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◎俳談

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◎俳談
【ipad】
 デスクトップのパソコン3台と中型の9.7インチモデルのipadが吾が情報収集・伝達の城である書斎の構成だが、ipadは初期のバージョンであるため使いにくくなった。
 そこで思い切って大型12.9インチモデルを導入したがこれが大当たり。実に使いやすいし、閉鎖恐怖症になりそうなiphoneや重いばかりの初期モデルより格段の使い道がある。とりわけ大型は、appleペンとの相性が抜群で、ニュース番組の速記のスピードがあの滑らかなゼブラのサラサより1.5倍に早まった。ipadに書いたメモをEvernoteでデスクトップに移行することも簡単だ。
 多才で、ポータブル。これまでに見たこともないスーパーコンピュータが登場していた。電車の中でもipad。メシ食いながらipad、テレビを見ながらipadの毎日だ。HULUの映画もipadだ。今度はカワセミ撮影にも連れてってやろうと思う。撮れたてのカワセミをカメラからipadに移し、その場でネットに公開出来る。最近の翡翠はペアリングに一生懸命だ。
翡翠の何はさておき交(つる)みけり     月刊俳句榎本好宏選


◎内閣不信任案の牽強付会は著しい

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◎内閣不信任案の牽強付会は著しい
  出す前から空前の支持率が“否決”している
 仲がいいのに首相・安倍晋三に真っ向から解散を求めるのは、財務相・麻生太郎の“大芝居”と思っていたが、やはりそうであった。本当に解散を求めたのではなく財務官僚に向けて怒って見せたのだ。いくら財務官僚が政治に疎いからと言って、たった3日で消費増税再延期にゴーのサインを出すとは思わなかっただろう。まったく芝居がうまいが、すぐにばれる政権だ。それにつけても、財務省には悪いが、消費増税路線は極めて厳しい状況となった。2年半後に実現するかと言えば、安倍がやっていれば実現を迫られるが、18年9月の任期でやめてしまえば、次の首相が就任早々でやれるわけがない。実体は事実上凍結なのだ。
 その芝居がうまい政権に野党が不信任決議案を上程する。不信任案となれば否決でも可決でも解散に直結し得るが、民進党代表・岡田克也はおそるおそる「解散せよ」と言いながら、どうか解散でダブル選挙になりませんようにと必死に祈っていたのが本音だろう。それにつけても今回の野党の不信任案ほど牽強付会なものを知らない。アベノミクスの失敗、国民の声に耳を傾けない強権的な政治、憲法改悪の3点が提出の理由であるということだが、果たして核心のアベノミクスは本当に失敗したのだろうか。野党は朝日新聞に踊らされているだけではないのか。
 アベノミクスと言えば、政権の根幹をなす最重要政策であり、この失敗は政権の全否定につながる。となれば、まず内閣支持率が竹下内閣のように3%まで落ち込まなければならない。しかし日経による直近の支持率は上昇して56%だ。史上最高の支持率を確保している首相が国民によって全否定されているのだろうか。されているわけがない。なぜなら多くの国民は、「財源などは何処でもある」と国民を欺いた民主党政権の3年3か月こそが、欺瞞(まん)であると思っているのだ。有効求人倍率、失業率、企業の利益がそれぞれかってない好調な状況にあるのは、紛れもなくアベノミクスのもたらした効果でなくて何であろうか。
 朝日と野党は国内総生産(GDP)の低さを指摘するが、国民はGDPなどどうでもいいのだ。はっきり言って求人が潤沢で嬉しい悲鳴なのだ。求人がなかった民主党政権より、働く場が文句さえ言わなければ潤沢な安倍政権の方がいいのだ。GDPが低いからアベノミクスは破たんしたという岡田の主張は、まさに木を見て森を見ないかつての社会主義政党丸出しだ。大企業は史上最高の利益を上げている。その利益が中小企業にもおよび始めているのが最近の傾向だ。トリクルダウンがないと言ってケチをつけてきた野党の主張はここでも破たんする。大企業と中小企業が好調ならば、やがて消費意欲にも波及してGDPが上昇に転ずることは目に見えている。
 さらに野党は朝日の社説「首相と消費税、世界経済は危機前夜か」に踊らされている。安倍のサミット議長としての運営に独善的なクレームをつけたものだ。社説は「世界の需要が一気に消失したリーマン時と、米シェール革命など原油の劇的な供給増加が背景にある最近の動きは、構造が決定的に違う」と主張している。さすがに朝日の影響力は大きく、テレビに出る経済評論家も恥ずかしげもなく、これをおうむ返しに請け売りしている。
 しかし、安倍は構造的に同じだなどとは言っていない。現に危機がそこにあると言っているだけだ。政府の会合でノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・ スティグリッツ・米コロンビア大教授が世界経済の状況を「大低迷」と形容したとおり、G7の多くの国々では恒常的に多くの失業が発生しており、日本ほどの人手不足は考えられない状況にある。朝日は全く触れていないが中国発の不況をどうとらえているのだろうか。この世界的な経済の不振は中国のバブル崩壊に端を発して、なをも影響が続いている事に言及していない。石油安に直面した産油国の不振にも言及していない。社説はご都合主義の批判のための批判を展開しているのだ。
 こうした危機感があったからこそG7の宣言は「世界経済に対する下方リスクがある。我々は重大な危機に陥ることを回避するために適時にすべての政策を行うことにより対応する」と述べているのである。メルケルが「危機ではない」と述べているのは、あくまで現状が危機ではないと言っているのであって、将来については言及していない。むしろ危機感を共有しているからこそ“リスク宣言”がまとまったのだ。だいいちメルケルは会議終了後に「サミットは成功であった」と述べているではないか。将来の危機感を共有しなかったら成功とは言わない。
 サミットは矜恃を持った世界のトップリーダーの集まりであり、日本の都合で、増税回避のための誘導など出来るわけがないのである。これを主張する岡田は副総理までやったのにサミットの在りようを理解していない。中国の危機がいつ世界経済に悪影響を及ぼすかは、全く予断を許さないのであって、政治家として先を見据えた警鐘を鳴らすことは、まさに「先見の明」なのである。これを批判するのは「不明の到り」でなくて何であろうか。朝日も野党も議長を務めた安倍の働きぶりについて日経の調査は62%が「評価する」と答えているのをどう見るのか。評価する国民を衆愚とみなすのか。その独りよがりが発行部数を減少させ、野党の支持率はあってなきが如き状況にいたらしめるのだ。
 要するにアベノミクスの失敗を指摘する野党の内閣不信任案はあまりにもこじつけが目立つと言わざるを得ない。参院選でも野党は不信任案の主張を繰り返すと見られるが国民の共感は得られない。こうして消費増税は延期の方向が確定したが、2年半と言えば安倍の任期を越えている。しかし、安倍が次の衆院選挙で勝った場合には、当然任期の延長問題が浮上する。したがって消費増税は安倍政権なら可能だが、政権が代わった場合は全く分からない。2度あることは3度在ると思っていた方がいい。その代わり、税収増が絶好調であり、消費増税でこの流れを塞ぐことこそ、今の経済状況にマッチしないのだ。


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 皆様、いつもご愛読有難うございます。ご健勝のこととおよろこび申し上げます。さて私ども、このほど「新聞俳句入選のコツ」を所属の安保政策研究会より出版いたしました。日々の「俳壇」をまとめたものでございます。所属する安保研の5周年記念として上梓しました。元官房副長官・浅野勝人氏から「新しい随筆の分野」とご高評をいただいております。ご一読をお願い申し上げます。既にアマゾンでは品薄のために倍以上の値段がついております。やがて豊富に出回りますので、本屋に注文しておくのも良いかと思います。
                     杉浦正章拝
 ◎杉浦正章理事の 「新聞俳句入選のコツ」 を推薦します。
 まさに現代版「徒然草」の面白さ!
 安保研理事長 元内閣官房副長官   浅野勝人
   安保研理事・杉浦正章元時事通信編集局長による「新聞俳俳句選のコツ」は、新聞俳句入門書であると同時に現代版「徒然草」とも言うべき高度の随想録としての特色を持っています
 通常年寄の作った句集は正直言って「犬も食わない」で、そっぽを向かれる類いが多いのですが、杉の子の俳号を持つ杉浦理事は句歴30年、新聞投句は20年、入選句は何と1000句余り。
 その俳句を挿入しつつ、「心にうつりゆくよしなし事を」生き生きした文体で書き留めた随筆は、実に説得力があり、人の琴線に触れる文章力があります。「ついつい徹夜で読んでしまった」という友人がいるほど面白いのです。
 例に引く芭蕉や蕪村らの俳句も、随想に見事にマッチし、新しい随筆の分野を創出しております。新聞俳句を志す人は、楽しく読んでいるだけで、投句力が身につくこと請け合いです
 既に杉浦理事は日々の政治評論で見事な洞察力を見せており、知る人ぞ知る政治評論家です。是非ご購読をお勧めいたします。 2016年5月22日 19:00  浅野 勝人
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◎俳談

◎俳談
【幻想の句】
 年取ると何かと幻想しがちになるが、これを俳句にしたら面白い。しかし現実とのバランスがとれずにまず失敗する。
 金子兜太らとともに「前衛俳句」の旗手であった高柳重信の句に
淋しい幽霊いくつも壁を抜けるなり 
がある。日本の幽霊はどれを見ても淋しそうだが、その淋しい幽霊が壁を抜けると俳句で断定したところに面白さがある。マンガや映画ではよくある場面だが、それを俳句に移せばこうなるという句だ。
金子兜太の有名な句に
梅咲いて庭中に青鮫が来ている
がある。これは兜太自身が対談で説明している。
「梅の咲く頃から既にずっと庭全体が、朝なんか特に青さめているんです。海の底みたいな感じ。青っぽい空気ですね。こう春の気が立ち込めているというか。要するに、春のいのちが訪れたというか、そんな感じになるんですね。それで朝起きてヒョイと見てね、青鮫が泳いでいる、というような感覚を持ったんですよ。それですぐできた句なんですけどね。」のだという。さらに兜太は続けて「私の場合だと、見たままを、そのまま丁寧に書くということよりも、それを見ることによって感じたもの、その感じたものからいろんなことを想像して書く、というふうなことがほとんどなんですね」と述べる。飛躍の才能がないとなかなか兜太のようにはいかない。
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉
 三橋鷹女のこの句も、想像力をかき立てる。
 筆者の場合はひとつだけある。
山姥の出刃となりたる二日月 東京俳壇入選
まさに山姥の幻想の世界を詠んだ。

