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◎スタートから違う田中角栄と野田の覚悟

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◎スタートから違う田中角栄と野田の覚悟
 「私たち政治家の覚悟と器量が問われている」と首相・野田佳彦が28日の所信表明演説で2度にわたって繰り返えした。ところが翌29日、全国紙全紙の社説が逆に首相の「覚悟」と「器量」を問う論調で統一された。野田の演説から覚悟も器量もうかがえないというのである。確かに野田演説は就任後2か月たっても「安全運転ぼけ」としか言いようのない当たり障りのない内容に留まった。とりわけ焦点の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加は1か月半前の所信表明の「しっかりと議論」が、「引き続き、しっかりと議論」に留まった。これで普通3か月は続く政権とマスコミのハネムーンは2か月で脆くも終わりを告げた形となった。
 確かに「覚悟と器量」と言う言葉を政治家が使うのなら、背景に自らの「命がけ」の気概が読み取れなければならない。リーダーたるもの同僚議員に覚悟と器量を求める話しではあるまい。戦後、覚悟と器量をもとに首相が事に当たった大場面は2回ある。今にして思えば、いずれも国の興亡がかかっていた政治判断であった。ひとつは岸信介による日米安保条約改定であり、もう一つは田中角栄の日中国交正常化交渉である。安保改定は60年以来既に半世紀が経過しており歴史の彼方に置くとして、まだ40年しかたっていない日中正常化を例にとろう。
 TPPと比較すれば日中復交は、「農協がTPP反対をわめいて走っている」(民主党政調会長代行・仙谷由人)程度のレベルの話しではなかった。田中にとっては台湾との断交を意味するだけに党内極右や親台派を押さえ込み、右翼のテロ、暗殺から身を守らなければならないまさに「命がけ」の勝負であった。「国賊・田中角栄」のビラが都内いたるところにに貼られ、右翼が街宣車を連ねて、官邸周辺でがなりまくっていた。事実、田中訪中当日に血判書つきの抗議文を懐に、猟銃で暗殺を企てた右翼の青年が警察に逮捕されている。田中は「しっかり議論」の野田とは異なり、内閣発足当日から腹が据わっていた。政権発足の72年7月7日夕、田中は初閣議の後の首相談話で早くも「外交については、中華人民共和国との国交正常化を急ぎ、激動する世界情勢の中にあって、平和外交を強力に推進していく」と方針を明示している。
 そして周辺には「俺は今が一番力の強いときだ。日中は一気にやる。党内は台湾派が多い。党議決定が難しければ政府声明でケリをつける。今後力が弱くなればできるものではない。殺されるのは覚悟のことだ」と漏らしている。就任早々が支持率も高く、一番政権の強力なときであり、その力をてこに最重要課題を処理するという判断であり、今でも通用する。野田は自らの言う「スピード感ある政治」とは、まさにこうした対応を言うことを理解していない。田中を支える外相・大平正芳もまた決死の覚悟であった。秘書に「万が一この交渉が不調に終わった場合には、自分としては日本に二度と帰る事が出来ないかも知れない」と言い残している。政治家の真の覚悟と器量いうものはこうしたものであるべきだろう。
 翻って野田の姿勢と比較すれば、自らの政治理念を達成するために首相になったと言うより、「私は崖っぷち」と述べているように、手練手管を使って「民主党政権」を一日でも長引かせようというところに傾斜しているように見える。だから所信表明での「決断」を期待した全国紙各紙を「国民への説明を避けているに等しい」(朝日社説)と怒らせるのである。農協関係者や反対派議員、学者の論調をテレビの討論で聞き、つぶさに検討を加えたが、矛盾、撞着だらけであり、首肯出来るものはひとつもなかった。国論を2分している論議は、明らかに推進派の勝ちである。自民党の論客・小野寺五典の主張ですら、偏狭で聞いていられないものだった。反対派の議論は安保、日中の時の理論武装に基づいた反対論とは比較にならないほど“ヤワ”で理念に欠け、農協などは「団体あって国家なし」の呈である。
 だいたい「交渉にも参加するな」というのはどういうことか。交渉に参加して、主権国家としての利益を代弁して主張を堂々と述べるべきだ。参加国ではアメリカに次ぐ国内総生産(GDP)である日本の主張は、会議の動向を大きく左右するに違いない。交渉に参加して日本の主張を通すのが本筋の流れではないか。通らなければ脱退すればよい。それが外交の基本だ。冒頭から述べているように、この程度の反対論は、激動の歴史から見ればちゃんちゃらおかしいのだ。これに野田が怖じ気づいているとすれば、自ら保守と任ずる野田の「器量」が問われる。歴代の「保守の首相」に申し訳が立つまい。ここは国家の興亡がかかる場面であり、首相たる者ふらついてはいけない。いいかげんのところで党内論議に区切りをつけ、首相裁断で交渉参加を表明、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で交渉参加に踏み切るべきだ。


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◎“土遁”の野田政権、崖っぷちの攻防段階に

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◎“土遁”の野田政権、崖っぷちの攻防段階に
 政権発足2か月ともなると、“本性”が見えてくる。首相・野田佳彦の政治路線はひたすら刺激回避の低姿勢に徹している。まるで忍術の「土遁(どとん)の術」で、泥に這いつくばったドジョウと化して時々姿まで消える。オレがオレがで八方破れの前・元首相への逆張りである。その路線は「脱・脱官僚」による「政官協調」、「政策決定の自民党化」など政権維持の急所を押さえており、野党も一時「主敵喪失感」が生じた。しかし、この土遁の術もこれまでだ。今日28日の所信表明演説を皮切りに、政局秋の陣が始まる。自ら「崖っぷち」と語ったとおり、待ったなしの正念場となる。
 逆張り低姿勢政権は戦後2回ある。安保改訂の岸信介の後の池田勇人と、消費税増税の橋本龍太郎の後の小渕恵三だ。池田は「低姿勢」と「寛容と忍耐」で、小渕は「人柄の小渕」を売りに、ひたすら低姿勢を演じた。野田政権の2か月を観察すると、池田と小渕を足して2で割ったような印象を受けるが、池田のように「所得倍増」といった大衆を魅了する理念はない。また「ブッチホン」の小渕が各方面や民間テレビ番組にまで電話をかけまくったような、大向こううけは狙わない。むしろ、ひたすら党内と野党、官僚、マスコミにだけに気配りした、“政治のプロ”対策の低姿勢だ。
 その逆張りは、代表就任直後から始まった。民主党政調会長の権限強化策だ。政策決定で政調会長重視を打ち出したのだ。これはマニフェストの内閣一元化を改めるもので、まさに民主党が批判してきた自民党型政治への大変身である。内閣は事実上次官会議を復活させ、「政官共存」を印象づけた。外務次官からの国際情勢聴取も頻繁に行われるようになった。政権奪取で舞い上がった鳩山由紀夫とは逆に、内政・外交共に慎重路線を選択。支持率目当てに小沢一郎と対決した菅とは逆に、支持率を犠牲にしても小沢一郎との協調路線を選んだ。
 この結果、今のところは小沢の“くびき”から事実上外れることに成功しているように見える。鳩山は小沢を幹事長に据えて党高政低の2重権力構造で苦境に陥り、菅は小沢との対決で瀕死の重傷を負ったのとは対照的だ。するりと抜けるドジョウの政治の面目躍如であろう。TPPに関する発言を見れば分かるが、小沢側近の幹事長・輿石東も、政調会長代行・仙谷由人も野田への協調姿勢を維持している。このように野田は、極めて刺激を避ける政治手法で、政権の基盤を固めつつあるように見える。2か月間という短期間にしては、大きな転換を成し遂げつつあるようだ。
 「私は民主党で3人目の首相になった。崖っぷちであると強く意識している」と自ら述べているように、後がないからこそ、前2代の轍を踏まない路線を選択しているのであろう。しかし野田は連合会長の古賀伸明との会談で「社会保障と税の一体改革、環太平洋経済連携協定(TPP)は11月がヤマになる」との見通しを示している。就任後の2か月はまだほんの前哨戦であることを十分認識しているのであろう。その証拠に、低姿勢だけでは処理不可能な問題がひしめき始めた。
 野党との話し合い協調路線もとても維持できる情勢ではない。28日からは環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる党内論議が本格化する。政権与党を2分、野党も巻き込んで、来月12日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)を期限に、ぎりぎりの議論が続く。8日頃には野田の最終決断を迫られる状況に至ると予想される。社会保障と税の一体改革、すなわち消費増税も来年の通常国会に法案提出の流れであり、来月から年末にかけて最終決断を迫られる。国会の論戦は来週明けから始まり、野党は通常国会での解散実現のための前哨戦と位置づけて本格攻勢を仕掛ける。小沢に対する証人喚問要求や、マルチ商法献金の消費者担当相・山岡賢次ら閣僚に対する追及も、山岡への問責決議まで視野に入れた攻勢に発展する可能性がある。2か月で急ごしらえした防波堤は今後、つぎつぎに到来する大波で突き崩されかねない段階に入るのだろう。


