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◎維新の会へ“ただ乗り”狙う「後期高齢新党」

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◎維新の会へ“ただ乗り”狙う「後期高齢新党」
 新党というとわくわく感が多少なりとも生ずるものだが、「いや~な感じ」が先行するのはなぜだろうか。ちょっと考えてみれば分かることだ。老獪(ろうかい)政治家による、“あやかり商法”が根底にあるからだ。「石原新党」は、自らの人気・力量に自信のない後期高齢政治家による「大阪維新の会」への「薩摩守忠則」(ただ乗り)が本質だ。離党へとふらつく民主党若手への誘い水でもある。そこには理念も定見もなく、「政局にらみの政局作り」だけが目立つのだ。いわば政策もなしに野合を目指す老害新党だ。
 マスコミは朝日が「亀井静香の流す怪情報」(石原慎太郎)に乗せられたのか、派手に「3月新党」を報じたが、永田町は総じて「本当に出来るのかいな」と懐疑的だ。しかし評論家の中には、岩見隆夫のように「細川新党だって第5党党首が首相になった」と「石原首相」を手放しで期待する発言をテレビでしている向きがいる。しかし、一応熊本県知事時代からカリスマのあった細川護煕と石原は全く異なる。石原が都知事になって何をやったか。目立ったのは“文士の商法”で開業した「新銀行東京」を、わずか3年で1000億円の累積赤字を抱え、事実上破たんさせた都政史上にのこる大失政だけだ。都民一人当たり3000円に相当する400億円もの追加投資でしのいでいるが、これで国政をやられてはたまったものではあるまい。新銀行東京問題では石原の責任はうやむやになったままだ。国政なら確実に内閣不信任案可決だろう。
 その石原を自民党福田派時代からの付き合いで担ぎ出そうとしているのが国民新党代表・亀井静香だが、背景には国民新党の埋没という危機感がある。看板の郵政改革法案は成立のめども立っていないし、首相・野田佳彦は消費増税路線一辺倒で、亀井が反対を唱え続ければ連立解消も辞さぬ構えだろう。党内でも亀井の新党への動きにに「オオカミ老人がまたか」と反発が生じており、亀井は四面楚歌が実情なのだ。平沼赳夫にいたっては、第3極になるはずだった「立ち上がれ日本」がなかなか立ち上がらず、存在感が希薄そのものだ。この旧福田派の3人は石原が79歳、亀井が75歳、平沼が72歳で、平均年齢74.33歳。年が若ければいいと言うものでもないが、この激動期に「後期高齢新党」では、夢も希望もあるまい。焦点の消費増税についても石原が推進、亀井が絶対反対ではまとまるわけがない。
 その“おれがおれが老人”たちの狙いは、関西での「橋下ブームだ」。石原は2月に橋下と会談を予定しているが、問題は“賢い”橋下が老獪の説得に乗るかどうかだ。石原は出来れば「首相の座」狙いで、橋下の力を“活用”しようと考えているに違いない。石原が3月の新党結成を断言しないのは橋下が乗るかどうか分からないからだ。首相・野田佳彦が橋下との連携を探る動きについて「改革者として注目するところ大だが、シロアリがたかることがないよう祈ってやまない」と痛烈な一撃を食わせた。見事なタイミングでもあった。シロアリが誰を指すのかだが、シロアリには2種類ある。後期高齢シロアリと、こまっちゃくれシロアリだ。こまっちゃくれシロアリのみんなの党代表・渡辺喜美は「シロアリがみんなの党のことを言っているなら問責に値する」と激昂したが、誰がみてもみんなの党を指しているのだから、問責決議に同調する野党などいない。
 後期高齢シロアリが舌なめずりしている42歳の大阪市長・橋下は「この世界は気を許したら本当に食われちゃう。首相自らがメッセージを出してくれるなんてめちゃくちゃうれしい。シロアリに食われないよう気をつけます」と、素直に警戒感をあらわにしている。維新の会そのものが海のものとも山のものともつかない一地方の政治現象であり、これを見極められないから、中央政界が“念のために”ちやほやしているのである。橋下も利口な男だからその分限をわきまえているのだろう。石原の接近は橋下を担ぐと言うより、まず自らが最後の死に花を咲かせたいという飽くなき権力追及意欲が根源にある。自治体の長を長くやっていると、どうしても“裸の王様”になるのだ。橋下が自分の中央政界への転身を否定していることが、亀井や石原の狙いでもある。
 要するに橋下は、自分の人気を活用しようとする中央政界の年寄りの冷や水というか火遊びに踊らされてはなるまい。このままでは理念なき野合につき合わされることになる。問題は反野田姿勢を強めている小沢一郎が乗るかどうかだが、石原新党も維新の会も“小沢おんぶお化け”は敬遠だろう。これもイメージが悪すぎて新党という感じではない。当面小沢は若手の離党引き留め対策で大変だろう。


