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◎「米中貿易戦争」安倍訪米の課題に浮上

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◎「米中貿易戦争」安倍訪米の課題に浮上
 日本経済への影響不可避
 首相財政出動も考慮か
 1930年代の米保護主義が世界恐慌を招いた歴史の教訓を無視するかのように、米大統領トランプが保護主義路線を邁進する。国際経済は「混乱の時代」へと突入しかねない雲行きであり、混乱は外需に頼る日本経済への影響が大きい。首相・安倍晋三は17日からのトランプとの会談で貿易戦争の防止策を語り合う必要が急浮上してきた。北朝鮮問題も重要だが、比重は貿易戦争の回避策も勝るとも劣らなくなった。首相は9日、官邸で日銀総裁黒田東彦や関係閣僚と会談、「日本経済の正念場だ。あらゆる施策を総動員する」と語り、積極的な財政出動も排除しない姿勢を打ち出した。 
 米中貿易戦争は段階を追って深刻さを増している。3月の第1ラウンドはトランプが鉄鋼・アルミに高関税を課すという異例の輸入制限措置を発動して始まった。中国はちゅうちょせずに豚肉など120品目に高関税を課した。4月4日の第2ラウンドは知的財産を侵害しているとしてトランプは航空機など1300品目に25%の関税。これに対して中国は大豆など126品目に25%の追加関税を課すという報復の準備に入った。第3ラウンドは米国が航空機、自動車、産業用ロボット、ダイオード、食器洗い機への課税を検討。中国がトウモロコシ、小麦、牛肉、ウイスキーなどの品目を挙げている。とどまるところを知らない様相を帯びているが、さらに中国は今後金融の解放から米国を締め出し、購入した130兆円の米債券を売りに出すことなどをほのめかしている。
 トランプは中国の対応を「中国は不正行為を是正もせずに、我が国の農家や製造業に危害を加えることを選択した」と発言した。しかし、なぜ今この時の攻勢かと言えば、トランプ政権の信任投票の意味合いが濃い秋の中間選挙を意識しているに違いない。トランプの支持率は歴代大統領でも最低の30%台を低迷してきたが、このところ40%台を回復、50%の調査もある。この流れを維持強化する戦略であろう。これに対して李克強首相は9日、日本国際貿易促進協会の河野洋平会長との会談で、「貿易戦争ではなく交渉すべきだ。われわれは断固、多国間貿易主義を守っていく」とトランプ米政権を批判した。
 米ニューズウイーク誌は米中摩擦が「日本にとって漁夫の利か」と題する論文を掲載した。中国への制裁措置は日本の製品が米国市場でシェアを拡大する可能性があると指摘する。米国が公表した1300種類の中国製品に対する追加関税品目に25%の関税が実際に課せられると日本などは価格競争で有利に立って、対米輸出が大幅に増加するというのだ。しかし事はそう簡単ではない。
 確かに日本はアベノミクスが一定の成果を上げており、このところの経済は確実に良くなっている。今後は2019年10月に予定している消費税率の10%への引き上げが課題だが、過去2回にわたる引き上げはいずれも景気を悪化させた。今回は2000年オリンピックがあるから、一時は落ち込んでもまた盛り上げるという見方も濃厚だが、アベノミクスの3本の矢を重視してとりわけ3本目の戦略である成長戦略に力を入れる必要が出てくることは間違いない。
 その成長戦略の面前に立ちはだかるのが米中貿易戦争なのだ。専門家によると貿易戦争が世界中に広がり、米国、ヨーロッパ、中国が全部10%の関税をかける場合、世界の国内総生産は1.4%ダウンし、総額100兆円以上急落するといわれる。日本は壊滅的な打撃を被るのだ。最悪のケースを想定すれば日本の国内総生産が1%以上落ちるという。それは“悪夢のけース”である。さらに重要なのは、米国の対中貿易と言っても日本が深く関わっている事実を忘れてはならない。米国の農産品を世界市場に売り出しているのは日本の商社であり、中国で製品を生産しているのは日本の企業であるケースも多い。
 米中貿易戦争が抜き差しならないのは、米中両国の対応が硬直している状態であることだ。米国は明らかに保護貿易主義への回帰であり、中国は欧米や日本とは異なる「国家資本主義」的なやり方で対応しようとしている。まさに水と油の対立であり、溶け合うことは極めて難しいまま当分推移するだろう。こうした中、トランプ大統領は8日、ツイッターに「中国と貿易をめぐる論争で何が起きようと、習近平国家主席と私は常に友人だろう」と書き込んだ。加えて、「中国は貿易の障壁を撤廃するだろう。なぜなら、それが正しいことだからだ」と指摘、「知的財産についても取り引きが成立するだろう」として、不公正な貿易の是正に自信を見せた。当分トランプは硬軟両様の構えを見せるとともに、基本的には米中経済戦争に勝つため、ドラスティックな貿易政策を維持し、中国を交渉の場にひざまずかせようとするだろう。しかし、国内の政治基盤を完全に固めた習近平がやすやすと屈するとも思えない。
 日本の対応は環太平洋経済連携協定(TPP)11への動きなど自由貿易を拡大し、各国の保護貿易を阻止することが大切だろう。もともとTPPは対中戦略の側面が大きかった。米国が中国と対決するなら、米国に参加を改めて呼びかけることも可能ではないか。安倍が訪米でトランプに気付かせることが必要であろう。
 ◎俳談
【言い過ぎない】
芭蕉の弟子服部土芳(はっとりとほう)が、芭蕉の教えを発言集の形でまとめた本に三冊子(さんぞうし)がある。「白冊子」「赤冊子」「忘れ水(黒冊子)」の3部からなり、蕉風俳句を忠実かつ体系的に伝えようとしている。この中で芭蕉は言いすぎないことの重要性を説いている。<下臥(したぶし)につかみ分けばやいとざくら>という句について言い過ぎだといっている。句意は、「風にゆれる枝の下に臥して摑みわけたいくらいの糸桜である」と言ったものだ。これについて去来が「糸桜が華やかに咲き誇ったさまを言い尽くしたものですねぇ」と水を向けると芭蕉は、「言ひおほせて何かある」と答えたのだ。「俳句の世界ではものごと言い尽くしてしまえば、後に何が残ろうか」と諭したのだ。まさに作句の急所をついた発言として未だに語り継がれている言葉だ。
 翻って初心者の句を見ると言い過ぎ句、山盛り句が一杯である。俳句は短い中でいかに余韻をもたらすかが最大のポイントである。明白すぎる説明はせず、余韻を残すのだ。
打水の最初の客となりにけり 読売俳壇入選
掲句は料亭の前に打水がしてある情景を詠んで、すがすがしさを狙った。打水といえばいまは料亭くらいのものであり、「料亭の打水」と言ってはぶちこわしとなる。日本の文学は明白すぎる説明はせず、行間を読むことが読み手に求められてきた。作者はいかに省略するかに腐心する。とりわけ俳句は省略の文学である。
『蕉門俳諧語録』でも、芭蕉は「句は七八分にいひつめてはけやけし(くどい)。五六分の句はいつまでも聞きあかず」と述べている。いかに五六分の句を作るかに腐心しなければなるまい。