◎玄海原発再稼働で電力危機に風穴
日本全体の電力需給の鍵を握っているのが佐賀、福井両県の動向だったが、佐賀が原発再稼働に向けて動き始めた。玄海町長が玄海原発再稼働を了承、知事・古川康も容認に踏み切った。首相・菅直人による「浜岡停止」に端を発した電力危機に突破口とまではいかないが風穴が開いた形だ。しかし全国最多の13基を抱える福井県知事・西川一誠は依然再稼働を認めない姿勢を堅持している。古川も「総理の考えも確かめたい」と述べており、ここは菅自らが説得に当たるべき所だが、延命のための「脱原発解散」を意識して、無責任にもほおかむりを極め込んでいる。菅は「滅私奉公」で最後に最大の課題に当たるべきだ。
原発事故を受け、定期検査の終了予定を過ぎてもなお、営業運転再開を延期している原発が7基にのぼっており、さらに6基が近く定検に入り、再開できない状態が続けば全国にある商用原子炉54基のうち42基が止まる事態に陥る。来年4月までには54基全部が止まり日本の電源の4分の1が喪失する。「貧エネルギー社会」の危機に瀕しているのだ。こうした中で29日は、やや愁眉を開く展開があった。経済産業相・海江田万里に佐賀県知事が「安全性の確認はクリアした」と容認したのだ。加えて東北電力、関西電力、中国電力など3つの電力会社の株主総会で一部の株主から提案されていた脱原発議案が大差で否決されだのだ。世の中やみくもな反原発と脱原発のムードが横溢しているが、当面安全性を確保した上で原発に頼らざるを得ない事情を冷静に判断した結果となった。社民党党首・福島瑞穂が「運転再開に怒りを感じている。社民党は運転再開に立ちはだかり、脱原発でとことん戦っていきたい」と柳眉を逆立てているが、社民党と共産党が怒れば怒るほど国家は安泰となる。
もっとも玄海原発再開は各地の原発の中でももともと再開に前向きであり、海江田が一番やりやすい場所を選んで再開を仕掛けた形だ。何と言っても次の焦点は福井原発だ。西川は再稼働について「夏場の電力不足も想定されるが、県民の安全性の確保を優先する」と述べ、依然再起動は認めない姿勢だ。西川は「国が示した緊急安全対策は津波対策に偏っている。地震の揺れの影響が検証されていない」と指摘している。とりわけ菅が浜岡原発停止で東海地震の危険性を強調して停止に踏み切った結果、他の原発が動くに動けない状況に陥ったことへの不満が強く、菅が自ら説明することを求めている。他の知事の間にも菅のパフォーマンスに対する感情論が横溢している。知事としても政治的リスクの極めて大きな選択となっているのだ。
これに対して菅はドイツやイタリア、スイスの脱原発の動きに便乗して、パフォーマンス的にまだまだ未熟な再生可能エネルギーに傾斜しようとしている。しかし世界30か国で約430基の原発が利用されており、脱原発の道を選んだ3国は全体の1割にすぎない。おまけに足りない電力は原発大国フランスから買えるのだ。大多数の原発保有国は原子力発電支持を変えていない。エネルギーの安定供給なくして国家の存続なしを認識しているからである。加えて菅には再生エネルギー買い取り法案を軸に脱原発解散という自己保身の思惑が先行している。
しかしことは急を要する。電力需給のピークは2~3週間以内に到達する。既に最大電力使用量は限界に達している。依然として停電など電力危機の様相は消えていない。NHKによるとNTTデータは首都圏のサーバー数千台を関西に移転させる予定だったが、電力事情悪化を考慮して海外移転の検討に入ったという。産業空洞化を象徴する基幹産業の動きである。既に何度も指摘したが、今首相としての最大の政策課題は電力危機対策であることは自明の理だ。小ざかしくも保身にうつつを抜かしているときではない。いまほどリーダーシップを求められているときはない。トップリーダーが各県を回って知事らに頭を下げ、原発再開を訴えるべきではないか。菅にそれを求めるのは魚屋で大根くれというようなものだが、あえて求めたい。さもなくば即刻退陣して原発再稼働に動く首相に代わるべきだ。
◎「脱原発解散」の野望は封じ込め可能だ
◎「脱原発解散」の野望は封じ込め可能だ
「米帝国主義は日中両国人民の共通の敵」と発言したのは日本社会党書記長の浅沼稲次郎だが、政界ではもはや「首相・菅直人は与野党共通の敵」となった。追い詰められた菅の表情は狼狽(ろうばい)と焦燥感に満ちたものとなっており、その精神状態も政治家にとって一番重要な平衡の感覚(センス・オブ・プロポーション)に欠けるに至った。両院議員総会で禁じ手の「脱原発解散」に、露骨にも言及せざるを得ないほど追い詰められているのがその証拠だ。しかし、実際に解散ができるのか。また解散をして勝てるのかというと話は別だ。感情論で国政の選択をするほど国民は低レベルかということだ。
とにかく事態は異常だ。首相が与党の両院議員総会でつるし上げを食らい、それに先立つ役員会では首相批判が繰り返される。与野党国対委員長らは菅の体たらくを嘆き合う。心ある閣僚からは公然と“一本釣り”批判が出される。これに対して前日は「脱原発解散」の質問にあえて答えず含みを残した菅が、今度は両院議員総会で「エネルギー基本計画の見直しも含め、エネルギー政策をどのような方向に持っていくかは、次の国政選挙でも最大の争点、議論になるのではないかと思っている。後世に禍根を残すことのないよう、残された期間の中で、原子力行政の方向性だけは示したい」と脱原発を争点にした解散の可能性に言及したのだ。
菅の最後の生き残り戦略は「再生可能エネルギー買い取り法案」での与野党攻防を軸に解散ムードを盛り上げ、最終的には「脱原発」の是非を問い解散に持ち込もうというものだ。浜岡原発停止で8割の支持があることを背景に選挙を打てば、勝って政権を長期に維持できるという“野望”がある。しかしことはそう単純ではない。四面楚歌の中でそれが可能かということだ。財務相・野田佳彦は、エネルギー政策を争点とした衆院解散について「あり得ない。あってはならない」と反対する考えを示した。幹事長・岡田克也も「これだけ多くの被災者を抱え、解散をしている時間はない」と否定した。主要閣僚と幹事長が反対する解散を断行できるだろうか。恐らく野田は菅が解散しようとすれば解散詔書への署名を拒否するだろう。拒否する閣僚は6~7割に達するだろう。菅は拒否閣僚を罷免して自ら署名しなければならない。そんな荒療治をする余力があるかどうかだが、自民党総裁・谷垣禎一が述べたように「政権はもはや暴走状態にある」。何をしでかすか分からないところが不気味なのである。
では解散を断行できたとして、選挙に勝てるかだ。まず再生エネ法案を脱原発に結びつけられるかというと、無理がある。企業や多くの一般家庭などから恒常的に余剰電力を買い取れるようになるには10年から20年かかる長期課題だ。一方脱原発は運転休止中の原発再稼働問題と密接に絡んだ喫緊の課題だ。長期と短期をごちゃ混ぜにして「まやかしの解散」をしようとしても国民がだまされるかどうかだ。民主党のマニフェストを信用して2人の首相から「えらい目」に遭っている国民は疑ってかかるだろう。ましてやエネルギー問題は国家経営の基幹に関わる問題であり、原発事故の灰燼(かいじん)も収まらない段階で、大衆の感情論のみを頼りに選挙の争点にしてはならない。再生エネ法案も国家百年の計を視野に真摯(しんし)に議論すべき問題であり、政争の具にすることは邪道だ。だいいち菅は、自らベトナムに原発を売り込み、昨年6月の閣議決定で2030年時点での総電力に占める原子力の割合を50%にした張本人ではないか。原発の「大推進論者」が、手のひらを返したように脱原発を唱えても誰も信用しない。
また脱原発をシビアな争点にしようとしても、民主党内は原発推進論者が多く、逆に自民党内にも河野太郎のようにエキセントリックな反原発論者もいる。各党とも対立軸にしにくいのだ。もし解散に踏み切れば自民党も「将来の課題としての脱原発、自然エネルギー導入」を打ち出せばよい。安全な電力供給源が出来ればそれに越したことはない。誰も否定できるものではない。菅が脱原発を主張して「脱原発新党」でも作るかどうかだが、そんなエネルギーは、いくら孫正義が応援しても残っていまい。ついて行くのは防衛相・北沢俊美、法相・江田五月、亀井静香くらいしかいまい。従って「脱原発解散」が成り立つかどうかは菅側近が苦し紛れの謀略情報として流した側面があり、現実には難しい。しかしひょうたんから駒の「解散暴走」を止めるのもなかなか一筋縄ではいかないところが問題なのだ。
◎菅、「挑発人事」で対決ムードを高める
◎菅、「挑発人事」で対決ムードを高める
西郷隆盛は自宅の雨漏りを嘆く妻に「今、日本中が雨漏り しておっとに、わが家の修繕なぞしておられん」とたしなめたと言うが、やはり日本中が雨漏りしている中で、首相・菅直人はもっぱら「自宅の修繕」に余念がない。当選して以来名前も聞いたこともない“雑魚”を自民党から一本釣りするという禁じ手は、もともとない判断力がいまや分裂状態に陥っていることを物語っている。案の定懐に手を入れられた自民党は激怒、重要法案成立のメドはますます立たなくなった。菅は記者会見で禁じて中の禁じ手である「脱原発解散」を聞かれて、わざと答えず、「暗黙の脅し」という高等戦術に出たが、もはやすがるのはこれしかないと思っているのかもしれない。菅は野党挑発に出たのだ。
主君のそばににいて取り入り、よくないことを考える家臣を君側の奸というが、今回の人事では大奸と小奸の2人いた。まず小奸は民主党副代表・石井一。菅に27日午前電話して「あなたはどうせもう辞めるのだから最後に誰を選んで死んでいくか決めないといけない。それには亀井静香しかいない」と国民新党代表・亀井との連携をけしかけた。石井は26日夜の幹事長・岡田克也ら政府・与党幹部6人組の会合で早ければ7月中、遅くとも8月末の菅退陣で一致したことから、もう党内には支持する幹部がいないと判断、亀井にすがるしかないと忠告したのだろう。
その大奸・亀井は、政界ではまともに相手にされず、落ち目の菅に取り入るしか自分の存在価値を示せないため、あらゆる手段を講じて菅に“よいしょ”をし続けている。今回も「復興対策担当相」狙いの大幅改造で6月上旬から動いた。菅には参院自民党を取り崩し、ねじれも解消すると持ちかけ、そのための工作資金を求めたようだ。菅はこれを容認して、亀井の動きを見守った。亀井は元自民党参院議員会長の村上正邦を通じて浜田和幸ら3,4人を口説いたようだが、いくら何でも沈む泥舟に乗ろうという議員は浜田以外には見つからなかった。これを察した菅は、28日になって大幅改造は困難と判断、亀井には石井の忠告を聞き入れて副総理での入閣を要請した。
しかし亀井は復興担当相を防災担当相・松本龍に回されて、大幅改造も見送られたことで憤まんやるかたなく、これに応じなかった。なんのことはない亀井の政権延命の謀略は梅雨の線香花火のように湿って火が付かなかったのだ。しかし浜田1人を総務政務官にするといういわば“ゴミ人事”だけが目立ってしまった結果となったが、菅があえて断行した背景には党内、野党両睨みの狙いがある。党内的には力を“誇示”することにより6人組造反へのけん制であり、野党に対しては、自民党を挑発して一本釣りで怒らせ、対決ムードを高めようとしているとしか思えない。焦点の再生可能エネルギー買い取り法案について岡田は菅との間で「審議・採決まで行う」で合意したと述べているが、菅は27日の記者会見で「何としても私の内閣の責任で成立させたいと考えている」と述べた。昨日の解説でも指摘したとおりとなった。「採決まで」かそれとも「成立まで」かの食い違いは大きい。成立しなかった場合には衆議院を解散する含みがあると受け取れるのだ。そのためには自民党を挑発して同法案をめぐって対決ムードが高まれば高まるほどよいことになる。
