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◎俳談

◎俳談
【昼寝】
富裕にはいささか遠し三尺寝 産経俳壇入選
 年寄りに昼寝ほどありがたいものは無い。若いころは他社の記者から「あいつはいつ寝てんだ」と言われたほど働いたから、当然の“報酬”だ。おまけに今は世のため人のために、夜中に目をらんらんと光らせて、4000字の政治ブログを毎日書いている。昼寝は当然だ。朝飯食っちゃ寝、昼飯食っちゃ寝の毎日だ。
  掲句の三尺寝は夏の季語「昼寝」の傍題の一つ。語源ははっきりしないが、、昔の労働者である職人や大工や左官が、狭い職場で仮眠を取ることから言われるようになったという説があり、これが本筋情報。日の影が三尺移る程の短い時間の仮眠を表すとする説もある。面白いのは、人間の体の中に棲むといわれる「三尺(さんし)の虫」が人の眠気を誘って仮眠をさせ、天帝にその人間の行った愚行を告げ口に行くことから出来たという説だ。天帝は告げ口を聞いて、寿命を縮めるのだげな。この説が眉唾ながら一番面白い。
  昼寝の傍題にはもう一つ「昼寝覚(ざめ)」がある。
昼寝覚雲を目に入れまた眠る   大野林火
はるかまで旅してゐたり昼寝覚  森澄雄
筆者の句もまた掲げる
恐ろしき唱和を見たり昼寝覚 朝日俳壇1席

◎米、北へのテロ国家指定で対中圧力

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◎米、北へのテロ国家指定で対中圧力
  標的は中国企業193社
 米朝緊迫化は不可避
 核・ミサイル実験の準備を続ける北朝鮮に対して米トランプ政権が最終的外交戦略の火蓋を切った。北がもっとも“痛み”を感ずる「テロ支援国家」再指定は、行き詰まり状況を打破するための切り札であり、包囲網の輪はひしひしと金正恩に向かって狭まりつつある。加えて中国に対して“行動”を迫るものでもある。北との取り引きを続ける中国企業193社に対して取引中止の圧力をかける。一見、国連制裁決議と重複するように見えるテロ国家再指定だが、米国はこれをテコに北と外交関係がある160か国に対して協力を要求する。多くの国は、北をとるか米国をとるかの選択を迫られ、最終的には米国に同調するだろう。米朝緊迫化は避けられない方向だ。
 政府筋によれば、トランプはさきのアジア歴訪の際に首相・安倍晋三には早期再指定の方針を伝え、安倍もこれを了承したという。各国首脳に先だって安倍が「圧力を強化するものとして歓迎し支持する」と表明したのは当然である。そもそも再指定はトランプが就任早々から考えていた問題である。昨年12月の安倍トランプ会談で安倍が極東情勢を説明した中で、キーポイントとして指摘したとみられている。米国は1988年に大韓航空機爆破事件を契機にテロ支援国家に指定。ブッシュ政権が2008年に核計画の断念との取り引きで解除したが、北は核・ミサイル開発を再開して、完全にだまされた結果となった。ならず者国家を信用する方がおかしいのだ。
 過去において北のテロはやり放題の状況であった。日本人の拉致はまさにテロ行為であり、2月の金正男の殺害、北に拘束された米国人留学生の事実上の“殺害”など枚挙にいとまがない。トランプはアジア歴訪から帰国して再指定を実行に移す段取りであったが、習近平が共産党対外連絡部長宋濤を特使として北に派遣したことから、いったん様子見となった。トランプは「大きな動きだ」と歓迎する発言をしている。しかし20日に帰国した宋濤は、結局金正恩に会えずに終わり、中国による対北圧力の限界を見せた。その直後の再指定であった。
 問題は、再指定で何が制裁対象になるかだが、ホワイトハウスのブリーフでは武器禁輸、経済援助の禁止、金融取引の規制などの措置が取られる。これは国連決議ともダブる。しかし再指定は各国を動かすテコの役割を果たす。米国が主導して今後各国への働きかけが行われる。米国のメンツに関わる問題であり、その外交力をフルに発揮することになるだろう。
 とりわけ北を野放図にのさばらせてきたのは中国であり、中国を制御しなければ北問題は解決しないと言ってよい。どう取りかかるかだが、米国は北との取り引きがある193社の中国企業のリストを保有しており、これらの企業の対米取り引きに対して事実上禁止につながる制裁を科して行くものとみられる。国務長官ティラーソンはテロ支援国家指定の意義について「北朝鮮や関係者にさらなる制裁と懲罰をかけることになるし、北と関わろうとする第3国の活動を途絶えさせる結果を招く」と語っている。
 トランプは訪中で2500億ドル(28兆円)の「商談」を習近平からもらって、目くらまし状態となって北問題を詰めないままに終わった。しかし、今回の制裁は北との貿易の9割を占める中国を狙ったものと言えるだろう。習近平は対米貿易を“人質”にとられた形となる。もともと金正恩を嫌悪している習近平は特使派遣が空振りに終わってよほど頭にきたとみえて、中国国際航空の北京ー平壌便の運行を停止する措置に出るようだ。北京と平壌を結ぶのは高麗航空だけとなる。
 また軍事面でも効果はなくはない。テロ支援国家再指定は国家が他の国家を経済的に束縛することになるが、その禁を破る行為に対しては、米国が先制攻撃を北に対して断行する口実となり得るからだ。
 ただでさえ年末年始にかけて北朝鮮は国連制裁が利きだして行き詰まるという見方が強かったが、今回のトランプの“本気度”は相当なものがあり、ダメ押しの制裁となる。金正恩は暴発に出るか、制裁に屈するかの二者択一を迫られることは確かだ。

◎俳談

◎俳談
【一字が一句の生死を決める】
東京の娘の部屋や紙の雛 朝日俳壇3席
 切れ字は俳句の命である。切れ字があるから五七五で宇宙を表現することもできるのだ。切れ字とは、読んで字の如くそこで一句が大きく切れる表現だ。代表的な切れ字が「や」「かな」「けり」である。先に挙げた中村汀女の<さみだれや船が遅る々電話など>を再び例に挙げる。切れ字が入ると<さみだれや/船が遅る々電話など>と切れる。読者は「さみだれ」で情景を脳裏に描き、それに続く下の句で平和な家庭の情景を思い浮かべる。切れ字「や」の持たらす余韻は限りなく大きい。掲句は一人暮らしの娘の部屋を詠んだが、この場合の「や」は心配している父親の有様すら想像させる。
王手打ち指迷わずに西瓜へと 杉の子
 掲句は「王手打ち」で軽く切れる。この場合の「ち」は切れ字の効果と同時に英語の「and」の意味を伴って、一句を滑らかにする。余韻をもたらすのである。最初、筆者は「王手打つ」とすべきか迷ったが「ち」とした。なぜか。「ち」を「つ」に変えると切れがなくなりすべてが「指」にかかってしまって、一句の雰囲気がぶちこわしになるのだ。一語が陳腐なものになってしまう。「つ」と「ち」の違いは、俳句の生死を決める決定的な意味を持つ。「句観」の違いどころか、熟達か稚拙かの差がある。

◎岸田が「ポスト安倍」意識の代表質問

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◎岸田が「ポスト安倍」意識の代表質問
 安倍に「上から目線」と苦言
「禅定路線」も捨てがたく“ごますり”も
 衆院代表質問の場でもあらばこそ、自民党政調会長岸田文男が、「ポスト安倍」といういわば“私闘”に属する問題を取り上げた。いささかあきれたが、野党の“ふんどし担ぎ”のちまちました質問より面白かった。政権奪取に向けての政治信条も「正姿勢」と打ち出し、所属する派閥宏池会の元祖池田勇人の「低姿勢」から脱皮した。もっとも、一方では安倍政治を賃金や雇用において「大きな成果」と褒めるなど、なお“禅定路線”捨てがたしの心境もちらつかせた。演説終了から席に着くまで25秒間万雷の拍手が鳴り止まなかったが、これを誤判断して突撃する時期ではあるまい。ポスト安倍のライバル石破茂には大きな差を付けた感じだが、来年9月の総裁選挙に出馬するには、首相安倍晋三が相当弱体化しなければ無理とみる。
 岸田はまず「総理はアベノミクスをはじめとする政策の先にどんな姿を見ているのかお示し願いたい」と安倍に政治信条の明示を求めた。安倍はこれには全く答えず、あえて無視して答弁書の読み上げに終始した。ついで岸田は「池田首相が自らの政治姿勢として寛容と忍耐をスローガンとして提唱したことが低姿勢と受け取られた」として「責任ある政治の姿として疑問が指摘された」と述べた。しかし「低姿勢」は「受け取られた」のではなく、ブレーンの大平正芳や宮沢喜一が勧めて池田自らが言及したこともある事実であり、事実誤認がある。岸信介の安保条約改定で見せたタカ派姿勢のアンチテーゼとして、池田は低姿勢を自ら打ち出したのだ。
 しかし、その間違った論拠に立って岸田は池田が師として仰いだ陽明学者安岡正篤が「低姿勢、高姿勢のいずれも間違いである。自分の政治信条をはっきり持っていれば自ずから正姿勢になる」と助言したことを指摘。「相手の顔色を見て右顧左眄(うこさべん)するようでは国民への責任を果たせない。同時に野党や国民に上から目線で臨むようでは国民の支持を失い、真っ当な政治を行えない」と信条を述べた。この「上から目線」発言は安倍への苦言とも受け取れるが、岸田は重要ポイントを見逃している。それは今回の総選挙の大勝が、北朝鮮に毅然として対処する安倍自民党の路線を有権者が圧倒的に支持したからにほかならない点だ。北への対処方法は一見タカ派に見えるが、世界標準から見ればハト派に属するくらいのレベルである。そして岸田は「選挙において多くの議席をいただいたからこそ、正姿勢の3文字を胸に公約実現のために日々前進してまいりたい」と結んだのだ。今後、岸田の政治信条は「正姿勢」と固まったが、自ら正しいと信ずる姿勢が往々にして唯我独尊につながることは政治の常であり、このキャッチコピーには危うい側面もある。
 さらに加えて岸田は安倍の神経逆なで発言をした。森友・加計学園問題に言及したのだ。「国民に疑問の声がある以上丁寧な説明が必要」と迫った。これに対して安倍は「私自身は閉会中審査に出席するなど国会で丁寧な説明を積み重ねてきた。衆院選における各種討論会でも質問が多くありその都度丁寧に説明した」と突っぱねた。岸田は総選挙のテーマの一つがモリカケにあったことを無視している。安倍のモリカケへの関与の虚偽性を有権者は看破して、大勝につながったことを岸田はどう考えるのだろうか。野党の目線で政調会長たるものが追及する問題ではない。また改憲問題で岸田は「憲法論議は改正のための改正であってはならない。丁寧な議論が必要」と首相をけん制したが、安倍は「国民的な理解が深まるのが重要」と深入りを避けた。
 自民党内ではタカ・ハト論争が絶えてなかったが、これは小選挙区制への移行で中選挙区制のような党内対立が必要でなくなったことが大きな理由だ。岸田の宏池会はハト派で、タカ派とされて安倍も会長を勤めた福田系派閥清和会と対峙してきたが、あえて岸田がぶり返した背景には総裁選への思惑があることは間違いない。このまま安倍を来年3選させて、今から合計で4年間の政権に協力し続けるべきか、それとも来年岸田自らが出馬して勝負に出るかの思惑が錯綜しているのが代表質問に現れたのだろう。派閥を率いるにも“やる気”を前面に出す必要があった。
 野党は立憲民主党代表の枝野幸男と希望の党代表の玉木雄一郎の立ち位置の違いが鮮明となった。枝野は先祖返りして左傾化を鮮明にさせた。しかし論理矛盾を露呈させた。日米安保条約を恥ずかしげもなく「不可欠」としながらも、集団的自衛権の限定行使を可能とした安保関連法の廃止を要求したのだ。北朝鮮の存在が安保関連法なくしていまや国の安全保障は成り立たないという事態に至らしめているイロハノイを理解していない。逆に玉木は外交安保で現実路線だ。政権への補完勢力の色彩を強めたが、希望の党内部が持つかどうかだ。