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◎TPPが農業再生に直結することを理解せよ

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◎TPPが農業再生に直結することを理解せよ
 環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題のすべては、農業人口の“超高齢化”の危機に尽きる。放置すれば数年を経ずして日本の農業は滅びるのだ。端的に言えば座して死を待つのか、TPPで打って出て崩壊する農業を税金で守る国力を維持するのかの選択なのだ。捨てておけば農業・工業抱き合い心中の構図となる。先の見えない政治家たちが農業団体の旧態依然たる政治工作に踊らされて、国論を2つに割ろうとしているが、なぜTPPが回り回って農業再生に通じることを説かないのか。首相・野田佳彦はそこを見極めて国論を統一、早期の交渉参加決断をすべきである。
 農業従事者の平均年齢は現在66・1歳であり、70歳代後半~80歳代の昭和1ケタ生まれが4分の1強を占めるに至った。この日本の人口の3%に満たない約300万人の農家が日本の農業を支えているのである。高齢化は一層進むことが避けられず、放置すれば今後4,5年で崩壊への水流は加速し、10年以内にナイヤガラ瀑布が落ちるように一挙に崩壊する危険があるとみられている。なぜ、高齢化したかと言えば、農家の子弟が2次3次産業に従事して、農業を引き継がないからである。これが物語ることは、一家族または親族の中に農業従事者と商工業従事者が混在している構造である。ここに何故激しい対立を生じさせなければならないのだろうか。TPPの推進は二者択一ではなく二者融和の構図が必要なのである。外相・玄葉光一郎が「外に目を見開いて打って出ないと,子供,孫に豊かさを引き継げない」と述べているとおりだ。
 それをぶちこわしているのが全国農業協同組合中央会(JA)などの利益団体の動きだ。お手の物の政治工作で政治家を脅し、すかして動かそうとしている。26日の集会でも与野党の実力者を集めて華々しく反対論をぶち上げさせたが、筆者に言わせれば「タコが自分の足を食っているようなもの」なのだ。一部政治家は目先の農業票や既得権益の誘惑に駆られ、日本の農業を強くする本来の目標を見失っているのだ。前述の理由で衰退の極みに達しようとしている農業を救うのは、税収によるテコ入れしかない。首相・野田佳彦が議長を務める「食と農林漁業の再生実現会議」が農業再生の基本方針と行動計画をまとめたが、その最大のポイントは「消費者負担から納税者負担への移行」を掲げたことだ。「納税者負担への移行」とは、税金を使って国が直接農家を助けるということだ。これまでは国際的な価格に比べて割高な農産物を、「消費者負担」で支えてきたが、税金による負担に変えようというものだ。
 これが意味するところは、農家からの税収ではなく、国家財政の大半を占める工業・貿易立国による税収を充てるのだ。それにはTPPへの参加が必要不可欠の前提条件になるという国際潮流を理解せねばなるまい。自動車や電機といった日本の主力産業でライバルとなった韓国の動きを見るがよい。欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)に続いて、米国とのFTAも成立させた。米国ではトラックにかかる25%の関税が撤廃され、EUでは薄型テレビの14%の関税が、撤廃されていく。これでははっきり言って日本の工業製品は勝負にならなくなる。下手をすれば農業も工業も抱き合い心中となりかねないのだ。日本の産業界は危機感を強めており、欧米や欧米とFTAを結ぶ地域への工場移転に拍車がかかりかねない状況が生まれようとしている。そうなれば税収減で農業改革のための「納税者負担への移行」などは夢のまた夢となるのだ。だからJAは「たこが足を食っている」というのだ。もちろんコメなど基幹農業分野での関税はこれまで通り維持すればよい。国際競争力を付ける耕作面積拡大への補助金投入も可能とすべきだろう。
 だいたい3%にみたない人口を基盤とするJAに動かされる政治家たちも先見の明がない。このままでは国論は二分して勤王、佐幕の戦いになる。しかし尊皇攘夷派が明治維新後は節操もなく欧化政策をとったことが証明するように、反対のための反対をしているときではない。TPP開国が、農業にプラスに働くことを見逃してはならない。おそらく野田は、野党、とりわけ公明党の強硬姿勢に遭遇して、当初の考えをふらつかせているに違いない。首相自身が議論を指示しながら、様子見では過去2代にわたる「食言首相」と同様の烙印を押されることを覚悟した方がよい。全国紙のすべてがTPP推進論だ。うちに閉じこもっていては、日本に未来はない。経済開国は即農業再生につながるのだ。野田は勇気ある決断をするときだ。

 


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◎普天間対応は「展望なき一手」でなく“正直”になれ

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◎普天間対応は「展望なき一手」でなく“正直”になれ
 下手な俳句を作ると句会で「だからどうしたい」とやり込められる。注目の日米防衛相会談でも一川秀夫は全く同様に米側から「だからどうしたい」と言われかねないその場しのぎの提案をするにとどまった。環境評価書の年内提出くらいでは、とても米政府が海兵隊グアム移転予算を人質に取っている上院を説得できる材料にはなるまい。一川の窮余の「展望なき一手」は、かえって沖縄側の「頭越し」との反発を招き、普天間移設問題深刻化の度合いを深めた。
 普天間基地の辺野古への移設問題のポイントは、日米双方が極めて困難であると理解しながらも、当面を糊塗する対応をせざるを得ないところにある。米側は普天間移設と連動する海兵隊のグアム移転について、議会上院が関連予算を凍結している現状をいかに打開するかの問題を抱えている。しかし上院では既に現行計画が不可能との見方が定着しており、上院軍事委員長のレビンが国防長官・バネッタと訪日を控えて会談、計画の変更を日本政府に申し入れるよう要請している。「お互いに正直になろうと日本側に伝えてほしい」と要望したのだ。沖縄タイムズ紙によると、レビンはワシントン市内での講演でも、沖縄県内の移設に対する強い反対、米国内での国防費削減圧力などを挙げ、実現が見通せない現行計画を「なぜ変えないのか」と疑問を呈した。その上で、「現行計画については日米双方が問題を自覚しているのに、なぜ公式に認めることができないのか。費用がかかり過ぎる。実現は不可能だ」と表明しているのだ。
 一方、鳩山由紀夫の大失政の羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹いているのが野田政権の対応だ。鳩山失政で見通しが立たなくなったにもかかわらず、日米合意に固執している。この結果、「正直になろう」という呼びかけに逆行したのが、一川の環境評価書を年内に沖縄県知事・仲井間弘多に提出するという手続き論への固執だ。評価書を提出すれば知事は90日以内に意見書を防衛相に伝達する。その上で防衛省は辺野古埋め立ての知事への申請が可能となる。その時期は来年6月以降とみられる。政府部内には振興策なども絡めて説得すれば仲井間も折れてくれるという期待感があるが、見通しが甘いのだ。仲井間が「ゴー」のサインを出すことはまずあり得ない。あくまで県外移設を主張し続けるものとみられる。パネッタは一川の方針に「非常に嬉しい」と述べたが、外交儀礼を喜んではいけない。
 なぜなら、一川との会談でパネッタが議会への説得材料を得たかというと疑問だからだ。日本側に手続き論の上になければならない「決断」がないからだ。決断とは端的に言えば日本政府が首相・野田佳彦以下、沖縄現地や国内の反対論を押し切ってでも埋め立てを強行する腹が据わっているかどうかである。そしてこの方針を極秘裏にでもパネッタに伝えたかどうかだ。しかし、首相の決断が行われた気配はなく、ましてや伝わった気配など皆無だ。会談で、一川が「速やかに海兵隊のグアム移転を」と要請したのに対し、パネッタは「グアムへの移転を進めるためには、普天間基地の代替施設の完成に向けて具体的な進展を得ることが重要である」と駄目押しをしており、まだ前哨戦の段階に過ぎない。したがって、筆者がかねてから指摘しているとおり、「手続き論」ではただのアリバイ作りと時間稼ぎにすぎないのである。
 仲井間は「詳細を知り得ない」としてコメントを避けているが、
環境書そのものに反発しており、「県外」の主張が変わることはあり得ない。沖縄知事が国家の安全保障を左右する事態への不満が一部に生じているが、それでは政府が全国的な広がりを見せかねない「普天間大闘争」に直結する決断をすべきだというのだろうか。古色蒼然の東西冷戦時代の頭で物事を考えてはいけない。冷戦時代だったからこそ安保闘争を押さえ込むエネルギーが政府に生じ得たのである。中国の台頭で北東アジアの情勢は厳しさを増しているが、ここで基地闘争、反米闘争の寝た子を起こすのは愚策中の愚策だ。喜ぶのは中国と韓国だけだ。安定した日米安保体制が不可欠であるからこそ、レビンが主張しているように頭と智恵を使って現行計画の変更をする必要があるのだ。


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◎解散は「見えぬけれどもあるんだよ」

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◎解散は「見えぬけれどもあるんだよ」
「解散はいったいどこへ行った」「う~む、見つからん」これは大局観のない政治の素人のの床屋談義。玄人は見つからなくても見つけるのだ。まず一番可能性がないのが任期満了による衆参ダブル選挙。可能性があるのは来年3月以降、通常国会末までの解散だ。野田政権は年内解散はしのげる流れだが、通常国会は消費増税をはじめとする政治決戦の材料が山積している。これを切り抜けることは極めて困難だ。政権スタート早々はご祝儀で「解散ない」論が隆盛を極めても、次第にメッキがはげてくる。自民党が真剣になれば追い込めるのだ。
 ではまず大局観なるものから説くとしよう。その最たるものは有権者の多くが鳩山由紀夫、菅直人両政権の体たらくを見て、民主党への投票を失敗と感じたことだ。いったん冷めた感情はなかなか消えるものではない。早く失敗を是正したい有権者心理が働いて、国会に反映する。次に戦後第一回の総選挙が昭和21年に行われて以来、平均2年7か月ごとに解散・総選挙に突入している。民主党政権だからと言ってこれを免れることは困難だ。2年7か月目は消費税論議の渦中となる来年3月に来る。次に野田政権の抱える問題が大きすぎる。増税、しかも連続パンチだ。復興増税に加えて、消費増税も通常国会で俎上(そじょう)に載せざるをえない。消費増税を否定して308議席を取った以上、公約を変えるのなら総選挙で国民の信を問うのが憲政の常道だ。
 加えて野田は時限爆弾や地雷の荒野を行くがごとしだ。時限爆弾は政治とカネの陸山会事件での小沢判決が来年4月には出る。秘書3人の有罪に次いで、小沢も有罪となれば時限爆弾は破裂する。地雷はあまたある。まず、実現困難な普天間移設問題に“前向き”に取り組もうとしているが、不可能である事だ。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加も党内に根強い不満を残す。やめる選択をすれば貿易立国の放棄となり、国中から総スカンを食らう。やらざるを得ないのだ。これらの不満が内閣に向けられた場合、屋台骨が折れずに済むかと言うことだ。専門知識の乏しい財務相・安住淳、防衛相・一川保夫、マルチ献金の山岡賢次などが野党の総攻撃の対象となって持ちこたえられるかどうかだ。
 このように野田政権を取りまく政治情勢は厳しく、野田の周辺のように、のほほんと「2年後の任期満了・衆参ダブル選挙」などと言っていられるものではない。おまけに荒唐無稽にも「最高裁判決の『一票の格差』を是正しない限り選挙が出来ない」などと言う。これは本末転倒で、司法判断が首相の解散権という最重要判断を左右した例は過去にない。訴訟が起きても選挙後の話しだ。そもそも、任期満了選挙は三木武夫が田中角栄に解散を封じられて、できないまま仕方なしに任期切れで選挙を行ったものだ。政権は解散に打って出ないと敗れるというジンクスを作った。この一例があるだけで残りはすべて解散に打って出ている。衆参ダブル選挙は確かに投票率が高くなり、政権党に有利に働く。しかし過去の例としては大平正芳のハプニング解散と、中曽根康弘の死んだふり解散があるだけだ。
 この1度しかない任期満了選挙と2度しかないダブル選挙を合体させて実現できるかというと、至難の業と言うほかない。出来ない方向へのマイナス効果が生じてしまうのだ。そこで重要なのは野党が腰を据えて解散・総選挙へと追い込むことが出来るかどうかだ。自民党総裁・谷垣禎一は大震災で菅を3月解散に追い込めず、不信任案の否決で6月解散も逸した。3度目の正直である通常国会での解散・総選挙を逃せば谷垣の首は間違いなく飛ぶ。
 ところで、通常国会での解散の可能性は、激突型と話し合い型の両方があり得る。対決型は内閣不信任案、問責決議案などを上程して可決を目指すものだ。これにはマニフェストで欺いた消費増税路線が格好の材料になる。3月頃から今年と同様に特例公債法案を人質にとって揺さぶりをかけ、「小沢有罪判決」を機に不信任・問責決議を上程して最終決戦に持ち込む。この戦略が一番可能性が高い。しかし話し合い解散の可能性も除外できない。自民党は消費税で対決と言っても、同税導入は公約である。公明党も、小政党が敗北必至のダブル選挙を望んでいない。そこで消費税成立を条件に話し合い解散が成立しうるのだ。増税は政権政党にとってマイナスだが、話し合い解散なら民・自・公の「三方一両損」となり、民主党は1人負けを回避できる。与野党合意形成型首相の野田にとっては垂涎の解散パターンかも知れない。こうみてくるとやはり来年の通常国会は解散風どころか暴風が吹きすさぶと見るべきであろう。


