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◎俳談

◎俳談
【語彙を蓄える】
 俳句の根幹は言うまでもなく言葉である。言葉の善し悪し、その用い方で一句の良否が決まる。語彙が豊富なほど多様な表現が可能となる。
  語彙を豊富にするにはどうするか。言葉を貯金することである。貯金するためには稼がなければならないが、いかに稼ぐか。丹念にメモすることである。それも俳句モードでメモする。思いついた言葉や、テレビドラマでも詩歌でも歌謡曲でも目に見え耳に聞くものすべてをメモする。そして新しい言葉を発見することである。
  この貯金した言葉を時々見ているといろいろな想像が湧いてくる。
 例えば「四角のビル」という、人間の疎外のような言葉をテレビの哲学講座で蓄えたとする。
爽やかや四角のビルより退職す 東京俳壇1席
という形になる。
「嵌め殺し窓」を貯金したとしよう。おりから梅雨の入りの走り梅雨である。空想をふくらます。そんなときテレビにお寺が映った。
  禅寺の嵌め殺し窓走り梅雨
となる。
 「初夏を吐く」という詩的な言葉を思いついた。大事に熟成して
 初夏を吐く浅蜊蛤海坊主
 「楽剃り」。信仰心からでなく軽い気持ちで剃髪することである。
 楽剃りのご隠居目立つ夏祭り
 と言った具合だ。言葉を大切に貯金して、これをいつか取り出そう。
  ただ言葉の発見は新鮮でないといけない。手垢のついたことばなどいくら貯金しても無駄だ。
 例えば「カンナ燃ゆ」。カンナは常に燃えている。これを詩的と思うようでは俳句を辞めた方がいい。詩の世界ではむしろカンナは凍らせた方が新鮮だ。