問題は党執行部を全く無視して人事を断行して、今後の党運営が菅の思うとおりに進むかということだ。岡田は、菅に「亀井副総理反対」を伝達した直後に菅が同人事を亀井に打診したことで神経逆なでされた形となった。国会対策委員長・安住淳も「何の話も聞いていない。本当に国会の厳しさを分かってやっているのか」と怒りを隠さない。きょう28日の両院議員総会が見物だ。執行部からは助け船は出そうもない。一方、自民党執行部は激怒しているが、脇の甘さは隠せない。総裁・谷垣禎一に至っては25日、第2次補正予算案について「考えが違うものは出てこないと思う。ポンポンと審議すればいい。協力する」との早期成立に協力する考えを表明してしまった。そこに菅からの平手打ちを食らったのだからいかんともしがたい。求心力を問われる結果となった。
◎岡田は“菅退陣”を詰め切れていない
◎岡田は“菅退陣”を詰め切れていない
テレビの主要政治家のインタビューは録画して綿密にに聞き直してみないと真意が伝わらない。幹事長・岡田克也は24日の民放テレビ番組で「脱原発解散」を「夏の幽霊みたいなもので、常識的にないし、あってはならない」と一応は否定しているし、それが確かに常識だろう。しかし、放送を聞き直してみると微妙なニュアンスが残っている。案の定26日には「解散は首相の大権」とその可能性を完全否定しなかった。首相・菅直人が“狂気の解散”に走り込むケースまでは、さすがに否定できないのだ。発言を分析すると岡田は菅との調整で、再生可能エネルギーの買い取り法案の成否、第三次補正を編成する首相は誰か、脱原発解散回避ーの致命的な3点で、話が全く詰められていないことが分かる。菅を8月いっぱいで退陣させるには、まだひと山もふた山も越えなければなるまい。
まず首相・菅直人の居座りで白紙に戻った与野党合意に当たって、岡田と菅が詰めたポイントは「再生エネ法案は国会において審議・採決する」と「第3次補正予算案の本格的編成は新体制で行う」の2点だ。まず再生エネ法案だが、通常なら「成立させる」とするところを「採決する」にとどめたのはなぜか。岡田は「否決されたらもう一回採決となると次の国会まで政権が行ってしまう。通す努力はしなければならないが成立まで首相が行うということではない」と採決さえすれば、成否に関わりなく退陣するとの見通しを述べた。採決すれば、たとえ否決されても菅の居座りはそれまでと歯止めをかけたつもりなのであろう。しかし問題は菅への歯止めがかかっているかどうかだ。菅の政治手法なら「採決したら成立させるのが当然」と開き直りかねないからだ。「成立まではあなたは責任を持つ必要がない」と詰めていそうもない。そこが詰まっていないのでは「絵に描いたもち」にすぎない。
次に「第3次補正予算案の本格編成は新体制で行う」であるが、菅がごねて「新内閣」を「新体制」に代えさせたいわく付きの部分である。ここでも岡田は菅に対して「新体制とは次の首相なのですね」と詰めていない。従って菅は、「内閣改造で新体制を作って3次補正の編成に当たる」という詭弁(きべん)を成り立たせることが出来るのだ。岡田自身が「首相が新内閣を新体制と言い換えた点に意味があるという人もいる。解釈に幅があるかも知れない」とまるで他人事のように述べていが、実際にはこのクリティカルな部分があいまいでは歯止めになり得ないではないか。
次に菅側近や亀井静香が主張している「脱原発解散」だ。岡田は「誰も言っていない。うわさとして永田町に流れているがそういった可能性はないと思っている」と否定している。しかし微妙な点を付け加えているのを見逃してはなるまい。「最後は総理大臣が決めることですよ。菅さんの頭の中までのぞいたわけではないので断言できないが、常識的にないし、あってはならないことだと思っている」と述べているのだ。この「常識的にない」が菅には通用しないことが全ての問題の発生源となっているのであり、岡田はいわば希望的観測をしたに過ぎない。現に岡田は、26日になってテレビの司会者から「体を張って止めるか」とただされ、「総理の解散権を今から否定するわけにはいかない。総理が解散といえば出来る。そういう仕組みだ」と可能性に一歩踏み込んでいる。
こう見てくると岡田は菅の延命に歯止めをほとんどかけ切っていないことが鮮明に浮かび上がるではないか。うやむやにして菅の“善意”にだけ期待しても、その“善意”のかけらもない菅には無駄だ。岡田自身も「まだ確認できない点もあり、もう一度確認できないか自民、公明両党に提案したい」と述べているが、詰めが甘いのだ。キーポイントでの岡田の詰めの甘さが菅の居座りの根源となっているのだ。自民党幹事長・石原伸晃が26日「震災を受けた東日本の人たちが、菅さんは気が狂って解散するのではないかと思っているような事態では物事は進まない」と“狂気の解散”の可能性を指摘している通りだ。しかし岡田ではやり直しても詰める力量はないだろう。政府・与党首脳は26日夜、岡田、参院議員会長・輿石東、官房長官・枝野幸男、官房副長官・仙谷由人らが鳩首協議し、8月末までの退陣で一致したが、誰が鈴を付けるのか。犬の遠吠えを繰り返していても無意味だ。いかに菅を押さえ込むか。政権内部に問題と火だねは依然残っている。
◎再稼働は菅が「原発遍路」でみそぎを果たすしかない
◎再稼働は菅が「原発遍路」でみそぎを果たすしかない
最近の首相・菅直人の薄笑いには「してやったり」の思惑がうかがえて生理的嫌悪感を覚えるが、少なくとも70日はつき合わざるを得まい。天を恐れぬ内閣改造まで検討しているとあっては,もはや天罰が下るのを待つしかない状態に至った。しかし首相であるからには“保身”のほかにやるべきことがあることを忘れてもらっては困る。自ら招いた電力危機への対応である。「浜岡停止」に端を発して全国的に原発の再稼働不能状況が続き、このままでは「日本沈没」の大不況が目前に迫りつつある。「脱原発解散」で政権延命を目指す前に、少しでも誠意が残っているなら菅は、再稼働に向けて原発立地自治体を回る「原発遍路」の旅に出るべきだ。
この政権ははっきり言って腐っている。政権の体をなしていないのだ。なぜかと言えば一にかかって菅の延命を軸に政治の私物化が横行し、復旧・復興・原発の三点セットが進展しないのだ。とりわけ原発政策が他人事のようになっている。23日も共産党委員長・志位和夫との会談で官房長官・枝野幸男が「一般社会の常識で考えても、地元の知事が『絶対に反対』と言っているものを再稼働させることはできない」と民放コメンテーターのような無責任発言をした。志位に「『知事が反対したら再稼働はできない』と言ったことは非常に大きい」と言質を与えてしまった。一方で経産相・海江田万里は原発安全宣言をして再稼働させようとしている。菅は菅で「私も考え方は経産相とまったく同じ。きちんと安全性が確認されたものは、稼働していく」と発言しているが、行動が伴わない。むしろ思惑は逆だ。石川県知事・谷本正憲が「一体、どこが最終的な責任を持つのか」と不信感をあらわにしているが、これは各県知事に共通した認識だ。
要するに、この政権はことの重大性を理解していないか、あえてほおかむりしているのだ。各県知事が原発の再稼働が出来ない理由の全ては、「浜岡」に起因している。「菅が浜岡停止」の理由を地震・津波対策に絞って表明したことが発端なのだ。地震列島の原発で地震や津波を無視できる原発はないにもかかわらず、菅が人気取りのパフォーマンスで打ち出した施策が今になって因果応報の跳ね返りをみせているのだ。関経連会長・森詳介が「浜岡原発の停止要請がなければ、様子はガラッと変わっていた。国がきちんと地元に説明し、安心が得られるようにしてほしい」と述べているとおりだ。反対運動に直面して地元知事たちも、お手上げの状態に陥っているのだ。
来年春には54基の原発全てがストップするが、それを待たずに
7月からの電力事情の窮迫が目前に迫っている。東京電力ばかりか関西電力や九州電力が窮地に陥りつつあるのだ。原発停止による電力不足は、我が国経済を直撃して大不況を惹起する。生産拠点の海外移転を一層促進し、雇用にはマイナスの作用をもたらす。何より重要な被災地の復旧・復興にとって大きな足かせになるのだ。事態は急を要する。原子力安全・保安院は審議官を派遣して福井県に原発再稼働を促したが事実上の門前払いだ。海江田も立地県を順次訪問する予定だが、多くの知事が首相本人の説明を求めており、海江田レベルでは問題の解決につながらないだろう。ここは浜岡を止めた菅自身が地元に行って説得しないと、知事たちは振り上げた拳を下ろせない状況に陥っているのだ。
菅は浜岡を「例外的な事情がある」と指摘して「全ての原子炉を止めることは、あまりにも経済への影響が大きい」と述べているが、言うことと思っている事は逆だ。つまり延命のための「脱原発解散」を狙う以上、再稼働とは矛盾する。「一応発言をしておいた」くらいの意味しかもたない。自分のしたことの後始末をしない例えを「兎の産みっぱなし」というが、少しでも国を思う気持ちと良心が残っているのなら、「生みっぱなし」のまま辞めて四国遍路に出る前に、原発遍路でみそぎを果たすべきだ。そして自らの浅慮を身をもって知るべきだ。確かに原発の「安全神話」は崩壊したが、共産党、社民党、市民運動家のプロパガンダで「危険神話」に陥れば日本は間違いなくアウトだ。
◎本質は菅の解散指向をいかに阻止するかの攻防だ
◎本質は菅の解散指向をいかに阻止するかの攻防
この政局の本質は、首相・菅直人の「退陣」するかどうかなどではない。「退陣」は当分しないのだ。むしろ菅が「脱原発解散」を視野に入れて政局の主導権を握ろうとしている流れを、食い止められるかどうかの攻防であろう。政治記者もようやく分かって来たとみえる。影響力最強のNHKが「再生エネルギー特別措置法案の成立により菅総理大臣は衆院解散に打って出ようと考えているのではないかとささやかれ始めた」と報じては、追いかけざるを得まい。朝日新聞も含めて政局記事に「解散」の2文字が入るようになった。これを政局用語では「解散風が吹き始めた」と形容する。
過去2,3日の動きのポイントは、民主党執行部の「菅降ろし」が成功するかどうかだったが、幹事長・岡田克也以下が腰砕けとなり失敗した。象徴する部分は「新首相で3次補正」の文言に菅が激怒、結局「新体制で3次補正」と書き改めた所にある。「新体制」では菅が内閣改造することも容認したことと同じだ。そもそも岡田は自ら辞任も覚悟で菅に迫るはずだった。これでは統一地方選挙も政局も“出ると負け”で、幹事長失格だ。すごみがあるのは顔だけかということになる。
岡田に追随していたはずの官房長官・枝野幸男も再生エネ法案について「首相は野党時代からバイオマス(生物資源)の問題をはじめ、強い関心と意欲を持っている。この法案は今までの自然エネルギー促進策の代替であり、成立しないとマイナスになる。この国会で成立させてほしい」と、こんどは音より早く首相に追従しはじめた。要するにこの場面は連快(れんぺい)辞任でけりをつけるしかなかったのに、びびったのだ。岡田はことが終わってから逆ギレして菅に「両院議員総会に出てください」とねじ込んだが、手遅れなのだ。
今後は菅がいかにその地位の保全を図るかだが、菅は厚相時代に
薬害エイズで省内や製薬会社を相手に戦ったときと同じ高揚感だという。市民運動家の原点復帰で孤立感がますます戦意を高めるタイプだから始末が悪い。その市民運動家・菅が照準を定めたのがまぎれもなく再生エネ法案である。財界の反対を背景に自民党が反対に回る事を想定して、これを「脱原発」の風潮と結び合わせて、小泉純一郎の郵政解散と同じシングル・イシュウ選挙の手口を使おうという魂胆だ。しかしこの結びつけはトリッキーそのものだ。これに国民がだまされるようではガバナビリティ(被統治能力)が問われる。国民は2年前の衆院選のマニフェストと同じ民主党の「詐欺」にあうことになる。