◎俳談

◎俳談
【嬉い、悲しい、寂しい、美しいは使わない】
夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣
 使わないと言いながらなぜ例句に使った句を掲げたかである。「寂しさ」を使って人生の寂寞感をこれだけ語る句は珍しいからだ。
人生における諦観すら覚える。しかし初心者が感情を表す言葉を使うとそうはいかない。概して下手の見本のような句になる。コツをつかむまではやめた方がいい。嬉しいもそうだ。
雪熔けて雪踏(せった)の音の嬉しさよ 正岡子規
なぜプロが使うと秀句になるかと言えば、寂しさ、嬉しさをくだくだと説明していないからだ。拙句の
淋しさも茶柱と呑む炬燵かな 東京俳壇入選
も許される部類だ。
寂しいという言葉を使わずに現した拙句を挙げれば
ときめきてすぐあきらめて石鹼玉 読売俳壇1席
帰りくる霜夜の妻の肩小さし 東京俳壇入選
といった具合となる。言わなくても寂莫感が十分に伝わると思う。

◎愚かなる新聞の首相演説批判

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◎愚かなる新聞の首相演説批判
   分量多きが故に尊からず
  ゲティスバーグ演説は2分
 一刀両断で首相・安倍晋三をグーの音も出なくする記事は一本もなかった。所信表明演説に関する全国紙全ての記事を詳細に分析したが、全紙が重箱の隅をつついて、まるで小姑の嫁いびりみたいな記事ばかりで、愚かであった。地に落ちた。最近の全国紙の記事はどの社を見ても“金太郎飴”記事ばかりだ。切っても切っても同じ顔しか現れない。記者クラブ制度の悪弊でもある。毎日や日経などネットにかなり先行露出する記事がリードする場合もあるのだろう。若い政治記者諸君に告ぐ。いいかげんに「交差点みんなで渡れば怖くない」から脱せよ。
  まず記事や社説で全紙が批判しているのが、所信表明演説の北朝鮮をめぐる部分が総選挙での首相演説と同じだというものだ。朝日は「外交成果を誇る大半が、衆院選や一連の外交行事ですでに語ったことの繰り返しに過ぎない。」と宣うた。読売も「北朝鮮問題など衆院選で取り上げたテーマが大半で、新味に乏しかった」という。毎日は「北朝鮮問題、少子高齢化の克服という、衆院選で訴えた『二つの国難』をほぼなぞった」だそうだ。この論調から見れば、間違いなく全紙が、新しいことを言わなかったからけしからんと言っている。佐藤愛子のエッセイ「九十歳。何がめでたい 」風に開き直らせてもらえば、「衆院選と同じ。何が悪い」だ。それとも衆院選での発言を低く見ているのか。ばかも休み休みに言え。衆院選での発言は政治家の命がかかっているのだ。本気なのだ。若い記者共は一体所信表明演説を何と心得ているのだろうか。国の重要政策を国会議員に訴え、その賛否を問うのが基本だ。北朝鮮で安倍は「日本を取り巻く国際環境は戦後もっとも厳しいと言っても過言ではない」と述べたが、それ以上に何を言えというのか。新聞が喜ぶことを首相に言えというのは筋違いも甚だしい。「戦争するぞ」とでも言えば一面をぶち抜くような大見出しがとれるが、そんな“新鮮味”などは御免被るのだ。近頃の政治記者よセンセーショナリズムと唯我独尊もいいかげんにせよと言いたい。逆に衆院選と同じ事を言わなければ公約違反と叩くのは目に見えている。
  もう一つの嫁いびり記事が「分量が少ない」だ。読売が「分量は安倍の国会演説としては過去最低」。朝日が「30年間で(小泉純一郎についで)2番目に少ない」と鬼の首を取れば、毎日は「演説の文字数は約3500字で、昨年秋の所信表明演説の半分にも満たない。目新しい政策もなく、第4次内閣となって最初の国会演説がこれでは物足りない」だそうだ。日経に至ってはしゃれたつもりか「省力化が目立った」だと。古今東西国家のトップの議会や国会演説を「短い」
といって批判した例を知らない。「人民の、人民による、人民のための政治」で知られるリンカーンのゲティスバーグ演説は、たったの272語、1449字で約2分間で終わった。カメラマンは演説に気づかず、ようやく気づいた時には演説が終わっていたという。若い記者たちよ、演説は中身であり、長さではないことをこれからは勉強するのだぞ。デスクもデスクだ。「こんな記事書くな」と言う見識がない。唯一日経の社説が「選挙後の特別国会であり、街頭演説の繰り返しのような中身だったのはやむを得まい。長さも、21世紀に入ってからの首相の国会演説では2番目に短かった。掲げた政策をどう具体化するのかなどは、2カ月後の施政方針演説で詳しく語ってほしい。」と主張しているが、これが唯一の常識論だ。
  新聞のとんちんかんな論調は、見識のない野党代表質問者に受け継がれる。「選挙で言っていたことと同じ」との質問に対して安倍は決して「野党は選挙で言っていたことに訴求力がないから大敗した」などと切り返してはならない。ここは「信念を持って選挙での発言と同じ答弁をする」が正しい。分量に文句がついたら「ゲティスバーグ演説は2分弱」と答えるのが正解。そもそも今国会の会期の39日間は特別国会の会期としては異例の部類だ。過去10回の特別国会の会期は3日から9日間が7回で圧倒的に短い。そもそも特別国会などは通常、院の構成と首班指名が目的だ。それを長くとったのは所信表明演説を懇切丁寧に説明するためであり、批判は全く当たらない。
 さらに野党はまたまたモリカケ論争を挑もうとしている。朝日、毎日など新聞やTBS、テレビ朝日など民放テレビが取り上げるのはモリカケしかないからだが、もう国民はうんざりだ。モリカケ論争は総選挙の安倍圧勝で国民の信任を受けて、政治的にはけりを付けたのだ。共産党が9議席減らしたのはモリカケばかりにこだわったからだ。ノーテンキに緊迫する極東情勢をそっちのけにするときかと言いたい。一方、小泉進次郎が党内野党と化して総選挙の「九仞(じん)の功を一簣(き)に虧(か)く」ような発言を繰り返しているが、失望した。だれか忠告してやる政治家はいないものか。親父は諫めないのか。困ったものだし、ここでぽしゃってしまうのは惜しい。

◎俳談

◎俳談
【オノマトペの俳句】
ぱつかんと開く缶詰開戦日 東京俳壇入選
 動物の音声や物体の音響を現した言語をオノマトペと言う。掲句は缶切りの不要な缶詰の開く様を詠んで開戦日と響かせた。古来オノマトペは俳句と密接なつながりがある。芭蕉にもオノマトペ俳句がある。<梅が香にのっと日の出る山路かな>である。一茶のオノマトペ俳句は<うまさうな雪がふうはりふはりかな>が有名。近代でも多くの俳人がオノマトペと取り組んでいる。中でも秋元不死男の<鳥わたるこきこきこきと罐切れば>は秀逸である。オノマトペが何とも言えない哀感をもって秋の季語「鳥渡る」と響き合っている。
 坪内捻転もオノマトペで新境地を開いた。<たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ><三月の甘納豆のうふふふふ>といった具合だ。これを下手に使うととんでもない破たんを来すから要注意だ。しかし勇気を持ってオノマトペを使おう。注意点は片仮名を使うより平仮名を使った方が俳句としっくり合うことだ。小学館の「日本語オノマトペ辞典」が参考になる。
しゃりしゃりと薄氷鳴らし舟通る  毎日俳談入選
ざつざつとバターを塗りて立夏かな 産経俳壇入選 
おろおろと吾もかぎろふ人となる  東京俳壇入選

◎安倍外交「対北包囲網」強化で結実

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◎安倍外交「対北包囲網」強化で結実
  トランプは歴訪で指導力発揮できず
 外交安保そっちのけの「商談」固執
 トランプ「商談大統領」の欠陥を首相・安倍晋三が補完して、北朝鮮に対する国際世論を盛り上げ、包囲網実現へとつなげたというのが一連の外交の舞台裏の実態だ。トランプは外交・国際政治に無知という弱点を露呈した。疲弊したのか、国内政局が気がかりなのかトランプは最重要会議である東アジアサミットを欠席して帰国、アジア諸国首脳らの落胆とひんしゅくを買った。複雑な利害の錯綜するアジア外交への対応能力の限界を見せた。米最大の発行部数の高級紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「トランプ氏が中国による重商主義拡大を米国の犠牲の下に放任した」と警鐘を鳴らした。
 逆に安倍の活躍が目立った。安倍の基本戦略はまずトランプの訪日で、核・ミサイル開発に専念する北に対する圧力を最大限に高め、日米共同歩調を確認する。その上でトランプに中国を説得させて北への圧力を強化。次いで東南アジア諸国への働きかけで国際世論を盛り上げる算段であった。ところが肝心のトランプが中国で習近平の手のひらで踊ってしまった。2500億ドル(28兆円)の「商談」で舞上がって、対北問題をお座なりにしてしまった。一応は北への圧力を最大限高める方針を主張したが、習近平は国連決議の履行以上の言質を与えず、軽くいなされてしまった。効果への疑問が指摘されている2500億ドルの「商談」に目がくらんで、毎年2700億ドル規模のの対中貿易赤字が発生している問題などは素通りしてしまったのだ。
 一方安倍は、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国首脳と精力的な会談を行い、北朝鮮問題の実情を説明した。これが14日の首脳会議に結実した。ほとんどの首脳が北の核・ミサイル開発に対する懸念を表明するとともに、国連安保理決議違反を指摘した。総じて北朝鮮包囲網が出来上がった感じだ。さらに重要なのは多くの首脳から中国が実効支配を進める南シナ海の問題に関して「航行の自由に抵触しかねない」などの懸念や指摘が出されたことだ。東アジアサミットは議長声明で北朝鮮による核・化学兵器など大量破壊兵器やミサイル開発を非難し、核・ミサイル技術の放棄を要求するに至った。これは北朝鮮の兄貴分である中国をけん制するものでもある。
 一方でトランプは、米政府がこれまで中国の人口島造成による軍事拠点化に、「待った」をかける役割を果たしてきたことなど念頭にななかった。結局南シナ海問題で中国への強い姿勢を打ち出せないままとなり、強い指導力を発揮させることは出来なかった。オバマや歴代大統領が打ち出してきたインド太平洋地位域に関する自らのビジョンを示さないで歴訪を終わった。15日付読売によるとベトナム外交筋は「米国が南シナ海問題で抑制的に対応する間にも、中国は軍事拠点化を着実に進める。遠くない将来、中国の南シナ海支配を追認せざるを得ない時が来るのではないか」と述べているという。
 経済問題でもトランプは「インド太平洋地域のいかなる国とも2国間貿易協定を結ぶ。われわれは、主権放棄につながる大きな協定にはもう参加しない」と発言した。これは米国が戦後作り上げた多国間貿易システムを否定し、輸出のための市場を自ら閉ざすことを意味する。TPPの離脱で米国の輸出業者はGDPで世界の16%を占める市場で不利な立場におかれるからだ。トランプはいまや2国間協定で米国が個別に圧力をかけようとしても、貿易構造の多様化で多くの国が痛痒を感じない状況であることを分かっていないのだ。WSJ紙は「米国の最大の敗者になるのは、農業州と中西部にいる大統領支持者だろう。TPPは米国にとって、アジアの成長から恩恵を得られる絶好のチャンスであり、トランプ大統領の抱く不満の種を是正する部分が少なくない。」と批判している。しかし、かたくななまでに2国間貿易に固執するトランプの方針は覆りそうもなく、世界は次の政権を待つしかすべがないのが実情だろう。
こうしてトランプのアジア歴訪の旅は、指導力を発揮するどころか、事態をますます流動的なものにしてしまった。逆に共産党大会で独裁体制を確立した「習近平の強さが浮き彫り」(ワシントンポスト紙)になった形となった。国連制裁の結果北朝鮮情勢が年末から新年にかけて激動含みとなることが予想されている中で、世界は「トランプ問題」を抱えることになる。

◎俳談

◎俳談
【帰省の句】
帰省子の峠越えれば母の待つ 毎日俳談入選
 帰省子は帰省する者。帰省は普通旧盆の休みに行われる。俳句の世界では旧盆は秋に入るが、帰省は夏の季語である。俳句では正月の帰省には使わない。正月の帰省には里帰りなどを使い、別に季語をたてる。まだ母が若く、筆者が幼かったころ、実家が近づくと母の足が速くなり、ついて行くのが大変だったことを思い出す。帰省の句のバリエーションはいくらでもある。今は帰省を受ける側だ。家には老犬がいて、子の帰省を喜ぶ。
帰省子に尾を振る力残りをり 杉の子
帰省子は近道を知っているから、裏木戸を開けて入ってくる。
裏木戸を開けて帰省子戻りけり 日経俳談入選