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◎「強弁谷垣」対「野田詭弁」は大局観で野田の勝ち

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◎「強弁谷垣」対「野田詭弁」は大局観で野田の勝ち
 消費税国会は抜き差しならぬ与野党党首のガチンコ勝負で幕を開けた。代表質問での応酬は「強弁谷垣」対「野田詭弁(きべん)」の戦いであった。もっとも、何が何でも「解散・総選挙」に結びつけようとする自民党総裁・谷垣禎一が、大局を理路整然と見誤っている分だけ、首相・野田佳彦に歩があった。7対3で野田が勝った感じだ。
 総じて谷垣の質問は大局観に欠け、重箱の隅を突っつく枝葉末節型に終始した。谷垣は約40分間の質問のほとんどを、社会保障と税の一体改革に費やし、民主党の「マニフェスト違反」を9回も繰り返した。議会の同意がない国王の課税を禁じた英国の大憲章・マグナカルタまで持ち出して追及。「マニフェスト違反でないという弁明を真に受け止める有権者は皆無」と決めつけた。明らかに政局化を意識して、はやりにはやる姿勢だった。谷垣のマニフェスト違反の指摘は、確かにもっともだが、もっともすぎて食傷気味になることも否定出来ない。もう国民は民主党のマニフェストが破たんしていることは十分承知であり、谷垣のように石を見て「これは石だ」と指摘されても、「またか」と思うだけだ。マニフェスト違反は有権者の選挙判断に委ねてしかるべきであろう。
 そしてなぜ谷垣が理路整然と間違っているかといえば、消費増税問題の根幹を見れば、歴代自民党政権が1000兆円にものぼる借金を作ったことに大半の責任がある。それゆえに先の参院選挙で10%増税への選挙公約を掲げたのは自民党自身ではなかったか。むしろ自民党は自ら消費増税法案を議員立法で国会に提出して、国民にその是非を問うくらいの姿勢があってもおかしくない。自分が主張すれば正しくて、現政権が主張すれば「マニフェスト違反」と非難する。この矛盾の“急所”がある限り谷垣は何を言っても、「政局化」のそしりを受けて当然なのだ。マグナカルタも国王の恣意的な課税を禁じたのであり、むしろ議会が課税権を獲得したのだ。増税不可避の認識では議会が事実上一致しているのだから、ここを推進のチャンスととらえるべきなのだ。いくら「マニフェスト違反は明らかだ。民主党政権に提出の権限は与えられていない」と谷垣が声高に断定しても、うつろに響くだけだ。手続き論にこだわり過ぎて決定打に欠けた代表質問だった。
 一方野田の答弁も重要ポイントで矛盾撞着が見られる。マニフェスト違反でないとする根拠について「消費税の第一段の引き上げは、2014年4月であり、これは現在の衆院議員の任期終了後であり、国民に対する裏切りという指摘は当たらない」とした。任期は13年8月29日だから、任期中は引き上げを行わないと言う公約に違反しないというのである。しかし、これはまぎれもない詭弁だ。有権者は「4年の任期中に引き上げない」を実施時期と受け取っただろうか。そうではあるまい。むしろ言葉通りに民主党が4年間は引き上げる「行動に出ない」と受け取ったはずだ。あきらかに有権者に対する裏切りだ。野田はこの場面では率直に公約違反を認め、陳謝した上で、増税の必要を説く謙虚さが必要だった。
 初戦から激突の火花が散った形だが、なりふり構わぬ谷垣の解散追い込み路線は揺らぐことはあるまい。党内的にも落選組に突き上げられて、ここで解散を勝ち取らなければ、自らの立場を危うくする。一方で野田の「やり抜くべきことをやり抜いたうえで国民の判断を仰ぎたい」という姿勢は、解散・総選挙を消費増税の関連法案成立後に設定していることになる。このままでは消費増税法案どころか、予算関連法案の成立も危惧(きぐ)される事態だ。内閣不信任案や問責決議案も俎上(そじょう)に上るだろう。こうしてまさに「視界ゼロ」の激突から何が生まれるかだが、焦点は舞台裏がどう動くかに絞られてくるだろう。自民党側は元首相・森喜朗、副総裁・大島理森、民主党側は政策調査会長代行・仙谷由人、副総理・岡田克也ら表だって目立っていない面々が、その人脈を通じて落としどころを「話し合い解散」に置いて動くであろうことは、十分に予想されるところだ。


