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◎俳談

◎俳談

黒揚羽雨のジルバを踊らうか  産経俳壇入選

 ジルバは第二次世界大戦の終戦とともにアメリカ駐留軍によって日本にもたらされた。軽快でリズミックなこのダンスは戦後の開放的な雰囲気の中で一般大衆に受け入れられ全国に広まった。アランドロンに似た慶応ボーイの筆者は、背が低いからダンスパーティーの壁の花であったが、うまかったので時々踊ってもらえた。黒揚羽は夏の季語だが、イメージとしては濃厚な年増女を連想させる。単にジルバだけでは単調だが「雨のジルバ」とした途端に詩情と物語性が出た。


◎稲田は民主政権の時限爆弾に近寄るな

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◎稲田は民主政権の時限爆弾に近寄るな
  南スーダンで「戦死者」を出す愚挙
 親しい自衛隊元幹部が筆者に「我が国防衛のための戦死ならともかく、地の果てのアフリカまで行って戦死では隊員は浮かばれませんよ」と漏らした。いま自衛隊が防衛相・稲田朋美の命令により駆けつけ警護と宿営地の共同警護などを前提にした新任務の訓練を始めている。内戦状態になっている南スーダンで、新任務を遂行すれば確かに隊員は戦死を覚悟しなければならない。戦後初の戦死者が出る危険がある。1人2人なら稲田の首が飛ぶくらいで済むが、多数の死傷者を出した場合内閣を直撃する可能性が高い。息も絶え絶えの反戦論者を勢いづかせる。民主党の野田佳彦政権が深く考えもしないで自衛隊派遣という時限爆弾を置き、それが爆発しかねない状況なのだ。稲田は9月中旬に南スーダンを訪れ現地視察する方針のようだが、現場の実態をよく把握して判断すべきだ。
 南スーダンは日々緊迫感を増しており、国連は国連平和維持活動(PKO)のための軍隊4000人の増派を決め合計1万7000人近くが活動に当たることになる。日本政府は12年1月から陸上自衛隊施設部隊を順次派遣し、首都ジュバで道路建設などのインフラ整備にあたっている。規模は350人であり、その交代時期が11月に到来する。それを機会に、稲田はその派遣部隊に昨年成立した安保法制に基づき、実戦訓練を行うように指示したのだ。しかし、防衛にど素人の稲田は南スーダンでの駆けつけ警護が何を意味するか分かっているのだろうか。「部隊の派遣準備訓練を始めます。この訓練は平和安全法による新たな内容を含むことになります」 といとも簡単に言ってのけたが、テレビで見る限り官僚の作文を口写しに言っているだけで、分かっている風には見えなかった。
  いまのところ訓練はするが、現場で実施するかどうかの判断は派遣直前になる可能性が高い。いわば政府は稲田に観測気球を上げさせて世論の反応を見る動きに出たのかも知れない。最終的には首相・安倍晋三が判断することになろうが、やめた方がよい。なぜやめた方がよいかを説明すれば、簡単に言えば自衛隊員を戦死させ、国内政局を直撃させるほどの戦いをする“義理”は日本にないからだ。そもそも南スーダンに軍隊を派遣している国は、国連の支払う外貨目当ての発展途上国ばかりである。内乱が自国に及ぶことを警戒する周辺国が多く、加えてインド、モンゴル、ネパール、バングラデシュ、韓国、中国などであり、その「外貨」はどこの国が出しているかと言えば、世界第2位の分担金を支払っている日本が大きく貢献していることになるのだ。G7で派遣している国はゼロだ。旧宗主国のイギリスですら敬遠している。なぜかと言えば、アフリカにおける泥沼の内乱状態を知り尽くしているからだ。触らぬ神にたたりなしとばかりに見て見ぬ振りをしている。
 日本は先進国から出している非常にまれな例である。野田政権がなぜ出したかといえば、事務総長・潘基文から頼まれたからのようだが、ろくろく政府部内で議論もせずに決めてしまったのだ。将来自衛隊に戦死者が出るなどということは考えが及ばなかった模様だ。なぜなら安保法制が成立したのはその後であり、実際、日本は“別格”として、前線には出ずに「お客様扱い」(自衛隊幹部)されているのだ。野田が派遣した根底にはアメリカに135億ドルもふんだくられて、全然評価されるどころか侮辱された湾岸戦争のトラウマが依然残っている。このトラウマが、こともあろうに泥沼の南スーダンまで自衛隊を行かせたのだ。当時、防衛省は現地の治安を不安視して消極的であったが、国連平和維持活動 (PKO) 参加を外交カードとしたい外務省が押し切った経緯がある。しかし、外交カードは国連分担金だけで十分だ。これまでの自衛隊のPKO活動の中でも最も過酷なカードを切っても、ろくろく評価されていないではないか。
 散発的にゲリラが出る状況ならまだしも、稲田は内戦と言ってもよい状態の国にのこのこ派遣して、戦後初の戦死者が出かねない軍事行動を本気でさせるつもりなのだろうか。いくら右寄り思想でもそれはやり過ぎではないか。反政府勢力は何と10歳そこそこの少年兵に武器を持たせて戦わせている。1万3千人はいる反体制派の少年兵を相手に戦うことになりかねないのだ。自衛隊員は自分の息子のような少年兵に銃を向けて引き金を引けるのだろうか。それとも少年兵でも引き金を引ける訓練をするというのか。自衛隊が行う戦後初めての戦争は「子供の戦争」になるのか。スジの悪さにおいては札付きの場所である。
 元陸上自衛官の参院議員・佐藤正久は「自分の部隊が道路整備中に襲われ、助けてくれと言う無線が入っても今は助けにいけない」 と、安保法制実行の必用を説くが、まず第一にその危険があるところで道路整備などする必要も義理も無い。また正当防衛は認められており、反撃すればよいのだ。「日本の民間人が助けてくれと言っても助けられない」というが、はっきり言ってリスクを承知で商売する方がおかしい。要するに外貨目当ての1万7千人ものPKO国連部隊が、治安に当たるのだから、350人の自衛隊が“出る幕”をあえて作る必用がどこにあるかということだ。過ぎたるはなお及ばざるが如し。後方で書類整理でもさせるか、早期撤退を検討すべき時だ。
 自衛隊員の心境を察すれば、日本防衛のために自衛官に応募したのであり、周辺国の侵略には命をかけるのも厭わないが、アフリカの泥沼状況下で訳の分からぬ戦いで戦死することは全く不本意であろう。家族もそう思っているに違いない。戦死者が出るようになれば国論は必ず2分する。反戦論者が有利になり、これが物語るものは内閣支持率がエレベーターのように急落することだ。総選挙で大敗しかねない要素だ。安倍は内政・外交共にやるべきことが山積しており、民主党政権の置いた時限爆弾などに近寄る必用など全くない。いうまでもなくPKOは平和維持活動により、新政府を支援して民主主義国家を樹立するという崇高な目的がある。南スーダンの人道危機も重要だ。しかし、戦争による“殉職馴れ”している国と、戦後一発も銃弾を発射していないばかりか戦死者ゼロの日本のケースは別次元の問題だ。世界にはリスクの取れる国とリスクを取れない国があるのだ。