なぜなら「脱原発」と再生エネ法案は似て非なるものがあるのだ。「脱原発」是非のテーマは直近の問題として存在する。絶対反対の市民運動家の主張どおりに全ての原発を止めて再稼働しなければ、日本は確定的に沈没する。明日の飯が食ってゆけるかどうかの問題なのだ。逆に再生エネ法案は、将来の電力買い取りを想定しており、菅の言う1000万戸にソーラーパネルが付くなどいつのことか分からない。風車も音がうるさすぎる上に狭い日本では景観を害する。孫正義は独自の嗅覚で将来金になると判断して菅をけしかけているのだろうが、今直ちに実現できるとは思っていまい。
この「時間差」が決定的な違いである。それにもかかわらず、「浜岡停止」で味を占めた菅は、法案と脱原発をあえて同一時間軸に据えて、国民を煽ってイタリア同様に「集団ヒステリー化」させ、選挙に活用しようとしているのだ。もっとも菅自身が停止原発の再稼働を主張しているのであり本来なら成り立ち得ないテーマでもある。しかし国民新党代表・亀井静香が「小泉を見習え」と菅に進言しているのは、まさにこのこのトリックの活用にある。国民はこのような淺知恵にはまるだろうか。はまれば解散、はまらなければ退陣だ。
加えて、奇策がないわけではない。野党が再生エネ法案に賛成してしまうことだ。自然エネルギー活用に異存がある政党はあるまい。自民党の主張を入れた修正でも良い。たとえば直ちに電気料金に跳ね返らないように修正するのだ。買い上げ制度が普及、定着したあとでの料金値上げでも十分だ。成立させた後運用で都合が悪ければ、政権が代わった後にでも修正出来ないわけではない。成立させてしまえば政局に刺さった解散のとげは一挙に抜ける。菅の居座りの口実もなくなる。今日の読売の社説にあるように「最小不幸社会」でなく「宰相不幸社会」を阻止するには知恵を出す必要がある。
◎再生エネ法案で菅が仕掛ける「解散蟻地獄」
◎再生エネ法案で菅が仕掛ける「解散蟻地獄」
近くのことでも予知できないことを「智者も面前に三尺の闇あり」という。「智者」をマスコミに置き換えれば見えていないものがある。首相・菅直人の「再生エネルギー特別措置法案」への異常な執着ぶりは一体何なのかだ。単純に原発事故に端を発した新エネルギー対策や、「歴史の評価」を意識した格好づけと受け止められるのか。そうではあるまい。完全に市民運動家に先祖返りした菅が、同法案で自民党と財界の脇腹にドスを突きつけているのだ。自民党の反対を予知して、同法案をめぐって激突し、「脱原発解散」を目指そうとする下心が見える。「70日延長で菅の8月下旬までの退陣が事実上確定する」などという見方は甘い。絶対に辞任の言質を避けている二枚腰三枚腰の菅ならやりかねない伏線が隠されている可能性がある。
太陽光、風力など再生可能エネルギー買い取りを電力会社に義務づける再生エネ法案の成立について、菅は21日の党幹部との会談でも異常なほどのこだわりを見せた。「自らの政治生命にかかわる」とまで言い切っている。50日延長は8月上旬までだが、70日なら、同月31日までであり、菅側近が漏らしているとおり、「広島原爆の日の脱原発宣言、その上での解散、9月選挙」の日程がはめ込めるのだ。その辺の可能性を読んでいる政治家が一人だけいる。参院議長・西岡武夫だ。西岡は21日、再生エネ法案に関連して「首相は目先の大事な問題も処理しないまま、延長国会で、脱原発を掲げて衆院を解散しかねない。だまされてはいけない」述べている。
再生エネ法案についての財界の受け止め方はどうか。経団連会長・米倉弘昌既は文書で「電力価格の上昇をもたらすことのないよう制度導入は見直すべきだ」と政府に反対を申し入れている。21日にはこれをより鮮明化させて「これほど社会主義的な産業政策はないと思う。企業は蹴飛ばされて海外に出ざるを得ない」と、イデオロギーに根ざした産業の空洞化を指摘している。たしかに全量固定買い取り制は結局電力料金に跳ね返る。当面1世帯あたり500円と言う試算が出ているが、原発が全てストップした際の電力料金値上げ幅1049円に上積みされるから、標準世帯あたり合計で1549円の超大幅値上げとなり、7312円の電気料金となる。家庭のみならず企業にとっても極めて重い負担となり、大口需要者鉄鋼業界などは真っ向から反対している。電力を売るすべのない消費者に負担増を求めることにもなり、専門家の間でも疑問の声が強い。
菅が唐突に法案の成立にこだわりだしたのは、新エネルギー政策を商機ととらえている孫正義の入れ智恵があるとされている。15日得体の知れない市民団体の会合に出席して「辞めて欲しければ法案通せ」と挑発したのも、孫が「10年やって欲しい」とごまをすったのも孫ペースの思惑がある。孫は財界主流に真っ向から挑戦していることになるが、東電と経団連と経産省を「敵」と位置づける菅の意向ともぴたりと合致する。加えて政局的な“落とし穴”がうかがえるのだ。
蟻地獄がアリを待つかのように、菅は自民党が落ちるのを待っているのだ。菅は自民党が反対の攻勢に出てくれば、解散で切り返す可能性がある。3月11日朝のの地震直前に閣議決定した再生エネ法案だが、孫の“アドバイス”を経て、菅は4月末頃から唐突に法案を気にし始めた。そして15日以来何よりも最優先で執着し始めたのだ。明らかに政局狙いであろう。市民運動家・菅としては、世の中は反原発ムードに満ちており、市民運動と連携すれば、同法案だけを争点に「脱原発」を訴えて選挙が出来ると踏んでいるのかも知れない。資金は孫が後ろにつけば余るほどある。菅が生き延びる最後のチャンスはこれしかない。
では自民党はどう出るか。総裁・谷垣禎一は再生エネ法案に「本当に実効的なものなのか、かなり検討の余地がある」と消極的な姿勢だ。同党参院側も国対委員長・脇雅史が「反対」を公言している。電力や鉄鋼業界などのバックアップを受けている自民党としては、基本は反対であろう。公明党代表の山口那津男も14日、「制度は理解するが、政府として電力料金負担、需要者の負担について透明化する努力が必要だ」と慎重だ。両党とも世論の動向を見極める必要があるのだろうが、激突となれば菅の思うつぼである。蟻地獄を前に窮地に陥る可能性があるのは自民党でもある。「菅退陣」のポイントを押さえず、曖昧にしたままの会期延長決定は極めて危険を伴うと見ておいた方がよい。
◎菅は即刻退陣表明し、政治不信を解け
◎菅は即刻退陣表明し、政治不信を解け
体が半分にさけても生きているからオオサンショウウオを「はんざき」と言うが、首相・菅直人に例えては天然記念物の「はんざき」がかわいそうだ。むしろティッシュでつぶしたはずのクモが這い出すようなおぞましさを感ずる。支持者は「辞める必要ないわよ」とけしかけている夫人・伸子と、政界の潮流に逆張りだけで生きている国民新党代表・亀井静香くらいのものだが、菅は次から次に愚にもつかないテーマを考えついて首相の椅子にすがろうとする。見苦しい、もういい加減にせよと言うべき段階に入った。国民の政治不信を一身に背負っていることを自覚せよ。
粘れるだけ粘ろうとする首相。「辞める」と同志をだまして不信任案を否決に導き、否決の後は「圧倒的多数で支持を得た」と居座る首相。経団連会長の米倉弘昌会長が「自分が言ったことをちゃんと実行しないと、若い人たちの教育上も具合が悪い」と語ったが、もう小学生にまで「嘘つき首相」で有名だ。教育者は当分この首相を「反面教師」として教育してゆくしかあるまい。大詰めに来て菅は赤字国債法案と特例公債法案に加えて、「政商」孫正義の入れ知恵で再生可能エネルギー電気調達特別措置法案の成立までも条件に加え始めた。その結果会期は4か月という未曾有の長さになる。幹事長・岡田克也は口癖のように「会期延長と首相がいつ辞めるかは別の問題だ」と繰り返すが、菅を辞めさせる迫力もなく空しく響くだけだ。
いったい執行部は本気で菅を辞めさせる気があるのかということだ。大幅延長を菅の言うままの幅にするとなれば、菅の居座りを黙認することになると誰でも思う。自民党幹事長・石原伸晃が「4カ月間、首相の延命に手を貸すことはできない」と反応しても無理はない。もちろん筆者が主張したように新首相で与野党協調態勢がとられ、大震災対策が進展するなら会期は通年国会でも良い。だいたい岡田も、政調会長・玄葉光一郎も国会対策委員長・安住淳も菅との「差し違え」に傾いていたではないか。それを「首相が『ご苦労さん』と辞表を受け取ったら終わりだ」などと怖じ気づいて辞任せずだという。この政局の構図は菅との死闘の構図であり、けんかの仕方を知らない。やるのなら身を投げ出さなければことは成就しないのだ。
この破廉恥な菅の居座りは、どのような心理状態から出てきているのかと言えば、過去2回の“成功体験”が大きく作用している。粘れば“天祐神助”が生ずると確信しているのだ。一つは自らの外国人献金の窮状を吹き飛ばした大震災。他の一つはだまして成功した不信任案否決だ。2度あることは3度あると菅は思い込んでいるに違いない。だから寸きざみに延命を図ろうとしているのだ。同じ手口を狙って会期延長を実現し、批判を馬耳東風と聞き流していれば、いくらでも延命を図ることが出来るという心境なのだ。「図に乗る」と言う言葉は菅のためにある。
もう被災者のことなど口先だけで菅の念頭にはない。そこにはただひたすら亡者のごとく権力にすがる浅ましい老人の姿があるだけだ。菅の「国会には『菅の顔だけは見たくない』という人が結構いる。そういう人たちには『本当に見たくないのなら、早くこの法案を通した方がいい』と言いたい」という、「ユダヤの商人」のごとき「取引発言」がその浅ましさを証明しているのだ。加えて「脱原発解散」の脅しだ。自民党副総裁・大島理森が「こんな下品で下劣な総理をもって寂しい」と述べているが、筆者も半世紀日本の政治を見てきて、これほどの首相の浅ましさは体験したことがない。
よく半年続いた「三木降ろし」に例えられるが、三木にはまだ「ロッキード疑獄解明」という大義があった。菅には大義がない。大震災は菅がいては復旧・復興の妨げになるだけであり、菅が無理矢理大儀にこじつけようとすればするほどマイナスに働く。2代続いた失格首相と降ろすにおろせない執行部の体たらくは、大局から見ればそもそも国民が民主党に政権を取らせたこと自体が失敗だったと言わざるを得まい。一刻も猶予のならぬ大震災対策を推進するためにも、菅は潔く退陣して、遍路に出よ。それも4国遍路は道がけがれる。「菅発のエネルギー危機」を回避するため、各地の原発を回り「原発再稼働の遍路」でみそぎをせよ。
◎菅、「脱原発解散」情報で禁じ手の主導権狙い
◎菅、「脱原発解散」情報で禁じ手の主導権狙い
永田町ににわかに緊張感が走っている。「8月8日解散・同30日告示・9月11日投票」説だ。首相・菅直人が「脱原発」のシングルイシューに絞って勝負に出るというのだ。どこかで見た日程だと思ったら、やはり「郵政」一本に絞って解散を断行した小泉純一郎の「郵政選挙」そっくりそのままの日程だ。うまく出来すぎている話だ。しかし、自民党副総裁・大島理森が焦って18日のテレビで「パフォーマンス選挙をやらせることのないようあらゆる手段を講ずる」などとまともに取り上げたものだから、なおさら火がついた。政権に異常に執着する偏執的傾向を見せる菅でなければできない異常な選挙だが、まさか断行しきれないと思う。主導権狙いだ。しかし情報は観測気球的性格を持つだけに侮れぬ側面もある。万が一菅がとち狂ったように突入した場合には、野党はひるんではならない。究極の謀略解散を受けて立ち、国の存亡をかけた選挙をすれば良いと思う。
夕刊フジが17日報じたものだが、根も葉もない話しではあるまい。単なる作文ではなく、少なくとも「ソース」がある話しだ。火のないところに煙は立たぬ。おぼろげながら選択肢の一つとして菅周辺には浮かんではいるのだろう。夕刊フジによれば広島「原爆の日」の8月6日にも「脱原発」を内外に向けて宣言し、そのまま選挙になだれ込むという計画だという。側近が「小泉さんが『郵政民営化は是か非か』の1本で選挙をやった。あれと同じ。民主党内にも原発推進論者は結構いるが、菅首相の『脱原発』に反対するなら、郵政総選挙と同じように追い出して刺客を立てればいい」と述べているという。自民党副総裁が反応しているのに、大新聞がタブロイド紙を馬鹿にして、あえて無視しようとしていることの方がおかしい。産経のように囲み記事扱いくらいしても良い。
