選択したのだろう。
 自民党総裁選挙は新規定により国会議員票405票と党員票も同じ405票で争われる。安倍支持は第1派閥の細田派(94人)、第2派閥の麻生派(59人)、第4派閥の岸田派(48人)、第5派閥の二階派(44人)が明確にしつつある。これに石原派や谷垣グループも大勢が支持して300票を超える圧倒的な多数を形成しようとしている。態度表明が遅れている竹下派も、安倍支持の幹部が多く大勢は安倍に回るだろう。 
 これに対して石破派は2015年に旗揚げしたときは、石破を含めて20人であったが、それ以来増えていないのである。立候補するには本人を除いて20人の推薦人が必要だが、誰か派閥以外から引っ張り込まないと立候補できない。今後石破は必死の勧誘をする方針だが、推薦人の数が確保出来ても議員票で優位に立つ可能性はゼロだ。石破としては、負けを承知で「3年後」につなげるための総裁選と位置づけざるを得ないのだ。
 焦点は地方票の動向に絞られる。来年は統一地方選挙と参院選が行われる年であり、地方党員にとっても、誰を選挙の顔の総裁にするかが重要となる。今回も地方票がどの程度石破に向かうかが興味深いところだ。2012年の総裁選では石破が党員票165票を獲得して、87票の安倍の心胆を寒からしめた。安倍が議員票で押し返して総裁に選出された。従って石破は、夢よもう一度とばかりにこのところ地方行脚を活発化している。目の付け所は悪くはないが、地方党員が前回のように石破を支持するかと言えば、ことはそう簡単ではない。地方党員は選挙を意識して、物心両面での支援を党執行部に求める傾向があるのだ。安倍だけでなく、党幹部や派閥首脳の応援が必要となるのであり、これは政権側が強い。石破は一人で孤立気味だ。したがって、石破が地方票に突破口を求めても、実情はそう簡単ではない。石破は国会議員票でも地方党員票でも劣勢を余儀なくされているのだ。こうして由井正雪の変ならぬ「石破の変」は、「安倍幕藩体制」を揺るがすほどの事態に陥ることはあり得ず、安倍政権は9月の自民党総裁選で3選すれば来年2月に吉田茂、20年8月に佐藤栄作をそれぞれ抜いて超長期政権となる流れだ。
◎俳談
【扇風機と冷房】
 酷暑はどうしても冷房と扇風機にお世話になる。蒸し暑い夜は冷房を一時間で止まるようにして、扇風機を一晩中天井に向けてつけておく。私の場合はこれでぐっすり眠れる。扇風機も冷房も季語の歴史から見ればまだ新しい。従って人口に膾炙(かいしゃ)した名句はないが、さすがに岡本眸あたりに作らせると
冷房車大河に沿ひてすぐ離る
である。炎天下を走る冷房車の快適さを見事に詠んでいる。筆者は一仕事終えると猫と遊ぶ。
さて猫とゆるゆるしよう冷房下  杉の子
といった具合だ。
扇風機の場合の名句は
卓布(たくふ)吹きやがてわれ吹き扇風機  星野立子
であろうか。静かに扇風機が首を回している様子が浮かぶ。
筆者が毎日俳談の年間大賞をもらったのが
丈夫なり妻と昭和の扇風機  
丈夫な妻と昭和時代から使っている扇風機を詠んだ。いまやアンチークの扇風機だが、愛着を感じて電気屋で一部直してもらって使っている。最初は「今もあり妻と昭和の扇風機」としたが、恐れ多いので直した。
山荘の天井高く扇風機 産経俳壇入選
昔、上高地のホテルで詠んだ。

◎“老人性血気”にはやる小沢と小泉

◎“老人性血気”にはやる小沢と小泉
  「原発ゼロ」で結託、しらける自民内
 真夏と言えば怪談話だが、最近永田町の柳の影から夜な夜な「政権交代だぞ~」という幽霊が現れるようだ。あの懐かしい仕掛け人二人だ。一人は「変人」と呼ばれる元首相の小泉純一郎。他の一人はいまや「政権交代の権化」ともいえる自由党代表小沢一郎だ。この“小・小コンビ”は、全く波風が立たない政界に、これもとっくに忘れ去られている「原発ゼロ」を合い言葉に政権交代を目指して結託している。首相・安倍晋三の足をなんとしてでも引っ張りたい朝日はこの動きをとらえてはやし立てるが、野党はおろかな低俗民放ですら無視。とても政権揺さぶりの“うねり”など、生ずる気配もない。
 小沢、小泉の両人とも共通した特性がある。年を取っても若い頃が忘れられず「血が騒ぐ」のだ。政治家の発想の原点などは単純なもので、小泉は安倍が、政治の師でもある自分の在任期間である1981日を5月に抜き、9月の自民党総裁選で3選すれば来年2月に吉田茂、20年8月に佐藤栄作をそれぞれ抜く超長期政権となる流れとなっているのが口惜しくてたまらないかのように見える。小沢は何が何でも政局化の人だ。
  その小沢と小泉が“小・小コンビ”でくっついたのだから、政界は面白い。小沢は16日、東京都内で開かれた自らが主宰する政治塾で講演し、「野党が政権の受け皿を形成しなければ、いつまでも安倍政権、一強多弱の状況が続く」と述べた。さらに小沢は15日に政治塾で講師を務めた小泉と、同日夜に会食したことも紹介。小泉が「野党が一つになって『原発ゼロ』で勝負すれば必ず選挙で勝てる」と発言し、小沢は「その通りだ」と応じたという“陰謀”を明らかにした。
 反安倍の“野合”も勝手だが、安倍にはなかなか隙が見つからない。2012年以降の安倍政権は、戦後日本政治史の中でも珍しい強靱(きょうじん)性」を発揮しており、小沢や小泉も突くに付けないのが実態なのであろう。だから仏壇の奥からはたきをかけて原発ゼロなどと言うキャッチフレーズを持ち出さざるを得ないのだ。しかし、いまやマスコミは原発ゼロなどには新鮮味を感じない。2011年の福島原発の事故は、日本の科学技術力によって「沈静化」されたのであり、小沢や小泉が“血気”にはやっても、朝日以外のマスコミは乗らないのだ。
 朝日は16日付けの記事で「小沢氏増す存在感」「3度目の政権交代へ最後の挑戦」となりふり構わぬ“よいしょ”を小沢に送った。「小沢氏が約50年に及ぶ政治家人生でめざした政治主導の一つの帰結が、この政治状況だけに舌鋒(ぜっぽう)は鋭い」だそうだが、この政治状況とは何か。政権が揺らいでほしいのは分かるが、意味不明の浅薄な表現では読者は戸惑う。さらに朝日は「参院選を1年後に控えて意識するのは、第1次安倍内閣の退陣の引き金になった07年参院選だ。民主党を率いて年金記録問題などの政権不祥事を追及し、民主単独で60議席を得た。対する自民は37。衆参の多数派が異なるねじれ状態に持ち込み、政権交代の素地をつくった」だそうだ。この表現の根幹にあるのは来年の参院選への特異な期待であって、公正な選挙情勢や政治状況の分析ではない。
 政権を野党やマスコミが突くには経済状況の悪化が一番だが、官房長官・菅義偉がいみじくも「ようやくデフレでない状況まで日本の経済を築き上げることができた」と発言しているとおり、今日本経済は戦後まれに見る活況を呈しているのであり、経済状況につけいる隙はない。小沢や小泉が“老人性血気”にはやっても、自民党内はよほどの偏屈しか付いてゆかないのだ。自民党総裁に誰がふさわしいかという朝日の調査をみれば、国民の空気は一目瞭然だ。安倍が28%でトップ、石破23%、野田7%、岸田5%だ。政界は寸前暗黒が常だが、それにだけこだわっては政局を読むことはできない。
 ◎俳談
【月並み句】
 句会で余りにもありふれた句を見るとつい「当たり前田のクラッカー」と言ってしまう。例えば
顔の汗目に入りたる炎暑かな
などという句が出れば、「クラッカー」なのだ。もともと眼に入るのは顔の汗であって足の汗ではない。おまけに「汗」と「炎暑」で夏の季語を二つも使っている。当たり前の上に季重なりだ。
 これほどひどくなくても、余りにもありふれたことを詠む例が多い。子規は天保時代以降の俳句を「月並み」と軽蔑した。天保は1830年から1844年までだ。芭蕉が死んだのが1694年だから140年もたっている。芭蕉の打ち立てた蕉風俳句はさび・しおり・細み・軽みを重んじるとともに、形式は必ずしも古式に従わず、余情を含んだ匂付(においづけ)を尊重するなどの傾向を有した。
 しかし、余りに足跡が偉大でありすぎて、猿まねが横行して、蕉風とは似て非なる俳句ばかりとなってしまった。明治になって子規が登場するまではほとんどが月並み句であったのだ。子規は俗悪、低調、陳腐な句を指して月並みと述べたのである。子規と親しい漱石も月並みを「ありふれた事、普通な事、陳腐な事」と解釈している。
 要するに発想が大切なのだ。「顔の汗が目に入る」では月並みの極致なのだ。飛躍する発想に心がけなければ上達はおぼつかない。「海」といえば「白帆」、「空」といえば「入道雲」、「白日傘」といえば「美人」などの発想をやめることだ。
冷房を贅沢として老いるかな 読売俳壇一席

◎蓮舫も大災害予想の夜に「乾杯!」

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◎蓮舫も大災害予想の夜に「乾杯!」
 参院立憲民主党幹事長蓮舫も朝日も自ら反省すべきではないか。蓮舫は問題として安倍を批判するが、自分も5日夜に酒席のパーティーに出ていたではないか。朝日、蓮舫は気象庁により広範囲での豪雨が予想されたにもかかわらず、首相・安倍晋三以下自民党幹部が酒席を共にしていたと非難がましく取り上げているが、問題の5日夜の段階で西日本の災害を予測できた人間が1人でもいたかということだ。これだけの被害が予想されていたら安倍が酒席に臨席した可能性はないのだ。蓮舫も朝日も「人のふり見てわがふり直せ」と言いたい。ブーメラン返しとはこのことだ。
 朝日は他人を非難するなら、まず自らの判断力の欠如を反省すべきだ。6日の朝刊紙面を見れば、大被害の予想など全く出ていなかった。同日のトップの見出しは「東京医大理事長が不正合格決定」であり、わずかに社会面で「列島各地に大雨のおそれ」とあるだけだ。それにもかかわらず12日の朝刊では、自民党幹部らが5日の会合で笑っている写真を掲載「自民懇親会、大雨予想の夜、西村氏、首相らと出席」と報じた。朝日のこの報道がトリッキーなのは、自分の判断力の欠如を棚に上げて、他人を追及する臆面のなさが露骨であることだ。
 問題はその後の官邸の動きが適切であったかどうかだが、初動から対応はぴしゃりと決まっていた。5日に関係省庁災害警戒会議、6日には官邸連絡室設置。官房長官・菅義偉が会見で「早めの避難、安全確保」を呼び掛け。7日は首相が鹿児島訪問を取りやめ、官邸で関係閣僚会議を開催。8日に非常災害対策本部を設置。9日には11日からの首相による欧州・中東訪問中止を決定。11日に首相が岡山県の被災地視察。非の打ち所のない対応をしている。自民党も派閥研修会の先送りなど自粛ムードが高まっている。
 一方蓮舫は、またまたブーメラン返しを食らっている。自分の行動を棚に上げて安倍以下の会合を「責任感が欠如しているとしか思えない」と切って捨てたのだ。しかし、自分が何をしていたかと言えば憲政記念館で開かれた手塚よしおのパーティーに出席、なんと乾杯の音頭を取っていたのだ。蓮舫理論ならば大災害の夜に乾杯とは、不謹慎の極みではないか。自らが何をしていたかは日程をみれば明らかになることであり、他人を批判する資格などない。かねてから思うのだが、これほど自らの行為を棚に上げてものを言う女も珍しい。パーティーには枝野幸雄、長妻昭、辻元清美ら党幹部も出席、杯を傾けて歓談したという。
 ◎俳談
七夕(たなばた)は新暦七月七日や月遅れの八月七日に行う所が多い。季語としては秋に属し、七夕祭(たなばたまつり)星祭(ほしまつり)星合(ほしあい) 星の恋(ほしのこい)牽牛(けんぎゅう) 織女(しょくじょ) 彦星(ひこぼし) 織姫(おりひめ)願の糸(ねがいのいと)などがある。最後の願の糸とは、七夕の笹竹に短冊を結びつけることを指す。高浜虚子が
汝が為の願の糸と誰か知る
と詠んでいる。ひそかに恋の成就を祈ったものであろう。
 1950年刊行された 石田波郷の句集「惜命(しゃくみょう)」は、子規を先駆とする闘病俳句の最高傑作とされる。波郷が七夕を詠むと
七夕竹惜命の文字隠れなし
惜命忌は波郷の忌日を指す。子規は
うれしさや七夕竹の中を行く
と詠んだ。無邪気な子供のような子規の姿が彷彿(ほうふつ)としてくる。
  万葉集には130首以上の「七夕」の歌が詠まれている。柿本人麻呂は
天の川楫(かじ)の音(ね)聞こゆ彦星と織女(たなばたつめ)の今宵逢ふらしも
と詠んでいる。万葉の時代には天の川から楫すなわち艪(ろ)を漕ぐ音が聞こえたのであろう。
七夕を詠むのは何と言っても恋と関連づけることであろう。
七夕のをんな心を文字にせず   杉の子

