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やぶにらみの政局占い! Name:浅野勝人 NEW! Date:2015/09/29(火) 23:26 

[4625] やぶにらみの政局占い! Name:浅野勝人 NEW! Date:2015/09/29(火) 23:26 
 
やぶにらみの政局占い!
安保政策研究会理事長 浅野勝人  

私は、ある時期から政権の勢いを測るには支持率より不支持率の方が、世論の実勢をより正確に示していると気づきました。不支持率の動向は、その政権の行方を比較的正確に予測します。
もう少し、蘊蓄(うんちく)を傾けると、支持率が不支持率を上回っている時は政権が安定していることを示し、逆に支持、不支持が逆転した場合は、政権が危険水域に近づいたことを暗示します。当たり前のことではないかとおっしゃいますが、「コロンブスの卵」です。メデイアの皆さん方は、通常、支持率が何パーセントかによって政局の動向を占う判断としています。勢い不支持率の分析を蔑(ないがし)ろにしがちです。
心理学者の見解通り、人は賛成すると決める気軽さよりも、反対を決心する時の方がより強度の意識を伴います。従って、支持不支持の逆転現象は、賛成者の中のかなりの人が強い認識をもって思考を転換しないかぎり起こりません。

安倍政権は、先日(2015/6月)、朝日新聞の世論調査で支持率が40%を切って39%になりました。一時70%と驚異的な支持率を誇っていた政権にしては、半減に近づいており、危険信号ではありますが、まだ支持が不支持をわずかに上回っています。安保法制が、安倍好みのタカ色で、戦争をし易くするための措置と映っている現状からみれば、ビックリする数字ではありません。
ところが、今朝(2015/7月6日)の毎日新聞は世論調査の結果を「安倍内閣不支持上回る」と1面トップで伝えました。
5月の前回調査から支持率は3ポイント落ちて42%。問題なのは不支持率が7ポイント増えて43%になった結果、支持不支持が逆転したことです。たった1%の逆ザヤとみくびると世論の深層を見誤ります。
安保法制の内容および扱い方については反対・賛成が2対1で従来通りです。ところが、自分たちにとって気に食わない報道をする新聞社はつぶせと言い放った自民党国会議員の報道威圧発言については、「問題だ」「問題ではない」が76対15、つまり5対1ですから、安保法制に“思い上がり発言”が加算されて逆転したのは明らかです。
この問題に関する大部分の人の認識は「開いた口が塞がらない」と述べた林芳正農水大臣と同じ思いです。そして、右翼趣味の作家と民主主義の根幹を勘違いしている幼稚な国会議員に、こんなに住みよい豊かな社会が踏みにじられてはたまらないと思った人たちの数字です。

賛否が問われる政治課題として前代未聞の現象となったのは、発言そのものが論外だったことに加えて、安倍総理が、当初「私的な勉強会で、自由闊達な議論があってもいい」と述べて問題視するのを避けたこと。麻生副総理が「不用意な発言は国会運営の足を引っ張るだけ」と述べて、威圧発言の内容を戒めなかったことが世論の反発に輪をかけたのは否めません。
確かに支持不支持の逆転現象を政権維持機能の危険水域への接近と申しましたが、この指摘は今のところ安倍政権には当たりません。理由は、自民党の支持率に変化がないこと。支持率二ケタの野党が存在しない「野党不在」という稀有な時代背景によります。
ただ、同時に、この政治現象は、自民党に思い違いさせる原因にもなっています。つまり、総選挙で他に投票したいと思う政党が存在しないから、より益(ま)しだと思う自民党に投じられている「消極的支持」を「積極的支持による圧勝」と勘違いしている点です。

直近の調査で、久しぶりに無党派層と呼ばれる「支持政党なしグループ」が自民党に代わって第1党に返り咲いたことが、この事情を裏付けています。無党派の多数を占める「政治的無関心層」は高学歴層によって構成されています。無党派には、もともと政治に無頓着で全く関心のない層も含まれていますが、政治学の分野で、ポリティカル・アパシー:政治的無関心層という場合、知的レベルが高く、政治的社会的現象に強い関心と理解力があって独自の見解を持ち合わせているけれども、現状の政治情況に失望ないしは飽き足らず、関心がない振りをしている層のことをいいます。現代の政治情況にピッタリ当てはまる政治学の理論です。ですから、第1党となった無党派層は、ビクともしないと思っている「不動の山」を一挙に動かす不気味な政治的マグマです。そして、この巨大なマグマは、ある一定の限界を超えると突然爆発し、公明党が指摘する「オウンゴール」程度ではとても収まりません。

野党不在に安住して、憲法を軽んじ、国の基本方針を決めるのは総理大臣でも、国会議員でもない、国民有権者だという常識を弁(わきま)えず、安保法制(国政)をぞんざいに扱うと何が起きるかわからない素地を「支持不支持逆転現象」が秘めていることだけは間違いないと指摘しておきます。


内閣支持率に1%の逆ザヤが生じてからちょうど2ヶ月。安保関連法が混乱の中で成立しました。(2015/9月19日)
反対デモは、国会議事堂の周辺にとどまらず、全国主要都市で連日行われましたが、参加人員は少なく、穏やかでした。
55年前、私が大学4年生の時、岸内閣を退陣に追い込んだ全学連を中心とする安保改定反対闘争、いわゆる「60年安保」騒動の折のデモ隊とは比較になりませんでした。あの時は、職業革命家気取りのリーダーがはびこり、セクト間の争いが絶えず、人々はテレビ、新聞の報道に顔を背け、結局、国民から見放されました。言い換えると、無党派層から相手にされない反政府運動でした。
確かに、今回のデモは、60年安保の規模とは比べものになりませんが、お年寄りや普通のおばさんの参加が目立ちました。「戦争法案反対」「憲法を無視するな」「平和な国を守ろう」といった類の素朴なプラカードを掲げて、人生で初めての経験をしているという感じの人たちが少なくありませんでした。あの時との決定的な違いは、テレビ・ニュース、新聞報道を通じて、無党派層の共感が得られるかもしれない雰囲気だったという点です。

安保関連法強行成立2日後の21日、各紙は一斉に19、20両日に行った全国緊急世論調査を1面トップに掲載しました。
安保法制に批判的な朝日新聞  数字は%、( )は前回の数字。
① 安倍内閣 支持35(36) 不支持45(42)
② 政党支持率 自民33(36) 民主10(10) 維新2 (2) 
公明3 (3) 共産4(4) 社民1(1) 支持政党なし37(37)
③ 安保関連法 賛成30(29) 反対51(54)
④ 国会の強行採決 よかった16 よくなかった67
⑤ 憲法に違反している 51 違反していない 22 

毎日新聞
①  支持35(32) 不支持50(49) 
②  自民27(28) 民主12(9) 維新3(6) 公明4(4)
 共産5(4) 社民1(1) 支持政党なし38(38)
③  賛成33(43) 反対57(57)
④  よかった24 よくなかった65
⑤  憲法違反60(61) 違反していない24 (28) 
共同通信
① 支持38.9(43.2) 不支持50.2(46.4)
② 自民32.5(35.0) 民主9.5(10.5) 維新2.8(4.7)
公明3.8(2.5) 共産3.9(5.0) 社民1.5(0.9) 
支持政党なし43.6(39.2)
③ 賛成34.1(31.1) 反対53.0(58.2)
④  よかった14.1  よくなかった79.0
⑤  憲法違反50.2(55.1) 違反していない31.8(30.4)


安保関連法に賛成の立場の読売新聞
①  支持41(45) 不支持51(45)
②  自民33(37) 民主11(10) 維新3(3) 公明3(3)
 共産4 (4)  社民1(1) 支持政党なし42(39)
③  賛成31 反対58
④  よかった30  よくなかった60
⑤  調査対象にない

この時期、各紙の投書欄に目を通して、賛否両論の代表的な例を拾ってみました。

「 安保法制の整備はやむを得ない(愛知県、56才、男性)
安保関連法が成立したが、批判の声も多い。だが、私はこの法律に積極的に反対する気持ちにはならない。
 日本国憲法の第9条がこれまで果たしてきた役割は大きかったと思うが、複雑な国際情勢は9条があれば解決するという状況にはない。現実問題として、近隣の国が過去に拉致事件を起こしたり、反日暴動をあおったりしてきた。
 こうした中で、不法行為に対する備えが出来ていることを示すために、安保法制を整えるのはやむを得ない。そのようなところまで、現状は来ているのではないだろうか。
 「徴兵制が復活する」「日本が他国を侵略する」と想像する人もいるようだが、私はそのようなことが実際に起こるとは思っていない。しかし、拉致も領海空侵犯も暴動も、想像ではなく近隣国で起こっている事実である。備えあれば憂いなしと考える。」


「 国会周辺デモに初めて参加した(埼玉県、66才、女性)
 安保関連法案の採決が大詰めを迎えていた18日、国会周辺のデモに初めて参加した。老若男女の集う穏やかなデモだった。1人で参加しているのは私だけではなかった。
 若い頃、祖父母や父、母が「なぜ、戦争に反対しなかったのか」理解できなかったが、政治に失望していたからだと今はわかる気がする。だから、自分に出来ることは何かと考えてデモに参加した。 
デモの現場では、様々な人が国を思い、平和を思い、民主主義を大切に思う気持ちを訴えていた。若者もスマホを置いて、肉声で叫んでいた。世代を超えた共通の思い、共通の言葉がそこにはあった。『若者言葉』は分からないとよく言われるが、しっかり自分の思いをつたえている姿を見て、うれしくなった。彼らと共に平和を語り、
守っていく責任を感じた。
 2015年安保は、平和に慣れて忘れていた「共通の思い」を、すべての世代に思い出させてくれたのではないだろうか。」


56才氏は、集団的自衛権の行使は最小限必要だと考えている消極的自民党支持者でしょう。来年の参議院議員選挙では、自分の納得する新しい保守党が存在していない限り自民党に投票します。
66才さんは、たった一人でデモの参加したことから推測すると、安保関連法は日本の平和を脅かす戦争法案だと懸念している無党派でしょう。来年の選挙では、安保関連法に明確に反対した野党に投票します。
この二人の心情は世論調査に微妙且つ巧みに反映されています。
安倍首相に対する支持率の減少に反比例して不支持率が増え、逆ザヤの幅が、二桁半ばまで広がりました。
 安倍人気に対する陰りが明白なのに、自民党の支持率は微減にとどまっています。6割~7割の人が、安保関連法案に反対しており、7割~8割の人が、強行採決を繰り返した国会運営を批判しているのに、その意向に沿って徹底抗戦した民主、共産両野党の支持率は、微増、微減でまるで反映されていません。安倍首相が「ある程度の支持率下落は想定の内」と覚悟している根拠でしょう。
 
ただ、はっきりしていることは、無党派層が、断然、第1党を占め、第2党の自民党に11%(毎日、共同)も水をあけている点です。
なんともやっかいな世論の複雑な心理動向ですが、安倍政権の重要政策の扱いをめぐる政局運営に批判的な層が増えてはいるものの、野党が受け皿になっていないと分析するのが妥当でしょう。

それなら、これからどうなるか。
一層大きな塊に育つ気配の“無党派層の動向”がカギを握っているのは間違えありません。安保一辺倒から転換して経済政策を重視する安倍首相の回帰路線が、無党派マグマを鎮めることが出来るかどうかにかかっています。
毎日新聞の7/6の世論調査では、安保関連法案に反対している層の内閣支持率は21%ありましたが、法案成立後の調査では「成立を評価しない」層の内閣不支持率は79%に達し、支持率は8%に止まりました。
首相官邸は「支持率低下は予想の範囲内。法案反対の層はもともと安倍批判票で織り込み済み」と受けとめていると想像されます。
ただ、安倍政権に対する報道姿勢が違っているどのメデイアも、その相違に関わりなく内閣不支持率の傾向が共通している現況は軽視できません。

ですから、支持率の回復は、起死回生の新たな経済政策による景気の押し上げが功を奏するかどうかにかかっています。それを測るわかり易いバロメーターは株価です。高値から日経平均3,500円も下落(9月末現在)しているままでは八方ふさがりの死にたい内閣です。業種別に散在する比較的業績がいいのに株価が不当に安い中低位株人気相場をテコに、年内に2万円を回復して、参議院選挙前には2万2、000円台になっていないと経済回帰の名目は立ちません。
アベノミクス、「ク」の字が欠けたら「安倍のミス」に終わったら政権の寿命でしょう。(2015/9月29日、元内閣官房副長官)