ただ一つ朝日編集委員の星浩が18日の紙面で「脱原発で虎の尾を踏み込め」と謎のような記事を書いているのが意味ありげだ。菅自身と周辺に強いパイプをもち菅擁護の論調を貫いている星は、まず菅が「これまで多くの非難や中傷を受けてきたが、浜岡原発の運転停止を求めて以降の私に対する攻撃は、経験したことのない異常な激しさだ」と漏らしていることを明らかにした。次いで「ここは、勝負どころだ。首相の座を去る前に、脱原発へ強いメッセージを出してはどうか。七転び八起きの「八起目」で、思い切り「虎の尾」を踏み込んでみるのも一つの決断だと思う」と最後の勝負を勧めている。明らかに星にも「脱原発解散」の情報が入っており、「虎の尾を踏め」と暗に解散を促しているのだろう。
「菅ならやりかねない」と自民党内には一時「戦慄」が走った。「浜岡停止」での国民の反応を見ているからだ。世論調査では7~8割が賛成している。国民はその後各地の原発が再稼働できず、我が国がエネルギー危機に直面したことなどとても予見できる状態にはなかったのだ。その「浜岡」に菅は味を占めて「脱原発」で選挙をすれば自民党は壊滅的な敗北となると踏んでいるのかも知れない。しかし自民党は“戦慄”などしているときではあるまい。ここは菅が被災地の窮状も顧みず、また満足に投票権も行使できない地域があるのに解散に踏み切るなら堂々と受けて立つ時だ。
その場合、解散・総選挙は究極的には「正義」か「邪悪」かが争点になる。いったん辞めると言った首相が、延命そのものを狙って解散・総選挙に打って出れば「邪悪」なるものとの戦いそのものだろう。ほんの数か月前まではベトナムに原子炉を売り込み、トップセールスの成功に有頂天になっていた首相が、単なる「延命」のためにだけに変身して「脱原発」を唱える。野党は、まず菅の臆面もなきマキャベリズムを訴えれば良い。さらに民主党内は原発推進派が多い。原発推進のため、労使一体となって国民的な合意形成を目指してきた電力総連や電機連合のバックアップを受けている。連合は原発推進政策を凍結しているが、内部は推進論が潜行しており、とても「脱原発」に集約できる情勢にはない。企業がつぶれれば労組は存在し得ない。脱原発で解散となれば民主党は分裂の危機となりうる。
さらに8月上旬ともなれば7月の電力不足が継続しており、原発なくして日本の産業が成り立ち得ないことがようやく国民に浸透し始める時期でもある。大停電でもあれば菅の狙いなどいっぺんに吹き飛ぶ。加えて青森知事選挙を見ても原発推進派の三村申吾が大差で勝っている。統一地方選挙も北海道、福井、島根、佐賀の知事選で原発の是非が争点となったにもかかわらず、容認派の知事が再選している。原発を抱える現地の県議選でも推進派が圧勝している。新潟の柏崎刈羽郡選区、山口県上関原でも勝っている。必ずしもイタリアのように「集団ヒステリー」(自民党幹事長・石原伸晃)状態に至るとは限らないのだ。
しかし選挙は「風」。吹きようでどうにでも転がる。瓢箪から駒で「狂気の解散」となれば、堂々と原発なくして日本は立ち行かないと主張して、敗れればそれは国民の選択であり致し方ないことだ。菅と共産党、社民党、河野太郎、孫正義らが謳歌する世の中になれば良い。この民度にしてこの政治ありであろう。日本は確定的に亡国の路線をたどるだけだ。それも国民の選択ならば仕方がない。一番悪いのは菅周辺の「脱原発解散の脅し」に乗って、怖じ気ついて気圧されたまま政治の主導権を握られることだ。逆手を取って「災害強化原発の是非」がテーマの解散を訴えるくらい元気なのが本来の政党の姿だ。「原発是非」は新党が成り立つほどの大テーマだ。近頃の自民党の政治家は草津温泉だ。湯(言う)ばかりで腹が据わっていない。
◎小沢、求心力回復に懸命のグループ慰撫
◎小沢、求心力回復に懸命のグループ慰撫
「鳩が出た」結果大失敗に終わった2日の「内閣不信任の変」以来、小沢一郎の沈黙が続いている。永田町には挫折感が大きすぎてさすがの小沢も打ちのめされたとの見方が濃厚だが、筆者はそれもあるが、実態は「死んだふり」と見る。その証拠には自宅や料理屋に中堅・若手議員らを招いて連夜「慰撫工作」を展開、捲土重来の準備を整えつつあるのだ。小沢は首相・菅直人を「死に体」と見ており、ポスト菅の代表選に向けて牙を研いでいるのだろう。
「一日も早く代わった方がいい」と野党も巻き込んだ「菅降ろし」を推進していた小沢は、2日の不信任本会議直前、「菅を退陣で説得した」という鳩山に「署名させたか」と顔色を変えた。ベテランなら「だまされた」と一瞬にして分かる対応だったからだ。案の定菅は、多くの議員が辞めると信じて否決に急転換したにもかかわらず、卑怯にもその否決を金科玉条として居座りを続けている。小沢が、前日の夜には70人を集めて気勢を上げ 、造反が80人に達して不信任可決で党分裂か大連立かという事態寸前での大逆転である。一致結束して行動できず小沢の求心力は急落した。小沢グループの若手の中には「もう会合に出ない」と反発が生じ、小沢の増税反対・マニフェスト固執路線を「古い」と批判する声も高まり始めた。
対応を迫られた小沢は外向けには死んだふり作戦、内向けには求心力再構築に専念せざるを得なくなった。外相・岡田克也の不信任案欠席の事情聴取にもおとなしく応じて、「韓信の股くぐり」をした。グループの若手・中堅には得意の飲み会での懐柔に出た。16日までの4日間で70人以上と飲んでいる。もっともその発言はオオカミ少年化を恐れてか、極めて当たり障りのない範囲にとどまっている。「みんなでいい代表を選ぼう」と述べるだけでは、まるで小学校の生徒会長選びだ。しかし側近らには「菅は最後の粘り腰で粘っているが早晩退陣だ」と漏らしている。
依然として120人のグループを率いる小沢の動向が無視できないのは確かだ。菅と抱き合い心中するごとく悪あがきをしている国民新党代表・亀井静香は、非常識にも菅に内閣改造を勧めた後、「小沢一郎も納得する内閣を作らねばいかん」と述べて、小沢の気を引こうとしている。しかし、亀井もぼけた。小沢が「死に体」の菅に改造をやらせることなどまずあり得ない。せいぜい新設の「復興相」任命が精一杯だ。次期代表選候補の財務相・野田佳彦も小沢を無視できない。「誰かから脱する、誰かを除くというのは不毛だ。一番超えなければいけないのは怨念の政治だ」と述べ「脱小沢」見直しを表明している。小沢に秋波を送っているのだ。
小沢は野田については「増税でいくなら支持は広がらないだろう」とけん制ともアドバイスともとれる発言をするにとどまっている。グループ内に擁立論のある鹿野道彦には「昔、僕の下で何年間もやっていたなあ」などと言うだけで、支持には踏み込んでいない。こうして、ルーピー鳩山の愚行で崩れかけたグループの体制立て直しはかなり進んで、「再起動」へと動き出そうとしているのだろう。しかし自ら自民党などに大連立をほのめかして不信任案を提出させ、可決に導くことができなかった「信用失墜」は大きく、総じて小沢の地盤沈下は覆うべくもない。朝日のかたえくぼ欄の「20年必要 脱原発―ドイツ、脱小沢―日本」は傑作だが、実際には影響力は数年維持できればいいところだろう。
◎いくら孫が暗躍しても「7月退陣」の方向だろう
◎いくら孫が暗躍しても「7月退陣」の方向だろう
誰が新エネルギー政策で首相・菅直人に入れ知恵しているのかはうすうす感づいてはいたが、黒子が表舞台に躍り出て鮮明になった。超党派の議員らの集会でソフトバンク社長の孫正義が菅に「土俵際で粘り通して、この法案だけは絶対に通してほしい」と自然エネルギー電力買い取り法案の成立を促したのだ。孫はこのところ菅との接触を頻繁に繰り返しており、先のサミットで菅が表明した「太陽光パネル1000万戸計画」も担当相の海江田万里は全く知らず、確実に孫の入れ知恵という見方が強い。新エネルギーばかりか、財界の総意とは逆に早期退陣阻止に動いて、会合の度に菅を「粘り抜いて」と励ましていたであろうことも十分うかがえる。あらゆる事象をビジネスチャンスに結びつける“動物的嗅覚”が、「フクシマ」を契機に自然エネルギーにいち早く着目、菅にすり寄って政権延命を狙うという構図だ。孫が「政商」としての側面をあらわにしたのだ。それも公然と法案成立を促すとは驚いた。胡散臭いという見方が当然出てもおかしくない。孫の総資産から言えばポケットマネーの義援金100億円など、“自然エネルギー”への関与ですぐに元を取ってお釣りが来る計算だろう。
菅は孫のエールに乗って「この法案を通さないと、政治家としての責任を果たしたことにならない。国会には『菅の顔だけは見たくない』という人がいる。本当に見たくないなら、早くこの法案を通したほうがよい」と述べた。またまた延命策を思いついたのだ。しかし、菅の悪あがきもそろそろ“決着”へ向けて収れんし始めた。大きなポイントであった赤字国債発行の特例公債法案成立のめどがつき始め、会期を大幅に延長しても途中で退陣させる方向が固まったからだ。問題は3か月の延長会期、つまり9月末までのうちどの時点で退陣するかだ。政府・与党は約2兆円規模の第2次補正予算案を7月中旬までに国会に提出、同月中の成立を図る。第3次補正予算案はお盆明けの8月下旬に国会提出、9月初旬の成立を図る方針だ。退陣の時期としては2次補正編成終了時か同補正成立時のいずれかになる可能性が強い。岡田が「菅総理大臣は『めどがついたら辞める』と言っており、会期の大幅延長と、どこかの段階での交代は矛盾しない」と会期途中での退陣を明言したが、途中退陣を言うからにはお盆明けや9月に入ってからということはありえない。岡田の狙いもせいぜい7月下旬の2次補正成立を花道にするということだろう。岡田は辞めない場合には直接菅に退陣を諫言(かんげん)して差し違える覚悟のようだ。
しかし菅はこのところ「粘れば粘れる」とばかりに延命に自信を付け始めた感じが濃厚だ。外国人献金で退陣不可避の状態に追い込まれたときに発生した大震災は、不遜にも菅にとって天佑神助以外の何物でもなかったのだ。以来大震災関係のあらゆる問題を“活用”して居座り続けるという、政治家としてあってはならない態度を維持している。今後もそのチャンスをうかがい続けるだろう。国民新党代表の亀井静香が内閣改造を進言しており、捨てておけば「死に体首相」が改造までやりかねない。
この菅にとどめを刺すには容易ではないが、ここは攻める方も粘り腰で行くしかあるまい。20日にも開催される与野党党首会談、21日にも予定される民主党両院議員総会などでボディーブローを与え続ける必要がある。場合によっては岡田ら党役員と閣僚の連袂(れんぺい)辞職も致命的な打撃になる。この点については次期代表候補の財務相・野田佳彦が15日、特例公債法案との引き換え辞任に言及したのは興味深い。特例公債法案について「もし私が首を差し出してそれが成るなら、そうしてもいい」と辞任も辞さない考えを表明したのだ。閣内からこうした声が澎湃(ほうはい)として起きれば、さすがの菅も身動きがとれなくなる。戦い方はいくらでもあり、菅はいくら何でも7月には観念して年貢を納めざるを得ないだろう。
◎菅は原発再稼働に向け地元説得責任を果たせ
◎菅は原発再稼働に向け地元説得責任を果たせ