◎安倍一強にないないづくしの候補ら

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◎安倍一強にないないづくしの候補ら
 石破も打つ手なしのの苦衷
 宮本武蔵の決闘伝説のようで、初めから勝負が分かっている果たし合いが行われようとしている。9月の自民党総裁選である。どこか首相・安倍晋三に隙がないかと鵜の目鷹の目で探してみるが、はっきり言って兎の毛で突くほどの隙もない。だからときの声を上げる元幹事長・石破茂や総務相・野田聖子も、横綱にふんどし担ぎが群がるような感じであり、岸田文雄に至っては土俵に上がるのさえちゅうちょしている。はっきりいって50数年政局一筋で観察してきて、これほど簡単に見通せる総裁選も珍しい。だから面白くないが、筆者としては正直に書くしかない。
 豪雨被害優先は当然で、政局は休戦の状態だが、反安倍に凝り固まったような民放テレビ出演などでホットなのは石破だ。8日のTBS「時事放談」では、昔の親分の渡辺美智雄の言葉を引用して、出馬の弁をまくし立てた。石破によれば渡辺は「政治とは勇気と真心を持って真実を語ること」と述べていたそうで、石破はこれを踏襲するのだそうだ。踏襲すれば「国民に分かったもらえる」のだそうだ。この発言から分かることは石破は「国民」に照準を合わせているのであって、国会議員は二の次なのである。石破戦略は、今後党員票獲得に向けて発言を強め、その“効果”を背景に、国会議員票を動かそうとしているかのようである。
 石破のこの戦略は12年の自民党総裁選で石破が地方票で勝って、安倍の心胆を寒からしめたことが経験則として根強く存在する。しかし、12年の総裁選は安倍が首相になる前であり、今回の総裁選で同様の地方票が出るかというと甘くない。首相になった安倍を地方組織といえども敵に回せばどうなるかは自明の理であり、安倍側に油断のない限り、勝てっこない石破に投ずる地方票は激減することは確実だ。
 それでは国会議員票はどうか。まず国会議員の心理を読めば、3選確実の現職首相をさておいて、誰がみても敗北する石破に自らの“身命”をなげうって投票するケースが大量に生ずるだろうか。石破支持は、今後3年間の“冷や飯”につながりかねないのである。議員は陳情などで選挙区とつながっているのであり、陳情の効果がない議員からは票が逃げるのが実情だ。加えて、石破派なるものの実態がどうも弱々しいのだ。2015年に旗揚げしたときは、石破を含めて20人であったが、それ以来増えていないのである。立候補するには本人を除いて20人の推薦人が必要だが、誰か派閥以外から引っ張り込まないと立候補できない。その注目の「誰か」のなまえがなかなか出てこないのである。
 自民党幹部は「石破さんのないないづくしはきりがない」と揶揄しているが、そのないないづくしとは「カネがない。面倒をみない。閣僚や党役員のポストを取ってこない」のだそうだ。石破のただ一つの期待は筆頭副幹事長小泉進次郎の支持だ。小泉はこのところ反安倍色を強めており、その発言も民放テレビで頻繁に取り上げられている。新潟知事選で党本部が応援を依頼しても、独自路線を行く小泉は応じなかった。石破派は、この小泉を抱き込んで気勢を上げたいのだ。これを察知した安倍陣営は、官房長官・菅義偉が小泉と会談、言動に気をつけた方がよいと忠告している。
 一方、野田聖子も口だけはやる気十分だが、立候補できるかどうかも危うい。危ういと言うよりできない公算の方が強い。とても推薦人20人が集まるような雰囲気ではないのだ。本人は「安倍さんとの約束は大臣の職を務め上げることだ」と言うかと思えば「独自の政策を7月の終わりか8月には発表する」と立候補に意欲を見せたり、大きくぶれている。どうも器ではないような気がする。
 岸田は主戦論者から「いつまでハムレットをやっているのか」とじれる声が出始めているが、まだ悩んでいるようだ。岸田はかつて「熟柿が落ちるのを待っていられるほど世の中は甘くはない。ただ戦う以上は勝たねばならない」と“名言”を述べている。その“ハムレット路線”を打ち消すために「派閥のメンバーの意見を聞かせてもらいつつ最後は私が判断する」と言明しているが、このような優柔不断の背景には、安倍からの禅譲を期待する心理状況が垣間見える。所属する池田勇人以来の名門派閥宏池会は、2000年の「加藤の乱」でみそを付けて分裂。以来首相を輩出することなく、今日に至っている。ただ3年後のポスト安倍を見渡したところ、やっと“本命”の呼び声がかかりそうな気配となって来ている。ここは安倍に協力して立候補せず、次を狙うのが常道であるかのように見える。 
◎俳談
【一茶のリフレイン】
 一茶はリフレインの名手である。ただでさえ短い俳句の中で言葉を繰り返すのだから無駄のように見えるが、当たるとリフレインほど訴求力のある俳句はなくなる。一茶はかなりの確率で当てているのである。まず人口に膾炙(かいしゃ)した句は
やれ打つな蝿が手をする足をする
雀の子そこのけそこのけお馬が通る
の二句であろう。「する」を重ねることでハエの情景がクローズアップで見えてくる。「そこのけ」の繰り返しは、威張っている武士階級を茶化して見事だ。
一つ蚊のだまってしくりしくりかな
もちろん蚊は刺しますと言って刺さない。黙って刺すが、しくりしくりであちこち刺された様子が浮かぶ。
千の蟻一匹頭痛の蟻がいる 東京俳壇入選
庭で蟻を見ていて直感であの蟻は頭痛に違いないと思った。
鳧(けり)の子のけりつと鳴ける日暮かな 東京俳壇入選
本当に鳧は「けりっ」と鳴くのだ。だから鳧という名が付いたに違いない。
ときめきてすぐあきらめて石鹼玉 読売俳壇1席
日の落ちてとっぷり暮れて十三夜 産経俳壇入選
リフレインではないが「て」という助詞を二度利かせることによってリフレイン効果とリズム感を出した。これも一種のリフレインだろう。

◎米に北の「非核化」に対する懐疑論



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◎米に北の「非核化」に対する懐疑論
  ポンペオ訪朝で確認、仕切り直しか
 どうもおかしいと思っていたら、米大統領トランプと北朝鮮労働党委員長金正恩の米朝首脳会談での非核化合意は、危うい土台の上に築かれた砂上の楼閣であった可能性が強まっている。米国内で北朝鮮の非核化の意思を疑問視する報道が相次いでいるのだ。トランプも気まずいのか、国務長官ポンペオを5日北朝鮮に派遣する。この訪朝は一種の仕切り直し的な色彩を濃くしている。ポンペオは帰途日本に立ち寄り首相・安倍晋三や外相河野太郎と会談し、日米韓外相会談も開催する。
 歴史的に米国は過去二人の大統領が、北朝鮮に非核化でだまされており、6月の会談も、疑問視する見方が強かった。合意された包括的文書では、トランプが北朝鮮に体制保証を約束する一方、金正恩は朝鮮半島の「完全な非核化」にむけて、断固として取り組むことを確認している。今回はその合意の土台が、早くもぐらつき始めているのである。
 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2日の社説や記事で、米朝首脳会談の本質を暴露して、警告している。同紙は米ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの専門家の分析によると、寧辺核施設のプルトニウム生産炉の冷却システムが改修されているという。別の建物の屋根にある汚れは、遠心分離器を使って兵器級の濃縮ウランが生産されていることをうかがわせるという。さらに咸興(ハムフン)市にある主要ミサイル製造拠点の大幅な拡張工事を完了させつつあることも分かった。新たな衛星写真で製造拠点を検証した専門家らが明らかにしたという。この拠点では日本などアジア圏に展開する米軍に素早く核攻撃をしかけられる固形燃料型の弾道ミサイルが作られている。また米本土も射程圏内に入る長距離ミサイルの弾頭向けに、再突入体も製造されているという。北朝鮮はミサイル発射や核実験を中止したが、大量破壊兵器を造る能力は維持しており、核開発プログラムを継続させていることが明白となったのだ。
 こうした状況について当初「北朝鮮の脅威はもうない」と断言したトランプは、この発言を修正しはじめた。トランプは議会に送った文書で「朝鮮半島での兵器に使用可能な核分裂物質の拡散の現実とリスク、および北朝鮮政府の行動と方針は、米国の安全保障、外交、経済に引き続き異常で並外れた脅威をもたらしている」として、元大統領ジョージ・W・ブッシュが始めた経済制裁を延長すると宣言したのだ。これはトランプが北朝鮮の非核化の詳細は未定であり今後の交渉で決めなければならないという判断に戻ったことを意味する。国務長官ポンペオの極東への派遣もその一環であろう。
   米大統領報道官サンダースの発表に寄れば、ポンペオは5日に北朝鮮訪問に出発する。平壌到着は6日の予定。ポンペオの訪朝は6月12日の米朝首脳会談後初めてで、通算3回目となる。ポンペオは過去2回と同様に金正恩と会談する見通し。首脳会談で合意された「完全な非核化」の具体的手順について詰めの協議をする。ポンペオはその後、7~8日に初来日し金正恩との会談内容を日本政府に報告する。一方、韓国外務省は4日、外相康京和が8日に訪日すると発表した。東京で開かれる日米韓、日韓、米韓の各外相会談に出席する予定だ。
 米国はできれば「完全な非核化」へのタイムスケジュールを確認したい方針だが、金正恩がやすやすと応じるかどうかは、予断を許さない。ポンペオも6月下旬に米メディアに工程表の作成は時期早々との判断を示している。こうした情勢を反映して、国務省報道官ナウアートは3日「交渉の予定表を作るつもりはない」と言明、具体的な期限にこだわらない方針だ。一方で、金正恩には常に中国国家主席習近平の影がつきまとっており、最近3回の会談で、金正恩は習近平に“教育的指導”を受けている感じが濃厚だ。中国にとって北の核保有は日米同盟や米韓同盟への牽制となる可能性があるからだ。朝鮮半島をめぐる極東情勢は依然として大国の利害や思惑が交錯する場であり続けるのだ。さっそく朝日新聞などは、政府が国内東西2個所に導入を進めている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のレーダー購入に反対の社説を展開している。その理由として朝鮮半島情勢が緩和の流れに入ったことを挙げているが、これはまさに国防の素人論議だ。国家の防衛は普段から二重三重の体制を確立してこそ、仮想敵の戦意をなくすことが可能なのである。
◎俳談
【老犬】
老犬の盲(め)しひゆくらし冬の山 産経俳壇入選
 どうも飼っているホワイトテリアが目が見えなくなったり、耳が遠くなったりしているらしい。大声で怒鳴るように呼ばないと顔を上げない。しかし、めしをやる食器の音だけは聞き逃さない。ことりと音を立てただけですぐに起きてくる。食い意地だけは張っている。掲句は季語の冬の山と目が見えなくなりつつある老犬を響かせたものだが、一般の人には何で冬の山か分からないだろう。それはこのエッセイを読んでいる内に分かるようになる。季語は俳句の要諦だ。
 食事も亭主は粗食なのに、犬は牛刺しだ。牛刺しをやるようになってから、胆石の痛みも起きなくなったようだ。ドッグフードがいかに駄目かの証明となった。犬の牛刺しを食べたくなって、こっそり冷蔵庫を開けてつまむと、結構いける。ビールのつまみにいい。犬の食事を盗み食いするようになってはおしまいだが、今度女房の留守に盛大にやろう。犬めにはアジの頭しかやらない。
初嵐犬吠えカラス横っ飛び 東京俳壇入選

