◎菅は深刻な内部崩壊・離反に直面している
◎菅は深刻な内部崩壊・離反に直面している
民主党政権は「八方ふさがりで四面楚歌(そか)の状況」だという。小沢一郎に近い参院議員会長・輿石東の会合で一致した認識だ。四面楚歌とは項羽を取り囲んだ劉邦の兵らが、項羽の生国楚の歌を歌ったことに由来する。項羽は愛馬「騅(すい)」が動かず、愛人虞(ぐ)美人を前に途方に暮れ「時に利あらず騅逝かず、騅の逝かざる奈何(いかん)すべき、虞や虞や若(なんじ)を奈何せん」と嘆いた。まさに首相・菅直人の周りからは、人心が次々に離反し、愛馬ですら動かない状況に立ち至っている。項羽のように自刃で総辞職するか、やぶれかぶれの「解散」に突入する道を選択するか、今日28日から新年度予算案採決をめぐって土壇場の攻防に入る。
輿石と元国対委員長・樽床伸二、元官房長官・平野博文、元参院幹事長・高嶋良充の25日夜の会合では「6月解散7月選挙」説や「菅は辞任させるしかないが、ポストにしがみつくだろう」といった話で盛り上がったという。この席では昨年輿石が「鳩山降ろし」に成功したことから、「菅降ろし」の鈴付け役を輿石に期待する空気が強かったという。このように小沢サイドが「菅降ろし」の“前哨戦”をやるのは勝手だが、いま起きている問題は、これまで菅を支えてきた大物の離反であろう。まず最初に“裏切り”とも、“菅離れ”とも言える動きを見せたのが代表代行・仙谷由人。官房長官時代は「弁慶役」をかってでて、一身に矢を浴びていたものだ。ところが今度は、15日に公明党国対委員長・漆原良夫とひそかに会い「菅の首と引き替えの予算関連法案処理」を打診した。断られて、後で「茶飲み話」とごまかしたが、茶飲み話で出来る話ではない。
大物離反の第二弾は重鎮・渡部恒三だ。記者団に「予算と予算関連法案を通すことを民主党よりも菅君よりも何よりも最優先に考えなくてはならない」と述べたのだ。発言のポイントは言うまでもなく「菅君よりも何よりも最優先」と述べた点だ。渡部はとてもいま民主党が解散できる状況にないという判断であり、菅退陣で体制を刷新しなければ窮地からの脱出は不可能とみているのだ。党のためには菅を犠牲にするのもやむを得ないという腹のようだ。
離反第三弾は、とんちんかんの極みだが、国民新党代表・亀井静香だ。局面打開のため、与野党から幅広く閣僚を起用する「救国内閣」を菅に進言したのがきっかけだ。「第三次内閣改造をただちにやって、自民、公明、社民、在野にも手を突っ込むべきだ。救国を旗印に糾合をはかれ」と、いささか“誇大妄想癖”ともいえる主張を展開した。さすがの菅も一か月で再改造の意味するところは、自己否定に他ならないと瞬時に悟り「それについては改めて話しましょう」と断った。亀井は「了見が狭いから駄目だ」と漏らし、不満を内攻させた。
犬馬の労をとるべき側近もまさに「騅逝かず」の状態だ。官房副長官・藤井裕久も、質問者が変わる度に、旧自由党時代の資金疑惑を突かれ、防戦に精一杯。頭に血がのぼって、とても冷静に官邸のまとめ役を演じているとは思えない。“財務職人”与謝野馨は野党の総スカンで、橋渡しどころではない。目玉人事の最年少官房長官・枝野幸男も兄貴分の“仙谷離反”の影響なのだろうか、どこかよそよそしい。子ども手当を小沢一郎が一挙に倍増させたことについて菅が「小沢さんから聞いてびっくりした」と、責任回避の問題答弁した翌日に、枝野は「私もびっくりした」と他人事のような発言。官房長官は菅の親衛隊長であるべきことなど忘れてしまっている。明らかに軽量長官でもある。
古来落城間近ともなるとお膝元から離反の動きが出てくるものだが、菅の場合はこれからが籠城の正念場というときに、ぼろぼろ石垣の崩壊が始まってしまっているのだ。怒鳴りつけるから側近もいきおい“面従腹背”となる。菅は28日で在任期間が266日となり、前首相・鳩山由紀夫と並ぶ。どう見ても鳩山よりはましな首相だが、首相にも運不運がある。近来まれに見る激動政局に直面してしまったのは、運が悪いのだ。もちろん自らが招いて報いを受ける“自業自得”であることも確かだ。鳩山より在任期間がすこし長いことをもってよしとするしかないだろう。小沢一郎は27日「政治は一寸先は闇だ。どのように政局が動いていくか分からない。解散・総選挙が現実になる可能性も非常に大きい」と述べ、結構客観的な分析をした。
◎菅は深刻な内部崩壊・離反に直面している
◎菅は深刻な内部崩壊・離反に直面している
民主党政権は「八方ふさがりで四面楚歌(そか)の状況」だという。小沢一郎に近い参院議員会長・輿石東の会合で一致した認識だ。四面楚歌とは項羽を取り囲んだ劉邦の兵らが、項羽の生国楚の歌を歌ったことに由来する。項羽は愛馬「騅(すい)」が動かず、愛人虞(ぐ)美人を前に途方に暮れ「時に利あらず騅逝かず、騅の逝かざる奈何(いかん)すべき、虞や虞や若(なんじ)を奈何せん」と嘆いた。まさに首相・菅直人の周りからは、人心が次々に離反し、愛馬ですら動かない状況に立ち至っている。項羽のように自刃で総辞職するか、やぶれかぶれの「解散」に突入する道を選択するか、今日28日から新年度予算案採決をめぐって土壇場の攻防に入る。
輿石と元国対委員長・樽床伸二、元官房長官・平野博文、元参院幹事長・高嶋良充の25日夜の会合では「6月解散7月選挙」説や「菅は辞任させるしかないが、ポストにしがみつくだろう」といった話で盛り上がったという。この席では昨年輿石が「鳩山降ろし」に成功したことから、「菅降ろし」の鈴付け役を輿石に期待する空気が強かったという。このように小沢サイドが「菅降ろし」の“前哨戦”をやるのは勝手だが、いま起きている問題は、これまで菅を支えてきた大物の離反であろう。まず最初に“裏切り”とも、“菅離れ”とも言える動きを見せたのが代表代行・仙谷由人。官房長官時代は「弁慶役」をかってでて、一身に矢を浴びていたものだ。ところが今度は、15日に公明党国対委員長・漆原良夫とひそかに会い「菅の首と引き替えの予算関連法案処理」を打診した。断られて、後で「茶飲み話」とごまかしたが、茶飲み話で出来る話ではない。
大物離反の第二弾は重鎮・渡部恒三だ。記者団に「予算と予算関連法案を通すことを民主党よりも菅君よりも何よりも最優先に考えなくてはならない」と述べたのだ。発言のポイントは言うまでもなく「菅君よりも何よりも最優先」と述べた点だ。渡部はとてもいま民主党が解散できる状況にないという判断であり、菅退陣で体制を刷新しなければ窮地からの脱出は不可能とみているのだ。党のためには菅を犠牲にするのもやむを得ないという腹のようだ。
離反第三弾は、とんちんかんの極みだが、国民新党代表・亀井静香だ。局面打開のため、与野党から幅広く閣僚を起用する「救国内閣」を菅に進言したのがきっかけだ。「第三次内閣改造をただちにやって、自民、公明、社民、在野にも手を突っ込むべきだ。救国を旗印に糾合をはかれ」と、いささか“誇大妄想癖”ともいえる主張を展開した。さすがの菅も一か月で再改造の意味するところは、自己否定に他ならないと瞬時に悟り「それについては改めて話しましょう」と断った。亀井は「了見が狭いから駄目だ」と漏らし、不満を内攻させた。
犬馬の労をとるべき側近もまさに「騅逝かず」の状態だ。官房副長官・藤井裕久も、質問者が変わる度に、旧自由党時代の資金疑惑を突かれ、防戦に精一杯。頭に血がのぼって、とても冷静に官邸のまとめ役を演じているとは思えない。“財務職人”与謝野馨は野党の総スカンで、橋渡しどころではない。目玉人事の最年少官房長官・枝野幸男も兄貴分の“仙谷離反”の影響なのだろうか、どこかよそよそしい。子ども手当を小沢一郎が一挙に倍増させたことについて菅が「小沢さんから聞いてびっくりした」と、責任回避の問題答弁した翌日に、枝野は「私もびっくりした」と他人事のような発言。官房長官は菅の親衛隊長であるべきことなど忘れてしまっている。明らかに軽量長官でもある。
古来落城間近ともなるとお膝元から離反の動きが出てくるものだが、菅の場合はこれからが籠城の正念場というときに、ぼろぼろ石垣の崩壊が始まってしまっているのだ。怒鳴りつけるから側近もいきおい“面従腹背”となる。菅は28日で在任期間が266日となり、前首相・鳩山由紀夫と並ぶ。どう見ても鳩山よりはましな首相だが、首相にも運不運がある。近来まれに見る激動政局に直面してしまったのは、運が悪いのだ。もちろん自らが招いて報いを受ける“自業自得”であることも確かだ。鳩山より在任期間がすこし長いことをもってよしとするしかないだろう。小沢一郎は27日「政治は一寸先は闇だ。どのように政局が動いていくか分からない。解散・総選挙が現実になる可能性も非常に大きい」と述べ、結構客観的な分析をした。
◎“丸のみ”論争は猿の尻笑い
◎“丸のみ”論争は猿の尻笑い
首相・菅直人は野党の新年度予算案の対案が「丸呑み」出来るような案だったら、内閣総辞職も解散も回避できるし、政権は1年は延命できるという“夢見る少女”のような気持ちに時々駆られているに違いない。だから23日の党首討論で「自民党の対案がすばらしいと言って丸呑み出来るような案を是非出してほしい」と谷垣に持ちかけたのだ。ところが得たりやおうとばかりに翌24日に谷垣が発表した案は、丸呑みすれば菅がサドンデス(即死)となりそうな“毒まんじゅう”であった。駆け引きをみてみよう。