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◎小泉ジュニアは自民党の希望の星か?

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◎小泉ジュニアは自民党の希望の星か?
 辛気くさい老齢政治家が多い自民党で希望の星扱いされているのが、青年局長の衆院議員・小泉進次郎(神奈川11区・当選1回・30歳)だ。歯切れのいいコメントがテレビうけするのか、しょっちゅう出てくる。それも父親純一郎に勝るとも劣らない説得力がある。その純一郎は離婚して、クレイマークレイマーで進次郞を育てるに当たって、言葉使いのイロハから教育した。おそらく政治家としての素質を見抜き、「言葉が命」の政治家稼業の基礎をたたき込んだのだろう。
 風貌・性格もよい。読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆の渡辺恒雄が朝日のインタビューで「若手なら小泉進次郎君がいい。TPP(環太平洋経済連携協定)参加など、民主党に賛成できるものは堂々と賛成して法案を通せばいいと、自民党を批判しているからだ。おやじのようにべらんめえじゃないし、高飛車でもない」と褒めあげている。民主党政策調査会長代行・仙谷由人も敵ながらあっぱれと言うのであろう、「テレポリティクス時代の天才」と持ち上げた。どうも進次郞には“爺殺し”的な側面があるようだ。しかし仙谷も「一般的に天才と言ったわけじゃない」と付け加えている。「浅薄なテレビ政治時代の天才」と言う意味の皮肉も混じっているようだ。
 小泉の発言を分析すると、一つは父親のワンフレーズ・ポリティックの影響が色濃い。また白黒を断定的に形容することも父親似だ。もう一つは発言が欧米流、とりわけ米国流のレトリックに満ちていることが分かる。現在の大統領選でみられるように、相手の虚を突く修辞技術に長けているのだ。これはコロンビア大学大学院に留学ジェラルド・カーティス教授に師事して、政治学修士号を取得していることからもうなずける。遠くはケネディ、近くはオバマに代表される米国大統領の弁舌の巧みさを学んできたのであろう。
 直近の例では、首相・野田佳彦が麻生太郎の施政方針演説で消費税に前向きな発言をしたことをとらえて「政局より大局を」と訴える根拠にしたことをやり玉に挙げている。小泉は「もし、野党の時に野田首相が『首相の思いと同じです』と言っていたら、説得力がある。でも、麻生首相の麻生内閣不信任案の賛成討論をしたのは首相だ。ちょっと説得力がない」と批判している。野田はぐうの音も出ないはずだ。虚を突くレトリックの典型だ。まだある。昨年末に国民新党代表・亀井静香が新党に動いたことについて小泉は「新党、新党と言うが、言う人が新しくない」とばっさりと切った。
 怖いもの知らずの度胸もある。自民党がTPP反対で気勢を上げている最中に「自民党は参加が拙速だというが、私は遅すぎると思っている」と言い切った。自民党前参議院政策審議会長の山本一太がブログで「胆力がすごい」と褒めちぎったほどだ。もっとも機微に触れる発言は巧みに避けているようにも見える。野田の消費増税での与野党協議提唱には、自民党内にも同調する意見が多いが、小泉はTPPのように旗幟(きし)を鮮明にしない。逃げているのか満を持しているのか知らないが、小泉自身の是是非非論法で言うならやはり「政局より大局」支持でなければなるまい。
 しかし、「巧言令色鮮(すくな)し仁」の例えもある。オバマが米国民にその卓越した弁舌故に飽きられてきたことが象徴するように、小泉はテレビメディアの“使い捨て”にやがて直面する危険がないわけではない。かつての新自由クラブの政治家たちに象徴されるように、あまたの政治家が彗星の如くテレビに登場し、やがて消え去っていった例がみられる。父親純一郎も長い下積み修行時代を経て、花を咲かせたのだ。何と言っても政治家は不断の勉強から出てくる鈍い底光りのような光り方が重要なのだ。クリスマスの電飾型では長続きしない。仙谷が政治家の在り方として「テレビに取り上げられなくても、お互いに切磋琢磨の議論をすることが若い時代には重要だ」と述べているとおりだ。ちゃらちゃらしたおべっか評論家やテレビの司会者に持ち上げられて喜んでいると、大きな落とし穴に落ちる。総裁・谷垣禎一の体たらくに永田町では冗談半分に「小泉総裁」説が流されているが、まだ20年早い。