◎俳談

◎俳談

海を見て決まりし墓地や月見草 東京俳壇入選

 友人にもらった月見草が咲いた。早朝つぼみがふくれているので咲くなと直感して、急いでカメラを用意すると数秒後開花を始めた。わずか2分間で満開となった。月見草といえば夢二に
有名な失恋の歌がある。
待てど暮らせど来ぬ人を 
宵待草のやるせなさ 
今宵は月も出ぬさうな  
太宰治も『富嶽百景』で「富士には月見草がよく似合ふ」と述べている。花を詠むときは賛美してはならない。既に読者が賛美しているからである。他の事象や感情と2物衝撃的に対峙させると成功する。
月見草逢魔が時に咲きにけり 
 翌日の朝は花が赤っぽくなり、午後にはしぼんだ。


◎自民は国益の大局から「安倍3選」を目指せ

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◎自民は国益の大局から「安倍3選」を目指せ
  政治の空白を作るときではない
 “総裁”任期は「制限なし」とせよ
 失礼にも自民党幹部が飲み会で「今のところ太っちょと痩せぎすと青二才と女が反対している」と漏らし、爆笑を買った。総裁任期の延長問題である。察するところ太っちょは石破茂、痩せぎすは外相・岸田文男、青二才は小泉進次郞、女は野田聖子の皆様のことらしい。筆者はちゃんと「様」付けした。なぜ反対するかの理由を考えれば首相・安倍晋三の任期の延長につながることに反対しているのだ。しかしここには“史上空前”の誤解がある。任期延長は「総裁」の任期であり「安倍」の任期ではないことが皆目分かっていないのだ。安倍を含めてフェアに総裁選挙をやって、総裁を選出する事が延長論の趣旨なのだ。大相撲で言えば初日から千秋楽までの2週間を3週間に延長するだけである。横綱が優勝するとは限らないのだ。したがって事は議論を待たない。総裁の任期は延長すべきだ。憲法と同様に制限なしでもよい。なぜならそれが結果的に安倍の任期延長につながって国益にかなってくるからだ。もっとも延長推進派は、今後年末の方針決定まで総裁選に臨むほどの意気込みがなければ大失策を起こすことを肝に銘ずるべきだ。
 反対者たちよ、よく考えても見るがよい。戦後これほど日本を活性化した首相がいたか。企業収益は戦後最高、働きたいものは有効求人倍率が物語るように引く手あまたの人手不足。アフリカへの驚がくの3兆円官民投資の先見性。オリンピックは、ロシアが28個失ったことが作用したが史上最多のメダル数。国政選挙に衆院も参院も連続2回ずつ大勝して、前人未踏の4連覇を成し遂げた。オリンピックで4連覇が国民栄誉賞になるなら、自民党も安倍に「自民党栄誉賞」を与えて“永代総裁”に据えてももおかしくない。陣笠どもは当選させてもらった恩をすぐに忘れてはいけない。民主党政権が中国、韓国、ロシアから領土で嫌がらせを受けたように、他国は隙あらばと狙っている。弱体政権は極東情勢の危機を招くのだ。いま極東の情勢激変に対処出来る首相がいることは、日本にとって僥倖(ぎょうこう)以外の何ものでもない。この首相をあと2年で辞めさせて、有象無象が首相になって、また1年で交代を繰り返す時代に戻っていいのか。
 主要国の指導者の任期を見てみるがよい。米国大統領は8年、ロシア大統領は12年、中国主席は8年、ドイツ首相の任期は4年だが任期に制限がなく名宰相メルケルは12年も務めている。サミットの席順が物語るように在任期間が長い指導者ほどよい場所を占める。国際外交の世界では、指導者同士の面識が1番重要なのであり、日本のように1年ごとにころころ変わる首相は、一目置かれないのだ。この際、ドイツのように任期を制限なしとするのもいいのではないか。