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◎野田内閣「四大懸案」の可能性を検証する

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◎野田内閣「四大懸案」の可能性を検証する
 「安定した政権でも一内閣一課題というのに、大課題を全部やろうとしている。政権の体力が続くのか」と自民党総裁・谷垣禎一が疑問を投げかけている。確かに復興増税の第3次補正予算案を手始めに環太平洋経済連携協定(TPP)、普天間基地移設、消費税増税など超ど級の課題を抱えて、いずれも首相・野田佳彦は前向き姿勢を示している。しかし「やる」と「出来る」は別問題。一つ一つ検証すれば出来るものと不可能なものが混在していることが分かる。週末28日の所信表明演説を皮切りに、本格論戦の火蓋が切られるが、難航必至の船出となろう。
 まず補正予算案は、ことが災害復旧の「黄門の印籠」となっているだけに、成立しないと言うことはまずあり得ない。焦点は、公債償還期限だ。財源に充てる臨時増税案を何年に振り分けるかだ。当初10年を主張していた民主党は公明党の主張を入れて15年で償還の方向に固まったが、自民党がまだごねている。さすがに60年は長すぎるとみたか政調会長・茂木敏充が23日のNHKで「30年」まで降りたから、15年をさらに少し伸ばせば自民党のメンツも立つ。このさい与野党は互いのメンツにこだわらず、妥協による早期成立を目指すべきであることは言うまでもない。11月中下旬には成立の運びとなろう。
 TPPは来月12日の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議までに野田が交渉への参加を決断せざるをえない状況であろう。野田は「アジア太平洋地域は間違いなく成長のエンジンとなる。高いレベルでの経済連携は日本にとってプラス」と踏み込んでおり、もはや後に引けまい。問題は党内の反対勢力をいかに押さえ込むかだが、来月上旬には見切り発車をせざるを得ないのが実情だろう。反対派説得に当たって、筆者は先に2段階方式を提唱した。交渉に入って国益を害すると分かれば脱退する方式だ。これについて政調会長・前原誠司が23日のNHKで「交渉に参加して国益にそぐわなければ撤退もあり得る」と発言、2段階方式で党内を説得する方向を鮮明にさせた。反対派は前農林水産相・山田正彦が離党を示唆してすごんでいるが、こちらの方もやりきれるかどうか。小沢一郎は「自由貿易は最も日本がメリットを受ける。原則として理念的にはいいこと」と前向きだ。
 消費増税は難航含みだ。ここにきて財務相・安住淳が主要20か国・地域(G20)の会議で、財政再建の具体策として消費増税法案に前向きの言及をした。消費税率を10%に引き上げるための関連法案を来年の通常国会に提出する考えを表明したのである。国際公約にしてしまった形となった。前原も「年内には消費税に関する考え方をまとめて、通常国会に提出する」と明言している。もう消費増税も引くに引けない問題となり、臨時国会段階から前哨戦が始まる。自民党は反発しているが、10%への引き上げは同党の公約である。だいいち、自公政権が09年に成立させた税制改正関連法の付則には、今年度までに消費税を含む必要な法制上の措置を講ずると明記されており、反対は矛盾する。問題は谷垣が指摘するように「民主党はマニフェストでは消費税を否定しており、導入するなら国民の信を問うべきである」という主張である。これはまっとうであり、通常国会では消費増税と解散論が一体となって転がるものとみられる。
 普天間の辺野古への移設問題は、野田がやはりオバマに早期解決を約束したが、まず99%不可能だ。野田は閣僚3人を派遣して瀬踏みをしているが、知事・仲井間弘多をはじめ沖縄側は箸にも棒にもかからない。移設を強行して、ピケを張った老人に死傷者でも出れば、その時点で政権は“サドンデス”の宣告を受けたことと同じだ。日米両国政府とも不可能を可能と言いくるめることは、お互いの国民や議会を欺くことにつながる。普天間は確かに日米関係に刺さったとげであるが、日米安保の大道をこれで揺るがせてはなるまい。結局時間をかけて再交渉するしかあるまい。こう見てくると野田が前向きな四大懸案のうち復興増税は成立の流れ、TPPは前進可能。消費増税の通常国会成立は未知数。1国会では無理かも知れない。普天間は不可能という流れが鮮明となってくる。
  


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「言葉狩り」を避けたマスコミ主流:平野発言 

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◎「言葉狩り」を避けたマスコミ主流:平野発言 
「マスコミと言ってもいささか広うござんす」と反論したいのが、20日の民主党幹事長・輿石東のマスコミ批判。震災復興担当相 ・平野達男の「馬鹿」発言を批判するマスコミを、代議士会で「マスコミが半分くらい世の中を悪くしている」と決めつけたのだ。しかし同じマスコミでも、発言を歯牙にもかけなかった全国紙と、産経や一部スポーツ紙、民放のように、首を取らんばかりに報道したケースとは月とすっぽんほど違う。小沢一郎擁護の輿石自身の姿勢や自らが指導する日教組を「日本を9割くらい悪くしている」と批判する方が説得力があることが分かっていない。
 筆者は平野の「私の高校の同級生みたいに逃げなかった馬鹿なやつもいる」という発言を聞いて、「また言葉狩りが始まるのか。その価値はないと」即座に判断、無視することにした。「馬鹿」発言にも親しみを込めて言うケースと、批判して言うケースがあり、そこに日本語の複雑多様な含蓄があると思ったからだ。マスコミは、自粛とセンセーショナリズムの二つにくっきりと分かれ、政治家や評論家の反応も割れた。全国紙のうち朝日は4面ベタ扱い。読売も4面2段でさらりと報じた。特筆すべきは朝日が20日付の天声人語で、読売が編集手帳でそれぞれ、平野発言を擁護している点だ。天声人語は「扱いが難しい言葉だけに、発言に逸脱感はあるにせよ、前後の文脈はまっとうだ」ととらえ、編集手帳も「言葉は文脈のなかで生きている。一語を抜き出して『けしからん』と非難しても意味がない」とした。いずれも発言全体をとらえた判断がある。
 一方で、真っ正面から批判の大展開をしたのが産経。19日は1面3段で「平野復興相が失言」5面で「与野党から批判の声 人間として問題」と大々的に報道。極めつけは社会面で「母は馬鹿だから死んだのか」と被災者に言わせて報道するという、あってはならない感情的な側面まで見せた。20日付社説でも追い打ちをかけ「考えられない失言であり、緊張感を欠き、内閣のたがが緩んでいる」と主張した。このようにマスコミの判断が分かれるのは、間違いなく背景に編集局首脳の判断がある。「やれ」と言う判断と「必要ない」と言う判断だ。産経の場合は各部にまたがる全面展開だから、トップクラスの判断があったに違いない。しかし明らかな誤判断であった。その後、事態は全然辞任論などへと発展しないことからも分かる。この判断力の有無は,

編集者に不可欠な平衡の感覚を示せるかどうかの重要な場面であった。
 一方、自民党副総裁・大島理森が、「大臣として許されざる言葉だ。人を傷つけるような言葉を平気で言う、この政権に復興はできない」と述べ、政治評論家の森田実が「責任をとらせないといけない。野田首相の任命責任も問われる。20日からの国会で野党は徹底的に追及すべきだ」と述べているが、いずれも方向性を疑う発言だ。あさってを向いているのだ。マスコミによる閣僚の失言追及には昔から、憲法9条がらみや中国、韓国など外交がらみ、黒人への差別発言など人種差別などがあるが、このところクローズアップしているのが大震災、原発事故がらみだ。しかし、復興担当相・松本龍の知事に対する暴言、経産相鉢呂吉雄の「放射能付けちゃうぞ」発言の場合はその発言の異常性から言って、辞任は当然だった。
 平野発言はいくらのことにもあげつらうのはおかしい。まず国会答弁を見ていれば平野がまじめで、真摯な人柄であることが判る。だいたい「馬鹿野郎」などという発言は、芸能人の葬式の度に繰り返される流行語のようになっている。「親方、大変だ」と言って持ってくる駆け出し記者の情報を、そのままニュアンスも付けずに報道する方がよほど「馬鹿の一つ覚え」なのであろう。かって公明党・創価学会の言論出版妨害や、部落解放同盟の「言葉狩り」に悩まされたマスコミが、自ら言葉狩りに乗り出すことはよくよく気をつけねばなるまい。とりわけ自らの論調に反する発言は、これが見えぬかとばかりに「印籠」を出して従わせる傾向が目立つケースには問題がある。
 もっとも権力者の側からの批判も願い下げだ。輿石の就任早々からの情報統制的な発言や、マスコミ批判、そしてこれに拍手する民主党代議士たちの様子を見れば、嫌な雰囲気が醸成されつつあると疑いたくなる。国を悪くしたというなら日教組ほど悪くしたものは無い。加えて小沢を「これからも滅多に出てこない卓越した政治家。小沢さん抜きの民主党はなく、小沢さん抜きの民主党の将来はない」と“礼拝”する政治が日本を悪くしていないかということだ。一部マスコミもマスコミだが、輿石にだけは言われたくない。フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあおしめえよ」だ。