ヴェルサイユ便り 安保政策研究会 常務理事 寺田輝介


ヴェルサイユ便り

安保政策研究会 常務理事 寺田輝介

本年も6月下旬より8月下旬まで夏休みをフランス・ヴェルサイユ

市で過ごすことになった。

7月まではそれなりに賑わっていた街も8月に入ると、多くの店舗

がシャッターを降ろし、人通りも少なくなる。本格的なバカンス・

シーズンの到来である。フランス政府閣僚も二週間の休暇をとる。

わが家のアパートの近くにあり、重宝にしていたパン屋も20日間の

バカンス休業に入った。8月特に目に付くのがヴェルサイユ宮殿に

観光客を運ぶ観光バスの急増である。バスの窓越しから見える顔付

きは最近とみに東洋系が多くなっていることに気が付く。観光バス

の往来を除けば、8月のヴェルサイユ市は休眠状態に入ったようで

昨年の夏は、悪化の一路を辿ったウクライナ情勢が欧州国民にと

り最大の関心事であったが、今年の夏は、殆んど話題になることも

なかった。代わってギリシャ債務危機問題が欧州国民に深い懸念を

与える重要案件として浮上してきた。当地ヴェルサイユで観測して

いた筆者にとっては、ギリシャ債務危機をめぐるEUの動きは、欧州

を舞台とする一大ギリシャ・ドラマの展開のように見えた。

筆者がフランスに着いた時(6月下旬)、現地メディアは次の通

り報じていた。

EUに第三次金融支援を求める急進左派チプラス政権とEUとの交渉

は当初より難航を極めている。ギリシャ政府は過去2度にわたって

、EUの緊急財政支援を受けてきたが、受け入れ条件として欧州中央

銀行、欧州委員会、国際通貨基金(「トロイカ」)の監督の下での

緊縮財政措置の実施(付加価値税の増税、年金の削減等)を飲まさ

れてきた。経済の回復は遅々として進まず、経済環境は悪化するば

かりであり、ギリシャ国民のトロイカ主導の緊縮財政政策に対する

不満は爆発寸前であった。この様な背景の中で、本年1月総選挙が

実施された。反緊縮を掲げる野党の急進左派連合(シリザ)が勝利

を納めたのは当然の成り行きであった。かくして急進左派のチプラ

ス政権が誕生した。チプラス政権がEUに対し激しく抵抗したことは

総選挙の経緯から見れば自明の理である。対EU交渉の先頭に立った

のがチプラス政権にあって最強硬路線を主導するバルファキス財務

相であった。当時フランスのメデイアが連日徹底抗戦を試みる同財

務相をセンセーショナルに報じていたことが筆者にとり印象的であ

 ギリシャ政府は徹頭徹尾EUに抵抗していたが、ギリシャのIMFに

対する借款返済期限が6月30日と迫りつつあり、加えてギリシャの

財政危機が深刻化しているのを見て、欧州のメディアはギリシャ政

府の抵抗も結局のところ軟化するのではないかと観測していた。し

かしチプラス首相は6月26日、予想外の行動に打って出る。7月5日

に国民投票を実施し、ギリシャ支援の前提となる財政緊縮・行政改

革実施の是非を国民に問うと発表したのである。当然EU側は反撥、

ギリシャとの交渉打ち切りを決定する。チプラス首相の突然の発表

は、シヨック・ウェーブとなって、EU諸国を揺さぶり、メディアも

興奮ぎみに大きく報ずるところとなった。メディアの関心は、「ギ

リシャはEUを離脱するのではないか」との点に集中した。フランス

の「ル・モンド」紙にいたっては、7月5日―6日付で「欧州の未来は

アテネにかかっている」との見出しの下に一面トップ記事を掲載す

ると共に、16頁に及ぶ「ギリシャ問題」の大型特集を発行するほど

であった。

7月5日の国民投票で、61.31%が「緊縮NO」を投じたことは、1月

の総選挙結果から見れば予想通りのところであったが、興味深い点

は、国民投票実施前の世論調査(6月28日ギリシャ「トビーマ」紙

が実施)で67.8%がEU圏残留を表明したのに止まらず、国民投票後

でも70%の残留支持があったことである(7月10付「ル・モンド」

紙)。5日の国民投票の結果が判明するや否や、チプラス首相は

、EUに対し外交的ゼスチャーを示すべく、反緊縮の旗の下に極めて

攻撃的であり、EUの交渉相手に嫌悪されてきたバルファキス財務相

を即日解任し、EUとの交渉再開を求める方針を内外に鮮明にした。

 EUはギリシャの要請を受け入れ、ユーロ圏財務相会合を開くと共

に、7月13日にユーロ圏首脳会合開催に踏み切ることになるが、こ

の間の舞台裏を取材したフランス各紙(「ル・モンド」、「フィガ

ロ」、「レ・ゼコ」)の報道振りを取り纏めてご紹介しよう。

 EUのギリシャ支援をめぐる交渉は、とどのつまり緊縮財政の維持

に固執するメルケル首相及び超強硬派のショイブレ財務相と反緊縮

を旗印に政権を獲得したチプラス首相との間の激しい葛藤であった

。EU内部にも「南北対立」が生まれた。ドイツの主張に組みするフ

ィンランド、スロバキア、ポーランド等「北」の欧州諸国に対し、

イタリア、スペイン、ポルトガルの「南欧」諸国は、経済成長と雇

用創出のためには財政支出は止むを得ないと主張し、宥和的態度を

執っていた。無論チプラス首相は、強硬派のメルケル首相に対し

、5日の国民投票により強い支持を得た「緊縮反対」政策を錦の御

旗に掲げ、徹底抗戦の構えであった。この相対立する二人の宰相の

間に入って「留め役」を演じたのがフランスのオランド大統領であ

った。フランスの国益は、あくまでもギリシャのユーロ圏離脱を防

ぎ、EUの「連帯」を維持し、フランスのEU内の盟主の地位を維持す

ることにあり、この為メルケル首相とチプラス首相との間で仲介役

を目指すことになる。

 オランド大統領は、ギリシャ危機発生以来、メルケル首相と常に

密接な連絡をとっていた。欧州メデイアが特に注目したのは、EU首

脳会合開催に先立ち、ギリシャの国民投票の結果が判明したその翌

日、パリ・エリゼ宮で独仏首脳会談が開かれたことであった。会談

内容については一切報じられていない。筆者の観測では、当然のこ

とながら、オランド大統領はメルケル首相に対しEU連帯の必要性を

強く訴え、ギリシャのユーロ離脱を避けるためのドイツの譲歩を求

めたと思われる。もっともフランスにとってもギリシャのユーロ離

脱を許せば、市場の次のターゲットがユーロ危機から回復途上にあ

る南欧諸国だけでなく、自国にも向かう恐れがあることもオランド

大統領の念頭にあったであろう。オランド大統領が、ドイツが最後

までギリシャに最大限の財政緊縮策の実行を求め、これを受諾出来

ないチプラス首相が国民投票による国民の信託を大義名分にユーロ

離脱を宣言した場合、その責はドイツが負うことになるとメルケル

首相に外交的圧力を掛けたことは想像するに難くない。一方メルケ

ル首相にとっては、ドイツが独仏関係を基礎にEU連帯の中で指導的

地位を占めることが国益であり、財政問題でギリシャをEUから追い

出すことはナチス・ドイツ時代の強圧的行為の再現と見なされ兼ね

ず、あくまでも回避すべきであると考えていたであろう。

 「留め役」のオランド大統領は、チプラス首相とも密接な関係を

維持していた。両者の関係には、同じ社会主義陣営に属するとのイ

デオロギー上のよしみに加え、地中海文化を共有するとの親近感が

あると見られる。報道によれば、チプラスは国民投票実施を発表す

る直前にオランドに内報したのみならず、7月5日国民投票の結果が

判明するや否やオランドに電話を入れたようである。その際オラン

ドはチプラスに「僕は君を助ける用意がある。だが君を助けるため

には、僕を助けてくれ」と発言したと言われている(7月7日付「ル

・モンド」紙)。

 ところで、チプラス首相が国民投票実施を決めた政治的動機は、

あくまでもEUとの交渉を有利に進めるための「弱者の恐喝」であり

、EUを離脱する覚悟は当初よりなかったことである。既に仏紙「ル

・フイガロ」は6月30日付社説で「チプラスの国民投票は、直接民

主主義の下にカモフラージュされた政治的行為であり、見せかけで

ある」と喝破していた。
 第三次ギリシャ金融支援交渉は、7月12日(日)午後5時よりブリ

ュッセルで開始されたユーロ圏首脳レベルの交渉において、徹夜を

含め16時間に及んだ長丁場の交渉の末、大筋の決着を見た。

最後までメルケル首相とチプラス首相が激しく対立したのは、首

脳会合の下準備にあたったユーロ圏財務相会合でドイツのショイブ

レ財務相が500億ユーロ相当の民有化基金の創設を求める提案を突

然提出、同提案がそのまま首脳会合の議論の俎上に載せられたため

であった。チプラス首相は、民有化基金の創設はギリシャの主権を

侵すものとして、これに強く反対した。他方メルケル首相は、ギリ

シャに対する金融支援継続に反対するドイツ議会を宥めるためにも

、シンボリックな勝利と見做し得る「民有化基金創設」をベルリン

に持ち帰りたいと云う政治的願望を強く抱いていた(7月21日付「

ル・モンド」紙)。首脳会合は3回中断した。その都度トゥスク首

脳会合常任議長、オランド大統領、メルケル首相、チプラス首相の

四人が鳩首協議をこらした。当然「留め役」のオランド大統領が持

前の調整能力を発揮したと見られるが、ポーランド出身のトゥスク

~ユーロ圏首脳会合。そしてドラマの幕引き~

議長の果たした役割も評価されるべきであろう。16時間続いた交渉

で、チプラス首相はEUが要求した財政緊縮・改革案を全て受け入れ

たが、「基金」の創設問題には最後まで抵抗していた。徹夜交渉で

疲労困憊したメルケル、チプラス両首相が決裂寸前に合意したのは

、500億ユーロ「基金」の半分をギリシャの銀行の資本強化のため

の借款に充当させ、残余をギリシャの経済成長と債務の減殺に充て

るとの妥協案であった。かくして開始してから16時間に及んだ首脳

会談は翌日(7月13日月曜日)午前9時直前に終結した。

交渉を振り返って見ると、チプラス首相が最後に折れたのは、メ

ルケル首相に最後まで抵抗すれば、ユーロ圏離脱を迫られることが

現実味を帯びてきたことに加え、6月下旬に国民投票を口実に対EU

交渉を中断させて以来ギリシャの国内銀行が休業に追い込まれ、ギ

リシャ経済と国民生活の混乱が大きくなってきたことを自覚せざる

を得なかったためであろう。チプラス首相がこれ程激しく抵抗した

「基金」であるが、前掲の「ル・モンド」紙は、「この基金の500

億ユーロと言う額は、まったくの架空の数字である。会議に出席し

た者は全て、ギリシャはパンテオン宮殿、アクロポリス、そして若

干の島礁を売却せざる限り、こんな巨額な資金を捻出できる筈はな

いと見ている」と報じていた。何とも皮肉な話ではなかろうか。

首脳会合の基本合意を踏まえ、8月14日財務相会合が開かれ、今

後3年間で最大860億ユーロ(約11兆9000億円)の金融支援が正式に

決定され、からくもギリシャの財政破綻そしてユーロ圏離脱は回避

された。夏の「ギリシャ・ドラマ」は斯くして幕を閉じた。
今次ギリシャ債務危機については、主として経済・財政面から詳

細に報道されてきたが、前記ル・モンド紙の「ギリシャ特集」は

、「ギリシャのユーロ圏離脱が意味する地政学的危険」と題する記

事を掲載していたので、簡単にその要旨をご紹介する。

「ギリシャ危機発生以来、地政学的重要性の議論が全面的に無視

されている。ギリシャのクレタ島スダアには米国第6艦隊の重要拠

点港がある。安定したギリシャはバルカン半島の安定に寄与できる

。弱体化したバルカン半島にロシアが食指を動かしているのに加え

、イスラム過激派も手を伸ばしている。地中海を越えて欧州に入国

を試みる難民・不法移民の入境地点はギリシャにある。加えて中国

はギリシャを新シルクロードの欧州の入口と考えている。ロシアは

ギリシャのユーロ圏離脱によってもたらされる戦略的利益に関心が

ある他、新パイプライン構想のトルコ・ストリームにギリシャを取

り込むことにも関心を強めている」。

今年のヴェルサイユの夏は、過ごしやすい「冷夏」であったが、

ギリシャ債務危機をフォローする筆者にとっては「熱い夏」であっ

た。ギリシャの債務危機は一応遠のいたものの、ギリシャ国内政治

の不安定性、経済の不調、更に返済不能の債務額を考えると、遠か

らず債務危機が再発することが危惧される。

 筆者が帰国の準備を始めた8月下旬になると、今度は難民・不法

入国者問題がEU諸国全体を取り込む問題となってきた。連日メディ

アで大きく取り上げられるようになり、どうやらこれから秋にかけ

て最大のイシューとなる気配である。――ヴェルサイユにて

。2015・8・27記。(元メキシコ駐在日本大使。元韓国駐在日本大使

        ヴェルサイユ便り

安保政策研究会 常務理事 寺田輝介

本年も6月下旬より8月下旬まで夏休みをフランス・ヴェルサイユ

市で過ごすことになった。

7月まではそれなりに賑わっていた街も8月に入ると、多くの店舗

がシャッターを降ろし、人通りも少なくなる。本格的なバカンス・

シーズンの到来である。フランス政府閣僚も二週間の休暇をとる。

わが家のアパートの近くにあり、重宝にしていたパン屋も20日間の

バカンス休業に入った。8月特に目に付くのがヴェルサイユ宮殿に

観光客を運ぶ観光バスの急増である。バスの窓越しから見える顔付

きは最近とみに東洋系が多くなっていることに気が付く。観光バス

の往来を除けば、8月のヴェルサイユ市は休眠状態に入ったようで

ある。

昨年の夏は、悪化の一路を辿ったウクライナ情勢が欧州国民にと

り最大の関心事であったが、今年の夏は、殆んど話題になることも

なかった。代わってギリシャ債務危機問題が欧州国民に深い懸念を

与える重要案件として浮上してきた。当地ヴェルサイユで観測して

いた筆者にとっては、ギリシャ債務危機をめぐるEUの動きは、欧州

を舞台とする一大ギリシャ・ドラマの展開のように見えた。

以下「ヴェルサイユ便り」をお届けする。

~EUに対するギリシャ政府の反撥~

筆者がフランスに着いた時(6月下旬)、現地メディアは次の通

り報じていた。

EUに第三次金融支援を求める急進左派チプラス政権とEUとの交渉

は当初より難航を極めている。ギリシャ政府は過去2度にわたって

、EUの緊急財政支援を受けてきたが、受け入れ条件として欧州中央

銀行、欧州委員会、国際通貨基金(「トロイカ」)の監督の下での

緊縮財政措置の実施(付加価値税の増税、年金の削減等)を飲まさ

れてきた。経済の回復は遅々として進まず、経済環境は悪化するば

かりであり、ギリシャ国民のトロイカ主導の緊縮財政政策に対する

不満は爆発寸前であった。この様な背景の中で、本年1月総選挙が

実施された。反緊縮を掲げる野党の急進左派連合(シリザ)が勝利

を納めたのは当然の成り行きであった。かくして急進左派のチプラ
ス政権が誕生した。チプラス政権がEUに対し激しく抵抗したことは

総選挙の経緯から見れば自明の理である。対EU交渉の先頭に立った

のがチプラス政権にあって最強硬路線を主導するバルファキス財務

相であった。当時フランスのメデイアが連日徹底抗戦を試みる同財

務相をセンセーショナルに報じていたことが筆者にとり印象的であ

った。

~チプラス首相の反撃ドラマ~

 ギリシャ政府は徹頭徹尾EUに抵抗していたが、ギリシャのIMFに

対する借款返済期限が6月30日と迫りつつあり、加えてギリシャの

財政危機が深刻化しているのを見て、欧州のメディアはギリシャ政

府の抵抗も結局のところ軟化するのではないかと観測していた。し

かしチプラス首相は6月26日、予想外の行動に打って出る。7月5日

に国民投票を実施し、ギリシャ支援の前提となる財政緊縮・行政改

革実施の是非を国民に問うと発表したのである。当然EU側は反撥、

ギリシャとの交渉打ち切りを決定する。チプラス首相の突然の発表

は、シヨック・ウェーブとなって、EU諸国を揺さぶり、メディアも

興奮ぎみに大きく報ずるところとなった。メディアの関心は、「ギ

リシャはEUを離脱するのではないか」との点に集中した。フランス

の「ル・モンド」紙にいたっては、7月5日―6日付で「欧州の未来は

アテネにかかっている」との見出しの下に一面トップ記事を掲載す

ると共に、16頁に及ぶ「ギリシャ問題」の大型特集を発行するほど

であった。

7月5日の国民投票で、61.31%が「緊縮NO」を投じたことは、1月

の総選挙結果から見れば予想通りのところであったが、興味深い点