◎安倍が消費増税再延期を決断

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◎安倍が消費増税再延期を決断
  近く表明、延期幅が焦点
 伊勢志摩サミットをテコに消費増税の再延期または凍結を首相・安倍晋三が決断する方向が確定的となった。安倍はこれまで延期に否定的な方針を何度も言及してきたが、サミットは大勢として持続的経済成長のための機動的財政出動や構造改革を断行、新興国に代わって世界経済の牽引役としてその責務を果たす方向へと大きくかじを切った。これは、議長国日本としても率先して増税延期で同調せざるを得ない流れとなった。サミットの宣言に添う形で安倍は再延期の方針を来月1日の通常国会閉幕までに言明することになる。
 延期の幅を来年4月から2年間程度にするか、それともいっそ凍結して、将来の政権に対応を委ねるかは難しい判断を要することになる。2年間ならオリンピック景気が高まる時期であり増税の環境はあるが、オリンピック後は不況が訪れるのが常であり、不況を増幅しかねない。加えて3年後には参院選もあり安易に現段階で時期を決めることは難しい。安倍はこれまで「リーマンショックや大震災級の事態が生じない限り、消費税は予定通り引き上げる」と言明してきた。しかし「最終的にはサミットを踏まえて適切に判断する」とニュアンスを残していた。ところが26日のサミットで安倍はそのリーマンショックを例にあげて、「2008年の北海道洞爺湖サミットでは2か月後のリーマンショックを予知できなかった」と指摘し、現在世界経済が置かれている下方リスクの存在を強調した。安倍はグラフを使って商品価格の下落が55%でリーマンショック当時と相似形を形成していることを訴えて、大きなリスクに直面している世界経済を回復軌道に乗せる必用を説いた。そしてそのリスクに立ち向かうために「伊勢志摩経済イニシアチブ」として機動的財政出動を前面に据えると同時に構造改革と金融政策の「3本の矢」で対応する方針を打ち出した。  これに対してドイツのメルケルが「世界経済の現状を危機(crisis)とまで言うのは強すぎる」と主張した。しかし安倍は「現状」を「危機」と形容しているのではなく、場合によっては「危機に直面する」と形容して警鐘を鳴らしているのであり、メルケルの主張は見当が外れていた。ただこのリーマンショック論議は、明らかに安倍が消費増税再延期へと自らの発言を大転換することを意味しており、筆者がサミットをテコに延期に転ずると何度も予言した方向が的中したことになる。この増税延期の根拠については国内で反論が相次いだ。民進党代表・岡田克也は「一体何をもってリーマン・ショック前と似た状況なのか、まったく理解に苦しむ。自分の都合のいいように、消費増税の先送りの言い訳に使えるようにG7の場を利用していると言われても仕方がない」と酷評した。朝日の編集委員・原真人も報道ステーションで「リーマンショックの時は世界中から需要が蒸発して55%下がったが、今度の下落は石油価格がシェールガスなど供給要因で下がったのであり、ショックの意味が違う」と反論した。
 しかし、こうした反論には中国の大不況や、産油国の原油安に伴う危機的経済状況への視点が欠け、批判のための批判の色彩が強い。安倍が述べているようにサミットは最終的には「世界経済は大きなリスクに直面しているという認識では一致した」のである。短期的には小康状態にあっても新興国の凋落は、リスクマネジメントが不可欠であることを物語っている。リーマンショック後はG7だけでは対処出来ない状況に陥り、世界経済の牽引役は中国など新興国に重心が移行した。しかし、今その新興国が不況の底に遭遇して、牽引役を果たせなくなったのだ。G7はこの構造的な状況変化とこれがもたらす危機を認識して、未来を見据えた対応を打ち出すべき時であったのだ。
 「公共事業など一時的な景気刺激策を講じても意味がない」と主張する評論家もいるが、民間の需要が自律的に高まるには一定の時間が必用であることは言うまでもない。サミットの打ち出した機動的な財政出動で、当面需要の創出に努めることは、デフレからの完全脱却を確定的なものにするためにも不可欠である。安倍の指摘するように危機を予見できなかった洞爺湖サミットの轍を踏まないためにも、サミットは転ばぬ先の杖の経済対策を打ち出すことが正しいのである。    こうして安倍が消費増税の延期か凍結に踏み切ることは確定的となった。民進党など野党は安倍の過去の発言との整合性を、参院選挙に向けて突く姿勢だが、政治は危機に対して臨機応変の対応が必用である。状況に応じた柔軟な政策の転換は、とりわけ生き物のように豹変する経済政策に関しては不可欠だ。ありもしない財源があると主張して3年半も日本経済を迷走させた民主党政権の硬直性を岡田は認識すべきである。今は政策不在の共産党との“野合”にいそしんでいるではないか。まず自分の頭のハエを追えと言いたい。 


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 2016年5月22日 19:00  浅野 勝人
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◎俳談

◎俳談
【台所俳句】
 土佐日記風に書くならば。女もすなる台所俳句というものを男もしてみんとてするなり。男の方が深みがありけるに、いと面白し。
葱刻む平穏いまだ続きをり 毎日俳壇1席
 葱を刻むという日常性の中に、人生の「伏魔」があると悟った句である。選者から深みがあると褒められた。
 褒められついでに
玉葱に涙などして暮らしゐる  産経俳壇1席
と同じテーマで頂いた。
 「台所俳句」は中村汀女様を3流俳人どもが冷やかして言った言葉であるが、汀女様ほどの俳句を作れないからやっかみ半分だろう。男というものは実に狭量なのである。例えば
秋雨の瓦斯(ガス)が飛びつく燐寸かな
などという名句中の名句を作れないから、偉そうに批判するのだ
昔の薄暗い台所でマッチを擦っている主婦の姿を見事に形容している。汀女は台所俳句の批判に「女性の仕事の中心は台所である。そこからの取材がなぜいけないのか」と反論しているが、至極もっともである。「主婦で外に出ないからテーマがない」などとは口が裂けても言ってはいけない。そこにあるテーマに気付くことが俳句の神髄なのだ。
 桂信子は新婚時代に
ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ
と詠んだ。初々しい主婦がまずエンドウ豆が成功裏に煮えたと喜んでいるのだ。
 男だって台所に立つことはある。そこに句材はいくらでも転がっている。
米研げば秋冷しかとありにけり 毎日俳壇1席
 要するに米を研ぐ水の冷たさに秋冷を感ずる感性を養えば良いのである。

◎G7宣言は機動的財政出動を強調

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◎G7宣言は機動的財政出動を強調
  中国の「挑発的行動」への反対も表明へ
 先進7か国(G7)首脳会議の首脳宣言は、その核心である世界経済への対応について、首相・安倍晋三の主張通り「機動的な財政出動」を前面に打ち出し、その重要性を確認する流れとなった。安倍はこの路線を25日のオバマとの会談で確認した。この結果サミットは総じてオバマと安倍がタッグを組んで会議をリードする流れとなった。この結果、安倍が大震災や、リーマンショック並みの事態が発生しない限り予定通り実施するとしてきた消費増税については、これを延期する流れが確定的になってきた。議長国として首脳宣言に逆行することはまず不可能であり、夏の国政選挙は消費増税延期がアベノミクスの失敗を意味するかどうかが焦点となる。一方、政府筋によると政治宣言では中国の南シナ海進出に「反対」の表明をする流れが出てきた。
 25日夜に急きょ日米首脳会談が行われた背景は、沖縄における女性の死体遺棄事件が、日米関係のみならず、サミットとこれに続くオバマの広島訪問などに、影を落としかねない側面があったからだ。安倍は「事件」と国際政治を切り離す必用があり、首脳会談は、安倍の強い抗議とオバマの哀悼の意の表明で、事実上切り離しに成功した。政治的には区切りをつけた形だ。
 政府筋によると経済宣言はまずすべての前提として、世界経済の下方リスクに対する強い危機感を前面に打ち出している。中国経済の悪化、石油価格の低迷による産油国経済への打撃などを背景に、宣言は「成長は依然として緩やかで、かつ不均衡であり、世界的な見通しに対する下振れリスクが高まってきている」と警鐘を鳴らしている。さらに宣言はこの下方リスクが「通常の経済循環を超えて危機に陥る危険がある」と分析した。これは、経済活動が拡張する好況と収縮する不況とが交互に発生する周期的変動を逸脱しかねない大不況に陥る可能性もあり得るとの認識を意味する。
 その上に立って宣言は「経済成長、雇用創出および信認を強化するため機動的に財政戦略を実施し、構造政策を果断に進めることに関し、協力して取り組みを強化することの重要性に合意する」との方針を明記した。これは日米のみならず、フランス、イタリア、カナダ、などの意向に合致したもので、財政出動を中心に、G7が協調して世界経済の成長に貢献する姿勢を打ち出したものだ。一方で財政出動に消極的なイギリス、ドイツに関しては構造改革に言及するなどバランスを取っている。宣言はアベノミクスの3本の矢の発想から、サミット版3本の矢を打ち出した。成長を支えるために「強固で、持続可能な、かつ均衡ある成長を達成するためのわれわれの取り組みを強化することに対する3本の矢のアプローチ、すなわち相互に補強し合う財政上、金融上および構造上の政策の重要な役割を再確認する」としている。
 これは日本国内の論調が「財政出動への足並み焦点」(朝日)などと、サミットの食い違いを強調するかのような方向へ傾くのを、戒めた形となっている。もともと世界経済の持続的な成長が重要なのであって、財政出動は構造改革とは矛盾しないことを強調しているものだ。その証拠に「相互に補強し合う財政上、金融上および構造上の政策の重要な役割」と表現して、あくまで相互補完関係にあることを指摘した。それぞれの国が独自の政策で目的を達成すれば良いという発想だ。
 この宣言は26日の会合で確認される方向となっている。経済宣言の大枠が固まったことで、焦点は対中関係など政治問題に移行する。オバマがまずベトナムを訪問してから来日したことが物語るように、南シナ海における中国による海洋進出が俎上(そじょう)にあがる。ベトナムからは首相・フックが拡大会合に出席のために来日しており、安倍とも会談する。オバマと安倍はサミットで「力による現状変更」に強い懸念を表明し、ヨーロッパ諸国の同意を取り付けたい考えだ。日本としても東シナ海での現状変更の動きに直面しており、その対応についてのサミットの支持を得たい考えだ。ヨーロッパはウクライナ問題など、ロシアによる「力による現状変更」反対では一致しており、総論としては一致する流れとなろう。さらに南シナ海における中国の進出について、日米は「挑発的な一方的行動として強く反対する」と表明する案を提示しており、サミット全体でも認められる公算が大きい。
 ただ中国に対しては、危機感を意識する日米と、西欧諸国とは温度差があり、対中包囲網をサミットとして表明することにはならないだろう。しかし、サミットの成功自体が対中けん制になることは確かだ。また「パナマ文書」の公開で明らかになった大企業などによる課税逃れの問題についても、税の公平性回復に向けての国際的な連携強化の方針が確認される流れだ。


オバマ広島訪問=人民日報への回答 Name:浅野勝人

オバマ広島訪問=人民日報への回答 Name:浅野勝人 NEW! Date:2016/05/25(水) 09:18 
 
人民日報の前東京特派員から、「オバマ広島訪問」について、以下3点、簡潔にコメントしてほしいとの文面による取材依頼が、2週間前にありました。どのようにCARRYされたか確認しておりませんが、いよいよサミットが始まります。アメリカ大統領の歴史的な広島訪問が迫りましたので、報告いたします。


北京・人民日報 国際部  劉軍国 記者あて
= 人民日報に回答 = 
オバマ広島訪問について    元副外相 浅野勝人

① 今回の広島訪問についての評価。

原爆投下から71年。伊勢志摩サミットの機会に、安倍首相と共に、被爆地・広島を訪れるアメリカ大統領の歴史的決断を日本国民は高く評価しています。

広島市民は、オバマ訪問を核保有国が非核国家に向かって徐々に歩む速度を早めるきっかけになってほしいと捉えています。ですから「あえて謝罪の言葉を求めず、世界の人々に二度とあんな悲惨な思いをさせたくない。そのための機会にしたい」と考える成熟した態度が、オバマ訪問を実現させたと私は理解しています。長崎の人々は言うに及ばす、多くの日本人の思いです。


② 日米同盟にどんな影響を与えるか。

日米間の信頼の絆は一層強まります。
かつて、アメリカ国民の80%が、「原爆投下は正当だった」と認識していましたが、今では「正当だった」「正当ではなかった」がおおむね半々になっています。大統領の広島訪問によって、アメリカの世論は「原爆投下は正当ではなかった」と思う人がさらに増えるものと思われます。

軍事同盟については、核の不拡散と非核保有国家への漸進を基本理念としながらも、隣の中国が核大国であること。さらに、原・水爆をもって、いつでも使うと恫喝外交を繰り返す「狂気の指導者」が傍(そば)にいることから、日本にとってアメリカの核の傘は抑止力として不可欠の存在となっています。その意味からも同盟関係は維持・強化されます。