菅の「丸呑み」発言は唐突のように受け止める向きがいるが、源流がある。1998年の金融国会だ。長銀、日債銀が破綻寸前となる金融危機を前にして、時の首相・小渕恵三が民主党の金融再生法案を丸呑みにして、しのいだのだ。菅は昨年末からこの例を引いて野党に修正を迫るよう国会対策委員長・安住淳に指示していた。要するに金融国会の夢が忘れられないのだ。
しかし菅は基本的に判断を間違っている。金融再生法は日本発の金融恐慌がささやかれ、一刻も早い緊急処置が必要であったところに、民主党案がマッチした結果、小渕がのんだのである。今回のように選挙公約そのものが全面対決の核心となる中で、その公約を反映した法案を野党が賛成できるわけがないのだ。その証拠に自民党は、民主党政権がのめない政策を“厳選”して提示した。まずかねてから「バラマキ4K」と批判してきた子ども手当、農家の戸別所得補償、高校無償化、高速道路無料化の撤回で総額2.7兆円を削減。加えて公務員人件費1・5兆円削減などで計5・3兆円を浮かせ、予算規模を92.4兆円から89.3兆円に圧縮した。要するに民主党マニフェストの目玉商品を全否定したのである。
民主党がのめるような案や、妥協の協議に入れるような案を提示すれば、予算関連法案反対で“政局化”を狙う野党の戦略が崩れるのである。自民党総裁・谷垣禎一が「政府がのめばこれは内閣不信任案成立に限りなく近い」と述べている通りであろう。菅が受け入れれば政権存立の基盤を放棄したことになり、小沢一郎グループの反発で党分裂が決定的になる。だからのめないのだ。
もっとも谷垣も大ドジを踏んでいる。党首討論で切った大見えが裏目に出たのだ。谷垣は政府の予算案を「端的に言って2年連続で税収より国債発行額の多いバラマキであり、財政規律の思想とほど遠い」と切り込んだ。ところがその舌の根も乾かないうちに出した自民党案の国債発行額が、1.8兆円減額したものの42兆5000億円であり、税収40兆9000億円を上回ってしまったのだ。猿が自分のしりの赤いことを気付かないで、ほかの猿の尻の赤さをあざ笑うことを「猿の尻笑い」というが、そっくりだ。谷垣は「初めから予算案を組ませてもらえたらという思いがある」と釈明したが、釈明になっていない。こちらも「財政規律とはほど遠い」のではないか。
◎松木辞任は小沢の“地域政党すり寄り”の一環
◎松木辞任は小沢の“地域政党すり寄り”の一環
難破船・菅直人丸から小ネズミがちょろちょろと逃げ始めている。しかし今度の農水政務官・松木謙公辞任の動きは党内抗争という本質部分に加えて、小沢一郎の選挙戦術に深く関わっているとみるべきだろう。いま売り出し中の名古屋市長・河村たかしの「減税日本」との提携だ。小沢グループは解散・総選挙となれば、壊滅的な打撃を被る方向だが、おぼれる者はわらをもつかむ。小沢は地域政党との連携でしのごうとしているのだ。松木は場合によっては「減税日本」からの推薦または立候補を視野に入れているとの見方もある。
小沢別働隊16人組の離党に続く小沢の側近中の側近である松木の辞意表明は、菅政権の土台がシロアリに食われてぼろぼろ崩れ落ちて行く様を見せている。菅は為す術を知らないのが実態だろう。23日の党首討論でも開き直り的な「イラ菅」ぶりを見せたが、これは自公両党との予算関連法案での妥協をあきらめざるを得なくなった焦燥感の表れに他ならない。
松木は河村たかしとは親交が深く、小沢と河村の橋渡し役的な存在でもある。小沢が去る8日いち早く市長に当選した河村と会談したのも、松木の進言を受けたからとされている。会談で小沢は新進党以来の知己でもある河村と意気投合、今後の連携を約した。河村が名古屋市民を引きつけた「減税」の主張は、マニフェスト至上主義に固執して、「消費増税反対」で菅政権を揺さぶり続ける小沢グループの主張とも一致できる側面を持つものである。
一方で小沢グループは、大阪府知事・橋下徹との連携を模索している。やはり地域政党である「大阪維新の会」との連携である。前総務相・原口一博の「日本維新の会」は名称からして大阪のそれを包含しようとしているようにも見える。23日原口がその前身として立ち上げた政策集団「日本維新連合」も、小沢別働隊として地域政党狙いの側面をうかがわせる。しかしさすがに橋下は政治を見る目が備わっている。小沢の“すり寄り”に警戒気味であり、22日「連携が国政についてということなら、一線を画さないといけない」と述べている。23日も、原口サイドからの誘いに「今回は引かせていただく」と拒否した。「大阪維新の会」は府議選などで民主党と激突しており、とても小沢の秋波に乗るわけにはいかないのも実態だ。「政治とかね」がつきまとうグループと接近しては選挙にとってマイナスでもある。
小沢の切羽詰まった選挙戦術も前途多難だが、河村の減税選挙も次世代につけを回す“毒”をはらんでいる。だいいち名古屋市は1兆9000億円もの市債残高を抱えており、「減税日本」などと主張して大衆を煽るのはまっとうな政治家のすることではあるまい。その場しのぎの「政治屋」の扇動である。河村はまずこの市債残高を減らすことが先決ではないか。小沢も一地域の特異な現象を活用して、ようやく消費増税やむなしで固まってきた潮流にさおさすのは、いかがなものか。いくら苦し紛れでも“邪道”に走ってはいけない。西岡参院議長が22日、民主党議員が地域政党と連携の動きを見せていることについて、「地方の新しい動きにあやかろうという考え方は、国政を預かっている与党から出てはならない」と戒めたが、その通りだ。小沢もいくら窮地に陥ったとはいえ、すこしは国会議員としての“矜持”を持ったらどうか。地域政党は小沢にとっての“救いの神”にはまずなるまい。
◎政局関ヶ原は「菅軍敗戦」が見通せる
◎政局関ヶ原は「菅軍敗戦」が見通せる
政局は関ヶ原は、決戦の朝に戦場をおおっていた濃霧が次第に晴れ、東西両軍の布陣がくっきりと浮かび上がった形だ。東軍は野党連合だ。公明・社民両党が22日旗幟(きし)を鮮明にさせ、主要予算関連法案再可決拒否に固まった。西軍は「菅石田三成」を中心とするが、内に「小沢小早川秀秋」の寝返りの可能性を秘めている。菅三成は朝からしくしくと腹痛の状態にあり、不吉な予感が胸をよぎっている。来週明けにも新年度予算案は衆院を通過するが、主戦場となる予算関連法案をめぐって激突、菅三成は遅かれ早かれ内閣総辞職で首を差し出すか、解散かの選択を迫られそうな雲行きだ。
戦いの帰趨を決める決定的な動きが22日にあった。一つは社民党が両院議員懇談会で、赤字国債発行のための特例公債法案、法人税率引き下げの税制改正法案にそれぞれ反対することを決めたことだ。これにより、参院で予算関連の両法案が否決されることが確定、「小沢別働隊16人」の動きを待たなくても、衆院でも3分の2の多数で再可決することは不可能となった。普天間移設予算に反対する左翼政党の神髄を発揮したのだ。
もう一つは公明党の動きだ。民主党代表代行・仙谷由人が15日に公明党国対委員長・漆原良夫にひそかに「菅の首と引き替えの予算関連法案処理」を打診して、すわ方向転換かと疑われたが、結局旗印を東軍に鮮明化した。代表・山口那津男は記者会見で「民主党マニフェストの破綻(はたん)は明確になった」と予算への反対を明言すると共に、「首相退陣を賛成の条件にする考え方はない」と述べ、退陣しても特例公債法案や子ども手当法案などの関連法案の核心部分に反対する考えを正式に表明した。
公明党の強硬姿勢の背景には創価学会の意向が強く働いているといわれる。世論の影響を受けやすい学会幹部や婦人部が、民主党政権の体たらくと菅の支持率急落に強い危機感を抱き、一時は民主党になびいた山口を引き戻した結果であろう。もはや解散・総選挙が4月の統一地方選挙とのダブルとなってもやむを得ないとする腹を山口以下公明党幹部はくくったといえる。
この両党の方針決定は、民主党執行部の一縷(いちる)の望みを打ち砕いた。菅は予算が通ってもそれを執行する関連法案が通らないという事態に直面する。政権内部は足下から首相退陣論が出るばかりか、幹部からうろたえたとしか思えない発言が目立つようになった。その最たるものが国民新党代表・亀井静香だ。「もう一度、内閣改造をやれと何度も首相に言っている。自公両党からも人材を登用する救国内閣を実現すべきだ」と宣う始末だ。関ヶ原の戦が始まろうとしているときに、敵の武将を官職で釣ろうなどと言う甘い手段が通用するわけがない。気は確かかと言いたい。経済財政相・与謝野馨から「亀井代表はいろいろなアイデアを出す方だが、これまでも、できたこととできないことがあったと思う」と皮肉られるようではおしまいだ。
菅と幹事長・岡田克也が支持率回復への決め手とみて懸命に取り組んだ「小沢切り」も、世論調査の結果がマイナスの作用でしかないことを物語っている。優柔不断の揚げ句に「党員資格停止」などという中途半端な処分では、国民は納得しない。「小沢おんぶお化け」を切るなら、議員辞職まで追い込む腹が据わっていなければ無理だ。結果は党内対立を一触即発の危機に直面させてしまった。このように天下分け目の関ヶ原は戦する前から勝敗が決まっている形だ。ここまで来た以上菅は政権に恋々とすがるべきではあるまい。国家国民のためを言うなら、自らの出処進退は早いほどよい。
◎“与謝野孔明”は菅との一蓮托生しかない
◎“与謝野孔明”は菅との一蓮托生しかない