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◎野党演説引用は腹をくくった証拠:施政方針演説

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◎野党演説引用は腹をくくった証拠:施政方針演説
 首相・野田佳彦の施政方針演説の焦点は、何故かっての野党党首の演説を引用したかに尽きる。どうも野田は解散・総選挙に向けて腹をくくったように見える。なぜなら前代未聞の引用は、対野党的には逆効果であり、まさに“けんか”を売ったことになるからだ。野党は代表質問で過去の野田発言の虚飾を突き、国会は泥仕合の混戦になるのは目に見えている。消費税国会の成り行きを予測してか、元民主党代表・小沢一郎は「6月解散」に照準を定めた。
 まるで選挙が始まって街頭演説の第一声を発したようなストレートな内容に満ちていた。特異とも言える施政方針演説のさわりは、福田康夫と麻生太郎の首相時代の施政方針演説を逆手にとったことだ。まず福田が4年前に「与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い、結論を出し、国政を動かすことこそ政治の責任だ」と発言したこと。ついで麻生が3年前に「持続可能な社会保障制度を実現するには、給付に見合った負担が必要だ」と発言した点を取り上げたのだ。そして野田は「私が目指すのも同じだ」と強調「政局より大局を」と訴えたのだ。“奇策”とも言える野田演説に、さっそく麻生は「いいとこ取りでボクシングで言えばクリンチされている感じ」と反発、福田も「いいこと言っているようだが、民主党は全く違う」と、苦虫をかみつぶしたような反応だ。
 野田のこの発言は自分自身の発案により練りに練ったものだという。発言が、与野党の溝を埋めるどころかかえって深めるという、逆効果になることは自ら百も承知であったに違いない。それなのに何故直球をぶつけたかだが、背景には消費増税をめぐる与野党協議がにっちもさっちもいかなくなり、当面協議実現を断念せざるを得なくなった背景があろう。野田は自民党が参院選の公約に10%引き上げを公約にしていながら、「政局」のために反対のための反対をしている姿を浮き彫りにしたかったのである。
 野田は施政方針演説が国民に訴える効果を十分に計算して、野党に呼びかけると言うより、国民世論に消費税をめぐる思惑の違いを鮮明にしたかったのだ。マスコミ・世論対策を狙ったのであろう。これはとりもなおさず、施政方針演説の「街頭演説化」に他ならない。街頭演説では他党党首の発言を引用して攻撃するのは、選挙に突入すれば日常茶飯事である。野田の姿勢からは与野党協議実現への戦略、戦術を熟慮すると言うより、国民に直接訴える方を選んだことがうかがえる。その延長線上には、今国会中の解散・総選挙も辞さぬ構えが見て取れるのである。民主党単独での消費増税法案国会提出も視野に入れたのだろう。
 しかし世論の反応は芳しくない。朝日新聞は「気合い十分、説得力不足」と題する25日付社説で「自民党の演説を引用したのは余分だった。民主党の野党時代の攻撃的な言動を問い返され、またしても与野党の泥仕合を招きかねない」と危惧(きぐ)している。確かに動画サイト「YouTube」で話題になっているのが野田自身の街頭演説での自民党政権批判発言だ。「マニフェストに書いてないことを平気でやる。これっておかしいと思いませんか。書いてあったことは4年間何にもやらないで、書いてないことは平気でやる」と自民党を攻撃しているのだ。マニフェストに書いてない消費増税を平気でやろうとしているのは野田自身であり、この“好餌”に野党が飛び付かないはずはない。今後、代表質問や予算委質問の絶好の材料となって、確かに国会は泥仕合となるのだ。
 こうして、与野党正面衝突のコースが定まってきた。その政局を読んだのだろう。小沢が二日間にわたり新人衆院議員らを自室に招いて選挙に向けての発破を掛けている。24日も「6月をターゲットにせざるを得ない」と会期末解散・総選挙の可能性に言及、準備を急ぐように指示した。小沢は「無党派層対策をしないと駄目だ」とも述べたと言うが、無党派層の浮動票の流れは今度ばかりは野党に向かうだろう。消費増税という不人気政策を掲げて、民主党に風が吹くことはまずあり得ないからだ。小沢チルドレンがいくらあがいても無駄だ。


