◎トロイカ復活は権力闘争先送りに他ならない
◎トロイカ復活は権力闘争先送りに他ならない
拳銃に一発だけ弾丸を装填し自分の頭に向け引き金を引く決闘のロシアンルーレットが恐ろしくなって、両方が天井を撃った形だ。菅直人は代表選敗北が怖く、小沢一郎は「首相就任」が嫌だ。何よりまして両者とも「党分裂・政権下野」を回避したい。紛れもない“密室談合”だが、ロシアンルーレットは1度天井を撃つと大体ゲームが終了するという。きょう菅・小沢会談が開かれるが、会談は小沢が降りることを前提にしなければ開催する意味がない。一転して小沢出馬見送りのの見方が強まっているのはそのためだ。
鳩山のトロイカ復帰を菅が呑んで、突然の「トロイカ宣言」だ。トロイカ体制は旧ソ連でスターリン死後に権力闘争回避策として出て来たものだが、権力の二重構造の象徴。結局党の権力が強くなり共産党第1書記のフルシチョフが権力を握って崩壊した。要するに民主党も今回のトロイカ体制復活は権力闘争の先送りを意味するものにほかならない。菅は「脱小沢」を事実上転換し、挙党態勢の名の下に人事上の譲歩を迫られることになる。その意味で菅は小沢に屈服したことにもなる。しかし小沢が降りれば、代表選は事実上の信任投票か、跳ね上がりが立候補しても菅の独走態勢を確保出来る。
小沢が降りれば菅にとってもめでたしめでたしだが、譲歩なしには小沢との会談を31日に設定することは不可能だから、既に譲歩したかまたは譲歩するに違いない。焦点は幹事長と官房長官人事であろう。またトロイカという以上小沢、鳩山をどう処遇するかも焦点だ。加えて菅が「トロイカに輿石さんを加えて体制の原点を大事にしたい」と、あえて参院議員会長・輿石東を加えた点も興味深い。菅陣営にしてみれば首相のポスト確保が最優先の順位であり、幹事長や官房長官ポストのために戦っているわけではない。「脱小沢」のスジ論とは別に政治論としては両ポストに固執するのは愚策だ。現に幹事長・枝野幸男は参院選大敗後いったん辞表を出したというし、官房長官・仙谷由人も「おれがやめればいいのならいつでも首を差し出す」と漏らしているという。
しかし菅にしてみれば小沢を幹事長に復活させるとなれば、味方と世論の挟撃を受け立ち往生だ。したがって小沢の息がかかってはいるがぎらつかない候補がいるかどうかだ。朝日新聞だけが報じているが、政調会長・玄葉光一郎が30日夕、菅に「輿石幹事長でもいいじゃないですか」と進言、菅は納得した表情であったという。その後玄葉は輿石に接触している。この動きは面白いが、まだ成否は不明だ。
党名とは逆の密室での談合が世間に与える印象は悪く、菅の「脱小沢」路線転換にもつながるだけに、菅もマスコミに叩かれることは覚悟しなければなるまい。「政治とカネ」が挙党一致でほおかむりになることも紛れない。支持率低下は避けられない。菅にしてみれば、小沢との激突となれば必ず勝つという自信がない上に、勝っても負けても党分裂・政権下野の危機にさらされる。小沢にしてみれば勝って首相になっても野党の攻撃にあって解散・総選挙に追い込まれるのは火を見るより明らかだ。「小沢首相」では、民主党大敗が保証されているようなものだ。こうした事情を背景に菅・小沢会談が設定されたが、人事上の取引が焦点になるものの、外部にはなかなか公表できまい。しかし勢いずく小沢陣営をなだめるためには抽象的ではあっても代表選後の人事に言及した合意の形を取ることが予想される。最後の詰めが残っており、菅・小沢会談の成り行きはもちろん断定できるものではない。
◎「小沢首相」なら国会巻き込む政局に
◎「小沢首相」なら国会巻き込む政局に
チキンゲームのごとき駆け引きが民主党内で続く中で、テレビの議論を聞いていると小沢一郎が勝てばどうなるかが分からない民主党議員が多いようだ。政権を取って1年で、若いから政局を理解し難いのはもっともだ。小沢が勝った場合のシュミレーションをしてみる。簡単だ。小沢が勝てば首相指名選挙を契機に国会全党派を巻き込んだ再編含みの政局になる。たとえ首相指名を獲得できても内閣不信任案が待っている。簡単に言えば「小沢3日天下」で解散・民主大敗が太筆書きの流れだ。
かねてから首を傾げる発言が多い民主党国対副委員長・松木謙公が「たとえ政権が3%からスタートしても数年かけて5%、10%と上げてゆけばよい」と述べたのには驚いた。10%台でも政権は持たない。あの竹下登でも17%でついにこらえられなくて政権交代だ。3%は国民の支持が誤差の範囲でゼロに等しい。昔なら軍事クーデターが起きてもおかしくない状況となる。いまはまがりにも民主主義国家だから野党が責任を果たすことになるが、3%の政権を野党が黙って数年掛けて10%に上がるのを待っているとでも思うのか。国対委にいながらそんなことが分からないのだろうか。
最終的には菅が勝つと思うが、菅は国民の人気に依存しすぎており、なりふり構わぬ小沢選対が不気味だ。菅側の票読みが上滑りする危険を内包している。まず代表選挙後の臨時国会は菅直人が再選されれば首相指名はないが、小沢に代われば指名選挙が行われる。参院では与野党が逆転しているから小沢の指名はまず困難だ。過去に首相指名が衆院と異なったのは5例あるが、憲法の規定により衆院での指名が優先されてきた。問題はその衆院での指名だ。過半数は241だが、首相指名は得票順で過半数は関係ない。過去に自民党の40日抗争で福田赳夫が立候補して121票取り、現職の大平正芳が辛うじて138票で指名を獲得した例もある。
もし菅が代表選で敗れても対立候補となって立候補した場合、もう一度勝負できる可能性もあるのだ。民主党の半数、約150人が小沢支持に回っても、小沢に流れる野党票はまずない。菅が民主票150票確保出来れば、野党票が菅に数十票流れただけで「菅首相」となり得る。自民党の谷垣禎一は116票しかないから、菅と自民党または公明党の連立なら確実に勝つ。反小沢の渡部恒三がテレビで「おれいま自民党の皆さんと毎日お付き合いしている」と述べているのは、連立含みの意味が含まれているものとみられる。