ネットにも優秀な川柳がある。「つり自慢一匹釣って魚群逃げ」とあったが、まさに首相・菅直人は与謝野馨を一本釣りしたはいいが16人も逃げられて真っ青の状態。菅の「支持率狙い」がことごとく外れている。改造効果も「小沢切り」効果もゼロ。それどころか効果がマイナスでなければ、10%台に落ちることもない。菅は「三顧の礼で与謝野を迎えた」と大見得を切るが、政権危急存亡のときに諸葛孔明のように、「天下三分の計」のような大戦略を与謝野が授けらるとは思われない。与謝野の心境を察するに、「もはや一蓮托生。政治家人生もこれまでか」の思いが浮かび沈みしているに違いない。
21日の衆院予算委員会の集中審議でも与謝野は憐れをとどめた。過去の発言がブーメランのように跳ね返ってくるのだ。自民党の平沢勝栄が、かつて与謝野が民主党政権を「もう我慢がならない。革マルの代表が民主党の比例に入っている」とか「この政権は新左翼崩れが作っている」とこきおろしていたことに切り込んだ。 与謝野は「極めて常識的なことを言った」と開き直ったが、平沢が「暴力団絡みの会社の中で 『自分は経理だけやっているからいい』というのか」と突っ込むと、さすがの与謝野もたじたじで 「社会保障と税の一体改革という仕事のお手伝いをしているだけだ」と“仕事”に逃げ込むしかなかった。しかしその仕事も川柳で「君死ねと税金しぼる孫の代」と言われてしまっては立つ瀬がない。
与謝野はおそらく菅に「政治日程への逃げ込み」を進言しているのだろう。18日、菅から「4月中に社会保障の改革の全体像を示すよう厳命を受けた」ことを明らかにし、「4月中に必ず出したい」と述べたのはその辺の事情をうかがわせる。しかしこれは「天下三分の計」とはほど遠い淺知恵にすぎない。なぜならば政治の要諦は古来「信なくば立たず」にあり、民心が離反してはいくら良い政策でも、説得力がないのだ。与謝野は財政の“職人”なのであり、とても“戦略家”などではない。党内からもいま“分党論”で売り出し中の前総務相・原口一博が「もしこれで衆院解散ということになれば、与謝野経済財政担当相の政策を中心に民主党が信を問うようなことにならないように願うばかりだ」との発言が飛び出している。造反16人組もそうだが小沢グループは、菅と与謝野の社会保障と税制の一体改革に「マニフェスト至上主義」で攻撃を加えている。小沢と与謝野は仲がいいから、小沢は批判しないが、グループ内は政策的にも感情的にも反与謝野の空気が蔓延している。まるで「インフル菌お持ちでないか渡り鳥」といった扱いだ。
与謝野は入閣の理由について予算委で「自らの信念を貫くため」と述べている。これは消費税導入という「崇高な目標」に我と我が身を置き、猟官運動ではないと言いたいのであろう。しかし自らを高みに置かなければレーゾンデートルが確かなものにならないという悲哀が感じられる。6月に社会保障と税制の一体改革が出来るような政治状況ではなくなってきているのだ。ということはもともと「鳥無き里の蝙蝠(こうもり)」的であった吾が身の存在価値が、崩れるように失せてゆくのをひしひしと感ぜざるをえないはずだ。まさか菅がこんなに早く断崖絶壁にたたされようとは与謝野も思わなかったに違いない。6月までは持つと思ったから、消費税戦略を持ち込んだに違いない。朝日川柳には菅の「最小不幸社会」をもじって「宰相の不幸になって行く予感」とあるが、その宰相につきあいきれるのか。渡り鳥シリーズの第二弾が見物だ。受け入れる場所があるかどうかだが。
◎「解散・総辞職」3つの選択を軸に展開
◎「解散・総辞職」3つの選択を軸に展開
造反16人組は小沢一郎の遠隔操縦が鮮明化するにつれてマスコミ世論から総スカン。朝日川柳では「議員として最初で最後の仕事かな」と揶揄(やゆ)された。一方で菅内閣支持率下落は時事通信の調査で17.8%ととどまるところを知らない。民主党政権内は自分の欠点をそっちのけで他人の欠点を非難する「目くそ鼻くそを笑う」状況に突入した。八方塞がりに見える政局をあえて展望すれば、事実上死に体となった首相・菅直人が総辞職するか、解散に打って出るか、首相交代で新首相の手による解散かの3つの選択を軸に展開しそうな流れだ。
筆者は政治記者半世紀の直感で「16人組の主張は大義がなく世論の支持を得られない」と書いたが、一歩遅れてマスコミも全く同様の見方となった。朝日新聞は19日付の社説で「小沢氏系造反―異様な行動に理はない」と銘打って①国民生活を人質に取って「倒閣」に乗り出すのは政党人として到底許されない行動である②マニフェストを菅首相が「捨てた」と断じるが、見当違いもはなはだしく、必要なら見直すのは、政権与党のむしろ責務だ③会派だけから離れるという中途半端な行動ではなく、きっぱり離党すればいい、と真っ正面から切った。筆者の主張と全く同じである。読売の社説も「小沢系議員がマニフェストを守れなどと教条的に振りかざすのは、与党議員として無責任」と批判した。
要するに16人組は「小沢別働隊」なのであり、その本質は倒閣運動なのである。これを見間違ってはならない。どう見ても世論の支持を得られるものではあるまい。昔紅衛兵が「造反有理」を掲げたが、16人組は「造反無理」と言わざるを得まい。一方で菅政権の支持率は共同通信が20%台を割ったのに引き続き、時事の調査も大きく割り込んだ。毎日も19%となり、朝日はぎりぎりの20%だ。過去3代の首相は、支持率20%割れで辞任している。支持率降下はこの「目くそ鼻くそ政争」がさらなる“減殺効果”をもたらし、低落傾向をたどるだろう。重要ポイントは「小沢処分」が執行部側に全くプラスの作用をもたらさないことであろう。菅が居座れば一ケタ台になる可能性があると指摘しておく。
これが何を意味するかと言えば、菅の手による財政再建や消費税増税など超重要政治課題の解決が不可能な段階に入りつつあることであろう。いくら壮大な政治課題を唱えても、世論や国民がその存在を否定するようでは実現は無理なのだ。支持率70%の首相ですら困難な課題を、支持率10%台の首相がこなせると思う方がおかしい。菅は20日「大事業に毅然として取り組まなければならない」と必死の挽回を図っているが、手遅れ気味である。その余力はもうないと悟るべきであろう。
今後の展開は、まず考えられるのが菅による「やぶれかぶれ解散」である。その狙いは政権を捨ててもよい覚悟で、「憎っくき」小沢グループの一掃を図るところに置くだろう。民主党は分裂しなければ小沢グループと菅支持勢力の“双頭選挙”となり、「政治とカネ」で小沢グループは惨敗するだろう。自公政権復活に数が足りなければ、小沢グループを切り捨てた「クリーン民主党」が自公との連立で政権に復活する可能性も否定できない。菅の主張する財政改革も実現可能だ。その一点に賭けた解散ということになる。菅が「消費税実行前に必ず選挙を行う」と述べているのは、小沢に対するけん制以外の何物でもない。菅に会った江田五月は20日、「総理大臣のいちばんの武器は解散であり、『解散しない』と言って、何もみずから手を縛る必要はない」と、これまた小沢をけん制している。しかし支持率が低迷する首相の手による解散は党内の「菅降ろし」を助長する可能性が高い。
次にある可能性は菅が総辞職することを前提に来年度予算関連法案の成立を図る妥協に持ち込むことであろう。しかし自民党は「経済効果のない予算を根本的に手直ししないまま、首相が辞めるから全部のんでくれというのは理屈が合わない」(幹事長・石原伸晃)と全面否定。自民党は「水に落ちた犬は叩け」戦略と見た。どうしても解散に追い込みたいのだ。しかし公明党は違うように見受けられる。基本的に統一地方選挙とのダブルはやむを得ないとしているが、首相辞任となれば、統一地方選挙も有利に戦えるし、創価学会組織もダブル選挙の混乱を回避できる。代表代行・仙谷由人が15日に公明党の漆原良夫国対委員長とひそかに会談して菅の辞任と引き替えに予算関連法案での協力を求めたと言われる。この動きは今後の政局を見る上で重要ポイントだろう。
最後のパターンが、菅は退陣、民主党が新首相に外相・前原誠司あたりを選出して、前原の手で解散するやり方だ。野党と話し合いが必要になり、事実上の話し合い解散となる。支持率どん底の菅の手による解散より前原で選挙をやれば、負けても大惨敗はないだろうという読みが背景にある。その場合日程から言って統一地方選挙とのダブルは難しく5,6月解散となる可能性が大きい。この3つの選択を軸に政局は展開することになる公算が大きい。
◎民主ついに分裂状態、「壊し屋小沢」が壊し始めた
◎民主ついに分裂状態、「壊し屋小沢」が壊し始めた
いやはや、会派集団離脱組の記者会見を見て驚いた。見たことも聞いたこともない連中ばかりで成り立っている。これが紛れもなく小沢一郎による党内抗争の“先兵”として「使い捨て」されるわけだ。しかし、この“奇襲攻撃”に首相・菅直人と幹事長・岡田克也の反応は、動揺を隠すのに精一杯で、側近も含めて「野武士小沢」の襲来をまえに右往左往する公家集団を演じた。民主党は分裂・崩壊過程に入った。“仁義なき戦い”の行き着くところは内閣総辞職か衆院解散しかないだろう。
上手の手からは水がこぼれるもので、小沢が鳩山に旗揚げを「今日聞いた。オレも知らなかった」と電話したのは、やぶ蛇もいいところだ。下手なアリバイ工作はしない方がいい。筆者は数日前から小沢が「考えがある」と漏らしたのを察知していたし、核心のすべてが18日付朝日新聞の記事にある。小沢は離脱組中核メンバーと16日夜に会い「菅ではもうダメだ。民主党もダメだ」と述べ、励ましたというのだ。これだけの奇策の筋書きを書けるのは小沢しかいまい。