③ アジアおよび日中、中米への影響 如何。

日米同盟の安定・強化は、アジアの平和と繁栄に良好な効果をおよぼします。

日中関係への影響については、日本が中国全土で侵略戦争を強行した「日中戦争」における日本 と 日本の奇襲攻撃に伴う一方的な宣戦布告に対して、防衛のための反撃から戦闘を開始・推進した「アジア・太平洋戦争」におけるアメリカとでは、立場が根本的に異なります。
従って、オバマ広島訪問が日中両国に与える政治的効果は、おのずと異なり、中国への影響が限定されるのは当然です。

ただ、オバマ広島訪問が「歴史問題は未来志向を優先させるべきもの」という教訓になるとすれば、日中関係改善をめざす未来にとって重要な示唆となります。

核大国同士の米中両国にとっては、「核なき世界」への一里塚、浅野理論の「日・米・中、トライアングル同盟」構築への一里塚になってほしいと念願します。(2016/5月10日、元副外相)

―註:沖縄でアメリカ人による殺人事件が起きる前ですー

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 2016年5月22日 19:00  浅野 勝人
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◎俳談

◎俳談
【初夏を詠む】
 最近のすがすがしさはどうだ。もうすぐ蒸し暑くなる予感はするが、まだ良い季節を楽しめそうだ。そんなときは外に出るに限る。毎日カメラを持って森にゆく。必ず何らかの収穫がある。今日も銀やんまの飛翔が撮れた。250枚くらい連写して3枚しかピントが合わなかったがそれでも飛んでいる写真は珍しい。俳句もじゃんじゃん連写のように作るのだ。新聞投句用俳句を1日10句作って20年にもなると、歳時記を見ただけで着想が浮かぶ。辞書を見てもヒントが出る。ましてや実景を見ればたちまち数句が連想のように出来る。すぐに書き留めないと多すぎて忘れる。
菱の花分けて泳げる青大将   産経俳壇入選
菱は6月頃白い地味な花をつけ、実は秋に採れ食べられる。その花の間を縫うように青大将が泳いでいった。
 芥川龍之介は俳号を我鬼という。文人俳句の域を出なかったが、時折突拍子もない俳句を作る。
青蛙おのれもペンキぬりたてか 芥川我鬼
青蛙は確かにみずみずしい。ペンキ塗り立てのように見える。発想の飛躍で名句となった。
天上も淋しからんに燕子花(かきつばた)  鈴木六林男(むりお)
 確かに燕子花の花を見ていると寂しさを感ずるときがある。ふと惜命(しゃくみょう)の思いに駆られて天国を思った句だ。惜命とは命が惜しいと書く。その意味もあるが時には、生き返るような気持ちも含まれる。命を貴く思う気持ちであろう。

◎自民は「舛添降ろし」の先頭に立て

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◎自民は「舛添降ろし」の先頭に立て
  ちゅうちょは“製造物責任”につながる
 室町中期の「史記」の注釈書・史記桃源抄が「人といふものも居住まいによる事ぞ」と人間のあるべき姿を説いている。背筋のビシッと通った姿勢が重要だというのだ。自民党幹事長・谷垣禎一が“舛添不祥事”に関して「首都のトップに立つものとしてそれなりの居住まいがなければならない」と述べているのは至言だ。自民党本部は夏の国政選挙に向けての危機感もあり、「舛添は既に死に体」(党幹部)と、早期辞任を求める空気が強い。しかし、本人はまだ、「サギをカラスと言いくるめ」が通用すると思っており、自民党都連も様子見で党本部との温度差が目立つ。しかし舛添要一は絶対に外れないトラバサミにかかったのであり、ここは都連会長・石原伸晃がその影響力を行使して、早期辞任に結びつけるべき時だ。そうしなければ自民党は「製造物責任を問われる」(幹部)事に発展しかねない。
 舛添要一の2回にわたる記者会見をつぶさに観察したが、舛添は自らの置かれた立場を依然予測できていない。この「悪あがき」のままではほぼ確実に「野垂れ死に」するという構図の理解に到っていないのだ。核心部分は2度にわたる正月の家族旅行のツケを政治資金に回しておきながら、「当日は事務所関係者との打ち合わせがあった」と述べた点だろう。記者団から鋭い質問が出された。「奥さんは事務所関係者に含まれるか」という問いだ。図星を突かれたと見えてうろたえた舛添は「妻は家族です」と意味不明の言葉を2度にわたって繰り返し、「第三者の専門家による調査に委ねる」と述べるばかりであった。
 この「第三者の専門家」を何と舛添は46回も繰り返したが、誰が舛添の“お手盛り”人事を信用するかだ。何も家族の旅行などは手帳を見れば済む話であり、専門家が判断する問題ではない。その弁明態度は児戯に等しく、説得力はゼロだ。舛添の政治資金流用はもはや“病的”にまで、拡大している。インターネットオークションでの美術品あさりや車二台の購入して、一台は政治活動に関係のない湯河原の別邸に置いている。次から次に暴かれ続ける構図は舛添が知事でいる限り続くのである。
 これが意味するものは、自ら辞任しない以上、最終的にはリコールが成立することだ。朝日の世論調査によると舛添の対応が「適切ではない」は83%に達し、「適切だ」は8%だった。自民支持層の84%、公明支持層の8割も「適切ではない」と答えた。これほど都民が怒りの声をあらわにしているケースは珍しい。誰もが簡単に見破れる嘘をつきとおせると思っている知事への不信が募る一方なのだ。首相・安倍晋三が「公私混同に厳しい批判がなされている以上、政治家は信なくば立たず」と発言している通りである。最終的にはリコールが成立することを前提に、自民党都連は動くべきであろう。つまりリコールによって都民の手を煩わせることなく、自らの自浄作用を発揮すべきである。
 自公両党の都議会議員に舛添を担いだ事へのやましさがあるように見えるが、舛添の本質を見抜けなかったことは確かに問題がある。小泉進次郞だけは見抜いており、「応援する大義がない」と執行部を批判したが、まさに図星であった。しかし、舛添の政治資金流用の“習癖”は、週刊誌の調査報道によって判明したことであり、候補を擁立する前に検察並みのチェックを入れることは不可能である。したがって、都議会の自公両党はここでちゅうちょすべきでない。堂々と批判の論陣を張れば良いのだ。
 今後都議会が取るべき手段としては、方法が三つある。一つは追及のための百条委員会を発足させることである。虚偽の陳述には厳しい罰則が伴う委員会であり、それでもごねれば都議会が不信任決議を上程すれば良い。3分の2の議員が出席して4分の3の同意があれば、舛添は辞任か都議会解散しかなくなる。そして最後の手段がリコールとなるが、133万人の証明を集めて、過半数の賛成があれば成立する。
 都議会は6月1日に召集されるが、本会議での代表質問の段階は突っ込んだやりとりが難しい。9日からの総務委員会が焦点となりそうだ。医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取った前任者の猪瀬直樹も、総務委員会での質疑で追い込まれて、最終的に辞任を決断するに到った。都議会与党は、ここは腹を据えて舛添辞任へと追い込むべきである。評論家の中には「今辞任に追い込むと、4年後のオリンピックと選挙がぶつかるので難しい」などと悟ったような発言をする向きがいるが、馬鹿げている。例えぶつかっても選挙は出来る。今度こそ良い都知事を選んで、継続させれば問題はない。参院選とのダブルになろうと、衆参同日選とのトリプルになろうと早期辞任が良いと思う。それも自民党が率先して辞任を実現させれば、選挙民の理解は得られるが、ちゅうちょすれば国政選挙に影響が出る。


【杉浦よりのお願い】

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【杉浦よりのお願い】
 皆様、いつもご愛読有難うございます。ご健勝のこととおよろこび申し上げます。さて私ども、このほど「新聞俳句入選のコツ」を所属の安保政策研究会より出版いたしました。日々の「俳壇」をまとめたものでございます。所属する安保研の5周年記念として上梓しました。元官房副長官・浅野勝人氏から「新しい随筆の分野」とご高評をいただいております。ご一読をお願い申し上げます。既にアマゾンで発売を始めております。アマゾンで「新聞俳壇入選のコツ」と引けば、すぐに出てきます。もちろん、お近くの書店に注文していただければ2~3日で届きます。
                                杉浦正章拝

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 ◎杉浦正章理事の 「新聞俳句入選のコツ」 を推薦します。
 まさに現代版「徒然草」の面白さ!
 安保研理事長 元内閣官房副長官   浅野勝人
   安保研理事・杉浦正章元時事通信編集局長による「新聞俳俳句選のコツ」は、新聞俳句入門書であると同時に現代版「徒然草」とも言うべき高度の随想録としての特色を持っています
 通常年寄の作った句集は正直言って「犬も食わない」で、そっぽを向かれる類いが多いのですが、杉の子の俳号を持つ杉浦理事は句歴30年、新聞投句は20年、入選句は何と1000句余り。
 その俳句を挿入しつつ、「心にうつりゆくよしなし事を」生き生きした文体で書き留めた随筆は、実に説得力があり、人の琴線に触れる文章力があります。「ついつい徹夜で読んでしまった」という友人がいるほど面白いのです。
 例に引く芭蕉や蕪村らの俳句も、随想に見事にマッチし、新しい随筆の分野を創出しております。新聞俳句を志す人は、楽しく読んでいるだけで、投句力が身につくこと請け合いです
 既に杉浦理事は日々の政治評論で見事な洞察力を見せており、知る人ぞ知る政治評論家です。是非ご購読をお勧めいたします。
 2016年5月22日 19:00  浅野 勝人
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◎俳談

◎俳談
【さりげない時事句】
◆冷房を贅沢として老いるかな 読売俳壇1席
 早くも冷房の季節が巡ってきた。最近は毎日冷房だ。年をとると暑さ寒さが体にこたえるので、冷暖房はきちんと入れている。これは去年節約論議が激しいので、作ってみたものだが、時期的に選者の感性と一致した。選者はさりげない時事句ととらえてくれたのだろう。
◆丈夫なり妻と昭和の扇風機 毎日年間俳壇賞
 これもさりげなく節電に触れている。時事句はニュース性を持たせてはならない。持たせた途端に軽くなる。