◎党首討論は存在意義を問われる、抜本改革を

◎党首討論は存在意義を問われる、抜本改革を
  枝野は「演説」する場面ではない
 与野党党首が党首討論の歴史的使命が終わったと言うのだから、本当に終わったに違いない。党首討論は英国の議会を参考にして自民党幹事長の小沢一郎が主導、大局的見地から質疑をしようと2000年に始まったものだ。しかし、最初から指摘されていたが討論時間が45分間と短く、ほとんどの党首が自らの主張を繰り返すにとどまり、一問一答型の紳士的な質疑応答によって、国政に新風を吹き込むという構想からは、ほど遠い形となってしまった。各党の思惑が空回りするばかりで、存在意義が問われる事態だ。
  そもそも党首討論のあり方を否定したのは立憲民主党・枝野幸男が最初だ。前回5月の討論後、枝野は、首相の答弁が長いことを理由に「今の党首討論はほとんど歴史的使命を終えた」と語った。これを27日の討論で取り上げた首相・安倍晋三は「枝野さんの質問というか演説で感じたが、前回党首討論が終わった後、枝野さんは『党首討論の歴史的な使命は終わった』と言った。まさに今のやりとりを聞いて、本当に歴史的な使命が終わってしまったなと思った」と述べた。枝野は「安倍政権の問題点を7つ列挙したい」として、短い15分の質問の7分を使って森友・加計学園問題の問題点を延々と並べ、「演説」を行った。これでは大所高所からの討論ではなく野党の演説会になってしまうのだ。枝野が党首討論をマスコミ受けに“活用”しようとしたのは言うまでもない。
 こうした討論のやり方には疑問がある。第一に挙げられるのは討論時間の短さだ。首相の答弁を含めて45分間では、1日に7時間から8時間も質疑を行う予算委員会の集中審議と比べても短すぎる。各党首の質問も数問で終わってしまう。加えてイギリスの質疑は紳士的な傾向が強いが、日本の場合は政権を陥れるような質問が繰り返される。27日も共産党委員長・志位和夫の暴言が目立った。志位は「愛媛県と今治市で加計学園への補助金は50億円から93億円に膨れあがった。首相の『腹心の友』加計孝太郎理事長が経営する学園が首相の名をたびたび使い、巨額の税金をかすめ取っていたのではないか」と発言した。「かすめ取る」とは下卑極まる表現だが、安倍は 「補助金は県と市が主体的に判断することだ。私はあずかり知らない」と全面否定した。事程左様に理性に欠ける質問に、応答をするわけだから、とてもイギリス議会を手本にした紳士的討論とはほど遠くなるのである。枝野や志位に比べて国民民主党共同代表の大塚耕平が、外国人労働者問題を取り上げたのは建設的であった。外国人労働者の受け入れ拡大は、国の政策の大転換であり、安倍からも外国人労働者受け入れに前向きな答弁を引き出した。
 だいたい自民党執行部の感覚も疑う。極東情勢を見れば北朝鮮をめぐってトランプと金正恩の動きが活発化し、日本はまごまごすると潮流に乗り遅れかねない側面がある。にもかかわらず野党の提案に乗って1年半も論議して、何の疑惑も政権を直撃していないモリカケ問題を取り上げることに応じてしまったのである。ここは、大きく極東の安全保障の構図を変えかねない北朝鮮問題やトランプ外交への対応など、国家の命運に関わる外交安保問題を取り上げるべきであった。
   党首討論も確かに現在のやり方では、予算委質疑へのプラスアルファ的な側面ばかりが目立つ。質疑時間といい、内容といい、真に与野党が対話を通じて国の政治を切磋琢磨する場に変貌させる必要があることは言うまでもない。たっぷり時間を取って首相が野党に質問しても良いではないか。抜本的な党首討論改革に与野党とも取り組むべきだ。

◎俳談
【昼ビール万歳】
落花生両手で砕きビール汲む 杉の子
 藤沢という街は湘南ムードもあって明るくて洒落た街だ。駅前の地下街に日本一うまい中華そば屋がある。「古久屋」という名前だが、なぜ日本一かというと、特に理由はない。他にうまいところを知らんからだ。江ノ島水族館でクラゲの写真を撮ったあとは必ずこの店に寄る。クラゲの撮影を10時45分で切り上げると、ちょうど開店の11時に間に合う。なぜ知ったかというと娘が高校時代しょっちゅう通って「特焼きそばにお酢をどばっとかけるとおいしい」と言っていたからだ。
 この店で気付いたのは湘南というのは昼からビールを飲むことだ。私のような上品な白髪の老人が、一人手酌で焼きそばを前に一杯飲んでいるかと思えば、老夫婦が湯麺を啜りながら一杯飲んでいる。昼ビールのうまさは格別なことを知っているから、一度真似してみたいと思っていたが、気が弱いから一年ばかりちゅうちょ。昨日思い切って決断した。決断だから注文の仕方も並大抵ではない。つい「ちょっと、ビール」とかん高い声を出してしまうのだ。店員は何で興奮しているのか分からないから、怪訝な客だと思っても顔に出さずに「はい」と受け止める。こうして決死の覚悟の昼ビールがのどをごっくんと通過したのだ。現役時代に一所懸命に働いて、今は自由の身。「世間よざまあみろ」と内心思うのだ。そして小粋なる湘南っ子の顔を装って、大和市のイモ爺さんが、またとくとくとくとビールを注ぐのだった。
ひたすらにビールを思ひ庭仕事 杉の子
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「 ロボットとの恋愛!」

投 稿 ・・・ 大学1年生(工学部) 
「 ロボットとの恋愛!」

入学早々、担当教授から、ロボットと人間は交際し、恋愛し、結婚することができるかどうか「ロボットとの交際問題」について300字以内で書け!という課題が出されました。300字ではとても無理なので、私に限って2,000字とさせていただきました。

 まず、このテーマを論ずるにあたって、そもそも恋人とは何かについて定義を考えなければならない。少し下卑た話になるが、男女間の友情と恋人との違いは文字通り下心があるかどうかだと思う。この人との子孫を残したいという生物学的な当然の想い、これが「恋」である。そして、人が異性に惹かれ、恋に落ちる要因はさまざまある。容姿、性格、立ち振る舞い、声などあげたらキリがない。そう考えると、人間がロボットに恋をするのは何ら不思議ではないように思える。なぜなら、ロボットは容姿も性格も声も立ち振る舞いも使用者(ユーザー)によって、自分好みにプログラムできるからだ。それが虚しいと感じるのならば数万におよぶ人間のパーソナルデータを収集し、アトランダムに形成すればいい。それがロボット、ひいてはAIの良いところだと私は思う。さらに言えばオプションとして、ips細胞などを利用した人工卵子や精子などを付ければ子供ができて、恋人に留まらず立派な家族にもなれるのではないだろうか。
 
 ロボットを恋人として持たない理由の中に、人間と違って心が無いからと答える人が多いかもしれない。これは、私からみると、とても滑稽な話だと思う。確かにロボットに心は無い。いくら科学が進歩し、技術が進んでも、心を造ることは未来永劫できないだろう。
笑顔や涙、怒りや嫉妬、そういった表情や感情にしてもプログラミングされたものに過ぎない。しかし、人間も同じなのではないだろうか? 機械には心が無いという人、その人は本当に愛する人の心の内を完全に理解しているのだろうか? 自分の頬を伝わった、その涙が本当に心によるものだという確証があるのだろうか? 実際、クビを縦に強く振れる人はそう多くないはずだ。前述したとおり、ロボットの感情はプログラムだ。ところが、ロボットはそれによって涙も流せるし、笑顔にもなれる。そこに人間とどれほどの差があるというのだろうか? もともと心というものは完全には理解できない、酷(ひど)く抽象的なものだ。だから、人間同士が完全にお互いを理解し合うのは困難だ。プログラミングされたロボットなら完全に相手のことを理解し、欲していることばをかけてくれる。誰も傷つかない行動を取ってくれる。私にはそう思えて仕方がない。
 
 心の有無以外にもうひとつ、ロボットを恋人に持つことに障害となってくるものがある。世間からの視線だ。自分の理想通りの異性が現れた時、人はその人を愛せずにはいられない。しかし、自分の居場所がある人、社会的地位が高い人ほど社会の目という人生を一変させてしまう怪物を恐れるにちがいない。その理性という名の枷(かせ)によりロボットとの交際に踏み切れない人が出てくるのは想像に難くない。だが、それは時間が解決してくれるのではないだろうか。
 
 良い例がジャンクフードだ。今でこそ改良されて生活の一部となっているが、昔はあんな得体のしれない化学薬品まみれの食べ物は口にはできないと世間から思われていたことをテレビや新聞、雑誌でよく見かける。人間は順応性が高く、“慣れ”という属性を持った唯一の生き物だといわれている。そして、これは人間が必ずしも悪いというわけではなく、社会における独特な慣習や風潮によると考えられる。善悪は多少どうであれ、大多数の人がしていることを正常、少数の人がしていることを異常と判断してしまう。つまり、ロボット文明が進み、人間と交際できるようになった初期こそ社会から奇異な変わり者と冷たい目で見られるけれども、時代と共に少しずつ受け入れられ、次第に厳しい視線が和らいでいく。やがてロボットを伴侶に迎え始める時代が訪れるにちがいない。さらに人々の思いと技術が進化し、人間との見分けがつかなくなるにつれて、益々ロボットを恋人に持つ人が増えていく。ロボットの増加と人間との差異が無くなれば、自分が人間かロボットかさえわからなくなってくるかもしれない。ロボットとの結婚や交際の反対運動をしていた団体のリーダーが、実はロボットだったなんてオチがトップ・ニュースになって人々が苦笑する。ロボットとの大多数の交際が正常であり、こんどは逆に人間同士が付き合っているのが奇異に映るようにならないとも限らない。
 
 以上は、私の完全な妄想ではあるが、人間と交際しているロボットは、人間のあまりの精神的な醜さに嫌気がさして、恋愛対象から人間を外してロボットに限定するかもしれない。そして、ロボット交際問題がおきてから長い月日をかけた結果、人間は人間と、ロボットはロボットと、極く少数の人間とロボットの交際が改めて話題となる、そんなディストピアめいた世界が私たちの未来に待っていると想像するだけでも胸が躍る。< おわり! >

◎自民総裁選は安倍独走の形勢

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◎自民総裁選は安倍独走の形勢
  尖る石破・野田、岸田は禅譲狙いか
 英語のdead angle を語源とする死角が自民党総裁選挙にあるだろうか。まずない。首相・安倍晋三は圧倒的にリードしていて、死角を探してもない。自民党内を見渡したところ虎視眈々とその安倍にチャレンジしようとしているのが元幹事長・石破茂だ。大勢は首相・安倍晋三3選支持の流れであり、石破は孤立気味だ。石破は昔、佐藤栄作の長期政権を阻止しようとした三木武夫を思い起こす。「男は1回勝負する」とチャレンジしたが、敗北。その後ロッキード事件が幸いして首相になったものの、党内の支持は得られず、すぐに潰れた。しかし、立候補者がいないと自民党内は活気が出ない。石破に限らず、野田聖子など例え売名でもオリンピック精神で出馬すればよい。
 総裁候補としては事実上安倍が独走している。森友・加計問題はまるで朝日と民放と野党の独壇場だったが、贈収賄疑惑があるわけでなし、予算委の終了と共に影を潜めた。攻め手がなく、今後も忘れた頃にぽっとか細く火が付く程度のものだろう。内閣支持率もモリカケがなくなって回復しはじめている。読売の調査では45%で支持が不支持を逆転した。朝日や産経、民放の支持率も同様の上昇ぶりを示している。長期政権は一時的な高支持率より、30から40%を安定して維持することが大切だ。佐藤内閣がそうであった。
 これを反映して6月10日の新潟知事選では、事前の世論調査では、接戦との見方が多かったが、開票結果は花角英世54万6670票に対して池田千賀子50万9568票と、3万7000票余りの差を付けた。与党系は「快勝」であり、政局で安倍にプラスの結果となった。
 こうした中で、総裁候補とされる面々は,動くに動けない情勢である。国会会期は7月22日まで延長されるが、この間は表立った動きをすれば世論の反発を受けるし、国会終了後総裁選まで2か月しかない。短期決戦を余儀なくされるが、安倍の独走を阻止できる候補は存在しない。
 政調会長・岸田文男も、早々に旗を巻きそうな気配だ。4月16日に安倍と会談したのに続き、去る18日にも2時間半にわたって会食している。岸田は記者団に「北朝鮮、終盤国会、(自民党)総裁選の話をした」と語ったが、内容については「ノーコメント」とした。岸田の狙いは秋の総裁選で奪い取るのではなく、安倍の3選を認めて3年我慢をして禅譲を狙うところにあるのかもしれない。昔池田勇人にオリンピック花道論があった。池田は癌であることをひた隠しに隠して、任期を残して退陣する演出を行った。東京オリンピック閉会式翌日の10月25日に退陣を表明、自民党内での後継総裁選びの調整を見守った上で11月9日の議員総会で佐藤栄作を後継総裁として指名したのだ。佐藤は「待ちの佐藤」といわれたが、岸田も「待ちの岸田」として、昔のインスタントラーメンではないが「3年待つのだぞ」が、今考えられる最高の戦術だろう。
 総裁選への流れは、安倍が楽勝のように見えるが、油断は出来ない。問題は党員らの投票による地方票の動向も作用する。12年総裁選では、石破が党員らの投票による地方票で安倍を上回っだのだ。決選投票で議員票を固めた安倍に敗れたが、決選投票に地方票を加えた現行制度なら、石破が当選していたといわれる。閣僚を離れた石破は、活発に地方行脚を繰り返している。しかし、石破にとっての致命傷は派閥の人数が少ない点だ。国会議員の人望がないから数が集まらない。衆参合わせて20人で6番目では、なかなか突破口を開くのは難しいだろう。安倍は5年の在任の結果、地方票がかなり集まる状況にあり、油断しなければ、石破はそれほど獲得出来ないかも知れない。
  総務相野田聖子も、発言を先鋭化させている。15日に日本記者クラブで記者会見し、選択的夫婦別姓の導入などを総裁選の主要政策に掲げる考えを示した。安倍との対立軸を明確にする狙いがあるが、支持の広がりには全く欠けているのが実情だ。空回りな発言も目立ち、20人の推薦人確保ができるかどうかも不透明だ。
 安倍は意気軒昂だ。16日の読売テレビでは「まだまだやるべきことがたくさんある。北朝鮮の問題、拉致問題、これはやはり私自身の責任で解決をしなければならないという強い使命感も持っている」と政権維持に強い意欲を表明している。そして最終決断の時期については味な発言をした。「東京近辺のセミの声がうるさいと感じられるようになってきたら」だそうだ。もっとも、考えてみればこの発言は事実上の出馬表明にほかならない。
◎俳談
【鳰(にお)の浮巣】
鳰の消え浮き名の一つ残りけり 杉の子
鳰(カイツブリ)が水中に消えて本当は水輪が残るのだが、それにかけて浮き名とした。 鳰は冬の季語。どこの公園にでもいるあの可愛いやつである。鳩よりやや小さく、水中に巧みに潜って魚を獲(と)る。数日前水中を泳ぐ写真が撮れたが、水面ではずんぐりしているのに、水中ではまるで矢だ。細長く体を伸ばして一直線に進む。フィリリリなどと鳴く声は美しい。
芭蕉は
五月雨に鳰の浮巣を見にゆかん
と詠んだが、「見に行かん」と言ってもこの場合江戸にいて、琵琶湖の浮巣を見に行くというのだから風流も極まれりだ。もっともこの時は別に用事があってのことだが。
 そのかわいらしい鳰が、ある朝森に行くと張ってある網に引っかかって、がんじがらめになり、断末魔の表情でもがいていた。余りのむごさに公園の係員に言って外させたが、一晩中もがいていたと見えてぐったりとなっていた。網は魚類調査のものだというが、池は鳰がしょっちゅう潜っている。そこに思いが行かなかった管理者は無能としか言いようがない。