その離脱組だが、なぜか「薄汚い」とか「不愉快」といった気持ちが先に立つ。離脱の理由など聞きたくもないものの、しょうがないから聞いたが、大義が全くないのだ。本質は倒閣運動の先兵でありながら、主張に「マニフェスト順守」を掲げても、尻が割れている。おまけにマニフェストの修正は党大会で決まったことである。「消費税反対、減税を」という主張も「売国的」時代錯誤にあふれている。背後の思惑が「政治とかね」隠しに他ならないから、何を言っても説得力がないのだ。
メンバーは、総選挙で比例代表だけに立候補した議員で、候補者名ではなく「民主党」という政党名による得票で当選した連中だ。もちろん小沢に名簿に入れてもらった結果の当選でもある。現下の民主党の支持率では解散になっても当選する可能性はゼロであり、「小沢先生」の“甘言”に、わらにもすがる気持ちで飛び乗ったに違いない。ティッシュのように使い捨てになるのも知らないままである。世論の反発は必至であるが、度し難いほど異常なる「小沢教」の党内世論の一部は同調するだろう。しかし予算関連法案の再可決を不可能にする16人を確保しただけで、小沢は第1ラウンドの勝負に勝った。さらに加われば盤石となる。名古屋の河村たかしなどとの連携指向だが、「バブル河村」などと連携しようというセンスが疑われる。
一方で、奇襲を受けた執行部側の対応もなっていない。岡田はマニュアル人間の本質を露呈させ、「党にいながら会派離脱するのは規約上ありえない」などと宣うたが、倒閣運動の本質を見据えていない。けんかするのに規約もへったくれもないのだ。「意味のないパフォーマンスと言われても仕方ない」とも批判したが、評論家をやっているときでもあるまい。菅も「全く理解できない行動」と首をかしげたが、小沢の魔手がひしひしと自らの身に迫っていることを感知できないとしたらルーピー鳩山並みだ。執行部としては打つ手なしが実情だろう。
今後の展開だが、内閣総辞職か解散へのテンポが早まる流れだろう。また総辞職のうえ新首相を選出して解散という展開もあり得る。後継候補は外相・前原誠司が反小沢、財務相・野田佳彦らが小沢側で激突する可能性があるが、まだ分からない。政権を壊しては作ってきた「壊し屋小沢」の面目躍如の奇策だが、今回は世論の支持は得られまい。本質は「政治とかね」隠しであり、予算を人質に取っての権力抗争でもあるからだ。小沢は民主党を壊せても、連立政権の核になる役割は、野党の総反発もあり無理だ。大義がないのだ。自民党など野党にとっては、政権内部から予算人質の動きが出てくれれば、またとない好材料だろう。批判の矛先を転じられるからだ。ころを見計らって首相問責決議案を参院で可決させれば、菅はひとたまりもあるまい
◎“小沢系会派離脱”に“普天間祟り”で菅窮地に
◎“小沢系会派離脱”に“普天間祟り”で菅窮地に
「祟りじゃぁ~」と首相・菅直人なら叫んで走りたくなるのではないか。あの普天間が、またまた政権を倒しかねない要素として登場した。鳩山普天間辞任に次いで菅の普天間窮地である。前首相・鳩山由紀夫の「方便」発言に、社民党党首・福島瑞穂が「方便で私は辞めさせられたのか」と“柳眉”を逆立てて憤り、同党は予算関連法案の天王山である「特例公債法案」反対へと大きく傾斜したのである。外敵ばかりではない内乱も本格化、小沢一郎系議員の「集団会派離脱」による政権揺さぶりの“奇策”が17日未明急浮上した。党分裂に直結しかねない動きである。
16日の衆院予算委集中審議でも、論議の中心は鳩山発言に端を発した普天間移設問題。社民党が関連法案賛成の条件として提示している移設経費凍結問題で、自民党の町村信孝の追及に菅は逃げの一手だったが、さすがに誠実そうな国家戦略相・玄葉光一郎は「普天間関連予算についてはかなりハードルが高い」と正直に答弁した。防衛相・北沢俊美も「理解できない。私の人生の中でも1、2を争う衝撃的な言葉だった」と鳩山発言を批判して、凍結について「イエスかノーかで聞かれればノーだ」と答えた。もともと移転費用などを凍結すれば、日米関係や国内世論に決定的な衝撃をもたらすのであり、末期政権としては耐えられるものではない。おそらく国会対策委員長・安住淳あたりの苦し紛れのミスリードに大新聞が引っかかってトップ扱いしたことが、問題を大きくしたのだろう。
一方、凍結を要求する社民党も福島が鳩山発言に感情的な怒りを爆発させ、「方便で私は閣僚をクビになったのか。本当にひどい」と、昨年の閣僚罷免劇に言及した。これをうけて国対委員長・照屋寛徳も予算委で鳩山の参考人招致を要求、野党の足並みがほぼそろった。福島は16日、移転経費凍結など関連法案修正協議について「もう話し合いの余地がないという部分も出てくるかもしれない」と、事実上打ち切りの方向を示した。さらに「今の菅政権の評価も絡んでくる」と法案修正判断が政権自体の存否、つまり「政局」絡みであることを示唆した。加えて「鳩山発言も反映する」と述べ、「方便」発言が導火線になっていることも明らかにしている。こうして普天間問題というパンドラの箱を開けてしまった鳩山が、再び政権に決定的なダメージを加えそうな様相となってきたのだ。
一方で、小沢が2,3日前から「考えがある」と謎めいた発言をしていることが気になっていたが、奇策となって現れた。離党はせずに「会派の集団離脱」だ。衆院議員10数人の規模だという。もちろん衆院での予算関連法案再可決はひとたまりもなく不可能になる。前例のない規模の「1党2会派」であり、これは菅を倒そうという、倒閣運動に他ならない。離党を避けたのは若手の“恐怖感”を和らげるためとみられる。どぎつい離党でなく会派離脱なら数を集めやすいからでもあろう。しかしことは党議拘束のかかる重要法案の投票に決定的なダメージをもたらす反党行為であり、小沢が実施に移せば事実上の党分裂に発展するだろう。国民不在の「野良犬のケンか」(渡辺吉美)がいよいよ食うか食われるかの段階に入った。菅政権は“風前の灯”と形容せざるを得ないだろう。パンドラの箱はこれを開いたため不幸が飛びだしたが、急いで蓋をしたため希望だけが残ったというが、小沢と鳩山がまた開いて希望もどこかに飛んでいった。
◎鳩山は「国辱の人」をいつまで演ずるのか
◎鳩山は「国辱の人」をいつまで演ずるのか
沖縄県民は「抑止力」を方言で「嘘」を意味する「ユクシ」力と揶揄(やゆ)してきたという。元々前首相首相・鳩山由紀夫の発言など元々信じてもいなかったのだろう。しかし地元紙のインタビューで面と向かって嘘だと認めて舌を出されれば、激怒して当然だろう。琉球新報は「万死に値する大罪だ」と究極の表現を使って憤りをぶちまけている。遙か彼方にあった辺野古移転の実現が、鳩山「方便発言」の誘発した「沖縄の怒り」でもう見えないほどに遠ざかった。いまや日米同盟の原点となった辺野古移転の日米合意ですら危ういものになりつつある。
「お気軽に方便などと罰当たり」と今朝の朝日川柳にあるが、広辞苑によると「方便」とは仏教用語で衆生(しゅじょう)を教え導く巧みな手段。真理に誘い入れるために仮に設けた教えであるという。鳩山の場合は俗にいう「嘘も方便」で使ったので「罰当たり」ということになる。この嘘も方便には、単に鳩山一個人の人格上の欠陥にとどまらず民主党政権の本質があると言わざるを得まい。いい加減な政策と嘘のつき放題で長い野党暮らしをしてきた性癖が、政権という国家にとって最も信用性が重視されるポジションに到達しても抜けきれないのである。発言は政権の抱える構造的な欠陥をまたも露呈したものに他ならない。
民主党は、根拠のないマニフェストを5回にわたる国政選挙で唱え続け、自民党の敵失も作用して、ついに国民に信じさせてしまって成り立った政権なのだ。首相・菅直人はその危険度にようやく気付いたようだが、時既に遅し。支持率は急降下して取り返しが付かないところに到達した。防衛相・北沢俊美が「また数日たったら違う見解が出るかもしれないので、あわててコメントするのは差し控えたい」と鳩山を侮蔑する発言をしているが、この対応もどうかと思う。気楽な一代議士の発言ならともかくとして、仮にも首相経験者であり、日米合意の当事者であったことが問題なのであり、担当相としてはしっかりコメントすべきである。
琉球新報が「明らかに首相になってはいけない人が、この国を担う。民主党政権の限界も露呈している」と断じているが、その通りだ。「学べば学ぶほど海兵隊は抑止力を維持していることが分かった」と述べておきながら「あれは方便」では、言論を命とすべき政治家業は成り立つまい。「トラストミー鳩山」の舌禍はもう「どうかしている」の段階を通り越し、国の政治に「害毒」を流し始めた。ついに政府が15日の閣議で、前首相の発言の訂正を決めるという事態にまで至ったのだ。北方領土問題で歯舞、色丹の2島を返還対象の軸とする見解を示したことについて、「政府の考えとは必ずしも一致していない」とする答弁書を決定したのだ。
自民党は衆院予算委員会への鳩山の参考人招致を要求したが、鳩山はまだ“生き恥”を曝し続けるのだろうか。みんなの党幹事長・江田憲司は「言語道断の発言で、即刻議員辞職をしていただきたい。こういう方を一国の首相に担いでいた民主党のクレディビリティ(信頼性)も根源から問われる」と述べているのが正解だ。鳩山はこれ以上国民への背信行為を重ねることをやめ、かって自らが主張していたように、首相経験者たるもの未練がましく政治の場に躍り出るのをやめるべきだ。いまはもう「国辱の人」でしかあり得ないことを悟るべきだ。
◎小沢処分は“やぶ蛇”効果でしかない
◎小沢処分は“やぶ蛇”効果でしかない