 それでは余すところ2年もあるのになぜ今延長かを、反対論者にじゅんじゅんと説くことにしよう。要するに安倍の任期があと2年と限られれば、もう政局は「ポスト安倍」へと動き出すのだ。自民党内の目は石破と岸田の動向に注がれ、その一挙手一投足が注目の的となる。これに軽佻浮薄なメディアが加わり、早くも総裁選が始まったかのような様相を呈するのだ。政治家も官僚もこの首相は長期に続くと見るから、従うが、任期が決まっていれば手のひらを返すのだ。要するに政治の空白が生じて、安倍は求心力を失い政治力を十分発揮できない事態に陥る。これは国益を棄損する以外の何ものでもない。
 石破はテレビで「権力は長くあるとどうしても劣化する」と述べているが、それは人による。佐藤栄作やメルケルやオバマが劣化したかと言いたい。同じテレビで民主党の藤井裕久は安倍を「独裁色が濃い」とまるでヒトラーのように形容するが、ヒトラーを「ヒトラーちゃん」と呼んだことがあるか。安倍は「安倍ちゃん」と「ちゃん」付で呼ばれており、独裁者とはほど遠い。安倍が独裁などというまともな政治評論は聞いたことがない。人間年を取ると、判断力まで衰えるのかと思うと、75歳の筆者も注意せねばなるまい。
 この政局を快刀乱麻を切るごとくに切った人物がいる。何を隠そう藤井と同じ元民主党幹部で前衆院副議長の鹿野道彦だ。鹿野は、代表選出馬の挨拶に来た前原誠司に「今の政界でただ1人命がけでやっているのは安倍さんだ。お前も命がけでやれ」と、激励したのだ。俳句でいい句が出来るときは打座即刻の句と言うが、鹿野発言はまさにぽんと膝を打ちたくなるような人物評である。
 石破は消費税についても「10%に上げるのは早ければ早いほどいい」と発言したが、閣議決定に同意しておいて後から言うのはおかしい。遠吠えではないか。そんなことをすれば国民の怨嗟を買って、確実に自民党は議席を大幅に減らす。議席を減らす総裁を歓迎するかだ。それでは他の反対論を分析する。岸田は時期尚早論だ。「3年間の任期のさらに先のことを話すのは気の早いこと」と反対している。これは自民党幹事長・二階俊博がまるで「安倍の任期延長」と受け取られるような発言をしたからいけないのであって、岸田も焦点は「総裁任期の延長」であることに目覚めるべきだ。下手をすると佐藤栄作の3選に反対した三木武夫のように、切られることになりかねないぞ。佐藤は三木を外相にしたことを「不明の至り」として、切ったのだ。小泉ジュニアの発言は、「なぜ今、議論するのか、率直に言って分からない」と石破と岸田の受け売りのようなものだ。「その次ぎの次ぎの次ぎ」を狙うなら、安倍に付いた方がいいのに、まだ雑巾がけが足りない。分からないのなら分かるように修業せよ。野田は「かつて相当人気があった小泉純一郎元首相ですら任期を守った。安倍首相も任期を守る人だから、必ず18年には総裁選をやる」と発言しているが、当たり前だ。総裁選はやるのだ。やっても人望がなくて本人は泡沫並みであることを知るべきだ。
 いずれの発言も「安倍の後は自分」という、利己主義に根ざしたものであり、国家観に欠ける。反対のおのおの方は大局を見据えるべきだ。るる述べてきたように国内経済は胸突き八丁、極東情勢は緊迫の一途という状況だ。自民党は政争を再燃させている時ではない。しかし二階も発言した以上は、延長を達成しなければならない。腰折れすれば幹事長のこけんに関わるどころか辞任につながることを肝に銘ずるべきだ。また安倍の周辺も年末に総裁選が前倒しされたというくらいの意識で、陰に陽に結束して事に当たるべきだろう。油断をすると安倍が高転びに転ぶことになりかねないぞ。


お待たせしたノウ

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お待たせしました。千秋の思いでお待ちの政治評論を
明日朝から再開いたします。期待してください。
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◎俳談