この難関を小沢がすり抜けて首相になったとしても、待っているのは本会議と予算委における「政治とカネ」の追及だ。野党はすぐに内閣不信任案を出すよりも、まず参院で首相問責決議案をやすやすと成立させておいて、参院の審議を事実上ストップさせるだろう。そしして衆院予算委で「政治とカネ」を浮き彫りにして国民に問題の所在を周知徹底させた上で、内閣不信任決議を上程する。野党はもちろん民主党の反小沢グループの同調で成立して、内閣は総辞職か衆院解散を迫られる。
この場合総辞職の可能性は少なく、小沢が衆院解散に追い込まれれる公算が強い。総選挙になればテーマは「政治とカネの小沢問題」一本に絞られる。各社世論調査で国民の7~8割が「小沢首相」に反対する中で、小沢を支持したグループはほとんどが落選の憂き目をみるだろう。小泉チルドレンが83人中10人しか当選しなかったのと同じように、小沢チルドレン143人の当選確率は数%にすぎないだろう。泡沫(うたかた)のごとく消えるのだ。こうして国民の審判が下りて、20年続いた小沢問題は最終決着となり得る。
◎政界大連立含みの流動性も:小沢立候補
◎政界大連立含みの流動性も:小沢立候補
「政治とカネ」で3か月前に辞任した鳩山由紀夫と小沢一郎が、今度は手を組んで政権を目指す構図を破廉恥と呼ばずにに何と呼ぶのか。民主党代表選は「脱小沢」対「親小沢」の戦いになるが、政治の本質論から言えば「小沢首相」を認めるかどうかの戦いである。そして「小沢首相」が実現してもしなくても、政界は再編含みの流動性を帯びることになる。小沢が敗れて離党すれば、再編の目となるという見方があるが、強制起訴の可能性がある負け犬と組む政党はない。むしろ消費税をテーマにした民主・自民の大連立を視野に展開する可能性の方が大きい。
憶面もなく鳩山が小沢支持を「応援するのが大義だ」と述べた。大義とは人がふみ行うべき重大な道議であり、とりわけ国に対してなすべき道だが、果たして鳩山は「大義」をふんでいるのだろうか。かって吉田茂が田中角栄を「刑務所の塀の上を歩いているような男だ」と評したが、嫌疑不十分の不起訴が物語るものは、小沢の刑務所の塀の上でよろめいている姿ではないか。「疑わしきは罰せず」の「疑わしき」が首相になることが「大義」と言えるか。おまけに「政治とカネ」の責任を取ってダブル辞任した相手である。自分で勝手に作った「大義」に酔い、支持候補を菅直人から小沢に乗り換える。この人間は「政治家失格」というより「人間失格」としか言いようがない。
その田中もロッキード事件で逮捕後は、勢力拡大は図ったが「首相への復権」はさすがに考えなかった。田中は意外なほど「政治の神聖さ」を意識した政治家であった。その弟子と称する小沢が首相を目指して立候補だ。自民党政権下でも強制起訴で刑事被告人になり得る人物が総裁選に立候補した例を知らない。国民の喝采を受けて成立した民主党政権内でそれが行なわれようとしている。小沢周辺は「たとえ支持率3%のスタートでもいい」とがむしゃらに政権を目指しているというが、朝日新聞の27日付社説ではないが「あいた口がふさがらない」。3年で3人の首相を取り換えたと自民党を批判する政党が、1年間で3人の首相を取り換えて口をぬぐえるのか。
小沢支持グループの意気高揚に反比例して、世論は冷め切っており、むしろ敵に回りつつあることが分かっていない。世論を敵に回しての戦いがどのようなものになるかをこれから思い知ることになる。小沢の前途は進むも地獄引くも地獄でしかない。だいいち「小沢首相」が実現しても予算が組めない。小沢は「政権を取れば財源はなんぼでも出てくる」と述べているが、脳天気もいいところだ。マニフェスト完全実施は不可能なことが、政権担当1年で立証されている。自民党は「小沢首相」の実現を祈るような気持ちで期待している。すぐ解散に追い込めるからだ。
小沢が負けた場合はどうか。離党すればやり手の小沢が政界をかき回して新たな再編を行うという見方が永田町を駆け巡っているが、果たしてそうか。自民党も公明党も小沢の証人喚問を要求しており、いわば主敵だ。その小沢と組んで政権を目指すことはまずあり得ない。むしろ小沢の離党で、クリーンになった過半数割れ民主党と組む流れの方が強まると思う。国民の期待も大きい大連立だ。消費税を否定する小沢は連立の目となりにくい。むしろ消費税に前向きな菅との大連立が俎上(そじょう)に登るだろう。
こうした中で小沢周辺には総理大臣と党代表を別人が担う「総・代分離論」がささやかれているという。自民党でもかって「総・総分離論」があったが実現していない。本心は首相になりたくない小沢の意向を忖度(そんたく)しての秘策のようだ。しかし姑息(こそく)な手段を講じて妥協を図れば、ますます民意は離反することを肝に銘じておくとよい。
◎民主代表選は「菅優勢」の潮流
◎民主代表選は「菅優勢」の潮流
結果として小沢を「進むも地獄」の状況に追い込んだのは、首相・菅直人がしたたかだということだろう。小沢が立候補しても民主党代表選挙は「菅優勢」の流れが濃厚だ。前首相・鳩山由紀夫の仲介が不調に終わったが、勝つことを前提にする菅が、小沢を幹事長や副総理に据えることはあり得ない。せっかく獲得した多数は「脱小沢」路線に依存しており、これを帳消しにすることになるからだ。それにしても強制起訴の可能性がある政治家が立候補するとは自民党時代にもあり得なかったことであり、政治倫理などどこ吹く風の権力闘争が始まろうとしている。
ざっと票読みをすれば菅は衆参議員412人中菅グループ50,前原40,野田30の120人を基盤に鳩山50の大半と旧社会党系30の80%、新人議員157人の過半数を獲得しつつある。グループに属さない約130人や党員・サポーターも世論を見て菅に大半が流れるだろう。民主党の票読みは、グループの結束が緩やかで難しいが、小沢が立っても菅が過半数を獲得する方向が強く、続投が可能となることを意味している。