まるで最初は「出てけ」と怒鳴ったドラ息子に「小遣いはあげないけど家出はしないでね」と言っているようなものだ。役員会の処分案は一番軽い「党員資格停止」となった。首相・菅直人が「民主党としてのけじめ」と胸を張れるものではない。鳥瞰図で見れば野党の攻勢は勢いづき、党内の対立は激化し、世論は実態を見破っている。政権全体にとってはマイナス効果でしかない。
とにかく小沢一郎の「政治と金」をめぐる動きは、強制起訴以来4か月、秘書らの起訴以来1年間も放置して、迷走したのだから、もう国民は辟易しているのが実態だ。菅は新年早々に「けじめをつける年にする」と小沢の議員辞職を求めて威勢がよかったが、なぜか急速にしぼんだ。参院議員会長・輿石東ら小沢サイドから「予算関連法案再可決の人数が足りなくなるぞ」との“脅迫”があり、これを真に受けたのだ。10日の小沢との会談で菅は「裁判の決着が付くまで党を離れたらいかが」と言うにはいった。しかし小沢の方が一枚上だ。菅の表情をとらえて「ぼそぼそ話して、相当精神的に参っているのじゃないか」と分析、「弱った菅」を永田町の共通認識にしてしまったのだ。
「判決まで党員資格停止」の意味するものは何か。とても小沢の政治活動が制約され、大幅な求心力の低下をもたらすものなどではあり得ない。「代表選立候補」の資格剥奪されてもこの政治状況下で小沢は代表選に立候補する気など毛頭ないだろう。むしろ動くなら党分裂指向だろう。党からの政治資金支給ストップも、何の痛痒も感じない最たるものだ。「政治と金」に精を出しているのは、微々たる党のカネなど元々当てにしていないからだ。例え選挙で公認されなくても、小沢教信者で固まる選挙区は何の問題もない。度し難い小沢チルドレンらは離反どころか結束して、執行部を突き上げている。小沢は党員資格停止で「闇将軍」化の色彩が濃厚になるだけだ。
自民党幹事長・石原伸晃が「普通は離党しないといえば除名だが逆に処分が軽くなった」と見事に実態を言い当てている。この「制裁は加えながらも党籍にはとどめ置く」という処分は、衆院再可決で3分の2を確保するためのぎりぎりの選択であり、まさに“政治決着”を目指しているというのが読みの本筋だ。しかしその政治決着もそう簡単には収まりそうもない。小沢には不服申し立てなどの対応が残されており、小沢がその道を選択して長期化を狙えば泥沼となる。もちろん執行部の目指す予算関連法案再可決は風前の灯となり得るのだ。
みんなの党代表・渡辺喜美が「党を離れる離れないというのは、われわれには関係のない話。国民からみれば野良犬のけんかだ」とこき下ろした。一方で前首相・鳩山由紀夫が「何か問題が起きると党の中でいじめみたいなことが起きる。今もいじめが起きているように思えてならない」と嘆いた。まさに民主党内は「野良犬のけんか」や「子供のけんか」が「政治とかね」をめぐって発生しており、「小沢処分」が執行部の狙いのように支持率好転につながる兆候は見られない。むしろ“やぶ蛇効果”だけが目立つ。
◎政局の動向をシミュレーションする
◎政局の動向をシミュレーションする
今国会中6月までの「政局」つまり解散・総選挙か内閣総辞職の可能性を聞かれれば8対2で「ある」と答えるしかないだろう。しかしそれが最短の「3月解散・4月選挙」や「4月退陣」かどうかは5分5分とみるしかあるまい。例え4月の統一地方選挙に菅が逃げ込んでも、惨敗は必至であり、責任を問われて「のたれ死に総辞職」か「やぶれかぶれ解散」しか選択の余地はないように見える。これに小沢一郎の動きなど不確定要素が、政権にマイナスに絡むから一直線の展開とはなるまいが、「菅滅亡」はエジプト政局並みに確かであろう。シミュレーションをしてみる。
自民党副総裁・大島理森が「月曜日に民主党のしっかりとした答えがない限り、2011年度予算案採決の最低条件である中央公聴会の議決は拒否する」と発言、いよいよ国会は「論議」の段階から「物理的抵抗」の段階に移行しつつある。民主党国対委員長・安住淳は自公への予算修正働きかけと衆院再可決票確保のための社民党抱き込みの“二股膏薬”で、にっちもさっちもいかない状況となっている。最近では法案ごとの個別撃破を狙っているが、自民党も公明党も些細な法案はともかく、天王山である赤字国債発行のための公債特例法案や子ども手当法案自体に反対であり、安住は見当をつけ間違っている。状況は袋小路に追い込まれつつあり、これに小沢の処分と国会証人喚問が絡んでくるから展開は複雑だ。
しかし自公の強硬姿勢から言って「3月危機」があらゆる動きの発火点となるのは必至である。問題は「3月危機」を発端とする導火線が短いか長いかであろう。一時は内閣改造でわずかばかり息を吹き返した支持率も、共同通信の調査で19.9%と10%台に落ち込んだ。この流れは今後各社の調査にも波及してゆくだろう。鳩山退陣の時と同レベルの支持率に入ったことになる。そこで通常国会末までの展開をシミュレーションすると①3月解散・4月選挙②激突のまま統一地方選挙にもつれ込む③菅総辞職で新首相の下に政権継続④菅総辞職・新首相の下で解散・総選挙⑤菅政権継続の5通りが考えられる。
【3月解散・4月選挙】一番早い政局化である。自公の予算関連法案成立拒否で展望を開くことが困難と判断した菅が、解散・総選挙に打って出る形だ。統一地方選挙とダブルになるが、内閣、政党支持率から言って総選挙も地方選挙も惨敗不可避の流れだろう。
【激突状態のまま統一地方選へ】予算は成立しても関連法案が成立しないまま、解散・総選挙も退陣もせずに地方選挙に突入する。地方選の惨敗は必至であり、党内から菅の責任を問う声がほうはいとして巻き起こり、菅は「のたれ死に型の退陣」か「やぶれかぶれ解散」に追い込まれる。
【菅総辞職・新首相で政権継続】菅がもはやこれまでと判断して4,5月に退陣するケース。民主党は後任には外相・前原誠司あたりを据えて政権基盤の再構築をはかる。朝日新聞など解散・総選挙時期尚早を唱え、民主党支持のマスコミが喜びそうなオプションだ。
【菅総辞職・新首相の下で解散・総選挙】事実上の与野党話し合い解散となろう。選挙前の小沢グループ分裂や選挙後の政界再編の可能性が一番強い選択だ。
【菅政権継続】可能性が一番低い。通常国会を乗り切れれば、秋の臨時国会までは持つかも知れない。
このような5通りのシュミレーションが成り立つが、これには審議拒否も含めた自民党などの「解散」一辺倒の動きに世論がどのような反応を見せるかが大きな作用を及ぼすだろう。「多少の政治的混乱を許容しても国民の信を問うことを優先すべき」とする世論と「混乱を回避して早急に予算を成立させよ」という世論に国論が2分することが予想される。しかし内閣支持率が10%台として定着する方向にあり、その意味するところは何かと言えば、根底に「国民の反省」があるような気がする。つまり民主党政権にだまされたことへの反省である。戦後まれに見る公約欺瞞を見抜けなかったことへの反省でもある。これはとりもなおさず「選挙で選択をし直したい」という願望の表れにもつながろう。公明党など世論調査で政治をする政党はますます反菅政権へと動くだろう。
菅は新年早々「過去の総理には小泉さんのように長くやった人と比較的短くて辞めた人がいますが、その辞める原因というのが、なんとなくわかるんですよね」と前置きして、「気持ちが萎えるんです」と述べた。この菅の「萎える」発言から推察すれば、既に「萎えかかった」のを辛うじて持ち直しているというという心の襞(ひだ)が浮かび上がってくる。「萎え」れば総辞職、「暴発」すれば「解散」となる流れが見えてくる。
◎自公「3月危機」へ照準定める:党首討論
◎自公「3月危機」へ照準定める:党首討論
菅政権初の党首討論は、自民党総裁・谷垣禎一と公明党代表・山口那津男が「3月危機」への追い込みでタッグを組み、首相・菅直人は「6月会期切れ逃げ込み」に向け必死の形相で抵抗。形としては袋小路に追い詰められた菅が、“猫パンチ”を繰り出して懸命の応戦をしている図だ。理論構成、主張ともに野党側に理があり、7対3でタッグチームが勝った形だ。
どの新聞も急所を見逃しているが、菅が「社会福祉と税の一体改革」の成案時期を「6月」と設定したのは、通常国会の会期切れを狙ったものに他ならない。一体改革を提起するとして政局を引っ張り、国会閉幕に逃げ込もうという意図が明白だ。これを察知した自民、公明両党首が「3月危機」実現で、解散・総選挙か内閣総辞職に追い込もうと追求したのだ。根底にある「解散綱引き」が党首討論に現れた。だから政局がらみのスケジュール論争となり、菅が「先に一体化で話し合おう」と主張すれば、谷垣が「先に解散」と拒絶するパターンとなったのだ。
「解散」を声高に叫んだ谷垣と異なり山口は「解散」とは口には出さなかったが、これは党内への配慮であって、本質は「解散か総辞職」狙いの追求であった。統一地方選挙とのダブル選挙も辞さない姿勢と受け取れた。山口がマニフェスト破綻を指摘して「国民の側からは、契約を解除する権利がある」と述べたのは明らかに解散・総選挙での決着を意識している。最後に菅を「決意もリーダーシップもない」と決めつけたのは、首相不信任の表明であり、内閣総辞職要求に他ならない。首相問責決議可決への布石とも受け取れる。