◎俳談
【文字を詠む】
「を」はをんな座れる姿蚊遣香 読売俳談入選
 漢字やカタカナの「姿」をそのまま俳句に詠むことも出来る。俳句は何でもありの世界なのだ。江戸時代の女流俳人・田捨女が詠んだ句に
雪の朝二の字二の字の下駄のあと
がある。昔の雪の日の情景がすぐに浮かんできて懐かしい。今でも7月22日の「下駄の日」によく紹介される。この俳句に接すると実に爽やかな気分になる。雪の朝の情景がすぐに目に浮かんでくるのだ。下駄の呼び名の成立は戦国時代と推測され、下は地面を意味し、駄は履物を意味する。それ以前は「アシダ」と呼称された。韓国には「日本人には靴を教えてやらなかったから下駄を履いている」という話があるが、しつこい歴史認識と同じで、東京都規模の小国の言うことにいちいち目くじらを立てても仕方がない。無視が一番。
 新聞読者の爆笑を誘ったのが拙句の
湯湯婆(ゆたんぽ)と書けば笑へるなあ婆さん 読売俳壇一席
漢字もひらがなも観察すれば俳句になる。

◎石破が下野、“ポスト安倍”で地方行脚へ

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◎石破が下野、“ポスト安倍”で地方行脚へ
 「二階幹事長」は“長期政権”への布石
 虎を野に放ったのか、単なる野良猫になったのかは微妙だが、安倍改造人事の最大の“目玉”は「石破下野」 だ。石破茂は「私のような者でも政権を担う事が望ましいということならそれを目指したい」と、事実上の総裁選への立候補を表明した。今まで首相・安倍晋三を翼賛する政治家ばかりだった自民党内に、まぎれもなく反主流の動きが生じたことになる。反主流の存在は、通常の政権では当然しごくのことであり、ない方がおかしかったのだが、かえって緊張感が生まれて、政権が活性化する。今後石破は18年9月の総裁選挙に向けて党内で多数派工作に専念することになるが、その突破口は地方票の獲得である。
 安倍は一強体制維持を目指して、石破を農水相で優遇しようとしたが、石破派内の情勢がこれを許さなかったようだ。その証拠に1日夜の石破派の会合は、石破下野にやんやの喝采で盛り上がったようだ。石破の今後の戦略を分析すれば、「政権は戦い取るもの」という基本に戻ることだろう。ライバルの外相・岸田文男が安倍に忠誠をつくしての「禅譲」狙いであるのとは好対照だ。安倍はもともと人事でも石破を伴食大臣に置いて、岸田を重用しており、岸田としては悪くはない待遇だ。しかし巷間ささやかれていたように岸田を幹事長にしなかったのは、事実上「後継」として定着してしまうのを避けたのだ。禅譲と言っても首相任期が延期になれば5年後であり、岸田にはそれまで待てるかという問題もやがては生ずる。いくら強い政権でも長期政権の末期はぼろぼろになるものであり、かつて佐藤栄作が福田赳夫に禅譲しようとして、田中角栄の反乱にあって、出来なかったことが好例だ。
 読売によると石破は「これからは地方を回る。回った数だけ票になる」と漏らしているという。これは総裁選に当たって田中角栄が本筋の衆院の票より、参院と地方票を極めて重視した戦略と同じであり、田中は自らの総裁選のみならず、キングメーカーとしての地位を維持した。石破はこれを“学習”したのであり、既に実践している。11年に政調会長を外され、下野したとき、専ら地方を回って地方票を発掘した。これが12年の総裁選挙の結果となって如実に表れ、安倍の心胆を寒からしめた。
 同総裁選は石破が地方票165、国会議員票34で1位となったのだ。安倍は地方票87、国会議員票54で2位となり、両者とも過半数に達さなかったため国会議員による再投票で安倍が108票、石破が89票で、辛くも安倍が勝った。この経験値で石破は2年後に向けて、まず地方票から積み上げる戦術を取ろうとしているのだ。深謀遠慮というのだろうか、石破は幹事長時代に総裁公選規定を地方票重視の制度に変更している。内容は決選投票に地方票を加算し、地方票を国会議員票と同数にするというもので、これが実施されれば石破が有利になる可能性がある。
 しかし安倍の4回にわたる国政選挙の圧勝で、国会議員の数が増加しており、安倍に当選させてもらった議員も多い。よほどの失政でも起きない限り、2年後の総裁選挙では安倍が勝つだろう。だから石破は「5年間は準備にかかる」と側近に漏らしており、長期選の構えではある。「禅譲の岸田」か、「戦い取る石破」かはまだまだ予断を許さないところであろう。
 もう一つの目玉が二階俊博を幹事長に据えた人事だ。二階の場合は岸田と違って77歳という年齢が安倍に安心感を与えた。幹事長に据えてもまず総裁を狙う危険がないからだ。二階も猟官運動が巧みだ。安倍の長期政権は揺るがないと見て、常に安倍側に立った発言を繰り返してきた。一見こわもてだから、発言に重みがある。田中派1年生の頃から知っているが、当時は極めて誠実な議員という印象を持った。これにこわもての年輪が加わって、実力者へと成長した。昨年の総裁選前には安倍再選を唱え、消費増税先送りでは安倍の意向を汲んで先送りの提言をした。先月19日には、安倍の任期延長発言の先頭を切った。いずれも早い者勝ちの発言であり、2番目に言っても効果がない。
 まさに機を見るに敏であり、安倍をくすぐり続けたのだ。まさか谷垣禎一が事故でずっこけるとまでは予想していまいが、そろそろお鉢が回ってきてもおかしくないと、思っていたに違いない。党は副総裁・高村正彦と総務会長・細田博之、政調会長・茂木敏充という布陣となったが、長期政権を視野に入れた安定・重厚型の布陣である。二階は旧田中派伝統の親中派議員であり、中国との関係修復に貢献しそうだ。さっそく二階は安倍の総裁としての任期を2期6年から3期9年へとする動きを始めるだろう。来年1月の党大会で決定する流れだろう。
 一方サプライズ人事は稲田朋美の防衛相だが、名にし負うタカ派議員の起用となった。これは二階の起用とは逆の「対中けん制」の意味合いがある。稲田は憲法改正論者であり、それも9条改正論だ。「9条をこのまま変えないでいる事の方が、憲法を空洞化させる」と発言しており、国会で野党の集中攻撃の的となる可能性がある。防衛には素人だが、NHK討論を聞いても、答弁のコツは心得ており、問題は生じまい。むしろ将来の女性首相候補の第一歩となる人事であろう