小沢は鳩山、旧社会党グループなど「反菅パワー」の結集に失敗したのである。うろたえたとしか思えないのが山岡賢次ら旗振り役。26日に出馬を促すとしてきた方針を急きょ変更して、25日に大挙して小沢の部屋に支持議員らを2度にわたって集結させ、「殿、ご出馬を」とやった。これは危機感を背景にした突出に他ならない。小沢が感涙にむせんだのは、もちろん勝負に勝ちそうな雰囲気を感じたというより、悲壮感を背景にしている。深層心理では「城を枕に討ち死に」を感じているに違いない。小沢グループは鳩山グループの菅支持に対して「鳩山グループにはしごを外された」と憤まんやるかたないようだが、もともと鳩山は条件闘争で、はしごなど最初からかかっていなかったのだ。読みが浅いのだ。鳩山が挙党体制の条件付きで菅支持だったため、方向転換した場合、多少の落ちこぼれはあるだろうが、大半は菅支持だろう。
菅は、鳩山の「小沢は脱小沢シフトを心よく思っていない」「小沢氏に協力を求めるならば、真剣に求めることが必要だ。『挙党態勢を築く』と言っても、すぐに小沢氏は『わかりました』とはならない」という説得にも、「小沢さんにどう協力を求めるかは難しい」と答えている。新人議員らにも菅は「挙党一致は大事だが、ときには尖らなくてはならない。挙党体制もバランスを欠いてはいけない」と述べている。これは恐らく鳩山が持ちかけたであろう「小沢幹事長」「小沢副総理」人事への拒絶反応だろう。菅にしてみれば世論の支持で多数派を形成しつつあるという思いがあり、「脱小沢」は世論の支持を失い支持率の急落を招き、本も子もなくなる。加えて前原や野田グループの支持を失いかねないのだ。
こうした事情を背景に菅は安易な妥協を避け、代表選での小沢との激突も辞さない構えを見せているのだ。鳩山も自らのグループの支持というカードを切ってからでは菅への説得力も発揮できないことが分かっていない。こうして小沢は進退ままならぬ袋小路に追い込まれたが、出馬すればやぶれかぶれで展望はない。小沢が立候補しようとしまいと、菅再選への潮流は変わるまい。小沢が本当の政治家なら、ねじれ国会で菅がもっと弱った段階で勝負を掛けるのが本筋だが、満を持すことが出来そうもないようだ。小沢が立候補すれば争点が「政治とカネ」を是認するかどうかと言うところに置かれ、まさに政治道徳・倫理欠如のガチンコとなる。
◎鳩山離反で小沢は“四面楚歌”
◎鳩山離反で小沢は“四面楚歌”
小沢一郎周辺の“擁立戦略”がぼろぼろと崩壊している。小沢自身が民主党代表選挙出馬の前提条件としている「多数派糾合」どころではない。「軽井沢の盟約」だったはずの前首相・鳩山由紀夫が24日夜小沢に直接菅支持を表明、同グループも条件付き菅支持で固まった。菅による小沢チルドレンら新人議員との会合も出席者が156人中半数近くに達し、小沢サイドの締め付けが利いていないことを物語る。実態的には小沢は追い詰められた形であり、窮鼠猫を噛んで「暴走出馬」で党崩壊を招くか、満を持して出馬を見送るかの選択となった。
小沢擁立グループの基本戦略は鳩山、旧民社、旧社会党系グループを糾合して一挙に4グループで主導権を握るところにあった。しかし世間が成功するかに見たのは軽井沢の鳩山研修会まで。以後、糾合戦略は崩壊過程にはいった。24日夜の中山義活氏ら鳩山グループの幹部十数人が集まった会合では「総理大臣が短期間で代わるのは好ましくないという世論が大きい。小沢氏に出馬を求めるべきでない」との意見が大勢を占めたのだ。中山らは旗振り役の山岡賢次に「不出馬」を申し入れるという。これに連動して鳩山自身も小沢不出馬での条件闘争へとかじを切った。激突回避で仲介に動いたのだ。これが小沢の第1の誤算だ。2時間に及ぶ小沢との会談で鳩山は出馬見送りを要請し、条件について話し合った。条件は①人事で官房長官、幹事長、選挙対策委員長などの交代を求める事の是非②政策面ではマニフェスト回帰をはかることなどであったとみられる。小沢は態度を留保している。
さらに小沢チルドレンの締め付けが利かず、菅との会合出席者は既に67人に達している。第2の誤算である。第3の誤算は旧社会党、旧民社党系議員の離反だ。小沢と緊密なはずのグループだが、旧民社党系は小沢支持どころか党副幹事長・吉田治の擁立を検討し始めた。旧社会党系も小沢支持でまとまることは困難となってきている。第4の誤算は世論の厳しい批判にさらされ始めたことだ。世論調査で8割以上が「小沢首相」にネガティブとあっては、世論を気にする民主党の体質とも相まって、支持が広がりようがないのだ。こうして小沢はまさに四面楚歌の中に置かれたのが実態だろう。読売新聞によれば鳩山は「小沢さんを傷つけるわけにはいかない。このまま周りが突っ走って代表選に出馬し、小沢さんが党を出るようなことになれば、民主党は崩壊する」と周囲に語っているという。筆者の論理そのままを鳩山が語っている。山岡らによる擁立の動きを強くけん制しているのだが、その裏にはもう勝負あったという読みがある。要するに立候補の環境は整わないのが実態だ。ここまで来ると小沢はやぶれかぶれの「暴走出馬」をして、たとえ負けても数を誇示して条件闘争を続けるか、手勢を引き連れて離党するか、菅政権がねじれ国会で長く続かないと判断して最終戦を持ち越すかの選択を迫られる形となった。
◎広がりを欠く小沢多数派工作
◎広がりを欠く小沢多数派工作
今朝の新聞で一番面白い記事は、小沢側近の幹事長代理・細野豪志が党員・サポーターなど40人を集めた宮崎市内の会合で「小沢さんに出てもらいたい人は?」と聞くと挙手がゼロだったという話。逆に「菅さんは?」と聞くとほとんどが手を挙げたという。見出しに取っているわけではないが、読売と朝日が報じているから、渦中の人小沢一郎を含めた政界全体が読んでいるに違いない。こういう記事がボディブローのようにインパクトを持つのだ。小沢への党内支持は広がりを欠く現実を象徴している。