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◎政府は温室ガス25%削減の欺瞞から抜け出せ

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◎政府は温室ガス25%削減の欺瞞から抜け出せ
 破たんしているのに固執するのでは戦前の小学校教科書だ。環境相・細野豪は「シンデモ ラッパ ヲ クチカラ ハナシマセンデシタ」なのだろうか。普天間移設と並んで鳩山由紀夫の2大愚策である温室ガス25%削減の中期目標を、まだ維持し続けるというのだ。大震災で脱原発・減原発へと走っている政権が、温室ガスではきれい事にすがる。やはりパフォーマンスの「民主党病」は依然として病膏肓(こうもう)に入っているとしか言えまい。国際社会は、とっくに日本が達成不可能になったと理解しており、来月から南アフリカで開かれるCOP17では、25%削減の主張による存在感発揮などとてもおぼつかないのが分かっていない。
   日本経団連会長・米倉弘昌会長は19日細野との会談で、「中期目標については、政府のエネルギー政策の見直しと合わせて再検討をお願いしたい」と述べ、COP17を前に中期目標の見直しを求めた。ただでさえ大震災で電力事情が厳しくなった中で、25%削減の重荷が企業にかかっては、産業の空洞化に拍車がかかることは目に見えており、要望はもっともだ。しかし細野は「現時点で再検討することは難しい」と述べ、今後も維持する考えを示した。
 問題は細野が出来もしないことを何故主張し続けるかだが、一つは国会で地球温暖化防止法案が継続審議中であること。もう一つは鳩山が掲げた25%削減が、御用学者らの理論武装もあって独り歩きし、国際社会で引くに引けない状態になっていると思い込んでいることだ。しかし温暖化防止法案も、米ウオールストリートジャーナルから「サムライの腹切り」とやゆされているほどであり、民主党内からも「法案から25%削減を削除すべき」との有力意見が台頭している。国際社会も開発途上国においてすら大震災後の日本の電力事情を十分承知しており、むしろ同情論が出ているほどだ。
 そもそも環境庁の試算そのものが達成不可能を明示しているのだ。福島第一原発6基を廃炉にした分だけでも火力で補うと、目標を約8ポイント下回るという。加えて原発新増設は認めず、休止中の原発再稼働は遅々として進まないし、古い原子炉は廃炉にするわけだから、物事は目標の達成とは逆方向に進んでいるとしか言いようがない。自然エネルギーなど2020年の期限に間に合うわけがない。細野は「中期目標はすべての主要国が温室効果ガス削減に意欲的に取り組むことを前提としており、この条件は主張していきたい」と中国・米国の参加がない限り中期目標は作動させないような発言をしている。それでは最初から「出来っこないからよいのだ」という“欺瞞”が存在することになるではないか。また、鳩山のパフォーマンス政治が25%だけを際立たせてしまったことを忘れている。
 誰もが達成不可能になったことを知っているにもかかわらず、固執し続けるのは国の外交にとってあってはならないメンツ優先であって、そこには国益はない。専門家が「私たちは震災があっても温暖化防止のために最大限頑張るのだと言い続けるべきだ」などと述べているが、どこまで学者というのは現実から遊離しているのだろうか。25%を企業に押しつけるばかりか、実現には家庭の電力消費を約10年で半減しなければならなくなるという予測もある。日本の家庭だけは戦争直後のように裸電球一個で暮らすのか。要するに愚昧な首相が言ったことに、いつまでも固執し、踊らされ続けるべきではない。出来もしない空想性虚言を吐き続けるのは国家として恥の上塗りになる。25%など早々に取り下げて、実現可能な数値でCOP17に臨むべきではないか。それが国としての誠意というものだ。それにつけても鳩山の遺した負の遺産はあまりにも大きすぎるものがある。


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◎首相、TPP交渉参加を先行、普天間「後ずさり」

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◎首相、TPP交渉参加を先行、普天間「後ずさり」
 20日からの臨時国会、来月12日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を控え、野田政権の真価を問う環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加と普天間移設の両問題がクローズアップしている。首相・野田佳彦の言動を観察すると、TPPには一歩踏み込んで少なくとも交渉には参加する姿勢だろう。一方で、普天間移設には「前向き後ずさり」の姿勢が手に取るように分かる。
 17日の記者インタビューにおける発言でも微妙なニュアンスが出ている。野田はTPPと普天間について両方ともそれぞれ「なるべく早く結論を出す」と発言したが、その前提がポイントだ。TPPについては「広い視野で議論し」が前提だが、普天間については「いつまでと確定は出来ないが」が前置きだ。言ってみれば前向き発言と慎重発言の差が歴然としている。これを裏付けるようにTPPについては踏み込んでいる。幹事長・輿石東と示し合わせて、巧妙に党内世論をリードしようとしているのだ。輿石は、首相が「母に背負われて稲刈りに参加した私が、日本の農業をTPPでダメにする発想を持つことは絶対にない。日本農業も世界経済の流れの中で再生し、全世界に発信していく」と述べていたことを明らかにした。野田は、最大のポイントである農家対策で反対派をなだめようとしているのだ。
 輿石も「APECに行くのに、一国の総理がTPPについて『まだ検討中ですから』なんていう話はできない。日本の国を代表する総理として、一つの考えを持って行かれるようにしなければいけない」と踏み込んでいる。これが裏付けるところは、少なくとも野田はAPECにおいて「とりあえずの交渉参加表明」をすることで、国内の一任を取り付けようとしているに違いない。訪問中の韓国が米国との自由貿易協定(FTA)で合意して先行している状況下において、もはや貿易立国としてちゅうちょできないという判断があるものとみられる。マスコミも読売新聞が19日付の社説で「開国へ早期参加を表明せよ」と背中を押しており、もう引くに引けない段階に入った。引けば鳩山由紀夫並みの「食言首相」となる。
 一方でやはり米上院の強硬姿勢で焦眉の急を要する普天間移設には、慎重だ。むしろ野田は時間稼ぎに出ているとみた方がよい。このところ総務相・川端達夫、防衛相・一川保夫、外相・玄葉光一郎らを相次いで沖縄詣でさせている。閣僚を訪沖させているがTPPと異なり自らは動かない。最近急に政府が辺野古周辺の環境アセスメントの評価書を、年内に沖縄知事に提出することがクローズアップされているが、専門家の間では9月からささやかれていた話しだ。18日にも書いたように、むしろ事務的手続きであり、これが原動力となって物事が動き出すとみるのは浅薄だ。評価書を受けて沖縄県知事・仲井眞弘多は90日以内に意見書を出すことを法的に義務づけられるが、「事実上不可能で、埋め立て許可の可能性なし」と漏らしており、回答は「ノー」だろう。
 仲井間は鳩山が一昨年の名護市長選で反対派の稲嶺進を応援して当選させた時点で、移設は破たんしたと感じており、もう意固地なまでの知事の姿勢を覆すことは出来ない。それではなぜ政府がアセスに前向きかと言えば、一川が就任早々自らを「安全保障に関しては素人だ」と述べたとおりだ。確かに一川は素人路線を邁進している。月末には国防長官・パネッタが来日するし、野田は小浜との会談で「沖縄の理解を得るよう全力を尽くす」と早期解決に言及した。一川はポーズというかアリバイづくりというか、その類いのものをしなければと焦っているのだろう。見え見えなのだ。朝日新聞が19日付の社説「展望なき一手の愚かさ」で、火を噴くように批判している。「すでに辺野古への移設は事実上無理だ。それでも手続きを踏んでいくやり方は沖縄県民だけでなく、米国政府に対しても不誠実だ」と主張、「鳩山政権時代の愚を繰り返してはならない」とまで言い切っている。確かに野田はいまさら馬鹿げた子供だましのような手続き論でしのげると思わない方がよい。「素人病」の伝染には要注意だ。 


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◎野党ぼけ自民では「擬態民主」を攻めきれぬ

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◎野党ぼけ自民では「擬態民主」を攻めきれぬ
 木の葉に姿を真似る昆虫がいる。擬態という。その擬態を民主党政権がやっているのだから始末に負えない。組織も政策も自民党へと擬態されて、総裁・谷垣禎一以下執行部は攻めるに攻めきれないでいる。とりわけ新役員人事から石破茂を外したのが致命傷だ。執行部の発進力が5分の1になった。新任の政調・総務両会長は“超地味”で陰うつだ。ろくろくテレビにも顔を出さない。幹事長・石原伸晃も2代目だけあって迫力に欠け、方向性もあさってを向いている。在野党2年でぼけては、政権党復帰など遠ざかる一方だ。
 民主党政権に対する自民党の戦略は今までが楽すぎた。というのも、憲政史上珍しいほどの「愚痴無知指導者」が2代も続いたからだ。ルーピー鳩山由紀夫やペテン師・菅直人の場合は、自分が落とし穴を掘って自分で落ちているのだからそれを待っているだけでよかったのだ。しかしその菅ですら解散に追い込めなかったのだから、谷垣執行部の力量が今ひとつだったということなのだろう。
 同党の新役員人事について派閥の弊害を説く議論が盛んだが、弊
害と言うほどの派閥組織があるのか。朝日が社説で説いたから、一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝うではないのか。派閥の弊害とは自らの勢力をカネで囲い込み、利権を集団で求めることを指した。そんな力はいまの自民党派閥にはなく、政策グループと化している。野田が小沢グループを取り込んだ人事は「適材適所人事」でほめるが、これこそ派閥均衡人事ではないか。マスコミも馬鹿の一つ覚えのような自民党叩きの筆法は改めた方がよい。自民党人事の最大の欠陥は、敵前で先頭を走る勇将を左遷してしまった、野党ぼけにあるのだ。
 テレビでもネットでも自民党で一番露出度が高く評判のよい役員は政調会長・石破であった。発言に野党に対する破壊力があるのは石破だけと言ってもよい。その広告塔とも言うべき存在を閑職に追いやってしまって、辛気くさい役員ばかりで戦えるかと言うことだ。おまけに石原は方向性が怪しい。“論客”が聞いてあきれる発言を繰り返す。財務相・安住淳が消費増税法案を来年成立させたいと発言したことを、「2年前の選挙では、マニフェストで消費税を上げないと言って勝って、今度は上げると言うのはおかしい」と批判した。大矛盾は自民党も消費税の10%アップが公約であり、民主党政権が引き上げるのが悪くて、自民党政権ならばよいのかということになる。論理破たんだ。もうマニフェスト批判などはマンネリで聞き飽きたのだ。
 加えて石原発言は政権党だったら首がいくつあってもたりない暴言を繰り返している。9.11テロを「歴史の必然」、放射線測定を
「市民に線量を計らせないようにしないといけない」、反原発を「集団ヒステリー」と決めつけると言った具合だ。異常としか言いようがない。しまいには自民党支持率の低迷を「自民党を批判するテレビのコメンテーターが悪い」とのたまった。自民党が攻めの人事をするのなら、幹事長を石破に代えるべきだった。一方で谷垣は、まじめで攻撃力欠如の優等生発言を繰り返している。政調会長・茂木敏充、総務会長・塩谷立、国対委員長・岸田文雄も就任以来半月間、鳴かず飛ばずで閉じこもっている。これでは野党ぼけも極まった。20日からの臨時国会について石原は「臨時国会は民主党政権の終わりの始まり。来年の通常国会を主戦場ととらえ、解散総選挙に追い込んでいく」と勇ましいが、攻めあぐねているのが実態だ。
 最大のアキレス腱である小沢証人喚問も、お経のように唱えるだけではらちが開かない段階だ。参院の多数を利用して採決による喚問実現の構えを見せてはじめて動くのに気がつかない。3次補正も細部では修正出来ても、人質にとって早期成立を阻むようなことはできまい。「のらりするり」と逃げる野田政権をどう攻めるかだが、これは石原のように焦っても始まらない。TPPにしても、消費税にしても、普天間移設にしても民主党政権は党分裂にもつながりかねない超重要課題を抱えている。特に普天間は政府が環境アセスメントを年末までに県知事に提出するが、こじれていてとても解決のきっかけなどにはなるまい。野田は語れば済む段階から「選択と実行」の場面に移行せざるを得ない状況に置かれている。その間隙を突くしかない。