レームダックの首相・菅直人に期待するものは何もないが、ただ一つ早急に自らの手で処理してもらいたいき問題がある。それは「浜岡発の電力危機」回避だ。菅による「浜岡停止」を契機に、全国的に停止原発の再稼働ができず、7月の電力危機が東電だけでなく全国に波及する流れとなっているのだ。事態は短期的な国民や企業の困難直面にとどまらず、このままなら中長期的にも産業空洞化と“原発大不況”の危機が避けられない情勢だ。大震災の復旧・復興にも確実に影響を及ぼす。菅は、現状では代替が不可能な再生可能エネルギーにうつつを抜かしているときではない。直面する危機が分かっていないで理想論を述べるパフォーマンスも、もう「死に体」となった以上必要ないではないか。一刻も早く地方に出向いて地元自治体と住民に説明責任を果たし、再稼働に持ち込むべきだ。
民主党政権の大向こううけ狙いは鳩山由起夫の「温室ガス25%削減」と菅の浜岡停止が象徴しているが、温室ガスは「机上の空論」と鳩山が馬鹿にされるだけに過ぎなくても、浜岡停止は、生活と産業基盤を直撃する事態を招いた。現在13か月ごとの定期検査で原発が次々に停止しているが、再稼働が地元の反対でできなくなっているのだ。このままでは1年以内に国内の54基の原発がすべて止まり、産業と国民生活は甚大な影響を受ける。012年度の毎月の標準家庭の電気料金は、平均で 1049円上昇し、6812円になる。日本経済研究センターは14日、工場の稼働率低下などで年間7・2兆円の経済損失が発生すると試算した。貿易収支は11年度から赤字に転落し、海外からの利子や配当の受け取りを含めた経常収支も17年度には赤字に転じると予測している。関西電力は15%の節電を要望、とても東に電力を融通できる状態ではなくなった。
ただでさえ産業の空洞化が叫ばれる中で、原発再稼働は喫緊の課題となっっているのだ。このままでは豊富で安い電力を求めてさらなる企業の海外移転が進展せざるを得ないのだ。原因の全てが、菅が明確な根拠のないまま、地震発生の可能性だけを理由に浜岡を止めたことにある。さる4月末には全ての原発が安全基準を達成、再稼働へと動き始めていたにも関わらす、菅が5月6日に、浜岡停止を突如要請したことが、まぎれもなく再稼働ストップに直結したのだ。地震の可能性のない原発などはこの列島には存在せず、かえって地元の不安感をあおってしまった。菅は後になって「安全性が確認されれば稼働を認めていくことになる」と述べているが、既に手遅れになりつつある。地元知事らの懸念は高まる一方であり、反原発の動きを各地で加速させる事態となった。
九州電力の玄海原発2、3号、関西電力の高浜1号などは定期検査を終えて、本来なら3、4月に運転再開の予定だった。中国電力も来年3月に予定していた島根3号の運転開始を延期した。再稼働が宙に浮いた原発は6電力会社・11基に及ぶ。こうした事態を受けて閣内や経済界からも憂慮の声が上がっている。財務相・野田佳彦は14日、「国としてしっかりとした安全基準を示し、原発再稼働へ知事らの背中を押さないと、全国が電力不足になりかねない」と警鐘を鳴らした。経済同友会代表幹事の長谷川閑史は「電力不安で日本企業は事業計画を立てられず、景気回復どころではない。国家が責任を持たないと電力供給問題は打破できない。原発の再稼働をぜひやってもらいたい」と、“原発大不況”の可能性を指摘している。
事態は7月の電力事情を考えると待ったなしの段階に入った。かくなる上は、菅は自らまいた種を自分の手で刈り取る責任があるのだ。浜岡原発を自身の要請で止めた菅は、原発再稼働問題でも自ら地元に出向き、自治体や住民の理解を求めて、とりあえずの再稼働にこぎ着けるべきであろう。菅は、電力危機を回避する責務がある。海江田自身も菅の地元説得を望む発言をしている。しかし菅は「浜岡パフォーマンスの成功」に味を占めて、周辺に「脱原発で行く」と、懲りない発言を繰り返し、事態を直視する様子は見られない。実に度し難い首相である。もちろん中長期的な課題として再生可能エネルギーに取り組むべきことは誰も否定するものではないし、常識だ。それが可能になるまではより強化した原発で対応せざるを得ないのが、我が国の産業構造なのだ。イタリアの国民投票で原子力発電所の再稼働に9割超が反対したが、欧州は全体にグリッド(送電網)が完備しており、フランスから買えるのだ。脱原発のドイツも同様だ。経団連会長・米倉弘昌は14日、菅について「お辞めにならねば日本没落だ」と述べているが、立つ鳥跡を濁さずだ。延命のための思いつき政治に専念するより、やるべきことはやった上で辞めてもらいたい。
◎亀井こそ菅切腹の介錯をせよ
◎亀井こそ菅切腹の介錯をせよ
「殿が『切腹する』と、やいばを当てようとしている時に、それより先に部下が『介錯(かいしゃく)を先にやります』と言っている。政権与党の体をなしていない」と国民新党代表の亀井静香が嘆いている。政治家というのは物事を自分に有利なように解釈する度合いで器量が分かるが、この発言は大きく事態を見誤っている。殿は切腹は承諾したものの、やいばを当てようとしないのだ。当てようとしていないから、かっての忠臣たちまでが「殿お覚悟を!」と言っているのだ。逆に、亀井は自ら介錯を買って出るべきだ。
江戸時代も中期になると切腹自体が簡略・儀礼化し、いわゆる「扇子腹」の形式で行われるようになった。切腹人が小刀・脇差に見立てた扇子に手を伸ばそうとした瞬間に介錯することがほとんどであった。せめて菅が扇子にまで手を伸ばせば介錯人が踏み切るのだが、自分の延命しか考えていない。仙谷由人が「6月末までの退陣」を言えば、今度は1次補正の追加的2次補正の編成を自分の手でやると言い出した。少なくとも7月中旬までは辞めないことを宣言したつもりなのだろう。「浜岡パフォーマンス」で全国の原発が止まったまま動かず、関西電力、九州電力など、日本全体が夏の電力事情の悪化に直面しているときに、「世の中をもう一度ひっくり返さないといけない。脱原発で行く」と意気軒昂だという。そこには市民運動家的なパフォーマンスだけがあって、日本経済の窮状など念頭にないのである。
亀井は「秋口には気候もよくなる。菅総理大臣も、秋風が吹くころには、お遍路に出たいと思っているのではないか。それまでにまなじりを決して震災対策を行い、めどをつけたいと思っているのだろう」とも述べた。しかし紛れもない緊急事態のこの時点で、さらに3か月間の菅の居座り、すなわち政治空白は大きい。復旧・復興にとって致命的でさえあり得る。政局の大きな潮流は菅が辞めれば閣外協力など与野党の協力態勢が動き出すところまで来ている。菅が全てをストップさせている事態に亀井はあえて目をつぶっているのだ。
なぜ亀井がここにきてしゃしゃり出始めたかということだが、ひとえに保身がある。つまり与野党の協力態勢が整ってしまえば、民・自・公が政治を動かす方向となり、国民新党の出る幕はないのである。存在意義がなくなり、総選挙では消滅しかねない事態すら予想されるのだ。亀井の言うことなど誰も聞かなくなる。それが恐ろしいのだろう。
民主党内の権力闘争についても亀井は「嫌な相手と一緒にいることはないから、この際、整理したらいい」と述べ、菅の後継を決める党代表選を機に、「小沢」と「非小沢」で党を分裂させるべきだと主張している。亀井は「両勢力はカルチャーや政策・理念がメチャクチャ違う。それが混ぜご飯みたいになっており、さらに今はおかゆの状態だ」との主張だ。この発言も乱に乗じて政界再編を巻き起こして、自らの保身を計ろうという意図がありありだ。
菅も四面楚歌の中で亀井のような、いわば「政治屋」の言葉を借りなければ保身を計れないところまで来ている。しかし亀井のお遍路発言についても、ネットではさっそく「お遍路はみんな真剣に回っている。政治家がパフォーマンスで回れば遍路道がけがれる」という反対論が巻き起こった。逆効果である。もはや亀井は、世論の支持の少ないミニ政党が、政治テクニックだけで政治を動かせる潮流ではないことを悟るべきだ。
◎野党は菅退陣と引き替えに赤字国債法案を成立させよ
◎野党は菅退陣と引き替えに赤字国債法案を成立させよ
筆者は半世紀の政治記者人生のうち、首相官邸にはいかなる首相より長く合計で12年間詰めたが、つくづく首相の座は魔性の吸引力があると思う。かつて紹介したように「首相をやって一年経つと狐憑(つ)きが憑いたようになる」と田中角栄が漏らしていた。自分が何を言っているのかも、首相の椅子に逆さまに座っていても分からなくなる時があるというのである。ましてや菅直人程度の政治家が1年経過すればなおさらであろう。恐らく首相の座に天地逆に、頭で座って物を言っているのだろう。与野党一致して「一刻も早く退陣を」の大合唱の中で、まだ8月までやるようなことを言う。まさにわびしく野垂れ死にする流れとなって来た。自民党はここまで追い込んだら、最後の切り札である、赤字国債発行のための特例公債法案の成立を計り、民主党を巻き込んで菅を“絶対的孤立”においこむしかあるまい。
無能な首相ほど自分の置かれている立場が分からなくなる。いわゆる裸の王様になる。そして自分が居なければ、日本がつぶれるような高揚感と錯覚のとりこなる。政治力、識見において菅などとは雲泥の差がある岸信介でさえ、政権末期には状況認識を誤った。60年安保で首相官邸の周りは、十重二十重のデモに囲まれた段階で、いわゆるサイレント・マジョリティ発言をしてひんしゅくを買ったのだ。「国会周辺は騒がしいが、プロ野球が行われている後楽園球場、早慶戦の神宮球場は人でいっぱいだ。私には“声 なき声”が聞こえる」述べたのだ。これでかえってデモが盛り上がり、ついに退陣に追い込まれた。
菅も全く同様の心理がうかがえる。野党はおろか閣僚や党幹部からまで早期退陣論が聞こえる中で、官邸筋によるとただひたすら一部の世論調査だけを頼りにしているという。その世論調査とは、朝日が、不信任騒動後の5日に掲載したもので、退陣時期は「福島第一原発の事故収束のめどがついた後」が45%。「震災復興の補正予算が成立した後」30%、「6月中」18%と続く。原発冷温停止後の1月論を唱えた菅は、してやったりということだろう。しかしこの調査は3択の設問が政治の現実を知らない一般国民向けに落とし穴となっている。国民は菅が半年以上政権を担当する弊害を聞けば、逆転したであろう。これを証明するように時事通信の調査では、首相の交代を求める声は68.8%に上った。他社の調査も、日経内閣不支持率は62%、NHK不支持立55%など、同様の傾向を示している。
菅は岸と同様にわらをもつかみたい気持ちで、自分にプラスの情報だけしか受け付けない心理状況に陥っているのだ。加えて最近は大震災と原発事故を「人質」に取り始めた。全てを大震災のためと位置づけ、自らの延命のために“活用”し始めたのだ。「卑怯未練」とはこのことだろう。この首相を辞めさせるのは容易ではないが、突破口は、政府・与党首脳が、一致して特例公債法案の成立を条件にし始めたことがポイントだ。まず11日に「次のステップに踏み込むために身を投げ出していただくしかない」とあからさまに菅退陣を要求した官房副長官・仙谷由人が12日、テレビで「特例公債法案を通すために『わたし(菅)が存在することが問題であれば、それを約束していただけるんですか』ということになる」と特例公債法の成立を条件に提示したのだ。一方、国会対策委員長・安住淳も同日NHKで 「ぜひ、菅内閣特例公債法案を成立させて、早晩、決断していただく環境作りをしたい」と「早晩決断」に踏み込んだ。要するに与野党で特例公債法案を通してしまえば、菅を辞任に追い込めるという判断がある。菅も12日幹事長・岡田克也に「自らの責任において特例公債にメドを付けたい」と述べている。これを逆手にとるのだ。
特例公債法案に関連して安住は、今年度予算に盛り込んだ政策の一部の金額を減らす「減額補正」についても応ずる意向に踏み込んでいる。これに対し公明党国対委員長・漆原良夫は「こういうものを解決すれば、法案成立に賛同出来る」と賛意を示している。自民党が、公債法案の成立を長引かせれば国益を毀損することは間違いなく、政治的大失策につながる。マスコミも確実に自民党批判に転ずるだろう。公債法案と引き替えに菅の早期退陣を得られるなら、与野党党首会談でも何でも開いて「特例公債法案成立イコール菅退陣」を確認すべきではないのか。それが国益に通ずる唯一の道だ。