これを単に宮崎県だけの現象と受け取ると判断を間違う。筆者は全国津々浦々に行き渡った共通の感情だと思う。現に各種世論調査でも約8割が「小沢不出馬」を求めている。事々左様に世論とかい離しているのが旗振り役の山岡賢次ら小沢側近グループの動きだろう。小沢自身は一言も「出る」とは言っていないのだから、心理的に小沢は旗振り役と世論との間で“またさきの刑”にあっている状況だろう。25日に自身の政治セミナーで 行う講演内容が注目されるところだが、多数派工作は世論を背景にした首相・菅直人が有利に展開、小沢側は広がりがないように見える。
というのもまず小沢チルドレンだが、新人議員157人全員が小沢支持かというとそうではない。いまのところ衆参で菅支持は40人、小沢支持が45人とみる。残り70人前後が草刈り場となる。つまり新人議員をめぐる争奪戦は小沢の地盤を菅が蚕食している構図だ。加えて冒頭挙げた35万人の党員・サポーター票の行方だが、これは世論に左右される要素が大きい。小沢は立つ立たないは別にして、早くから先手を打ってグループの議員らに党員・サポーターの取り込みを指示しているようだが、「挙手ゼロ」のムードではいかんともしがたいところだろう。NHKの調査でも何と民主党支持層の87%が菅続投支持だ。
加えて選挙区に帰れば新人だろうがベテランだろうが、「小沢アレルギー」の洗礼を多かれ少なかれ味わうことになる。民主党のグループは自民党の派閥と違い、団結力は弱い。複数のグループに所属する議員もいるし、どのグループにも属さない議員も多い。要するに浮動票が多いのだ。現に鳩山グループも小沢支持と菅支持に割れている。小沢の数の論理が成り立ちにくい状況が出来つつあるのだ。同盟も支持を鮮明にすれば内部分裂を起こす。したがって民社党系や社会党系も小沢に絞ることが出来るかどうか微妙だ。
こうした中で自ら手を挙げて前首相・鳩山由紀夫が菅・小沢間の調整に乗り出す構えを見せている。鳩山は側近の中山義活が「菅降ろしは絶対に間違いだ。菅首相は党が結束できる条件を出してもらいたい」と述べているように、条件闘争だ。人事での小沢への配慮、政策面での鳩山政治の継承がその条件だろう。民間テレビで「小沢、菅の両氏は2人とも強すぎる。そこでやさしい私が仲介に入る」と語り前向きだ。条件によっては小沢は降ろし、他の候補を立てて代表選の形態を整えるというのが落としどころだろう。
小沢の置かれた立場を冷静に見れば振り上げた拳の落としどころとしては鳩山調整が妥当なところだろうが、問題は小沢が受けるかどうかだ。菅は首相就任早早に京セラ名誉会長・稲盛和夫を急きょ官邸に招いて小沢との会談の斡旋を依頼したが、失敗に終わっている。小沢は意固地になっているのだ。菅が「小沢前幹事長のような人材が必要な場面もある。小沢氏の手腕は高く評価しており、その腕力を活用していきたい」と歯の浮くような誘い水を出しているが、小沢を懐柔できるかどうか。水面下の動きが注目されるところだ。
◎小沢出馬なら民主政権崩壊の危機に突入
◎小沢出馬なら民主政権崩壊の危機に突入
火を見るより明らかなことが小沢一郎擁立グループには分かっていないから、小沢が立候補したらどうなるかを説明しよう。まず「小沢立候補と小沢首相」の実現は民主党政権が発足1年で崩壊過程に突入することを意味する。「小沢首相」では秋の臨時国会は「政治とカネ」で冒頭から紛糾、審議は微動だにしなくなり、結局解散・総選挙に追い込まれる。民主党は大敗して分裂、大勝した自民党が政権に復帰する。民主党員はその覚悟が出来ていているのか。悪いことは言わない全党あげて「殿ご乱心」の小沢立候補だけは諫めるべきだ。
「この人たちはいったい何をやっているのか」と朝日新聞が社説で小沢擁立グループを批判。毎日も「小沢氏擁立論、民主党の勘違いに驚く」と強い調子で非難。読売は先頭切って「小鳩の総括と政策論が先だ」とやっているから、全国紙の社説が出そろった。圧倒的に小沢立候補の“愚痴無知”(愚かで知恵が浅いこと。仏教の三毒の一)を説いている。この論調は民放コメンテーターらによって受け売りされ、マスコミの非難大合唱に発展しつつある。民主党内からもこれ以上は名誉毀損になりかねないほどの表現で有力閣僚や長老が批判を展開。外相・岡田克也は、「起訴される可能性のある方が代表、首相になるということには 違和感を感じている」と刑事被告人が首相になりかねないことを批判。渡部恒三は「残念ながら(小沢君は)諸悪の元凶だから、この人がいなくなればすぐ挙党一致できる。元凶が『挙党一致』などと言うのはこっけいな話だ」と口を極めて非難した。
さらに渡部は造船疑獄で吉田茂が法相・犬養健に指揮権発動を指示して佐藤栄作を救済した例を挙げ 「小沢君が首相になることは指揮権発動どころの比ではない」と指摘した。その意味するところは首相になることにより第5次検察審査会の起訴相当議決から逃れをしようとしているというのだ。首相になれば憲法上刑事訴追を受けないで済むから、そこに逃げ込もうとしているというのだ。与党ですらこのような指摘があるのだから、野党は間違いなく臨時国会で大攻勢に出る。自民党は内心団扇太鼓を叩いて「小沢出馬」の実現を八百万(やおよろず)の神に祈っているに違いない。「小沢首相即政権奪回」となりうるからだ。
では立候補が意味するところをシュミレーションしてみよう。代表選で小沢が負けた場合は、小沢の政治生命は完全に絶たれる。菅による「脱小沢」路線は完結して、幹事長人事での譲歩も不要となる。したがって小沢は旗振り役の山岡賢次ら家子郎等を引き連れて党を割らざるを得なくなる可能性がある。一方、野党が垂涎状態で待ち構える「小沢代表」の実現だ。代表即首相だから、小沢は首相になり得る。しかし首班指名の臨時国会は冒頭から大荒れに荒れる。首班指名に入れるかどうかも分からない。よしんば小沢が首相に指名されても、連日本会議や予算委員会で「政治とカネ」の追及が展開される。結局小沢は解散・総選挙へと追い込まれるのだ。政局を読めないのでは屈指の政治家である山岡が「菅なら解散に追い込まれる」と強調するが、全く逆だ。