◎日中、「対立」から「接点」構築へ

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◎日中、「対立」から「接点」構築へ
 来年にも習近平来日働きかけ
  亀裂要因棚上げ「ガラス細工」の側面も
 2012年の野田政権による尖閣国有化以来、中国公船の侵入で険悪化してきた日中関係に一筋の光明が差し込んできた。新聞紙面でも「対中改善」「首相・習氏友好ムード」と活字が踊るが、果たして「本物」か。たしかに習近平にとっても安倍にとっても、「本物」とするには、障害となる難問が山積している。まず、基本的に言って、習近平の主導する「一帯一路」戦略が、安倍・トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」と対峙するのか融合するのかは流動的だ。まだまだ矛盾要素は多く、「ガラス細工」の危うさを感ずるが、このチャンスを両国とも逸するべきではない。出来るだけ接触の機会を増やして、“接点”を見出し、来年にも首脳の相互訪問を実現して、方向を「地域の安定化」に向けて確たるものにしなければならない。安倍は2020年オリンピックの円滑なる運営まで視野に入れた対応をしているかのように見える。
 関係改善の芽は生じていた。5月に自民党幹事長・二階俊博らは、訪中で「一帯一路の」会議に出席。9月には外相・河野太郎と王毅が会談したが、なぜか河野はこれまでの外相が言及してきた南シナ海への懸念伝達を“封印”した。6日の日米首脳会談後の記者会見では安倍が「インド太平洋戦略」に関して「賛同する国があればいずれの国でも共同してやっていく」と微妙な発言をした。安倍は「一帯一路」と対峙する方向ではなく、「インド太平洋戦略」と融和させる方向で強力関係を築く姿勢に転じたかのようである。一帯一路が中国のアジア全域に対する軍事支配確立への突破口とならないように、参加して内側からけん制することも不可欠だ。アベノミクスの総仕上げにも「一帯一路」を“活用”して行く構えであろう。日本企業の間には、一帯一路をチャンスととらえて、積極的に参加すべきだとの声が強まっている。
 その上で11日の安倍・習近平会談が「かってない良好な雰囲気で開かれた」(首相側近)という状況に至った。安倍が、打って変わってニコニコ顔になった習近平に首脳の相互訪問を提案、習も心よく応じた。年内に懸案の李克強との日中韓首脳会談が開催される下地が整った。そして13日の安倍・李克強会談である。首相李克強は「最近の日中関係には積極的な変化が現れているが、一部に敏感な要因も存在する。双方の努力で日中関係の改善を強化しなければならない」と発言した。 一連の発言と動きは、かつて尖閣諸島の領有権については「棚上げにする」という「密約」が成立したことを想起させる。これを裏付けるように1978年、副首相とう小平(当時)が日本記者クラブで尖閣問題で「中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束した」と発言している。今回も事実上の「亀裂要因棚上げ」ではないかと思う。安倍が李克強に「来年は日中平和友好条約締結40周年だが、戦略的な互恵関係のもと関係改善を強く進めたい」と発言したのも、関係改善最優先のなのであろう。この流れは東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも同様であり、各国とも南シナ海問題を「封印」して「対中接近」を際立たせた。共同声明にもこれまであった中国進出への「懸念」の文字が消えた。スカボロー礁への中国進出を懸念しているフィリピン大統領ドゥテルテですら、「中国と戦争するわけにはいかない。今は触れない」と言及を避けた。東南アジア諸国の大きな潮流は「対立を避け実利を求める」方向へと大きく蛇行し始めたかのようだ。
 こうした緊張緩和の傾向は中国が主張する「一帯一路」を、加速させざるを得ない状況となっている。背景には、日の出の勢いの中国と比較して米国の存在感の低下が著しいことが挙げられる。今後米国は南シナ海で「航行の自由作戦」をより頻繁に推進する方針だが、トランプが習との会談で中国の2500億ドル(28兆円)の「商談」に飛びついて、大喜びしている姿をみて、アジア諸国は「バスに乗り遅れるな」と対中傾斜が一段と強まったのだ。
 しかし、北朝鮮問題一つをとっても日米が「対中対話のための対話では全く意味がない。いまは 最大限の圧力をかけるときだ」(安倍)としているのに対して習は「平和的対話で朝鮮半島の核問題を解決する」と真っ向から対峙している。これは極東戦略という安全保障上の基本中の基本について根本的な対立要因を日米と中国が抱えていることになる。ガラス細工たるゆえんである。しかし、気がついたときには中国の「覇権主義」が東・南シナ海を席巻していたという事がありうるのであり、「用心」は不可欠だ。習近平の微笑外交の裏には冷徹な計算があることを夢にも忘れるべきではあるまい。習近平は安倍との会談後「日中関係の新たなスタートとなる会談であった」と言明したが、「新たなスタート」は、日本の「対中追随」路線への幕開けとなる危険性を常に帯びている。


◎俳談

◎俳談
【孫】
児は起きて団扇の母の眠るかな 産経俳壇入選
 古来「孫」の句は大げさに言えば俳壇から排除されている。なぜかと言えば余りに陳腐であるからだ。もちろん孫を可愛いと思い、いつくしむ爺さんや婆さんの気持ちは貴い。しかし、これはごく日常的、個人的な感情であり、“ありきたり”過ぎるのだ。詩情もない。これを逃れる唯一の方法は「孫」をあきらめ「児」とすることだ。「児」で一般化してしまうのだ。手っ取り早く入選句を挙げる。
拝むこと覚えたる児の花祭り 東京俳壇入選
春満月電池で点くといふ児かな 産経俳壇入選

◎TPPは暗にトランプ早期退陣を“期待”

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◎TPPは暗にトランプ早期退陣を“期待”
  「火種」は残るが、消費者は歓迎
 6か国が議会承認すれば発効へ
 環太平洋経済連携協定(TPP)は2015年10月、米国アトランタで開催されたTPP閣僚会合において「大筋合意」に達して以来、会合のたびに「大筋合意」を繰り返している。今回も「本当に本当」の大筋合意かどうかが疑われるが、とにかく米国抜きの11か国では遠心力より求心力が勝っていることは確かだろう。少なくとも保護主義を臆面もなく前面に出すトランプの「圧力」を受け流す「安全弁」になったことはたしかだ。日本は先に欧州連合(EU)とも経済連携協定が合意に達しており、日本主導のTPPが加わって保護主義を排除して自由貿易を推進する態勢は一層強まった。今後日本は一層TPPの結束を固め、この立場をフルに活用して中国主導の巨大経済圏東アジア地域包括経済連携協定(RCEP)を、より質の高い自由貿易の枠組みに発展させるよう尽力すべきだろう。
 TPPは米国が復帰する日を夢見て、米国の主張する20項目をあえて廃棄せずに“凍結”した。それではトランプが方向を転換するかといえば、しない。しないどころかトランプは10日にTPPからの離脱を改めて正当化した演説をしている。トランプにしてみればTPP参加は自動車業界など支持企業や、選挙で公約を支持した有権者のコアの部分を失う可能性があり、ただでさえ30%台と言う支持率確保には欠かせない政策なのだ。トランプは常に“私利私欲”優先なのだ。それでも米国が復帰するのをTPPイレブン(11か国)が期待しているのは、米国の政局を見ているのだ。
 その米政界は、ロシアゲートが佳境に入っている。ロシア政府による米大統領選干渉疑惑の捜査が進む中、新たなロシア疑惑が台頭している。トランプの娘婿など側近や商務長官ロスと関係の深い海運会社と、プーチンの側近が実質オーナーの石油化学大手との取り引きの疑惑だ。これが外遊から帰国するトランプを直撃する。ニクソンのウオーターゲート事件をほうふつとさせる「大統領の犯罪」が暴かれかねない状況なのである。米政権はいったん成立すると大体2期8年の任期をまっとうしているが、まっとうしなかったのはニクソンだ。議会の弾劾成立直前に辞任している。トランプの場合は3年後の選挙で惨敗する可能性があり、TPP11はそれを待っているかのようである。3年などすぐに過ぎる。
 さらに11内部でも火種が残っている。カナダに新政権が誕生して“手のひら返し”に動いたのだ。トルドーが新協定の署名に慎重なのは選挙基盤の中道左派自由党が反対であり、賛成すれば支持基盤が崩れかねないからだ。加えて北米自由貿易協定(NAFTA)の改定で米国との厳しい交渉にさらされており、TPPの合意がNAFTA交渉への実害を生じさせかねないという危惧がある。ところがTPP会合でカナダの国際貿易相シャンパーニュは先陣を切って賛成している。完全なる閣内不一致を露呈した結果をもたらしており、日本なら野党から退陣を求められる事態だ。ニュージランドは政権を奪還した労働党が「外国人による中古住宅の購入禁止」を打ち出して、TPPでごねたが、最終的には推進に回った。さらにベトナムは共産党政権が労働者の権利拡充に反対、マレーシアも国有企業の優遇禁止の凍結を要求、継続協議的な対応をせざるを得なかった。
 こうして「火種」を抱えながらのスタートとならざるを得ない結果となっているが、参加6か国が議会で批准手続きを終えればTPPは正式に発効する。従って発効することは間違いない。日本は対米説得もTPP内部の調整も自らリードして行く必要があるが、ここは長期スパンで物事を考えるべき時と言えよう。なぜなら長期的には自動車など工業製品や農産物の輸出促進につながることは間違いないからだ。工業品目では国ごとに70-100%と差はあるものの関税が即時撤廃となり、輸出産業に依存する日本にとっては大きな利点となる。農産品の日本への輸入に対する撤廃は95%となり、農業への打撃はあるが、一般消費者にとっては選択肢の幅が広がる。総じて歓迎すべき流れとなる。対米交渉においても日本にとって有利なのは、たとえトランプが2国間交渉を迫ってきても、日本は追い詰められることはなくなった。TPPを盾にとって「TPP以上の譲歩は応じられない」と主張することが出来る。逆に米国に対して「TPPに復帰すべきではないか」と逆襲も可能とになる。

◎俳談

◎俳談
【句会に棲む魔物】
 俳句は「座の文学」であり、句会と共に発展してきた。句会では作者名の定かでない句を、投票で決めるから、極めて公平である。しかしそのレベルはピンからキリまである。ある句会で最下位だった俳句が、他の句会で最上位というケースはしょっちゅうある。ある句会で最下位だった俳句が、新聞俳壇でトップというケースもある。句会には魔物が棲むのだ。いくら自分がいいと思う句を作っても、高い点数を取れないケースがほとんどだ。思い込みがあるのに加えて、句会の空気が左右する。しかし概して句会で上位にいく俳句は、意外性があり、明るく、前向きな句が多い。陰うつで考え込んだような句は採用されにくい。句会ではマイナス思考よりプラス思考が勝つ。従って句会で高得点の句が必ずしも秀句とは言えない。なぜなら選句時間が短く、じっくり判断するひまがないからだ。上位入選を目指すにはこうした句会ごとに異なる雰囲気を考慮して、その句会のレベルにあった俳句を出句することだが、これが難しい。150歳くらいにならないと名人の域には達さない。しかし年寄りの健康に句会が良いのは、闘争心をいつまでも保てることだ。人間多かれ少なかれ闘争心をなくしたら、棺桶が近いと思った方がいい。