は、国民投票実施前の世論調査(6月28日ギリシャ「トビーマ」紙

が実施)で67.8%がEU圏残留を表明したのに止まらず、国民投票後

でも70%の残留支持があったことである(7月10付「ル・モンド」

紙)。5日の国民投票の結果が判明するや否や、チプラス首相は

、EUに対し外交的ゼスチャーを示すべく、反緊縮の旗の下に極めて

攻撃的であり、EUの交渉相手に嫌悪されてきたバルファキス財務相

を即日解任し、EUとの交渉再開を求める方針を内外に鮮明にした。~ユーロ圏内の葛藤~

 EUはギリシャの要請を受け入れ、ユーロ圏財務相会合を開くと共 に、7月13日にユーロ圏首脳会合開催に踏み切ることになるが、こ

の間の舞台裏を取材したフランス各紙(「ル・モンド」、「フィガ

ロ」、「レ・ゼコ」)の報道振りを取り纏めてご紹介しよう。

 EUのギリシャ支援をめぐる交渉は、とどのつまり緊縮財政の維持

に固執するメルケル首相及び超強硬派のショイブレ財務相と反緊縮

を旗印に政権を獲得したチプラス首相との間の激しい葛藤であった

。EU内部にも「南北対立」が生まれた。ドイツの主張に組みするフ

ィンランド、スロバキア、ポーランド等「北」の欧州諸国に対し、

イタリア、スペイン、ポルトガルの「南欧」諸国は、経済成長と雇

用創出のためには財政支出は止むを得ないと主張し、宥和的態度を

執っていた。無論チプラス首相は、強硬派のメルケル首相に対し

、5日の国民投票により強い支持を得た「緊縮反対」政策を錦の御

旗に掲げ、徹底抗戦の構えであった。この相対立する二人の宰相の

間に入って「留め役」を演じたのがフランスのオランド大統領であ

った。フランスの国益は、あくまでもギリシャのユーロ圏離脱を防

ぎ、EUの「連帯」を維持し、フランスのEU内の盟主の地位を維持す

ることにあり、この為メルケル首相とチプラス首相との間で仲介役

を目指すことになる。

 オランド大統領は、ギリシャ危機発生以来、メルケル首相と常に

密接な連絡をとっていた。欧州メデイアが特に注目したのは、EU首

脳会合開催に先立ち、ギリシャの国民投票の結果が判明したその翌

日、パリ・エリゼ宮で独仏首脳会談が開かれたことであった。会談

内容については一切報じられていない。筆者の観測では、当然のこ

とながら、オランド大統領はメルケル首相に対しEU連帯の必要性を

強く訴え、ギリシャのユーロ離脱を避けるためのドイツの譲歩を求

めたと思われる。もっともフランスにとってもギリシャのユーロ離

脱を許せば、市場の次のターゲットがユーロ危機から回復途上にあ

る南欧諸国だけでなく、自国にも向かう恐れがあることもオランド

大統領の念頭にあったであろう。オランド大統領が、ドイツが最後

までギリシャに最大限の財政緊縮策の実行を求め、これを受諾出来

ないチプラス首相が国民投票による国民の信託を大義名分にユーロ

離脱を宣言した場合、その責はドイツが負うことになるとメルケル

首相に外交的圧力を掛けたことは想像するに難くない。一方メルケ

ル首相にとっては、ドイツが独仏関係を基礎にEU連帯の中で指導的

地位を占めることが国益であり、財政問題でギリシャをEUから追い出すことはナチス・ドイツ時代の強圧的行為の再現と見なされ兼ね

ず、あくまでも回避すべきであると考えていたであろう。

 「留め役」のオランド大統領は、チプラス首相とも密接な関係を

維持していた。両者の関係には、同じ社会主義陣営に属するとのイ

デオロギー上のよしみに加え、地中海文化を共有するとの親近感が

あると見られる。報道によれば、チプラスは国民投票実施を発表す

る直前にオランドに内報したのみならず、7月5日国民投票の結果が

判明するや否やオランドに電話を入れたようである。その際オラン

ドはチプラスに「僕は君を助ける用意がある。だが君を助けるため

には、僕を助けてくれ」と発言したと言われている(7月7日付「ル

・モンド」紙)。

 ところで、チプラス首相が国民投票実施を決めた政治的動機は、

あくまでもEUとの交渉を有利に進めるための「弱者の恐喝」であり

、EUを離脱する覚悟は当初よりなかったことである。既に仏紙「ル

・フイガロ」は6月30日付社説で「チプラスの国民投票は、直接民

主主義の下にカモフラージュされた政治的行為であり、見せかけで

ある」と喝破していた。

~ユーロ圏首脳会合。そしてドラマの幕引き~

 第三次ギリシャ金融支援交渉は、7月12日(日)午後5時よりブリ

ュッセルで開始されたユーロ圏首脳レベルの交渉において、徹夜を

含め16時間に及んだ長丁場の交渉の末、大筋の決着を見た。

最後までメルケル首相とチプラス首相が激しく対立したのは、首

脳会合の下準備にあたったユーロ圏財務相会合でドイツのショイブ

レ財務相が500億ユーロ相当の民有化基金の創設を求める提案を突

然提出、同提案がそのまま首脳会合の議論の俎上に載せられたため

であった。チプラス首相は、民有化基金の創設はギリシャの主権を

侵すものとして、これに強く反対した。他方メルケル首相は、ギリ

シャに対する金融支援継続に反対するドイツ議会を宥めるためにも

、シンボリックな勝利と見做し得る「民有化基金創設」をベルリン

に持ち帰りたいと云う政治的願望を強く抱いていた(7月21日付「

ル・モンド」紙)。首脳会合は3回中断した。その都度トゥスク首

脳会合常任議長、オランド大統領、メルケル首相、チプラス首相の

四人が鳩首協議をこらした。当然「留め役」のオランド大統領が持

前の調整能力を発揮したと見られるが、ポーランド出身のトゥスク
議長の果たした役割も評価されるべきであろう。16時間続いた交渉

で、チプラス首相はEUが要求した財政緊縮・改革案を全て受け入れ

たが、「基金」の創設問題には最後まで抵抗していた。徹夜交渉で

疲労困憊したメルケル、チプラス両首相が決裂寸前に合意したのは

、500億ユーロ「基金」の半分をギリシャの銀行の資本強化のため

の借款に充当させ、残余をギリシャの経済成長と債務の減殺に充て

るとの妥協案であった。かくして開始してから16時間に及んだ首脳

会談は翌日(7月13日月曜日)午前9時直前に終結した。

交渉を振り返って見ると、チプラス首相が最後に折れたのは、メ

ルケル首相に最後まで抵抗すれば、ユーロ圏離脱を迫られることが

現実味を帯びてきたことに加え、6月下旬に国民投票を口実に対EU

交渉を中断させて以来ギリシャの国内銀行が休業に追い込まれ、ギ

リシャ経済と国民生活の混乱が大きくなってきたことを自覚せざる

を得なかったためであろう。チプラス首相がこれ程激しく抵抗した

「基金」であるが、前掲の「ル・モンド」紙は、「この基金の500

億ユーロと言う額は、まったくの架空の数字である。会議に出席し

た者は全て、ギリシャはパンテオン宮殿、アクロポリス、そして若

干の島礁を売却せざる限り、こんな巨額な資金を捻出できる筈はな

いと見ている」と報じていた。何とも皮肉な話ではなかろうか。

~第三次金融支援の決定~

首脳会合の基本合意を踏まえ、8月14日財務相会合が開かれ、今

後3年間で最大860億ユーロ(約11兆9000億円)の金融支援が正式に

決定され、からくもギリシャの財政破綻そしてユーロ圏離脱は回避

された。夏の「ギリシャ・ドラマ」は斯くして幕を閉じた。

~ギリシャ問題の地政学的側面~

今次ギリシャ債務危機については、主として経済・財政面から詳

細に報道されてきたが、前記ル・モンド紙の「ギリシャ特集」は

、「ギリシャのユーロ圏離脱が意味する地政学的危険」と題する記

事を掲載していたので、簡単にその要旨をご紹介する。

「ギリシャ危機発生以来、地政学的重要性の議論が全面的に無視

されている。ギリシャのクレタ島スダアには米国第6艦隊の重要拠

点港がある。安定したギリシャはバルカン半島の安定に寄与できる

。弱体化したバルカン半島にロシアが食指を動かしているのに加え
、イスラム過激派も手を伸ばしている。地中海を越えて欧州に入国

を試みる難民・不法移民の入境地点はギリシャにある。加えて中国

はギリシャを新シルクロードの欧州の入口と考えている。ロシアは

ギリシャのユーロ圏離脱によってもたらされる戦略的利益に関心が

ある他、新パイプライン構想のトルコ・ストリームにギリシャを取

り込むことにも関心を強めている」。

- - - ― -

今年のヴェルサイユの夏は、過ごしやすい「冷夏」であったが、

ギリシャ債務危機をフォローする筆者にとっては「熱い夏」であっ

た。ギリシャの債務危機は一応遠のいたものの、ギリシャ国内政治

の不安定性、経済の不調、更に返済不能の債務額を考えると、遠か

らず債務危機が再発することが危惧される。

 筆者が帰国の準備を始めた8月下旬になると、今度は難民・不法

入国者問題がEU諸国全体を取り込む問題となってきた。連日メディ

アで大きく取り上げられるようになり、どうやらこれから秋にかけ

て最大のイシューとなる気配である。――ヴェルサイユにて

。2015・8・27記。(元メキシコ駐在日本大使。元韓国駐在日本大使


◎俳談

◎俳談
【意外性の重視】
◆砂日傘北斎の波かぶりたり 東京俳壇2席
 新聞俳壇への投句は選者によって採用の基準が違うから、すみ分ける必要があるが、これは投句者が自然と身につけるしかない。筆者も10年投句やってもまだ、どの選者がどのような俳句を志向しているかは完全掌握できない。しかし総じて言えば、毎週5千句の中から選句するのであるから、どこかで見たような俳句は絶対に採られないし、いわゆる月並俳句では駄目だ。選句は1句1秒とかからない。文字を読むのではなく選者の感性で絵のように感じ取って採るといわれる。いちいち読んでいたら、とても時間が足りない。従って他の句にはない「意外性」を重視しなければならない。掲句もただの高波ではなく「北斎の波」と形容して採用されたと思う。
同様に
◆蝸牛(かたつむり)雨の箱根の関守る 毎日俳談1席
も意外性であろう。
u 遠足やパンパカパーンと弁当開け 読売俳壇1席
も長いオノマトベを短詩の中で広く場所を占拠させる意外性で成功した。

◎日本の安全保障の山が動いた

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◎日本の安全保障の山が動いた
 政権基盤は一段と強化された
  外交・経済で待ったなしの安倍政治
 国の安全保障の山が動いた。戦後の日本の安保政策の大転換である。昭和の講和・安保両条約と並んで国内に一大安保論争を巻き起こした安全保障関連法案が19日未明の参院本会議で成立した。国連憲章が認める集団的自衛権の行使は限定的に容認され、米国との連携で日本の抑止力が圧倒的に強化される。60年安保では、安保改定を成し遂げたものの、デモ隊に死傷者が出たこともあり岸信介は退陣を余儀なくされた。逆に首相・安倍晋三の場合は、奇跡的とも言える造反者ゼロの与党の団結を背景に政権基盤を一層強固なものとした。安倍は超重要法案成立への重圧から解き放たれ、アベノミクスの充実など経済問題と激動期の世界情勢に対処する日本のかじ取りに全精力を集中させる。外交は来年夏の伊勢志摩サミット、内政は参院選への対応がそれぞれターゲットとなろう。
 国際環境の激変を読み取れず完敗した野党の哀れな姿は、19日未明の本会議における民主党安保特別委理事・福山哲郎の反対討論にいみじくもあらわれた。福山は与党のヤジにいちいち神経質に反応し、終いには「あなたたちは武士の情けが分からないのか」と落涙せんばかりとなり、敗軍の現場将校の焦燥ぶりをあらわにした。数において足りないばかりか野党から3党が賛成に回り、民主・共産両党はついに孤立化し、外部勢力を煽る政治の邪道を開始した。しかし、敗北が鮮明になるとデモは次第に少数となり、18日夜はわずか1万1000人しか集まらなかった。やがてはデモも霧散するだろう。
 マスコミはテレビメディアが放送法違反の偏向報道を繰り返し、新聞通信社は朝日、毎日、東京、共同などが著しく左傾化した報道に徹したが、60年安保同様に、これまた敗北の憂き目を見る結果となった。当時は全紙が敗北したが、今回は賛成に回った読売、産経、日経は勝利を手中にした。新法は防衛的性格を主軸に置いており、19日付朝日の見出しのように「海外での武力行使に道」など目的としていない。攻撃的な要素は法案のどこにも見られず、極めて受動的な法案である。であるのに大新聞までが「戦争法案」「徴兵制に結びつく」とデマゴーグを展開するようでは、やがてメディアが心ある国民の支持を得られなくなる事が明白となるだろう。
 祖父と共に世紀の偉業を成し遂げた安倍は、今後50年は続く平和の礎を築いたことになるが、参院選に向けて自民党が組織的に、真摯な姿勢で選挙民に訴えればこれは理解されよう。各地で曲学阿世の売名憲法学者などが違憲立法訴訟を起こそうとしているが、法案成立の過程に瑕疵(かし)は全くなく、新法自体の無効が争われることはない。むしろ内容が争点になるが、最高裁まで到達するには10年かかるだろう。その間の国際情勢の激動は安保法制の正しさを立証する可能性が強く、最高裁は砂川判決と同様に合憲の判断を下すに違いない。
 重要法案を処理したが内外の情勢は安倍に待ったなしの対応を迫る。経済は中国のバブル崩壊がもたらす世界同時株安の流れに、日本はアベノミクスの新規まき直しで対処しなければなるまい。とりわけ再来年4月には消費税が10%となり、景気の足を引っ張るから、それまでに景気回復を確たるものにしなければならない。それにはニュージーランドのごり押しもあって足踏みしている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結も不可欠な要素だ。
 国内政局に与える要素も大きいが、参院選には影響は出ないだろう。あの安保闘争ですら、半年後に池田勇人が断行した総選挙で選挙民は自民党を勝たせて、高度成長期への道を開いている。民主党はシールズを組織的に利用しようとしているが、もともと「こんなところには来たくないけど来た」と言っている連中だ。政党組織として利用しようとしても無理だろう。逆に民主党の体たらくを知るにつれて批判勢力となりかねない。
◆塗り変わる極東戦略地図
 諸外国、特に中国、韓国、北朝鮮は安全保障関連法案の成立過程に注目していたとみられる。なぜなら安倍の力量を測るバロメーターであるからだ。ところが自民党は一糸乱れぬ団結ぶりを示して、安倍を支えた。これは隙あらば日本の領土に手を出そうとする中国と、大都市名指しで核ミサイルのどう喝を繰り返す北朝鮮への大きな抑止力として作用するに違いない。GDP1位と3位の日米同盟の強固な絆は一層固くなったのであり、これが極東の戦略地図を大きく塗り替えることになるのは確かだ。米国は既に安保法案成立を歓迎しており、国力低下の米国にとってこれほど強い味方はないと言ってもよい。
 世界はあの大人しい日本の変容を驚きの眼を持って見詰めており、国際環境の激変を改めて認識していることだろう。とりわけ豪州、フィリピン、ベトナム、インドなど中国の海洋拡張路線に直面する国々は、より一層日本との連携を重視する流れとなろう。ロシアの進出を危惧(きぐ)する北大西洋条約機構(NATO)諸国も、極東の日米同盟が強化されることにより、欧州と東アジアでのロシア封じ込めの形成ととらえることが出来るだけに歓迎している。
  一方安倍は対中、対韓、対露関係の改善に取り組むことになるが、日本の首相はこれまで衣(ころも)の下は裸であった。しかし安保法制は衣の下に鎧(よろい)がちらつく効果をもたらし、抑止力として作用するとともに、安倍外交に力を与える。手始めは10月下旬か11月はじめに韓国で開かれる日中韓首脳会談となろう。さらに安倍はプーチンとの個人的関係を生かして対露関係改善を模索することになる。まず来週のびのびとなっていた外相・岸田文男のモスクワ派遣を実施して、年内にもプーチンを訪日させる瀬踏みをすることになる。またすべての外交活動は、今後伊勢志摩サミットを意識したものとなってゆくだろう。
 安倍の支持率は一時的には下がるだろうが、新聞とはいえ私企業が行う世論調査などに一喜一憂する必要は無い。アベノミクスと好きな外交に専念すれば、自ずと支持率は回復する。本当の世論調査は国政選挙であり、自民党は参院選か衆参同日選挙に向けて態勢を建て直して真の支持率を維持しなければなるまい。内閣改造では、あのひげの隊長・佐藤正久を参院から何らかのポジションに起用すれば内閣支持率に大きく貢献する。当選回数を考慮せず抜擢すべきだと思う。
【筆者より=旅行のため休暇に入ります。再開は10月6日。内政外交で大きな動きが生じれば書きます。】