◎ トランプの「軍事演習中止」発言の浅薄さ

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◎ トランプの「軍事演習中止」発言の浅薄さ
 「カネ節約」と商売人根性丸出し
 安倍は日朝首脳会談も視野に
   群盲象をなでるというか、百家争鳴というか。トランプと金正恩の会談をめぐって議論が百出している。その理由はトランプが「詰め」を怠った結果だ。アバウトで危うい「合意」が、混乱や困惑を世界中にまき散らしていることをトランプ自身も分かっているのだろうか。首相・安倍晋三も金正恩との首脳会談を実現し、極東の安全保障を確立させるための直接対話を実現させるべきだが、それには拉致問題の成果もある程度見通せるようになる必要がある。日米は非核化で北朝鮮から大きな譲歩を引き出せない限り、軍事的な圧力を弱めるべきでないことは言うまでもない。
 トランプの高揚感は、自己顕示欲もともなってすさまじい。会談後「金委員長と私はたった今、共同声明に署名した。彼はその中で『朝鮮半島の完全な非核化への揺るぎない決意』を再確認した」と、記者会見で“成果”を強調した。「われわれはまた、合意実現のためできるだけ早期にしっかりした交渉を行うことで一致した。彼(正恩氏)がそれを望んでいるのだ。今回は過去とは違う。一度もスタートすることなく、それゆえやり遂げることもなかった政権とは違う」と述べた。どうもトランプは過去の政権との比較を臆面もなく持ち出す傾向が強いが、オバマをはじめ歴代大統領なら、現状に合わせた対応は当然している。トランプこそ唯我独尊の露呈を戒めるべきだ。
 トランプと金正恩が決めた合意文書自体は「朝鮮半島の平和と繁栄に貢献する」ことを約束し、「トランプ大統領は(北朝鮮に)安全の保証を提供することを約束した」となっている。極めて大まかな合意である。金正恩の述べた「朝鮮半島の完全な非核化への揺るぎない決意」は立派だが、その非核化の時期や方法、具体的な対象についての細部は文書に存在しない。トランプは記者会見でこれを「時間がなかった」せいにした。だが、極めて重要な意味を持つのはその細部なのだ。というのも過去に米政権が細部を詰めなかった結果、北朝鮮は何度も約束をほごにしてきた。北の「やらずぶったくり」路線は、毎回成功してきたのだ。合意文書には、正恩がトランプの主張する内容を確実に実行することを示す部分はほとんどない。
 会談での譲歩に加えて、トランプは米韓軍事演習を「ウォーゲーム」と軽視するかのような発言をして、交渉が順調に進んでいる間は中止する意向を表明した。北が「極めて挑発的」と非難を繰り返してきた演習は、裏を返せば効果があるのであり、独断で中止してしまえるようなことではあるまい。「会談後最初の重大かつ一方的な譲歩」(ウオールストリートジャーナル)を行ったのだ。
 非核化の道筋すらおぼろげなのに、クリヤーカットに軍事演習中止の「見返り」を与えてしまうとは恐れ入った。欧米メディアは非核化の具体的な手法や期限が決められなかったことについて懸念する見方が多い。トランプは「ウオーゲームの中止で、カネを大幅に節約できる。ウオーゲームは挑発的だ」と述べている。ここでカネの節約を言うとは商売人根性丸出しで、安全保障の重要性を理解していない。まるでベニスの商人のごとく、方向性を間違っている。米韓軍事演習は北朝鮮に対する圧力のシンボルであり、これが実施され、米軍の装備が白日の下に照らされるからこそ、北が南進を思いとどまってきている現実を分かっていない。
  日本に関係の深い拉致問題については国務長官ポンペオが「大統領は複数回にわたって取り上げた。拉致家族の帰国のための北朝鮮の義務を明確に伝えた」と言明した。トランプに対して金正恩は「分かった」と述べたと言われる。しかし金正恩が具体的な反応をした形跡はない。トランプは安倍との電話協議で「金委員長は日朝会談にオープンだ」という趣旨の説明をしたという。
  政府は北朝鮮の動向を慎重に見極めながら交渉の機会を模索する方針であり、政府部内には早ければ7月か8月の首脳会談もありうるとの見方がある。夏がない場合、9月にロシア・ウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」に金正恩が出席すれば、安倍との会談を実現させる構想もあるようだ。実現すれば2004年の小泉純一郎訪朝以来となるが、安倍は金正恩との会談について「ただ話しをすれば良いのではなく、問題解決につながる形で実現しなければならない」と、慎重な姿勢であり、情勢を見極める構えだ。拉致問題は被害者家族にとっては極めて重要だが、まずは極東安保という大事を最優先させ、その結果として拉致問題の解決につなげることが重要だろう。安倍が発言したように日本は拉致問題に関しては「主体的」に対応するしかない。
 ◎俳談
【俳句と笑い】                   
あの子規が
山の花下より見れば花の山 
という句を作っていたかと思うとほほ笑ましい。言葉遊びのように見えるが一度読んだら忘れない句はいい句だ。一茶は笑いとペーソスの俳人だ。まるでチャップリンのようである。
故郷は蠅まで人を刺しにけり
古里の冷たさをばっさりと切っている。筆者も負けてはいない。
湯湯婆(ゆたんぽ)と書けば笑へるなあ婆さん 読売俳壇1席
は、自慢ではないが、俳句史上に残してもらいたいユーモア句だ。
まだある
合格子上がり框で転びけり 産経俳壇入選
「合格したよ」と言ってづっこけた。
遠足やパンパかパーンと弁当開け 読売俳壇1席
パンパカパーンは横山ノックの専売特許ではない。
クソ暑い夏。
これきしはジュラ紀の冬と炎天下 読売俳壇3席
ジュラ紀は知らんが相当暑かったらしい。頑固じじいが炎天下を歩いている。

◎大山鳴動ネズミ一匹の米朝未完会談


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 非核化時期、検証、工程未定のまま
 日本はおいそれと「経済カード」を切ることはない
  トランプは口癖の「素晴らしい」を繰り返すが、どこが素晴らしいのか。会談したこと自体が素晴らしいのか。それにしては、「北の壁」ばかりが目立つた未完の会談であった。金正恩は米朝共同声明で「完全な非核化」を約束したが、具体的な非核化の範囲や工程や期限への言及はなかった。これでは、歴代北朝鮮トップによる「約束反故の歴史」を誰もが思い起こさざるをえないだろう。トランプは会談の“成果”に胸を張るが、その内容は会談したこと自体に意義がある程度にとどまりそうだ。要するに北朝鮮の核兵器廃棄への工程はほとんど示されず、非核化のタイミングや検証方法は今後の交渉に委ねられることになった。
 会談を受けてトランプは北朝鮮への経済的支援については、「米国が支出すべきだとは思わない」と主張し、「遠く離れている米国ではなく、日本や中国、韓国が助けるだろう」と、経済援助をたらい回ししたい口ぶりだが、会談結果から見る限り日本はおいそれと「経済カード」を切れる状態でもあるまい。
 まず米朝合意文書に書かれた文言は、4月に開催された韓国と北朝鮮の南北首脳会談で署名された内容をコピーしたかのようであり、北朝鮮による核・ミサイル実験の凍結に関しても明文化されなかった。米国が6カ国協議を通じて主張してきた非核化の原則である「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の文言がない。休戦から65年にわたる敵対関係と20年あまりにわたる核武装路線に終わりを告げる文言が、合意に至らなかったことを意味する。北が核武装を放棄する意思がないことを物語っている。トランプはCVIDが合意に至らなかったことを記者団から突っ込まれて「時間がなかった」と弁明したが、焦点の問題を時間のせいにするのはおかしい。合意文書は「朝鮮半島の完全な非核化」と表現しただけで、北朝鮮の非核化をいかにしていつまでに成し遂げるのかという、首脳会談最大のテーマは、盛り込まれなかった。非核化の時期と検証方法も不明のままだ。検証可能と不可逆的という言葉なしに、北の核武装に歯止めをかけようとしても無理がある。
 さらにトランプの主張の核心であった「朝鮮戦争終結」の宣言も合意文書にはない。朝鮮戦争で米朝が戦火を交えて以来のトップ会談であり、宣言には事実上終結している戦争を再確認する意味合いがあるが、盛り込まれなかった。さらに北朝鮮による核・ミサイル実験の中止の明文化もなかった。核・ミサイル実験場の閉鎖にも言及していない。多くの課題が、先送りされ、具体性に欠けた会談であったことを物語る。要するに大山鳴動してネズミ一匹の感が濃厚なのである。トランプにしてみれば秋の中間選挙へのプラス効果が出れば良いのだ。
 一方金正恩は、会談から多くのポイントを稼いだ。合意文書では金正恩体制をトランプはギャランティーという表現で保証した。特異な社会主義体制を敷く金王朝を、自由主義の雄であるはずの米国が体制保証するという奇妙な会談となった。今後金正恩が体制の正当性を世界に喧伝し、国際的な孤立から離脱する材料に使うことは言うまでもない。加えて米韓軍事演習の見直しや在韓米軍の削減にトランプが言及したことは、金正恩にとって大きな成果であった。
 しかし、ことは極東の安全保障に関する問題である。重要な同盟国である日本にろくろく相談もなく、安全保障に関する問題を軽々に発言するトランプのセンスを疑う。拉致被害者の問題については、首相安倍晋三の要望に応じて、トランプが金正恩との会談で言及したが、単なる言及にとどまったようである。もともと拉致問題は日本政府が解決すべき問題であり、安倍が「日本の責任であり、日朝間で交渉する」と述べている通りである。
 日本外交の真価が問われるのはこれからであるが、かくなる上は北との関係正常化を推し進め将来的には、国交正常化を視野に入れるべきであろう。正常化して、経済的な結びつきを強めることにより、北の暴発は抑えられる可能性が高い。拉致、核、ミサイルが国交正常化の前提条件だが、棒を飲んだような姿勢でなく、緩急自在の姿勢で日朝首脳会談の開催を視野に入れるべき時だろう。
 トランプはまた、国務長官マイク・ポンペオと大統領補佐官ジョン・ボルトンが来週、合意の「詳細を検討する」ため北朝鮮当局者と協議する予定だと述べている。またトランプ自身も「また会う、何度もだ」と延べ、金正恩をホワイトハウスに招待する意向も示した。「恐らく再度の首脳会談が必要になる」と語った。トランプ自身も会談の不十分さに気付いているのかも知れない。
 ◎俳談
 俳人中村草田男が
降る雪や明治は遠くなりにけり
と詠んだのは、明治が終わって21年を経た後である。早くも平成は30年、昭和も遠くなったものである。私は懐かしさもあって昭和をよく詠む。最初に入選したのが朝日俳壇で
恐ろしき昭和を見たり昼寝醒(ざめ)  朝日俳壇1席
であった。昼寝で昭和の夢を見たことにして「恐ろしき昭和」と形容したのが当たった。戦争と混乱に明け暮れした昭和であった。戦後は一時期までわらじを履いていた。通学にもわらじの子がほとんどであった。
わら草履はける昭和よ冬の星 東京俳壇月間賞
 竹の子生活と言って竹の子をはぐように、母親の着物が次々に売られた。親たちは深夜まで働いた。
丸眼鏡かけて昭和の夜なべかな 毎日俳壇1席
 上野の地下道では親を亡くした浮浪児が靴磨きをして頑張っていた。
鰯雲昭和の少年靴磨く 東京俳壇入選
 昭和の女は母親を見ても健気で一生懸命であった。
鳳仙花昭和の女健気なる 産経俳壇入選
 そして
丈夫なり妻と昭和の扇風機  毎日俳壇年間大賞
として今日に至る。実に丈夫なのである。