要するに8日の予算委集中審議も9日の党首討論も、野党側の位置づけは「3月危機」への下馴らしなのである。実態を白日の下にさらして菅を追い詰め、最後には予算関連法案否決で息の根を止めるという、最終目標への段取りを踏んでいるのだ。その面で谷垣も山口も問題点のクローズアップに成功している。とりわけ谷垣が「民主党のマニフェストの基本構造は、消費税率の引き上げをやることになっていない。カド番に立ったから野党も一緒になって八百長相撲にのってくれといわれてものれない」と与野党協議を否定したのは、よほど練りに練った言葉であろう。「マニフェスト違反の共犯になれとは冗談ではない」と併せて、一般国民の“腑に落ちる”表現であろう。
解散要求に対して菅は「イギリスでは任期4年の仕事を見て国民の信を問う」と、かわそうとしたが、いまどき欠陥だらけの欧米民主主義などモデルにしようとしても説得力がない。菅の「議論もしないでまず解散では国民より党の利益を優先させている」という反論も、一見素人受けする主張だが、いま問われているのは政権の政策の原点であるマニフェストの欺瞞である。欺瞞を原点にした国家予算の是非を問うには解散か総辞職しかないではないか。野党が党利党略なら政権側の個利個略はそのままでよいのかということになるではないか。
総じて自公が攻めに徹していて、菅は秋波を送ってももう無理と悟ったのか、けんか腰の反論をして、ガチンコ勝負となった。しかしマニフェストの「破綻」は野党が指摘しているとおり明白であり、菅は「9月に見直す」と発言したが、破綻がなければ見直す必要もないではないか。また自公両党党首が、大局において足並みをそろえた意味は大きい。予算関連法案の参院否決への態勢は固まったことを意味する。その意味で追い込んだ野党と、追い込まれた菅の対比が明白に出た党首討論でもあった。
折から筆者が前回9日の解説で指摘したとおり、菅政権が苦し紛れに社民党抱き込みで普天間予算の凍結を検討し始めたという。10日付朝日新聞トップの報道だと「予算関連法案の賛成を取り付ける狙いがある」とのことだ。ついに外交・安保上の問題を国内政治に利用するという“禁じ手”を使おうとするまでに至ったのか。本当なら日米関係度外視の愚策であり、首相・鳩山由紀夫がたどった“普天間の悪夢”を彷彿とさせる流れが生じよう。
◎民主政権が左右蛇行の状態に入った
◎民主政権が左右蛇行の状態に入った
民主党が衆院での予算関連法案再可決と小沢処分を巡って左右に蛇行・ダッチロールを始めた。再可決では、社民党への大接近をし始め、予算案修正も辞さない構えであるが、昨年の鳩山政権が追い込まれた“普天間の悪夢”を彷彿させる状況が生まれかねない。一方で小沢処分に踏み切れば、小沢系の離反でそれこそ再可決どころではなくなる。大矛盾を抱えたままダッチロール状態からきりもみ状態になれば墜落する。
とにかく哀れをとどめるのは民主党国対委員長・安住淳だ。予算案修正で自民、公明両党に泣きつかんばかりに接近しても、全く相手にされず、今度は社民党に秋波を送った。しかし社民党の方が大きな問題を提起している。同党は条件として普天間移設関連経費の取り下げ、法人税の引き下げ反対などを主張している。とりわけ普天間移設費については国対委員長・照屋寛徳が「一人になっても反対する」と強硬姿勢だ。安住は「歩み寄れるところがあれば歩み寄りたい」とワラにもすがりたい姿勢だ。
しかし移転経費がわずか16億円で予備費で処理可能とはいえ、ようやく修復段階に入った日米関係を考慮すると修正問題は安住が考えるほど簡単ではない。首相・鳩山由紀夫が「国外、少なくとも県外」発言で、社民党党首・福島瑞穂に逆手を取られ、のたうち回ったあげく退陣へと追い込まれたケースが再現しかねない。安全保障問題での安易な社会主義の亡霊のような政党への妥協は、場当たり外交の最たるものとなり、日米関係に与える損傷は計り知れないだろう。国民の多数の支持を得ていない政党に外交・安保で振り回されてはならないのだ。外相として辛酸をなめた幹事長・岡田克也がとても黙って見過ごせるとは思えないのだが、貧すれば鈍するの例えもある。
社民党は照屋に加えて政審会長・阿部知子も普天間強硬派であり、民主党との提携に前向きな幹事長・重野安正らとは対応をめぐって割れている。社民党6人のうち5人が賛成しなければ衆院3分の2での再可決は不可能になるのであるが、民主党が安易に妥協に応ずれば、政権維持の目標を喪失しかねない問題でもある。行き当たりばったりの妥協で解決出来る問題でもない。
一方で執行部は、強制起訴された小沢一郎への処分を「判決が出るまでの党員資格停止処分」でけりをつけたい考えのようだが、これも簡単ではない。小沢が陰で糸を引いて支持グループの若手や中堅の会合を頻繁に開かせ、処分反対ムードを盛り上げているからだ。参院議員会長・輿石東もいよいよ本性を見せ「処分すれば造反が起きて総辞職か解散しかなくなる」と公言し始めた。
小沢の戦略は「皮を斬らせて肉を切り、肉を切らせて骨を断つ」ぎりぎりの対応でもある。したがって例え執行部が社民党を取り込んで5人を確保しても、小沢グループから数人造反が出ただけで、社民党との連携は水泡に帰するのである。逆に小沢は指一本で断崖絶壁の菅を転落させることが出来るのだ。まるで執行部は賽(さい)の河原で石積みそしているかのようでもあるが、憐れに思った地蔵菩薩が助けに来てくれる可能性もない。マニフェストで国民に大嘘をついた報いで舌を抜かれる運命が待ち構えているのだ。
◎菅いよいよピンチ、夫人・伸子が擁護に回った
◎菅いよいよピンチ、夫人・伸子が擁護に回った
唯一人心を許せる菅直人の「戦友」である首相夫人・伸子の発言が、このところ“焦り”を見せるようになってきた。首相就任当時は余裕しゃくしゃくの“けなし”が目立ったが、最近ではあからさまな“擁護”に変わった。一方で民主党王国愛知県での知事選・市長選の大敗北が象徴することは、菅では統一地方選はおろか総選挙も「戦えない」という実態であろう。いずれもイメージするところは断崖絶壁の菅の姿に他ならない。
人間の発言というものは、注意深くたどってゆくと必ず本心が現れてくるものだ。伸子の場合は材料が豊富で分析しやすい。首相就任時は「あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの」という本まで書いて「この首相でよいのだろうか」と問いかけた。逆転の発想で国民に問いかけて見事にサポートしている。「この首相でよいか」と聞いて「よい」との答えが返ってくると期待できる余裕があるから出来る“けなし”発言だ。永田町に3月危機がささやかれるようになった9月には、「来年3月の予算案の成立まで持つかどうか」とどぎつい発言をしたが、これも予言と言うよりは、菅周辺に発破をかける意味合いの方が強い。まだ余裕があるから言える言葉だ。
ところが今年に入ってがらりとトーンが変わる。先月12日には「できることをやって玉砕ならいいが、支持率が低いと批判されて辞めることはあり得ない」と、正面切って退陣論に反論。支持率急落はさすがの気丈さにも陰りを生じさせた。そして5日の発言だ。「ボンボン首相にしては降ろし、なっては降ろし、誰がこの時期にやれるんですか」とヒステリックなまでに変化。「マスコミの持ち上げたり叩いたりに、ずっと付き合っていたら日本人は滅ぶ」と「マスコミ切り」にまで及んだ。挙げ句の果ては、「20年かかってこうなった日本が1、2年で変わると思わないでほしい」と開き直った。まさに伸子は直人を必死でかばう姿と変容したのである。伸子も追い詰められているのだ。
菅が、おそらく眠れぬ夜もあるのだろう。焦燥感をあらわにすることもあろう。それを目の当たりにしているからこそ、“けなし”てはいられない状況と悟ったのだ。しかし、人の良さそうな伸子には悪いが、「誰が首相をこの時期にやれるのか」と言われても、「少なくともご亭主よりましな候補はいますよ」とたしなめるしかない。「1,2年で変わらない」とおっしゃるが、民主党マニフェストをみれば、政権が変わればすぐにバラ色の世界が現出するはずだったのではありませんか。問題はその嘘がばれつつあるのではないのですか。
その菅が、これだけの選挙大敗北にもかかわらず、民主党内から寂として批判の声が上がらないのはどうしたことか。総力戦でかかったにもかかわらず、幹部らも「河村流にやられた」と逃げの一手だ。参院議員会長・輿石東にいたっては「あんたのせいじゃない。へこたれるな」と幹事長・岡田克也を慰める始末。あまりの大敗に敵も味方も傷をなめ合うしか手段がないのが「愛知ショック」の実情だ。市長選の結果はポピュリズムの元祖民主党が、その3倍ポピュリズムの河村たかしにやられただけで、河村は民主党政権と同じで公約のつけを払えず、いずれ馬脚を現す。しかし焦点はむしろ知事選にあった。民主党候補が2位ならまだしも、3位ではいかんともしがたい。愛知のショックは民主党の一連の地方選敗退にとどめを刺したのだ。その意味するところは、総選挙で吹いた「風」が止まったどころか、「逆風」に転じ、統一地方選も総選挙も「惨敗」の二字が踊る方向となったのだ。その最高の責任者は菅以外の何者でもあるまい。
民主党内で表立った批判が生じないということは、批判が内攻するということを意味する。「統一地方選は菅では戦えない」と誰もが思い始めており、総選挙があった場合もやはり菅では駄目という認識が常識化しつつある。「駄目菅」が定着しつつあるなかで、伸子は直人をどう慰めるのか。慰めようがないのが政治の現実だ。「もう十分戦ったわよ」と、タイミングを見て退け時を忠告するのが内助の功かもしれない。
◎公約大修正で「政策」の「政局」化不可避の形勢