◎俳談

◎俳談
【曼珠沙華の存在感】
◆鎌倉の沖より見ゆる曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 毎日俳談1席
 鎌倉で船遊びをしたら遠くに赤い花が咲いている。船頭に聞いたら曼珠沙華だというので、その場で作った。曼珠沙華は秋の季語。別名が彼岸花、死人花、幽霊花、捨子花など総じて不吉だが、存在感がある。
 日本の歌曲に北原白秋作詞、山田耕筰作曲「曼珠沙華(ひがんばな)」がある。鮫島有美子の歌で聞くとまさに鬼気迫る。
Gonshan,Gonshan 何処へゆく
赤い お墓の曼珠沙華(ひがんばな) 曼珠沙華
けふも手折りに来たわいな
Gonshan,Gonshan 何本か
地には七本 血のやうに 血のやうに
丁度 あの児の年の数(かず)
「ゴンシャン」とは柳川の方言で「良家のお嬢さん」のこと。歌の意味は様々な説があるが、良家の娘が人知れず妊娠し、堕胎して発狂。7年経ってもまださまよっているという説がピタリのような気がする。暗い感じの季語だが、これを夏目漱石に作らせると
◆曼珠沙華あつけらかんと道の端

◎安保法案成立で日米が極東最大の抑止勢力に

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◎安保法案成立で日米が極東最大の抑止勢力に
 野党は戦後の「安保三大関ヶ原」で敗退
 安全保障関連法案の成立はもはや確定的となった。法案は17日の参院特別委での可決に続き、本会議に緊急上程された。野党は狂ったように様々な議事妨害戦術を駆使して成立阻止の動きを展開しているが、修正協議に合意した与野党5党の結束は固く成立は時間の問題となった。これにより日米の安全保障上の連帯は一段と強化され、日本を取り巻く安全保障環境の悪化に即応できる抑止力が備わることになった。日米防衛協力は世界最強のレベルにまで到達し、極東における抑止力の要となろう。中国や北朝鮮の軍事的野望は抑止され、野党の主張する自衛隊のリスクは、国民のリスクとともに、抑止効果により大幅に軽減される。
 安保法制の審議を大局から俯瞰(ふかん)すると、一貫して露呈したのは民主共産両党による「平和降臨」のユートピア思想である。平和は天から降ってきており、戦争のないユートピアの日本を壊すものは「戦争法案」そのものだとする論理だ。これは60年の安保条約改定の際に社会・共産両党が一貫して主張して敗退、仏壇の奥でホコリを被って眠っていた思想である。民共はこれにはたきをかけて引っ張り出し、安倍政権に廃案を迫った。その根拠はメディアの世論調査に徹底的に依存する「世論調査至上主義症候群」そのものであった。世論調査を「民意」と断定し、その「民意」を水戸黄門の印籠のように掲げて、「国会」と「民意」の乖離(かいり)を際立たせようとする戦術である。しかし議会制民主主義国家における民意とは何か。言うまでもなく国政選挙で表れた議席数である。
 それも首相・安倍晋三は集団的自衛権の行使を原発再稼働と共に選挙公約として掲げ、圧勝して真の民意を獲得したのだ。単に公約として掲げたばかりでなく党首討論や街頭演説でも重要課題として取り上げ、公然と選挙民にその必用を訴えている。その上での議席獲得なのである。メディアはそれを忘れて、「公約と言っても片隅に書かれていた」などと唱えるが、どこに書かれていようと公約は公約である。安保法制で野党の主張への傾斜が著しいNHKは18日の時論公論でも編集委員が「とても法案採決の環境は整っていない状況で成立を図るのは、国会と民意がかなり離れた状況になっていると言ってよい」と主張したが、これは放送法が戒める偏向報道そのものであろう。なぜならNHKが言う民意とは、世論調査と国会周辺のデモのみを指しており、これを国会の議席数への対極に置いているからである。つまり選挙で表れた民意を無視しているのである。この傾向は朝日、毎日、東京など左翼系マスコミに共通して表れる論調であり、公共放送がもっとも慎まなければならないものであろう。NHK編集委員は「立憲主義への危機感とスローガンの分かり安さがデモの求心力を高めている」とデモ隊を礼賛したが、それでは明らかにデマゴーグの象徴である「戦争法案」や「徴兵制反対」のプラカードを、公共放送として是認しているのか。それならそれでNHK会長はその方針を発表して、法改正により偏向報道への国会の承認を得るべきである。
 だいいち「あらゆる手段で法案を廃案に追い込む」とする民主党代表・岡田克也の主張も、自分で自分の首を絞めるものに他ならない。なぜなら岡田はつい最近まで積極的な集団的自衛権の行使容認論者であったからだ。特別委でも暴露されたが岡田は過去に「今の憲法は全ての集団的自衛権の行使を認めないとは言い切っていない。十分整合性を持って説明出来る」と公言しているではないか。公人たるもの、小泉純一郎の唾棄すべき「原発反対論」と同様に、「変節」したなら堂々とその理由を説明し、有権者にわびたうえで言動に結びつけるべきであろう。岡田の政治姿勢には、民主党の置かれた窮地を脱するためにあらゆる問題を「政争の具」とするかつての社会党と同様のさもしい狙いが見える。
 そこには安保法制を国内の「政争の具」として扱い、国の安全保障や、国民の生命と幸福な生活確保が究極の目的の法案であることなどは無視する“手口”が見られる。戦後、安保論争において野党は単独講和か全面講和かの論議や、安保条約改訂の是非をめぐって自民党政権と戦ってきたが、ことごとく敗退したのは、国家・国民は二の次にして、すべてを一部マスコミにこびを売って「政争の具」とする邪心が伴っていたからであろう。NHKの時論公論も最初から最後まで中国とか北朝鮮とかの国名は一度も発言されなかった。そこには野党と左傾化のマスコミに共通した傾向があることを物語っている。
 そもそも安保法制の根源をたどれば、極東の安保環境の激変にたどり着く。北朝鮮は何をするか分からない指導者の下、労働党新聞が日本の都市を名指しで核ミサイルの攻撃対象に挙げている。北の開発する汚い原爆が1つでも東京で爆発すれば、日本は事実上壊滅する。法案反対のデモで息巻くママたちも生きていれば、吾が児を抱いて巷を彷徨(ほうこう)する事態となるのだ。米国が百倍の核爆弾を北に落としても遅いのである。そして中国の9月3日の軍事パレードである。ほとんどのマスコミはこれを批判的に報じたにもかかわらず、安保法制に結びつけることはマスコミも民共両党も故意に避けている。これにはかつて共産党が臆面もなく主張した「中国の核実験はよい核実験」という主張の残滓(し)がうかがわれる。「中国の軍拡はよい軍拡」という、思想である。中国が東・南シナ海で隙あらばと領土・領海・領空の侵犯を狙っていることなど、忘却の彼方だ。
 総じて日本の国民は一時の発熱から正常な健康体へと冷めるのが早い。安倍が安保法制について「法案が成立し、時がたつ中で間違いなく理解は広がる」と洞察している方向が正解であろう。自民党は参院選挙に向けて組織を挙げて安保法制の定着をはかるべきであろう。邪心があるが故に講和条約、安保条約改定、そして安保法制と戦後の「安保三大関ヶ原」で破れた野党は、今後これまでと同様にダッチロールを繰り返しつつ迷走と低迷を続けざるを得ないだろう。


◎俳談

◎俳談
【薄命の象徴蜉蝣(かげろう)】
蜉蝣の軒まで揚がり力尽く 杉の子
 庭で蜉蝣を見つけた。マクロレンズですぐに撮影した。秋の季語である蜉蝣はとんぼより遙かに小さく2センチ程度。よく目を見張らないと見えない。止まっている姿を発見するのは至難の技である。
星野立子が
◆かげろうの歩けば見ゆる細き髭
と詠んだとおりである。動かなければ秋草に融け込んでしまう。2~3年は水中で暮らして、羽化した後の命は数時間というはかなさだ。古来和歌にも詠まれ源氏物語にも薫が宇治の三姉妹との因縁を想い詠んだ和歌
◆ありと見て手にはとられず見ればまたゆくへもしらず消えしかげろふ
がある。同じカゲロウでもでもウスバカゲロウは、あの恐ろしげな蟻地獄の羽化したもの。見にくい一生を、最後に、はかなくも美しいものに変えるのは天の配剤だろうか。
◆蟻地獄悟りしごとくかげろうに 杉の子

◎左翼政党扇動デモの末路は“霧散”

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◎左翼政党扇動デモの末路は“霧散”
  政府・与党は世論調査のからくりに惑わされるな
 安保委員会の採決は17日となったが、徹夜でウオッチしながら、国会を取り巻くデモについて考えた。16日深夜篠突く秋雨(しゅうう)の中、国会前で叫ぶシールズ代表・奥田愛基を見てなぜか60年安保の全学連委員長・唐牛健太郎を思い起こした。華々しく若者の“英雄”として姿を現した唐牛の末路は、共産党に利用されただけで哀れと言うしかない。職業を転々として、漁師や建設作業員までやり、最後は直腸がんで47歳の若さで死んだ。唐牛より知性において劣ると感ずる奥田は、安保特別委の中央公聴会で野党推薦の公述人として国会で意見を述べるなど、今や時の人だが、やはり、唐牛と同様に左翼の政党・マスコミに利用されているかのように見えるのだ。政党のデマ作戦に完全にだまされているデモもスジが悪い。安全保障関連法案成立後は“霧散”だろう。
 奥田の連合主催の集会で首相・安倍晋三を「バカかお前は」と決めつける姿は、左翼からは礼賛され、別の言葉で言えばおだてられ、有頂天になっている姿と映るのだ。その発言も安全保障関連法案について「今国会での可決は無理です。廃案にするしかありません」と述べるが、これも野党の主張をおうむ返しに言っているように聞こえる。内容には全く無知であると感じた。60年安保反対デモに参加した学生のほとんどもファッションとして、いわば時流に乗り遅れまいとして参加し、小生も含めて安保条約の改正点などほとんど知らないものが多かった。慶応の学生が馬鹿だからではない、東大だって早稲田だって同じだった。「安保後」の普通の学生はせいぜい喫茶店「新宿風月堂」にたむろしてジャズが流れる文化的な雰囲気のなかで、安保の余韻を楽しんだものだ。その後風月堂は70年前後からアングラ、反戦運動、新左翼の拠点となり荒廃して誰も寄りつかなくなった。
 今のデモ隊を煽るのは民主・共産両党だ。民主党幹部は「表立つとまずいから目立たないようにやっている」と述べているが、共産党も全く同様だ。裏では組織をフルに使って闘争をリードしている姿が浮かび上がる。馬脚を現したのは、横浜の公聴会会場を取り巻くデモだ。デモ隊は国会議員の車を取り囲んで通れないようにしたが、これは素人の出来ることではない。党員がリードした組織的な行動に違いない。民主党は「戦争法案反対」とか「徴兵制反対」を唱え、最近では朝日新聞まで、徴兵制につながり得ると社説で書いてあおり始めた。このレッテル貼りとデマゴーグだけは、あまりにも卑怯な事実無根の扇動であり、政治家や大手紙としての矜恃は何処にあるのかと思える。
 デモの数に場慣れしない政治家の筆頭が民主党代表・岡田克也だ。岡田はデモの数に興奮したのか、国民のほとんどが「安保廃案」と勘違いしているような演説をした。岡田は16日「1億人の民意を体現する」と述べ徹底抗戦を主張したのだ。その根拠について「8割の国民が今でも説明不足だと言っている。1億人だ。今国会での安保法案成立に反対が6割、7000万人だ」と指摘し、「私たちの後ろには7000万人、1億人がいる。民意をしっかり体現していくために一致団結して努力しよう」と述べたのだ。
 この計算にはあきれるほどの虚飾とこじつけが感じられ、政治家としての素質さえ疑いたくなる。政党支持率を見るがよい。NHKの調査で民主党は9.8%と低迷の極みとなっているではないか。安保に反対しても支持率は全然増えないのだ。岡田は8割の国民が説明不足と言うから1億、今国会での安保法案成立に反対が6割だから7000万、と言うのだが調査のからくりを知らない。筆者は長年政治部で世論調査結果を分析してきたが、設問によっていくらでも数字は操作できる。反安保のマスコミが「説明不足」という項目を立てるのは、安保法制など勉強していない国民がほとんどであることを知っているからだ。誰でも「知らない」と言うのは恥ずかしいが、「説明不足」と言えば政府のせいに出来るのだ。これに続けて「今国会での賛否」を問えば、論理的に「説明不足だから反対」につながるのだ。まさに世論調査のからくりである。
 これが同じ調査で安倍内閣の支持率が反転上昇していることとの矛盾への「解」である。したがって岡田の言う1億とか7000万という数字は空想的期待値であって、荒唐無稽(むけい)だ。党内で頷く議員がいるとすれば、よほどの道理が分からない人種に違いない。だいたい子供や赤ん坊には世論調査はしない。この傾向は安保が焦点となっている地方市長選での民主党連敗をみても歴然としているではないか。したがって民・共が煽るデモ隊も虚飾、1億人の支持も虚飾なのだ。安全保障関連法案が成立すれば潮が引くようにデモ隊は縮小し、後に残るのは民主党支持率の低迷だけだ。