◎「ややもすると解散」のきな臭さが漂い始めた

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◎「ややもすると解散」のきな臭さが漂い始めた
  安倍はダブル選挙をまだ捨てていない
 これはなにやらきな臭いとしか言いようがない。首相・安倍晋三がまた解散を考えているフシが出てきた。これを察知したか、自民党国対委員長・佐藤勉は「ややもすれば、そんなことになりはしないかと心配している」と23日に述べた。命名すれば「ややもすると急襲解散」だ。安倍のことだから実行するかどうかは別として、脳裏にないわけがない。とりわけ野党が内閣不信任案を提出した場合には、全1人区で成立する可能性がある野党の候補一本化をダブルで粉砕するため、解散で逆襲する可能性も出てきた。したがって同日選挙の可能性は復活して、5分5分の見通しとなってきた。
 とにかく安倍の解散への決断は「軽妙」としか言いようがない。2014年11月21日の衆議院解散には驚かされた。2012年の総選挙で政権獲得後2年で突然解散である。今回は解散すれば1年半でやることになるが、衆参で勝てば、オリンピック間際までの任期となる。14年の解散の可能性を最初に明言したのは民主党幹事長・枝野幸男だ。9月の段階で解散を予言していた。ほかのことは外れるが解散に関する動物勘はどうも冴えているようだ。今度も民進党幹事長・枝野は21日「首相が腹の中で何を考えているのかは分からないが、8割方ダブル選挙だと思った方がいい」と不気味な断定をしている。参院一人区では32選挙区すべてで、野党候補一本化の流れが強まっており、このままでは自公は厳しい戦いを強いられる可能性が大きい。これを粉砕するためには、安倍がダブル選挙を選択する事が一番得策となる。衆参で野党が共闘することはねじれが生じて困難であるからだ。
 安倍はいったんは4月14日の熊本地震の被害状況を見て同日選挙を断念したかに見えた。現在でもなお7~8万人が避難生活を続け、長期化する様相を見せている。その中で政権与党の利益だけでダブル選挙を断行すれば、批判の目は政権に向けられ衆参双方で敗北しかねない可能性があった。しかし仮に7月10日の選挙とした場合、震災から4か月たっており、粉じんもかなり治まる可能性がある。どっちみち参院選挙は行われるのであり、これに衆院選挙を加えることは技術的に不可能ではない。問題は熊本で同日選挙が可能かどうかだ。民進党の松野頼久は国会で安倍に「選挙の管理や事務ができる状況ではない。ダブル選挙は(与野党)どちらが有利、不利かは関係なくやめてもらいたい」とクギを刺している。
 それではダブルが事務的に可能かと言えば政府筋は「不可能ではない」と述べている。まず国政選挙に関しては、熊本地震による引越し先が国内である限り、常に選挙権がある。引っ越さない場合は地元で従来通り選挙権を行使できる。専門家の見方は、他の区市町村に引越した場合、転入届を出した日から3か月が過ぎなければ選挙人名簿に登録されないため転出先の区市町村では投票ができないこととなる。一方で、 引越し前の区市町村で選挙人名簿に登録されていた場合は、住民票移動の手続き日から4か月を過ぎるまでは選挙人名簿に登録されている。したがって、引越し先の区市町村の選挙人名簿にまだ登録されず、投票ができないときは、原則として旧住所地の区市町村で投票することが可能だ。また、引越し前の区市町村の選挙人名簿に登録されている場合で、引越し後の区市町村で投票を行いたい場合は、『不在者投票』の手続きを行うことで、引越し先で投票が可能となる。
 したがって、安倍が決断すればダブル選挙はおおむね可能であろう。
おりから、選挙の環境は政権与党にとって極めて良好である。サミットがあるうえに、27日のオバマの広島訪問は、国民の9割が支持しており、野党は寂として声なしの状況が続いている。安倍にとって絶好の晴れ舞台が続くのだ。過去にも酷似する例がある。1986年の中曽根康弘による死んだふり解散・同日選挙だ。同年5月4日の東京サミット後の解散でダブルに持ち込み、圧勝した。今回は伊勢志摩サミットに加えて、オバマの広島訪問が付録についている。内閣支持率も読売の調査で53%と、高止まりを続けている。政党支持率は自民党が突出している。マイナス要因としては「舛添疑惑」と、沖縄の女性遺棄事件、熊本の被災があるが、舛添疑惑は東京限定であるうえに、都知事に担いだ自公への批判はまだ高まっていない。舛添を辞任に追い込めば世論は喝采(かっさい)する。沖縄の事件も安倍・オバマ会談などで沈静化は可能だ。熊本も、選挙をスムーズに行う段取りをしっかりとしつらえれば、7月の時点でそれほどの批判にはならないかも知れない。 
 こうして、ダブル選挙への状況は大局的にはまさに千載一遇のチャンスという流れが生じてきている。加えて安倍が消費増税凍結か延期に踏み切れば、これで国民の信を問う口実は出来る。おまけに野党が内閣不信任案を上程すれば、安倍の性格から言って解散で切り返す可能性がある。まさに外交、内政が三つ巴、四つ巴となって、政局に大きな影響を及ぼす激動段階へと突入した。安倍がこの状況を捉え、解散するかどうかは、全く予断を許さない。同日選挙の可能性はまだ5分5分としか言いようがない。その決断は会期末6月1日までの約1週間以内に行われる。


筆者よりのお願い

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【杉浦よりのお願い】
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                                杉浦正章拝

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 ◎杉浦正章理事の 「新聞俳句入選のコツ」 を推薦します。
 まさに現代版「徒然草」の面白さ!
 安保研理事長 元内閣官房副長官   浅野勝人
   安保研理事・杉浦正章元時事通信編集局長による「新聞俳俳句選のコツ」は、新聞俳句入門書であると同時に現代版「徒然草」とも言うべき高度の随想録としての特色を持っています
 通常年寄の作った句集は正直言って「犬も食わない」で、そっぽを向かれる類いが多いのですが、杉の子の俳号を持つ杉浦理事は句歴30年、新聞投句は20年、入選句は何と1000句余り。
 その俳句を挿入しつつ、「心にうつりゆくよしなし事を」生き生きした文体で書き留めた随筆は、実に説得力があり、人の琴線に触れる文章力があります。「ついつい徹夜で読んでしまった」という友人がいるほど面白いのです。
 例に引く芭蕉や蕪村らの俳句も、随想に見事にマッチし、新しい随筆の分野を創出しております。新聞俳句を志す人は、楽しく読んでいるだけで、投句力が身につくこと請け合いです
 既に杉浦理事は日々の政治評論で見事な洞察力を見せており、知る人ぞ知る政治評論家です。是非ご購読をお勧めいたします。アマゾンで「新聞俳壇入選のコツ」と引けば、すぐに出てきます。もちろん、お近くの書店に注文していただければ2~3日で届きます。
 2016年5月22日 19:00  浅野 勝人
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◎俳談

◎俳談
【女性観察句】
◆泳ぎ初めパンツに縫いし守り札 東京俳壇3席
 昔はプールなどないから、もっぱら川で泳いだ。田んぼの間を流れている川だから時々馬糞も流れていた。そんなことは気にも留めないのがガキ大将で、頼もしいあんちゃんだった。母親は心配して海水パンツに守り札を縫い付けてくれた。初めての川泳ぎの時は背が立たないにもかかわらず無鉄砲に飛び込んで、溺れてしこたま水を飲んだ。ガキ大将がすぐ助けてくれた。
 学生時代は東京プリンスホテルのプールによく行った。昔はアランドロンに似ていたから、ビギニの女性が「火貸して」と寄って来た。ロンソンのライターでつけてやったりした。観察していたら最初は髪を濡らしたくないのか平泳ぎだったが、濡れてしまうと観念したようにクロールになった。
◆髪濡れてよりクロールで泳ぐかな 産経俳壇入選
 これも一種の観察句。女性観察の句だ

◎サミットは増税延期の大舞台に

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◎サミットは増税延期の大舞台に
  “G7版3本の矢”で下方リスク排除
 サミットをテコに消費増税を延期するという首相・安倍晋三の基本戦略は着々と進展しているように見える。26日からの主要7か国(G7)首脳会議も骨太に俯瞰すれば財政出動を含めたあらゆる手段を動員して景気の下方リスクを防ぎ、景気回復へと世界経済を牽引する方向に固まりつつある。議長国である日本がこの潮流に逆行し、一国だけ消費増税を推進することは不可能になりつつある。これは安倍が過去に公約した、消費増税断行の発言を、撤回しうる大きな舞台回しであり、参院選挙に向けての地歩を固めることにもなる。
 安倍の増税延期完全否定とみられる発言を観察すれば常に条件がついている事が分かる。その最たるものが「経済が失速しては元も子もなくなる」であり、直近では「適時適切に判断」である。また安倍の“ボディーランゲージ”を観察すれば、一貫して増税延期へと動いているかのようである。景気回復を目指す国際的な財政出動の推進は、まさに暗黙の延期宣言である。さらに著名な経済学者から意見を聞く「国際金融分析会合」をなぜ開いたかといえば、消費増税の賛否の意見を聞くことにより、従来増税実施が100%常識であった水準を、賛否両論の中から二者択一の選択ができる水準へと移行させる狙いがある。
 会合で、一番興味深かったのは超一流の学者にはオフレコが利かないことが分かった点だ。安倍が財政出動に難色を示すドイツに関してプリンストン大学教授のポール・クルーグマンに「絶対オフレコだが、どうドイツを説得すべきか」とただしたにもかかわらず、同教授はすぐツイッターで「安倍首相から聞かれた」と暴露してしまったのである。しかしクルーグマンは「彼ら(ドイツ)は全く別の宇宙に住んでいるので、緊縮財政をやめるのは難しい」と答えている。
 別の宇宙というのは一国だけ財政黒字を享受していることを皮肉ったものだが、たしかに19日始まったG7財務相会議でも独財務相・ヴォルフガング・ショイブレが宇宙人のように「財政主導する必要は無い。ドイツとしては他の国に指示をするつもりもないが、その逆も望んでいない」と開き直っている。イギリスの首相・キャメロンも安倍に対して「構造改革の方が良い」と述べており、安倍の狙い通りにG7が一致して財政出動を推進することはもはや不可能となったと言える。しかしサミットの常として見解が一致しない場合は、宣言でも主張を並列して文章の強弱で会議の大勢を表現する方向がとられるケースが多い。
 重要なのはサミットは中国経済の減速と、原油安を背景にした資源国の景気悪化などにより世界経済に下方リスクがあるという認識では完全に一致する事である。これに基づいて各国がそれぞれ世界経済を成長軌道に乗せるための施策を打ち出す方針を確認すれば、立派なG7の宣言になるのだろう。安倍は衆院予算委で欧米各国歴訪の感触として「財政政策が効果を及ぼすという考え方においては日本も米国もカナダもイタリア、フランスもEUも共有している」と述べており、G7の大勢は財政出動是認論なのである。したがって最近安倍が目指していると言われるのは、財政出動だけではなく、金融政策と構造改革を含めて「サミット版3本の矢」を推進する構想だ。これを基にサミットが再び世界経済の牽引効果を発揮することは十分可能だ。
 一方、対中関係で興味深いのは欧州連合(EU)の議会が中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」と認定することに反対の決議を賛成多数で可決したことだ。WTOは生産活動や為替などを統制してきた国を「非市場経済国」と位置づけ、そこと貿易する国がダンピング(不当廉売)を認定しやすくしたり課税率を厳しく算定したりすることを認めている。背景には、中国製の鉄鋼製品が世界中にあふれる過剰供給問題がある。中国は2001年に15年間は非市場経済国と扱われることを受け入れたが今年12月に失効する。これを再度「非市場経済国」に位置づけるべきなのだ。オバマも喜びそうな構想だ。たしかに中国の無秩序な通商政策は世界経済の波乱要因であり、サミットでも東・南シナ海の問題と共に協議の対象とすべき問題であろう。
 さらに日本での開催でもあり、北方領土問題も討議の対象とすると共に、議長声明などでも言及する必要がある。既に1990年のヒューストン・サミット、1991年 ロンドン・サミット、1992年ミュンヘン・サミットで議長声明として取り上げている。安倍はプーチンとの関係もあろうが、世界世論に常に訴え、占拠を既成事実化しないためにも、クギを刺しておく必要がある。サミットは成功しないサミットはないと言われている。参加国首脳が「協調」で常に一致しているからだ。安倍は議長国として重要な役割を果たすことになるが、一方で国内政治を見れば、「成功」すなわち「消費増税延期」となりうるのだ。延期を参院選後に延ばすなどと言う噴飯物の見方があるが、これは選挙敗北を宣言するようなものであり、馬鹿馬鹿しくて話にならない。