いずれにせよ菅退陣問題は今週の民主党両院議員総会や17日にも予定される復興基本法案成立を契機に、急場に入る。12日、仙谷は首相の退陣表明時期については、20日の消費増税と社会保障の一体改革案や25日の復興構想会議第1次提言などの取りまとめ時期を挙げ、「その辺で収斂(しゅうれん)してくる」と述べた。これは22日の国会閉幕を前に究極のデスマッチとなることを物語る。外堀も内堀も埋まった。将棋で言えばもう詰んでいる。菅は「私には53番札所から88番札所までお遍路を続ける御大師様との約束がある」と若干弱気の発言も見せ始めた。遍路にまでつき合わされてはボディガードの費用が大変だが、これは目をつむる。無駄な“長考”はせず、国のために早く辞めて欲しい。
◎“おんぼろ幹部”が「野田新品みこし」を担ぐ裏
◎“おんぼろ幹部”が「野田新品みこし」を担ぐ裏
「ポスト菅」は“本命”の財務相・野田佳彦が、太ってはいるが「やせ馬の先走り」になるかならないかの勝負だ。朝日のスクープだが、担ぐ連中が悪い。おんぼろみこしではなくせっかくの“新品みこし”を、菅を担いできた“おんぼろ幹部”が、主導権狙いで担ごうとしていることが問題なのだ。さっそく政界の耳目は小沢一郎の反応に集中しているが、「小沢さんちの一郎君近頃少し変よ。どうしたのかなぁ」という状態。
「なれるかなれないかは別問題だが、なれれば立派にこなせる」と、野田擁立の動きに新政界風見鶏の渡部恒三が微妙な言い回しをしている。確かに問題は「なれるかなれないか」である。なぜならこれまで菅を担いできた代表代行・仙谷由人、幹事長・岡田克也、官房長官・枝野幸男が、ポスト狙いで先手必勝とばかりに政局をリードしようとしている姿がありありだからだ。とりわけ岡田は「不信任の変」で菅のお先棒を担いだA級戦犯。参院議長・西岡武夫が「政権の中枢に関わった皆さん方が、次をどうするんだなどと言う資格はまったくない。あり得ないことだ」と怒るわけだ。
さすがに野田本人も「まずい」と直観したか、嬉しそうな顔をするどころかこわばった。「今は、菅内閣の一員として、財務大臣としての職責を全うしたい。それ以上でも以下でもない」と言うのが精一杯。最初に名前が出ることの危険性は十分知っているようだ。案の定小沢グループから「野田氏は財務省の組織内候補だ」という声が上がった。小沢グループにしてみれば、野田本人よりもまず宿敵仙谷や岡田が担ぐのが気にくわないのだ。加えて「野田即消費税増税」となるのも不満だ。小沢グループはマニフェスト堅持、消費税増税反対が結束の主柱であり、野田となれば野党自民党と結託して消費税路線を突っ走る姿が目に浮かぶに違いない。
もっとも肝心の小沢の反応が鈍い。冒頭述べたように「少し変」なのだ。まず不信任本会議直前の前首相・鳩山由紀夫の“暴走”を止められなかった。せっかく可決に持ち込めそうになところまできて、ルーピーにいいようにやられてしまったのだ。従って投票も組織割れを防ぐために自由対応を迫られてしまった。加えてこともあろうに戦犯・岡田による処分のための“事情聴取”に応じてしまった。普通の小沢だったら「私が岡田君の事情聴取をしたい」と言うところだろうが、どうもしおらしすぎる。
やはり、勝負所での敗退が影響しているのだろう。小沢の動きは「躁」(そう)と「鬱」(うつ)が交錯して現れるが、いまは鬱の段階に入ったのかも知れない。「ポスト菅」でもグループには当たり障りのない農水相・鹿野道彦を担ぐ動きがあるが、小沢と同年齢の69歳。小沢に近い筋によると「苦労の違うぼんぼんに首相をさらわれてもなぁ」という不満が内在するという。しかし前原誠司がはっきりしない上に、海江田万里もなぜか人気が沸かない。名前の挙がっている自薦他薦組は泡沫的である。加えて盟友の鳩山グループが、若手の反乱で解体の危機にある。とても「反野田」で、小沢・鳩山両グループが盛り上がる雰囲気にはない。
岡田ら執行部は、事務次官が1人も訪れなくなったような菅をずるずると本人の希望通りに8月まで留任させては、自分の身が危なくなるという危機感があるに違いない。「野田」を早期に浮上させたのも、半分は「菅降ろし」の思惑がある。このため次期代表選挙を7月上旬に設定してしまおうという動きがある。一種の党内クーデターだ。いずれにせよ今後約1か月間の勝負となろうが、「本命野田」が大きく引き離しており、他の候補が追いつけるかどうかはまだ分からない。それにつけてもTBSはみのもんたのかしましい「こんな時に政争論」をそろそろ黙らせたらどうか。もんたもコメンテーターたちも、菅が早く代われば代わるほど、与野党合意で大震災対策が急進展する構図をまったく理解していない。朝から不愉快になる。視聴率稼ぎもいいかげんにしてもらいたい。
◎川柳でいまの政治を読み解けば、見えぬものでも見えてくる
◎川柳でいまの政治を読み解けば、見えぬものでも見えてくる
新聞の時事川柳にはそこいらの政局解説よりもよほど鋭い分析がある。とりわけ朝日と読売が秀逸だ。まず、朝日川柳<総理よりがれきの方を片付けて>と被災地の願望。もっとも、この長梅雨に居座り続けて首相の座もカビが生えるのではないか。読売時事川柳には<がんばろう日本総理が続けても>。もう政治にはさじを投げた、現場ががんばるしかないという悲哀感まで伝わる。読売USO放送の<首相へ、昔ーもう帰るんですか、今ーまだいるんですかー避難所>は大傑作。8日で就任から1年を迎えた首相・菅直人に贈りたい。朝日の<避難所で手柄のように笑顔見せ>は皮肉と言うより非難が憎しみレベルへ拡大。
不信任案をめぐる民主党のごたごたを読売は、<不信任大山鳴動メド一つ>。メドとは広辞苑で「だいたいの見当」とあるが、朝日は<メドの字を思わず辞書で引いてみる>。「来年1月」と言った菅の辞書には「メドとは来年のこと」とある。読売の<鳩が出て首尾よくいったためしなし>は秀作。前首相・鳩山由紀夫は朝まで「不信任案賛成」が昼には反対。朝令暮改よりもっと早い。「引退する」が「引退しない」、「国外、少なくとも県外」が「県内」。<この指に極楽トンボすぐ止まり>(読売)。どこにでも止まる鳩山極楽トンボにも開いた口が塞がらない。<その口で嘘をつくなとついた人>(朝日)と庶民の感覚は鋭い。決して首相になってはいけない人が二人続いてなってしまったのだ。朝日に<つれあいに何度も書いた覚書>。世の中「覚書」と「一定のメド」が流行している。<永田町つけるクスリも底をつき>(朝日)で、政治不信は極まった。
東日本大震災の復興計画を提言する「復興構想会議」も会議は踊る。議長が冒頭から「復興税」を言ったり、「菅支配」そのものだ。朝日に<五百旗頭がふりがななしで読める初夏>。一方、原子力安全委員会の班目春樹も相当なものだ。3月12日の「給水をめぐる官邸のすったもんだ」の発生源。天声人語は「原子力暗然委員会」と批判。<班目をでたらめとふる暗然委>(筆者)。
世の中エコと節電一色だが朝日<原発の恐怖思えば夏涼し>。そんじょそこいらのお化け屋敷より、原発の惨状の方が怖い。もっともマスコミの過剰報道はもっと怖い。朝日新聞は、毎日<放射線見えないものでもあるんだよ>と脅かしてばかりいてはいけない。終いには<途切れない原発ニュースに不感症>(朝日)となってしまう。読売に<茶番劇見ている茶葉が泣いている>。足柄茶からセシウム。行政ももたもた。ついに朝日の<あれに見えぬは茶摘みじゃないか>となってしまった。最後に大連立。<言うなれば狐と狸の合体論>と朝日。確かに狐は仙谷由人。狸は大島理森。まさしくそっくりさんだ。<大連立みんなで渡る赤信号>と読売が警鐘。結局、ぽしゃるのではないか。大朝日様から<小賢しい連立につく大の文字>としかられる。「ふぅ~」<ネタのないときも忘れぬサービス心>「でけた!」。お後がよろしいようで。
◎仙谷、前原、野田が横一線:代表レース
◎仙谷、前原、野田が横一線:代表レース
ポスト菅をにらんだ民主党代表選レースは官房副長官・仙谷由人と財務相・野田佳彦、前外相・前原誠司がゴールを目指して横一線に並んだ形だ。大きく遅れているが、前3頭がずっこけた場合のダークホースである経産相・海江田万里が脇から狙うといった展開だろう。ゴールの時期は月内に首相・菅直人が退陣しても7月にかかることが予想され、まず立候補に向けての熾烈なせめぎ合いが継続する。
前代表・小沢一郎は次期代表候補の条件について7日、「野党の協力、党内融和、一定の人気」を挙げた。さすがに権力闘争しか考えない“政局マン”だけあって、肝心な「大震災復旧・復興の強力な推進」を早くも忘れている。不謹慎さは小沢らしい。今回の首相候補の場合、解散・総選挙を断行する首相とならざるを得まいから「再生民主党」を強く印象づけられる候補がまず求められる。その次が2代続いた「暗愚、欺瞞首相」の印象を払拭できる手堅さであろう。野党との連携を第1に挙げる向きが多いが、大連立もおぼつかなくなった以上、筆者はまず自らの政権基盤を固めることが最優先されなければならないと思う。
こうした条件を基に首相候補を選考すれば、まず真っ先に外れるのは「他党候補」だ。つまり自民党総裁・谷垣禎一はあり得ないということだ。小沢が数日前までは谷垣の名前を挙げていたが、それは内閣不信任案が可決された場合のこと。否決の事態では、かき消えた。小沢は「代表選準備」を側近らに指示しており、自前の首相という方向に転じた。谷垣に勝るとも劣らぬスピードで外れるのは、幹事長・岡田克也だ。数々の選挙惨敗を愚にも付かない原理主義の論理で言い逃れ、責任を回避し続けた揚げ句、今度は菅の欺瞞のお先棒を担いだ。幹事長になってスポットを全身に浴びて馬脚が現れたのだ。
岡田と似ていて外さねばならないのは官房長官・枝野幸男だ。世論調査が当てにならないのは、テレビへの露出度で人気が決まることだ。弁護士で口から生まれてきたようにしゃべりまくり、菅と同じで発言に「心」が感じられない。どこかのアホ週刊誌が「亀だ」と叫んでいるが、国民新党代表・亀井静香など谷垣以上にあり得ない。だいいち「民主党代表選挙に出馬できるのかね」と言いたい。“郵政国有化”で自民党に敵を作った。空想科学小説の部類だ。政調会長・玄葉光一郎、農水相・鹿野道彦、前総務相・原口一博、元国対委員長・樽床伸二はそれぞれの御ひいき筋があるが、現段階では“雑魚”の部類だ。しかし玄葉だけは光る。1~2回見送れば十分首相候補にになり得る。もっともしゃにむに立候補する向きは止められない。
ここまで候補を絞り込めば、自ずと仙谷、前原、野田が残る。海江田も一応名前は出しておこう。一番目立つのは仙谷だ。目立つというか自分自身を目立たせ続けている。自民党副総裁の大島理森との会談は本来なら秘密裏にしておくべきだろうが、あえて露出させている。これが何を意味するかだが、端的に言えば「目立たせて代表狙い」だ。本人は「若い人をいかに支えるかが一番重要だ」としおらしいが、どうだか。反小沢だから、小沢が7日、「ちょろちょろ動いているようだが、簡単には行かない。気にかける必要はない」とネズミ扱いしているのも気にかかる。野党といいと言うが、公明党は2007年の徳島駅前の発言を根に持っている。「公明党という中途半端ないんちきな政党がいる。何が平和の党だ。何が福祉の党だ。どこかから命令が下りたら三日間で五万票が動く。こんなでたらめな民主主義があるか」。この発言はそう簡単には忘れられまい。どうも発言に難があるが、官僚のうけは良い。実行力も随一だ。
前原は一番「再生民主党」を印象づける。新聞が指摘している外国人からの献金問題などは、いまやかすり傷だ。「前原首相」に首相補佐官・細野豪あたりを官房長官に据えれば支持率は一挙に回復する。渡部恒三が小沢との誕生パーティーの幹事に据えたのも、次期候補に押し出そうとする深謀遠慮がある。小沢が7日支持候補について「過去の言動や振る舞いにこだわらない」と述べたのは、ひょっとしたら前原を意識しているのかも知れない。まさか仙谷意識ではあるまい。前原は7日民主党以外からの選出もあり得るような発言をしたが、どうも思いつきで重要事項をしゃべる癖がある。谷垣自身が「まず民主党が代表を選ぶのが先」と述べているではないか。