◎俳談

◎俳談
【歴史を詠む】
蝸牛(かたつむり)駆け込み寺を守るなり 毎日俳談2席
 鎌倉東慶寺の山門に蝸牛がいた。東慶寺はかつては女人救済の縁切り寺であった。江戸時代、離婚請求権は夫の側にしか認められていなかったが、夫と縁を切りたい女性は、当寺で3年の間修行をすれば離婚が認められたという。「縁切寺法」という制度があったのだ。江戸からひっきりなしに女性が東慶寺を目指したという。
 その歴史を知ってか知らずか、蝸牛は寺を守るようにじっとしていた。今の駆け込み寺は明るい。アベックで一杯だ。
  山笑ふ縁切り寺で手をつなぎ 杉の子

◎小池Vs内田のデスマッチは白熱化

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◎小池Vs内田のデスマッチは白熱化
  安倍とは近く“手打ち”の方向              
 中央紙は都知事選の本質の報道を怠っているが、戦いは都議会の“黒い疑惑”を伴ってこれからも続く。ネットとテレビを味方につけた新都知事・小池百合子と都議会のドン・内田茂の戦いの構図は延長戦に持ち込まれたのだ。決着までは長期戦となりそうだが、小池が最終的には勝つだろう。小池を全面的にバックアップするのは徳洲会事件で失脚した元知事・猪瀬直樹。これは猪瀬が都知事時代から続く内田との怨念の戦いが再開することでもある。焦点はオリンピック受注工事をめぐる「疑惑」の存否だ。事が猪瀬の思惑通りに運べば都議会自民党は、「オリンピック疑獄」に巻き込まれる可能性すら内包している。小池は都議会自民党幹部に抜き身の匕首(あいくち)を突き付けながら、議会運営が出来る構図でもある。
 まず日程に上るのは官邸と小池の“手打ち”だ。首相・安倍晋三は早期に増田寛也に見切りをつけて、小池への刺激を避け、これを小池も受け止めて正面切った自民党批判の言動を避けてきた。この構図が意味するものは、下村博文ら一部議員が主張している小池への処分はまずあり得ないということだ。処分は小池に投票した都民を敵に回すことにもなり、丸損だ。安倍は夾雑物が混入する前に一刻でも早く一切を水に流して、小池と会談して、最大の国事であるオリンピックの成功に向けての態勢を確立すべきだ。次期幹事長に決まった二階俊博は、小池とは自民党が野党に転落して以来たびたび行動を共にしてきた仲であり、手打ちにはもってこいの役割を演じるだろう。
 こうした“手打ち”の動きとは別に、小池が「ブラック・ボックス」と指摘する都議会の疑惑は、ネット先行型で展開している。猪瀬はツイッターでの指摘に加えて、ついにテレビに出演して内田の名前を公然と出して本格的な追及を開始した。1日の日テレではバレーボール会場となる「有明アリーナ」をめぐる疑惑について「内田氏は受注した東光電気工事の監査役をやっており、地方自治法92条に違反する可能性がある」と発言した。92条2項の兼職禁止に抵触するというのだ。さらに猪瀬は「今後は都議会の闇をどう暴くかだ。闇だから権力があるのであり、光を当てると闇は消える。これはじっくりと始まる戦争だと思っている。小池さんいは協力する」とまさに“宣戦布告”をした。猪瀬は今後小池別動隊として、都連幹事長である内田の追い落としに専念することになるだろう。焦点となるのはやはり有明アリーナの競争入札だろう。東光電気工事の入札は業界紙が「逆転落札」と報じたほどの逆転劇だった。その逆転劇に政治が関与した可能性があると猪瀬は見ているのだ。
 小泉純一郎が「最近は女も度胸がある」と発言したが、これももちろん都議会のドンに挑戦する小池の姿を意識したものである。小池の選挙戦術も一貫してブラックボックス摘発に焦点を置いた。小池は「都連・都議会の『ドン』が都政を不透明なものにしている」と内田への攻撃を展開した。中でも圧巻であったのは、内田にいじめられ自殺したとされる元都議・樺山卓司の妻にまで応援を求め「内田さんのひどい態度が、夫を死に追いやった」と訴えさせた。また樺山が「内田は許さない。人間性のかけらもない。来世で必ず報復します」と書いた遺書を残したことまで明らかにした。
 こうした抜き差しならぬ対決の構図を残して、小池が都庁という「伏魔殿」に乗り込むことになるが、猪瀬の陽動作戦と、小池の都議会対策は一対のものとなる。猪瀬は今後せきを切ったかのようにテレビに登場して次々に内田と都議会自民党が抱える黒い霧を暴き始めるだろう。一方小池は都議会定数127人中、自民党56議席、公明党23議席という圧倒的な与党対策をまず強いられる。手始めに副議長を選任しても、与党の支持がなければ承認されない。かつて自民党会派などと対立していた青島幸男が都提出の条例案をことごとく否決された
ことがあるように、対決だけでは知事職を果たせないジレンマを抱えることになる。是是非非の対応が必要となろう。
 小池としてはまず安倍、二階ら党本部と和解し、その影響力を都議会に及ぼすと共に、都議会にある反内田勢力と結んで内田包囲網を作るしかあるまい。一方で「利権追求チーム」を設置して、内部告発も受け入れる。元東京地検特捜部副部長で衆院議員の若狭勝の支援も受ける。この“戦争”は長引くが、世論の支持を取り付ければ弾みが付く可能性もある。一番簡単なのは党本部が都連会長の石原伸晃と内田ら都連幹部の早期引責辞任を実現することかも知れない。 