◎俳談

◎俳談
【いずれがあやめ、かきつばた】  
 昔官房長官の招待で柳橋の料亭で芸者の踊りを見た。端唄「潮来出島」を背のすらりと高い花柳流の若い芸者が踊ったが、気品といい凛(りん)とした色気といい第一級であった。今でも目に浮かぶ。
潮来出島のまこもの中で あやめ咲くとはしほらしや
   さ―よいやさ さ―よいやさ
この芸者を詠んだ句が
遠くより見たるあやめの哀しけれ 産経俳壇入選
どこか哀しそうだったのだ。
 いま森ではあやめが真っ盛りである(写真)。いずれが菖蒲(あやめ)杜若(かきつばた)と言うが、これに花菖蒲(はなしょうぶ)が加わるから、素人にはさっぱり分からないが、物の本によると花菖蒲は花弁の弁元に網目状の模様がある。確かに写真にはあるから菖蒲(あやめ)だ。花菖蒲は花弁の元に黄色い目の型の模様があり、かきつばたは花弁の弁元に白い目の型模様があるのだそうだ。いずれもすべてアヤメ科アヤメ属だから皆同じ仲間で極めて近い関係にある。だから俳句に詠むときは口調のよいものを選べば十分だ。
 ふんわりした花の部分を詠んだ名句が多い。
星野立子に
広々と紙の如しや白菖蒲
がある。また岸本尚毅には
てぬぐひの如く大きく花菖蒲
がある。今はティッシュだから安っぽく見えるが、うまく詠むといけるかもしれない。

◎「増税延期」が安倍の手のひらで踊っている

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◎「増税延期」が安倍の手のひらで踊っている
  政界が固まった背景に“官邸リーク”
 党首討論をめぐるマスコミの論調は首相・安倍晋三が民進党代表・岡田克也による消費増税延期の奇襲攻撃に遭って敗れたというトーンが圧倒的だ。特に報道ステーションのコメンテーター後藤謙次は嬉しげに「(安倍首相は)完全に岡田さんの土俵で相撲を取らされましたね」と述べたが、果たしてそうか。この見方は浅薄で、逆だと思う。土俵は誰も気付かぬようにもっと広く設定されていたのだ。したがって筆者は岡田の増税延期論は窮鼠が猫をチクリとかんだだけで、かんだネズミは猫の手のひらで踊らされているだけだと思う。なぜなら裏には安倍の巧妙なる増税回避への世論操作があるからだ。その証拠に安倍は増税延期がやりやすくなったのである。
 これまで安倍は一つ覚えのように「リーマンショックや大震災のような出来事が起こらない限り予定通り引き上げる」と繰り返してきたが、それにもかかわらずこれまで新聞が次々にトップで、消費増税延期を報じてきたのはなぜか。官邸筋を通じて意図的なリークが繰り返されたからに他ならない。安倍が裏で延期のリークをさせなければ、野党が政府に先んじようと消費税凍結法案を提出したり、民進党内に延期を求める声が高まることはなかった。安倍は裏表を使い分けてきたのだ。安倍は、岡田の増税延期への転換を奇貨として、堂々と延期ばかりか凍結、増税断念まで視野に入れることが可能になったのだ。そのリークに基づき増税延期説を報道してきた朝日が、19日は見出しで「増税延期迫られる首相」とやっているが、安倍の巧妙なる“手順”を見逃していて、深味がない。裏で延期を迫ってきたのは安倍本人に他ならない。
 それにしても安倍が幹事長・谷垣禎一に「岡田さんの提案には驚いた」と漏らしたのは、確かに機先を制せられた感があるからだろう。安倍は、サミット後に自らが延期を宣言した後に、岡田がついてくるしかないと思っていたフシがある。岡田が奇襲攻撃に出たのは、やむにやまれぬ選挙対策が基本にある。共産党など他の野党は消費増税凍結で一致しているにもかかわらず、副総理として消費増税に向けての3党合意の当事者であった岡田は、一転して延期に踏み切ることはできにくいと考えていたのだ。しかし共産党と、野合のような共闘がどんどん進展し、最重要選挙テーマになる消費増税問題が共闘の支障となってきた。党内には代表代行・江田憲司が16日「今の時点で消費増税ができるような状況ではない」と述べるなど、延期論が強まる気配となってきた。もともと岡田は消費増税推進では選挙を戦えるとは思っていなかったのであり、早かれ遅かれ共闘を優先して方向転換せざるを得なかったのだ。
 この民主党の臆面もない共産党寄りの姿勢を、党内右派がどう見るかだ。不満がうっ積してゆくことは間違いない。加えて財政規律を後生大事にして安倍を追及してきた岡田が、赤字国債に財源を頼るという方針を堂々と、しかも唐突に表明したのは、自己矛盾の露呈に他ならない。党内でちゃんと議論した上の提案とは思えず、なりふり構わぬ選挙優先の姿勢を露呈させたことになる。
 一方で、岡田の方針転換により一番がくぜんとしたのは公明党代表・山口那津男であろう。庶民の党とも思えぬ消費増税推進論者が、一挙に孤立化しかねない状況に置かれたのだ。山口は17日「首相や担当大臣の判断だけで決められるものでは当然ない」と指摘、「政府・与党での議論を経て結論が導かれていくものだ」と安倍をけん制していた。山口は党首討論終了後に安倍と会った後も、岡田の発言に「出来もしないことを掲げ、赤字国債で当面賄えというのは全く無責任」とかみついた。しかし今後山口が追い込まれてゆくのは歴然としている。そうかと言って、連立を解消する度胸はなく、これまでの重要課題と同様に結局安倍に妥協するしかないのであろう。
 安倍にしてみれば、自ら山口を説得する必要も無く、政治状況が山口の方向転換を求める形となり、内心「岡田様様」といいたくなるところであろう。岡田は、意図はしないまま安倍に塩を送った結果となるのである。さらに民進党は、安倍が増税延期を打ち出せば、「アベノミクスの失敗であり退陣すべきだ」と増税延期とアベノミクスを結びつけようとしているが、これも無理筋の論理だ。失業率が史上最低、中小企業へのトリクルダウンまで生じ初めている事が物語るようにアベノミクスは成功しているのである。自ら出来なかったことを棚に上げて何でもアベノミクスのせいにするのはやめた方がよい。
 岡田は意図してか偶然か消費増税の2019年4月までの延期を提案した。安倍の総裁としての任期は2018年9月であり、それを越えている。問題は安倍が延期を宣言する場合、時期を区切れるかどうかである。1年延期はまずあり得ないから任期の先まで安倍が言及することが可能かと言うことになる。安倍は消費増税に関しては3%増やしただけで十分責務を果たしたのであり、ここは、延期を言うより期限なしの凍結を宣言して、問題を後の経済状況に委ねた方が良いのではないか。短期に5%増税などと言うことをやり遂げた首相はいないのであり、財務省に踊らされ続けていることもない。


モンゴル考察ーその④ Name:浅野勝人

 
 
モンゴル考察―その④
安保政策研究会理事長  浅野勝人

モンゴルとどう向き合うか

モンゴルの漢人観(中国人に対する感覚)は、土地を耕すという下等な仕事を営む人たちで、彼らのために上質な牧草地が破壊されるのだから、憎むべき存在である。(陳舜臣)

モンゴル民族は「遊牧の民」ですから、牧畜に携わる人は支配階級、田畑を耕す仕事は被征服民族が従事する卑しい作業という伝統的な思考回路があります。これは、遊牧一辺倒の農牧畜業を近代化する政策の推進に最大の障害となります。農耕は国民の食を確保する大切な職業とみなす意識改革を子どもの頃から植え付ける教育方針の転換が必要です。


「農耕蔑視の考えを変えないと、モンゴル近代化構想は進めようがありません。横綱、そう思いませんか?」(浅野)

「浅野先生、それは重要なポイントです。ですから、北海道の滝川で稲作をお願いして、そこで収穫したお米は全量モンゴルへ送って、試食してもらっています。こんな美味しいお米はどうすれば穫(と)れるのか、まず、モンゴルの人々が関心を持って、自分たちも田圃を耕してみようという意欲をもってほしいと思っています」(白鵬)

「横綱が、そんな素晴らしい試みをしているとは知りませんでした。モンゴルの米づくりは、日本政府が技術援助のできる格好の分野だと思います」(浅野)

「本格的な取り組みをJICA(独立行政法人・国際協力機構)にお願いしたいですね」(白鵬)

「もう一つの課題は、家畜の疾病対策を徹底して、伝染性の高い口蹄疫やブルセラ症を予防して、国際基準を満たす食肉を輸出できる体制を整えることです」(浅野)

「それが実現できたら、モンゴルの所得は跳ね上がります。食べきれなくて処分している羊の肉が大量に輸出できたら、国民生活は潤います。
日本の約4倍の国土、156万㎢に、たった300万人しか住んでいないのに、4,000万頭を有に超える家畜が飼われています。羊、ヤギ、馬、牛からラクダまで人口の15倍内外の家畜が放牧されていますから、すべての家畜の衛生管理を確立するのは至難の業です」(白鵬)

「キーワードは、獣医の育成です。獣医が駐在する家畜保健所が全国いたるところにあって、感染症の診断・予防・治療を徹底するしかありません。口蹄疫が一例もなくならない限り、日本がマトンを輸入することはありません。
実は、もうJICAの支援で、獣医の本格的な養成をモンゴル国立農業大学獣医学部で始めています」(浅野)

「それは、ほんとですか。素晴らしい!」(白鵬)

「4年余り前、サカナ博士の魚井一生翁から、懇意なモンゴル農業大学の学長から相談を受けたと協力要請がありました。ノウハウが優れているのは北海道大学だから、北大の専門の先生を派遣したいという提案でした。幸い、私の親しいJICAの渡辺正人理事(現バングラディシュ大使)が、モンゴル農牧・畜産事業支援の重要性について深い理解を示してくれました。
その結果、モンゴルに対する技術協力「獣医・畜産分野人材育成能力強化プロジェクト」がODAの一環として認められました。
このプロジェクトは、2014/4月30日~2019/4月29日までの
5年計画で、予算は約3億円です。この決定に基づいて長期駐在専門員として北大の先生が農業大学獣医学部で学生を指導しています。すでに一期生が卒業したと聞いています。」(浅野)

「それは知りませんでした。たいへん有り難いことです。
それから長期的なヴィジョンを見据えた口蹄疫の駆逐で重要なのは、ワクチンではないですか。外国産の高価なワクチンに頼るのでは限界があります。モンゴルが自らの手でワクチンを製造する能力を持つことです。」(白鵬)

「その通りです。あの折、モンゴル政府の要請には、口蹄疫ワクチンの製造・開発に対する支援要請がありましたが、ワクチン製造施設の建設、整備に何十億円も必要とわかり、結局、見送られたと聞いております」(浅野)

「今夜は、美味しい松坂牛をたらふくいただいた上、たいへん勉強になりました」(白鵬)

「わたしの方こそ、有難うございました。」(浅野)

< シリーズ 終わり >

◎俳談

◎俳談    
【俳句における叙情】
愁ひつつ岡にのぼれば花いばら  蕪村
 この句を読むとなぜかディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ歌うところの冬の旅を思い起こす。冬の旅の中でも「歌えないほど美しい」と言われた「菩提樹」がメロディーとなって頭の中を駆け巡る。まさにドイツ・リートの世界を蕪村が詠んだような気がしてくるから不思議だ。ドイツロマン派の詩人や音楽家の世界をぴたりと短詩に描いているのである。生まれた年代はシューベルトが1797年で蕪村は1716年であり、江戸時代にドイツリートなど入って来ようがないのに、その叙情性がぴったり合うのには驚く。 
 古来短歌は叙情性が重視されたが、俳句はそれほどでもない。むしろ叙情に傾きすぎると句自体が甘くなり、季語とのバランスが取りにくいケースが多い。従って多くの俳人が叙情を排除して作句に専念してきた。しかし叙情は詩情に直結するものであり、これを断ち切っては俳句は出来ないと思う。中村汀女の
外にも出よ触るるばかりに春の月
や、野沢節子の
せつせつと眼まで濡らして髪洗ふ
が叙情でなくて何であろうか。3流の市井の俳人のように俳句で、あれがいけないこれがいけないは、やめにした方がよい。一定の約束の中でテーマは自由、叙情句大歓迎でいきたい。
春の星滑車のごとく心汲む 産経俳壇二席