◎シンガポール会談はプロセスの出発点


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◎シンガポール会談はプロセスの出発点
「戦争終結宣言」のあとは日本の支援が焦点
 12日の米朝首脳会談で最優先となるのは、安全保障と引き換えに、北朝鮮の朝鮮労働党委員長金正恩に核兵器開発を放棄する用意があるという確約をとりつけることだろう。事態は戦争勃発以来70年ぶりの「朝鮮戦争の終結宣言」に向かう。拉致問題はトランプが取り上げる方向だが環境整備にとどまるだろう。安倍自身が金正恩との直接会談で話し合うしかない。トランプはシンガポール会談を、「複数の首脳会談へのプロセスの出発点」と位置づけており、解決は長期化するだろう。
 シンガポール会談では終戦宣言を発出することで一致するだろう。しかし、具体的には当事国が米朝に加えて中国、韓国の4か国による調印となる必要があるから、早くても秋以降となる可能性が高い。トランプも「シンガポールでは戦争終結に関する合意で署名できる」と述べている。1950年に始まった朝鮮戦争は53年に米国と北朝鮮、中国によって休戦協定が結ばれたが、平和協定が締結されていないため、現在も法的には戦争が継続状態となっている。
 4月27日の韓国と北との板門店宣言では「今年中に終戦を宣言、休戦協定を平和協定に転換して恒久的で堅固な平和体制の構築に向けた南北米の3者または南北米中の四者会談を開催する」方針が確認されている。北の非核化で米国が理想とするのは南アフリカの例だ。南アは1989年のF・W・デクラーク大統領の就任後、自主的に6つの核兵器を解体。核不拡散条約(NPT)に加盟し、自国施設に国際原子力機関(IAEA)の査察団を受け入れた。 
 北朝鮮の場合には、兵器や技術が隠されている可能性があり、北が申告した施設だけでなく大々的な査察が必要になる。ただ金正恩は「段階的かつ同時的」アプローチを呼び掛けており、そこに北のトリックがあるという見方もある。北朝鮮が核兵器放棄を正直に進めるのか、可能な限り非核化を先延ばしする“策略”なのかは分からないからだ。過去の例から見れば信用出来ない最たるものなのだ。
 トランプは秋の米中間選挙に北朝鮮問題を結びつけようとしていることが歴然としており、そのための象徴となるのが「朝鮮戦争の終結宣言」となることは間違いない。まさにこれといった成果のないトランプにとって、北朝鮮問題はアピールするにうってつけの材料だが、事実上終結している戦争終結を改めて宣言しても、米国のマスコミが成果として認めるか疑問だ。 
 日本にとって核問題と並んで重要なのは拉致問題だが、トランプと金正恩との会談での優先順位はどうしても非核化に置かれるだろう。おそらく金正恩もそれを見抜いており、従来の「解決済み」との方針から離脱するのは難しいかも知れない。4月29日に韓国大統領文在寅は安倍に電話で「金正恩委員長は日本と対話の用意がある」と伝えてきたが、北との融和の過程としての日朝首脳会談は極めて重要なものとなることは確かだ。なぜならトランプがたとえ拉致問題を取り上げても、それは「交渉」にはなりにくいからだ。交渉はあくまで日朝間で行うことになる。トランプは「拉致問題が解決すれば日朝関係が劇的に変わる」と述べているが、これは3人の米国人の解放と米国の変化を重ね合わせたものだろう。安倍もその辺は認識しており、「最終的には金正恩委員長との間で解決しなければならないと決意している」と述べている。
 一方経済問題が密接な関わり合いを持つが、国務長官ポンペオは、「経済支援は北朝鮮が真の行動と変化を起こすまであり得ない。日本による経済支援も同じだ」と述べており、一挙に経済支援に結びつける方針は示していない。安倍も「国交正常化の上で経済協力を行う用意がある」とクギを刺している。しかし、最終的には日本の経済支援を、北朝鮮ばかりか米国も当てにしていることは間違いないことだ。総書記金正日が日本人拉致を認めた2002年には、首相小泉純一郎が、北朝鮮に100億ドルを支払う構想があったが、実現していない。気をつけなければならないのは北による“やらずぶったくり” であろう。
◎俳談
【忙しいと遊びが楽しい】
 老の過ごし方は「忙しいと楽しい」の原則を守ることだ。それはどういうことかと言えば、必死になって何か“仕事”をすれば、その最中に「明日あれして遊ぼ、これして遊ぼ」という思いがめぐるということだ。筆者の場合深夜の原稿書きが自らに課した仕事で、きつい時には、その最中に「遊び」を脳裏に浮かべて、自らを慰める。だから人生には遊びが欠かせないのだ。人間「遊びせんとや生まれける」なのだ。 
 筆者の場合、遊びとは30年やっている超望遠カメラでの野鳥撮影だ。とりわけ近ごろは、カメラが進歩して1秒に12枚撮影が可能だ。飛んでいる野鳥を撮影できる。野鳥にレンズの焦点が合うと食いついて離さないのだ。接近しようと離れていこうと焦点が合い続けるのだ。飛ぶ鳥を見事に“射止めた”時ほど、スカッとすることはない。
トレーラー降りしは女黄鶺鴒(きせきれい) 俳句朝日入選
 翡翠(かわせみ)の写真を撮っていたら、公園工事のトレーラーの運転席からGパン姿の目の覚めるような美女が降りてきた。カメラを向ける勇気はなかったが、びっくりして一句作った。

◎北と文在寅の“術中”にはまる危険ートランプ


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◎北と文在寅の“術中”にはまる危険ートランプ
  7日の日米会談でCVID堅持確認を
  今朝の朝日の森友文書の扱いにはあきれた。一面から5面までを使って狂ったように報道している。なんとしてでも政局化して、倒閣に結びつけたい思惑を露骨に見せる異常さだ。極東情勢が緊迫化していることなどまるで眼中にない。平衡の感覚があるジャーナリストは朝日にはいないのだろうか。政府・与党はバランスを欠いた朝日の術中にはまってはならない。
 同じ術中でも、12日の米朝会談に向けてトランプが北朝鮮の術中にはまりそうな気配を見せ始めている。焦点の非核化をめぐって1回目の会談だけでは説得が困難との見地から、トランプは「12日が素晴らしいスタートになる」などと発言しはじめたのだ。韓国大統領文在寅も唱える北の段階的な核廃棄の対応に応じそうなのである。米大統領が最初から妥協に傾斜し、腰折れ気味ではその先が案じられる状態だ。そもそも米大統領が金正恩と度々会談するなどと言うことは、自らを安売りすることにほかならない。首相・安倍晋三は7日の日米首脳会談で、北朝鮮問題の現状をトランプに再認知させる必要が出てきた。
 米朝会談の焦点は日米が既に確認している「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」(CVID)へ、金正恩を説得出来るかどうかにかかっている。トランプは当初からこの方針維持を基本としてきたが、文在寅との会談から方針があやふやになりつつある。文在寅は金正恩との二度にわたる会談を通じて、北の「段階的な措置で合意すべきだ」との立場を受け入れている。段階的措置とは、非核化を一挙に進めず、いつでも核・ミサイル実験が可能な状態を維持することにほかならない。文在寅はもともと左派の大統領であり、加えて北と同一民族としての感情に流され、極東安保情勢という大局を見失っているのだ。
 文に吹き込まれたトランプも「段階的な措置」とは、北が米国との会談に向けて仕組んだ“罠”であることを知るべきなのだが、トランプはそれが分かっていないかのように唯々諾々と北の戦術を受け入れ兼ねない危うさがある。米大統領がだまされるとすればまさに3度目となる。米国は既に1990年代と2000年代の交渉で北から同様の提案を受け、これに応じたが、金一族は臆面もなく合意を反故にして裏で核・ミサイル開発を推し進め、ついに大陸間弾道弾とこれに積載する核爆弾の開発に成功しつつあるのだ。それに歯止めをかけなくてはならない時に、トランプは米国に届く核ミサイルだけにストップをかけ、日本を狙う200発の中距離ミサイル・ノドンについては言及しないままだ。トランプは国連による北朝鮮制裁決議が機能する前に、制裁の影響力を弱めてしまっているのが実情だ。
 金正恩が自らの体制が崩壊することを一番恐れている事は言うまでもない。体制維持のためには何でもするのが基本方針であり、その体制維持に不可欠なのは核ミサイルなのだ。核ミサイルがあってこそ、大国と肩を並べられるという小国の誇大妄想が、一貫して北の政策には流れているのだ。金正恩は、非核化を小出しにして、見返りの経済援助を得ようとしているのが実態だ。文在寅はこれにまんまとはめられているのだ。
 一方、もともと北を「緩衝国家」と位置づけている中国は、金正恩を“鼓舞激励”こそすれ、ブレーキをかけることなどしない。国際的にはきれい事を言っても、その実態は深層でつながっているのだ。ロシアも中国に同調している。南アフリカを訪れた中国の王毅、ロシアのラブロフ両外相は3日の会談で、朝鮮半島情勢をめぐり「引き続き協調を強化する」ことで一致している。中露は「段階的な非核化」など北朝鮮の主張をバックアップしており、北問題で結束を固めた。こうしたトランプの浅慮と中露の思惑を最大限活用して北は、三度(みたび)国際社会を欺こうとしていると受け取るべきだろう。こうした中でCVIDへの適切なる対応が何と言っても焦点となる。CVIDへの対応が不十分なままであれば北朝鮮が外交上の有利なポジションを得てしまう。CVIDは全面的な制裁実施が困難な事態を避けるための唯一の方法でもある。
 これに対して安倍政権の対応は、クリアーカットで適切である。安倍は「核武装した北朝鮮を日本は容認するわけにはいかない。圧力を高めて抜け道を許さない」と言明。官房長官菅義偉も「拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決なしに、北朝鮮との国交を正常化することはあり得ないし、経済協力も行わない」と断言している。安倍はこうした姿勢をトランプとの会談で繰り返し強調し、CVID堅持を中心にトランプの事態への認識を確たるものとさせねばならない。トランプは安倍とは盟友関係にあり、安倍の友情ある説得には耳を傾けるだろう。
 またトランプが、北が説得に応じた場合の見返りとなる経済援助について「韓国と日本には北への支援を準備すべきだと伝えた。支援は隣国の日中韓3か国が行うべき」と、ばか丸出しの論法を展開しているが、ことはそう簡単ではない。日本には拉致問題という重要課題が未解決のまま残っており、これを残したままの援助など極めて困難だ。トランプにはこのイロハを教えておく必要がある。国連を中心に援助をする状態が生ずれば米国も参加すべきことは言うまでもない。金を出さずに口を出すのはいただけない。 
◎俳談
【孤独を詠む】
囀(さえずり)を聴きて一人と気付くかな 毎日俳壇入選
孤独を詠むのは老人の特権だ。老人というのは時間が余る。時間が余るから孤独を感ずるひまがある。筆者のように自分で勝手に仕事を作って、勝手に忙しがっている者はまれだろう。その急がしがっている筆者ですら孤独を感ずるのだから、フツーの老人はもっと孤独だろう。そして孤独と気付くときはどんなときかと言えば、様々なる事象を共感する人がいないと気付いたときであろう。「小鳥が鳴いてるよ」と伝える相手がいないときだ。そして、せっかく孤独感が生じたのだから俳句にしなければ損だとばかりに俳句にする。転んでもただ起きないのが孤独な俳句老人なのだ。
烏瓜見つけ一人と気付きたり 産経俳壇入選
何でも一人と気付いてしまうのだ。そして俳句にしてしまうのだ。だから孤独はありがたい。材料をくれるからだ。
孤独を詠んだ名句は尾崎放哉の
こんなよい月をひとりで見て寝る
せきをしてもひとり
ころりと横になる今日が終って居る
いずれも深い孤独を詠んで秀逸だ。 
 