間違っていなかったロッキード事件の疑念! Name:浅野勝人

4952] 間違っていなかったロッキード事件の疑念! Name:浅野勝人 NEW! Date:2016/08/01(月) 01:13 
 
間違っていなかったロッキード事件の疑念!
角栄はやはりスケープゴートだった!

安保政策研究会理事長 浅野勝人

先月(7月)24、25の連夜、オン エアされたNHKスペシャル「未解決事件!ロッキード事件の真実。40年目の衝撃スクープ」は、私が抱き続けてきた長い間の疑念に明確な回答を示しました。

NHK政治部の若い記者だった私は、1972年夏、人生ではじめて外国に出張する機会に恵まれました。ハワイで行われる田中首相とニクソン大統領の日米首脳会談(8/31~9/1)を取材するためです。

田中角栄が日中国交正常化を公約に、熾烈な角福戦争に勝ち抜いて組閣して間もなくでした。この内閣には、内政は田中、外交は大平という暗黙の役割分担がありました。大平番だった私に、田中首相に同行する大平正芳外相をフォローする役目が回ってきました。
その頃、視聴率の高かった朝のニュース番組「スタジオ102」の政局解説で、キャスターの質問に答えて、田中のことを「コンピューター付きブルダーザー」と言ったところ、あっという間に日本中に広がり、しゃべった本人がびっくりしました。あの頃、流行語大賞があったら、私の造語は当確だったと思います。

1972年は、世界を仰天させたニクソンの電撃訪中(2/21)にはじまり、最長不倒距離を誇った佐藤内閣の退陣、田中内閣発足(7/7)、日中国交正常化を達成した田中・周恩来首脳会談に伴う共同声明と矢継ぎ早に日本の針路を転換させた激動の年でした。思えば「あさま山荘事件」(2月19日)が発覚して日本赤軍が壊滅して、過激な学生運動が消滅した時期でもありました。

当時の日米間の主要テーマは、貿易不均衡の是正でした。しかし、この経済マターは表の看板で、大平正芳のホントの関心ごとは、日中首脳会談をまじかに控え、中国を仮想敵国として敵視してきた日米安保条約の扱いにあることを私は承知していました。日本の生存にかかわる最重要の日米安保条約が、中国との交渉で抜き差しならない支障になりはしないかという懸念です。

ホノルルの田中・ニクソン共同声明で、日米安保条約の重要性がことさら強調されれば、日米安保体制は深刻な中ソ対立を背後に抱える中国を、むしろ支援する味方だというサインと受け取れます。この声明に周恩来が異議を唱えなければ、日中間に横たわる最大の障碍は解消されて、日中正常化交渉はまとまると卦に出ます。
コレ、政治記者のカン!
結果は、その通りであったことを歴史が証明しています。

まさか、ホノルルの日米首脳会談に、もうひとつ奥があったとは思いもしませんでした。のちに知ることになった「よっしゃ! よっしゃ!首脳会談」の存在です。

アメリカの「チャーチ委員会」(上院外交委員会多国籍企業小委員会)で発覚したロッキード事件は、田中角栄前総理が5億円の賄賂を受け取った疑いで受託収賄と外為違反で逮捕された戦後最大の疑獄事件となりました。