◎米中首脳会談は7対3で習近平の勝ち

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◎米中首脳会談は7対3で習近平の勝ち
  商人トランプは覇権的行動を事実上黙認
 「巨額商談」に目がくらんだ
 さすがにことわざの国中国だ。今度は荘子の朝三暮四でごまかした。中国、宋の狙公(そこう)が、猿にトチの実を、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという寓話だ。トランプは「俺はゴリラだ」と怒るかも知れないが、似たようなものだ。トランプが中国の2500億ドル(28兆円)の「商談」に飛びついて、大喜びしているが、その実態は巨額の貿易赤字をベールで覆い、焦点の北朝鮮対策を現状のままにするという習近平の罠にトランプが見事にはまったということだ。商売人の大統領らしいその場しのぎの計算だが、「商談」の本質は一過性であり、本筋の年間2700億ドルに達しようとしている貿易赤字解消への効果は薄い。「商談」に目がくらんでトランプは自由主義陣営の基本戦略をなおざりにした。7対3でトランプの負けだ。
 この商談はまずマスコミを操作する事から始まった。同行記者らはAPも米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も商談を90億ドル(1兆円)と報じていた。機中での米側のレクにミスリードされたのだ。米側も明らかにサプライズ効果を狙ったフシがある。さすがに気が引けたか米商務長官ロスは「もっと多くの合意があるかも」と増額の可能性を示唆していた。それが何と28倍の商談合意である。トランプはかねてから中国の赤字に対して「アメリカは中国に陵辱されている」「中国は史上最悪の泥棒だ」とまで言い切っていた。しかし会談後は自慢げに「今の貿易不均衡で中国に責任はない。不均衡の拡大を防げなかった過去の政権を責めるべきだ」と語り、何とオバマ前政権などに原因があるとの見方を示したのだ。定見のなさも極まれりというところだし、オバマは激怒し、米国内でも反発が生ずるだろう。
 米マスコミの反応は驚くどころか冷静で厳しいものであった。WSJ紙は「米中企業が結んだ総額28兆円規模の契約も巨額の貿易赤字を解消する効果は薄い」「中国は貿易問題ではほとんど何もしていない」などと看破した。確かにそうだろう。2700億ドルの対中貿易赤字は構造的なものであり、毎年発生している。そこに場合によっては10年もかかるような商談を持ち込んでも、貿易バランスにとって効果は画期的なものにはなりようがない。WSJ紙は「米中大型商談の落とし穴、通商問題は先送り」と題する10日付の記事で「一見すると、米企業が勝利を収めたように見えるが、この巨額の数字には裏があった。その大半が完全な契約の形をとっていないのだ。 専門家からは、解決が難しい米中間の通商問題には何ら対処していないとの指摘が上がっている」として、合意項目の個別にわたって詳細な“フェーク合意”の中身を分析している。同紙も指摘しているが例えばボーイングの旅客機300機購入などは、15年にオバマが習近平と合意したもので、新しさなどはない。
 中国は貿易赤字問題ではほとんど何もしない一方で、トランプを世界遺産の故宮でもてなすなどケバケバしい演出で目くらましを食らわし、貿易赤字問題を“封印”することに成功したのだ。習近平は商談成立以外は経済面で新たなカードを切ることもなく、譲歩も全くしなかった。習近平は相手のメンツを立てたふりをして、実利を取る戦略であり、トランプは敗退したのだ。習近平は記者会見で、「商人の道は善意なり」ということわざを引用して「両国の貿易関係は平等互恵に基づいて成功の物語が続く」と臆面もなく言ってのけた。これまで通りでやりますよということだ。それにしても「善意」などかけらもなく、冷徹なる計算があるだけだ。相手が商人ならそれなりに対応する術を身につけているということだ。かつて池田勇人をドゴールは「トランジスタの行商人」と名付けたが、日韓では武器購入を促し、中国では政治そっちのけで商売。まさにトランプは藤子不二雄ではないが「笑ゥせぇるすまん」だ。
 一方政治面でも、敗北臭が漂う。ニューヨーク・タイムズ紙はコラムで「トランプ氏は20世紀後半以来の自由な国際秩序を習近平氏に明け渡すかのようだ」と警鐘を鳴らしている。確かに国際政治の側面はトランプが習近平の“毒まんじゅう商談”を食らって、忘れ去られた一帯一路構想を軸に東・南シナ海に進出し、南シナ海に大型浚渫船まで新たに建造して埋め立て工事を推進、戦略拠点としようとしている問題や、それを共産党大会で自慢げに披露する習近平に対して、トランプは発言らしい発言はしなかった。覇権的な行動をトランプは黙認したのかと思いたくなる。北朝鮮問題にしても、制裁に関しての新たな言質を習近平から取ることなく終わった。トランプは「アメリカは北朝鮮の完全かつ永続的な非核化に取り組む。文明社会は一致して北朝鮮の脅威に立ち向かわなければならない」と一応は軍事力行使も辞さない姿勢を示した。これに対して習近平は「両国は対話や交渉を通じて北朝鮮の核問題を解決するよう努める」と意に介さぬがごとくこれまで通りの主張を繰り返した。背景にはトランプがすごんでも軍事行動など出来ないという“読み”がある。非核化を目指すという総論では一致したが、トランプは「圧力強化というどう喝」、習近平は「話し合いという無為」という戦略を選んでいるのだ。北の政権を崩壊させて米国の力を中国国境まで至らしめないというしたたかな中国の戦略が歴然として存在する。手を叩いて喜んでいるのが金正恩だろう。米軍は11日からトランプの意を受けて空母3隻が日本海で大演習を行うが、大統領がこの体たらくでは、“すごみ”は利かない。北が一時的に核やミサイルの実験を控えるだけだろう。政治外交に素人の大統領を選んでしまった米国民にツケがまわったのだ。


◎俳談

◎俳談
【カワセミ】
翡翠の阿修羅の如く狩りにけり NHKフォト俳句特選 
 翡翠の日本画は多くの画家が描いているが、20年間もひたすら翡翠を撮りつづけているとどんな名画でも難点があるのに気付く。どこか実際と違うのである。姿勢も違う、飛ぶ姿も違う。昔の画家が精密に描けるのは、鳥刺しから買って描いたためと言われる。鳥刺しとは江戸時代鷹匠の下で鷹の絵となる小鳥を捕る職業の者。従って生きた翡翠を描いていないのだ。ましてや水中の翡翠の姿など想像もつかなかったであろう。筆者はどうしても水中の写真を撮りたくて、一計を案じて撮影に成功した。恐らく北斎なら飛び付いて描いた垂涎の姿であろう。デジタルで見る画像は悪鬼そのものであった。最初は<翡翠の悪鬼の如く狩りにけり>とやったが、悪鬼よりも阿修羅の方が恐ろしさを感じると推敲した。

◎韓国の「コウモリ外交」が極まった

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◎韓国の「コウモリ外交」が極まった
 エビと慰安婦の文に「ルーピー賞」を差し上げる
 「トランプは安倍に相談」と韓国紙
  朝鮮日報が、韓国大統領文在寅の外交を批判した。6日の社説で「このままだとトランプ大統領は北朝鮮問題で何か行動するときはまず安倍首相と相談するようになり、韓国とは完全に順序が入れ替わってしまうだろう。これは安倍首相の一言が米国の対北朝鮮政策に大きな影響を及ぼすことを意味する。なに故このような状況になってしまったのか到底納得できない」と見事な論調を展開している。確かに
トランプ訪韓で鮮明になったのは、文在寅の「コウモリ外交」だ。コウモリ外交とはイソップの寓話集に収められた「卑怯なコウモリ」に由来しており、国の外交で、見解や利害が対立している国のどちらに対してもいい顔をして、おもねる。そうかと思えば、寝返るような態度を指す言い方である。それもそうだろう。文在寅はやはり「コウモリ外交」と批判された大統領盧武鉉の秘書時代に、そのスローガンである「バランサー外交」の演説を書いた張本人だからだ。
 文在寅自身も「米国との関係を重視しながら中国との関係も一層堅固にするバランスのよい外交を目指したい」と発言しており、最近それを実践している。まさに仏壇の奥からはたきをかけて「バランサー外交」を引っ張り出した感が濃厚だ。11月31日に戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)導入で極度に悪化した対中関係をようやく修正した。対中合意の柱は①アメリカのミサイル防衛システムに参加しない②日米韓の安全保障協力を軍事同盟に発展させない③THAADの追加配備はしないーであり、中国側の要求をそのまま飲んだような内容だ。ところがその舌の根も乾かぬうちに、トランプと防衛力の強化に向けてミサイル弾頭重量制限を解除することで合意した。原子力潜水艦と先端偵察機能の獲得・開発に向けた協議も直ちに開始することになった。こともあろうに国の安全保障を米中のバランスに利用するのはあきれるばかりである。なお、米国が本当に原潜を売るかどうかは疑問だが、もし売れば対中戦略のみならず日本の防衛にも影響が生ずる。
 米韓会談の内容を見ても、文在寅は一応トランプに対して最大限の制裁と圧力に協力する姿勢を見せた。しかし、その実態は別だ。文在寅のかねてからの主張である「いかなる場合でも朝鮮半島での武力行使は許されない。韓国の事前の了承を得ることなく軍事行動を起こしてはならない」と、トランプ発言は見事なまでに食い違った。トランプは「必要であれば米国と同盟国のために比類なき戦力を投入する。北の独裁者に対してメッセージを伝える」と、軍事行動も辞さない姿勢を鮮明にさせている。「両首脳が朝鮮半島戦略で対立」と書いてもおかしくない会談内容だった。おまけに北に対して世界各国が国連決議に基づく制裁を推進しようとしているときに、文在寅は800万ドルの人道援助を承認した。米国防長官ジェームズ・マティスが、強い懸念を表明、圧力をかけているのはもっともだ。要するに俯瞰すれば、文在寅の安保政策は日米韓の連携よりも、明らかに中国に傾斜し始めている。
 こうした関係についても前述の朝鮮日報は「今、世界で米国の力を最もうまく活用すべき国は日本ではなく韓国だ。まず何よりも北朝鮮の核問題を実際に解決できる国は米国以外にない。また東アジアで厳しい緊張状態が続く中、韓国を覇権欲なしに守ってくれる国も米国だけだ。ところが日米両国は米英関係を思わせるほど最高の親密さをアピールしているのに対し、韓米関係は非常に形式的で儀礼的なものへと変わりつつある。」と嘆いている。文在寅にはこうした国際外交への認識が欠如しており一国の指導者として致命的な欠陥であろう。
 その好例が対日姿勢にも現れた。晩餐会の食卓に竹島でとれるという「独島エビ」を出させ、常に反日宣伝材料として使っている元慰安婦を招いてトランプに抱擁させた。独島エビは、まるで昔のしゅうとめの嫁いびりであり、日本人はあきれこそすれ、いびられたとはいささかも感じないだろう。一方強制連行はなかったというのが常識だが、元売春婦を国際的に重要な晩餐の席にわざわざ招くという前代未聞の対応は、「えげつない」の一言に尽きる。いずれも韓国内への人気取りが見え見えだが、事もあろうに米国大統領の公式晩餐会の席を“活用”して、他国をおとしめなければならないほど自らの人気がないのかと思わざるを得まい。第三国との外交の場で行うことかと言いたい。日本政府が抗議したのは当然だ。
 この2例は日本人の国民感情を逆なでして、一朝有事の際の日本の行動心理に影響を及ぼす。もちろん北の軍事行動が始まれば日本は米国の軍事行動を支援する方向は変わりはないが、危急存亡の時に対韓支援に躊躇(ちゅうちょ)を生じさせるのだ。戦時には手を差し伸べるのが早いか遅いかで、人命の損失度に決定的な差を生ずるのだ。たかがエビと売春婦で韓国の受ける損失は甚大なものになりかねない。そこが分からないのでは文在寅に「哀れでますますいかれた」を意味するルーピーの称号を贈らざるを得まい。ワシントンポスト紙が名付けた「ルーピー鳩山」と同様に「ルーピー文」といわざるを得まい。「ルーピー特賞」を差し上げたいくらいだ。韓国民にとってはこういう指導者の存在はまさに悲劇である。

T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」

ご要望に応えて<付録>付き再録 Name:浅野勝人 NEW! Date:2017/11/08(水) 09:33 
 
総括 ―  総選挙!
T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」
(2017/10月5日、安保研ネット掲載。総選挙公示5日前)
安保政策研究会理事長 浅野勝人

T君、総選挙いよいよ10日、公示ですね。
東京都議選で自民党が惨敗した後、お目にかかってお昼に天丼食いながら、「都議選の小池百合子は怖かったが、国政選挙の小池は怖くない」と申し上げた私の見解が当たりそうな気配ですね。

都議選の折、多くのマスコミが世論調査、その他の情勢を分析して、自民党は減っても30議席台と踏んでいたのに、T君ご承知の通り、私は20議席そこそこと予測しました。結果は19議席でみんなびっくり仰天でした。
種明かしをしますと、「都民ファースト」が全員当選すると予測して、民進党も減る。共産党が増える。公明党は現状維持。これを総合して逆算すると自民には20議席位しか残らない。結局、「都民ファースト」で落選したのは1人だけだったので、大当たりしたという仕掛け。

都議選で勝利の女神だった小池百合子が、国政選挙で輝くのは無理と推測した理由(わけ)は、
あの方は、どの選挙も「大統領選挙」と勘違いしている。
だから、小池人気が、全国津々浦々、衆議院小選挙区に行き渡り、特に比例区では圧勝して、都議選の再現となる。総理大臣就任も夢ではないと錯覚してしまう。

自民党内では、外交・安保政策に関して右派の論客だったから、時間の経過とともにその地金が滲(にじ)み出る。そうなると、右派の安倍晋三と同質なことが改めてわかってしまうので、「政権選択選挙」という唯一の訴えが売り物にならない。小池を支える膨大な無党派層が失望して離反する。
その証拠に、党公認に際して民進党リベラル派を除外する表現を「全員公認するつもりはさらさらない」と失言して馬脚を現した。

このひと言は重い。選挙戦を左右する重大なミスショットと予言しておきます。いや、ミスショットではなくて、「本音」を最悪な言葉使いで表現した。有権者は容易に「小池百合子の本音」と見破るから、このひと言で「希望の党」は失速する。非自民の有権者に、「第2自民党」は要らないと映るからです。