◎俳談

◎俳談         
【狐火の遺伝子】
◆狐火や耳成(みみなし)山のその闇に 産経俳壇入選
 昔大阪支社勤務のころ、大和三山の耳成山近辺をサイクリングしたことがあったが、日がとっぷり暮れると古代の神話に引き込まれるような気持ちがしたものだ。国の名勝に指摘されており、景観が守られているから狐火が日本で一番出そうな雰囲気でもある。
 狐火は山野で見られる正体不明の青白い火で冬の季語。火の気のないところに、提灯または松明のような怪火が一列になって現れるケースもある。奥三河の母の実家で祖母から、狐火に出会った話を聞いたことがあるが、昭和の初期まではそのような話が日本中にあった。科学的に解明できる発光現象であろうが、列島が明るくなったころからなぜか姿を消した。それでも狐火を詠む俳人は多い。狐火ノスタルジアが遺伝子となって心奥に入り込んでいるからだろう。
蕪村が
◆狐火や髑髏(どくろ)に雨のたまる夜
と詠んだ昔は野ざらしの髑髏などざらにあった。燐光を発するものもあったに違いない。
◆狐火や夜光時計は十一時 毎日俳壇1席
 横溝正史著による長編推理小説「八墓村」のような雰囲気を詠んだ。夜光時計と事件と狐火と、三つがそろえば名探偵・金田一耕助の出番だ。秋の夜長に推理小説と洒落込んではいかがかな。

◎今夜にも採決で緊迫の攻防

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◎今夜にも採決で緊迫の攻防
  野党分断、5党で賛成総数150票と圧倒
 安全保障関連法案をめぐる与野党の攻防は、16日夜から緊迫の段階に突入する。与党は同夜中に委員会採決に持ち込む方針であり、野党とのぎりぎりのせめぎ合いが展開される。こうした中で与党は、関連法案施工後の国会の関与を強める方向で「元気」など野党3党と一致した。3党は賛成票を投じることになり野党は事実上分断された。これにより参院242議席のうち、148議席以上が賛成に回る方向が確定、議会制民主主義による圧倒的な「民意」の反映が一段と明確となった。一方、左傾化を強める維新と与党との修正工作は決裂したが、これにより維新左派は存在意義が薄れ、民主党に吸収されるしか道はなくなった。
 地方公聴会の設定で特別委審議を遅延し、何をするか分からないと危ぶまれていた委員長・鴻池祥肇が、自民党内の怨嗟の声がやっと分かったか、採決へと動いた。委員長職権で16日夜の締めくくり質疑を開催することを決めた。午後6時から委員会は開催され最終質疑の後、深夜にも採決に突入するものとみられる。機は熟しており、この機を逃さないだろうと思う。遅くとも17日未明か、午前中の委員会では採決することになる。したがって安全保障関連法案は17日午後の参院本会議に上程されて、野党の議事妨害があっても18日までには成立する流れとなってきている。 
 これに対して民主、共産両党などは、衆院に内閣不信任案、参院に問責決議案などを次々に上程し、議事妨害をはかる方針である。不信任案や問責決議は1つの処理に3時間はかかり、長ければ20時間を越える審議の遅延になりかねない。これに牛歩やフィリバスターなどが加われば、週内成立がずれ込みかねない危険性もある。与党は投票時間や質問時間短縮策を議決して対抗する可能性もあるが、全ての動議に優先する内閣信任決議を可決、一事不再議で一気にけりを付けることも視野に入れだした。
 いずれにしても野党のうち3党が賛成に回ったのは大きい。自公独走の印象を打ち消す効果がある。野党分断に成功した政府・与党の作戦は見事であった。少ないと言っても元気、次世代、新党改革を合わせれば14議席となり、維新の11議席より多い。維新も分裂傾向を見せており、11人全てが反対にまとまる保障はない。
 特別委は15日の中央公聴会で6人の公述人から賛否の意見を聞いたが、野党の推薦した公述人の度し難い現状認識には呆れ返った。いくら安全保障に無知である学者や元裁判官とはいえ、平衡の感覚さえあれば少なくとも日本を取り巻く安全保障環境の変化ぐらいは読み取れそうなものだと思うが、ノーテンキな一国平和主義にこり固まっている。昔は伝統的に保守の論客がそろっていた慶応も、変わった名誉教授が出現したものだ。小林節は安全保障関連法案を「法律ができると、不戦から戦争可能状態に入る。『戦争法案』以外の何物でもない」とこともあろうに戦争抑止のための「不戦法案」を「戦争法案」と断定した。民主、共産の主張そのものを踏襲しており、こんな教授に扇動される学生はたまらない。もう孫は慶應には入れない。小林は「専守防衛で十分この国は守られている」と宣うたが、象牙の塔に長くいると今そこにある危機が分からなくなるのは昔から学者の悪い癖だ。吉田茂が「曲学阿世」と断定したのも無理はない。
 元最高裁判事も質が落ちた。浜田邦夫は何と「最高裁で絶対に違憲判決が出ないという楽観論は根拠がない」と発言した。言論は自由だが元最高裁判事たるものが、どこかの床屋のおっさんや競馬の予想屋のように、こともあろうに最高裁の判決を予測してはいけない。自衛権の容認を打ち出した唯一の最高裁判決である「砂川判決」の勉強を一からやり直し、最高裁判事の先輩の深い国家への思いを理解した方がよい。安全保障問題はまさに、「世界の非常識」の政党、学者、裁判官がレッテル貼りを繰り返し、衆愚を扇動している状況だ。しかし安倍が「将来は理解される」と述べているとおり、日本国民は浅はかではない。おそらく半年で大半が誤解から抜けだし、長くて2,3年で誤解はゼロになる。安保条約が戦後70年の平和を達成したように、安保法制は今後半世紀は日本を侵略しようとする国が出てこない状況を作り出す礎なのだ。


◎俳談

◎俳談                               
【散るを詠む花】
◆山茶花の白の浮き出る薄暮かな 東京俳壇入選
 山茶花のつぼみが膨らんできた。やがて散る姿を見られる。俳句の世界では咲く姿はともかく、散る姿が観賞の対象になる珍しい花だ。桜も散る姿が詠まれるが、桜ほど華やかさはない。むしろ詫び寂びの世界だ。だから
◆さざんくわはいかだをくめぬゆゑさびし  中原道夫
といった句が登場する。確かに桜は「花筏」が季語として存在するほどだが、山茶花の筏は聞いたことがない。椿のように花全体がぽとりと落ちるのではなく、花弁が散る。日比谷公会堂の脇に古木が一本あるが、その散った地面が真っ赤に染まる。
◆山茶花の咲くより散りてあたらしき 日野草城
と観賞されるのだ。
◆山茶花の散りしきる宿閉めにけり 産経俳壇入選
昔よく訪れた箱根の宿が閉じたと聞いた。

◎与党は内閣信任案で野党をはねつけよ

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◎与党は内閣信任案で野党をはねつけよ
 「民意」はデモ隊にはない
 「男を女に変える意外は何でも出来る」と言う“格言”が国会にはあるが、鼎(かなえ)は沸き立ち与野党は国会対策の“秘術”を尽くしての攻防の段階に入った。安全保障関連法案をめぐって野党の攻撃を政府・与党がいかにかわして週内の成立に持ち込むかが焦点である。60年安保改訂では警官隊を500人導入して野党のピケを排除し、成立を図った。今回も7月にテロ対策訓練で55年ぶりに国会に警官隊が入った。警官隊に「土地勘」が出来たからやろうと思えば出来ないことではないが、これはデモ隊や野党へのけん制にとどめておいた方がいい。結局焦点は時間切れを狙った不信任案の連発ををどうしのぐかに絞られるだろうが、国会の歴史を見ればこれとて一蹴は不可能ではない。食うか食われるかの場面だが、長い経験に基づいてシュミレーションをすれば最終的に食われるのは民主、共産両党などであることが歴然としてくる。
 首相・安倍晋三は15日の自民党役員会で「参議院での審議は大詰めを迎えている。議論が尽くされれば採決を行うのが民主主義のルールだ」と述べ、陣頭指揮に乗り出した。特別委の答弁ぶりを聞いたが落ち着いており、腹が固まった印象を強く受けた。これは衆院の法案可決でいったん落ちた内閣支持率が、朝日を除いてことごとく上向きに転じたことも背景にあるのだろう。最近のNHKの調査では「支持する」が6ポイント上がって43%。一方、「支持しない」との回答は、7ポイント下がって39%で、3か月ぶりに「支持する」が「支持しない」を上回った。読売、日経、産経などの調査も回復ぶりを示しており、朝日だけが支持が38%から36%に落ちるという異常現象を示している。大新聞の編集が意図、作為を調査に入れたとも思えないが、読者の信頼性を欠く「見事な」調査結果ではある。
 最大の特色は自民党支持率が不動であることだ。NHKで自民党が34.7%、民主党が9.8%、公明党が3.7%、維新の党が1.3%、共産党が4%である。これは野党がデモ隊と呼応して安全保障関連法案に反対すればするほど、支持率が低迷するという政治現象を巻き起こしているのである。とりわけ安保をめぐる激突の象徴となった8月23日投開票の盛岡市長選に続き、13日の山形市長選でも自民党系候補が勝利したことは大きい。これは、かしましく野党が言い立てる「国民の声」や「民意」が、国会前のデモ隊とは別の場所に存在していることを歴然と物語っている。朝日は15日の社説で「民意無視の採決はやめよ」と主張したが、勝手に「民意」を使うなと言いたい。岸信介が安保改正で「私には“声なき声”が聞こえる」と名言を吐いたとおり、安全保障問題特有の傾向を悟るべきだ。今直ちに解散・総選挙をしても小泉郵政選挙と同様に自民党が圧勝するのではないかと思えるほどだ。しかしまだ伝家の宝刀の選択だけは後々の楽しみに除外しておいた方がいい。
 そこで政府自民党の腹は据わったが、問題は参院が毒蜘蛛(ぐも)、ハブ、サソリがうじゃうじゃいる洞窟のようであり、虎視眈々と安保に致命傷を与えようと狙っていることだ。危ういのが前から指摘している特別委員長の鴻池祥肇だ。やはり予想通り「地方公聴会」などというやらなくてもいい日程を挿入して審議を遅延、嫌がらせをしている。衆院側は激怒している。採決に当たってはよほど気をつけないと何をするか分からない。しかし法案に致命傷を与えるようなことをすれば、逆賊明智光秀となり政治家としての生命は終わるから、結局は採決せざるを得まい。
 一方民主党も、14日の特別委でかつては集団的自衛権の行使に何度も賛成していたことが暴露された代表・岡田克也が、恥ずかしげもなく「あらゆる手段を講じて法案を廃案にする」と息巻いている。こちらも何をするか分からない。一番危険なのは法案を参院副議長・輿石東の「魔手」に委ねることだ。明らかにそれを狙って民主党は参院議長・山崎正昭の不信任案を他の問責決議案と共に上程する。何を意味するかと言えば議長不信任案の審議は副議長が行うからだ。かつて2004年に年金改正法をめぐって出された議長・倉田寛之不信任案で議長席に着いた民主党の副議長・本岡昭次は本会議「散会」を宣言、法案を廃案に追い込もうとした。すかさず倉田が「無効」を宣言して議長代理を選出して事なきを得た。まさに民主党は江戸名うてのスリ・ちゃっきり金太のようなことをする政党である。
 岡田の「あらゆる手段」の内容について、自民党副総裁・高村正彦はNHKで「ゲバ棒はないと思うが、牛歩くらいはやるのかな」と予測しているが、牛歩は評判が悪すぎて民主党の低い支持率がさらに低下するから、やっても長時間の法案阻止は難しかろう。衆院では規則により投票時間を制限できるが、参院でも議長職権により投票時間を短縮できる。1992年のPKO法案では社会党が牛歩戦術に出て、衆院可決に4日間を費やしたから遅延策としてはあり得る。1999年の組織犯罪対策法案では、民主党、共産党、社民党 の牛歩を議長による投票打ち切りでストップをかけた例がある。フィリバスターは参院で2004年に森ゆうこが厚生労働委員長解任決議案の趣旨説明に3時間1分かけた例が最長演説記録だ。しかし演説時間は過半数で制限が可能であり、決定打にはなりにくい。
 こう見てくると衆参、それぞれに内閣不信任案や問責決議案がだされ、これに付随して多様な遅延策を展開する可能性が強いだろう。PKO国会では野党の不信任案連発の動きに先立ち、自民党が内閣信任決議を提出して可決。一事不再議で野党の提出が不可能になった例があるが、これが時間短縮には一番ではなかろうか。また参院の輿石の出番を封ずるためにも、先に議長信任決議を出して対抗するのもよいかもしれない。まあ、いくら野党がジタバタしても、可決成立の道はいくらでもあるということだ。


◎俳談

◎俳談
【秋思と春愁】
◆一つとや歌ひ秋思となりにけり 産経俳壇入選
 秋思はよく春愁と比較される。春愁は春ゆえのけだるさを伴う本能的な愁いだが、秋思のもたらす秋の愁いはより鮮明であり理知的なものである。しかし昔の少女雑誌の「枯葉の落ちる夕暮れの乙女の絵」とはいささか異にしている。単なるセンチメンタリズムとは違うのだ。細見綾子の句に
◆爪切れど秋思どこにも行きはせぬ
があるが、大人の感情であろう。
◆春愁の街を用ある如くゆく 毎日俳壇入選
春愁は本能に促されて動きが出る。