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◎国政に3度目の劇場型政治は不要だ

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◎国政に3度目の劇場型政治は不要だ
 「東京で生まれた男やさかい、大阪にはようついていかん」と名歌をもじらせてもらう。「大阪都構想」なるものをひっさげて圧勝した市長・橋下徹の鼻息が荒い。維新の会で全国規模の衆院選候補を擁立、国政を動かすのだそうだ。果たして衆院の過半数を制して、大政党へと躍進できるのだろうか。全国規模ではとてもとてもその勢いはない。出来ると思うお方は“誇大妄想”とでも申そうか。燃えているのは大阪のマスコミにはやされて舞い上がったご本人だけではないか。もう日本に「劇場型政治」は不要だ。
 「大阪都構想がゴールではない。大阪がこのように動き始めているのなら、次なる目標として日本国も動かしていこう」と橋下は国政への党勢拡大を宣言。「本年勝負させてください」と言い切った。府知事と市長選で圧勝した“鼻息”を継続させている。しかし問題は「最初のうまさが持続する」かどうかだ。折から政局は消費増税をめぐって、与野党が激突不可避の形勢であり、それを大阪から批判して既成政党の体たらくを突く効果は確かにあるかも知れない。自民党政権が飽きられ、民主党政権が“あきれられた”現状を見れば絶好のチャンスと映るかも知れない。
 過去の新党ブームの中では1976年の新自由クラブに似たようなムードが起きるかも知れない。新自クは、折からロッキード事件批判に乗って清新さを売り出し、同年暮れの総選挙で躍進した。それでもたったの18議席だ。結局消滅したがそこまで果たしてゆけるか。ゆければ立派なものだが無理がある。まず第一に、大阪が騒いでいるだけという状況がある。元官房長官・野中広務は「日本は大阪のような雰囲気は出てこない。あれはマスコミが煽って作り出したもの」と手厳しい。浮動票は動く可能性があるが、全国で地滑りが生じるほどにはなるまい。
 さらに橋下のタレント首長特有の政治手法に問題がある。テレビ向けに一つのテーマを決め、イエスかノーかの判断を求めて論破する。弁護士の経験も相まって口から先に生まれたような論陣をはり、相手を追い詰める。裁判に勝つなら何でも利用する弁護士型劇場政治だ。元首相・小泉純一郎のように敵を作ってたたくような手法が、今の国政に通用するだろうか。例えば最近の橋下発言で「消費税をたった5%上げるだけで日本が再生するわけがない」があるが、論旨をすり替えている。「日本の再生」などという大それたことを言っている政党はない。「財政再建」が焦点なのだ。それを大きなテーマに置き換えて、聴衆の関心を呼ぶ。すぐに「浅薄さ」の馬脚が現れるのだ。「たった5%」が国政最大の命題であることも知らない。小泉によるワンフレーズ・ポリティックのまねだろう。
 大阪都構想なるものが全国規模で関心を呼ぶだろうか。確かに2
重行政の解消は自治体行政の重要ポイントだが、まず「隗(かい)より始めよ」と言いたい。国政に向けて“盛り”がついたようになって、足元がおろそかになっていないかということだ。維新の会で府知事と市長を獲得したのだから2重行政解消の絶好のチャンスではないか。国に制度改革を求める前に自分の足元の出来ることから手をつけることが誠実な行政というものではないのか。
 加えて大阪都構想は重要ポイントに矛盾がある。大阪、堺両市を解体し、広域行政を担う「都」と福祉など身近な行政サービスを受け持つ10~12の「特別自治区」に再編する制度改革だが、これが2重行政どころか“12重行政”を生む恐れがある。公選区長と区議会を置くことにより、コストの増大は避けられず、手続きも煩雑化するだけではないだろうか。
 要するに、国政レベルから冷静に見れば橋下政治はタレント型の劇場型パフォーマンス政治に尽きる。過去に劇場型政治がこの国にプラスをもたらしたことがあったか。小泉は所得格差を拡大し、この国の社会にぎすぎすした不公平感のみをもたらした。政党レベルでの劇場型政治の最たるものが民主党政権の2代にわたる暗愚首相が行ったものだが、国民に根強い政治不信だけをもたらした。三度目の正直でまた劇場政治かと思うと、もううんざりだ。遅れてきた劇場政治に国民は3度もだまされることはあるまい。
 首相・野田佳彦は橋下政治について「若干、劇場型になっている。府民が1人のスターを仰ぎ見ているだけでは良くない」と、野田にしては最大限の表現で警鐘を鳴らした。維新の会は民主党とは相容れない部分も大きく、むしろ自民党、公明党との接近が言われている。既成政党側は維新の会を利用できるなら利用しようという魂胆が見え見えであり、だれも「橋下独断専行政治」を諫めようとはしない。そこに「危うい政治」をのさばらせる危険が内包されているのだ。いずれにせよ解散は間近に迫り、選挙は既に終盤戦とささやかれる。二大政党激突のはざまに維新の会が全国規模で割り込める余地は少ない。