◎民進の安倍を攻めようがない理由

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◎民進の安倍を攻めようがない理由
  「男尊女卑」発言が象徴する“すり替え”
 国会内の議員発言は責任を問われない免責特権があるにせよ、民進党政調会長・山尾志桜里が衆院予算委で首相・安倍晋三に面と向かって「男尊女卑政権」と発言したのはひどすぎる。この議員特有の論議のすり替えと自信過剰の断定癖が露呈したものと言える。もしこの国の政権が「男尊女卑」であったら、明らかに「性別によって差別されない」とする憲法14条違反であり、憲法違反の政権自体はなり立たないことになる。検事出身議員の言う言葉ではない。当選2回生の山尾の起用は代表・岡田克也の起死回生の人事だが、就任早々に政治資金規正法違反問題が露呈、国会質問の脆弱さが目立つ。民主党にとっては弱り目にたたり目であり、18日の党首討論でも、岡田の“不振”は今からでも予想できる。肝心の消費増税の是非で他の野党と共同歩調を取って「凍結法案」に同調できないからだ。
 民進党は政調会長の“教育”をし直した方が良い。そうでないといきり立った顔で鼻の穴の大きさばかりが目立つ質問を繰り返すことになる。こっちが男尊女卑と怒られるから言っておくが美人なのに勿体ないから言っているのだ。男尊女卑発言は山尾の唯一の得意分野である介護・福祉問題で、保育士の待遇問題に絡んで飛び出した。いつも思うのだが、この議員は女性特有とは言わないが、木を見て森を見ない質問に終始する傾向がある。なぜなら山尾は「アベノミクスは失敗した。退陣すべきである」と主張したが、保育士の問題はアベノミクスが成功した結果生じた派生的問題であることに気付いていない。
 失敗なら女性の就業率が安倍政権発足後の2013年で過去最高の62.5%に達し、維持するだろうか。産業別では医療福祉への就業率が大きく増加し、169万人増となっている。保育士は女性がほとんどであり、その待遇問題が派生しているのだ。安倍政権は2017年度から保育士の給与を月額2%(約6000円)引き上げるのに加え、保育技術の高いベテラン保育士に給与を手厚く配分する方針だ。最高で月給4万円程度上がる方向。山尾はこの待遇改善が民進党案の一律5万円でないからけしからんと噛みついている。しかし、世の中介護士だけしか存在しないわけではない。安倍が「段階を追って引き上げると言うことだ。一気に全部と言うことは簡単ではない。簡単ならなぜ民主党政権でやらなかったのか」と反論して勝負はついた。キーッとなった山尾は「男尊女卑」と言いきった。その後もテレビで「取り消さない」と息巻いていた。法廷なら裁判長が検事に「口を慎むように」と注意を促し、それでも繰り返せば「退廷!」と宣言するケースだ。検事でも強制捜査の段ボール運び専門ではなかったかと思いたくなる。
 山尾は民放テレビで民主党が煮え切らないままの消費増税の是非を聞かれた際にも、狡猾にも論点をすり替えた。「はっきりしている」と述べたから固唾をのんだが何と「軽減税率を前提にした消費増税は認められない」と発言したのだ。誰も軽減税率のことなど聞いてはいない。民主党が他の野党と同様に消費税増税凍結に踏み切るかどうかを聞いたのだ。
 一政調会長の素質など、どうでもいいが民進党の支持率が発足直後から低迷している。新党発足直後にはご祝儀相場で上がるものだが、日テレの調査で支持しないが59.7%。読売の調査で政党支持率は自民党が37%(前回37%)、民進党が6%(同6%)と依然として自民圧勝。なんと安倍内閣の支持率は53%で3%上昇。こんな数字が3年以上も継続する例は戦後の歴代内閣でも見たことはない。紛れもなくアベノミクスは成功と国民の多くが思っている証拠である。一時はトリクルダウンがないと批判されたが、大企業の収益が過去最高なのに続いて、中小企業の収益も過去最高になってきた。トリクルダウンしているのである。何よりも失業率は18年ぶりの低水準、求人倍率は24年ぶりの高水準の1.3だ。GDPだけでアベノミクス失敗の判断は出来ない。国民生活に密着した指標の方が重要だ。
 こうした傾向を反映してか、民進党の政権批判は専ら「重箱の隅作戦」しかない状況だ。外交・安保では安倍の親米路線が好感を持って迎えられており、野党は追及のしようがないのが実情だ。とりわけ安倍がもたらしたオバマとの信頼関係は、オバマの広島訪問で結実しようとしている。オバマ訪問を「評価する」はなんと93%に達した。外交・安保など全く知らない山尾が質問しないのは無理もないが、オバマ訪問で反米野党から寂(せき)として声なしの状況はどうしたことだろうか。
 岡田は正直言って攻めようがないのが実情だろう。唯一の追及点は安倍が消費増税延期で態度を明らかにしていない点だが、民進党も安倍の出方待ちしか手がないというジレンマがある。安倍がサミット直後に延期を表明すれば直ちに「アベノミクスの失敗。退陣せよ」と言う戦術だ。山尾が既にこれを述べている。しかし増税延期をアベノミクスの失敗と結びつけるのはだれが見てもこじつけだ。民主党のように状況の変化にに対応できない政権が国を滅ぼすのだ。サミットは景気刺激策の必用では一致し、財政出動も大きなテーマとなる。議長国の安倍がこれに逆行出来るわけがなく、消費増税は延期して参院選挙というのが安倍の残された「サプライズ効果」であろう。民進党はこれに反対して「増税賛成」で選挙が出来るのだろうか。とにかく国民の間には過去の「民主党政権」の羮(あつもの)に懲りてなますを吹く状態がまだまだ20年は続くのだ。国民が本当に信用していないのだ。


モンゴル考察 ― その③

モンゴル考察 ― その③
安保政策研究会理事長  浅野勝人

「元」 初代皇帝世祖フビライ と 文天祥

実権を握った5代皇帝、フビライ大ハーンは、カラコルムを捨てて、燕京(現在の北京)を「大都」と改名して国都とし、宋(正確には南宋)との戦いに集中します。
一方、宋もアリグブカがフビライに投降した1264年に皇帝・理宗が逝去し、度宗(たくそう)皇帝に世代替わりしましたから、モンゴル、中国とも新しい時代を迎えていました。

フビライは、1271年11月、国号を「元」と定め、元王朝の建国を宣言しました。そして、モンゴル5代皇帝が、中国・元の初代皇帝に就任し、世祖フビライとなりました。しかし、名実ともに中原の覇者となるためには、南宋を壊滅させなければなりません。
頼りのタガチャは若死にしたものの、南宋討伐戦の総司令となったバヤンがフビライの右腕となりました。

バヤンは中国の歴史に明るかった。愛読書を聞かれると、武人なので一応兵法書と答えることにしている。だが、「史記」「漢書」「三国志」のほうを、好んで読んだ。じつをいうと、歴史よりも文学の方が好きであった。杜甫や李白、そして王安石の文集も熟読していたのである。(陳舜臣)

バヤンは抵抗する敵は、皆殺しにしましたが、服従した者は殺しませんでした。帰順した能力のある漢人は南宋時代よりも高い地位を与えられて、元王朝に抱(かか)えられた例はいくらもあります。バヤンはフビライの漢化政策に従ったというよりは、自らの思想を実践した人でした。フビライは人材に次々と恵まれた運のいい統領でした。


南宋にも負け戦を覚悟で、城を枕に最後の一兵まで戦った古武士はいるにはいましたが、多くの武人、文人は強力な元軍の前に先を競って帰順するありさまでした。4才で即位(1274年)して5年と経たない南宋7代皇帝・趙(ちょう)㬎(けん)が元に降って南宋は滅びました。首都・臨安は(現在の杭州)は血を流さずに陥落しました。(1279年) 

「チンギス・ハーンの一族」4巻には、随所に興味深いエピソードがちりばめられています。歴史の推移を教えられるだけでなく、フィクッション構成の面白い小説を読んでいるようなノンフィクッション長編絵巻です。
その中から、陳舜臣が力こぶを入れて書いた南宋の右(う)丞相(しょうしょう)(現在の首相クラスの行政官)・文天祥をピックアップします。


文天祥は、「南宋に人なし」と言ったフビライが、生かして味方にしたかった唯一の人物ですが、誉れ高い宋の遺臣として最後まで帰順しなかった士丈夫です。

降伏を潔(いさぎよ)しとしなかった文天祥は、南へ逃れて文人ながらゲリラ戦を展開して元に抵抗します。孤立無援となって遂に捕らえられ、身柄を大都に移されます。そして、狭い地下牢に3年有余閉じ込められて説得されますが、帰順に応じません。
堪りかねた皇帝・フビライは、1282年の暮、文天祥と接見します。
祖父、チンギス・ハーンが燕京を陥(おと)した年(1215年)に生まれ、68才となったフビライが、47才の文天祥に語り掛けます。
文天祥は左目が失明して体力はボロボロですが、気力は衰えていません。


皇帝は漢語で言った。
「まだ国が亡びていないのに、敵に降るのは、あるいは問題かもしれぬ。しかし、今は宋も亡びた。まして3年も牢に入っておれば元(げん)に降っても、誰も逆臣とは言わぬ。わが元はそちを中書丞相(著者註:首相級ポスト)に登用しよう」
「私は宋が亡びましても、宋の臣として死ぬつもりでございます」
「中書丞相職が気に入らぬのなら、枢密使(著者註:シビリアンの軍最高ポスト)ではどうだろうか?」
「私が欲しいのは、ただ一死でございます」
文天祥は、はじめて頭を下げた。
1282年12月9日朝。文天祥の処刑は公開された。
漢人の検屍官は、「今日は犯罪者を処刑するのではない。文天祥は宋の丞相であり、宋が亡びたいま、一死を賜りたいと我が大元皇帝陛下に請い、それが許されたのである。」と朗々と述べ、刑吏が執行した。
最後まで従容(しょうよう)(著者註:ゆったりと落ち着いたさま)とした文天祥の態度に、人々は心を打たれた。(陳舜臣の原文抜粋)


文天祥は、死ぬことを念頭に獄中で必死に生きながらえました。
闘い抜いて、最後はフビライによって処刑されることだけが、宋に節を全うした文天祥の勝利だからです。だから早く死んで楽になりたいのが本心ではありましたが、自決するわけにはいきません。
それはフビライに負けることになるからでした。


北走 ― 元王朝の消滅

元の基盤固めをしたフビライには、西方対策が残っていましたが、「ナヤン・ハダンの乱」を難なく収めて全て平定し、1292年、遠征を終えました。晩年のフビライにとって思い通りにならなかったのは、日本遠征くらいものです。

第一次遠征(文永の役、1274年)では、3~4万の軍勢を派遣すれば簡単に征服できると日本の戦力を見くびっていました。日本は鎌倉中期にあたり、すでに武家社会は確立されていましたから、防戦体制も組織的で強固でした。このため、モンゴル・高麗連合軍は手痛い敗北を窮して、這(ほ)う這(ほ)うの体で逃げ帰りました。

第二次遠征(弘安の役、1281年)は、
高麗から1000隻の軍船に4万。寧波から江南軍が3,000隻の軍船に10万の兵士を載せて日本へ攻めてきました。ところが7月30日の夜半、北九州は台風圏内に入り元の戦船はほとんど沈没し、大勢の溺死者を出しました。世に言われる「神風」が吹荒れました。
「元史」の「日本伝」は帰還者3名と極端ですが、「世祖本紀」には「十のうち一、二を残す」とありますから、8割余が溺死、戦死、捕虜となって、多くの犠牲者を出し、元軍の大敗に終わりました。
徳川光圀が編纂した「大日本史」の中では、二度にわたった蒙古襲来を「元寇(げんこう)」(元という外敵)と呼称しています。