◎戦う石破と禅譲の岸田の戦いが軸

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◎戦う石破と禅譲の岸田の戦いが軸
  「ポスト安倍」に湿った号砲がなった
 号砲は「ドン」とならなければならないが、なにやら「プシュッ」と湿った花火のように音がくすんでいる。しかし安倍が再選を果たした途端に「ポスト安倍」というのだから、自民党は面白い。今のところ手を挙げたのは地方創生相・石破茂だけだが、ライバルは外相・岸田文男だ。当面はこの2人を軸に展開する流れだろう。基本は岸田が禅譲狙いなのに対して、石破は戦い取る姿勢だ。しかしもう1人有力候補がいる。「ポスト安倍」は「安倍」なのだ。3年の任期中のどこかで行われる解散・総選挙で安倍が勝てば党則を改正して3期9年もあり得ない話ではない。
 くすんだ花火は、手を挙げた幹事長・石破茂に勢いがないからだ。派閥を結成するなら数が勝負だが、総裁選推薦人の数20人がやっとでは印象が悪い。少なくとも主催する「無派閥連絡会」の40人を確保することなど戦略のイロハのイだ。安倍の心胆はこれでは寒くならない。自民党幹部は石破の挙兵について「遅いし早い」と述べているそうだが、実に言い得て妙だ。
 遅いというのは今まで何をもたもたしていたかと言うことであろう。地方創生相という伴食大臣をあてがわれても、田中角栄ならこれを逆手にとって頭角を現しただろう。田中は佐藤栄作に幹事長を外されて、冷や飯を食うかに見えたが、自民党内に都市政策調査会を作って、列島改造を世に問うた。石破はそれから半世紀たって列島の再改造が必用なときなのに、絶好のテーマを逃した。政策なき立候補では、国民に何をする人なのかが不明だ。 
 「早い」と言うのは、何で政権を挙げて取り組む安保法制が終盤に入るこの時に旗揚げかと言うことだ。そこには個利個略が見られる。政権というのはどんな安定政権でも「絶対安定」と言うことはあり得ない。むしろ寸前暗黒といって、いつ倒れるか分からない均衡の上に成り立っている。自民党を巻き込む大疑獄が発生したり、首相が病気で倒れたりすればすぐに後継選びが必要となる。石破が「早い」のはその万が一に賭ける必要があると感じたからであろう。まさか10月の内閣改造を前に安倍に向けて「厚遇」のけん制球を投げたとも思えない。時の首相に反旗を翻した以上入閣しないのは常識というか、憲政の常道だろう。
 では、「ポスト安倍」で「安倍」以外の総裁候補とみなされるのは誰かというと、一強多弱の政治状況が物語るだけに候補は少ない。2012年の総裁選で出馬した石破茂、安倍晋三、石原伸晃、町村信孝、林芳正のうち町村は死去、林はもともと無理。石原は総裁選に出た存在感は全く失せている。失言癖もたたったのか、当時40人いた派閥も14人に減り、今や落ち目の三度笠だ。この結果、石破と岸田が軸となるが、ダークホースで幹事長・谷垣禎一の目もないわけではない。
万一の場合に党内をまとめるには人格、識見、経歴からみても、谷垣が抜きん出ている。70の年齢など問題ではない。
 それでは、石破と岸田のどっちが強いかと言えば、通常の総裁選挙で決める場合は石破だろう。石破は前回の総裁選挙の地方票を含めた1回目の投票で199票を獲得して1位、141票の安倍を大きくリードしている。国会議員での決選投票でも89票を獲得、108票の安倍をヒヤリとさせた。石破はもっと強くなっている可能性がある。というのも幹事長時代に石破は総裁公選規定を地方票重視の制度に変更している。内容は決選投票に地方票を加算し、地方票を国会議員票と同数にするというもので、これが実施されれば石破が有利だ。
 一方で禅譲路線に傾斜しているのが岸田だ。忠勤に励んでいるうえに、野田聖子立候補問題で安倍に「うい奴よのう」と、思わせたからだ。岸田派最高顧問・古賀誠の“魔手”が若手議員に及んで、野田の推薦人に流れるのを懸命に防いだのだ。何と古賀が若手を集めようとした時間に合わせて会合を呼びかけて、たがを締め、20人の推薦人を獲得できなくしたのだ。岸田は石破とまともに戦った場合、地方票が物を言う選挙で勝てるかどうかは予断を許さない。逆に安倍が禅譲すると言えば、一挙に有利になる可能性がある。したがって石破は「安倍3選」の阻止に出る可能性が強いが、岸田は我慢の子で3戦を認めて禅譲を狙うかも知れない。まるでポスト佐藤をめぐって禅譲路線の福田赳夫と田中角栄の戦いにそっくりの構図となる。


◎俳談

◎俳談
【リフレイン句】
◆春宵の泣くなと言へばなほ泣いて 産経俳談1席
 同じ言葉の繰り返しで強調の効果を狙う句をリフレイン句という。リフレインは成功すると主題を鮮明にできる上に、句にリズムを生む。掲句は石原裕次郎の「こぼれ花」の2番<ちょうど 去年のいま頃か泣くなと言えばなお泣いた あの娘の帯にバラひとつ咲いていたのを思いだす>を本歌取りしたものだが、我ながらリフレインが利いている。ところがわずか五七五の中に同じ言葉を2度も使うのだから、失敗すると大破たんを来す。初心者のうちはやめておいた方がよい。
古来名句は多いが
◆いなびかり北よりすれば北を見る 橋本多佳子
◆妻二タ夜あらず二タ夜の天の川  中村草田男
がリフレインの最高峰だろう。
亡き子が夢に出た。
◆振り返り振り返りつつ子の朧 東京俳壇入選

◎「橋下首相」を実現するノウハウ

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◎「橋下首相」を実現するノウハウ
  雑巾がけ10年が基本
  大阪の快男児・橋下徹が中央政界への進出に意欲を燃やし始めたかのようにみえる。8日のツイッターで「私人のときの出馬するかしないかや、政治家が引退した後の人生について、こんなこといちいち国民に約束する話ではないし公約でもない」と述べたのだ。発言が飛躍しているから分かりにくいが、簡単に言えば公約の「政界引退宣言」について言い訳をしているのだ。大阪市長を辞めて私人になってからは出馬するかどうかは公約ではないと言う意味だ。政界引退宣言は「地方政界」引退であって「中央政界」は別ということだろう。首相・安倍晋三から勧められて、「やる気」になってきたようだ。
 安倍は最近2度にわたって橋下の政界入りに期待する発言をしている。一つは6月14日の夜橋下と大阪府知事・松井一郎との会合で「橋下徹君に対する期待感は前より増しているのではないか」と述べた。もう一つはさる4日の読売テレビで橋下の国政進出について「可能性はあるのではないか」とも述べたのだ。まんざら安保法制を前にした、リップサービスとばかりは言い切れないのだ。「期待感が前より増している」と言うのは、筆者も感じている。最近では2013年に「慰安婦是認発言」をしたような、ハチャメチャ感がなくなってきて、発言ぶりも「成長」を見せているからだ。中央政界をよく観察して発言するようになってきている。その主張は自民党の政治家と言ってもよいような保守的傾向を見せている。 
 最近の傑作は国会前の3万人デモについて「日本の有権者数は1億人。国会前のデモはそのうちの何パーセントなんだ?ほぼ数字にならないくらいだろう。こんな人数のデモで国家の意思が決定されるなら、サザンのコンサートで意思決定する方がよほど民主主義だ」とツイート。これは今は安保法案が微妙な時期で、物言えば唇寒しの状況にある永田町を喜ばせた。自民党幹部も「代わりによく言ってくれた」とご満悦だった。発言には昔田中角栄に見られた機知がある。安倍が中央政界入りを勧めるのは、おそらく将来の首相候補となり得る素質を見ているからだろう。現在橋下は46歳、政界でもまれれば、ものになるかもしれないということだ。
 それでは、その実現への道筋を予測してみると、まず総選挙がいつあるかだが、その前に大阪では年末に府知事選挙と市長選挙がある。おそらく橋下は知事に松井を当選させ、市長には維新系の候補を立てる可能性がある。これに勝ったうえで、国政選挙を狙うことになるが、首相を目指す以上参院では駄目だ。衆院議員はどんなでくの坊でも皆首相になりたいと思っているのであって、参院議員などは下に見ているから、まずなれない。池田勇人に推された宮沢喜一も、53年の参院選挙に当選したばかりに苦労して、衆院に鞍替えして首相候補扱いされるまでに14年かかっている。橋下の場合は参院比例区なら文句なしに当選するのだが、この比例区選出議員も永田町では馬鹿にされる。要するに楽して当選しても誰も尊敬されないのだ。
 それでは衆院かというと、来年夏ダブルがあれば文句なしに衆院選出馬がよい。安倍は今後3年の任期中に必ず解散・総選挙を断行するから、ダブルがなければそれを待つのがよいかもしれない。そして国政に進出した場合の対応がこれまた難しいが、道は2つある。大阪維新を率いて、自民党との連立を組むか。同維新とともに自民党に入党して維新派のトップとなるかだ。民主党政権の体たらくを見せつけられた国民は、あと50年は民主党に政権を取らせないと固く心に誓ったかに見えるから、細川政権のように 非自民・非共産連立政権などは期待しない方がよい。すぐに自民党につぶされるのがオチだ。
 橋下が自民党に入党した場合でも、時間はかかる。石破茂や岸田文雄にはとてもかなうまい。それに大衆扇動型政治家は、自民党ではまず大成しない。むしろ今は、松井一郎の方が、政治家としての器量があるように見える。政界になじんで、それでかつ首相を目指せるようにならないと駄目だ。だから前にも指摘したが、10年間雑巾がけをする覚悟がなければなるまい。10年雑巾がけしても56歳。十分日本を担える年齢だ。


◎俳談

◎俳談
【秋の風】
◆秋風や途切れ途切れの子守歌 毎日俳壇3席
 初嵐に比べると同じ秋の季語でも「秋風」はしみじみとした寂しさを伴う。景色としては夕焼けやシルエットが似合う。歌で言えば「島原地方の子守歌」だ。この子守歌は意味が分かりにくいが調べてみると、貧しいがゆえに異国へ売られていった娘たち、「からゆきさん」の悲しみ、哀れさを歌ったもののようだ。倍賞千恵子の歌が一番哀感にあふれている。1番の意味は「私は島原の 私は島原の梨の木のある家で育った」。2番は「帰りには寄ってもらえませんか 帰りには寄ってもらえませんか あばら家ですけど 黄金色したご飯ですよ」。3番は意味が分かって、ここが一番掲句に似合う。
沖の不知火(しらぬい) 沖の不知火
消えては燃えるヨ
バテレン祭の バテレン祭の
笛や太鼓も 鳴りやんだ
早よ寝ろ泣かんで オロロンバイ
早よ寝ろ泣かんで オロロンバイ
◆ソファーに父の窪みや秋の風  東京俳壇入選

◎無投票再選が「安保成立」へ弾み効果

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◎無投票再選が「安保成立」へ弾み効果
  安倍によるオリンピック開会宣言もあり得る
 小泉政権以来9年ぶりに首相・安倍晋三の長期政権が視野に入った。日本の政治は首相の1年交代が続いた低迷期から離脱し、今後3年、つまり2018年までの合計6年の安倍長期政権が確定的となった。任期中に必ず行われる解散・総選挙に圧勝すれば2020年のオリンピック開会宣言を「退陣の花道」にする可能性も否定出来ない。折から平成最大の保革激突法案である安保関連法案が16日に特別委で採決の方向が固まり、与党の態勢も整った。好事魔多し、着地が極めて重要だがまず成立の方向は揺るがない。成立すれば、「安倍政治」は解き放たれ、そのエネルギーを外交とアベノミクスの完成に集中することになろう。
 政治には弾みというものがあり、野田聖子の立候補を一蹴したことにより、自民党内は1週間後の法案採決に向けてかつてない結束ぶりを示す結果となった。逆に野党は維新の分裂がいよいよ深刻化し、民主党は何をとち狂ったか幹事長・枝野幸男が安倍再選について「本来の保守本流が絶滅した。むしろ、かつての保守本流の政策的理念は我々の方こそが持っている」と誰が聞いても首を傾げる妄言を吐く始末。保守本流なら法案に賛成したらどうかと言うことだ。野党は、法案への対応が極めてふまじめと言わざるを得ない。いくら政府が理を持って諭(さと)しても、全てを「戦争法案」のレッテル貼りに帰結して、外部勢力の扇動に使う。審議を党利党略に使っているのだが、これでは審議が進めば進むほどデマが拡散して、国論が割れてしまう。
 もう十分なる熟議を果たした。質疑を終わらせて、可決、成立させるべき潮時に到った。民意は野党のデマゴーグ作戦に惑わされるが、これが一時的であることは衆院での法案可決後の世論調査が如実に物語っている。あらゆる調査が、可決後下落したにもかかわらず、わずか1か月で内閣支持率が上向きに転じているのだ。一番からい朝日でも37%から38%に。読売は43→45、共同37→43,産経39→43,日経に到っては8ポイント上がって46%になった。支持と不支持の逆転も解消され始めた。歴代内閣でも40%台は高支持率を意味する。筆者は強行採決で成立させて、いったん30%台に下がっても年末までには取り戻すと予想したが、この傾向を見ると来週成立させていったん下落しても、年末までにはまず支持率は回復するだろう。世論調査では法案には反対が強いが一過性で、内閣支持率の上昇志向には勝てないという珍しい現象が生じているのだ。
 根強い「安倍人気」の原因はマジックとも言えるアベノミクス効果と、中国、韓国への毅然(きぜん)たる態度が根底にあるのだろう。とりわけ今後は「9・3効果」つまり習近平の「戦争パレード」への反発が強く出て、政権支持へと回る可能性が強い。したがって一時的支持率の下落は問題視する必要は無い。今後は安倍の言うとおり経済重視の政策を展開すべきであろう。アベノミクス以来株価は上昇し、企業利益は拡大し、失業率も劇的に好転した。しかし、国民の実質所得は未(いま)だしだ。今後は富が滴り落ちるトリクルダウンが必用な段階だろう。自民党の党是である憲法改正も来年の参院選の結果では議題になり得るが、肝心の9条改正が、集団的自衛権の行使を認める安保法制により当分の間は重要ではなくなってきており、これにエネルギーを費やすのは疑問であるかもしれない。
 安倍の無投票再選は自民党にとって過去3回の国政選挙で圧勝した“神業信仰” が大きな要素を占めてているのだろう。来年には参院選挙があり、安倍の任期中に衆院議員の任期が切れることから安倍による解散・総選挙は避けて通れない。安倍はいまのところダブルを否定しているが、党略を考えれば再来年の消費増税の前の解散はまずダブルしかチャンスはあるまい。過去2回のダブルは相乗効果が発揮され自民党は負けたことがない。したがって可能性は否定出来ない。
 安倍は、地元で明治維新から50年後に山口県出身の寺内正毅、100年後には佐藤栄作が首相を務めていたことに触れ、「私は山口出身の8人目の首相。何とか頑張って30年(2018年)までいけば、(明治維新から150年後も)山口県出身の安倍晋三が首相ということになる」と述べた。この「何とか頑張って30年まで」の表現ではあと一期で終了ということになるが、8日の立候補に当たっての公約には、面白い表現がある。毎日だけがここに着目した。同紙は「首相は公約で、東京五輪を『輝かしい未来への大きな起爆剤にしなければならない』として、『今ここから、私はその先頭に立つ覚悟だ』と訴えた。3年の任期中に成功への道筋をつける決意表明とも読めるが、首相周辺には「五輪の開会宣言を安倍首相にやらせたい」(森喜朗元首相)という声が少なくない」と報じたのだ。政治記者なら当然ここに目を付けるべきだろう。二期までの党則など、どうにでもなる。まだ気の遠くなるような道のりだが、あり得ないことではない。