野田は一番手堅い。財務相としての重責を大過なくこなしている。何といっても、次期政権の最大のテーマが「社会保障と税の一体改革」という消費税増税であり、これをこなせる首相は、数が絞られる。いまをときめく松下塾出身で、毎朝、津田沼駅前での演説を県会議員になる前から20年間続けるなど、愚直な根性もある。小沢との関係も悪くない。ちょっと暗いのが玉に傷で、広がりが出るかどうかがポイントだ。海江田は小沢と鳩山両グループが支持したときにだけ候補たり得るが、まだ不明だ。仙谷、前原、野田のいずれをとっても一長一短があり、レースは混沌だ。
◎月内退陣加速でしぼみ始めた「大連立」
◎月内退陣加速でしぼみ始めた「大連立」
居座りを策した首相・菅直人の月内退陣論が加速してきたが、これに反比例するかのように大連立構想はしぼみ始めた。確かに民主・自民両党幹事長が5日、異口同音に「大連立」を言い出した背景には、「菅の早期退陣狙い」とつながる思惑があった。自民党幹事長・石原伸晃が「退陣しなければ大連立が実現しない」と主張、これに民主党幹事長・岡田克也が付和雷同的に反応した結果である。しかし菅がほぼ「観念」した現状では事情が異なる。早期解散を狙う自民党戦略と、逆に遅らせたい民主党の双方にとって大連立は実現しにくいのだ。「菅首相」でなければ、大震災での与野党合意は格段と容易になるから、あえて困難にチャレンジする必要もない。その本音が出始めたといえる。。
まずかねてから「菅抜き大連立」を主張していた自民党総裁・谷垣禎一が慎重論に転じた。6日「今の段階ではまだ早い。民主党は、権力闘争の真っ最中で、その結果、何が出てくるのか分からない。民主党内で政策の方向性を打ち出していける体制ができるのかどうかを見ないといけない。無原則な話であってはならない」と言い出した。確かに政策のすりあわせがないままの、大連立となればにはすぐに破綻する。谷垣は民主党が子ども手当などマニフェストの「4K」で譲歩できるのかと言っているのだ。譲歩がなければ政策合意ができない。ところが元代表・小沢一郎らがマニフェスト至上主義だ。この難関は大きい。
さらに大連立となれば、近く結論が出る「社会保障と税の一体改革」、つまり消費税の扱いがすぐに課題となる。岡田も、石原もテーマとして掲げている。しかし大震災復旧・復興のどさくさに紛れて、消費税増税を決めるようなことが可能だろうか。むしろ復興より消費増税のための大連立の色彩が強くなりすぎ、世論の反発は避けられない。加えて大連立政権は夏以降、来年度予算案の編成に否応なしに取り組まなければならない。ここでも民主、自民両党の路線上の対立が表面化せざるを得ない。早期解散を狙う自民党にしてみれば、一緒に作った予算案を来年の通常国会で追及するわけにもいくまい。解散のとっかかりをつかめぬまま来年の通常国会終了までの1年が過ぎてしまうことになり、これは戦略上最大の盲点となる。
石原の言うように「大震災の復旧・復興に絞った3か月か長くて半年の大連立」という期間限定の可能性は確かにあり得るが、その場合もやはり予算編成がネックとなる。予算編成を棚上げにして個個の政策の成案を得るわけにはいかない。本末転倒となる。逆に復興・復旧だけを目指すなら、与野党合意で早期成立を実現した「1次補正方式」で合意をすれば2次補正も、特例公債法案も早期成立が可能だ。公明党代表の山口那津男も6日「連立政権をつくるということは、政権運営全体に責任を持つということだ。基本政策が合わないとしたら、政権が瓦解(がかい)してしまうとも限らない」と指摘している。さらに「建設的な与野党協議の場を国会につくり、そこで協力していくことを基本にすべきだ」と政策ごとの部分連合を主張している。
今後の日程を見ても菅が早期退陣して新政権がスタートするまでには事実上2か月の政治空白ができると予想される。この間の被災地の窮状を考慮するなら、いまから大連立の政策合意を目指して延々と“神学論争”を続けるより、2次補正を早期に編成し、公債法案の成立を図る与野党合意を目指す方が手っ取り早いだろう。この合意は首相が菅以外なら格段と実現可能となるはずだ。自民党の本音は閣外協力でもよいのだ。一方で、菅は石井一に、「谷垣を首相にすることは解散権を握られるのであり得ない」と述べたといわれる。民主党内には大連立によって自民党主導による早期解散となることへの警戒心が強い。大連立の思惑はこれから激化するであろう「解散綱引き」と密接に絡んできたのだ。小選挙区制度で「選挙区激突・中央連立」の矛盾がいまから出てきているようでは、大連立が果たして被災者のためになるのかどうかもおぼつかなくなってきたのが実情だろう。大連立をして、一定期間“仲良く”過ごした上で、今度は解散・総選挙で“大げんか”という都合のいい展開ができるかどうか疑わしくなってきた。
◎菅は月内退陣で「時限大連立」に展望を開け
◎菅は月内退陣で「時限大連立」に展望を開け
数々の政治家人生を見てきたが、悲喜こもごもでこれほど人間性に富む職業はまれだ。だから筆者の書くものの根底には政治家性善説の感情が流れていると思う。しかし今度のケースだけは、虫ずが走るといった最大限の表現が適切だ。嫌悪感のみを覚える。欺瞞の首相・菅直人、小沢をだまして自らは菅にだまされた前首相・鳩山由紀夫。欺瞞のお先棒を担いだ揚げ句「まずい」と見るや、「菅離れ」に転向しつつある民主党幹事長・岡田克也。唾棄すべき蛇蝎(だかつ)のごとき政治家群像である。小沢一郎は5日の読売川柳に「内輪もめ起きるところに居る男」とあるが、今回は「居なかった」うえに鳩山からだまされのだから、まだかわいい方だ。政界には大震災復旧・復興のため「菅退陣」を条件に「時限大連立」の機運が高まってきた。かくなる上は菅の早期退陣が政治空白回避のためにも何よりも大切だ。
とにかく鳩山だけはだませても、代議士会という政治のプロが集まった大舞台で、菅は詐術を弄してはいけない。すぐに足が付く。一方で盟友小沢を裏切ることになるのは分かっていて、不信任案本会議の2日朝まで「賛成する」とうそをつきまくり、結局菅にだまされた鳩山も鳩山だ。ルーピーの名に毫(ごう)もたがうものではない。そして、菅と企んで幹事長ともあろうものが、不信任案否決のため党員をだますという“禁じ手”を使ったのだ。「文書に辞任と書いてない」と岡田は不信任案否決直後に否定したが、政治力学基礎の勉強が足りない。一つの方向、つまり「不信任案否決」に民主党全代議士を動かすという“大それた行為”の根底に詐術があれば、それは見抜かれ必ず大きな反動が返ってくるのだ。その通りになった。
岡田が利口なようで滑稽なのは、すぐに根拠薄弱と分かる原理主義者であることだ。自分のいいように原理原則を組み立て、それを臆面もなく、とうとうとと展開する。5日のNHKでも鳩山の菅に対する「身をお捨て願う」という発言について「身を捨ててしっかりやれという意味もある」と詭弁を弄しているが、あきれてものが言えぬ。「辞めよ」という会談で誰が「身を捨てて頑張れ」というか。「馬鹿も休み休み言え」と言いたい。
そして露呈した菅の「人間失格」だ。一般大衆はなぜ永田町の政治家が、菅を批判するかが理解できず、批判する側を批判する風潮があった。だが、今回ばかりはようやく、日本という大国がとんでもないリーダーに率いられていることが分かったはずだ。すぐに辞めるふりをして不信任案から逃れ、逃れきったと見るや「一定のめど」とは「原子炉の冷温停止の1月」と前言を翻す男なのだ。みんなの党・江田憲司が「情けなさを通り越して悲しい」と述べたが、もはや一国の首相の人間性の問題なのだ。その執念は自らが冷温停止となるまで続きそうだ。江戸時代の「当てにできないもの」の例えに「鍛冶屋の明日に紺屋のあさって」があるが、現代は「首相の一定のめど」が当てはまる。「一定のめど」は流行語大賞だ。一般国民にも「菅が国難」がようやく分かってきたはずだ。
一方、マスコミの問題点を挙げるなら、菅支持路線を突っ走って世論をリードした揚げ句、音よりも速く退陣論に転じた朝日新聞の無責任さだ。マスコミの論調には、“高度の論理”を展開する朝日新聞のそれと、視聴率確保のために大衆にこびて俗論を展開するみのもんたのそれが両極端としてある。今回の「菅降ろし」の場合「こんな時に菅降ろしなど・・」という論点でぴたり一致していた。みのもんたに至っては近頃は司会者の立場を忘れて延々と不愉快な演説をするようになった。莫大(ばくだい)な月収のもんたが、一般大衆を装っても説得力がないにもかかわらず、朝から晩まで「こんな時」論を展開した。我が友人の間では「もんたに洗脳されたくない」という反発が出ている。朝日は朝日で不偏不党の社是があるにもかかわらず、社説で菅支持を明確にし、編集委員・星浩が何度「菅降ろし失速」と意図的な記事を書いたことか。そして菅の「政局詐欺事件」である。
朝日は直前まで菅支持だった。2日の社説で不信任案を「無責任にもほどがある」と野党を批判したが、同日の不信任案否決のごたごたの後、3日には、恥ずかしげもなく社説で「辞任はやむなし」との中見出しを取って、「菅首相の判断はこの際、やむをえなかったと考える」と辞任を肯定するという変貌ぶりだ。主筆・若宮啓文も一面で「首相は潔くあれ」と辞任を促した。「菅政権支持」が一転「辞めよ」である。まあ、この論調の無責任・無節操ぶりにはあっけにとられるとしか言いようがない。発行部数が減る一方なのも分かる気がする。菅も頼みの朝日に見捨てられるようでは進退窮まった。
今後の「政局梅雨の陣」の展開だが、菅は「1月退陣」で批判の大合唱に遭遇して、ようやく退陣時期を夏までと譲歩したが、菅のもくろむ8~9月退陣では、それこそ日本が重大な国難に遭遇することになる。なぜなら重要課題が3~4か月の間に山積しているからだ。とても退陣を口にしたレームダックの首相の力量でこなせるものではない。まず最重要の大震災・原発対策は、官僚が菅を見限り、次をにらんで積極的には動かない。赤字国債発行に不可欠な特例公債法案は、民主党内の喉に刺さった棘である子ども手当など「4K」の是非と密接に絡む。第2次補正予算案はその財源の規模から言って「税と社会保障の一体改革」つまり消費税導入と連動する。「一政権一仕事」は竹下登の言葉だが、その大仕事を3つも4つも、もはや息絶え絶えの菅が請け負って貰っても困るのだ。レームダックの首相が2次補正を作って、国会審議に臨み、成立させて責任を担保できるのか。菅は与野党が合意している復興基本法案が来週にも成立するのを機に、潔く退陣すべきだ。辛うじて野垂れ死にを避け、将来に時限大連立など政治の展望を開こうとする良心があるのなら、月内退陣しかない。
◎菅の“まやかし”で、遺恨の“政局梅雨の陣”へ
◎菅の“まやかし”で、遺恨の“政局梅雨の陣”へ
「鞭聲肅肅(べんせいしゅくしゅく)夜河を過(わた)る」で始まる頼山陽の漢詩「川中島」を引用して、自民党総裁・谷垣禎一は「流星光底長蛇を逸す」と無念を隠さなかった。かねてから狙いを付けていた宿敵を瞬時の内に失うことを意味する。確かに内閣不信任案の可決は瞬時にして去った。それもお坊ちゃま鳩山由紀夫が、海千山千の首相・菅直人によって明らかに戦後政治史上希な“まやかし”にあった結果である。鳩山は激怒しているが後の祭りだ。しかし第3者が見ても明らかに首相・菅直人は早期退陣示唆で“フィッシング詐欺”的に不信任否決を獲得したのであり、だまされた方の憤まんは怨念となって残った。菅の早期退陣に向けて民主党内も野党も“捲土重来”の巻き返しが生ずるだろう。