1294年1月19日、フビライは、亡き皇太子・チンキムの子、テムルを後継指名して死にました。1215年生まれですから享年80才。(正確には満79才)
フビライの孫、2代目の皇帝、成宗・テムルの時世に、「元朝」は早くも陰りが見え始めます。フビライが後事を託したバヤンがフビライの後を追うように2年後に死に、支柱を失います。
病弱を理由に2代皇帝に就任しなかった賢兄・ガマラも重い病気にかかって亡くなりました。テムルは、左右両腕を失って、政権は急速に衰えました。

世祖・フビライの死(1294年)から、1368年、明の朱元璋に追われて、最後の皇帝ドコンテムルこと順帝が北へ逃げて、元王朝が滅亡するまで74年間。その間、10人の皇帝が入れ代わり立ち代わり帝位についていますが、いずれも時々の権臣の傀儡でしか過ぎませんでした。
「北走」した順帝は、モンゴルに戻って恵帝と称しました。
フビライが、1271年、「元」という国号を定めて王朝を創設して以来、1368年に順帝が北走するまで、97年続いた政権ということになります。

「元という国は、世祖フビライの死によってもう亡びたようなものです。その滅亡が70年ほどのびたのは、僥倖(ぎょうこう)(著者註:偶然の幸運)でしたね」と楊維?は言った。(陳舜臣)
(明後日、水曜日に続く)

モンゴル考察ーその② Name:浅野勝人

モンゴル考察ーその② Name:浅野勝人 NEW! Date:2016/05/13(金) 07:53 
 
モンゴル考察 ― その②
安保政策研究会 理事長  浅野勝人

草原の掟 ― 「兄弟はみな敵」

モンゴル族は、古来、末子相続を原則として、一族の規律を保ってきました。
第2代皇帝は、いささかの確執を伴ったものの、末子の4男・トウルィが、就任を熱望した3男・オコディに大ハーンの継承を譲ったため、親戚縁者間における血の雨を見ずに政権交代が実現しました。
3代皇帝は、オコディのひとり息子、グユクへの親子相続でした。
2代、3代とも比較的短命に終わり、政権は、本来、チンギス・ハーンから直接継承するはずであったトゥルイ家に返還されました。

大ハーンの地位が早晩めぐってくることを予測して、トゥルイ家では長男・モンケと次男・フビライを担ぐ勢力が政権を狙って密かに蠢動していました。もちろん、たとえ幼くても末子の4男・アリグブカが原則通りに継承すべきだと主張する勢力もあって、内情は複雑でした。けれども、フビライが骨肉の争いを避けて身を引いたため、モンケが第4代皇帝・大ハーンに就任しました。
ポスト・モンケをめぐるフビライとアリグブカの勝負は、次の局面に持ち越されて最終ラウンドを迎えます。


第4代大ハーン、皇帝モンケと実弟のフビライとの間に、不協和音が表面化するのは、フビライが雲南大理(中国・河北省と内モンゴルの境界一帯。大理は南詔(なんしょう)国の国都)討伐を平穏理に終え、その報告にカラコルム(モンゴル帝国首都)へ行った後のことと言われています。

モンテは、口にこそ出しませんが、「自分を滅亡させる力のあるのは、弟のフビライしかいない。あの漢人かぶれには油断すまい」と思っていました。だから、雲南討伐作戦を命じた折、フビライに人望が集まり過ぎないように、命令系統を二頭制にしました。総司令がフビライなのか、ウリャンハタイ将軍なのか、わざとはっきりさせないようにしていました。

このふたりの兄弟は、戦いの根本理念が異なっていました。
モンケはただ勝って相手を皆殺しにするのが真の勝利と考えていました。「逆らうものは徹底的に殺(や)るが、降(くだ)って従うものは生かして使え」というチンギス・カーンの教えを無視して、降った者も見境なく殺戮しました。従って、チンギス・ハーンの戦略を半分は踏襲し、半分は逸脱していたといえます。

フビライには、戦(いくさ)に勝つことによって民を救うのだという理想がありました。雲南大理攻めに際し、「不殺の令」を帛(きぬ)に書いて掲げ、素直に降った者は処刑しない。無辜の民には害を与えないというお触れを徹底しました。そして、一兵も失わずに無血占領に成功して大理城を手に入れました。

そのころ、モンケはフビライの報告を反芻(はんすう)していた。
戦術としては悪くない。だが、膺懲(ようちょう)(著者註:討ち懲らしめる)という目的は果たせなかったではないか。
―ゆっくり考えてみるか。
モンケは床几(しょうぎ)にもたれながら、そうひとりごちた。(陳舜臣)

私は、すぐさま頼朝・義経の兄弟が脳裏に浮かびました。まるでそっくりさんではないか。

チンギス・ハーンの孫、フビライとチンギスの弟の孫、タガチャルは、できるだけ殺戮を避けて戦さを収め、統治するという理念を同じくしていました。
ふたりは、兄の皇帝・モンテを倒して改革を断行するため、密かに連携します。
ところが、フビライとタガチャルが、モンケの指示で宋との戦いを進めている最中に、四川のモンゴル軍を指揮して合州(ごうしゅう)(重慶)討伐戦を決行していたモンケは、重慶付近の釣魚(ちょうぎょ)山の陣営で病死します。1259年、7月(陰暦)のことです。

モンケが死去すると、案の定、カラコルムにいるモンケの腹心・アラムダルと燕(けい)京(きょう)(現在の北京)長官のドルジが連携してフビライ阻止、アリグブカ殿下の擁立を画策します。
モンゴル帝国は、第4代皇帝モンケの死によって、真っ二つに割れました。

1260年3月(陰暦)、国の東半分に勢力を固めていたフビライは、本拠地の開平府(かいへいふ)(金(きん)蓮(れん)川(せん)というところに築いた城郭。北京の北約250キロの内モンゴル自治区。のちに元王朝の首都・大都<現在の北京>と並んで上都(じょうと)と呼ばれ、夏季の首都とされた)で、第5代皇帝の就任式を行い大ハーンとなります。その翌月には、モンゴル帝国の国都、カラコルムで、西半分を抑えているアリクブカが皇帝に即位して、モンゴル帝国に二人の皇帝が誕生しました。

ちょっと整理しますと、チンギス・ハーンと皇后ボルテの3男、「オコディ」が2代皇帝、その子「グユク」(チンギス・ハーンの孫)が3代皇帝、チンギス・ハーンとボルテの4男トゥルイの長男「モンケ」が4代皇帝、次男「フビライ」と 4男「アリクブカ」(いずれもチンギス・ハーンの孫)が5代皇帝をめぐって骨肉の争いという構図です。

「兄弟はみな敵だというのが草原の掟である」(陳舜臣)
官僚化しているアリグブカの「西方軍」は、野戦に次ぐ野戦で鍛えられているフビライ・タガチャの「東方軍」に各地の戦闘で敗れ、4年後の1264年、アリグブカはフビライに投降します。
これにより、1世紀続いた親戚縁者の殺し合いは終止符が打たれましたが、西域から中央アジアの草原を抑えていた主力の軍事力が消滅して、ロシアからヨーロッパまで勢力を伸ばしていた大モンゴル帝国は実質的に内部瓦解します。(来週、月曜日に続く)

◎俳談

◎俳談
【名句ほど言葉は平易】
 芥川龍之介が「芭蕉雑記」の中で「芭蕉の俳諧の特色の一つは目に訴へる美しさと耳に訴へる美しさとの微妙に融け合つた美しさである」と看破したが、その例句がなっていない。どうでもいい駄句を並べている。そこで筆者が「目に訴える美しさ」を挙げてみると第一に
若葉して御目(おんめ)の雫(しづく)ぬぐはばや(ぬぐわばや)
であろう。青葉若葉あふれる唐招提寺で、盲目の鑑真像を呼んだものである。奥の細道で日光東照宮を詠んだのが
あらたふと(とうと)青葉若葉の日の光
新緑の中の東照宮が目に浮かぶ。
筆者の句で挙げるならば
春灯のあふれ出でたる外国船 毎日俳壇二席
であろう。豪華客船の春宵である。
「耳に訴える美しさ」はまずはリズム感がある句だろう。しかし芭蕉の名句は全てリズム感があり例句にならない。むしろ芭蕉が耳を傾ける姿を想像して、例句をを挙げれば
秋深き隣(となり)は何をする人ぞ
であろう。秋も深まり隣家からは時々音だけが聞こえる。何をしているのだろうか。自分も寂しいが隣も寂しいに違いない。といったところであろうか。
奥の細道の聴覚から説いたような句
閑(しず)かさや岩にしみ入る蝉(せみ)の声
も挙げられる。筆者の句は
九九の声春の小川と混ざるかな 産経俳壇一席
これも聴覚から詠んでいる。
 俳句は名句になればなるほど言葉は平易であり、難しい漢字など滅多に使わない。視覚と聴覚をフルに活用して作った句はおおむねよい句だ。
九九の声春の小川と混ざるかな 産経俳壇一席
これも聴覚から詠んでいる。

◎逃げ切れるか「東京一せこい男」舛添

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◎逃げ切れるか「東京一せこい男」舛添
  “屁理屈大王”のあきれた「血税」感覚
 舛添要一をどう表現しようかと思ったが、一言で言い切る言葉が見当たらない。昔米国が1991年に湾岸戦争に踏み切るかどうかの時に、ある会合で「踏み切らない」と断言していた。筆者は「1月17日にやる」と主張したが「絶対にない」と言い切った。しかし、1月17日に踏み切ったときには、何と「私が言っていた通りでしょうが」と発言、出席者をあ然とさせた。これから言うと「小ざかしい」が適当だが、まだしっくりいかない。そうこうしているうちに今朝13日付の朝日に「東京一せこい男」と言う表現を見つけた。これだと思った。川柳欄の<安いから回転ずしに行くのにな>に選者がつけた言葉だ。さすがに茶化しのプロは違う。一言で言い切っている。
 確かにせこいのだ。「やりいか・140円」「甘えび・240円」クラスの湯河原の回転ずしの領収書が2件で約3万円というのも怪しい。とにかく舛添は何でも領収書だ。領収書さえあれば政治資金で落とすことが可能だから、金を払うときには必ずもらう。ところが木更津のホテルにせよ、友人にせよ簡単に舛添に不利になる証言をしてしまう。ホテルは政治資金収支報告に書いた「会議費用」を否定し、「ご家族でみえました」と家族旅行を証言。友人は「舛添さんは鍼灸院やクリーニング店にも通っていました。クリーニング代を支払う際、どんなに少額でも領収書をきちんともらうケチな人でした」だそうだ。友人に「ケチな人」と言われてはどうしようもないが、なぜだろうか。それは舛添特有の人望の無さにあるような気がする。人に好かれない性格なのである。だからかばう人がいない。
 この「ケチな人」は朝日の「東京一せこい男」と通ずるものがあるが、そのせこさ加減が身を滅ぼしつつある。加えて東大出で頭がいいはずなのに、弁明がなっていない。頭の悪い慶応出の筆者でもすぐに論破できるものばかりだ。まず筆者の川柳<香港のトップ驚く5千万>だ。舛添は「香港のトップが二流のビジネスホテルに泊まりますか?恥ずかしいでしょう」と述べたが、北京の息のかかった香港特別行政区長官が、舛添のように5千万円も使った大名旅行をしていたらいっぺんに習近平から引きずり降ろされる。あの大名旅行でひんしゅくを買った石原慎太郎の平均より1000万円も多いとはあきれて物が言えない。大体都庁は昔から伏魔殿と言われているが、取り巻きの官僚はごますりしかいないのだろうか。慎太郎の時もそうだったが「知事これは行き過ぎです。マスコミの批判を浴びますよ」と諫める者がいないのだろうか。むしろ知事に同行していい目に会いたいという側近ばかりが、ごますり競争をしているとしか思えない。湯水のように血税を使ってである。
 さらなる「せこい発言」は、朝日川柳の<動く知事室もう閉鎖とか>だ。年間50週のうち48週の週末を湯河原の別荘に行く神経だ。しかも公用車を使ってである。舛添は「公用車は動く知事室」というが、東京大震災が発生したら「動けぬ知事室」になるのは火を見るより明らかだ。他の府県は知事の公舎を建造する際には橋が落下することまで考えて、橋を通らないで県庁に来られる路線に作るのが常識だ。緊急事態にトップがいなければ、自治体は機能しない。それに週末には行事がある場合が多く、舛添はこれに一切出席しないと宣言しているに違いない。そうでなければ一年中週末を別荘で過ごせるわけがない。「会議があるからスイートに泊まった」というが、緊急の会議など自室の膝詰め会議で十分こなせる。下手な言い訳も休み休み言ってもらいたいがまだある。「湯河原の風呂は足が伸ばせる」というが、自宅の風呂を自費で改造すれば足くらいいくらでも伸ばせる。
 あきれたのは「エコノミーに乗ったって飛行機代はかかる」だ。例えば成田からニューヨークまでの料金は JALの場合エコノミーで10万円、ファーストクラス145万円で15倍の差だ。まさに舛添は“屁理屈大王”の様相だが、致命的になりつつあるのが正月の家族旅行のツケを政治資金に回した問題だ。2013年に23万円、14年に13万円の請求を会議費で政治資金処理している。舛添は「資料を精査して全体像が分かってから説明する。ミスと分かれば返金しないといけない」と早くも“ミス”で逃げようとしているが、これが成り立たないのは明白である。なぜなら1回だけならまだ通るにしても、2回となれば「確信犯」的になるからだ。2回も続けて正月にミスするかと言うことだ。会議と言うが正月400人以上も集めて会議をするのか。そもそも「精査」と言うが、自分の手帳を見れば少なくとも「家族旅行」または「旅行」などとメモしてあるはずだ。精査など必要ない問題を問われているのだ。逆に会議と書いてあるならそれを示せば済むはずである。
 おそらく、政治家の常のごとく政治資金収支報告の修正と返金で逃げ切ろうとしているのだろう。13日の記者会見が注目されるが、例え今回のケースで逃げ切っても、常習的に私的経費を政治資金に回していた可能性が高く、次々に出てくる可能性がある。事態は単なる週刊誌の報道から、マスコミ挙げての報道に変化してきている。問われているのは弱者の血税で自らの地位が成り立っているという認識が決定的に欠けている点だ。弱者への目線がこれほどない都知事も珍しい。早々に辞任すべきだ。
【次回は旅行のため18日よりとなります】