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◎国会天気予報は「話し合い解散・時々ハプニング解散」

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◎国会天気予報は「話し合い解散・時々ハプニング解散」
 通常国会を天気予報風に見通すならば「話し合い解散、時々ハプニング解散」だろう。「消費増税政局」を軸に3月末からいつ解散があってもおかしくない激動状況に陥り、6月の会期末には、本命の「話し合い解散」が待っているという状況だろう。この間、元民主党代表小沢一郎への判決、さらなる民主党離党、新党結成の動きなどがマグマ噴出の機会を窺う。政局は政権の帰趨(すう)も賭けた、まさに白兵戦の状況へと突入する。野田政権は野党に加えて、党内反対勢力による“腹背の攻撃”を受ける形となった。
 22日の党大会での自民党総裁・谷垣禎一の発言を聞くと、もう頭に血が上ってしまっいる。消費税の協議など念頭にないどころか、民主党政権に罵詈雑言まで浴びせかけた。「民主党は(2009年衆院選)マニフェストには消費税率を上げることは書いてない。口先だけのいかさまだった」「『偽りの政権』に終止符を打ち、政権の正統性を回復する総選挙を求める」とあらん限りの言葉を使った宣戦布告だ。もっとも売り言葉がある前に買い言葉を発したのは野田だ。16日にテレビで「『出直しをして解散をしろ』という野党に対しては、やるべきことはやって、やり抜いて、民意を問うことをはっきり宣言したい」と“消費税やり抜き解散”を宣言した。両者共に一歩も譲らぬままで、まぎれもなく激突のコースを進んでいる。二三度火花を散らしてからでないと物事は動くまい。
 野田は前門の虎後門の狼で腹背に敵を受けようとしている。野党と小沢だ。正門からは野党、裏門には狼が徘徊(はいかい)している。その小沢狼も16日の党大会にぶつけるように109人も集めて勉強会を開き、野田をけん制する動きを露骨にさせている。109人とはよく集まったと思ったが、権力誇示の裏にからくりがあった。元官房長官・野中広務が22日のテレビの時事放談で「カネを配った」と公言したのだ。野中によると「帰りがけに金一封20万円づつ包まれていた」というのだ。「この人数は金銭的なところから出たものだ」と断言した。野中の言葉通りなら小沢は2200万円で109人を買ったことになる。政治的には小沢の力量がまだあると思わせることができ安い買い物だったが、ネタがばれては「な~んだ。それほどでもない」ということになる。
 しかし小沢が波乱要素であることに変わりはない。政治家の裁判の結果が政局に影響するケースが、今回ほどはっきりしていることは珍しいのだ。負けと出れば選挙を前に小沢に接近することは何も知らないチルドレンでも警戒するだろう。小沢は動くに動けなくなる。勝ちと出れば、小沢は“大だんびら”を振りかざして六方を踏むだろう。公然と消費税解散に反対して、野田不信任案に欠席や賛成に回ったり、新党の動きに出るかも知れない。9月の代表選挙に出馬も辞さぬ構えだろう。その裁判の勝敗を占うことは、2月に可能となる。裁判所が小沢の関与を認めた元秘書らの調書を証拠採用するかどうかにかかる側面が大きい。採用すればまず有罪の方向だ。既に戦いの火蓋は切られた形で、政策調査会長代行・仙谷由人が22日「民主党は最初は小さかったが、数が多くないと政権がとれないとなったところからおかしくなった」と “自由党との合併”にまでさかのぼって小沢を批判。小沢も「改革が何ひとつなされていないなかで増税するのは、国民に対する背信行為になる」と政権への直接批判へとエスカレートさせた。
 通常国会は26日から代表質問が行われ、その後外交・安保での集中審議を野党が要求している。この期に及んで何故外交・安保かというと、紛れもなく「田中直紀」狙いであろう。冒頭に防衛相・田中の首級をあげて激動国会の初戦を飾ろうというわけだ。国会への消費税増税法案提出は3月になる段取りだが、それまでの間は赤字国債を発行する特例公債法案など予算関連法案をめぐって駆け引きが続く。おそらく野党は参院で予算関連法案の成立を拒否して、たなざらしにする戦術を採るだろう。昨年同じ立場に置かれた首相・菅直人は3・11大震災で救われたが、通常の場合成立が遅れれば内閣の責任問題となり、解散・総選挙の起爆剤になり得る。
 自民党は内閣不信任案や参院での首相問責決議案の上程も戦略のうちだろう。ただ野党も谷垣のように攻め一筋が終盤まで維持できるかどうかも問題となる。自民党は党内から与野党協議に応ずるべきだとの議論が風速を増すことは目に見えている。谷垣の強硬姿勢には焦りの裏返しのようなところがあるのだ。公明党も協議を求める世論の要求に必ずぐらつく。谷垣としては落としどころが「話し合い解散」となれば「御の字」で大いにありがたいところが本音だろう。