そもそも小沢は国会審議に耐えきれるのか。小沢は過去に何度も首相になれるチャンスを自ら忌避してきた。一にかかって自らの健康と心理状況・精神状態が審議に耐えられないと判断したからに他ならない。それが突然今になって「耐えられる」ことになったのだろうか。小沢自身の問題もさることながら、民主党議員はそれでいいのか。支持率10%台で発足する「小沢首相」の下で総選挙を戦う覚悟があるのか。民主党議席は現在の308議席が確実に100議席前後にまで落ち込む事態が想定される。それでも小沢を担ぐのか。小沢擁立の意味を、ここまで読んでいるのか。要するに小沢立候補が民主党を地獄に陥れることを理解しているのか。少なくとも小沢自身は理解しているはずだ。政界長老の塩川正十郎が「キャリヤーの誰よりもある小沢君だ。民主党の相談役的な立場から大人の対応をせよ」と立候補を戒め、小沢側近の藤井裕久が「あの方は冷静で合理的に考える」と不出馬を繰り返すのは、小沢をよく知るからに他ならない。
◎小沢は振り上げた拳をどこに下ろす
◎小沢は振り上げた拳をどこに下ろす
側近藤井が「不出馬」を明言
マスコミは「小沢立候補」でいったん民主党代表選を面白くするが、すぐに水を掛ける。それが習性だからだ。第5検察審議会の議決で「刑事被告人」になり得る小沢一郎を、「首相」にしてよいのかと主張するのが目に見えている。小沢が立候補すれば民主党代表選挙は政策論争など吹き飛び、その争点は「政治とカネ」になる。敗れれば小沢は完全に政治生命を絶たれる。それでも出馬するとすれば、党分裂につながりかねない“小沢暴発”だ。結局焦点は小沢が振り上げた拳をどう下ろすか、菅が条件闘争に乗るかどうかだろう。
マッチポンプ・マスコミの先頭を走るのが読売新聞だ。19日朝「民主代表選、小沢氏が出馬を検討」と最終版で“スクープ”を飛ばし、20日付社説では水を掛けている。他のメディアは全国紙のスクープを憶面もなく追いかけるのが習性のNHKが19日朝のニュースですぐに追随。朝日は夕刊で追いかけ、20日付時時刻刻で「勢いづく小沢待望論」とやった。しかし共同通信は見出しを慎重にとって「小沢氏、代表選出馬の是非検討、情勢見極め最終判断へ」とやり、鳩山研修会についても「小沢氏、挙党態勢訴え 代表選に言及せず」とむしろ懐疑的だ。毎日も主見出しを「小沢氏首相に圧力」と裏を読んだ形にしている。そして火付け役の読売は社説で「小鳩の総括と政策論が先だ」と見出しを取り「小沢氏の場合、政治とカネの問題で検察審査会の審議が継続中だ。代表選に出馬するなら、どうけじめをつけるのか、具体的に語る必要があろう」と小沢を切った。この論調は今後のマスコミの潮流のさきがけとなるものだ。
あえてマスコミの“習性”に言及するのは、論調が「小沢出馬」を左右しうるからだ。小沢はマスコミ論調の堀の深さを読んでいるのだ。しかし立候補すれば小沢は「袋だたき」となる流れが明白だ。担いだ副代表・山岡賢次は昔から政局の読みが恣意的で、まさにひいきの引き倒しを実践することになるのが分かっていない。また鳩山研修会の模様をよく観察すれば、動きの焦点は鳩山側近の中山義活だ。100%鳩山の意を受けて会場をリードし「気合いだ!」と応援団までやった。そのあと何と「菅降ろしは絶対に間違いだ。菅首相は党が結束できる条件を出してもらいたい」と発言したのだ。要するに菅に向けて条件闘争を持ちかけたのだ。鳩山の内意を受けての発言だろう。鳩山は幹事長・枝野幸男を交代させて、党内バランスを取りたいと考えているに違いない。「挙党体制」を主張する意味がそこにある。
小沢が立候補すれば戦いの構図は「首相をころころ代えるな」論対「政治とカネ」論の図式にならざるを得ないだろう。政策棚上げの権力抗争であり、小沢にとってばかりでなく民主党政権にとっても最悪の構図だ。研修会の小沢を観察しても出馬するなら会場に何で45分しかいなかったのか。発言もぱっとしない。小沢は事前に「出ても問題になるし、出なくても問題になる」と漏らしており、自ら進んで出席というわけではなかったようだ。山岡らの小沢出馬説リークは160人の出席を達成すること自体に目的があったのではないかと思えてくる。結束を誇示して切り崩しを避けようというわけだが、鳩山グループは一枚岩ではない。また出席者の中でも副代表・石井一、参院議員会長・輿石東らは菅再選支持だ。無理に小沢に持ってゆこうとすればとても160人は維持出来ずに割れる。
どこも報じていないが小沢側近中の側近・藤井裕久が19日夜のBS番組で菅の対立候補がいないことを指摘して「総理になり得るのはあの人(小沢)しかいない。しかしいろいろな記事が出ているが、お出にならないと思う。だから菅さんの信任投票になるかなと思う」と述べいる。菅の信任投票になるかどうかは別として、小沢の不出馬を断言した側近は初めてだ。小沢がこのままでは城山の西鄕隆盛になってしまうことを懸念しての発言だろう。問題は「出るぞ」の脅しが、読まれてしまって脅しになっていないことであろう。民主党はこの予算編成の重要な時期に紛れもない権力闘争をしているときかと言いたい。
◎山岡主導の「小沢擁立」論は見当違い
◎山岡主導の「小沢擁立」論は見当違い
代表選挙に向けて民主党内のボルテージが上がってきたが、どう見ても見当違いの方向に走っているのが、「反菅直人」の牙城「09公約の原点に返り『国民の生活を守る』集い」だ。小沢一郎擁立を目指して、副代表・山岡賢次が狂ったように旗を振り始め、17日の会合でも「小沢擁立論」が圧倒的だった。倫理観の欠如を政治家に説くのは、八百屋でタコをくれというように無駄だが、「集い」は「脱小沢」を支持する国民世論を「敵」に回しての代表選戦略が成り立たない事が分かっていない。