◎公約大修正で「政策」の「政局」化不可避の形勢「予算関連法案不成立による世論の反発を恐れない」と自民党副総裁・大島理森が腹をくくっている。その理由は「もっと大きな問題を民主党政権は抱えているからだ」という。大島の指摘は首相・菅直人のマニフェスト大転換路線、つまり“変節”を指す。たしかに菅が取り組む「社会保障政策と税制改革の一体化」路線そのものが、マニフェスト大修正を意味していることは間違いない。過去の数々の国政選挙で訴えてきた路線を転換するなら、国民の信を問うべきであるとの主張は説得力がある。国会審議は8日の衆院予算委集中審議、9日の党首討論でいよいよ佳境を迎えるが、「政策」の「政局化」は避けられぬ構図となって来た。
菅はこのところ立て続けにマニフェスト修正に言及している。マニフェストの一丁目1番地である子ども手当大幅修正を言明したかとおもうと、マニフェストの根幹である年金制度も大幅に変えることを示唆している。これは経済財政相に与謝野馨を任命したときからの“必然”であったといえる。三顧の例で迎える以上、仕事をしやすい環境を整える必要があり、その環境を整えつつあるのだ。また修正の方針を示して自公両党との妥協点を模索しようとする意図も見られる。
その中でも最重要の転換は、菅が厚生労働副大臣・大塚耕平に「死ぬ気でやってほしい」と指示した「4月までの社会保障政策の見直し」だ。民主党は過去3回の衆院選と2回の参院選で年金制度の一元化と最低保障年金の7万円支給を唱えてきた。一元化とは国民・厚生・共済の3年金を統合しようというものであり、社会主義の流れをくむ政党らしく年金の平等性を狙ったものである。その上で最低7万円の年金を支給しようというものだ。しかし厚生、共済両年金はやろうと思えば統合できないわけではないが、全く異質な国民年金と厚生・共済両年金との統合は不可能視されている。加えてこの時期に7万円の最低年金をばらまこうという訳だが、財源上の根拠は全くない。財源上の根拠がないから消費税導入しかないという連動の仕方であろう。
“命がけ”の取り組みが必要になるというのは、さすがに菅もマニフェストの根幹に触れる修正となる上に、年金7万円の夢で“釣り揚げて”きた有権者の反発を買うのは不可避であると悟ったに違いない。民主党案を大幅修正して、保険方式を軸とする現行制度を基本とする自公案に大接近せざるを得ないだろう。そうなればマニフェストとは絶対に整合性がとれない。いずれにせよ4月にまとめて6月の消費税導入への理論的根拠を作る必要にも駆られているわけである。社民党政審会長・阿部知子が「社会保障を隠れ蓑にした大増税」と批判するのは、珍しく一理ある。消費増税への理論武装、悪く言えばアリバイ作りであることは確かだ。
こうした菅政権の抱える大矛盾を背景に、冒頭述べた大島だけでなく、公明党も「予算関連法案を通すことにはならないと思う」(幹事長代理・高木陽介)と断言するという事態に至っている。自公両党は予算委集中審議と党首討論を通じて、このマニュフェストと菅の「社会保障と税制改革一体化路線」の矛盾を突くとともに、その欺瞞(ぎまん)性を明確にして総辞職か解散を求める流れへと持ち込もうとしている。自公両党が世論の反発を受けてでも予算関連法案の成立を遅らせよとしている背景には、「菅政権の欺瞞(ぎまん)性と“変節”」と「関連法案の遅延」のバランスをとった場合国民を説得することは可能だという判断がある。
従って明らかに自公両党は「3月危機ー4、5月総選挙」に照準を定め、集中審議と党首討論に臨むことになるだろう。だらだらと6月に菅が「一体改革」で結論を出すことを待っていたら、そのまま解散・総選挙を回避して通常国会閉幕に持ち込まれ、逃げ切られる恐れが濃厚とみられるからだ。従って自公は予算の年度内成立のめどである3月2日衆院通過はやり過ごしても、関連法案だけは「人質」にとった対応ということになる。ぎりぎりの攻防段階に今週から入ることになるが、本来政策論議の最たるテーマが政局と密接不可分の状況で日々推移してゆくことは間違いない。
◎小沢の政局分析が“冴え”をみせている
◎小沢の政局分析が“冴え”をみせている
政治家も追い詰められると必死で見通しを立てるからなのか、民主党元代表・小沢一郎の政局分析がこのところ冴えている。昨年11月頃から側近らに「解散近し」の警鐘を鳴らし、民主党議席が100を割るとか公明党が総選挙と地方選挙のダブル選挙を厭わないとか、裏情報で政局をリードしていると言っても過言ではない。しかし、国会招致など自らの対応への判断は、いまひとつぱっとしない。
小沢の義理堅さは田中角栄亡き後おそらく政界随一であろう。とりわけ恩師田中を徹底的に模倣しているのか、冠婚葬祭の「葬」への配慮は格別なものがある。3日も、鹿児島県肝付町にある元自民党副総裁・二階堂進の墓参りをした。二階堂は「趣味は田中角栄」といってはばからなかったが、2000年の同日に没している。小沢は田中にも可愛がられたが、二階堂にも可愛がられ、昔は「じじい殺し」と言われたものである。遺族を前に挨拶し「先生の不肖の弟子ですが、先生の教えを受けながら精いっぱい、一生懸命頑張っています」と挨拶している。
興味深いのはその前夜鹿児島市で側近議員に話したという政局見通しだ。朝日新聞だけが4日報じているが、小沢は「(首相・菅直人が)総辞職せず、衆院を解散する。総選挙は早いぞ」と述べたというのだ。小沢は昨年11月から「やぶれかぶれ解散するのではないかと心配している」と菅が行き詰まった場合には総辞職より解散を選択すると警鐘を鳴らしており、その分析は全くぶれていない。さらに小沢は公明党が対決姿勢を強めていることにも触れ、「公明党は『4月の統一地方選と総選挙が同日選になっても勝てる』と考えており、本気で民主党と戦おうとしている」と分析したという
この見通しは3日になって当たっていることが分かった。公明党代表・山口那津男が「菅政権はマニフェスト通りに実現できなければ、信を問うか総辞職するのが筋だ」と述べるとともに、焦点の予算関連の特例公債法案について反対する考えを明言したのだ。これは同法案の反対に回ることにより、菅が解散に踏み切り、統一地方選挙とのダブルになっても構わないということを意味する。小沢の分析は的中している。
「民主党が100を割る」との分析もそうだが、小沢の政局分析には“我田引水”がなく、ストレートで実に客観的だ。100議席を割れば自分がどうなるかは二の次で度外視して分析しているから面白いのだ。その二の次がどうなるかだが、民主党とりわけ小沢グループが「政治とカネ」議員とみなされ激減することは間違いない。選挙になれば数が頼りの小沢の政治力は喪失すると言ってもよい。ロッキード事件で「灰色高官」とされた二階堂は、鈴木・中曽根両内閣で幹事長に復権したが、いくら二階堂を拝んでも小沢を使う政権はもうないだろう。しかし自らが議員辞職も離党もしないと突っぱねることで、逆に執行部を追い込めるという“読み”はずばり当たった。民主党執行部は小沢の処分ができぬまま右往左往の醜態を見せ続けている。
◎「脱小沢」どころでない「小沢切り」失速の欺瞞
◎「脱小沢」どころでない「小沢切り」失速の欺瞞
これでは「脱小沢」どころか「入小沢」ではないか。強制起訴と同時にやるかと思っていた元代表・小沢一郎に対する処分を民主党執行部はぐずぐずと先延ばしにして、やるにしても小沢にとって何の痛痒もない「党員資格一時停止」らしい。この政権の食言には慣れているが、元旦に1年の計のごとく小沢に議員辞職を求めた首相・菅直人の発言はもう「ぶれ」と言うより「欺瞞」と言った方がよい。まるで八百長相撲の「立ち上がりは強く当たって、あとは流れでお願いします」とそっくりだ。国民はよく見ている。読売新聞の世論調査の支持率は20%台に逆戻りしており、今後必ずボデーブローとして利いてくる。
要するに予算が通らなければ解散か総辞職に追い込まれるという菅の恐怖心がすべての根源にある。小沢サイドから、やくざのように「オレはいいけど子分が黙っちゃいないよ」と脅されている構図だ。たしかに数人が離反するだけで、予算関連法案の成立はおぼつかなくなる。国民新党幹事長・下地幹郎が「ケンカは4月からにしてほしい」と幹事長・岡田克也に申し入れたのも、こうした流れを察知した上でのことだ。
菅が1日の予算委答弁で、なぜか「小沢氏によって二重権力構造などにはなっていない」「小沢問題は山を越しつつある」と述べたが、これは執行部の問題長期化作戦への布石ととれば理解できる。「脱小沢」は達成されつつあるという認識を事前に示すことにより、方針転換の非難をかわそうという淺知恵に他ならない。執行部は今日から臨時役員会で小沢処分の論議を始めるが、岡田が2日「結論の期限は設けない」と言っているようでは、底が割れている。いつの処分になるか分かったものではあるまい。先に書いたように、党倫理規定が定める処分は軽い順に党員資格停止、離党勧告、除籍があるが、長期化したあげくの果てが党員資格停止という方向のようだ。それも数か月の期限付きだという。これでは世に言う「お茶を濁す」ていどのごまかし処分にすぎない。小沢にしてみれば離党もないし、議員辞職もないということになり、笑いが止まらないとはこのことだろう。勝ち誇ったように小沢グループの参院国対委員長・羽田雄一郎が2日「推定無罪の原則から言っても、司法の場での決着を見守ることが大切だ」と述べ、なんと判決が出てから処分を判断すべきだとの考えを示した。原理主義者であったはずの岡田はふらついたあげくなめられたことになる。