つまりは、安倍自民党と対峙することによって人気を倍増するつもりが、まるで補完勢力と映って当初の意図が崩れてしまいました。
だから、出馬の可能性を匂わしていた姿勢から一転して「不出馬」を明言して逃げました。どうやら思惑が外れかねないとみて「私自身は出ないと最初から言っている」と苦し紛れのウソを言わざるを得なくなりました。
与党をめざして「希望の党」を立ち上げた政党の代表・党首が、自身は出馬しない。国会の首班指名を目指さないという人がいたかどうか、憲政史上の事例をどなたか調べて教えて下さい。( 選挙の結果 ― 235人立てて当選50人。当選率20%。惨敗 )

これに比べて、安保法制、憲法9条改正に反対する基本姿勢を堅持して筋を通し、自民党との対決を鮮明にしている「立憲民主党」の候補者と「希望の党」への参加を避けて「無所属」で出馬する前民進党の候補者が、非自民票の受け皿になる可能性が強まります。( 選挙の結果 ― 立憲民主: 55人当選。当選率60%。躍進)(無所属:21人立候補して18人当選、当選率85%)

選挙後の野党再編は、立憲民主党を立ち上げた枝野幸男を軸に小ぶりな勢力からの再出発になると思われますが、候補者を降ろして立憲民主党に選挙協力をした共産党は無視できない存在になります。
現役時代、議員会館の部屋が隣同士だったから褒めるわけではありませんが、小池晃が書記局長になってからの共産党は柔軟でいい。


T君、安倍自民党の不人気は、君の想像をはるかに超えています。私の周りでも、まさかと思う方が「今回は自民党には投票しない」と明言して驚かされます。
T君も当初は肝を冷やしていたでしょうが、小池百合子のおかげで、野党が「馬糞の川流れ」(政治勢力がバラバラになって求心力を失う様子を金丸信らしい表現で言った)となりました。
自民党が、近年、厳しく批判されている傲慢な政治姿勢を反省して、国家、国民の平穏と繁栄に真摯に取り組む姿を示せば、情況は好転。わずかな減ですみそうです。( 選挙の結果―284議席で解散して284人確保。マンガみたい )

二階幹事長は、大軍の将ですから、自信を持ってもっとはっきり発言した方がいい。
「世の中のために政治家が要(い)る。政治家のために世の中があるのではない」(思いあがるな)と明確な小池批判をする。
「国会で戦争法案反対と言っていた人たちが、政党を変わったら賛成という。我が党にとっては有り難いが、有権者の方々がそれを許すだろうか」とはっきり批判して、野党の中では一番強いと予測されている「希望の党」の票を離散させる戦術が重要です。(結果は野党第1党にもなれず)

私は、来週から中国です。11回目になった北京大学での講義。それに北京外国語大学大学院、首都師範大学へ講義にまいります。選挙前に決まっていた日程ですから出かけますが、投票日前には戻ってまいります。
T君、加油! 加油! (2017/10月5日)

(22日、台風の中で総選挙終了)
T君、お互い予測はドンピシャリでしたが、何のためにやった選挙だったのか私には今でも理解不能です。勝つためにやって、小池百合子と前原誠二のミスショットで勝ったから、安倍晋三は結果オーライだったと理解すれば、それでいいのでしょうか。 

莫大なお金とエネルギーを費やして選挙をやって、世の中のために何がどう変わるのか、変わらないのか、何も無い。立憲民主党の当選者54人の内30~40人が前職以外の元職と新人だったというだけで、無所属を含めて各党とも、ほぼ全員選挙前の顔ぶれがそっくり再選されただけのことです。政策も顔ぶれも何も変わらない。野党に「馬糞の川流れ」現象が起きて、日本の政治を退化させただけでした。

T君、自民党は、現状維持をして自・公与党で2/3議席を確保して事実上の大勝利でした。但し、競争相手の票が二分され、比較多数で有利な情況が造られた敵失による勝利に過ぎないことを忘れないでください。
自・公vsオール野党の争いなら、議席はフィフティ・フィフティです。日本の世論は結構バランスが取れています。

それにしても 議会制民主主義、主権在民の根幹を理解していないほどの政治家の劣化。政党助成金をめぐって右往左往するほどの政党政治の退化を招いたのは「落選候補救済制度付き衆議院小選挙区比例代表制」によります。今回改めて証明されました。世界に類のない悪法です。選挙は1票でも負けたら負けです。これでは政治に対する厳しさが生まれません。しめしが付かない。

安倍政権は、ことによったら佐藤栄作政権を越える長期政権になると思われます。
安倍首相のやるべき第1の課題は、実は選挙制度の改正を強行してでもやり遂げることでした。衆議院を定員3人の中選挙区、全国100~120選挙区に改正する。公明党を含めて、賛否が政党によって入り乱れますが、自民党の過半数で押し切ることができる。2/3は要らない。
安定した政治と何よりも有能な新人議員が、選挙ごとに1/4を占めて、もう一度、人々の求める人材が政界に集まります。

安倍首相は、相変わらず憲法改正にご執心のようです。
総選挙後、10代の若者の声を集めた特集の中に、札幌の19才、男子が「憲法改正は戦争につながる恐れがあるので反対だが、(国民投票)過半数で阻止できるから、自民党に投票した。バラバラで頼りにならない野党より、安定した政治勢力を選んだ」(毎日新聞)
この見解は“少数者の意見”だと思わない方がいい。19才の予言通りになったら、安倍長期政権の功績は全て水泡となって消えます。
(2017/10月23日、元内閣官房副長官)


<付録 ― 総選挙アラカルトから一遍>

笹川陽平ブログ

「山尾志桜里」 : 一戦を制して当選― [2017年11月08日(Wed)]

一線を越えたか否かで話題を提供してくれた山尾志桜里氏が、先の衆議員選挙で一戦を制して辛勝した。まずは祝意を表したい。

落語の世界でも、ご隠居さんと長屋の熊さんが、この一線?論争に参加していましたよ。

【熊さん】
「ご隠居!! 最近女性政治家が一線を越えたかどうか、話題になっているそうですが、この一線とは何のことですかねぇ」

【ご隠居】
「ようするに、夫のある身で別の男とホテルに泊まって、一線を越えたかどうかということが問題なのよ」

【熊さん】
「へえ、ホテルの部屋に一線が引いてあるんですか?」

【ご隠居】
「バカだね。そんなものあるわけないじゃないか。二人が重なったかどうかが問題なんだよ」

【熊さん】
「検事まで勤めたエライ政治家でも、そんなことをするんですか?」

【ご隠居】
「人間だからね。魔がさすこともあるさ。しかし、脇が甘いんだよ」

【熊さん】
「週四回も魔がさすんですか。それに脇が甘いんではなくて股が甘いんじゃないの、ご隠居さん!!」

【ご隠居】
「熊さん!! 今日は冴えてるね。確かに股が甘くて一線を越えたんだろうね」

【熊さん】
「一線は確かに越えて、これは二線ですぜぇ」

【ご隠居】
「どういうことだい熊さん、二線目とは?」

【熊さん】
「だって一線目は夫と越えて、浮気相手は二線目ですぜぇ」

【ご隠居】
「熊さん!! あんたはこういう話になると、普段のとんちんかんと違って偉いものだね」

【熊さん】
「へえ、ご隠居さんにほめられると嬉しいね。俺なんぞ吉原通いをしてるからもう30線は越えていますぜぇ」

【ご隠居】
「やっぱり、熊さんはわかってないね」

◎俳談

◎俳談
【修正の上採用】
亡き母は端裂(はぎれ)が好き秋の風 日経入選
 筆者の新聞投句は10年続いている。入選確率は20分の1から30分の1だ。それでも年間百句は確保している。長く投句していると選者も哀れに思うのか、時々修正してくれる。掲句は投句した原句はが<亡き母は切れ端が好き秋の声>だった。確かに「切れ端」では木っ端なのか布ぎれなのか分かりにくい。端裂と直して採用してもらえた。
<飛び魚の右舷とみれば左舷かな>と毎日俳壇に送った。これが
飛び魚の又も左舷となりしかな
と直したうえで採用してくれた。通常選者は1字間違っても採用しないものだが、テーマ重視で修正の上採用してくれる温かい選者もいる。
    

◎トランプ、「極東冷戦」俯瞰の戦略再構築

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◎トランプ、「極東冷戦」俯瞰の戦略再構築
 「インド太平洋戦略」で北に最大圧力
 中国に北への積極関与を促す方向                 この空前絶後の日米首脳の協調ぶりが意味するものは何か。裏には長期の「極東冷戦」を俯瞰(ふかん)した米国の戦略再構築がある。焦点の安全保障で大統領トランプは首相・安倍晋三が主張していた「自由で開かれたインド太平洋戦略」にあえて丸乗りして、オバマの「戦略的忍耐」を帳消しにした。懸念された貿易摩擦も「兵器購入」という隘(あい)路で納得した。なぜかといえば両首脳による「北への圧力を最大限まで高める」合意で、まず基本戦略を固める必要があったのだ。日米を固めることが不可欠の前提であったのだ。日本を最初の訪問国としたのもこの戦略を進めるに当たっての基礎固めが必要であったのだ。日米会談の成功は、北朝鮮に接近しかねない韓国大統領文在寅を抱き込み、隙あらば東・南シナ海への海洋進出を目指す中国の習近平をけん制し、北への関与を促す態勢を整えたことになる。良好なる日米関係が礎になるのだ。
 安倍トランプ合意に基づいて今後日米両国は「国際社会全体で北朝鮮への圧力を最大限まで高める」(安倍)というギリギリの対応に出る。日米両国は国連制裁の完全履行や外交、軍事をフルに活動して北への包囲網を一段と強化する。まさに圧力を臨界点まで高めて金正恩が音を上げるまで追い詰める。しかしトランプの「残り時間は少なくなっている」という発言は、必ずしも戦争を意味するものではない。逆に安倍の「日米は100%共にある」という発言が意味するものは、「100%戦争に協力する」ことでもない。むしろ日本の判断なしに米国が一方的に戦端を開くことへの戒めでもあるのだ。いったん戦端を開けば、日韓両国民の生命は北の“人質”となりかねない状況下である。トランプはまず軽挙妄動に出る事はないだろうが、合計9時間半にわたった会談で、安倍はその辺の機微を語ったに違いない。安倍が記者会見で漏らした「誰も紛争など望んではいない。北朝鮮が『話し合いたい』と言う状況を作る。私もトランプ大統領もそうだ」という発言が全てを物語る。従って北の暴発や何らかの偶発事件の発生は別として、圧力の先にあるのは金正恩のミサイル、核実験をストップさせ、放棄させるという一点に絞られるのだろう。
 そのカギを握るのは紛れもなく中国である。第19回共産党大会を見る限り、南シナ海への基地建設を誇示するなど習近平の舞上がり方はただ事ではない。今後日米は一致して豪州やインドなど主要国に働きかけて「インド太平洋戦略」を展開する。その視線の先にあるのは紛れもなく習近平の「一路一帯」構想に対する包囲網である。トランプは習近平との会談で北に対して本腰を入れた制裁を強く求めるものとみられる。さらに東・南シナ海への進出をけん制するだろう。またトランプは記者会見で「中国は何十年にもわたって、不当だった。非常に大きな貿易赤字が米国に生まれた。年間40兆円にのぼる貿易赤字があり知的所有権の問題もある。」と強く対中批判を展開している。トランプの対中牽制外交は貿易赤字問題を突破口にするものと思われる。総じて米中対峙の構図は歴史的必然である。中国がトランプに行うであろう「国賓以上の待遇」に惑わされてはならない。安倍が記者会見で「考えに賛同する国があればいずれの国でも共同してやって行く」と言明したのは中国を意味しているのだろう。リップサービスで余裕のあるところを見せたが、自由貿易の見本のような組織に中国が入るかどうかは定かでない。
 対中貿易赤字と比較して米国の日本との赤字は7-8兆円程度であり、トランプにしてみれば、狙いは中国に定めている気配が濃厚だ。しかしトランプは手ぶらでは帰れないから記者会見で日本に対して「首相はさまざまな防衛装備を米国から購入することになる。日本が大量の防衛装備を買うことが好ましいと思っている。そうすれば多くの雇用が生まれるし、日本がもっと安全になる」と武器購入を促した。総じてトランプの発言は日本の武器購入の実態を知らないで述べている感じが濃厚だった。むしろ“アリバイ作り”の側面がある。これに対して安倍が「大統領が言及されたように、F35A戦闘機もそうだし、SM3ブロック2A(弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル)も米国からさらに導入することになっている。イージス艦の量、質を拡充していく上で、米国からさらに購入していく」と述べた。もともと購入予定があるのだ。まあ、トランプにしてみれば米国民を納得させるために「安倍に武器購入を表明させた」という、“構図”がほしかったのだ。
 さらに経済問題で重要な点はトランプが、一部で予想されていた2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を求めなかった事だ。これは韓国とのFTA交渉が難航している上に、中国の赤字問題があり、日本にFTAを求めたら、旅行の主目的が日韓中と“貿易戦争”をする結果となりかねない。これは米国の極東戦略からいっても得策でないという算段があるのだろう。貿易問題は副総理麻生太郎と副大統領ペンスとの会談に委ねられることになる。継続協議の形だ。総じて今回の日米会談は、アジア情勢の緊迫化と安倍の緻密な歓迎スケジュールが効を奏して、「我(が)」の強いトランプが自らのペースを自制した形となった。
 それにしても読売は5日付けで「朝鮮半島有事、邦人退避協議へ」とトップ記事を書いたが、筆者は大誤報だとみる。会談の流れは戦争回避であり、退避方針は決めようがない。7日付け解説記事の片隅で「退避策など突っ込んだ意見交換をしたとみられる」にトーンダウンしながら固執しているが、噴飯物の誤判断だ。読売のセンセーショナリズムもいいかげんにしてもらいたい。