◎俳談

◎俳談
【初嵐】
◆初嵐犬吠えカラス横つ飛び 東京俳壇入選
 初嵐は秋の初めに吹く暴風の一種。夏の蒸し暑さを一掃してくれる風でもある。裏木戸をバタンバタンと鳴らし、そこらに置いてある植木鉢を吹き飛ばす。掲句はそのけたたましさを表現した。これに心の動きを入れた句にすると
◆一徹でいっちまおうか初嵐 杉の子
となる。これが春の嵐となると春一番だ。
◆シャガールの宙浮く二人春一番 東京俳壇1席
絵画の空想性を取り入れてみた。
◆初嵐鷹を入り江に吹き落す  秋桜子

◎“平成の乱”を目指した「野田正雪」

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◎“平成の乱”を目指した「野田正雪」
  「正義」を唱え「大義」を忘れる
 度し難い女を古典落語で「怒れば泣く。ほめておだてりゃつけあがる。 いっそ殺せば化けて出る」と表現しているが、聖子ちゃんをこんな風に表現してはいけない。女性団体から怒られる。言うなら講談の「平成の女正雪」であろう。由井正雪は三代将軍家光亡き後徳川幕藩体制を覆そうとクーデターを謀った。さしずめ参謀の丸橋忠弥が古賀誠だ。歌舞伎の名場面で丸橋は江戸城のお堀に石を投げて深さを測ったが、どうも古賀丸橋は老化現象か「ゴボゴボ」という音が長く続いたのに聞こえず、聖子正雪に「浅いから大丈夫」とけしかけた。これに乗った聖子は、自らの行為が「政局化」そのものであることを知ってか知らずか挙兵しようとした。しかし、結局は安倍の捕り方に囲まれ自刃してあえない最期となったのだ。大手紙は20人取れるかも知れないからびびって朝刊で断定していないが、例え総裁選推薦人の数が集まっても、あえない最期になる構図なのだが、結局小泉純一郎以来14年ぶりの無投票再選になるだろう。
 政権サイドがうまいのは、安保法案を軸に脅しをかけたことだろう。「野党が自民党総裁選で決着が付くまで審議ストップに出る」という情報を流したのだ。これで自民党内は引き締まった。「安保の印籠」を見せられては、一致団結をせざるを得ない。党内7派は全てが安倍支持を決め、古賀丸橋が最高顧問の岸田派も懸命の締め付けに出た。岸田文雄も禅譲狙いなのか、将来は安倍と戦うであろう石破茂とは対照的に、安倍大明神をあがめることしきりなのだ。安倍は将来的には佐藤栄作が田中角栄と福田赳夫を競わせたように、石破と岸田を競わせれば安泰となるのだが、今は利口だからそんなことはおくびにも出さない。
 一方で、野党は総裁選で審議ストップなどは考えたこともなく、だしに使われたとカチンときたに違いない。民主、維新共に、否定に懸命。見え透いているのは否定すれば、正雪が出やすくなり、揺さぶるのならその上でという魂胆があるのだ。毎日によれば代表・松野頼久が北海道釧路市での講演で「野田さんが推薦人集めに苦労している。(自民内で)『野党が安保の審議に出て来なくなる』と切り崩しているという話がある。我々はそういうことであれば審議に出る」と野田正雪をけしかけた。民主の政調会長・細野豪志も「安保法制の議論は、我々はしっかりやっていく」とやはり野田出馬に呼び水を向けた。
 野田は論語を引いて、「義を見てせざるは勇なきなり」と発言したが、いかにもちぐはぐで訴求力に欠ける発言だ。正義と知りながらそれをしないのは勇気がないのと同じだというのだが、古くさく女には珍しい表現だから、丸橋に教わったのかもしれない。それでは野田の正義とは何か。もともと野田は昨年7月1日の集団的自衛権の行使閣議決定にも反対論を雑誌で表明しており、古賀も共産党機関誌・しんぶん赤旗が絶賛しているほどの安保法制反対論者だ。いまや反安倍老人の巣窟(そうくつ)であるTBSの時事放談でも、安倍という名前が出れば条件反射的に批判を繰り返している。
 野田は正義を言うなら、総裁選挙に立候補する理由を述べなければならない。理由を述べずに、ひたすら選挙そのものの実施の必用を唱えても説得力はない。まるで小泉純一郎が3回も総裁選に挑戦して、数をこなして成功したから、それを猿まねしようとしているとしか思えない。野田は9月3日の北京の軍事パレードを見たのだろうか。「平和降臨」とばかりに何もしないで平和が実現した時代は去った。民主、共産とこれにだまされているデモ隊が「戦争法案」を言うのなら、習近平の露骨なる「戦争パレード」は今そこにある危機ではないのか。野田は安保反対の立場でいながら、衆院での採決に賛成票を投じたのは「正義」を貫いたからなのか。「義を見てせざる」を言うなら「大義」はどうでもよいのか。答えられまい。だから平成の由井正雪なのだ。
 いずれにせよ、野田正雪は老獪(かい)なる隠者の甘言に乗って、政治の道を誤った。安保法制という大義を見落とし、私利私欲に走った候補として、自ら首相候補としての道を閉ざしたのである。


◎俳談

◎俳談               
【今年米】
◆さくさくと研ぎて零さず今年米 月刊俳句入選
 「ご飯は一粒も残さず食べること。お百姓さんの苦労を思いなさい」は日本人に代々受け継がれた家訓だ。だから家庭の主婦は米を研ぐとき一粒もこぼさない。近ごろは無洗米といってあらかじめぬかが除いてある米がある。これをけしからんというのは年寄りの戯言である。時代時代の食べ方があってよいが、研いだ後一定時間をおいて炊いたものが一番うまい事は確かだ。戦争直後は「竹の子生活」といって、着物と交換して米や野菜を確保した。タンスがだんだん空になっていったものだ。しかし昭和の女性は強かった。「着物は生きていればいつでも買える」と母はどんどん売った。1~2年間続いただろうか。何しろ食べ盛りの子供が6人もいたから大変だ。子供心にやるせなかった。そういう家庭で育つと子供は人の気持ちが分かる子に育つ。
◆今年米母の着物で食べしこと 杉の子
といつまでたっても忘れない。米どころ新潟では中稲(なかて)種が9月20日頃ピークを迎え、晩稲(おくて)種は10月いっぱいで出荷が終わる。新米は水をやや少なめに炊くとうまく炊きあがる。
◆新米の酒田は早しもがみ河 蕪村 

◎習は威嚇の前に自分の頭のハエを追え

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◎習は威嚇の前に自分の頭のハエを追え
  パレードは日米同盟と台湾けん制だ
 バブルの崩壊途上で経済が「火の車」だというのに、「偉い偉い。強い強い」と褒めてあげたいような軍事パレードだった。パレードは経済的に追い詰められた中国国家主席・習近平が自らの存在感を誇示し、共産党政権の正統性をを強調。口で「覇権は唱えない」と言いながら、ボディランゲージで臆面もなく覇権を唱えるものであった。まるで閲兵の車に乗った習の姿は昔ニュース映画で見た、ヒットラーの軍事パレードを想起するものでもあった。1党独裁国家というのはこういうものかと改めて思った。そしてパレードは日米同盟をけん制し、台湾総統選挙で反中の民進党の躍進を許さない姿勢を露呈させた。まるで時代錯誤の武力の誇示であった。毛沢東は「米帝国主義は張り子の虎」と発言したが、パレードのけばけばしさはかえって「ペーパー・ドラゴン」そのものを感じさせるものであった。
 パレードにおける習の演説は抗日戦の勝利には言及したが、現在の日本批判をしなかった。また兵力を「30万人削減する」と一見平和志向であるかのように見せた。しかし、30万人といっても総兵力230万のうちの30万であるうえに、削減した人件費を装備の近代化に回すのだから、中国軍は強化される。「平和」は見せかけに過ぎない。加えて記念レセプションでの演説だ。時事電によると、日本を名指しこそしなかったが「歴史は人民の心の中に書かれており、歴史の抹殺は許されないし、抹殺もできない」「歴史を忘れることは裏切りを意味する」など、明らかに首相・安倍晋三を意識した言葉を繰り返している。本音が出た感じである。
 この言葉は習にそのままお返ししたい。「抗日戦勝利70周年」と銘打ったパレードの「歴史的正統性」に疑問が残るからだ。「抗日戦勝利」と聞いて以来筆者はおかしいと主張してきた。習こそが歴史をねじ曲げているからだ。日本と戦ったのは蒋介石の国民党軍であり、共産軍は大戦中日本軍との戦闘を避けて逃げまくっていたのが実態だ。戦後の各種終戦協定には中国共産党の名前は出てこない。敗北したのは国民党政権に対してであり、史実と異なり歴史を歪曲するものに他ならない。
 要するに習は、日本が尖閣諸島を国有化したのを見て「しめた」と思ったに違いない。これで中国国民を統一できると膝を打ったのだ。そして就任以来尖閣に公船を派遣したり、防空識別圏を設定したり、レーダーを日本艦船に照射させたりして、国民の関心を「反日」に向けた。就任以来反日カードを切り続け、そしてその集大成として「反日パレード」を挙行したのである。70年も過ぎた今思い出したかのように、誰が見てもあまりにも過剰すぎる「反日宣伝」の場を作ったのである。中国国民の目を日本に向けて、共産党政権の失政を覆い隠し、自らの地位を確保しようとしたのである。
 また9月の訪米に向けて対米けん制の意味もある。大陸間弾道弾や、空母キラーのミサイルを誇示し、「どうだ」とどう喝する姿だ。日本に対しては水陸両用車を見せ、尖閣の占拠など訳はないと威嚇する。しかし軍事専門家の多くが兵器はコピーが多く、実際に機能するか疑問を持つと指摘する。素人でも真似だと分かったのは無人機のパレードだ。中に米国ジェネラル・アトミックス社製の無人航空機「プレデターRQ-1」そっくりのものまで登場した。偽のルイビトンと言い、臆面もなく真似するのは国民性なのであろうか。
 しかし国際社会においても邪道というものがある。人間関係においても邪道をゆく者は必ず天罰が下る。その天罰が下りつつあるのがバブルの崩壊である。株価は日本のバブルの時と同様に乱高下を繰り返しながら、次第に奈落の底に落ち込んで行くのだ。先週だけでも中国人民銀行は日本円にしてなんと9兆5千億円というとてつもない資金を市場に投入して株価を維持しようとしているが、まるで業病末期の患者に輸血に次ぐ輸血を繰り返しているような状況だ。軍事力で米国をけん制するどころか、オバマに資金流出に直結する利上げを思いとどまるように懇願しなければならない場面だ。 
 さらに加えればパレードは来年1月16日に投開票が行なわれる台湾総統選挙へのけん制だ。台湾の政情は反中路線を取る最大野党「民進党」が躍進し、政権奪取の勢いだ。パレードの戦闘機やミサイルはいつでも台湾海峡を越えられるぞという意味を持つ。こうして軍事力での示威行動を取りながら、習近平と朴槿恵の会談では日中韓首脳会談を「10月か11月上旬を含む時期に行う」方向を打ち出した。まさに武力で威圧し、猫なで声で「会談しよう」というわけだ。しかし軍事パレードくらいで、安倍が気おされると思うのなら甘い。アメリカの軍事費は中国の3倍の6100億ドル。これに自衛隊が加わる日米同盟では世界有数の抑止力が構成されることを習は肝に銘ずるべきだ。時代錯誤の軍事パレードは軍事のプロから見れば噴飯物でもあるという。茶番と心得るべきだ。それより習は今そこに近づいた経済危機への対処、これに伴う暴動頻発の国内情勢の流動化に専念することが指導者としての役割と心得るべきだ。威嚇している暇があったら自分の頭のハエを追えと言いたい。それにつけても安保法制の早期実現はますます重要になってきた。反対政党やデモ隊は中国軍事パレードの「意味」を悟るべきだ。


◎俳談

◎俳談
【入院しても俳句】
◆看護婦のメモを手に書く秋ともし 毎日俳談入選
 20年ほど前胆石で入院したが、楽しみは何と言っても若い看護婦がきびきび動く姿を見ることだ。廊下を歩いていても「どうしたの。元気ないみたい」と声をかけてくれる。若い人類から見放されたかと思いはじめた年齢だけに、入院生活が楽しくなった。若い女性は病人に生命力や命の源を与えるオーラを持っている。東京近辺で美人で気立てのいい看護婦がいっぱいいる病院はどこだろう。ウェブで探すと「美人が多くて有名な病院は、離職率が高くて新卒ナースばっかりだ」と書いてあった。慶応病院か聖路加か。末期医療は医者なんかどうでもいい。問題は看護婦だ。今のうちに「終(つい)の病院」を探しておくことにする。(*^▽^*)
◆正月の看護婦薄き紅つけて 杉の子