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◎野田は二段構えでのTPP参加を決断せよ

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◎野田は二段構えでのTPP参加を決断せよ
 関税を原則撤廃する環太平洋経済連携協定(TPP)への参加の是非の問題は、端的に言えば興国か亡国かの選択であろう。関税自由化へのとうとうたる世界的な潮流に、日本だけがさおさせば工業立国として存在自体がが危うくなる。単なる民主党議員の選挙区事情によって左右されるべき問題の範疇を超えている。首相・野田佳彦の弁舌が滑らかなのはよく分かった。その弁舌をもはやリーダーシップ発揮の行動に移す段階だ。来月12日からのAPEC首脳会議前の決断が不可欠だろう。その場合、まず交渉への参加を決断して日本の主張を展開し、受け入れられなければ途中で離脱するという二段構えが政治的解決策としては最良だ。
 TPPを米国が推進する背景をまず大きく見れば、紛れもなく台頭著しい中国へのけん制という世界戦略が背景にある。米国は、イラク、アフガニスタンのくびきから徐々に“撤退”し、北東アジアにおける中国台頭への対応へと安全保障の比重を移しつつある。米韓首脳会談で衝撃の自由貿易協定(FTA)が合意に至ったのも、まず第一義的に対中けん制がある。もちろん日本への牽制の側面はあるが、二番目である。まず中国をけん制し、日本のTPP参加を促すという一石二鳥の手を打ってきたのだろう。日本に対しては関ヶ原で洞ヶ峠を極め込む小早川秀秋陣に徳川家康が発砲させて脅しをかけ、参戦を促したのと同じだ。
 要するに野田は、まず米大統領・オバマから、言葉でなく実行を迫られているのだ。しかし、民主党内の空気はそう簡単なものではない。農水相・鹿野道彦と「TPPを慎重に考える会」会長の山田直彦が中心になって野田包囲網を築きつつある。山田によれば、既に191人の反対署名が集まっているという。本当なら民主党国会議員の半数が反対していることになる。しかし、この反対陣営なるもの一枚岩かというとそうでもないようだ。政調会長・前原誠司が反対論について「事実でないことへの恐怖感に根ざしており、これをTPPお化けと言う」と揶揄しているくらいだ。「外国人移民が堰を切って流入する」とか、「国民皆保険制度が崩壊する」などというあらぬうわさに踊らされている側面がある。また国民新党代表・亀井静香のように、米国の謀略説まで持ち出して反対する方向音痴もいる。もちろん、選挙区から突き上げられている事情もあろう。従ってこのまま放置すれば、議論は収拾がつかないところに行く気配を見せている。山田も「強行すれば党がどうなるか分からない」とすごんでいるのだ。
 まるで1971年の佐藤内閣における日米繊維交渉と酷似している。難航して自民党内は二分、「前向きに対処」という佐藤栄作の苦し紛れの言葉を信じた米大統領・ニクソンは、「ジャップの裏切り」と口走ったとも言われるほどだった。通産相・宮沢喜一では手も足も出ず、結局田中角栄が通産相に就任、ことは外交でなく内政と看破し、繊維業者に資金を配って機織り機を廃棄し、輸出を抑制したのだ。今回も農業従事者対策が最大の眼目であり、外交でなくまさに内政なのだ。だが、工業立国を選択せざるを得ない以上、しょせんどこで見切るかが焦点となる。TPPの交渉段階で参加しない限り発言権も確保出来ず、それこそTPPお化けが出てくることになりかねないのだ。
 外交評論家・岡本行夫が16日NHKで「普天間もTPPも両方出来ないのではないか」と簡単に悲観論を口にしたが、普天間とTPPとは難易度が違う。普天間は鳩山由紀夫のおかげで、修復不能な状態に陥ったが、TPPは説得の仕方によっては可能だ。また野田はそれこそ命がけで説得に当たらなければならない。TPP断念が意味することは、工業立国の断念であり、みすみす韓国に席を譲り、日本は長期低落の悲哀を味わうことになるのだ。
 野田は、10日に、TPPの交渉参加問題について「議論して早急に結論を得るというのが従来の政府の姿勢。政府・民主党に議論を始めるように指示した」と述べたが、早くも指示すればよい段階は過ぎつつある。自らが議論の現場に立って、説得に当たるしかない状況となっているのだ。首相がその言葉で珍しがられる時は過ぎた。リーダーシップの発揮が求められる段階なのだ。車、電気製品、電子機器など我が国の生命線の輸出をみすみす他国に奪われるかどうかの瀬戸際なのだ。世論は全国紙のすべてが社説でTPP推進論だ。ただ、読売だけが社説で「気がかりなのは、政府・民主党内に『交渉に参加し、言い分が通らなければ離脱すれば良い』との“途中離脱論”があることだ。反対派をなだめる方便だろう。だが、参加する前から離脱をちらつかせる国の言い分が、交渉の場で説得力を持つとは思えない」と指摘している。確かにスジ論としてはもっともで、1社だけがポイントを突いている。だが、交渉ではどの国も自国の利害関係を最重視する。まず、交渉で自国の主張を受け入れさせるためには、“途中離脱論”を米国にちらつかせるくらいのテクニックを使って当然だ。確かに反対派への説得効果もある。もともと国会で批准されなければ意味もない。日本が入らなければTPPの効果は半減するのだ。甘く見られる必要はない。日本も払う犠牲は大きい。交渉に入る以上は遠慮は必要ない。強い立場で臨むべきではないか。

 


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◎大勲位殿!野田長期政権は無理です

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◎大勲位殿!野田長期政権は無理です
 なにしろ大勲位だから元首相・中曽根康弘の発言はちょっと見では“重み”がある。それに首相・野田佳彦を「長期政権」と予言したのは政界で初めてであるから、注目を集める。かつては田中角栄や福田赳夫、三木武夫らあまたの実力者の中で、うろちょろして“政界風見鶏”の別称があったくらいだから、中曽根は「よいしょ」もうまい。こういうほめ方は最初に言った方が勝ちなのだ。しかし本当に長期政権かというと、まだまだ疑問だ。政権発足3か月のハネムーン期間中の「長期」か「短期」かの予測などは、たいてい外れる。「当て事とふんどしは向こうから外れる」のだ。
 戦後の長期政権は佐藤栄作、吉田茂、小泉純一郎、中曽根康弘の順だが、共通項と言えば徹底した「保守」の政治であろう。野田は自他共に許す「保守」だからこの条件はクリヤしている。なにしろ松下政経塾の1期生で松下幸之助の薫陶を受けている。松下の薫陶を受けたのは3期までだから、8期生の前原誠司や玄葉光一郎とは格が違うのだ。日本の首相にとって「保守」ほど重要な条件はあるまい。政界、財界、官界首脳らに安心感をもたらすのだ。鳩山由紀夫や菅直人が自壊したのも、何をするか分からない“革新性”の危うさが原因だ。おまけに菅のように首相が北朝鮮とつながっていては信用出来るわけがない。
 野田も松下の薫陶を意識した政治を行っている。松下塾には松下が作った塾是・塾訓に加えて、より実践的な「五誓」があるが、これを実行している。例えば「いかなる人材が集うとも和がなければ成果を得られない」は「適材適所」人事で発揮された。臆面もなく小沢を支持しているのも「和」優先だ。松下は著書「指導者の条件」のなかで親疎の区別をしない一視同仁を強調している。「感情的な対立が相手に対する憎しみといったものにエスカレートし、それが争いをより深刻、悲惨なものにする」という遺訓が小沢に対して実行されている。加えて鳩・菅が失敗した政治主導・官僚排除も、野田は逆を実践している。「指導者は自分より優れた才能の人を使うことが大事である」という「松下条件」を守っているのだ。
 長期政権の4人の中で野田があえて誰と似ているかを言えば、熟慮系の政治の佐藤栄作だろうが、“野田ミニ佐藤”が長続きするかはそのほかの前提条件が多すぎる。まず佐藤のライバル河野一郎が急死したように、目の上のたんこぶ小沢一郎がこの世からいなくならねばならない。政治家にとってたんこぶとライバル消失ほど大事な“つき”はない。中曽根も田中が脳溢血となってはじめて長期政権の展望が立ったのだ。中曽根が田中入院を知って失礼千万にも、また浅薄にも一日中上機嫌を隠さなかったことを覚えているが、先の小沢の入院も野田にとっては、もし深刻だったら僥倖(ぎょうこう)たりえた。一瞬野田は「はっ!」と愁眉が開ける思いがよぎったに違いない。
 中曽根の12日の発言は新聞によって異なる。「低姿勢でまじめにやれば長期政権になる」(朝日、毎日)と「正直な人間性を見せれば長期政権になる」(読売)に分かれた。しかし低姿勢で正直な首相は数少ないものの、結構いた。その意味で「中曽根条件」はアバウトすぎる。最大の条件はなんといっても総選挙に勝てるかどうかだ。野田の支持率は当初の60~70%から各社とも10%前後急落している。今後復興増税と消費増税の2連発を庶民の懐に浴びせるわけだから、いくら正直でもまじめでも支持率は落ち続ける。かつて増税で支持率が上がり、選挙に勝った政権はない。
 小沢が、今の政治状況で衆院解散・総選挙が実施されれば「どの政党も過半数を取れず大混乱になる」という見方を示したが、これは事実だろう。むしろ民主党への不信が鳩・菅政治で抜きがたいものになっており、依然として大敗は不可避だろう。長期政権どころか野田は政権を失いかねないのだ。当然野党はそこを狙って攻勢をかける。おまけに過去5代の首相が短期に終わった最大の原因は衆参ねじれであり、野田もそのくびきからは逃れられない。こうみてくると松下の薫陶を受けた野田には長期政権の「素質」はあるかも知れないが、現実政治がそれを許さない状況が見えてくる。このような核心のポイントを見逃している大勲位も老いたものだ。