◎俳談

 ◎俳談
【ちゃきちゃきの江戸っ子】
ちやきちやきの鬼灯市の啖呵かな 杉の子
 夏に浅草の浅草寺の四万六千日、別名鬼灯(ほおずき)市に行た。ピーカンの35度だったが賑わっていた。七月九、十日の両日、境内に立つ。子供の虫封じ、女の癪(しやく)に効くとして鉢植えの鬼灯を売る。十日の観世音菩薩の結縁日に参詣すると、四万六千日分に相当する功徳を授かるといわれる。江戸っ子の看板娘たちが妍を競って売っているのに気をとられて、拝んでくるのを忘れた。からかうと瞬時に言葉が返ってくる。小気味よいちゃきちゃきの江戸っ子娘だ。筆者は通常その場では俳句は作らないが、今回はすぐ出来た。
花街の昼は鬼灯鳴らすかな 杉の子
もう死語になったが遊郭の吉原や玉の井は「居続け」といって、1週間や10日も遊び続けてかえらぬ客がいたという。残念ながら物心ついたころには赤線は廃止されていた。掲句は居続けの永井荷風であったらこんな句を作ったであろうとして想像して作った。

◎改憲は「正攻法」しか道はない

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◎改憲は「正攻法」しか道はない
  国民投票はオリンピック後の衆院選とダブルか
 「重宝(じゅうほう)を抱くものは夜行せず」という。大きな目的を抱く者は、その身を大切にすべきであるというたとえだ。首相・安倍晋三が総選挙圧勝後の政治姿勢の基本を「謙虚で真摯(しんし)」に置いた。勝ったからこそ野党の主張にも耳を傾けるという姿勢だ。確かに安倍政権の5年間は安保法制など与野党激突法案の処理で対決する場面が多かったが、史上まれに見る長期政権が視野に入った以上、ここは、当面誠心誠意の低姿勢でいくしかあるまい。歴史を振り返れば安倍の祖父岸信介による安保改定の強行は路線として立派だった。しかし、その後の党内抗争は、自民党に対する国民の大きなイメージダウンをもたらした。これに対処するため池田勇人は「低姿勢」と「寛容と忍耐」のイメージ戦略を打ち出し成功した。安倍は独りで岸と池田を使い分けることとなる。安倍は憲法改正という「重宝」を抱いており、これは覇道政治では達成できないのはもちろん、仁徳による統治を意味する王道でなければ無理だ。ひたすら幅広い民意をまとめる「正攻法」しか道はない。
 安倍は改憲問題を処理するに当たって前総務会長細田博之を憲法改正推進本部長に任命した。従来自民党内の論議は船田元など憲法調査会メンバーを中心に“神学論争”が行われてきたが、総じて政治判断の欠如から迷路に入って抜け出せない状況をもたらしただけだ。細田は総合判断力に長けており、適材だ。首相の意を受けて、公約に掲げた9条への自衛隊根拠規定の明記や教育の無償化などについて臨時国会中に方向性を打ち出す方針だ。安倍の提示した「9条の平和主義の理念は未来に向けて堅持し、9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」構想について、安倍自身は「たたき台」という柔軟姿勢を見せているが、同構想を基軸に据えざるを得まい。通常野党第一党を巻き込むことが必要だが、憲法9条改憲を頭から否定する立憲民主党代表枝野幸男や、半減した共産党など左翼勢力とは、調整のしようがあるまい。希望の党とのすりあわせが重要ポイントとなるが、同党に働きかければ民進系議員を刺激して、党分裂は不可避であろう。だいたい野党第一党が55議席では、民意の代表とは言いがたく、当事者能力に疑問が生ずる。
 結局はまず公明党との調整が焦点となるが、同党が消極的な9条改正を脇に置いて、教育無償化などとりつきやすい部分の合意を先行させるべきだろう。いずれにしても自衛隊の位置づけを憲法上明確にすることは不可欠であり、それがなければ改憲の意味は薄れる。最後は国民投票が必要となるが、これには長期的な視野が必要だ。筆者は2000年夏のオリンピックの後にならざるを得ないのではないかと思う。国民投票で過半数を得られなければ、政権は退陣するのが憲政の常道であろうから、国民に趣旨を徹底しないままの早期実施は危険を伴う。オリンピック後なら3年近くたっており、改憲論議も熟し、解散も“適齢期”だ。衆院選と国民投票のダブル投票で国民の意思を聞くことも可能だ。
 読売編集委員の橋本五郎は2日付の朝刊で「衆院選の勝利によって来年9月の自民党総裁選での再選が視野に入ったかのごとく考えてはいけない」と安倍の驕りや緩みを戒めている。一見もっともだが、衆院選挙は国民による首相信任投票の側面を有しており、再選は視野に十分すぎるほど入っている。自民党内情勢を見れば現段階では首班に指名された安倍以外に候補がいるのかということだ。本来なら主筆の渡邉恒雄が書くべきであろう。橋本は議論の主旨があいまいでナベツネには劣る。また朝日も2日の社説で「衆院選直後の本社の調査で今後も首相を『続けてほしい』が37%、『そうとは思わない』が47%」として、なにやら“いちゃもん”を付けているが、大新聞たるものが、大きく判断を間違っている。衆院選は紛れもなく最大かつ無謬(むびゅう)の、“世論調査”であり、「本社の調査」ごときが出る幕ではない。自分の力量を知らないで幅を利かす態度を夜郎自大という。
  1日の特別国会で第4次安倍内閣が発足した。通算で4度以上首相に選出されるのは明治の伊藤博文と吉田茂だけだ。紛れもなく安倍は長期政権へと踏み出す。戦前戦後を通じて7年8カ月で2位の佐藤栄作はもちろんのこと、7年11カ月で1位の桂太郎をも抜いて歴代1位の政権まで見通せるようになった。

◎俳談

◎俳談
【図々しいヤツ】
草虱明眸なれば手を貸せず 産経俳壇1席
 明眸(めいぼう)とは、澄みきって美しいひとみ。美人の形容に使う。草虱(くさじらみ)はセリ科の二年草で、山野を歩くと衣服に点々と小さな草の実がくっつく、あれだ。なかなかとれない。泥棒草の類いで秋の季語だ。美人がスカートなどにつけていると図々しい野郎は、しめたとばかり手を貸す。女は馬鹿だからこういう男にはすぐに引っかかる。
小生のようにシャイで誠実でアランドロンのような男はかえってもてない。したがって 
秋の夜の酔へば自在な恋の文 杉の子
などと一人酌むのである。

◎TPPが日米首脳会談の「影のテーマ」に

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◎TPPが日米首脳会談の「影のテーマ」に
 米紙トランプ翻意の可能性を指摘
   安倍は対中戦略からトランプ説得を
 5日からの日米首脳会談の「影のテーマ」になりうるのが環太平洋経済連携協定(TPP)だ。会談は対中関係をにらんで「合意」に重点を置かなければならないから、両首脳とも日米間で唯一の食い違い要因がクローズアップすることは避けたいのだろうが、それで済むのだろうか。問題は首相・安倍晋三がトランプを如何にして説得するかだが、公表するしないは別として、筆者は搦手(からめて)戦術がよいと思う。搦手戦術とは首脳会談の基調が日米の対中共同歩調に置かれる流れの中で、TPPの政治的な側面を強調することだ。「中国封じ込めのためのTPP」の側面を強調して、安倍が説得すべき機運が米国内でも生じつつあるように見える。
 選挙公約と自動車業界などのごり押しをうけてトランプは就任早々 の今年1月23日、TPPから「永久に離脱する」と明記した大統領令に署名しした。米国通商代表部はTPP離脱を通知する書簡をTPP事務局を務めるニュージーランドと日本などTPP参加11か国に送付した。普通ならばこれで打開の余地がないように見えるが、11か国の間では米国復帰の可能性に期待をつなぐ空気が残存している。日本が、現在進められている11か国交渉をまとめ上げようとしているのも、その期待が一つの要素となっている。。
 事実、米国のマスコミも依然としてTPPへの復帰論が圧倒的に強い。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は8月2日の社説で「米国の対日輸出をすぐ拡大させる最も確実な方法はTPPへの復帰だろう。そうすれば輸入食品に課される日本の関税は低くなる。貿易協定は安倍首相にとって日本経済を浮揚させる有効な手だてでもあり、景気が良くなれば輸入品の消費が増える」と書いた。同紙は10月6日にも「TPPはトランプ政権が1月に脱退を表明したにもかかわらず、勢いを盛り返している」と指摘した。さらに記事の注目すべき点は「各国指導者はドナルド・トランプ大統領の時代にTPPがなお重要性を増すと認識している。11か国共通の目標は、米国がアジアで影響力を発揮するためにTPPは不可欠であると米国に納得させることだ。残る11か国が米国の復帰を粘り強く求めるならば、トランプ氏が大仰な保護主義論を封印し、理性に基づく米国の利己主義を優先することもあり得るだろう。」とトランプが翻意する可能性に言及している点である。またニューヨークタイムズ紙もかつて「TPPの撤退は中国を勢いづける」と題する社説を掲載。トランプについて「中国を貿易と通貨の問題で非難することや、半世紀にわたる日韓との同盟関係を守る必要性に疑問を投げかけること以外、アジアに少しも興味を示していない」とし、「深刻な間違いだ」と批判。TPPへの参加は経済にとどまらず、アジア諸国と米国の強い結びつきを証明することになると指摘している。
 確かにTPPには政治的な側面が色濃く存在している。米国の離脱は中国がリーダーとして推進するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の政治的な意味合いを強め、中国の国際経済における地位を格段に高める流れを作り出しているからだ。中国は米国のTPP離脱を奇貨として、TPPが空中分解することを期待し続けている。環球時報は「日本が独自にTPPを推進することは困難だ。身の程知らずでもある」と、批判している。果たして身の程知らずであるかといえば、浅薄さが極まった見方としか言えまい。やがて“吠え面をかく”のは同紙であることが分かる。
 というのも30日から浦安で開催されている11か国の会合に大筋合意の光りが見えてきたからだ。価格高騰を招いた外国人によるニュージランドの中古住宅の購入の禁止を要求していたアーダーン新政権が、「再交渉が必要」としてきた見解を改め、問題の国内処理の方向に転換したからだ。これは11か国によるTPPの批准に追い風となる。既に筆者が書いたように、米議会の諮問機関はTPPが発効しないでRCEPが発効した場合には、中国が濡れ手にアワで勝ち取る経済効果は880億ドル(約9兆6千億円)に達するという。逆にTPPが発効してRCEPが発効しなかった場合には中国の経済損失は220億ドルに上る。みすみす鳶に油揚をさらわれるところであったが、どうやら流れはまとまる方向のようだ。日本は11月にベトナムで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に合わせてTPP発効に向けた大筋合意を目指す。ニュージランドも異存が無いと表明した。
 こうした、流れは冒頭指摘したトランプの離脱方針に少なからぬ影響をもたらすのではないかと期待される。問題はトランプが振り上げたこぶしを降ろすかどうかだ。世界の指導者の中で一番親しい安倍が、対中戦略の側面から懇々とさとせば何らかの効果が出るかも知れない。トランプがかたくなに離脱に固執しても、4年の任期までにあと3年だ。38%という低支持率や尾を引くことが確実視されるロシア疑惑が影響して、再選されない可能性もある。TPPの大局から見れば、3年先はそれほど遠くはない。いずれにせよ、TPPが日本のリードで11か国がまとまり、菊池寛ではないが「父帰る」を待つ路線は正しい。