◎野田は隔世遺伝の血が騒ぐのか

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◎野田は隔世遺伝の血が騒ぐのか
 「辞める」は「やる」の橋下徹
  鼎(かなえ)の湧くが如き状況になってきた。平成最大の保革激突法案である安全保障関連法案は14日の週の成立へと胎動から陣痛の段階へと入る。政府・与党は参院の議決がなくても衆院の再議決で成立させる60日ルールはできる限り使わず、参院での可決・成立を目指す。民主、共産など野党は院内外の勢力を糾合して「絶対阻止」(民主党代表・岡田克也)へと動くが、ナイヤガラ瀑布が滝壺に向かうように成立への動きは止められない。その激流の中で様々な悲喜劇が派生している。自民党では野田聖子の総裁選立候補問題。野党では維新の党分裂をめぐる確執だ。いずれも本流の流れを変える要素はないが、政権にとっては無視できない問題を抱える。
 それにつけても隔世遺伝とはよく言ったものだ。野田聖子の祖父は野田卯一だが、やみくもに時の政権を批判し、猪突猛進する傾向を間違いなく受け継いでいる。筆者は1966年の自民党総裁選をカバーしたが半世紀たって隔世遺伝が表れたとつくづく思う。66年は佐藤栄作が池田勇人を引き継いで2年目の、向かうところ敵なしの状況であり、首相・安倍晋三の現在と酷似していた。総裁選も池田派・宏池会から会長・前尾繁三郎が出るなど多彩な顔ぶれであったが、突然その池田派に所属しながら野田卯一が立候補したのだ。今の聖子の状況と似て、支持者はほとんどいなかったが、当時の総裁選はそれが可能であった。しかし二けたくらいは取るだろうというのが大方の見方であったが、結果はたったの9票にとどまった。
 勝敗を度外視してやみくもに立候補しようとする姿勢は聖子がしっかりと受け継ぎ、2日も安倍独走の総裁選を「安倍首相の無投票再選は国民への欺瞞(ぎまん)だ。傲慢で不誠実だ」とこき下ろした。1日の会合でも出馬に意欲を示しているが、一体何が野田を動かしているかといえば、「遺伝」に加えて「老獪」が存在するような気がする。老獪とはノーバッジでなお生臭い古賀誠のことだ。安保法案反対の古賀は、野田を使って法案を廃案に持ち込み、安倍を窮地に落とし入れようと究極の勝負をしようとしているのだ。まさに政局への深い読みがなければ出来ない寝技だが、これにまんまとのせられているのが野田なのだ。
 野田が立候補できれば安倍は再選が確定的であるものの、国会と総裁選の両面作戦を強いられる。民主、共産両党がここにつけ込んで、「首相が決まらない限り審議に応じられない」というなりふり構わぬ作戦に出る可能性が強い。政界は並んで腕を組みながら足をかける事例など日常茶飯事だが、野田の安倍に対する「傲慢」批判は人間として度を超えている。小泉純一郎政権で郵政法案に反対して離党を余儀なくされ、その後安倍が支持率を落としてまで野田を自民党に復帰させ「お帰りなさい」と迎えた「恩義」などはとんと忘却の彼方か。いずれにしても祖父の泡沫ぶりを受け継ぐようでは、次の首相への踏み台になることなどは不可能と心得るべきだ。
 翻って維新だが、大阪の「辞める」はどうも東京の「やる」と言うことを意味するらしい。また大阪の「党を割る」ということは東京の「割って作る」を意味するようだ。大阪市長・橋下徹も首相を目指すなら男らしく宣言すべきであろうが、永田町が怖いのか、迂回作戦なのか「辞める」「辞める」と、かしましい。結局「おおさか維新」とかの新党を作って、政界転出への足がかりを目指しているのだ。ならば、手っ取り早く新党を率いて自民党に入党したらどうか。
 それよりもっと舞上がっているのが維新の党代表・松野頼久だ。民主党をつい先だって離党したばかりなのに、素直に復党するというならまだよいが、現在はまるで出戻り女が亭主に向かって「財布をよこせ」と言っているような場面だ。民主党を解党させて、名前も変えて新党にすると言うが、少ない方が「戻ってやる」とばかりに多い方を牛耳ろうとするのは置かれた状況が分かっていないということだ。民主党代表・岡田克也が反対しているのももっともだ。大阪府知事・松井一郎が「民主党とその仲間たち」と政界で一番馬鹿にされている某政党をもじって揶揄(やゆ)したのは近年にない傑作語録だ。
 維新の分裂は早いと予見したとおり、早くも安保法案と不信任案をめぐって分裂への流れが著しくなってきている。安保法案の採決に当たって大阪側は「出席して修正案に賛成、政府案に反対」の立場を取る方向だが、東京系は民主・共産両党と同調した強行阻止路線を選択するだろう。また松野らは民主党の国対委員長代理・安住淳が2日表明した会期末の内閣不信任案提出について、賛成する方向だが、大阪系の国対委員長・馬場伸幸は「永田町の悪しき習慣」として同調しない方針を明確にした。こうしてとうとうたる流れは、コイや雑魚も一緒くたに取り込んで、世紀の安保法案成立へと流れて行くのである。


◎俳談

◎俳談     
【ごとく俳句】
◆暮の秋ルオーの顔のごとく行く 朝日俳壇入選
 直喩法とは物事を「~のごとく」と直接的に比較してに表現することを言う。これに対して隠喩法とは白髪を「頭に霜を置く」と表現するなど間接的に表現をする。俳句や短歌では圧倒的に直喩法が多い。
◆金色(こんじき)のちひさき鳥のかたちして銀杏(いちょう)散るなり夕日の丘に      与謝野晶子
は「ごとく」ではなく「かたちして」と珍しい直喩表現をしている。
川端茅舎は「如く俳句」の名手と言われた。その代表句が
◆一枚の餅のごとくに雪残る
である。解け残った雪をこのように見事な直喩で表現した例はない。筆者も「ごとく俳句」をよく作る。
◆春愁の街を用ある如くゆく 毎日俳談入選
◆鬼やんま巡視の如く戻るかな 産経俳壇入選
といった具合である。NHKの写真俳句にも入選した。
◆翡翠の阿修羅の如く狩りにけり

◎デモの若者よ民主、共産のデマを見極めよ

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◎デモの若者よ民主、共産のデマを見極めよ
  佳境に到った妄言虚言の扇動
 60年安保闘争の時に樺美智子が死んだ6月15日のデモが警視庁発表で13万人だったが、今回8月30日のデモは警視庁発表が3万人。主催者発表が12万人。「だいぶん開きがあると思う」と官房長官・菅義偉が皮肉るのももっともだ。しかし安保闘争の13万人は55年たった今も左翼も使って、数字として定着しており、警視庁の数字が正しかったことを物語る。だいたい近ごろの官邸は、正確な判断材料としての数字を求めており、サバを読んだ昔と異なる。したがって今回の3万人のデモの特徴は、問答無用の全学連による暴徒化したデモを目撃した経験から比較すると、極めて平和的、民主的であり、憲法の保障する集会と表現の自由に即したものであった。しかしデモの主張は全学連以上に歪(ゆが)んでいる。と言うか、明らかに民主党、共産党のプロパガンダに踊らされている。
 「戦争法案反対」「違憲法案」「徴兵制反対」の3大プラカードは、皆同じであり、一定の組織からコンビニでダウンロードして印刷したものに他ならない。参院での安保法制成立が14日の週の秒読み段階に入って、民主・共産両党はなりふり構わぬ教唆扇動を繰り返して、廃案を実現しようとしている。いくら民主的デモでも、虚構の扇動に乗るようではまさに烏合(うごう)の衆であろう。政府・与党は、残る審議で忍耐強く野党のばらまく誤解の解消に努めたうえで、法案の成立をはかり、激変する極東環境に即応する抑止体制を躊躇(ちゅうちょ)なく整えるべきであろう。また成立後も国政選挙に向けて国民説得活動の手を緩めない事も大切だ。
 この野党による無責任な扇動の例を最近テレビで目の辺りにした。30日のTBS「時事放談」では民主党のノーバッジで元官房副長官の藤井裕久が想像を絶する虚言を吐いた。安保法制が成立した場合について「この法案により日本の若者はIS(イスラム国)と戦うため中東に行かなければならない。不安はISと直結している。絶対に阻止しなければならない」と発言したのだ。おそらくこの発言は、安保法制史上に残る妄言であろう。野党の質問者ですら「ISと戦うのか」などと言う馬鹿げた質問をする議員は最近いなくなった。しかし、デモ当日の朝の番組で参加しようかどうか迷っていた若者が、けしかけられたに違いない。民主党は代表・岡田克也が「徴兵制」のパンフレット作成を指示しており、これも若者を不安に陥れ扇動する卑怯で悪質極まりないプロパガンダであろう。
 同じく、NHKの日曜討論でもとんでもない事態が発生した。共産党の政策委員長・小池晃がデモへの参加を呼びかけたのだ。小池は「国会の中は多数派が支配しており、民主主義の力で止めなければならない時がきた」と議会制度無視の革命政党へと先祖返り発言をしたうえに、「2時から国会前で大集会がある。是非この集会にきて頂きたい」と発言、社民党の吉田忠智もこれに呼応した。NHKという公共の電波を利用して一政党の広報に活用するというなりふり構わずの言動だが、一見中立を粧う司会の解説委員・島田敏男は制止するどころか延々と語らせたのだ。また、小池は「今度の法案は日本を守ると口実にしながら、アメリカと一体になって世界の中東やアフリカに出かけて肩を並べて戦争をするものだ」と反米教条主義丸出しの「戦争法案」の虚言を吐きまくった。
 こうして集結したデモでは、ミュージシャン坂本龍一がデモの人数を見て興奮したのか「フランス人にとってフランス革命に近いことがここで起こっているのではないかと強く思っている」と宣うた。しかし政党や労組がうそのプロパガンダで集めた人数が3万人。フランス革命に近いと間違うならむしろ、60年安保だろうが、その後の全共闘は成田闘争、日大紛争、東大紛争、東大安田講堂事件と騒動を繰り返し、1972年のあさま山荘事件で壊滅した。今回のデモにそれだけのエネルギーが内包されているかと言えば、まず一過性であろう。なぜなら野党の作った虚構の上で踊らされているだけだからだ。
 こうして国会での論戦で追及に行き詰まって敗北しつつある民主、共産両党などは、無責任な虚言、妄言によってデモを活用する戦術だけに頼ろうとしている。こうした動きを大局から見れば、野党は相変わらずの一国平和主義でいわば「平和降臨」論に終始しており、今すぐそこにある危機を全く度外視している。その活路はレッテル貼りと虚言・妄言プロパガンダそのものであり、一定期間を置いて選挙をすれば国の安全保障をテーマにした総選挙でかつて負けたことがない自民党がまたまた勝利を占めるに違いない。岸信介による60年安保改定が55年間にわたる平和の礎を築いたように、今回の安保法制も確実に抑止力として働き、長期にわたる極東の平和を維持出来るものとなろう。若者もデモで政治に参加することは自由であるが、追い詰められた野党にだまされない判断力だけは養わなければならない時だ。徴兵制はあり得ない。戦争法案ではなく平和法案なのだ。違憲論は曲学阿世の輩の自己主張に過ぎない。


◎俳談

 ◎俳談
【意識下の名句】
◆来し方を見れば独りの花野かな 毎日俳談入選
 花野は秋の季語。よく間違うが春の季語ではない。秋の草花が一面に咲き乱れる野原である。春の野のようにあでやかさはなく、むしろ渋さを感ずる。掲句は「花野の独り」を詠むことによって、人生の孤独のようなものを表現することを狙った。芭蕉の「病中吟」で事実上の辞世の句である
◆旅に病んで夢は枯野をかけ廻(めぐ)る
が潜在意識下にあったのだろうと思うが類想句ではない。類想句とは簡単に言えば猿まね句である。意識下の句は名句の影響を受けている句と言ってもよい。選者もおそらく芭蕉が下敷きにあると感じただろう。しかし、独創性が勝るとして採ったものと思われる。鷹羽狩行の句に
◆昼は日を夜は月を挙げ大花野
があるが、これも蕪村の
◆菜の花や月は東に日は西に
が意識下にあったと思われる。

◎潘基文「反日」の狙いは次期大統領選だ

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◎潘基文「反日」の狙いは次期大統領選だ
  私的野望に事務総長職を乱用

 特派員として取材した経験から国連を長年ウオッチしてきたが、当たり障りのない小国から選出される国連事務総長は、50年代に事務総長を務めたハマーショルドを除いておおむね無能なお飾りであった。ハマーショルドはスエズ戦争などで決定的な役割を果たし、しばしば危険な使命を担うことで、国連の役割を高めようとした。自ら危険な紛争地域にも出かけて体を張って職務を果たした名事務総長である。翻って並み居る無能な事務総長のなかでも飛び抜けているのが潘基文であろう。ニューズウイーク誌はかつて、「グローバルな力量が必用とされるこの時期において、潘基文氏の指揮の下、国連は単に役立たない組織になっただけでなく、あってもなくてもほとんど関係ない存在になった」とまでこき下ろしているが、まずその通りだ。さらに悪いことには最近韓国の大統領選出馬を意識して、事務総長の職をフル活用しだしたことだ。まさに私的野望のために事務総長職を利用しているのである。
 その潘基文がこともあろうに9月3日に北京で行われる「抗日戦争勝利70年」の式典に出席することになった。官房長官・菅義偉が「国連には190か国以上が加盟しており国連はあくまでも中立であるべきであり、加盟国に対して、いたずらに特定の過去に焦点を当てるものではなく、未来志向の姿勢を取るよう促すべきだ。」と批判したのはしごくもっともである。こうした日本政府の懸念表明に対して藩は報道官室を通じて「今年は人類の歴史の中で最も悲劇的な出来事である第2次大戦から70年となる」とした上で、「ポーランドやウクライナ、ロシアでの終戦を記念する式典にも出席してきた」などと説明。「広島市で行われた平和記念式典にも国連幹部を派遣した」ことにも触れ、中立性を強調した。この見解は事の本質を意図的に外している。
 例えば広島に国連幹部などを派遣せず何で自分が参列しなかったかと言えば、アメリカを意識してである。北京の式典に出席するのも常任理事国中国を意識してのことである。藩は2010年に中国国家主席・胡錦濤と会談をしたことがあるが、折から世界の世論はノーベル賞を受賞した民主活動家・劉暁波を拘束から解くべきだとの声が高まっていた。当然世界の目は藩がどう発言するかに注がれたが、一切言及なし。世界世論が呆れ返って「弱腰」の批判が生じたのは言うまでもない。香港民主化闘争についても「内政事項」とはねつける。そこには強い大国にはへつらい、弱者には味方せずという構図が自ずと浮かび上がる。
 加えて世界で最も公平中立が求められる職であるにもかかわらず、国連職員に韓国人をどんどん採用、韓国の元国連大使を重要ポジションに抜擢するなど、立場上避けなければならない人事を平然と断行する。たまりかねた国連職員組合が「親類縁者や友人を頼った求職」を批判する文書を採択する事態もあった。事務総長室にはもちろんサムスン社製の大型テレビだ。ニューズウイークが「レベルの低い国連事務総長のなかでも際立って無能」と批判するのも当然である。
 その潘が事務総長として可能なぎりぎりの外交的な言辞を使って対日批判を繰り返す。13年には慰安婦問題で「日本政府や政治指導者は極めて深く自らを省みて、国際的で未来志向のビジョンを持つことが必用だ」と発言した。これこそ過去に拘泥する韓国の朴槿恵に向けられるべき発言ではないだろうか。発言や北京の反日パレードに参列する姿勢は明らかに事務総長として公平さを欠く行為である。北京のパレードが意味するものはモスクワでのそれとは異なり、対日示威行為に他ならない。それを察した欧米諸国は首脳の参加を控えているが、藩が無視するかのように参列するには訳がある。それは大統領選挙への「事前運動」である。「反日カード」を切っているのである。
 潘基文の国連事務総長としての任期は、途中退任がなければ2016年末だ。韓国の次期大統領選挙は2017年である。藩はかねてから側近を通じて最大野党の新政治民主連合などに「出馬したい」と打診している。次期大統領候補が枯渇している韓国において、藩の出馬への期待は大きい。狡猾にも反日であればあるほど人気は上向く事だけは分かっていると見える。国民の次期候補の人気度について韓国の新聞の調査で藩は40%に達しており、断トツだ。潘の「反日」姿勢は、韓国の国民感情を煽り、大統領選にはプラスに作用する。こうして歴代総長でも例のない総長職をフルに活用しての、「選挙運動」を展開しているとしか思えない事態となっているのだ。「反日」朴槿恵の次に「無能の人」が大統領となれば、韓国の地盤沈下はさらに継続する。日韓関係も悪化の泥沼にはまる可能性がある。日本としては本来なら事務総長辞職を要求してもおかしくない事態である。かつてソ連はハマーショルドのスエズ対応をめぐって辞職を要求したことがあるが、いま藩の辞任を要求をしても、世界的な訴求力には欠ける。今後は「批判的な是是非非」で対応するしかあるまい。