◎俳談

◎俳談
【古典芸能を詠む】
 今朝森に行ったら、牛蛙がしきりに鳴いている。葦(よし)の奥に入り込んでいるからこれまで写真に撮れたことはなかったが、どうしたことかよしの外れで鳴いていた。しめたとばかりに超望遠レンズでバリバリと撮影すると「ぐあっ!!」と言う声を残して水中に没した。昔新宿で牛蛙を食べたら結構美味であった。お土産に包んでもらって官邸の記者クラブの食堂の美人に「ブロイラー食べない」と持ちかけると「頂くわ」と言って食べた。普段から気があるかなと思っていたが、すぐにばれて口も聞いてもらえなくなった。5月は薪能の季節である。最近はあちこちでやるが、大和市でも時々やる。牛蛙が「ブオー、ブオー」と鳴く森でやるのだ。1度見に行ったらなかなか幽玄かつ神秘的であった。
蝦蟇(がま)鳴けばやがて始まる薪能 東京俳壇入選
蝦蟇と牛蛙は違うが細かいことは言わない。
東京では新宿御苑や芝の増上寺の薪能が有名だ。北鎌倉を散歩したら紫陽花寺・明月院に向かう路地に謡(うたい)の声が朗々と響いていた。謡(うたい)とは能の声楽に当たる部分のことを言う。おそらくプロが住んでいるとみた。
小手毬や路地に満ちたる謡かな  産経俳壇入選
古典芸能に深く入り込まなくても俳句はできる。

◎原爆投下はトルーマンの「ダメ押し」

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◎原爆投下はトルーマンの「ダメ押し」      
 米国内には当初から批判が存在した
  時事通信にはその前身であった国策通信社の同盟通信時代から伝わる秘話がある。原爆投下以前から事実上日本が降伏へと動いていた事実と背景が伝わっているのだ。米国元軍人などの間では広島・長崎への原爆が多くの米軍兵士の命を救ったという意見が根強くあるが、投下した大統領・トルーマンの事後宣伝がいまだに利いているようにみえる。これが大統領・オバマが広島で「謝罪するかどうか」の論議につながっている。さらには原爆投下が必用であったかどうかの議論にも今後つながって行くだろう。筆者は果たして原爆投下が必用であったかについては強い疑問を抱く一人である。投下しようがしまいが日本は息も絶え絶えの断末魔であり、降伏寸前であった。トルーマンはとどめを刺す「ダメ押し」のように原爆投下をしたとしか思えない。
 まず事実関係を述べれば、「全日本軍の無条件降伏」を求めたポツダム宣言が発せられたのは1945年(昭和20年)7月26日だ。アメリカ合衆国大統領、イギリス首相、中華民国主席の名で宣言された。中国の現共産党政権は全くかかわっていない。日本政府が受諾するかどうかは明白でないまま、広島への原爆は8月6日、長崎へは同9日に投下された。その結果、8月10日には、政府による「ポツダム宣言受諾」を同盟通信の対外放送で発信。このニュースは、ロイターやAPなどの海外通信社を通じて世界中に流され、戦勝国の国民は戦争終結の喜びに沸いたが、日本国民が知るのはその5日後の玉音放送による。しかし、既に降伏への動きは45年2月のヤルタ会談の時期から始まっていた。その翌月には外相・重光葵が東京駐在のスウェーデン公使と会って、本国政府に和平の仲介を求めている。ポツダム宣言まで日本は6か月にもわたって、和平について打診していたのだ。また無駄であったが、日本は原爆投下の2週間前に、ソ連に対して和平の方針を明らかにしていた。しめたとばかりにスターリンは北方領土占拠に出た。トルーマンも日本の外交電文を傍受して、和平への動きを承知していたと言うのが歴史の常識だ。
 ポツダム宣言発表翌日の7月27日未明、政府は、直ちに閣議を開き、対応を協議した。その結果、拒否は危険でありなお様子を見ることにしようということになった。しかし時間稼ぎと軍部への配慮もあって、首相・鈴木貫太郎は「共同声明はカイロ会談の焼直しと思う。政府としては重大な価値あるものとは認めず黙殺し、断固戰爭完遂にまい進する」とコメントした。当時同盟通信国際局長で後の時事通信社長・長谷川才次は、鈴木が黙殺という言葉と同時に、記者団から「宣言を受諾するのか」と聞かれて「ノーコメントだ」とも言ったと述べている。この「黙殺」発言は長谷川らにより「ignore it entirely(全面的に無視)」と翻訳され送信された。この翻訳は正しかったが、これを見たロイターとAP通信は「reject(拒否)」と短絡して報道してしまった。こうして増幅気味で、かつ微妙なニュアンスが無視されたまま方針が伝わり原爆が投下されるに到ったのだ。
 しかし、トルーマンが原爆投下を決定した背景は別のところにあるという見方が濃厚だ。投下しなくても日本の降伏は間近であったのにもかかわらず投下したのは、まず原爆開発のマンハッタン計画に当たって使用したアメリカ史上でも最高の19億ドルもの予算を、議会に事後承認させる必用があったことがあげられる。議会に「成果」を見せる必用があったのだ。さらに戦後のソ連の台頭をにらんで核開発の予算を獲得するためにも実戦上の「効果」が必要だった事もある。もちろんスターリンに原爆保持のけん制をする必要もあった。深層心理には人種的偏見があったとする説もある。
 このトルーマンの決断にはさすがに民主主義国家だけあって米国内部から批判が起こった。元大統領・フーバーはその回顧録の中で「トルーマン大統領が人道に反して、日本に対して、原爆を投下するように命じたことは、アメリカの政治家の質を、疑わせるものである。日本は繰り返し和平を求める意向を示していた。これはアメリカの歴史において、未曾有の残虐行為だった。アメリカ国民の良心を、永遠に責めるものである」と述べている。また 後にアメリカの第34代大統領となった、連合軍最高司令官・ドワイト・アイゼンハワーは「日本の敗色が濃厚で、原爆の使用はまったく不必要だと信じていたし、もはや不可欠でなくなっていた兵器を使うことは、避けるべきだと考えた」と、回想している。ホワイトハウスの報道官が10日、核廃絶に向けて「米国が特別な責任を負っている」と発言したのは、こうした時代背景の延長線上にあると解釈できる言葉と聞くべきであろう。
 日米両国の記者はホワイトハウス詰めも官邸詰めもこうした史実を理解しないまま、「やれ謝罪だ」と騒いでいるが、浅薄だ。政治家は時にボディーランゲージを読む事が必用なのだ。オバマが慰霊碑に献花すること自体が謝罪なのである。加えて核廃絶の演説で、感極まって涙を流すことも考えられる。そうすればその涙の一滴が謝罪なのである。もちろん言葉などは必要ない。
 ホワイトハウスは、オバマの広島訪問決定にあたって極めて慎重な態度を取った。とりわけ日本国民の反応を見極めるために、ジョン・V・ルース大使、次いでケネディ大使を「原爆の日」の平和記念式典に派遣して様子を見た。加えて最後に国務長官・ケリーに献花させた。いずれの大使からもケリーからも、日本国民からの反発が感じられないとの報告を得たのであろう。ホワイトハウスは日本人の国民性をまだ理解していなかったのだろう。西欧も中東も半島も世界の民族はその多くが復讐のための戦争に血道を上げてきた。世界の歴史は報復の歴史だ。その尺度からすれば日本人も原爆の復讐を考えるのではないかと思うのは無理もない。しかし日本は明治以来「復讐」の為の戦争はやっていない。加えて日本国民の感情の根底には「現状を受け入れる潔さ」とも言うべき「諦観」のDNA(遺伝子)があるのだ。これは度重なる地震や台風など大災害を経て培われたものであり、空襲も一種の大災害とうけ止める諦観である。諦観があっての上での大災害からの復興であり、戦争の荒廃からの復興であったのだ。諦観を経たうえで前向き姿勢を取る民族なのだ。これが理解できないと「オバマを受け入れる潔さ」への解釈が困難だ。ホワイトハウスは勉強した方がいい。


◎俳談

◎俳談
【芸術を詠む】 
 俳句の対象に制限はない。もちろん芸術も文学も対象になる。
秋灯下妻がまた読む赤毛のアン 東京俳壇入選
  小説ばかりではない、俳句は芸術家を詠んでも様になる。
シャガールの宙浮く二人春一番 東京俳壇1席
 なぜ宙に浮くのか。春一番が吹いたのだと解釈する。夏の暑い夜は冷房をがんがん入れてリルケを読む。もっと熱くなるが心頭滅却すれば火もまた涼しだ。
暑き夜はリルケを読みて生くるかな 日経俳壇入選
そして信州に行くと、夜にバッハをヘッドホーンで聞く。満天の星空の下で聞くのだ。信州の山々がシルエットで浮かび夏の星座が刻々と動く。聞き貯めをしようと、毎晩4時間は聞く。早く避暑の夏よ来い。
バッハ聞く夏の星座のその下に 東京俳壇一席
 秋の暮れともなると街を歩くにも深刻そうな顔が似合う。ルオーのキリストのような顔をして歩くと様になるが、それほど縦長でないからなかなか真似できない。
暮の秋ルオーの顔のごとく行く 朝日俳壇入選