◎俳談

◎俳談
【着眼点】
指先に宿る矜持や風の盆   毎日俳談入選
おわら風の盆は、富山市八尾町で毎年9月1日から3日にかけて行なわれている祭りである。越中おわら節の哀切感に満ちた旋律にのって、坂が多い町の道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露する。哀調のある音色を奏でる胡弓の調べが来訪者を魅了する。女性は鳥追笠を深く被って踊るから、顔はほとんど見えない。従って勢い手の動作に視線がいくが、指を反らして凛とした矜持を感じさせる。その優雅さにおいては日本一であろう。鳥追い笠は昔、農村行事で、田畑に害を与える鳥獣を追い払うため、若者達が歌を歌い、鳥獣を脅すように農機具などを打ち鳴らして家々を廻り歩いた。その時にに被ったので鳥追い笠と呼ばれる。掲句は視線を迷わずに指先に当てたことが良かった。

 

◎北情勢緊迫で首脳会談は歴史的重要性

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◎北情勢緊迫で首脳会談は歴史的重要性
  日米、北への“瀬戸際戦略”を確認へ
 融和の文在寅にクギを刺す
 5日からの首相・安倍晋三と米大統領トランプの会談は、アジア太平洋地域の安全保障にとって歴史的な重要性を帯びるだろう。掛け声倒れに終わったオバマ政権によるアジア重視のリバランス(再均衡)戦略に代わって、トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」がクローズアップする。東・南シナ海で海洋進出が著しい中国と暴発を続ける北朝鮮への安全保障上の封じ込め戦略が俎上(そじょう)にのぼる公算が高い。とりわけ北朝鮮情勢に関してはギリギリまで軍事圧力を強め、徹底した経済制裁で金正恩を追い詰め、半島の非核化につなげる方針を確認する方向だろう。事態は筆者が既に指摘したように「極東冷戦」の構図で推移する流れだろう。
 「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは日米同盟、米豪同盟などを基軸に、インドなどを加えて安全保障上の協力を拡大する極めて大きな戦略的な構想だ。その主眼は民主主義という共通の価値観を有する国家群の「結束による対中圧力」に置かれるだろう。折から中国は共産党大会で習近平の独裁色の強い体制を樹立し、習は南沙諸島の軍事基地化を誇示して、評価された。今度は尖閣諸島へと触手を伸ばすであろうことは目に見えている。既にオバマは尖閣への中国進出阻止抑止についてコミットしているが、トランプも同様にコミットするだろう。
 こうした中で米国の有名な戦略家エドワード・ルトワックの北朝鮮政策での日本への提言が関心を呼んでいるが、総じて極東の安全保障に対する無知をさらけ出しており、一顧だに値しない。ルトワックの構想は①日本政府が何もしなければアメリカは何もしない、アメリカは日本の反応を見て決めるので日本が動けばアメリカも動く②日本は行動すべきであり対話をやめて行動に向け準備を始めなければならない③日本に残された時間はあまりなく、北はまだ日本を攻撃できる核弾頭ミサイルを持っていないと思が、しかし1年か1年半後に持つーというものだ。基本はあいまいな用語を使いつつ日本の軍事行動を促しているとしか考えられないが、その根底には米軍の対北軍事行動によって日本の人命被害が多数にのぼることへの決意を促す“扇動”があるような気がする。アメリカが単独で軍事行動を起こせば、東京にミサイルが飛ぶ可能性があり、そのための日本の「覚悟」を促しているのだ。おまけに事実誤認がある。北のノドン200発は日本に向けられたものであり、ノドンには核だけでなく、細菌兵器や毒ガスも積載されうることを知らない。総じて論旨が荒っぽく、極東安保を理解していないように見える。日本にミサイルが飛ぶ事態への覚悟などは論外だ。
 そこで首相・安倍晋三とトランプとの会談だが、トランプはあくまで北の核保有を容認せず、非核化を目指すための軍事的な備えは万全を期す方針を表明するだろう。もちろん北が核兵器を使用すれば軍事的な対応を直ちに取れる体制を維持することを約束する。いわば対ソ冷戦時代に米国が取った「瀬戸際戦略」である。米軍が北の中枢はもちろん、核ミサイル基地、ソウルを狙う通常兵器などを壊滅させる作戦を練り上げていることは確かだ。しかし、対ソ冷戦ではベトナム戦争など代理戦争やキューバ危機はあったが、一発の弾もソ連に向けて発射されていない。偶発事態がなければ、この路線を踏襲するものとみられる。安倍はトランプに軍事行動はよほどの事態でなければ成り立たないことを、公表せずに表明すべきであろう。
 また対北締め付けには日米韓3国の結束が不可欠だが、北との融和路線を時々のぞかせる韓国左傾化大統領文在寅を如何に日米側に引きつけるかが焦点だ。トランプは文との会談でクギを刺すことになろう。
米国防長官ジェームズ・マティスは「米国は北の核保有を認めない。我々は外交による解決を目指すが外交は軍事力に支えられてこそ効果的だ」と述べているが、もっともだ。軍事力行使の“寸止め”戦略が続くことになる。
 一方南シナ海への戦略も立て直しの必要がある。オバマはリバランスは口だけで、結局何も出来ずにパラセル諸島やスプラトリー諸島への中国進出を許してしまった。フィリピン沖のスカボロー礁も危うい状況であり、中国が目指すのは3カ所を結ぶ軍事基地化で南シナ海の支配を確立することだ。習近平は党大会で自慢げに南シナ海への進出を報告している。安倍は30日のフィリピン大統領ドゥテルテとの会談で、対北問題で連携の方針を確認した。今後米国は南シナ海への軍事的プレゼンスを高めることになろう。自衛隊も艦船の頻繁なる派遣で協力せざるを得ないだろう。

◎俳談 

◎俳談
【芭蕉のDNAを継ぐ】
室蘭発直江津航路大銀河 産経俳壇2席
 <荒海や佐渡に横たふ天の川>は人口に膾炙(かいしゃ)した芭蕉の句だ。芭蕉が荒海という日本海を天の川に結びつけた結果、銀河と言えば日本海ということになった。この芭蕉のDNAは現代の俳人に心にもしっかりと植え付けられている。従って日本海と銀河と聞けばプロの俳人は「ぼー」となってしまうのだ。そこを狙って投句すると良く当たる。掲句は日本海航路のフェリーで作った。確かに満天の星空であった。全部漢字にしたのは漢詩の効果を狙った。しかし下手にやると名詞ばかりの3段切れとなってリズムを壊す。掲句の場合「発」の一字で中7以下がスムーズに働いた。懲りずにやったのが
弔問の羽越本線大銀河  月刊俳句入選
新潟と銀河は入選を稼げる。

◎自作自演の「習思想」で権力誇示ー共産党大会

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◎自作自演の「習思想」で権力誇示ー共産党大会
  鄧小平を超え毛沢東と並ぶ姿を演出
 最高指導部に後継者なし
 2期でさらに5年どころではない。習近平は自らの任期を永遠なものとして確立しようとしている。その最大の武器は今回の第19回党大会で決めた「習思想」である。自らを、建国の父である毛沢東の「思想」と同列に高め、改革開放を推進したトウ小平の「理論」を超えた理念を、共産党の憲法である党規約に盛り込むことに成功した。「思想」は「理論」を遙かに上回るのだ。大会は国家主席の指導理念を「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」と、習の名前を冠した形で、党規約の中に盛り込んだのだ。規約に個人名が書かれたのは史上3人目である。中国共産党指導者にとって自らの名前を党規約に盛り込むことは極めて重要な権力誇示となる。しかも、これまでの指導者と比べると異例の早さである。習が掲げる今世紀半ばまでの「社会主義現代化強国」実現に向けた理論的な支えを構築した形だ。もうトウ小平時代は終わって、これからは習時代だということを強く印象ずけるものだ。後継者と目させる人物を最高指導部に入れないのも、超長期政権を目指す姿と映る。
 総じて党大会は中国歴代政権が自粛してきた個人礼賛の傾向を帯び、習は臆面もない自作自演の権力確立を成し遂げて見せた。共産党の事実上の独裁どころか、自らの独裁による政治体制を築き上げたのだ。その証拠が北京の街でも見られた。大会の期間中、北京市内の公園では習近平国家主席をたたえる歌を合唱するグループの姿が見られた。メンバーらが「習おじさん、習おじさん、みんなが愛している習おじさん」とか「習主席は、全国人民とともにある」などといった歌詞の歌を合唱したのだ。禁止されてきた個人崇拝を、紛れもなく“官製”で実践したのだ。市民運動を起こしてまでムードを演出したのだ。
 さらに南シナ海での南沙諸島への人口島建設による軍事拠点化や、習近平就任以来顕著になった東シナ海における領海侵犯などその対外姿勢は、歴代中国皇帝が絶頂期に成し遂げた覇権国家のように、社会主義国家と民主主義国家の対峙の構図を推進するかのようである。この紛れもない富国強兵路線は「中国の発展はいかなる国の脅威にもならない」という習自身の言葉と矛盾し、第二次大戦後欧米と日本が主導した民主主義の国際秩序に社会主義で対抗する姿を浮かび上がらせた。
 習近平がここまで自らの権力の確立に執着した背景には、「トラもハエも叩く」として推進した汚職摘発キャンペーンがある。このキャンペーンは汚職摘発の名を借りた権力基盤の確立が背景にあることは言うまでもない。次官級280人、局長級8600人、地方幹部6万6000人、全国で150万人の摘発・処分は、結果として権力基盤を絶大なものとした。この恨みから「腐敗撲滅の鬼」と呼ばれ、今回最高指導部から退任する王岐山は、これまで27回も暗殺されそうになったといわれる。習近平は、当初王岐山を留任させようと画策したが、長老の反発が予想外に強く、あきらめた形だ。党大会で唯一垣間見えた反習近平の動きと言える。習もあまりに多くの政敵を葬ってきたのであり、引退したら殺害される危険が常に存在する。やめるにやめられない立場となっているとも言えるのだ。
 国家主席の任期は中華人民共和国憲法79条で被選出年齢は45歳以上、任期は2期10年を限度とすると定められている。これ以上延ばすには3つの方法があるとされる。1つは今後2期以上を目指す習近平が多分来年3月の全国人民代表大会で憲法改正を実現しようとするという見方である。2つ目は、憲法解釈で延期する方法もある。憲法83条は「人民代表大会の任期は次の人物を決めるまでやり続ける」とあり、また60条は「非常事態の場合は任期の延長を認める」という規定もある。これらの条文を根拠にするのだ。さらに3つ目は84年にトウ小平が廃止した主席の神格化を復活させる方法である。
 こうして中国の政治は集団指導体制が原則にとどまり、習近平の独裁色が強まり、専制政治や社会に対する抑圧が強まることが懸念される。言論封殺も続くだろう。その最初のケースを毎度のことながらNHKが被った。NHKの放送が習近平への権力集中を伝えた瞬間に暗黒画面となった。
 対米関係は対峙の傾向を強めるだろう。習はさる4月のフロリダでのトランプとの会談で借りてきた猫のような様子を見せた。トランプは華麗で和やかなる晩餐会の最中にトマホーク巡航ミサイル59発をシリアのシャイラート飛行場へと発射してみせたのだ。トランプのアッパーカットを食らって、習は目を回したが、党大会でのすごみ方はその裏返しでもある。またトランプの体たらくで、それほどでもない指導者だと感じた気配がある。
 一方、対日関係についてはウオールストリートジャーナル紙が興味深い社説を掲載した。「日本の民意が示した中国への警告」と題する社説は安倍自民党の総選挙圧勝の意味を説いている。北朝鮮の核・ミサイル実験の横暴に「日本は巡航ミサイルの購入を検討している。また自前の核抑止力を求める可能生もある」と強調。「だから」と続けて「習近平氏が日本の再軍備を望まないのであれば金正恩への食料と石油を遮断することも出来る。さもなければ北東アジアの勢力地図は中国が望まないようにシフトするだろう」と日本を使ってどう喝したのだ。中国と北の出方によってはまんざらあり得ないことでもない。習近平は内弁慶で国内ばかりを見て、「資本主義現代化強国」の日米同盟があることを忘れない方がよい。