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◎大平の消費税政局と酷似してきた

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◎大平の消費税政局と酷似してきた
 消費税がきっかけとなった政局は過去にもあった。1979年の「40日抗争」をはさんでの自民党内抗争だ。筆者は官邸キャップとしてつぶさに見たが、最近は当時の首相・大平正芳と首相・野田佳彦がダブって見えてくる。酷似点は「政治生命を賭けて」消費税をやろうとしていることだ。そして内閣不信任案に同調しかねない反対分子も党内に抱えている。唯一異なるのは大平が消費税を撤回し、“大平政治”を信奉している野田が「死守」の構えであることだ。
 79年10月の総選挙を前に首相・大平は官邸キャップらを招いてカレーライスを食べながら懇談した。そこで突然大平は「一般消費税をやろうと思う」と言い出したのだ。9月17日の公示直前である。筆者は驚いて「選挙は大丈夫ですか」と聞くと、大平は「ああ、うう、愚直に訴える」と述べたものだ。これが消費税政局の発端であった。
 大平は発言の通り選挙告示の第一声で、確かに「愚直にも」消費税導入を訴えた。しかし、当時の世論は大平の財政への危機感など全く理解せず、一般国民に至っては世論調査でも反対一色だった。自民党が行った選挙予測調査も「大敗」と出て、官房長官・田中六助らが撤回を進言。ついに大平も大ぶれにぶれて撤回した。しかし時既に遅く、総選挙は大敗で過半数を割った。新自由クラブを抱き込んで政権は維持できたが、党内抗争の火蓋が切られた。福田赳夫らによる「40日抗争」だ。
 抗争は長引き、大平は「辞めよというのは死ねと言うことか」と漏らして政権にすがりついた。しかし抗争は怨念の戦いとなり、翌80年の通常国会で野党が提出した内閣不信任案採決に福田らが欠席して、可決されてしまった。大平は総辞職でなく解散を選択して、参議院選挙とのダブル選挙になだれ込んだ。ところが選挙第一声で大平は異常に甲高い声で演説をして、筆者は持病の心臓発作は大丈夫かと直感したが、案の定その夜心筋梗塞の発作が起きた。大平は死去して、ダブル選挙は必ず勝つ「弔い合戦」となり、自民党は圧勝したのだ。
 民主党元代表・小沢一郎の最近の発言も、この経緯を念頭に置い
てのものだろうと思える。18日も「こんなときに消費増税なんて冗談じゃない。何を考えているのか」と反対姿勢を一層鮮明にしている。何としてでも消費増税にストップをかけたいのだろう。しかし野田は既にルビコンを渡ったのだ。賽(さい)は投げられたのを小沢は理解していない。ここで野田が方向転換したらどうなるか。大平と全く同じで「選挙大敗」が目に見えているのだ。大平は方向転換した結果、消費増税に賛成する良識派まで敵に回してしまったのだ。小沢は例え野田が方向転換しても、“どっちみち選挙に負ける”ことを知らずに、悪あがきしているのだ。
 その間の大平の心理状況について首相秘書官だった森田一は日経のインタビューで「『しまった』という感じは見て取れたが、それは言わなかった。消費税を掲げたことに後悔はなかったと思う」と振り返っている。野田は自他共に許す大平政治の信奉者だが森田は野田から代表選挙前に「大平政治を目指したいので会いたい」という話があり、会食をしたという。この席で森田は「福田さんや大平のように大蔵省出身者で蔵相をやって首相になれば、事務当局に操られているといわれない。だが、そうではない人が財務相をやって首相をやると事務当局が操っているとみられると言うと、『私はすでに増税男と言われています』と言っていて、そこはぶれないような感じだった」と述べている。
 大平の失敗を意識して野田はぶれないことがこれで分かる。だが、野田も大平同様に党内に敵を抱えている。不信任案が提出されれば、小沢グループなど反対派が賛成するか欠席すれば可決されてしまう危うさがあるのだ。森田は「話し合い解散みたいな話で突破できるかどうかだろう。私の感覚では解散が確約されれば、谷垣禎一総裁は党内を説得できるだろう」と述べている。野田が「小沢の福田化」を防ぐには、話し合い解散で小沢の裏をかくしかあるまい。時局は与野党反対勢力の動きが活発化して、神経戦の側面も出てきた。野田にかかる精神的な重圧は、相当なものがあると思われる。しかし野田の大平との違いは、若さと体力があることだろう。解散を選択しても「弔い合戦」にはなるまい。
      