事実上執行部は小沢の「逃げ切り」を黙認することになるが、その意味するところは国会が依然として不毛の「政治とカネ」論議に終始するということだ。しかも参院で否決された法案を衆院で3分の2の再可決することなど、一つや二つは成立できても全法案をやればそれこそ解散か総辞職に直結する。いずれにしても突破口にはつながらないのである。菅の振り上げた拳で頭をかいている姿は、醜態と映るのであろう。読売の世論調査では小沢の議員辞職か離党を求める声が合計で76%に達した。菅が「指導力を発揮していない」は何と79%だ。改造で一時戻した支持率も27%で低迷の極みに戻った。おそらく民主党執行部は支持率急落を覚悟で、小沢問題の長期化を選択したのだろうが、野党は追及の材料に事欠かない。統一地方選挙や総選挙の惨敗が三流週刊誌やコメンテーターでも予言できる段階となった。まさに国民の判断も「あとは流れでお願いします」だ。
◎「イラ菅」封じて「逃げ菅」に徹す:予算委論戦
◎「イラ菅」封じて「逃げ菅」に徹す:予算委論戦
予算委員会の野党質問で国会が本格論戦の火蓋を切った。質疑を聞いて、ひたすら「事態の政局化」を恐れる首相・菅直人の追い込まれた姿が鮮明となった。小沢一郎の国会招致では打って変わって「逃げの一手」に徹し、解散では怒気を含んだ声で否定する。「与謝野問題」だけは開き直ったが、総じて受け身の姿を露呈した。産経新聞は自民党の追求を「ゆるい」と表現したが、見方が浅い。自民党の狙いは「冒頭は責任野党」を印象づけ、じわじわと政権を追い込み、予算関連法案の処理など急所で一挙に「攻撃野党」に変身する高等作戦とみた。
一番目立ったのは「逃げ菅」姿勢だ。新年早々「出処進退を」と小沢に議員辞職を迫った威勢の良さはどこえやら。小沢招致問題では「国会で与野党協議を」と繰り返し、「いつまでにどうするとは言えぬ」と逃げた。逆に小沢の政権への影響については「一つの山を越えつつある」と「おやっ」と思わせる答弁をした。答弁に矛盾があるのだ。小沢の影響があるから「逃げ菅」なのではないか。事実小沢の侍従のような参院議員会長・輿石東から、「衆院で3分の2を確保出来なくなる」との脅しが政権に入ったと言われ、それを恐れての「腰砕け」に違いない。確かに数人の造反で菅は窮地に陥るのだ。小沢の力が裏で作用した上での「逃げ」であり、「二重権力構造になっていない」と言う菅の答弁は単に“期待値”を述べたにすぎない。毎日新聞によると折から小沢は側近らと会合し「2011年度予算関連法案がどうなるか分からず、何があってもおかしくない。(菅首相が)信を問う場面が出てくるかもしれない」とすごんでいる。小沢の読みも「菅は袋小路に入った」なのであろう。
野党席から一転閣僚席に座った経済財政相・与謝野馨は、風邪を引いたのかマスクをして、肩にはふけが雪のように積もっていた。野党時代に「平成の脱税王」と首相・鳩山由紀夫を追求した凛とした面影はない。閣僚の誰もふけを払うように忠告してやらないところが異様で、閣内に置かれた孤独な立場を物語った。自民党から議員バッジを外せと迫られて「有権者への責任がある」と答えたが、有権者が比例区で自民党に投じたから、当選したことを忘れている。有権者を裏切ったのは自分の方なのだ。菅は与謝野を「社会保障と税制改革は国民的課題であり、それにふさわしい方に取り組んでもらうのは最大の大義」とかばったが、自民党の稲田朋美から「政治は信なくば立たず。正しい政策でも正しい人が行わなければ成り立たない」と急所をつかれて、たじたじだった。
総じて7時間の答弁で菅は「イラ菅」ぶりを抑制していたが、解散問題を聞かれる度に「この段階で解散をして何が生産的なのか」など、なぜかムキになって、しかも大声で否定した。菅のボディランゲージを分析すると、大声を出すのは「怖い」からにすぎない。小沢が「いま選挙やったら民主党は100人くらいしか生き残れない」と予言しているとおり、解散・総選挙の意味するものは自ら首相の座を明け渡すことを意味するからだ。論戦の幕開けはさすがに菅政権側も万全の準備をして取りかかっただけに、大きな隙を見せなかったが、問題は持続性だ。予算委には魔物が住んでいるのだ。
【朝刊トップ10秒勝負】
★朝日
エジプト100万人行進
★毎日
力士八百長メール 十両数人星を売買
★読売
「反ムバラク」100万人デモ
★産経
エジプト全土100万人デモ
★日経
極なき時代マネー漂流
◎裁判長期化と選挙で小沢支持勢力消滅の危機
◎裁判長期化と選挙で小沢支持勢力消滅の危機
強制起訴で浮かび上がった構図は「辞職も離党もない」とほくそ笑んでいる小沢一郎と、対照的に首相・菅直人の苦悩の姿が浮かぶ。小沢の巧妙なる布石で攻守が逆転したかのようにも見える。しかし、これは短視眼的な見方であり戦略眼的に見れば、小沢の笑顔はそのまま凍り付くことがやがて分かるだろう。強制起訴は「政治とカネ」に象徴される小沢的な政治の否定そのものであり、有罪か無罪かにかかわらずその目的は達成されようとしているからである。こんご“脱小沢”どころか“嫌小沢”が政界に高まり、小沢は悲しい老人として晩節を汚しつつ生きなければなるまい。
小沢が高々と唱える理論武装を煎じ詰めれば「検察の起訴なら権威があるが、有象無象の検察審議会の起訴など起訴とは言えない」と言うところだろう。これを錦の御旗に、党内一定勢力の支持を取り付けている。確かに99%有罪の確率がなければ有力政治家の起訴は控えるのが検察の従来からの方針であり、小沢は「嫌疑不十分」で2度にわたり不起訴とされている。しかし嫌疑不十分とは文字通り嫌疑はあるが十分ではなかったのであり、小沢の主張するように「無実」などとは断定できない。検察審は80%の可能性でも起訴して疑惑を晴らそうとしているのである。「疑わしきは罰せず」から「疑わしきは裁判へ」の流れが政界疑惑に適用され、今後定着するのだ。
確かに起訴の焦点である小沢が土地購入代金4億円を陸山会に貸し付け、2004年の政治資金収支報告書に記載しなかった経緯を「秘書独断」とは考えにくい。常識的には「共謀」と見る方が自然だ。背景では水谷建設からのヤミ献金が含まれていると検察審がみているとしても無理はない。小沢の関与をいったん認めた秘書の証言もある。有罪か無罪かは5分5分と見るべきだろう。
それでは、小沢が強制起訴されたことが政治的にどう波及するかだ。小沢は起訴により刑事被告人となったのであり、まず無罪となるまで首相に担ぐ破廉恥な党内勢力はなくなるだろう。党の主要なポストにも就けない。従来通り「政治とカネ」にものを言わせて一定の勢力は養うだろうが勢力は減衰傾向をたどるだろう。とりわけ重要なポイントは小沢の裁判戦術そのものに致命的な欠陥があることだ。秘書のそれから見ても裁判は引き延ばし長期化を狙ったものになる。秘書は起訴以来1年たっても初公判が開かれていない。小沢は初公判までに1年以上、判決までにさらに1年以上、1審で合計3年くらいの長期化を狙っているものとみられる。
これが意味するものは、その間に確実に行われる解散・総選挙によって、小沢チルドレンや小沢で生きている側近らを喪失することである。裁判が長引くことは民主党が常に「政治とカネ」を引きずることになり、選挙結果に小沢の居座りを80%がネガティブとする国民世論が反映されることは確実だ。チルドレンに至ってはバブルが弾けて90%の確率で落選すると見る。140人の小沢勢力はせいぜい20人か30人になるだろう。小沢は裸の王様になるのだ。そうかといって、かっての小沢のように党を飛び出して政界の再編に走れるかというと、野党の総スカンの中ではとても無理。そんな求心力は政界のどこを探してもない。
この小沢の姿を遠望することができない菅以下政権幹部は、無責任きわまりない対応しかとれていない。正月4日の記者会見で菅は「小沢氏は出処進退を」と議員辞職を迫ったが、その迫力はなぜか消えた。そればかりか菅が「岡田君中心に協議」と逃げれば、幹事長・岡田克也は「本人が決めること」と小沢に転嫁する始末だ。いくら予算成立のために小沢勢力が必要とはいえ、みっともなさが極まった。加えて執行部は小沢の処分については、除名でも離党勧告でもなく、なんと最も軽い「党員資格の停止」を考えているのだという。これでは小沢には効果がない。党からの資金が停止されても「政治とカネ」の本家にはジャブジャブ集まる。総選挙での公認などは、岩手の選挙区が「小沢党」であり必要もない。代表選への立候補資格の喪失など、元々狙わないから意味がない。要するに執行部は「小沢切り」ができないということになる。この腰が引けた姿が、国民にどう映るか、支持率にどう反映するかは言うまでもない。馬鹿な評論家が「小沢の力が落ちて、菅が俄然有利になる」などと論評しているが、とてもとてもその流れにはならない。むしろ“抱き合い心中”的な流れだ。
こうみてくると、検察審による小沢の起訴が、投げかけたものは
小沢の紛れもない凋落であり、その小沢に「負んぶお化け」のように取り憑かれた民主党の長期低落であろう。逆に野党はまたまた政権追求の“珠玉”を得たことになる。証人喚問は全会一致が原則で実現しにくいが、お経のように繰り返すだけで霊験あらたかな効果がある。
【朝刊トップ10秒勝負】
★朝日
小沢元代表強制起訴
★毎日
小沢元代表強制起訴
★読売
小沢元代表強制起訴
★産経
「無実」強調離党は否定
★日経
小沢元代表を強制起訴
























