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◎俳談

◎俳談
【鍋の句の最高峰】
冬は何といっても鍋だ。筆者の出身の三河地方には煮味噌という鍋がある。鰹節だしをとって、八丁味噌で貝や肉類、野菜を煮込んで食べるが、これが鍋の王者だろう。昔からあり、三河武士の活力源であった。司馬遼太郎によると信長、秀吉、家康もその軍団もみな八丁味噌で天下を取った。煮込むほどうまくなるから通は最後に食べる。
鮟鱇鍋も寒波の襲来と共にうまくなる。
みちのくの言葉短し鮟鱇鍋 毎日俳壇入選
東北人は多くを語らない。語らなくても暖かい。
高価さにおいてはふぐちりとスッポン鍋だ。一連のコースの最後に出てくるから、勘定書きを見ると目の玉が飛び出る。
ふぐちりや東京タワーを遠望す 東京俳壇2席
それでも時には食べることはある。
鍋の句は人生を絡めると深みが出る。
寄せ鍋の湯気に歳月浮かびけり 杉の子
しんみりとした感じを出した。
そして鍋の句は久保田万太郎だ。
浅草駒形どじょうの久保田万太郎の碑は「御輿まつまのどぜう汁すすりけり」。雷門生まれの江戸っ子の粋が滲み出ている。しかし何といっても最高峰は
湯豆腐やいのちの果てのうすあかり
だろう。急逝する五週間前に、忘年句会で詠んだ。妻にも子にも先立たれ、孤独な晩年を過ごした万太郎の人生の寂寥感が漂っている。読者は年を重ねるにつれてこの句の深い味わいが増してくるのだ。