首相たるものの第1条件は虚言を吐かないことだろう。人間の生きてゆく上での基礎でもある。しかし菅はすぐにも辞めるように装って不信任案可決を回避した後、来年1月以降に退陣を先延ばしした。この時点で来年のことを言えば鬼が笑う。事実上退陣しないというに等しいが、経緯の説明は明らかに鳩山が正しい。朝の会談で鳩山は(1)民主党を壊さない(2)自民党政権に逆戻りさせない(3)復興基本法の成立と2次補正の早期編成にめどをつける、との3点を文書で確認、その上で口頭で「退陣」を菅に約束させた。そして菅が代議士会で「大震災への対応に取り組む、このことに一定のめどがついた段階、私がやるべき一定の役割が果たせた段階で、若い世代の皆さんにいろいろな責任を引き継いでいただきたい」と辞任に言及したのだ。おそらくその場で駄目押ししないとまずいと思ったか鳩山は、異例の発言を求めて退陣の時期について「2次補正編成のめどが付いた段階で身をお捨て願うとお願いした」とクギを刺した。「2次補正のめど」を鳩山は2度繰り返した。トリッキーで肝心な点は菅がこれに反論しなかったことだ。
緊張していた代議士会には、ほっとした空気が流れ、造反を決意していた議員らも不信任案反対に回った。このままいけば自民党に政権を渡しかねないし、菅が解散に打って出れば議席を失いかねないという危機感がいかに強かったかを物語るものだろう。直後に鳩山は「復興基本法は来週に成立するし、2次補正のめどもつくから夏前には辞任する」と記者団に語ったが、“甘ちゃん”であったことがすぐに露呈した。“まやかし”がすぐに分かったのだ。幹事長・岡田克也が「菅さんと鳩山さんとの合意文書は、そのことが大事だと書いてあるだけで、それが終わったら辞めるという条件ではない」と述べたのだ。追い打ちをかけて菅が「福島第1原発が冷温停止状態になるのが一定のめどだ」と述べ、東電の工程表が冷温停止の時期としている1月までは続投する意向を示した。何のことはない、鳩山は詰めの甘さもあって完全に引っかかったのだ。菅にとっては一世一代の大嘘が図に当たったことになる。しかも不謹慎にも原発事故を最大限“活用”した居座りに他ならないのだ。新聞の見出しは「退陣」の文字が躍るが、菅は「退陣しない」と言っているに等しい。
鳩山は「話しが全然違う。人の好意を裏切るのか。両院議員総会を開いて、党の規約を改正してでも退陣して貰う」と息巻いたが、こと既に遅し。菅の晴れやかな顔がテレビ画面を“占有”し続けた。
おそらく小沢は鳩山の甘さに、それ見たことかと無念きわまりないに違いない。小沢は激怒しているという。しかし、このうそで塗り固めた菅・岡田ラインの作戦は当面を糊塗したに過ぎない。「遺恨なり十年一剣を磨く」の「遺恨試合」がこれから始まる。菅を「国難」としてきた野党にしてみれば、曲がりなりにも辞任を表明した首相が、レームダック化して震災対策に取り組むことほどまずいことはない。ただでさえ「反菅」の官僚は「ポスト菅」を見て動かないだろう。辞める首相にリーダーシップは発揮できない。政界でも民間会社でもトップリーダーがいったん「辞める」といえば人は寄りつかない。諸外国も日本の首相の発言に信頼感を持てないから、付き合いもほどほどにということになる。菅発の「国難」はこれから本格化すると見てよい。
「菅降ろし」の二次ラウンドの攻め手にも事欠かない。まず野党は政権の死命を制する二つの問題に焦点を絞るだろう。一つは予算執行を不可能にしている赤字国債発行に必要な特例公債法案だ。まだ衆院も通過していない。ましてや参院は菅が首相ではやすやすと通すことはない。他の一つは参院での首相問責決議案の可決だ。この二つのテーマで政権を追い詰めることは可能と見る。菅は子ども手当など「ばらまき4K」で野党に譲歩しようとしているが、党内的にはこれが引っかかる。小沢らは、マニフェスト至上主義であり、4K譲歩をとっかかりに突き上げが続くだろう。また本会議欠席の小沢らの処分問題も導火線になり得る。だまされたと知った造反グループはその「怨念」のエネルギーを維持しつつ突き上げる。「政局梅雨の陣」が雷鳴を伴う「荒梅雨」のごとく展開されることになろう。
◎民主政権、断末魔の“遠心分離”状態
◎民主政権、断末魔の“遠心分離”状態
発足より2年、衆院305議席の巨竜がのたうち回っている。内閣不信任案が可決されようと否決されようと、もはや民主党政権は断末魔と言っても良い状況に陥っている。首相・菅直人が解散に打って出ても、投票できない被災地切り捨ての「破れかぶれ選挙」として致命的な大敗を被るに違いない。2代続いた無能きわまりない首相、破廉恥なる政策転向、「政治とかね」の醜態は、民主党に“自業自得”の遠心分離効果だけをもたらし、再結集は不可能な段階に入った。菅はまさに進むも地獄退くも地獄の様相だ。
民主党は元代表と、前代表が結束して現代表に反旗を翻すという、醜態である。党首討論に立った自民党総裁・谷垣禎一が「足元は液状化でぐちゃぐちゃ」と形容したが、液状化に加えて地割れがあちこちに生じて手の付けられない状況に陥った。もともと自民党系から旧社会党左派に至るまでのいわば水と油の集団が、政権という甘い蜜につられて結集しただけの政党であり、結党の理念などは後講釈にすぎなかったのだ。2日午後1時の不信任本会議は、その手の付けられない状況を自ら露呈するものとなるだろう。
小沢系の1日の決起集会に71人が出席、代理出席6人を含めれば77人が名を連ねたことは、まさに不信任案可決に必要な82議席に向けて猛追の状況にあることを物語っている。勢いは小沢サイドにあるが、勝敗に関わりなくこの勢いは続き、「菅降ろし」が実現するまでやまないだろう。可決された場合、菅は衆院解散で切り返すとしているが、これほど常識のない首相は戦後見当たらない。なぜなら被災地では10数万人が県内外に避難している状況にあり、入場券の送付などとても不可能とされているからだ。それにもかかわらず政府は5月17日の閣議で、衆院が解散された場合、「東日本大震災の被災地であっても選挙の延期は認められない」としたうえに「憲法に内閣の解散決定を制約する規定はない」とする答弁書を決定したが、これは被災地の現実無視の三百代言的な見解だ。一番投票権を行使したいのは被災者であろう。これを無視した選挙を自分の保身のためにだけ断行できるとでもいうのだろうか。
もっとも解散すれば総選挙は民主党分裂選挙となり、政党支持率からいっても内閣支持率から言っても、同党の大敗は避けられまい。筆者の分析では100議席そこそこの議席が確保出来れば良いといった状況だ。総選挙後は自民、公明両党を軸とする政権となる流れが一番濃厚であろう。まさに自民党にとって思うつぼの解散であり、菅は「破れかぶれ解散」で、政党リーダーとしては最後の大失策を犯すことになる。一方、総辞職した場合は、民主党“非菅勢力”と自公の連立が実現する公算が濃厚だ。谷垣が菅に「あなたが辞めれば、与野党が党派を超えて国難に対処できる態勢はいくらでもできる」と述べたが、自公軸で小沢系が参加する連立は可能だ。その場合かって小沢が述べたように「憲政の常道として谷垣首相」となるかどうかが焦点だろう。菅退陣の場合、民主党が「丸く収まって代表選挙」という流れがないとは言えないが、この亀裂から見て極めて難しいだろう。
不信任案が否決された場合には、当面菅が居座ることになるが、党分裂の可能性がある。先に指摘したが、66議席以上が造反・離党すれば民主党は過半数割れとなり、衆参で過半数のない政権が長続きできる可能性は少ない。加えて参院が問責決議案を提出し、小沢勢力の同調もあって、可決は確実視される。不信任案を否決して分裂しないケースもあり得るが、党内抗争はますます激化し、野党は問責を提出し、それこそ政権は液状化著しいものとなる。したがっていずれにしても菅は「死に体」となるのであり、辞めなければ“野垂れ死に”が待っていることになる。政治家として有終の美を飾りたいのなら早期退陣しかあり得ない。谷垣が「かって竹下さんが『汗は自分でかきましょう。手柄は他人にあげましょう』と言ったが、あなたは『汗は他人がかきましょう手柄は自分で取りましょう』だ」と指摘した通り、ここまで来た全ての根源は、その菅の政治手法にある。
◎「小沢系53人+鳩山造反」で伯仲の攻防へ:不信任案
◎「小沢系53人+鳩山造反」で伯仲の攻防へ:不信任案
やっと信頼に足りる数字が出てきた。朝日新聞の調査によると、民主党の小沢一郎に近い議員53人が、野党提出の内閣不信任決議案に賛成する意向を表明したという。この数字をどう見るかだが、いずれにしても僅差の攻防になることを意味する。ひとえに鳩山グループの動向にかかってきたとも言えるが、31日夜の首相・菅直人と鳩山由紀夫の会談は決裂し、「53人」へのさらなる上積みは確実視される。過半数を達成するためには民主党から最低78人の賛成が必要だが、賛成しなくても大量に欠席者が出れば成立する可能性も否定できない。また成立しなくても66人以上の造反が出て離党すれば、現在305人の民主党は過半数240を割る危機に直面する。政治的インパクトは大きい。
さすがに大新聞はアイデアが豊富だ。小沢側近の言う「賛成者が90人」だの「100人」だのといった数字を信用せず、独自の調査を行った。調査は首相や執行部に近い96人を除き、衆院議員218人を対象としたという。この結果小沢系議員を中心に53人が「不信任案に賛成」と答えたという。筆者は既に50人と分析、自公両党首脳らの会合でも50人との認識で一致しており、まず朝日の「53人」は、執行部の切り崩し困難な固い数字と見ることが可能だ。これは今後増加しうる可能性を内包しているとみるべきだろう。53人にあと25人を加えられるかどうか、または大量欠席者を出せるかどうかをめぐる戦いだ。
今後は中間派や鳩山グループの動向をめぐって、2日にも予定される不信任本会議直前までぎりぎりの攻防が展開される。民主党内の動きを見ると約30人の旧民社党系グループが31日、不信任案反対を決定したが、50人を擁する鳩山グループは態度未定。同日夜には菅が鳩山を招き2時間15分にわたって不信任案に同調をしないよう説得したが、鳩山は逆に菅の退陣を求め、会談は決裂した。鳩山側近筋は「もう鳩山さんは菅さんに対する感情がにっちもさっちもいかないところに来ている」と漏らしている。
鳩山は昨年の代表選以来菅への批判を強めており、4月28日には参議院議長・西岡武夫と会談し、菅首相のもとでは政権運営は厳しいとの認識で一致している。5月6日にも北京で「今の政府は、『国民の命を守りたい』という政権交代当初の考え方をないがしろにしているのではないか。子ども手当などの政権公約の理念も消えていき、政権交代した意義が薄れてきている」と批判姿勢を強めてきた。小沢とも頻繁に会談、“絆”を深めており、まず菅支持に急転直下転ずることはあるまい。しかしグループ内にはせっかく作った党を分裂させることに対する慎重論が根強く、全員一致した行動をとれるかどうかの予断は許さない。
こうしたなかで民主党内は幹事長・岡田克也を中心に同調者へのしめつけが厳しく、一方で菅も国会答弁で“政権執着症候群”とも言うべき発言を繰り返している。31日も「いまからやるべき責任を放棄してしまうことはできない。何としても原発の事故を収束して、その義務を果たしてゆく覚悟」と、あくまで政権“死守”の構えを見せている。結局、菅の自発的退陣は不可能となり、不信任案可決か、否決されれば参院での問責決議案で強制退陣に追い込むしか手段はなくなった。
また冒頭述べたように総数で66人以上の造反が出れば、バブルで獲得した305議席が過半数割れして、もろくも潰えることになる。不信任に賛成しても離党はしないという見方があるが、岡田の言うように執行部が「除籍」に動けば、党分裂・政界再編へと一挙に流れができる。政局はもうどうにも止まらない流れだ。1日の党首討論を皮切りに食うか食われるか、双方とも引くに引けない最終的な攻防段階に入る。




