公務員の受託収賄罪は、①請諾があった(頼まれた) ②金銭の授受があった ③職務権限がある(政策決定に影響力がある) 
以上の3要素の立証が必要です。

ロキード事件は、田中前首相が大手商社・丸紅から請諾を受けて、ロッキード社の航空機「トライスター」を全日空に買わせ、その報酬として5億円受け取った受託収賄罪が問われました。
東京地検特捜部は、民間航空機・トライスターの導入に関する請諾、金銭の授受、職務権限を立証して田中前首相を起訴しました。起訴事実は、十分に納得できる内容でした。

当時、私は、あの日米首脳会談で、もし、ニクソン大統領が田中首相に貿易不均衡是正の立場から「航空機を買うように依頼された」としたら、民間航空機だけの請諾だったという想定には無理がある。事実は深い闇の中に消えて久しく、もはや真実を知る由はありませんが、「日米安保体制を強化する観点から、軍用機の導入」を強く要請されたと推定する方が自然だと私は思い続けてきました。
具体的には、ロキード社の対潜水艦哨戒機「P3C」(通称オライオン)の導入です。「児玉ルート」に渡ったとみられる21億円の行方といってもいいかもしれません。アメリカ側の主な狙いは軍用機で、民間航空機は付け足しだったのではないかというのが私の疑念でした。

NHKスペシャルのドラマ化された場面で、事件の指揮を執った特捜部吉永祐介主任検事(のちの検事総長)が、P3Cの疑惑に執拗にこだわり、児玉誉士夫の臨床尋問を繰り返す執念を視て、ドラマとはいえ、納得のいく姿に視えました。

40年目の衝撃スクープによると、
☆ ロッキード社との交渉の窓口となった丸紅・常務直属の部下で、すべてを知る航空機課長が、「トライスター採用は事実上決まっていた。田中・桧山会談(丸紅・桧山会長が田中総理を私邸に訪ねて、トライスターの採用を請諾したとみなされた会談)は、P3C導入のお願いだった」とTVカメラに向かって40年ぶりに証言した。
☆ 三木首相の強い要請によって、アメリカ側から提供された資料に、民間機のトライスター導入に関わる相関図がTANAKAを焦点に明確に示されているのに、膨大な資料の中に軍用機のP3C、E2C偵察機(早期警戒機)は一文字もない。

ドラマの中で、吉永主任検事が、トライスターは明白なのに、P3Cにまったく触れていないアメリカの資料を前に「(アメリカから我々が前首相を逮捕できるかどうか)試されているのか、それとも(民間機に)誘導されているのか」とうめくように言ったセリフに全てが語られているように私には映りました。

もっとも、シロウト集団の「丸紅ルート」からはボロボロ漏れましたが、筋金入りの「児玉ルート」からはまるで情報が得られませんでした。当時、検察の事情聴取に備えて、重要書類を焼き捨てるように指示された児玉側近だった人が、「全てドラム缶に入れて燃やした。英語の領収書のようなものもあった」と述べているのは「ピーナッツ」「ピーシーズ」といった類の領収書がバラバラ出てきた丸紅とは年季が違いました。

幸か不幸か、民間航空機にまつわる前総理大臣の疑獄事件摘発に世論は満足しました。その陰で、軍用機疑惑に発展するのを巧みに避けて、戦後歴代政権の安保政策、さらには日米安保体制の在り方が俎上にのぼるのを食い止めた日米エスタブリッシュメントの高度の政治判断と見えざる闇の力だったと思えてなりません。40年間にわたる疑念に対するいささかの裏付けに、私なりに納得して、「我が心のロッキード事件」の終幕とします。(元内閣官房副長官)

<余計なお節介>
事前に何度も指摘した通り、小池百合子に勝てるのは「桜井パパ」しかいなかった。これはわかりきった選挙のイロハ。桜井パパを口説けなかった時点で勝負あり。それを理解できなかった自民党都連会長の辞任は当然。閣僚に留まるのですかねえ。

◎俳談

◎俳談
≪名句の余薫≫
下校の子八重撫子に触れてゆく 毎日俳壇入選
 誰にも忘れられない名句がある。私の場合は奥の細道の句だ。と言っても芭蕉の句ではない、弟子の曾良の句だ。那須野が原に足を踏み入れた芭蕉一行を、小さい子供が二人、後を追ってどこまでもついてくる。そのうちの一人は小さい娘で、名を尋ねると「かさね」という。「聞なれぬ名のやさしかりければ」と、曾良が作った句が
かさねとは八重撫子の名成(なる)べし
 本当は芭蕉の作という説もあるが、どちらでもよい。小さな女の子が見知らぬ旅人をどこまでも追いかけるという、日本人の優しさの原点と平和がそこにある。頭をいっぱい撫でてやったに違いない。その撫子を通学路で見つけて作ったのが掲句だ。