名指しこそしなかったが、山岡が敬語を使って「19日に具体的候補者をまとめて『ご出馬』いただく」と言うのだから語るに落ちた。その意味は「小沢擁立」しかありえない。この動きをするに当たって、小沢側近の山岡が小沢本人の意向を忖度(そんたく)しないことはあり得ないから、少なくとも山岡は小沢に「私は擁立で走りますから」と事前了承を求めているに違いない。小沢は明解に返事をせずに「うんまあ、むにゃむにゃ」位の返事だったのだろう。これをうけて山岡は数人の議員に「小沢擁立論」をぶつように事前根回しをして、「集い」があたかも擁立論で一致するかのように演出した。しかし小沢が本気かどうかは疑わしい。山岡の一人芝居となりうる要素が山積している。18日付読売新聞によれば小沢グループの党総務委員長・奥村展三も「『小沢氏を出す』という議員は小沢氏の意向を確認したのか。憶測で動いたら小沢氏を傷つけてしまう」と山岡批判を展開している。
「集い」は「短期間で代表が代わるのは好ましくないという俗論に流され、現体制が追認されれば国民の期待を裏切ることになる」という文書をまとめたが、これは180度国民の「期待」を見誤っている。世論調査における菅続投論は60%前後あるのに対して、次の代表に小沢がなることを否定するものは80%に達している。これを山岡は「俗論」と見るのだろうか。小沢擁立となれば、新聞・テレビは確実に「政治とカネ」の問題と連動して「反小沢」で動く。ごうごうたる非難の中で代表選が行われることになるのだ。
よしんばメディアを敵に回しても数の論理で小沢が勝ったとしよう。勝てば即「小沢首相」が実現する。その支持率がどうなるかだが、史上初めて支持率が10%台でスタートを切る首相となる。自民党など野党にとって「小沢首相」ほど有り難い存在は無い。民主党の政治姿勢の根本を突けるからだ。発足早々第5検察審議会が強制起訴を議決すれば、首相は何があっても刑事訴追されないが、政界は上を下への大騒ぎとなり、早期解散か内閣総辞職への流れが圧倒的となる。「集い」が決めた「今の体制では国も国民生活も民主党も成り立たない」という方針がそのまま「小沢首相」へとはね返るのである。要するに「小沢首相」では民主党は地獄へと落ちるのである。「集い」は「非常事態を解決出来るリーダーの擁立」を決めたが、日本の政治にとって「非常事態」とはまさに「小沢首相」であることに気付かない。
小沢はその辺を冷静に読んでいるはずだ。とすれば小沢の山岡の動きを放置する狙いはどこにあるのか。まずは組織防衛だろう。折から菅が小沢チルドレンの切り崩しと見られる動きを開始し、代表選をめぐる多数派工作が本格化し始めた。数を確保しておかなければ、「小沢城」は落城となりかねない。組織を固めなければ代理候補を立てるにも立てられないし、人事での条件闘争もできまい。将来民主党を割るにしても、数がなければ動けない。鳩山グループとの連携も視野にあるが、鳩山由紀夫は2度にわたって菅続投支持を表明しており、19日の軽井沢研修会がどうなるか見ものだ。少なくとも鳩山は「小沢擁立」に直結させるわけにはゆくまい。
◎超党派路線へ“米倉調停”浮上
◎超党派路線へ“米倉調停”浮上
民主党の日本経団連への大接近は、野党から「モラトリアム(一時停止)状態」と揶揄(やゆ)される菅政権にとって近来にないビッグヒットだ。経団連会長・米倉弘昌と首相・菅直人は親しい関係にあり、重要課題で「菅・米倉・自民」の橋渡しが可能となった。今後消費税増税・法人税減税など税財政改革で超党派の合意が必要となる中で“米倉調停”が機能しそうな状況だ。ここでも脱小沢が実現したが、党内には波紋が生じよう。
経団連と民主党は鳩山政権発足以来ぎくしゃくした状態が続いていた。とりわけ御手洗富士夫時代には、偽装請負問題で枝野幸男が先頭になって追及、参考人招致まで求め最悪の状態であった。ところが、米倉と野党時代から定期会合を持つなど親しい関係にある菅が首相に就くと、関係は一変。米倉は政権成立早早の正副会長会議で菅政権支持を決定、米倉が記者会見で支持を表明している。期せずして会長交代と首相交代が相乗効果を生んだ形となった。
経団連側には国家財政が危機的状況にある中、「衆参ねじれ国会で与野党対立が激化すれば抜き差しならない状態に陥る」(米倉)との危機感がある。米倉は党派を超えて処理できるものは処理するという政治家の意識改革が不可欠と判断しているようだ。経団連は今後9月初旬までに自民党とも政策対話を開催する方針である。米倉は消費税増税を含めた財政再建や自民党も主張している法人税率引き下げ問題で太筆書きの合意を探ることになろう。また鳩山の思いつきで国際公約になってしまった温室効果ガスの25%削減問題などでも調整を進めることになろう。5日の会合には幹事長・枝野幸男や政調会長・玄葉光一郎が出席。経団連は消費税を含む税・財政・社会保障の一体改革を超党派で進めるよう要望。民主党側は今秋から検討する考えを示した。
大接近が可能になった背景には菅の現実路線で、民主党の左傾化路線が修正されつつあることが大きい。労組、消費者重視の左翼主導型政治基調が崩れつつあり、企業側とも話の通ずる雰囲気が生じているのである。しかし菅の再選路線にプラスの効果をもたらすかどうかは微妙だ。というのも党内左派重視の小沢が経団連とは距離を置いており、既に民主党政策調査会では小沢グループから経団連との接近をけん制する発言が出されている。「財界寄りでは自民党政権と変わらない」というのである。小沢グループは消費税増税反対を代表選のテーマに掲げる構えであり、執行部の経団連接近が路線上の対立を惹起(じゃっき)する可能性も否定できない。
【筆者より】夏休みのため二週間休載とします。大きな政治ニュースはフォローします。
◎軽井沢での「小・鳩薩長同盟」に動き急
◎軽井沢での「小・鳩薩長同盟」に動き急