◎野党質問は“冷め切ったピザ”だ


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◎野党質問は“冷め切ったピザ”だ
  形骸化した党首討論はもうよい
 イギリス議会における二大政党のクエスチョンタイムをモデルにして、日本でも1999年7月に党首討論が開始された。内閣総理大臣小渕恵三に対して民主党代表鳩山由紀夫が行った質疑が草分けだ。鳩山は「きょう総理は朝何を召し上がったでしょうか。私は、けさはピザを食べてまいりました。」と質問。小渕は「いつものとおり日本食の食事をいたしてまいりました。温かいピザを食べられたということでありますが、アメリカのオルブライト国務長官から以前、冷たいピザもまたおいしいと言われたことがあります」と皮肉った。ニューヨーク・タイムズが取り上げて小渕を「冷めたピザ」と評したことから有名になった。30日の首相安倍晋三と野党の質疑を聞いたが、野党の質問は既に出た話しの繰り返しで「冷め切ったピザだ」やめた方がよい.
 とりわけ立憲民主党代表の枝野幸男の質問は、何ら進展のないモリカケ論争に終始した。従来と同じ質問を繰り返す枝野の姿勢には、「もういいかげんにした方がよい」という茶の間の声が聞こえるようであった。片山虎之助が「もう党首討論のあり方を全面的に見直した方がいい」と述べているがもっともだ。
 枝野は安倍が「贈収賄では全くない」と答弁したのをとらえて、「急に贈収賄に限定したのはひきょうな振る舞いだ」とくってかかったが、贈収賄でなければなぜ追及するのか。安倍も夫人も潔白が証明済みであり、贈収賄でもない事柄を性懲りもなく過去1年半にわたって繰り返し追及する方が、重要な国会論議という資源の無駄遣いをしているのではないか。枝野は「金品の流れがあったかどうか。森友問題の本質とはそういうことだ」と断定したが、大阪地検の捜査からも政界を直撃する問題は、何も出てきそうもないではないか。贈収賄があるがごとく国会で発言する以上、金品の流れの証拠を提示すべきだろう。
 枝野に比較すれば外交問題を取り上げた国民民主党共同代表の玉木雄一郎のほうが聞き応えのある質問をした。安倍からプーチンとの個別会談について「テタテでは平和条約の話ししかしていない」との答弁を引き出したのは1歩前進であった。
 総じて論戦は野党の焦点が定まらないため深まらず、開催意義そのものが問われる結果となった。当初は英国議会の例にならって2大政党の党首による政策論争を想定したが、現状は少数野党の分裂で、質問時間も立憲民主党19分、国民民主党15分、共産党6分、日本維新の会5分と細分化された。野党は自己宣伝が精一杯であり、まともな質問をしにくい傾向を示している。
 枝野は「追及から逃げるひきょうな姿勢」と「ひきょう」という言葉を何度も繰り返すが、こういう質疑の構図が生じたのはひとえに野党の議席減という自ら招いた結果であることを忘れるべきではあるまい。終了後、枝野はただ一ついいことを言った。「党首討論は歴史的意味を終えた」である。確かに与野党党首の真剣勝負の場は形骸化した。野党も分かっているなら開催要求をすべきではない。国会にはちゃんと予算委員会という総合質疑の場があるではないか。あれもこれもと要求しても、あぶはち取らずが関の山だ。
◎俳談
【俳句と政治家】
 政治家の俳人で本物は大野伴睦と藤波孝生だろう。俳号「万木」の大野が保守合同の立役者三木武吉を詠んだ句が
三木武吉涼しく痩せて眉太し  万木
人物描写の句は珍しいが、秀逸である。「涼しく痩せて」はなかなか言えるものではない。
 政治家には運不運がつきものだが、中曽根康弘と死んだ藤波孝生ほど際だつものはない。藤波の俳号は孝堂(こうどう)。
両人とも俳句をやるが性格はその作に如実に現れている。
暮れてなお命の限り蝉時雨 康弘
控えめに生くる幸せ根深汁 孝堂
 中曽根は首相になって藤波は官房長官にとどまったが、ライフスタイルが天と地の開きがあった。
 俳句の通りに中曽根は日がとっぷり暮れたのにもかかわらず、あちこちでうるさく鳴き続けた。まさに「生き強い」人間の典型である。しかし俳句の方は中曽根の創作ではあるまい。芭蕉の
やがて死ぬけしきは見えず蝉の声
のパロディーと言ってよい。プロならその類想性をすぐに看破する。それでも中曽根は
したたかと言われて久し栗をむく
だそうだ。
 一方、藤波はリクルート事件の波をもろにかぶった。一部に総理大臣候補だとされていたと言うが、盟友竹下登のリップサービスが作った虚像の色彩が濃い。本人はその意欲もなく、能力もあったかどうかは疑わしい。控えめに生きて中曽根の補佐をするのが幸せな部類の政治家であった。しかし俳句だけは政界では大野と並ぶ一流だろう。

◎米朝会談へ向け動き急

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◎米朝会談へ向け動き急
 金正恩側近がNYで事前協議
 韓国に「終戦宣言」構想
 6月12日の米朝首脳会談に向けて鼎(かなえ)が煮えたぎってきた。ニューヨーク、板門店、シンガポールの3個所で接触が進展、大詰めの協議が展開されている。焦点は北が「非核化」にどの程度応ずるかにかかっている。米朝ともあきらかに首脳会談前に重要ポイントでの合意を目指しており、一連の会談の焦点は米国で開かれることが予想される労働党副委員長の金英哲と国務長官ポンペオの会談に絞られそうだ。まさに北朝鮮の金正恩は自らの体制維持、しいては国家の命運をかけた、選択を迫られつつある。
 一連の会談を通じて米国は北に対して「核兵器の国外への搬出とともに、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)を完了すれば北の体制を保証する」との立場を伝達するものとみられる。さらに「北朝鮮のすべての核関連施設に対する国際機関による自由な査察を認め、全ての核を廃棄する」ことを要求。これに対して北は「米国が望むレベルの非核化を実現するには、米国の確実で実質的な体制の保証が必要だ」と金正恩体制の継続を要求するもようだ。また北は非核化に合わせた制裁緩和や国交の正常化などを要求しており、対立は解けていない模様だが、一方で融和の流れがあることは無視できない。
 金正恩の外交を補佐してきた金英哲は、おそらくニューヨークで ポンペオと会談することになろう。北朝鮮の高官が米国を訪れ政府要人と会談するのは2000年に国防委員会第1副委員長趙明禄がクリントンと会談して以来のことだ。トランプが金英哲の訪米を明らかにしており、おそらく表敬訪問を受けることになるかもしれない。板門店では駐フィリピン米大使のソン・キムが外務次官崔善姫と会談して、首脳会談の議題を詰めた模様だ。
 こうした中で韓国大統領文在寅は「早期終戦宣言」の構想をトランプに伝えたようだ。同構想は米朝首脳会談後に韓国、北朝鮮、米国の3国で現在「休戦」状態にある現状を「終戦宣言」に持ち込もうと言うものだ。文在寅は「米朝会談が成功すれば南北米3か国首脳の会談を通じて終戦宣言を採択すれば良い。期待している」と言明した。文にしてみれば非核化をめぐって駆け引きが激化している米朝双方を説得するためのカードとして宣言を使いたいのだろう。
 文在寅がこうした軟化姿勢を取る背景には26日に予告なしで行われた南北首脳会談がある。この席で金正恩は「韓半島の完全な非核化の意思を明確ににして、米朝会談を通じて戦争と対立の歴史を清算したい。我が国は平和と繁栄に向けて協力するつもりだ」と述べたという。仲介役の文に対してトランプは「金正恩氏が完全な非核化を決断して実践する場合、米国は敵対関係の終息と経済協力に対する確固たる意思がある」旨伝えているようだ。
 こうして米国は当面北朝鮮に対する制裁強化を見送る方針を固めた。米国はこれまでロシアや中国を含む約30の標的に対して大規模な制裁をする方針を固めていたといわれる。米当局者によれば、ホワイトハウスは当初29日にも北朝鮮に対する追加制裁を発表する予定だったが、首脳会談をめぐる協議が続く間は実施を延期することが前日になり決まった。
 こうした米朝和解ムードの中で米政界では慎重論が台頭している.
前国家情報長官ジェイムズ・クラッパーは「北朝鮮は彼らの典型的な『二歩前進一歩後退』の行動様式を見せている。北朝鮮が考える『非核化』が太平洋での米軍戦略兵器の縮小を意味するということが心配だ」と懸念を表明した。また共和党上院議員のマルコ・ルビオは「金正恩朝鮮労働党委員長は、核兵器に病的に執着してきた。核兵器が正恩氏に今の国際的地位を与えた。これが北朝鮮の非核化を期待できな
い理由だ」と強調。元中央情報局(CIA)長官マイケル、ヘイデンは、「首脳会談の結果で北朝鮮のすべての核兵器をなくすことは不可能だ。トランプ氏は会談で不利益を被ることになるだろう」と見通しを述べている。さらに注目すべきは元在韓米軍司令官バーウェル・ベルは、「在韓米軍の撤収を目的に北朝鮮と平和協定を締結することは、『韓国死刑』文書に署名することと同じだ」と強く警告した。そして、「強大な北朝鮮軍兵力が非武装地帯のすぐ前にいる状況で米軍が去るなら、北朝鮮は直ちに軍事攻撃を通じて韓国を占領するだろう」と予測している。
 韓国大統領府は文在寅の金正恩との会談やトランプとの会談で、極東情勢が大きく前進したと判断し、和解への道筋が立った段階で米朝間の相互不可侵条約と平和条約の締結へと事態を進めたい気持ちのようだ。これが実現すれば極東情勢は大きく緊張緩和へと進展するが、北が狡猾にも世界を欺いてきた歴史は歴然としており、楽観は禁物だ。
◎俳談
【諧謔味】
 大和市にある泉の森公園は野鳥が多く、カメラに超望遠レンズをつけて撮影に行くと必ずなにがしかの収穫がある。過日に野生のハトの群れが飛ぶのを撮影していたら、突然急降下して筆者の頭上すれすれを猛スピードで飛び過ぎた。何事かと思ったら大鷹だった。大鷹が群れの中の一羽を狙って襲いかかったのだ。絶好のチャンスとばかりにレンズを大鷹に向けたが、フォーカスできなかった。ハトは皆無事であった。
 写真には撮れなかったが、網膜写真にはちゃんと写っている。
その刹那鳩大鷹を躱(かわ)しけり 杉の子
野鳥撮影は瞬間だから、反射神経が物を言う。筆者のカワセミ写真には決定的な瞬間をとらえたものが山ほどある。
 俳句で春がそこまで来ていることを「春隣」という。冬の季語だ。「春遠からじ」も同じ意味で冬の季語。この春隣ほど好きな季語はない。春の足音が確実に聞こえだしたようで心が浮き立つ季語である。毎年数知れないほどこの季節に春隣の句を作っている。拙句の場合食べ物との取り合わせで作るケースが多い。
ざつざつとバターを塗りて春隣 杉の子
といった具合だ。ぱんにバターを塗る音に春の近さを感じるのだ。
何にでもマヨネーズかけ春隣 東京俳壇入選
もある。旺盛な食欲と春を響かせた。
さくさくと羅紗切る音や春隣 毎日俳壇3席
三越で背広を作ったときに羅紗バサミで布地を切る音に春を感じだ。諧謔(かいぎゃく)味がある句が
春隣娘の彼の力こぶ   杉の子
娘の彼氏のたくましさに圧倒されて作った。 



復旦大学講義録(2018/5月23日) ーその②浅野勝人

復旦大学講義録(2018/5月23日) ーその②

朝鮮半島非核化と東アジア情勢
安保政策研究会理事長 浅野勝人

もともと国家間で見解が根本的に異なり、折り合いがつかない場合、解決方法は二つしかありません。戦争で結着をつけるか、話し合いで妥協するか。どちらかです。この道理から今回のケースを考察すると、アメリカと北朝鮮が交渉のテーブルに着くのは必然の結果といえます。
ただ、交渉の先行きについては、楽観できる情況にありません。
一方は、核・ミサイルの凍結・廃棄について段階的に小出しにして、その都度、有利な条件を引き出す条件闘争をするものと予測されます。もう一方は、今回こそ一挙に完全廃棄を実現すること以外は認めません。双方の思惑に溝があって、足して2で割ることが難しい困難な交渉になります。

このように東アジア情勢が流動化している重要な時に、中国の李克強首相が8年ぶりに日本を訪れました。そして安倍首相と首脳会談を行い、
☆日本と中国が一致して「板門店宣言」を支持し、朝鮮半島の非核化が実現するよう連携する。
☆中国のインフラ整備に日本企業が協力するプロジェクトを協議するため「日中官民フォーラム」を設立する。
☆また、日中二国間の安全保障体制について、東シナ海における両国の艦艇や航空機による偶発的な軍事衝突を避けるため、「海空連絡メカニズム」の運用を開始することに合意しました。これが実現しますと、日本の海上自衛隊、航空自衛隊と人民解放軍の海軍、空軍との間に専用連絡回線、ホットラインが設置され、両国の安全が確保されます。
☆その上、11年ぶりに中国から“トキのつがい”が贈られることになり、日中平和友好条約締結40周年の節目に、日中両国の関係改善を内外にアピールするふさわしい機会となりました。
日中両国が相互信頼をいっそう深め、協調して、朝鮮半島の非核化に寄与し、アジア・太平洋地域の平和と繁栄に貢献することは、日本と中国に課せられた共通の責任だと思います。

私は、一昨年の秋、子どもの頃からあこがれていた孫悟空を探しに
西域を旅しました。
西安で三蔵法師には たっぷり会えましたが、孫悟空は見つかりませんでした。それで敦煌に足を延ばしました。そして、タクラマカン砂漠東端に連なるクムタグ砂漠を越えて、楡林窟にたどり着き、遂に念願の孫悟空に会うことができました。
第3窟西壁全面を占める「普(ふ)賢(げん)菩薩図」の右端中ごろに、天竺(インド)からの帰り、白馬を連れた三蔵法師と供の孫悟空が五台山の方角に向かって合掌している「玄奘(げんじょう)取経図」が描かれています。
“遂に孫悟空に会えた”という感動が伝わってきました。
西域ひとり旅の帰途、チンギス・ハーンに会うために蘭州に立ち寄りました。モンゴルにはチンギス・ハーンの遺跡はありません。墓探しも禁じられています。ところが、タングート族の侵略から中国を守ったチンギス・ハーンの功績を讃えて、蘭州郊外の興隆山に慰霊の大雄寶殿が建てられており、大ハーンの大きな座像が祀られています。
登山口山門付近で掃除をしていた70才そこそこと見受ける男の人から、突然、話しかけられました。

「あんた、どこの人だね。中国人ではないみたいだ」
「東京から来ました。日本人です」
「やっぱりそうか。本物の日本人を見るのは初めてだが、こんな
ところまで何しに来たのかね?」
「ここにお祀りしてあるチンギス・ハーンをお参りに来ました」
「私のおじいさんや親の兄弟は、あらかた『9・18』か、『抗日戦争』で日本人に殺された。母親から日本人は鬼より怖い畜生だとさんざん聞かされて育ってきた。あんたを見て、ひょっとしたら日本人ではないかと思ったのだが、普通の人に見たので頭が混乱して、つい確かめたくなって声をかけてしまった」
「よく声をかけてくれました。とてもうれしいです。おっしゃる通り、かつて日本軍が中国を侵略して、多くの人を殺したり、傷つけたりしました。あれは当時の軍隊のやったことで、現在の日本人には関係のない昔の出来事だったとは申せません。日本民族の仕出かした過ちですから、当然、私たちに責任があり、懺悔(ざんげ)しています。
ただ、45年前、毛沢東、周恩来と日本政府代表との間で、これからはお互いに仲良くしていこうと誓い合いました。日本人は、その約束を守ってきたし、今後も守ります。
日本人は、ただ、ただ平和を願っている人ばかりです。二度と戦争はしないと誓っています」
「日本人でも、あんたみたいな“いい人”もいるんだ」