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◎お手盛りで野田代表の任期延長をすべきでない

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◎お手盛りで野田代表の任期延長をすべきでない
 ここに来て何故民主党代表の任期改訂かというと、背景に邪心が見え隠れする。党内の一部に1年後の代表選を見送り、首相・野田佳彦の長期政権の土台を作ろうという意図があるといわれているのである。これが本当の狙いなら横綱が相撲を取りやすいように土俵を変えてしまおうという荒唐無稽な政治であり、あきれかえるしかない。任期を変えるのは政党の勝手だが、現職首相への適用は、あまりにも国民不在の政治判断である。来年9月の代表選は現行制度のまま実施し、新代表からの適用とするのがスジだろう。
 そもそもの任期改訂問題は前幹事長・岡田克也が、菅直人が首相就任後3か月で代表選挙を行った問題をとらえて検討に着手し、改定案を作ったものだ。内容は(1)政権政党である間は代表の任期をなくすが、リコールは可能とする(2)または任期を2年から3年に延長するの2案。要するに1年で首相がころころ変わるのは代表選規約にも問題があるという判断から、前代表の任期を受け継がずに任期を伸ばして、安定政権を目指そうというものである。
 その構想自体は現実政治より規則重視の岡田らしい発想で、別に異論をはさむものでもあるまい。しかし長年政治を見ていると規則を変えたからといって、政権が長持ちするものではないことがよく分かる。任期2年だろうが3年だろうが、続く政権は続くし、続かない政権は続かない。民主党の場合、鳩山由紀夫と菅直人が1年しか持たなかったのは、ひとえに個人的な政権担当能力の問題であった。自民党の場合は、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎が1年であったのは衆参のねじれと同党の屋台骨の寿命が尽きていたからにほかならない。
 それでは長期政権と政党トップの任期は関連があるかどうかだが、ないのだ。佐藤栄作は任期途中で自民党総裁任期が2年から3年に変えられたが、長期政権は沖縄返還の成功にあった。中曽根康弘も任期中は2年の任期であったが、田中角栄が病気で倒れたことが長期政権につながった。任期とは関係がない。小泉純一郎も任期中に2年から3年に任期変更となったが、長期政権は郵政解散の成功の結果だ。
 このように短期政権も長期政権も時の政治情勢と政権担当能力に左右される傾向が強い。そこで出てきている民主党の任期改訂論だが、改訂して首相・野田佳彦の任期の来年9月に選ばれる代表から適用するのなら何ら問題はない。当然野田再選なら新しい任期が適用されるのもよい。しかし政治家の思惑というものは、一筋縄でいくような簡単なものではない。何故この時点で任期延長論かということだ。事実、幹部の間では「野田さんから適用するように出来るかどうかが最大のポイント」とささやかれている。
 つまり「野田長期政権」への思惑があるのだ。一番うまく事を運ぶには来年1月の党大会で「現職からの適用」を決めてしまうことだ。このような動きがささやかれている背景には、いずれにしても接近してくる総選挙を前に、野田以外の代表で戦うことの危険性を感じているからにほかならない。来年の通常国会での解散なら紛れもなく野田で戦うことになるが、任期満了近い総選挙でも他の代表で戦うリスクを考えれば野田の方がましという判断であろう。しかし、この動きはあまりにも永田町的であり、お手盛りの任期延長では国民には理解されまい。野田も正心誠意をいうのなら、姑息な手段が出てきてもこれを排除して、正々堂々と一年後の代表選に臨むべきだろう。

 


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◎輿石の「唯一論」は民主党自滅の道

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◎輿石の「唯一論」は民主党自滅の道
 すべての政治現象を田中角栄のせいにすることをかって「唯角論」と言った。今は田中ほどの力はないものの、小沢一郎一人を信奉するのを「唯一論」という。その唯一論を一番実践しているのが民主党首脳だ。首相・野田佳彦が必死になって小沢をかばえば、党を束ねる幹事長・輿石東が臆面もなく小沢を礼賛して、証人喚問を真っ向から否定する。自民党の場合は過去に何度となく喚問には応じて政党として生き延びてきたが、民主党だけが何故応じようとしないのだろうか。民主党は唯一論で自滅の路線をたどっているように見える。
 かねてから輿石を「小沢の執事だ」と評してきたが、8日のテレビ東京での発言を聞けばまさに執事そのもの。侍従と言ってもよい。輿石はまず小沢を「これからも滅多に出てこない卓越した政治家。小沢さん抜きの民主党はなく、小沢さん抜きの民主党の将来はない」と“礼拝”せんばかりに持ち上げた。小沢を「卓越した政治家」と見るのはよほど政治経験が浅薄でなければ出来ない人物評だ。心酔の様子がありありと分かる発言もあった。「幸せは自らが決めるものだが、小沢は外から見ていると幸せに見えるが、本当は寂しいのだ。こういうところに追い込まれて気の毒だ」とのべた。いかに唯一論の権化となっているかが分かる。
 重要なのは立法府の議員としてその存在価値を自ら否定する発言をしたことだ。小沢が記者会見で「君は三権分立を知っているのか」と記者批判をしたのをとらえて、輿石は「裁判所の真似事を国会でさせようと言うことだ。証人喚問は。だから三権分立、推定無罪をあなたたちは知っているのかということ」と解説して見せた。これは三権分立だから喚問の必要はないという小沢、野田の論理をそのまま踏襲、補強していることになる。つまり裁判が進行中であるから、立法府での喚問は必要ないことになり、これは立法府そのものの否定となる我田引水の論理だ。何度も繰り返すが国会が喚問を必要とするのは有罪か無罪の判定のためではなく、政治家にとって何よりも重要な政治的、道義的責任を問うためなのだ。この発言というか暴言は当然野党も国会で質すべきだろう。
 それにつけても、民主党政権は何故ここまで証人喚問を拒否し続けるのだろうか。自民党の場合は渋々ながら喚問に応じているケースがほとんどだ。中曽根康弘はロッキード事件とリクルート事件で、松野頼三はダグラス・グラマン事件、竹下登と小沢一郎は東京佐川急便事件でそれぞれ証人喚問に応じている。しかも疑惑は残るが一応政治問題化することは避けているのだ。証人喚問は偽証罪に問われる恐れがあるが、ロッキード事件で当時の国際興業社主であった小佐野賢治が喚問を受け、質問に対する本質的回答をしない「記憶にございません」を連発して切り抜けている。以来同様の答弁で政治家達はしのいできている。つまり証人喚問は切り抜けられるのだ。
じわじわと支持率の長期低落を招くより、一過性で済むのだ。
 この自明の理も分からずに輿石のように一党の幹事長ともあろうものが、小沢への「盲目の愛」だけで、民主党全党の評判をおとしめているのが実態だろう。「小沢さん抜きの民主党はなく、小沢さん抜きの民主党の将来はない」が全くの逆説のパロディー漫画であることに気付かない。9日付の読売新聞の世論調査によると、野田の内閣支持率は10ポイントも急落して55%。小沢に国会での説明責任を果たすべきだとの回答が何と81%に達しているのだ。野田は小沢を擁護しなければ、民主党内の調和を維持できず、擁護し続ければ支持率が急落し続けるというジレンマを抱えることになっているのだ。輿石も贈収賄事件に限りなく近い政治家を擁護し続けて、立党の基盤を失うことがペイすると考えているのだろうか。大局を見ればどうみても収支尻は合わない。小沢を必要以上に大きく見るという、民主党政権の度し難い体質がそこにあるとしか思えない。
◎読売俳壇一席達成
筆者の
金魚屋を漁師ら囲み秋祭り
が矢島渚男選の一席となりました。
選者評=お祭りの金魚屋だから露天の金魚掬いの情景か。その子供たちを漁師たちが取り囲んでいる。魚とりのプロが金魚掬いを見物しているところに、ほのぼのとした滑稽感が漂う。


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◎4億円頬被りの小沢は証人喚問するしかない

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◎4億円頬被りの小沢は証人喚問するしかない
 いくら追い込まれたからとはいえ、一党の実力者がこれほど唯我独尊の暴論を吐いた例をしらない。初公判と記者会見ににおける民主党元代表・小沢一郎の主張は、支離滅裂で「盗っ人猛々しい」とは言わぬが、まさに「被告人猛々しい」の感を強めた。おまけに核心である土地購入資金4億円の出所には言及をせず、ご都合主義の頬被りを極め込んだ。かくなる上は偽証罪が適用される証人喚問で政治的、道義的責任を追及するしかあるまい。首相・野田佳彦は応じそうもないから、その突破口は参院の野党多数を活用して多数決での議決による喚問という荒療治を視野に入れるしかあるまい。
 小沢は7日夜「腰痛だ」として救急車で搬送されたが、深夜の政界は「すわ急病か」と大騒ぎとなった。心臓病の持病があるからだ。それはともかくとして小沢の主張はまるで昔の全学連のアジ演説のようでもあった。小沢の第1の暴論は検察の強制捜査について「国民から何の付託も受けていない検察という国家権力が、総選挙の直前に野党第1党の党首だった小沢一郎を抹殺するために標的にした」という発言であろう。まるで選挙で付託を受けた政治家に検察は口を出すなというような発言だ。検察は国民の負託を受けた内閣が指揮する組織であり、まぎれもなく正義遂行の付託を受けている。小沢を抹殺するために標的にしたというが、標的にしたのなら弾を外すわけがない。「嫌疑不十分」で不起訴にしたではないか。それ故に検事総長は「小沢に怖じ気づいた」と批判されたのだ。検察幹部が「検察は小沢元代表を狙い撃ちしたのではなく、粛々と捜査した結果、不起訴に したのであり、批判はお門違いだと思う」と述べているが、まさにその通りだ。
 小沢は「日本は既に民主主義国家とは言えない。国家権力の乱用だ」と言うが、不起訴の理由は嫌疑不十分であり、小沢は依然として疑惑の人である。この場合検察は国家権力を乱用したのではなく、まさに正義を行おうとしたのであり、民主主義国家であるからこそ成り立った捜査だ。「国家権力の乱用は社会的な暗殺、殺人以上に残酷」という発言に至ってはまさに被害妄想のヒステリー症状であろう。弁護団がこの暴言の繰り返しをあえて小沢に勧めたのは、法廷戦術があるのだろうが、狙いは肝心の4億円の出所を言わないで済ませる目くらませ作戦であったのではないか。
 おまけに記者会見で国会での説明責任について聞かれると、かっとなって「君はどう考えているの」と逆質問。記者が「重要なことだと思う」と答えると、勝ち誇ったように「あっ、そうなの。じゃ、3権分立を君はどう考えているの。ちゃんと勉強してよ」とやり込めたつもりでふんぞり返った。これは法学部出身でありながら三権分立の有りようも分かっていないことを露呈した発言だ。3権分立だからこそ、司法の場とは別に国会で国会議員に不可欠な政治的、道義的責任を質す必要があるのだ。国会議員は一般人とは異なるのだ。自民党の元外相・高村正彦が「有罪、無罪は裁判で判断しても、小沢氏には道義的、政治的立証責任があり、これは国会が果たすべき問題だ」と述べているとおりだ。
 残念なことに野田もこの小沢思考にフルに乗ってしまっている。国会で野田は7日、「法廷の場でしっかりと説明責任を果たしてほしい。司法の動きが始まっているときに、証人喚問というやり方が妥当か、慎重に考えるべきだ」と事実上小沢の擁護に回った。これは元首相・鳩山由紀夫が、小沢不起訴に際して「幹事長続投は至極自然」と擁護に回ったのとそっくりだ。首相としてのけじめなどそっちのけではないか。自民党総裁・谷垣禎一が「野田佳彦首相と民主党が小沢氏擁護で一致し、疑惑の隠蔽に加担する現況を看過できない」と厳しく指摘しているのは至極もっともだ。
 証人喚問は全党一致が原則となっているが、与野党の勢力関係によっては、多数決の議決で喚問が行われた例が衆議院で3例ある。また山田洋行事件で、2007年に前防衛事務次官・守屋武昌の証人喚問が衆参両院で行われたのは、民主党が参院でねじれを達成して優位に立って攻勢をかけたことが背景にある。今はそのねじれが逆転しているではないか。参院自民党も、くだらない痴話げんかばかりやっていないで多数野党をリードして、証人喚問の具体化に乗り出すべきだ。それにつけても民主党は小沢という“おんぶお化け”が、祟りにたたっており、野田も例外ではあり得ず、小沢起因の支持率低下となろう。