反小沢7奉行に対抗して、民主党内に小沢寄りの「7人の侍」ができ、首相・菅直人に対抗馬を立てることで一致した。更なる反菅候補も模索する流れが生じている。元幹事長・小沢一郎は前首相・鳩山由紀夫の軽井沢研修会に出席する方向だという。どうも小沢は代表選挙を複数の候補による乱戦に持ち込みたい様子だ。狙いは菅を1回目の投票で過半数に達せさせずに、決選投票に持ち込み逆転勝利を狙っているようだ。
菅、小沢両陣営の、「票固め」作戦を分析すると、菅は閣僚などの支持表明が多いものの上滑り気味にみえる。親菅のはずの「リベラルの会」が4日、菅支持でまとめられなかったことが象徴している。菅はマスコミなどの「ころころ首相を変えるな」論に安住しているのかもしれない。脇が甘いのだ。それに比べると小沢サイドはサポーター確保でノルマを課するなど具体的だ。4日の前参院幹事長・高嶋良充を囲む会で中堅が集まり「7人の侍」と命名された。会合では「この中から2人くらい擁立してはどうか」という発言があったという。また小沢側近の高嶋は「代表選に勝利するには『薩長同盟』をつくることだ」と述べたという。言うまでもなく小沢・鳩山枢軸の復活である。両者合わせれば200人に達する数を確保出来る。
こうした中で共同通信によると、今月19日に長野県軽井沢町で開かれる鳩山グループの研修会に、小沢が側近議員らとともに参加する方向で調整を進めているという。鳩山の招待に対し、小沢は本人を含め約20人規模の参加を検討しているという。まさに軽井沢で薩長同盟が成立しうる情勢だ。鳩山は4日も「大事なことは団結力を示すことだ。国益を考えると、首相がころころと代わってしまうのは望ましくない」と“ころころ論”を展開したが、この人物の発言は信用出来ない。再選支持を表明する一方で、複数候補が立候補するのが望ましいとの立場であり、いつでも変わりうる。
小沢はやはり党員・サポーターが参加した2002年の代表選挙で、菅も鳩山も過半数に達せず、代表選規定に基づき決選投票が行われ、鳩山が勝ったことを念頭に置いている気配が濃厚だ。2,3位連合は自民党の1956年臨時党大会で鳩山一郎総裁の後継をめぐり石橋湛山(通産相)・石井光次郎(総務会長)の2,3位連合が1位の岸信介(幹事長)・を破って石橋内閣を成立させた例が有名だ。過半数に達しなければ1位にでも2位にでも他の候補が上位者になだれ込めば勝負が決まる。小沢はそこまで考えているに違いない。だから複数候補による乱戦を目指しているのだ。そのカギを握るのが「薩長同盟」であるのは言うまでもない。
◎月に1度の俳句自慢
7月の入選句は3句にとどまった。
61産経俳壇寺井谷子選
傘傾げ江戸の名残の路地の梅雨
62産経俳壇寺井谷子選
携帯も吾も圏外夏の星
63産経俳壇寺井谷子選
髪濡れてよりクロールで泳ぐかな
◎小沢による反菅代理戦争の様相:民主代表選
◎小沢による反菅代理戦争の様相:民主代表選
代表選挙に向けて民主党内の鼎(かなえ)が煮えたぎってきた。複雑な動きを整理すると、小沢一郎が影で糸を操り「反菅代理戦争」を展開してゆく流れが見えてくる。その中核は小沢側近で前国対委員長・山岡賢次らが作る「09マニフェストの原点に返り『国民の生活を守る』集い」だ。反菅の牙城になりそうだ。焦点は事実上手を挙げた海江田万里に候補を絞りきれるかどうかだろう。
前首相・鳩山由紀夫の政治家としての力量を改めて問うのは文章の無駄だが、「どうなっているの」と問いたいのはそのグループ内のうごめき。鳩山自身が菅支持を表明したにもかかわらず、立候補に向けて手を挙げかかっている候補が3人もいる。海江田万里が旧社会党系も含めた会合を開けば、環境相・小沢鋭仁が勉強会を発足、国対委員長・樽床伸二も近く自らを会長とするグループを発足させる。50人のグループで3人も候補が出かねない情勢だ。おまけに反菅の牙城の「集い」に側近の平野博文を参加させている。
この中でトップを走っているのが小沢とも近い海江田だろう。小沢のアドバイスもあってか狙い所も急所を突いている。「小沢・鳩山・旧社会党」連合を目指しているからだ。会合の場所も旧社会党系の衆院議長・横路孝弘が議長公邸を提供している。「小・鳩・社」連合となれば合計240人となり、民主党の国会議員413人の過半数を軽く突破できる。もっとも民主党のグループほど数があてにならないものはない。結束が緩やかで、世論の動向などに動かされやすいからだ。加えて旧民社党系も独自候補の擁立を決めた。
こうした候補らに小沢はどういう方針で臨んでいるかと言えば、反菅なら全員に対して当面支援しそうなそぶりを見せている。各候補の会合にそれぞれ議員らを参加させ、“けしかけ”ているのだ。明かに小沢自身は立候補しないで反菅代理戦争を目指しているのである。そして一番ぎらつく動きが冒頭挙げた山岡らによる「集い」だ。旗印は「マニフェスト死守」だ。菅が脱マニフェストの現実路線を走ろうとしているのに対して消費税増税に否定的方向性の強いマニフェスト回帰を訴え、設立趣意書で「民主党はこのままでは次の総選挙で政権を失う」と危機感を強調する戦術だ。路線論争を「マニフェスト死守派」対「現実路線派」の戦いに絞ろうとしているわけだが、この戦術もうまいやりかただ。6日の会合の動向が注目されるところだ。
こうした情勢から代表選候補は菅一人だけという状況はなくなりつつあり、複数候補が立つ形にならざるを得まい。問題は小沢が反菅で候補を一本化できるかどうかだ。一本化出来ればいい勝負になるだろうが、候補者乱立では票の分散で菅が有利となる。
◎首相は予算委を個利個略に使うな
◎首相は予算委を個利個略に使うな
野党自民党が世論を意識した「世論目線」なら、首相・菅直人は死んだふりの「党内目線」。これでは予算委論議は噛み合うはずもない。朝日新聞は社説で「与野党の姿、新たな兆し」と手放しで歓迎しているが、甘くて読んでいられない。根底に解散総選挙への潮流を意識した鋭い対立があるのを見逃してはならない。自民党は相手を引き寄せた上で腰に載せて投げる柔道の“釣込み腰”戦術と見た。