◎安倍「変化球」、岡田「敵前逃亡」の裏を読む

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◎安倍「変化球」、岡田「敵前逃亡」の裏を読む
「厚化粧」に「袖カバー」が完敗
  都知事選挙を国政面から分析すると、解せぬ「不可思議現象」が二つ生じている。一つは首相・安倍晋三が終始増田寛也の応援で街頭に立たなかったこと。他の一つは民進党代表・岡田克也が突如投票日前日になって代表選不出馬を宣言したことである。安倍は首相就任以来常に攻めに徹してきたが、都知事選はパスした。いわば不作為の作為であり、初めての“逃げ”の姿勢をみせたのだ。これは一体なぜなのか。一方、「敵前逃亡」といわれた岡田の“逃げ”の原因はどこにあるのか。
 まず、安倍の場合の最大の理由は、増田の第一声を聞いて「党内が愕然とした」(自民党選対幹部)ことにある。なぜ愕然としたかと言えば、擁立した増田に全く「華」がなかったのだ。増田は虚勢と自己顕示の有象無象の世界であるテレビ・コメンテーターの中では、ただ1人まともなことをしゃべる知性派であった。しかし、第一声で街頭に立った姿は、まるで黒い「袖カバー」(腕抜き)をつけて村役場の受付に立つ係長の如きであった。都知事選はミニ大統領選の様相があり、ある程度の「色気」がなければ票を集めることは出来ない。
 とつとつと政策を述べる姿は真面目で、好感は持てても「女賭博師」のような小池百合子にかかっては、とても太刀打ちできない。たとえば小池から「岩手県知事を3期務めて借金を倍にした」と痛いところを突かれても、言い訳に終始して切り返しが出来なかった。この「増田に愕然」の現実を如実に反映して、自民党が選挙前に行った世論調査で小池がややリードするものの拮抗(きっこう)していた支持率が、日を重ねるにつれて拡大してしまったのだ。フタを開けたら、演説する度に票を減らすタイプであったのだ。
 これを見た安倍は、街頭演説をしても「無駄」と判断したに違いない。猪瀬直樹や舛添要一の都知事選挙の場合は、勝つことが間違いないから街頭演説に立ったが、負けることが分かっている候補を応援しても、プラスはないと判断したのだ。それに長期展望をすればオリンピックに向けて、都庁との関係を悪化させるのは得策ではない。もともと安倍は当初から小池でいいと考えていたフシがあり、増田一辺倒の都議会とは一線を画していたのだ。安倍は周辺に「小池でもいいじゃないか」と最近漏らしている。こうして首相になって以来攻めを続けて来た安倍が初めて「変化球」を投げるに到ったのだ。
 一方岡田の「敵前逃亡」の場合は、やはり事前の世論調査の結果が大きく作用している。もともと鳥越俊太郎は民進党東京都総支部連合会会長・松原仁が隠し球として持っていたもので、岡田は相談にあずかっていなかった。その上鳥越の演説を街宣車上で聞けば、原発にしても何にしても共産党の政策一色。おまけに島嶼(しょ)部の消費税を「5%に下げる」などという、支離滅裂な政策まで独断で打ち出し、岡田にとっては苦々しいこと限りがない。
 世論調査ではさすがにガバナビリティに欠ける都民もあきれたのか、3候補のビリを走っていることが判明したのだ。もともと9月の代表選挙に出馬しない意向を固めつつあった岡田にしてみれば、鳥越如きが敗れたから責任を取って代表を辞めると受け取られては不本意極まりない。だから投票日前日になって急きょ、代表選不出馬を表明したのだが、この場合はトップに立つものとして無責任のそしりを免れないだろう。自己都合も甚だしい公私混同だからだ。松原が「なぜ四党の束ね役の岡田さんが直前に出処進退に言及したのか理解に苦しむ」と怒りをあらわにしたが、無理もない。しかし松原も鳥越を担いだ責任があることは否定出来まい。岡田は自らが推進してきた民共共闘の限界を知ることになった。
 かにかくして、自民、民進両党のトップの微妙な心境が、はからずも露呈されたことになるが、それにつけても小池のしたたかさはただ者ではない。石原慎太郎から「大年増の厚化粧の女に都政を任せるわけにはいかない」とこき下ろされても、「今日は薄化粧で来ました」と壇上に立って池シャーシャーと発言、笑いを誘った。明らかに小池はその狙いの焦点を「既成政党の不信の構図との対決」に絞った。「政党の推薦なし」を逆手に取った戦いが成功したのだ。師匠の小泉純一郎が「自民党をぶっ壊す」と対決の構図を鮮明にさせて成功したのと全く同じ図式である。
 この既成政党への批判の姿勢は、小池がNHKの出口調査で自民党支持層の50%、民進党の40%、公明党の20%、無党派層の50%を獲得するという党派を超えての得票となって現れたのだ。自民党も安倍が動かなければ、票は拡散するしかない。とりわけ都議会自民党は昔から伏魔殿と言われ、汚職のうわさが絶えず飛び交う傾向にある。五輪をめぐる黒いうわさも絶えない。「冒頭で都議会を解散する」という小池の無知に根ざした発言も、自らが“邪悪”と戦う姿勢を鮮明にさせるものであったのだろう。しかし小池には既に政治資金をめぐる疑惑が出ているように、場合によってはその姿勢がブーメランのように帰ってくる可能性を否定することは出来まい。ポピュリズム選挙に成功したからといって、都政までポピュリズムに徹すれば手痛いしっぺ返しを受けるだろう。