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◎年内解散なし、野田政権“3月危機”で正念場に

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◎年内解散なし、野田政権“3月危機”で正念場に
 「私は崖っぷち」と首相・野田佳彦が強調した意味は、民主党最後の首相になりかねないから解散はしないと言うことだ。何としてでも早期解散に追い込みたい野党と、解散回避を基本とする野田の“前哨戦”が続いている。しかし野田は前・元首相らと異なり、それなりの安定感もあり年内解散はおそらく実現しない情勢となってきた。しかし復興増税と消費増税の増税2連発を予定している野田には波乱の政局が待ち構えている。来春以降は確実に解散モードに突入するだろう。 
 自民党の額賀福志郎の質問に対し、野田は「私は3人目の首相になった。崖っぷちであると強く認識している。震災の復旧・復興、原発事故の一日も早い収束の道筋を付けなければならない今、政治的な空白はつくるべきでない」と早期解散を否定した。確かに2年で、「すかたん首相」が2人も代わって、3代目ともなれば、民主党も「唐様で売り家」と書かざるを得ない羽目になりかねない。だから超低姿勢で、解散のカの字もタブーとした政局運営をせざるを得ないのだろう。
 現在の野田政権はいわば、復興のための第3次補正予算案を“人質”に当面の政局を乗り切ろうとしている図式だろう。野党も同予算案の細部に注文を付けるつもりはあっても、世論を意識すれば真っ向から反対出来ない内容でもある。だから6日の与野党協議にも応じたのだ。谷垣執行部は補正予算案での対応を局地戦と位置づけ、むしろ早期に処理して解散へのフリーハンドを確保したい方針なのであろう。従って民主党の狙うように事前合意には応じないものの、臨時国会では適当なところで切り上げて成立を認める流れだろう。補正予算は早ければ来月末、遅くても12月初旬には成立しよう。
 野田政権は当面する最大の課題をクリアすることになり、解散へのあつれきを一つ除去できることになるだろう。しかし難題はその後に待ち構えている。まず、野田が明言している消費増税法案の通常国会への提出だ。野田は、菅内閣が決めた「社会保障・税一体改革案」の中に「11年度中に必要な法制上の措置を講じる」とするスケジュールが入っていることを指摘。「それを踏まえて対応する」と公約している。幹事長・輿石東も2日のNHKで「その道筋で党内の議論をする」と同調している。従って消費税論議が本格化する流れとなっている。最大の問題は復興税ですら大反対の合唱が生ずる民主党内で消費増税がまとまるかと言うことだ。選挙を前にマニフェストの改訂にもつながる消費増税法案を、小沢一郎がすんなり認めることはまずないだろう。党内の大混乱は目に見えており、無理に突っ走ろうとすれば、来年度予算案すらまとまらない事態に陥りかねないのだ。
 例え党内論議を乗り切っても、増税で内閣支持率が上がった内閣はない。国民も所得増税に次ぐ消費増税のダブルパンチを食らえば“ドジョウ離れ”して、支持率の急落は必至だ。既に60~70%あった支持率は、日経9ポイント、共同で8・2ポイントの急落である。今後自らの外国人献金問題をはじめ、閣僚の不祥事、小沢の裁判と証人喚問問題などで、支持率はじり貧傾向をたどり、早期に50%を割る流れだろう。野党は来年の通常国会審議で本格的な政権のイメージダウン作戦を展開するものと予想される。3月頃には30%を切ることも予想される。ただでさえ衆院議員は2年を過ぎれば解散意識の常在戦場とならざるを得ない。自民党など野党は予算関連法案や消費増税法案の欠陥を突こうとするだろう。野党もねじれを活用して、予算関連法案を人質にとって今度こそ最終決戦段階に入るのだろう。
 従って国会審議は3月以降野田政権にとって危機的な状況に陥る可能性がある。これに加えて4月に小沢裁判で有罪の判決が出る可能性があり、野党はかさにかかって攻撃し続けるだろう。「崖っぷち首相」も解散・総選挙の決断を迫られざるを得ない状況となるだろう。
 


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◎40億の違約金は野田の“背任罪”に相当する:朝霞宿舎凍結

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◎40億の違約金は野田の“背任罪”に相当する:朝霞宿舎凍結
 105億の建設を凍結して違約金40億円支払わされたら、民間企業なら株主集団訴訟で社長は確実に背任罪に問われる。地方自治体の首長でも住民訴訟で個人的に違約金を払わされる可能性がある。首相・野田佳彦が打ち出した朝霞公務員宿舎建設5年間凍結をめぐる問題は、肝心の損得勘定が抜けている。40億円は国民の血税だ。政権ばかりかマスコミも野党も、何をトチ狂っているのか。野田にしてみれば自らのリーダーシップで凍結させたという筋書きだろうが、自分が財務相時代に決定した建設計画なのだからマッチポンプそのものだ。再開必至の八ッ場ダムの建設が、中止でかえって建設費を日日増大させているケースと酷似して、「パフォーマンスの民主党」が野田政権でも復活した。
 野田が5年間凍結ということの意味は、5年後には建設再開を意味するのだろう。そうでなければ凍結にはしない。中止にする。財務省役人とのズブズブの関係を象徴している。そこを突かれたくないから財務相・安住淳が5年後の中止に言及するのだろうが、「うそをつくな」と言いたい。そもそも1年後も定かならぬ政権が5年後を語れるのだろうか。民主党が存在しているのかすら怪しい。マスコミもマスコミだ。「被災地そっちのけで建設するのか」という、感情論にとらわれ過ぎて、現実の損得勘定を無視してきた。のほほんと親方日の丸のサラリーマン稼業を送っている「記者貴族」では見極められまい。全国紙の全ての社説が、朝日「公務員宿舎官の論理を押し返せ」、読売「状況に応じて従来の政策を柔軟に軌道修正するのは、大切なことだ」、毎日「朝霞宿舎凍結、このぶれは評価したい」とノーテンキにも凍結に無条件で賛成している。
 凍結賛成は勝手だが、結果がどうなるかが分かっていない。辛うじて朝日の社説だけが違約金に気付いているが、違約金を支払えという論理構成だ。凍結決定前の社説で「政権は億単位の違約金を払ってでも建設を取りやめ、残りのお金を復興費用にあてるべきだとは考えない」と批判している。しかし総建設費の4割の違約金は業者にとっては笑いが止まらない。濡れ手で粟の臨時収入だ。仕事をしなくても利益が生ずるのだ。朝日は「建設凍結、世論の圧力」という勝ち誇ったような見出しの記事の中で「工事凍結による損害賠償は最大40億円との見方もある。せっかくの首相決断も色あせそうだ」と、「違約金払え」の社説とは全く逆に野田の失政に言及している。大矛盾だ。
 歴代民主党政権の「ぶれ」を恐れて、ひたすら低姿勢で通してきた野田も、ここに来て馬脚を現した形となった。パフォーマンスの事業仕分けで中止となった建設を、自分が財務相になってから同省の役人に気を遣って2010年に再開を決定したまではよいが、大震災が発生してさすがにストップ。震災のほとぼりが冷めるのを待つかのように9月1日にこそこそと着工したが、マスコミのやり玉に挙がった。10月3日の工事現場視察とその後の対応は、泥の中から顔を出したドジョウが、マスコミカラスを見て慌てて首を引っ込めた構図だ。視察するまでもないことを3流補佐官らの入れ智恵で、たったの9分間視察してみせる。まるで猿芝居であり、紛れもない民主党型パフォーマンス政治の復活だ。
 建設会社が違約金を請求するのは当然だ。請求しなければそれこそ株主総会ものだ。国も債務不履行(契約不履行)となるのだから、当然支払いの義務が発生してしまうのだ。血税40億円もの損失を計上しないためには、民間企業なら絶対に違約金を支払わない方策を模索する。例えば建設を継続して完成させた上でマンション業者に売却するなどの手段だ。知り合いの大手不動産業者によれば「朝霞は立地条件が都心に近くてよい。すぐに売れる」とのことだ。とにかく親方日の丸で金はかかっても自分の責任だけを回避すればよいというものでもあるまい。もっともこの時期に40億円の損失は例え他の公務員宿舎の売却で10億円程度のプラスになっても、国の財政に打撃を与えることは紛れもない。どう言い訳しても野田の責任は免れない。野田は自ら違約金40億円を支払うべきだ。当然行政訴訟が発生してもおかしくない問題だ。