たしかに自民党の質問は総裁・谷垣禎一の「日銀総裁が空席になるような無茶なことを自民党は決してしない」とか、政調会長・石破茂の「罵倒されても普天間移転を実現する決意があれば国益のために全力で支える」といった発言は一見新鮮である。ねじれ国会における与野党の接点ができたようにも受け取れ、朝日が「きのうのようなような論戦の有り様が定着すれば、政策ごとに多数派を形成する土壌も整う。歓迎である」と書くのも無理はない。しかし社説は本筋を見ていない。むしろ国会論議を“誘導”する意図が濃厚だ。
なぜなら予算編成一つ取っても、民主党マニフェストをめぐる与野党対立軸はいささかも解消していない。谷垣が「民主党の衆院選マニフェストは履行不能だ。マニフェストの欺(ぎ)瞞(まん)を解消する手だてはただ一つ。解散総選挙だ」と迫ったのに対して、菅は「マニフェストは7割達成した」と反論「この形で政権運営をさせてもらいたい」と拒絶している。一方で菅は11年度予算編成に関し「場合によっては野党の意見も入れて実現したい」と述べているが、子ども手当などを予定通り推進するのであれば、野党の意見など取り入れないと宣言しているのに他ならない。加えて消費税論議も菅の後退が著しかった。取って付けたように菅は「財政再建は一歩も引かない」と述べたが、選挙中に「消費税10%を公約と受け取ってもらって結構」と述べたことは忘れたかのように「党と税調で検討」を繰り返した。谷垣の「社会保障目的税にすべき」との主張にも曖昧模糊(あいまいもこ)とした答弁に終始している。
毎日が見出しに「首相平身低頭」と取るのも無理はない。
なぜ平身低頭かと言えば、菅には9月14日の代表選挙のことしか頭にないのだ。党内、とりわけ消費税を政争の具にしたがっている小沢グループを刺激したくないの一点に尽きる。誰に対して低姿勢なのかと言えば小沢に対して低姿勢であることを見逃してはならない。菅の予算委答弁を批判するなら、「国会審議を党内抗争に利用するな」が正解だ。自民党の一見柔軟姿勢に見える追及も、参院選勝利のかさにかかった追及がマスコミの批判を受けることを計算に入れたものにほかならない。初日の予算委質疑の根底には早期解散で政権奪回を目指す自民党と、党内意識の再選路線を模索する菅の思惑が底流にあって、依然党利党略、個利個略の姿が浮かび上がる。
◎民主代表選、菅再選軸に展開へ
◎民主代表選、菅再選軸に展開へ
鳩山・小沢の連袂(れんぺい)辞職を半年前の正月に言い当てた“重圧”が、筆者を「1か月半後の民主党代表選を読め」と攻め立てる。まだどこも書いていないのにである。しかし、「早見え」が習い性であるから困るのだ。おまけに人が良いと来ているから、ついつい言ってしまうのだ。だから言ってしまおう。方向は「民主代表選、菅再選軸に展開へ」だ。理由は直感だが理屈は後から貨車で来る。これが政局の読み方の本筋でもある。
はは~ん、小沢という男はこういう発想をするのかという話が1日付日経の元首相・森喜朗とのインタビューに出ている。07年の大連立騒動の際、小沢が森に「おれはいま、マジックが効いていて民主党内から選挙の神様といわれている。いまなら党内はおれの言うことを聞く。マジックが切れたらみんなおれに反抗するから話を急ごう」と述べたというのだ。さすがに小沢は自分自身を客観的に見られる眼を持っている。ということは、現段階の自分自身も読み切っていると言うことだろう。
どう読み切っているかというと「おれはいま、マジックが切れて党内から選挙の貧乏神といわれている。いまはもう党内はおれの言うことを聞かない。おれに反抗するから立候補はよそう」であろう。笑ってはいけない、これが政局の読みの基本なのだ。長老渡部恒三は力はないが政局の読みは確かだ。渡部はTBS番組で「小沢君にかって、こそこそやるより堂々と立候補せよと言ったが、今は違う。立候補できない要件があるようなので、あまり言ってはかわいそうだ」と述べたのだ。いうまでもなく渡部は第5検察審査会が代表選後に議決し、強制起訴になった場合の大混乱を想定している。筆者が書いたとおり、小沢が代表選に勝てば首相になってしまい、その首相が起訴相当となれば、憲法上刑事訴追は受けないにしても、民主党は内閣総辞職か解散を迫られる。308議席が50議席に転落するのである。
この政局のくびきを小沢が抜けるのは不可能に近い。だから渡部も、同席した武村正義も「小沢君は出る気ない。出られる状況ではない」という判断で一致したのだ。それでは政局はどう展開するかだが、両院議員総会は小沢系の“陣笠”の発言だけで、ガス抜きして乗り切った。今日からの予算委員会は連日菅がぼこぼこにされる運命にある。消費税増税、政治とカネ、参院選に負けた政権の正統性、マニフェストと予算編成などテーマに事欠かない。ここでよほどの致命的失言をすれば別だが、4日間我慢すればいいのだから時間切れで乗り切るだろう。そうすると政局は代表選一色となる。
小沢グループは海江田万里が近く党所属の国会議員に呼びかけて、勉強会を開くし、先の代表選挙に立候補した国対委員長・樽床伸二も、近くグループの会合を開く。しかし選挙戦は菅が先行している。支持表明は渡部、鳩山由紀夫、岡田克也、前原誠司らが行っており、野田佳彦のグループも支持の方向だ。参院選後「小沢に会いたい」と言っていた菅も「会いたい」と言わなくなった。自信が出て来たのであろう。予算委でよほどの大ポカ発言でもしない限り、菅優位のまま推移するだろう。複数立候補なら菅が必勝だろう。問題は小沢陣営が海江田に絞った場合だ。小沢と鳩山両グループに小沢と良好な旧社会党グループが同調すればいい勝負になるかも知れないが、菅が抜けるのではないか。辛勝の場合や小沢サイドが一定の勢力を確保した場合、菅は小沢勢力を無視できず、幹事長・枝野幸男を更迭せざるを得なくなる可能性が大




