会話はそこで途切れました。
オマエはいい人のようだが、あとの日本人は悪いヤツばかりに違いないという余韻を引きずっていました。
長い間の怨念を払しょくするには、並大抵の努力では足りないと改めて教えられました。

中国に対する日本の寛容と忍耐の精神は、必ずしも十分とは申せません。ですが、私は日中国交正常化以来、46年間、ひたすら日中間の厚い氷を融かす「融冰之旅」を続けて参りました。私のような日本人は幾らもいます。
皆さんも、今日の出会いをきっかけに、私のあとに続いて、日中相互理解の深化に目を向けるよう期待いたします。(元内閣官房副長官)

復旦大学 講義録(2018/5月23日)- その ①浅野勝人

復旦大学 講義録(2018/5月23日)- その ①

「朝鮮半島非核化と東アジア情勢」
 安保政策研究会 理事長  浅野勝人

中国の名門3大学(精華大学、北京大学)のひとつ「復旦大学」から特別講義の要請をいただき、先日、上海を訪れました。
演題の「朝鮮半島非核化と東アジア情勢」は、大学側からの要望によります。2回に分けて、以下、皆様に報告いたします。


いま、世界がかたずを呑んで見守っているのは、6月12日、シンガポールで行われる予定のアメリカのトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談の成りゆきです。
角突き合わせて、一触即発だった米朝関係は、平(ぴょん)昌(ちゃん)の冬のオリンピックをきっかけに一転して雪どけムードになりました。
これをきっかけに、日・中・米・韓・朝 5ヵ国の首脳が、目まぐるしく動きました。
3月26日、北京で行われた習近平・金正恩による中朝首脳会談から始まって、フロリダの日米首脳会談、「板門店宣言」を発表した南北トップ会談、さらに今月9日、東京を訪れた李克強首相を交えた日・中・韓 3か国首脳会談、引き続き行われた安倍晋三・李克強の日中首脳会談を経て、歴史的なトランプ・金正恩米朝首脳会談に収れんされていきます。

ただ、冒頭「行われる予定の米朝首脳会談」と申したのは、トランプ・金正恩両氏の独特のパーソナリティから何が起きるか予測困難だからです。すでに、金正恩は米韓軍事演習に不快感を示して、会談延期をほのめかしています。これを逆手に取りかねないのがトランプです。(案の定、講演後、やるやらないのゴタゴタが起きているのはご承知の通りです)

予定通り米朝首脳会談が行われた場合、この交渉では、先の「板門店宣言」で ☆核実験とICBM(大陸間弾道ミサイル)の試験発射は止める。☆核のない朝鮮半島の実現を目標とする。と表明した北朝鮮の非核化をめぐって、そのための条件と核廃棄へのロードマップの詰めが焦点となります。
北朝鮮は「金正恩体制の国家の安全保証」を核廃棄の前提条件にしています。一方、アメリカは、北朝鮮が核とミサイルの査察を認め、期限を区切って核を廃棄する完全非核化を譲れない条件としています。
特に、日本にとっては、北朝鮮は日本を攻撃目標とする中距離弾道ミサイルを500ないし600弾 所有していますから、従来のようなあいまいな結着は許容できません。金正恩が最高指導者に就任してから、ミサイル実験を86回、核実験をインドと同じ6回実施しています。もう必要のない試験発射をしないことを隠れ蓑にして、核保有国となることは絶対に看過できません。

幸い、中国は北朝鮮を国家として存続させたいと考えていますし、同時に朝鮮半島の非核化にも賛成の立場を明らかにしています。
中国は、まさに米朝双方の条件を満たす仲介役としてうってつけの存在です。中国の動向に世界の期待が集まるのは当然です。

実は、去年から今年にかけて、「米朝軍事衝突の可能性高まる」「米軍、4月に北朝鮮攻撃の観測強まる」と報道するメディアが少なくありませんでした。つい先日、書店の書棚に「米軍、6月に北朝鮮爆撃」というタイトルの新刊書を見つけ、いささか呆れましたが、これほど米朝関係は最近まで緊迫していたという証しだと思います。

ところが、私はこれまで一貫して「アメリカと北朝鮮の軍事衝突・戦闘はない」と早い段階からネットやさまざまな新聞、雑誌に明言してきました。
なぜそう判断したのか、理由を述べたいと存じます。

能力 × 意図 = 戦闘 という方程式で、米朝両国の関係を
分析してみます。
北朝鮮は、いずれアメリカが攻めて来ると思い込んでいるので、ミサイルと核を開発・所持することによって国を守ろうとしています。イラクやリビアは、弾道ミサイルと核兵器を持っていなかったから戦闘に負けて崩壊したと考えています。
つまり、北朝鮮はミサイルと核を装備して、アメリカの攻撃に備えている「専守防衛」の国です。口先では、ICBM(大陸間弾道弾)でアメリカ本土を火の海にすると言っていますが、そんな能力はないことを彼ら自身、分かっています。ですから、アメリカまで行って戦闘をする意図も能力もありません。

一方、アメリカは北朝鮮を殲滅しても、中国、ロシアとの関係を決定的に悪化させるだけで何のメリットはありません。同盟国の韓国、日本への脅威を排除するのが狙いですから、北朝鮮が東アジアの平和を乱す核とミサイルを凍結・廃棄すれば、目的を達したことになります。従って、アメリカも能力はあるけれども、進んで北朝鮮と戦う意図はありません。
以上の分析に従えば、北朝鮮が「国家の安全保障」を首脳会談開催の前提条件にして、アメリカとの交渉を選択したのは理にかなっています。(元内閣官房副長官)

◎米朝会談中止の背景を探る

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◎米朝会談中止の背景を探る
 文在寅の「仲裁外交」失敗
 トランプ、段階的非核化で“呼び水”
 世紀の米朝会談が流れた。トランプが6月12日の会談予定を中止した。その背景には韓国大統領文在寅のトランプへのミスリードがあったようだ。経緯を見れば、まず22日の米韓首脳会談に先立つ米韓調整で急速にトランプと金正恩との会談へのムードが盛り上がった。文が“垂涎の話し”を伝えたからに違いない。ところが北の対米強硬路線は変化の兆しを見せず、トランプは文在寅に対し電話で「なぜ、私に伝えた個人的な確信(assurance)と北朝鮮の公式談話内容は相反するのか」と詰問している。従ってトランプと文の会談は文の言い訳で、相当気まずいものとなったようだ。
  これを裏付けるようにニューヨークタイムズ(NYT)は20日、「トランプ米大統領がかけた電話は文在寅韓国大統領の訪米のわずか3日前だった」とし「これは文大統領がワシントンに来るまで待てないという、トランプ大統領の不満(discomfort)を表しているという解釈が米政府で出ている」と報じた。 要するに、トランプは韓国から伝え聞いた北朝鮮の非核化交渉の意志を信じていたが、違う状況へと展開し、韓国の「仲裁外交」が失敗したと言うことだ。
 トランプは金正恩に送った書簡で6月12日の会談断念の理由について「会談を楽しみにしていたが残念なことに北朝鮮の最近の声明で示されている怒りや敵意を受けて私は現時点で会談を開くことは適切でないと感じた」と述べた。トランプが会談を断念した理由をもう一つ挙げれば、何と言っても水面下の交渉で米国の北に対する非核化要求の内容が極めて厳しかったことが挙げられる。これが北を硬化させたことにあるのだろう。また補佐官ボルトンが北の非核化でカダフィ殺害に至る「リビア方式」に言及したが、金正恩は自分もカダフィと同様の運命をたどりかねないと感じて拒絶反応を示したのだろう。北朝鮮外務省第1次官の金桂冠は16日「我が国は大国に国を丸ごと任せ悲惨な末路を迎えたリビアやイラクではない」として、「リビアモデル」とこれに言及したボルトン補佐官に強い拒否感を示している。
 この発言に対してトランプは、怒りをあらわにして「このまま会談をやってもいいのか」と周辺に漏らすに至った。副大統領ペンスも「トランプ大統領を手玉に取るような行動は大きな過ちとなる。会談で大統領が席を立つ可能生もある」と会談決裂の可能性まで示唆した。しかし北の“挑発”発言は止まらず、外務省で対米交渉を担当する次官崔善姫は公然とペンスを批判「米国問題に携わる者として、ペンス副大統領の口からそのように無知でばかげた発言が飛び出したことに驚きを禁じ得ない」と延べた。加えて「我が国は米国にこれまで経験も想像すらもしたことのない恐ろしい悲劇を味わわせる可能性がある」とすごんだ。「米国は『核対核の対決』で北朝鮮と相まみえることになる」ともまくしたてた。この崔善姫発言は米朝首脳会談の中止を改めて確定的にしたものと言えよう。
 一方、日本政府には早くから会談の実現性に疑問を持つ空気が強かった。外相河野太郎は「条件が整わないなら米朝会談をする意味がない」と述べると共に「会談をすることが目的ではなく、北朝鮮の核、ミサイル、拉致問題の解決が究極の目的」と日本の立場を強調している。官房副長官野上浩太郎は、「トランプ大統領が米朝首脳会談延期の可能性に言及したことは北朝鮮の具体的行動を引き出すためのもの」と分析している。
 こうして6月12日の会談は実現しない方向が定まったが、トランプが完全に断念したかというとそうでもなさそうである。トランプは「今は適切ではない」と述べており、望みを捨てていないのだろう。とりわけトランプの反移民政策やロシアとの不透明な関係への不満から野党・民主党に追い風が吹いている秋の中間選挙をひかえて、北との和解は大きなプラス材料になる。トランプは北への圧力を維持しつつ、秋までに会談実現に向けてのアヒルの水かきが続くのだろう。トランプが北に求める非核化について「直ちに完了してほしいが、段階的に行う必要が少しあるかもしれない。段階的でも迅速に行うべきだ」と述べたのは、北への呼び水の一環であろう。
◎俳談

【ノスタルジア】
 最近は乳幼児を背負う母親が少なくなった。ベビーカーかだっこ型のベビーキャリーが流行っている。銀座通りには最新ファッションの女性がこれまた高級ブランドのベビーカーで闊歩しているが、ノーテンキそうで子育てが大丈夫か心配だ。電車の中ではブレーキをかけないままで、危険極まりない。いざというときはだっこよりおんぶだろうと思うがどうだろうか。大空襲も大震災もおんぶだった。両手が使えるし身動きが自由だ。
ねんねこの中の粉雪払わねば 毎日俳壇入選
 ねんねこは赤ん坊を背負う際に用いた防寒用の子守り半纏(ばんてん)。なぜか夕焼けの中の五木の子守唄を思い出す。ちなみに 「おどま 盆ぎり 盆ぎり」の「おどま」は、自分のこと。「盆ぎり」は「盆限り」と書いて、「ぼんぎり」と読ませるから、お盆までのこと。「お盆が過ぎたら私は、もうここにいない」と歌っているのだ。子守りは嫌だったのだろう。子守り半纏の欠点は赤ん坊のクビがうしろにかっくんとなり、座らないことだが、最近では「クビかっくん防止型」も売られている。
わら草履はける昭和よ冬の星 東京俳壇2席
ノスタルジアは俳句になる。