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◎野田は無為無策の「普天間空白」を継続するのか

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◎野田は無為無策の「普天間空白」を継続するのか
 打つ手がないというより、手を打つ意志がないというのが野田政権の普天間移設問題への対応であろう。米大統領オバマとの会談で早期移設に全力を尽くす方針を表明したにもかかわらず、帰国後の首相・野田佳彦は普天間問題から腰が引けている。政調会長・前原誠司までが11月のAPEC首脳会議までの進展はないと明言する始末。鳩山由紀夫、菅直人という希代の外交音痴が作った2年間の外交・安保上の空白を埋めようと、中国とロシアが虎視眈々と狙っているのは明白だが、「増税」で手一杯の野田政権は外交・安保などは優先順位にない。
 野田が普天間という火中のクリを拾いそうもない理由は明白だ。大統領の重要発言をカート・キャンベル東アジア・太平洋担当国務次官補のブリーフのせいにしたのだ。普天間問題に関する日米首脳会談の最重要ポイントは、オバマが「結果を求める時期が近づいている」と述べたのに対して、野田が「沖縄の理解を得るよう全力を尽くす」と述べた下りだ。当然早期決着を受け入れたと取れる。これに対して野田は予算委で「結果を求めるのが近いというのは大統領本人というよりはブリーフした方の個人的な思いつきではないか」と否定したのだ。公式なブリーファーの恣意的な発言として、またも逃げたのだ。野田がやる気なら、例え“オバマねつ造発言”でも、これをてこにして、沖縄説得に動くところだろうが、野田の選択肢には「増税」しか念頭にないように見える。発表されていないが3日の米大使・ルースと野田の会談で、ルースがこれほどの重要問題を説明しなかったことはまずありえない。また野田が説明を求めないのもおかしい。怪しいのである。
 この野田の方針は党内的にも調整済みとみられる。政調会長・前原誠司は2日のテレビでAPECでの日米首脳会談への対応について「11月までに進展はない。期限を区切るべきではないし、区切らない」と明言したのだ。この結果、野田は早くもオバマの期待を裏切る流れとなった。オバマがAPECをハワイで開催するのは明らかに大統領選を意識しているという見方が強い。折から今年は「真珠湾攻撃70周年」に当たり、ニューズウイーク日本版によると、「戦艦アリゾナ」での各国首脳による集団献花も予定されているという。攻撃記念日を間近に控えて、メドベージェフや胡錦濤など戦勝国のリーダーと並んで敗戦国首相・野田だけが、「敗者の屈辱」を味わうのだろうか。当然日本外交が健在な時期なら、そのようなイベントはしないように根回しをするのだろうが。挙行されればマスコミはそれだけをクローズアップする。これに加えてオバマから「普天間はどうなった」と聞かれて、またまた「頑張ります」では済まされまい。APECは野田にとって試練の場となりかねない。
 一方米国にとっても普天間移設問題は明らかに対日外交の最優先課題となっている。議会上院は普天間問題を海兵隊のグアム移転費用の問題とからめて、移転予算を人質にとって大統領を追い詰めようとしているからだ。大統領は、過去2代の首相の無策ぶりに業を煮やしているのが実情だ。加えて野田の「逃げ腰外交」が露呈しては、米国の対日不信は頂点に達しかねない。しかし普天間問題の解決は容易ではない。容易ではないどころか現段階では不可能に見える。全てが鳩山の政治主導と称する素人外交に起因する。「最低でも県外」が全てをぶちこわしたのだ。自公推薦で2006年に知事となった仲井間弘多は、同年に日米合意した普天間移設を実現すべく慎重な準備していたのだ。その最中の鳩山発言だ。沖縄は眠た子が飛び起きた形だ。もう覆水盆に返らずとなった。仲井間は2010年に再選して、任期は半ばだ。2014年の任期ぎりぎりで、急転直下認可に転ずることを期待する向きもあるが、仲井間の自身が「2期目の任期中は県外移設の要求を貫くのは当然だ。移設先は本土で探した方が早い」と先手を打っている。
 折から中国は沖縄、尖閣列島と続く第1列島線を越えて支配権を強めようとし、ロシアは爆撃機を日本一周させるなど、日本をめぐる安保情勢は厳しい現実を見せている。しかし野田以下政権幹部は、増税で目の色が変わっており、気を遣うのは小沢一郎ばかりだ。普天間を大局的に国家の安全保障と直結して語る政治家は、野田を含めて政権には1人もいないと言ってよい。かって自民党政権時代は外務事務次官が週に1度は必ず首相に国際情勢をブリーフして「とんでもない失政」を回避してきた。とりわけ長期選権を達成した佐藤栄作は、外務次官を閣僚以上に重視したものだ。鳩山以後はその次官ブリーフを拒絶して、外交・安保の漂流と空白を招いてきた。野田は鳩山、菅のような「無知蒙昧の空白」ではないが、「無為無策の空白」を招きつつあるのではないか。早急に定期的な次官ブリーフを再開して、外交上の失政を回避することから始めるべきだ。


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◎小沢は何故ネットテレビを活用するのか

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◎小沢は何故ネットテレビを活用するのか
 「引かれ者の小唄」では、有罪で引かれるのが来年4月かも知れないからまだ早い。現段階では「泥棒にも3分の道理」がピタリだろう。民主党元代表・小沢一郎が2日、インターネット番組に出演して一時間にわたって怪気炎を上げた。録画してチェックしたが、秘書有罪判決への不満や内政・外交論を、自らのストレスを発散させるかのごとくに、とうとうとぶちまけた。秘書3人に対する有罪判決は「私はスケープゴートにされた」のだという。ネット番組は2度目だが、大手マスコミに追い詰められた政治家の新しい“逃げ場”として定着した。
 ネットテレビとして独自の文化を築いているニコニコ動画に出演した小沢は終始上機嫌で、普段の寡黙さとは打って変わった表情を見せた。全国紙やテレビが何とかして判決後の小沢の言葉を報道しようと懸命になっているのに、これに応じずネットに出演したのはなぜだろうか。番組の中で小沢は「新聞は何をしゃべってもその通りに伝えてくれない。偏向した報道に終わってしまうので国民に真意が伝わらない。ネットの方が正確に伝える。国民が判断すればいい。テレビや新聞が偏向していては駄目だと思っている」と既成メディアに対する不満を述べている。この発言で佐藤栄作の最後の記者会見を思い出した。「新聞記者は出て行け」と追い出して、1人でテレビカメラに向かってしゃべったのだ。やはり新聞が発言をねじ曲げることがその理由だった。小沢はその会見をありありと見て知っている。強烈な印象として残っているに違いない。
 しかし、このネット番組の偏向度は新聞の比ではない。お追従と偏見に満ちているのだ。司会者や質問者の発言を見れば分かる。「でたらめの判決だった」「検察の捜査はとんでもないでたらめだ」「法治国家の終焉(えん)であり独裁国家だ」「小沢さんが唯一の希望だ」といった具合だ。これが小沢の耳に心地よく聞こえて、舌を滑らかにさせたのだろう。このネット発言は全国紙やテレビはろくろく報道しないことは目に見えている。出し抜かれた悔しさと、矜持が許さないのだ。しかし、これは間違っている。問題は小沢自身が何を考えているかであって、その内容は国会論議や証人喚問問題にも跳ね返る重要な要素に満ちあふれているのだ。発言を詳細に報道する価値はあり余るほどある。
 やはり佐藤内閣時代の初期、確か1972年頃に新聞が軽蔑していたテレビの報道を、読売新聞が一面3段で報道し、それ以来新聞がテレビにおける政治家の発言をちゅうちょなく報道するようになった。ネットも同様だろう。今後さまざまな番組が出来て、政治家は引っ張りだこになるだろう。政治家にとっても利用価値があるのだ。報道の公正さをいちおう綱領に掲げる新聞・テレビと違って、自民党に付こうが、民主党や共産党に付こうが自由なネット報道の時代が来ているのだ。政治家がどのネット番組を選ぼうが自由だ。問題は小規模であるがゆえに政治家に買収されかねないことだが、当面は視聴者が見極めるしかない。
 小沢は秘書3人の有罪判決について「民主主義国として考えられない判決でびっくりしている。既得権を持っている人にしてみればあいつだけはと最大の狙いの対象となり、スケープゴートにされたのだ。あいつだけは国政の先頭に立たせてはいけないという意識が働いた」と述べた。政治家や財界人ならともかく、地裁の裁判官を「既得権を持つ人」とするのは、見当外れだが、小沢の被害者意識が現れていて興味深い。何かある度に「民主主義」を持ち出すのは、ヒットラーと同じだ。政局に関しては「民主党政権は2年前の国民の熱狂的な支持で出来た。あと2年で信頼を取り返す政治をやるか、きちっと見つめてゆきたい」と述べた。菅政権時代には「解散がいつあるか分からない」と述べていたが、野田政権では解散が遠のいたと見ているのだろう。逆に早期解散はさせないという意思の表れでもあろう。「首相になるべきだ」とのお追従質問には「自分がそういう立場に立ったら責任回避やポジションにすがりつく類いのことだけはしたくない。そういう気持ちでやりたい」と述べた。まだ首相になれると思っているのか、それとも首相になると言わなければ求心力を保てないのかのどちらかだ。発言要旨次の通り。
【秘書有罪判決】大変びっくりした。独裁国家で気にいらんやつに有罪の判決を出すなら別だが、民主主義国家で何の証拠もないのに推測で有罪だ。民主主義国として考えられない判決でびっくりしている。私と政治団体に不正な金をもらっているに違いないという前提で強制捜査を行った。収支報告書の書き方の話しだけ。事務的な間違いだ。書き間違えと強制捜査はなじまない。だから私を起訴するに至らなかった。それを不正な金銭授受があったとして推測で決めて犯罪だとしたのはびっくりした。
【裁判批判】旧体制から半世紀を経て民主党政権になった。既得権を持っている人にしてみればあいつだけはと最大の狙いの対象となり、スケープゴートにされたのだ。あいつだけは国政の先頭に立たせてはいけないという意識が働いた。民主党と言うより僕自身が彼らの狙いだ。民主主義国家でこのような裁判が行われたことは非常に心配だ。陥れてやろうと思ったら一方的な意見だけで判決が左右されるのでは、暗黒社会になる。国民の人権を守らなければならない裁判所が劣化しているのは心配だ。
【大手報道機関批判】ネットはそのまま伝わるが、新聞は何をしゃべってもその通りに伝えてくれない。偏向した報道に終わってしまうので国民に真意が伝わらない。ネットの方が正確に伝える。国民が判断すればいい。テレビ新聞が偏向していては駄目だと思っている。
【大震災対策】復旧復興もトップの総理が決断してやるべきだ。日本では最終決断する人がいない。その立場にいる人が誰も最終決断しない。野田総理には蛮勇をふるってでも大いなる決断をしてやってもらいたい。
【政局展開】政局の話しは新聞が一番興味を持つので困る。民主党政権が2年前の国民の熱狂的な支持で出来た。あと2年で信頼を取り返す政治をやるか、きちっと見つめてゆきたい。
【国際情勢】ユーロの危機は当面回避できたが根本的な解決に至っていない。通貨危機、米国の不景気で全世界的なものになる恐れがある。原発を抱えて日本は金融恐慌、世界金融恐慌の恐れがある。中国はバブルが弾けたら政治動乱の恐れがある。共産党独裁も崩壊すると思うと中国幹部に言っている。そうすると深刻な話になる。日本が中国を助けることもありうる。これらの問題がいっぺんに重なってしまうと日本が一定の生活を維持できなくなる恐れがある。
【小沢首相】自分がそういう立場に立ったら責任回避やポジションにすがりつく類いのことだけはしたくない。そういう気持ちでやりたい。


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