◎俳談

◎俳談
【頭脳の引き出しからひねり出す】
何処より旅せる虫やフェリーの夜 産経俳壇1席
 昔学生時代に、室蘭発の直江津航路に乗ったら、満天の星。ベンチに座ると何とコオロギが鳴いていた。どこからこの大きなフェリーに乗り込んだのだろうか。何とも言えない寂寞感で胸が一杯になった。半世紀後にその寂寞感がわき起こり、一句となった。年を重ねると言うことは得である。現場を見ずとも、分かる事が多い。経験が積み重なって頭脳の引き出しを形作っているのだ。訓練すればパソコンの検索と同じで言葉の一つ二つのヒントで目的の感情を引き出せる。


◎希望内部は分裂含みの様相

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◎希望内部は分裂含みの様相
   進退窮まる民進党系が発火点か
 先に小池百合子を「百叩きの上遠島」と書いたが、仏高級紙フィガロからまで「流刑地の女王」と言われてしまっては形無しだ。無理もない。民進党を希望の党と立憲民主党に分断させた張本人である上に、希望は分裂含みだから、江戸時代なら八丈島に流刑となっても文句は言えない立場だ。フィガロは「一番の敗者は小池氏」とも書いたが、さすがによく日本の政治を見ている。野党は苦悩の再編へと動く。一方圧勝した安倍は1日の特別国会で第4次安倍内閣を発足させる。通算で4度以上首相に選出されるのは明治の伊藤博文と吉田茂だけだ。長期政権へと踏み出す。その基本姿勢は憲法改正に軸足を置いているが、与党だけでなく野党を含めた幅広い合意形勢を目指す柔軟性も見せている。
 しかし、一口に改憲と言っても難所の多い谷川岳を登るようなもので、たとえ衆参で自公が3分の2の多数を獲得していても一筋縄ではいかない。安倍は「合意形成のための努力は(野党の)第1党でであろうと第2党、第3党、第4党であろうと行っていかなければならない」と野党も含めた取り組みに意欲を見せた。これは公明党が野党第1党との話し合いを重視していたのを、ご破算にした感じだ。なぜなら立憲は55年体制以来最小議席とはいえ野党第1党となり、改憲問題について自民党と鋭く対立しているから話し合いの対象になりにくいのだ。代表枝野幸男は、安部発言に強く反発して「権力は憲法で縛られるという立憲主義の原則を理解出来ていない人に、憲法を変えさせるわけにはいかない」と言ってのけたのである。従って安倍が立憲抜きでの改憲を目指さざるを得ないのは当然である。安倍の狙いは希望と維新の改憲勢力の抱き込みにある。
 ところが安倍発言が意図したかどうかは定かでないが、これが希望の分裂含みの流れを加速しそうなのである。なぜなら希望内部は改憲志向の保守派と安倍ペースでの改憲に強く反対する旧民進党系に分断されつつあるからだ。議席欲しさに安保反対の理念を曲げて希望へ参集した民進党系の当選者24人は、無節操がたたって窮地に追い込まれつつあるとも言える。立憲がこれだけ伸びるのなら立憲に回ればよかったというわけだが、後悔は先に立たずである。希望の衣をかぶって有権者を欺けば、たちまち正体がばれてしまうと言う物語はイソップのロバの逸話と似ている。
 いずれにしても希望の内部は遠心力が強く作用しており、これが野党再編の発火点になる公算が高い。自らのブームが総選挙まで続くとみた大誤算の小池は、都知事をやりながら、希望の党のたがを絞めなければならないという、苦境に陥る事は必定だ。パリで小池は「国政のことは国会議員で決めればよい」と発言しているが、そこにはもう投げ出したいという気持ちがありありとうかがえる。代表を投げ出して代わりがいるかと言えば、求心力のある人物はほとんどいない。細野豪志もベテランだが、線が細い。代表代行の樽床伸二もカリスマ性ゼロで、代表が務まるか。前原誠司を代表に迎えると言う線も考えられるが、実現性は未定だ。もたもたしているうちに党が持つかどうかに直面するから、もう誰でもいいということになりかねない。
 こうした中で何らかの調整役として民進党の籍を残して無所属で出馬した野田佳彦、岡田克也、江田憲司らが院内会派を作り、そこにとりあえず希望から合流するという方式や、民進党が新しい名前で政党を作り、そこに希望の離党者を受け入れる構想などがささやかれている。枝野は立憲を解体する気は更々無いが、来る者は拒まずが基本姿勢であろう。俯瞰すればいずれも民進党勢力再結集を模索する動きと言えそうである。
 いわば理念をそっちのけにしての数合わせ先行と言えるが、野党が繰り返してきた目先を変えるだけの新党が国民の理解を得ることは困難である。枝野も「間違っても数合わせとみられてはならない」と発言したが、本人は元をただせば悪名高き民主党政権の官房長官であり、その体たらくの責任者の一人だ。やはり悪名高き革マルの根城となっているJR.東労組などとの交流も過去にあったといわれる。産経新聞の過去の報道によると1996年の第41回衆議院議員総選挙への立候補の際、JR東労組大宮支部執行委員長と「私はJR総連及びJR東労組の掲げる綱領(活動方針)を理解し、連帯して活動します」などが記された覚書を交わした、と『新潮45』に掲載されたという。枝野は、覚書は「一般的な政策協定を結ぶ一定のひな型の通り」と述べ問題がないとの考えを示し、JR東労組との関係は「連合の各産別とお付き合いする範囲でお付き合いしているが、それ以上でも以下でもない」と述べた。しかし、枝野は昔JR東労組から4年間にわたって総額404万円の資金提供を受けていたという説もある。これに関連して安倍は去る7月に、「鳩山由紀夫内閣の時に、JR総連やJR東労組について革マル派活動家が相当浸透しているとの答弁書を、枝野氏が行政刷新担当相として署名している」、などと指摘している。その枝野が一部有権者の、判官びいきで脚光を浴びた。理念無き数合わせがやがては分裂を招くことは目に見えているが、枝野の発言に反して「数合わせ」をしなければ、野党は力を得ない。いずれにしても先に指摘したように1月1日に政党が成立していなければ政党交付金はもらえないから当面の期限は年内と区切られている。矛盾撞着を抱えて野党は再編へと動かざるを得まい。

T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」浅野勝人

検証・・・T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」
ー2017/10月5日、安保研ネット掲載。総選挙公示5日前
安保政策研究会理事長 浅野勝人

T君、総選挙いよいよ10日、公示ですね。
東京都議選で自民党が惨敗した後、お目にかかってお昼に天丼食いながら、「都議選の小池百合子は怖かったが、国政選挙の小池は怖くない」と申し上げた私の見解が当たりそうな気配ですね。

都議選の折、多くのマスコミが世論調査、その他の情勢を分析して、自民党は減っても30議席台と踏んでいたのに、T君ご承知の通り、私は20議席そこそこと予測しました。結果は19議席でみんなびっくり仰天でした。
種明かしをしますと、「都民ファースト」が全員当選すると予測して、民進党も減る。共産党が増える。公明党は現状維持。これを総合して逆算すると自民には20議席位しか残らない。結局、「都民ファースト」で落選したのは1人だけだったので、大当たりしたという仕掛け。

都議選で勝利の女神だった小池百合子が、国政選挙で輝くのは無理と推測した理由(わけ)は、
あの方は、どの選挙も「大統領選挙」と勘違いしている。
だから、小池人気が、全国津々浦々、衆議院小選挙区に行き渡り、特に比例区では圧勝して、都議選の再現となる。総理大臣就任も夢ではないと錯覚してしまう。

自民党内では、外交・安保政策に関して右派の論客だったから、時間の経過とともにその地金が滲(にじ)み出る。そうなると、右派の安倍晋三と同質なことが改めてわかってしまうので、「政権選択選挙」という唯一の訴えが売り物にならない。小池を支える膨大な無党派層が失望して離反する。
その証拠に、党公認に際して民進党リベラル派を除外する表現を「全員公認するつもりはさらさらない」と失言して馬脚を現した。

このひと言は重い。選挙戦を左右する重大なミスショットと予言しておきます。いや、ミスショットではなくて、「本音」を最悪な言葉使いで表現した。有権者は容易に「小池百合子の本音」と見破るから、このひと言で「希望の党」は失速する。非自民の有権者に、「第2自民党」は要らないと映るからです。

つまりは、安倍自民党と対峙することによって人気を倍増するつもりが、まるで補完勢力と映って当初の意図が崩れてしまいました。
だから、出馬の可能性を匂わしていた姿勢から一転して「不出馬」を明言して逃げました。どうやら思惑が外れかねないとみて「私自身は出ないと最初から言っている」と苦し紛れのウソを言わざるを得なくなりました。
与党をめざして「希望の党」を立ち上げた政党の代表・党首が、自身は出馬しない。国会の首班指名を目指さないという人がいたかどうか、憲政史上の事例をどなたか調べて教えて下さい。( 選挙の結果 ― 220人余立てて当選49人。当選率20%。惨敗 )

これに比べて、安保法制、憲法9条改正に反対する基本姿勢を堅持して筋を通し、自民党との対決を鮮明にしている「立憲民主党」の候補者と「希望の党」への参加を避けて「無所属」で出馬する前民進党の候補者が、非自民票の受け皿になる可能性が強まります。( 選挙の結果 ー 80人立てて50人当選。当選率60%。躍進)
選挙後の野党再編は、立憲民主党を立ち上げた枝野幸男を軸に小ぶりな勢力からの再出発になると思われますが、候補者を降ろして立憲民主党に選挙協力をした共産党は無視できない存在になります。
現役時代、議員会館の部屋が隣同士だったから褒めるわけではありませんが、小池晃が書記局長になってからの共産党は柔軟でいい。


T君、安倍自民党の不人気は、君の想像をはるかに超えています。私の周りでも、まさかと思う方が「今回は自民党には投票しない」と明言して驚かされます。
T君も当初は肝を冷やしていたでしょうが、小池百合子のおかげで、野党が「馬糞の川流れ」(政治勢力がバラバラになって求心力を失う様子を金丸信らしい表現で言った)となりました。
自民党が、近年、厳しく批判されている傲慢な政治姿勢を反省して、国家、国民の平穏と繁栄に真摯に取り組む姿を示せば、情況は好転。わずかな減員ですみそうです。( 選挙結果―4人減って280人当選。現状維持 )

二階幹事長は、大軍の将ですから、自信を持ってもっとはっきり発言した方がいい。
「世の中のために政治家が要(い)る。政治家のために世の中があるのではない」(思いあがるな)と明確な小池批判をする。
「国会で戦争法案反対と言っていた人たちが、政党を変わったら賛成という。我が党にとっては有り難いが、有権者の方々がそれを許すだろうか」とはっきり批判して、野党の中では一番強いと予測されている「希望の党」の票を離散させる戦術が重要です。(結果は野党第2党)

私は、来週から中国です。11回目になった北京大学での講義。それに北京外国語大学大学院、首都師範大学へ講義にまいります。選挙前に決まっていた日程ですから出かけますが、投票日前には戻ってまいります。
T君、加油! 加油! (2017/10月5日)

(22日、台風の中で総選挙終了)
T君、お互い予測はドンピシャリでしたが、何のためにやった選挙だったのか私には今でも理解不能です。勝つためにやって、小池百合子のミスショットで勝ったから、安倍晋三は結果オーライだったと理解すれば、それでいいのでしょうか。 

莫大なお金とエネルギーを費やして選挙をやって、世の中のために何がどう変わるのか、変わらないのか、何も無い。立憲民主党の当選者50人の内35人が前職以外の新らしい人だったというだけで、無所属を含めて各党とも、ほぼ全員選挙前の顔ぶれがそっくり再選されただけのことです。政策も顔ぶれも何も変わらない。野党に「馬糞の川流れ」現象が起きて、日本の政治を退化させただけでした。

T君、自民党は、現状維持をして自・公与党で300議席の大台に乗せて事実上の大勝利でした。但し、競争相手の票が二分され、比較多数で有利な情況が造られた敵失による勝利に過ぎないことを忘れないでください。

議会制民主主義、主権在民の根幹を理解していないほどの政治家の劣化。政党助成金をめぐって右往左往するほどの政党政治の劣化を招いたのは「衆議院小選挙区比例代表・落選者救済制度付きシステム」によります。世界に類のない悪法です。選挙は1票でも負けたら負けです。

安倍政権は、ことによったら佐藤栄作政権を越える長期政権になると思われます。
安倍首相のやるべき第1の課題は、もともと選挙制度の改正を強行することでした。衆議院を定員3人の中選挙区、全国100選挙区に改正する。公明党を含めて、賛否が政党によって入り乱れますが、自民党の過半数で押し切ることができる。2/3は要らない。
安定した政権の持続と何よりも有能な新人議員が、選挙ごとに1/4を占めて、もう一度政界に人材が集まります。(2017/10月23日、元内閣官房副長官)