◎米韓、北への「不可侵」を表明

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◎米韓、北への「不可侵」を表明
  米朝首脳会談前に和解ムード
 トランプ南北統一に言及
 米韓首脳会談は、6月12日に予定される米朝首脳会談に向けて、慎重姿勢のトランプを韓国大統領文在寅が説得する構図が浮かび上がった。結局22日の会談では、トランプと文在寅は「米朝会談が支障なく開かれるよう最善を尽くす」方向で一致した。ワシントンでは曲折をたどっても会談は実現するとの見方が強まっている。しかしそれも「金正恩はノーベル賞を待望するトランプに対して時間がたてば消える程度の非核化の約束をしようとしているかもしれない」とニューヨークタイムズ(NYT)が皮肉っており、水面下のやりとりがどう進むかが焦点だ。
 発表によるとトランプと文は「北が信用出来るような体制保障について意見を交わし、北に対する『不可侵』の約束が必要なことで一致した」という。また南北が板門店での首脳会談で合意した「終戦宣言」を米国、韓国、北朝鮮の3か国で合意に持ち込むことでも一致した。ただトランプは北朝鮮との首脳会談について「会談が開かれればいいが、今回開かれなければ次回に開かれるだろう」となお懐疑的な立場を崩していない。「来週分かる」とも述べた。まだ米朝会談の延期もあり得るという姿勢である。
 トランプは文との会談で、朝鮮半島の将来についての鳥瞰図を描いて見せた。「南北朝鮮はいつかは一緒になり一つの国に戻る。南北がそれを望むなら私もそれで良い」と述べた。トランプは既に机上にある「北の非核化と終戦宣言。その後の経済協力」から大きく歩を進め、南北統一への支援に初めて言及したことになる。
 これに関連して3月末と5月の二度にわたって金正恩と会談した米国務長官ポンペオは23日、下院外交委員会の公聴会で、金正恩との会談で正恩が「体制保証」を求めたことを明らかにしている。さらに金正恩はポンペオに対して「朝鮮戦争を終結させ、平和条約を締結する」意志を表示すると共に「我々の非核化の方針と意思を疑わないでほしい」と伝えたと言われる。ポンペオは公聴会に提出した文書で米朝首脳会談について、「適切な取引が机上になければ、丁重に立ち去ることになる」と述べた。これは水面下で進んでいるとみられる米朝調整に向けて“牽制球”を投げたものだろう。
 一方でNYTはトランプの参謀の懸念として「大統領がノーベル賞を待望している一面があり、これを看破した金正恩が時間がたてば忘れるような約束を準備している可能性がある」と、金が“ノーベル賞”を“まき餌”にしてトランプをおびき寄せようとしている側面を報じている。さらに同紙は、米政府関係者が「金正恩が米朝会談で今後半年以内に核兵器の一切を放棄し、関連施設を閉鎖するタイムテーブルに同意する」と予想したことをとらえて「こうした日程は極めて無理な計画だ」と否定的見解を述べている。
 北朝鮮の後ろ盾の中国は中国外務省報道局長の陸慷が23日、米国と北朝鮮の双方に対し、「問題の政治解決プロセスは得難い歴史的好機を迎えており、米朝双方が好機をつかみ、それぞれの懸念を解決してほしい」と強調した。トランプは中国を強く牽制する発言も繰り返した。「金正恩氏が習近平国家主席と2度目の会談をしてから態度が変わり、落胆した。」と述べた。これは金正恩が習近平に操られている側面に不満を抱いていることを物語る。トランプは習近平を「世界一流のポーカープレーヤー」と皮肉った。国連安保理事会の常任理事国であるにもかかわらず中国は制裁決議の完全なる履行をしているかどうか疑わしい。国境線を越えて北に物資が続々と届いているとの情報もある。
 一見日本の出番がないように見えるが、今後米朝会談が進めば非核化の工程表作りが俎上(そじょう)にのぼる。日本は積極的に核兵器解体と国外への搬出や、専門家による検証に参加する必要がある。安倍が北への見返りについて「先に核の完全放棄、後に補償」方式を強調しているのは当然である。要点は金正恩が新年から打ち出している経済重視路線をいかにして国際社会が定着させるかにあるのだろう。  
◎俳談
【分かりやすさ】
 名句は小学生でも分かるし、感動する。芭蕉の名句はすべて分かりやすい。
古池や蛙飛び込む水の音
を理解できない子供はいない。直感で分かってしまうのだ。専門家の理論づけは子供の直感の域を超えることはない。
分かりやすさでは小林一茶の右に出るものは無いだろう。
一茶の俳諧俳文集「おらが春」にある
我と来て遊べや親のない雀
名月を取ってくれろとなく子哉(かな)
は、分かりやすい句の筆頭だ。本来俳句は難しい用字用語とはなじまない。難しい言葉を武器として生きてきた職場人間が俳句に熟達しようと思ったら、その習癖をかなぐり捨てる必要があるのだ。芭蕉は「俳諧は三尺(さんせき)の童にさせよ」と述べたが、言い得て妙である。ちなみに小学生でも分かる拙句を挙げれば
秋の日に考へているゴリラかな 産経俳壇入選

◎野党の「加計疑獄」狙いは不発に終わる

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◎野党の「加計疑獄」狙いは不発に終わる
 安倍は7対3で3選の方向
「またも負けたか八聯隊(はちれんたい)、それでは勲章九連隊」は、昔大阪出身の陸軍連隊が虚弱であったことを茶化しているが、これは今の野党にもそっくり当てはまる、総力を挙げた加計問題が愛媛県による内部文書の信憑性が問われる事態になってきたからだ。核心部分である15年2月の安倍の加計との面会が完全否定され、文書ねつ造が問われるフォントの混入までが明るみに出ており、野党の追及は限界が見えた。自民党内の空気も「政局化不可能」(党幹部)との見方が支配的となってきており、9月の総裁選で安倍が3選される流れは7対3で強まった。
 朝日だけを購読している人は今にも「政局」かと思うだろうが、ミスリードされてはならない。読売か産経を併読した方がいい。23日もトップで「加計の面会否定の根拠示せず」と大見出しを踊らせているが、野党をけしかけているかのようで、平衡の感覚に欠ける。朝日は、加計問題を1年半も取り上げ続けて、けたたましく騒いでいるが、夢と描く昔の造船疑獄や昭電事件の再来などはあり得ない。なぜなら安倍や自民党幹部をめぐって贈収賄事件に発展する可能性はゼロだからだ。発展するならきな臭さが漂うものだが、まったくない。
 そもそも愛媛県の内部文書はテニオハもままならないレベルの県庁職員が書いたもののようで信憑性のレベルが低い。その核心部分には「2/25に加計理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設定予定の獣医学部では国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そういう新しい獣医学部の考えはいいね。』とのコメントあり。また柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があったので、早急に資料を調整し、提出する予定。」とある。
 文書は基本的に、明朝体と思われるフォントで構成されている。ところが、「首相からは『そういう新しい獣医学部の考えはいいね。』とのコメント」の部分と「柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示」の核心部分だけがゴチックになっている。なぜ肝心の部分だけがゴチック体なのかは、おそらく後から挿入された可能性が強い。この継ぎはぎの字体を見ても慌てて中途半端な改竄が行われたのではないかと疑いたくなる。強調したいのならアンダーラインを引くとか、太文字にするとかが考えられるがそうではない。マスコミは、信憑性のない文書でカラ騒ぎのしすぎだ。
 安倍と加計との会談について、安倍は「指摘の日に加計氏と会ったことはない。加計氏から(学部新設の)話をされたこともないし、私から話をしたこともない」と全面否定。2015年2月25日の官邸の記録でも「加計氏が官邸を訪問した記録は確認できない」と“動かぬ証拠”で反論している。
 これに対して立憲民主党の福山幹事長は記者会見で、「首相が国会で虚偽答弁を繰り返してきた疑いがより強まった。首相の進退が問われる重大な局面を迎えた」と述べ、無理矢理政局化を目指している様子がありありだが、ネズミが猫を狙うようで痛ましい。また自民党では村上誠一郎が1人「今までの行動パターンをみたら、総理が本当のことを言ってると思えない。愛媛県の職員がなぜウソをついてまで書く必要があるのか。ウソは書いてない。柳瀬(元首相秘書官)より信用がおける。ということは、総理の信用は愛媛県の職員より落ちちゃったってことだ。」と太鼓腹を揺すって毒舌を吐いているが、党内議員で同調するものはほとんどいない。
 自民党の安倍支持勢力は依然として安定している。これまでのところ国会議員405人のうち安倍支持御三家の細田派94人、麻生派59人、二階派44人は動かない。細田派は22日の総会で満場一致で早々と連続3選を決めている。トップを切ったのであり、今後各派が態度決定を迫られる。加えて官房長官菅義偉の影響が強い74人の無派閥も、大勢は様子見ながら安倍へと流れる傾向を示している。会期末の6月20日まで1か月を切っており、夏休み入リすれば事態は消え去る。安倍は地方行脚で党員との親密度を高め、緊迫感漂う極東情勢でも活発な外交を展開する。そして、9月に3選を達成して5年間好調であった景気の維持に全力を傾注しつつ、2020年オリンピックを迎えるのが王道だろう。
◎俳談 
【俳句と諧謔味(かいぎゃくみ)】
 簡単に言えば重いテーマを軽く語るというのが芭蕉の言う「軽(かろ)み」であろう。例えば
秋深き隣は何をする人ぞ
秋が深まり、山野が寂しい風情になってくると、隣の物音も気になる。今何しているのだろうかと人恋しい気持ちにもなる。筆者は芭蕉が隣人の職業を気にしているというよりも、親しい隣人が何をしているのだろうかと気遣っているように句意を読み取りたい。平明な用語で全く気取っていない。「俳諧は3尺(さんせき)の童にさせよ」と芭蕉は述べているが、まさにその言葉を地で行っている。この「軽み」をさらに推し進めると「諧謔味」になることが多い。一茶は
春雨や食はれ残りの鴨(かも)が鳴く
と詠んだ。今は鴨が池にあふれているが、昔は見つければ捕って食べていたと考えられる。運良く食べられなかった鴨が春雨の中で鳴いている風景を詠んだが、みそは「食われ残り」。なかなか言える言葉ではない。
筆者もユーモアのある句は好きだ。
玄関開けて「受かったよ」と大声を上げた子供がずっこけた。
合格子(ごうかくし)上がり框(かまち)でずつこける 杉の子
雑草の中で高さ20~30センチくらいのスカンポがニョキニョキと立ち上がっているのが面白いと感じて
すかんぽのぽつぽつぽつの余生かな   杉の子
 

◎米朝会談へ神経戦が最高潮


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 ◎米朝会談へ神経戦が最高潮

米「半年以内の核搬出」要求
 北「体制の保障と平和協定」で瀬踏み
 6月12日に開催予定のトランプと金正恩の米朝首脳会談に向けて、神経戦が展開されはじめた。分析すれば米国が、「完全なる非核化」を要求し、北はこれを拒否した上で体制の保障を求めている構図が浮かび上がる。米国は北に対して核弾頭や大陸間弾道弾を半年以内に国外に搬出するよう要求、その代償としてテロ支援国家指定の解除と金正恩体制の存続をちらつかせているようだ。しかし金正恩が命と守る核兵器を半年以内に搬出する可能性はゼロに近く、米提案は駆け引き材料に過ぎまい。溝が埋まるにはほど遠い。
 北朝鮮は16日、米韓空軍の定例合同訓練を理由に、南北閣僚級会談の中止を一方的に通知し、第1外務次官金桂官が談話を発表した。談話は「大統領補佐官のボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は『先に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器の完全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」と米国の要求を批判。「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本質において大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの運命を尊厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ」と強調した。さらに金桂官は「一方的に核の放棄だけを強要しようとするならば、首脳会談に応じるかどうかも再考せざるを得ない」と首脳会談再考も示唆している。
 これに対しトランプは「われわれは何の知らせも受けていない。様子をみてみよう」と述べ、北朝鮮の今後の出方を見極める考えを強調した。さらにホワイトハウス報道官のサンダースは、米朝首脳会談について、「重要な会談だ」と指摘し、準備を進める考えを示す一方で「トランプ大統領は、困難な交渉には慣れていて、その準備も整っている。ただ、北朝鮮が会いたくないのなら、それでもいい。その時は、最大限の圧力をかけ続けるだけだ」とすごんで見せた。北朝鮮が対話を選ばなければ、圧力を強める考えを示して、けん制したことになる。
  しかし、“口撃”の厳しさは半島民族の“特性” であり、隘路を探していることは間違いない。その一つとして、韓国大統領文在寅を通じてトランプの説得を要求している可能性が高い。米韓首脳会談は22日に予定されており、北朝鮮が米韓合同航空戦闘訓練『マックスサンダー』を理由に南北閣僚級会談を一方的に中止したのは、米韓首脳会談に向けた思惑があるからにほかならない。その意図は韓国を動かして、米国との首脳会談の際の北朝鮮の立場をより正確に説明させようとしているのかもしれない。既に北朝鮮は韓国との閣僚級会談を中止することで、F22などの戦略兵器が朝鮮半島に飛来することを望んでいないという意思を明確に示している。金正恩は北朝鮮の立場をあらかじめ文在寅を通じてトランプに伝達してけん制しているのだろう。
 そもそも北朝鮮の狙いは今年早々から明白だ。正月に金正恩は対話攻勢に転じて、まず米国の同盟国である韓国の取り込みを図ってきた。金正恩と文在寅の会談で準備段階を終え、いよいよトランプとの会談に向けた総仕上げ段階に入っているのだろう。北は体制の保障と平和協定締結を最終目標としている。また一連の言動は米朝会談で主張する予定の重要なメッセージを米側にあらかじめ伝えて、瀬踏みをしているのだろう。これに対して米側も半年以内の核搬出という“高値”をふっかけて、妥協点を模索しているのが現在の図式だろう。
◎俳談
【黄昏レンズ】
三夕(さんせき)の歌とは『新古今和歌集』に並ぶ「秋の夕暮れ」を詠んだ三首の和歌をいう。日本人なら「三夕」と聞いただけで、そこはかとなき哀愁を感ずる名歌だ。寂蓮(じやくれん)の
寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ
西行の
心なき身にもあはれは知られけり鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕暮れ
藤原定家の
見渡せば花も紅葉(もみぢ)もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ
の三首。『新古今和歌集』の代表的な名歌である。今年も夕方の俳句に挑戦しようと思う。
鳧(けり)の子のけりつと鳴ける日暮れかな 東京俳壇入選
既に画壇には三夕どころか、「無数の夕刻」を表現した版画家がいた。川瀨巴水(はすい)だ。別名「黄昏(たそがれ)巴水」と呼ばれたほど、郷愁の日本の夕刻を表現し続けた。これを筆者は写真で成し遂げようと、「黄昏レンズ」を入手した。ニコン58mm F1.4だ。フラッシュなど不要の「黄昏専門レンズ」と名付けている。これで黄昏の東京を撮って歩くつもりだ。俳句も黄昏、写真も黄昏。人生の黄昏時にふさわしいテーマの追求だ。
日の落ちてとっぷり暮れて十三夜 産経俳壇入選
  

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