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◎民主、「80削減」で公明に“逆秋波”

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◎民主、「80削減」で公明に“逆秋波”
  衆院比例区80議席削減案に一番影響を受ける中小政党が激怒しているが、あえて反発を承知で民主党が打ち出した狙いはどこにあるか。おそらく公明党抱き込みにあるとみた。公明党が一番嫌がる80議席削減を打ち出しながら、途中で妥協して野党を揺さぶり、消費増税協議に引き込む。それが不可能なら、不成立は野党のせいにして解散・総選挙になだれ込む。よく考えた定数是正問題の“活用”だが、パフォーマンスの馬脚を現すようでは鳴り物入りで国対委員長に就任した城島光力もたいしたことはない。
 とにかく現行小選挙区比例代表並立制のまま80議席を減らせば、比例区当選が公明、共産両党は半減。社民党に至ってはゼロになる。怒るのはもっともだが、城島国対の狙いは別にある。まず野党分断だ。自公両党はいまや解散・総選挙で足並みを揃えて蜜月状態にあるが、公明党は体質的に“きれいごと”へと流れる傾向があって、度々自民党を裏切ってきた。今回も民主党から社会保障と税の一体改革で与野党協議を持ちかけられればよろめきかねない。現に18日の自公幹事長会談でも井上義久が「協議に応じてもいい」となびき、慌てて石原伸晃が口止めする場面があったと言う。
 民主党はそこを見極めて公明党に一番きつい球をまず投げたのだ。もちろん城島も、公明党が怒り心頭に発する事を計算に入れてのことだ。と言うのもこのままでは与野党協議に入るめどなど全く立たない。消費増税という大魚を網にかけるために、水面を叩いて底にへばりついている魚を浮上させようとしているのだ。案の定公明党は代表・山口那津男が「あまりにも独断が過ぎる。協議の土俵を自ら壊すような強引な進め方はするべきではない」と憤っている。しかし民主党にとってはこれで終わっては元も子もない。その「妥協策」は公明党の主張する小選挙区比例代表連用性の導入だ。
 今のところの民主党案は現行制度のまま80議席減らす方針だが、これは圧倒的に民主、自民の2大政党に有利となる。これに対して連用性は比例の議席を割り振る際に小選挙区で獲得議席が少ない政党に優先的に配分する方式だ。試算によると公明、共産両党はかえって議席増につながるのだ。民主党幹部は「連用性が切り札になる」と漏らしている。“切り札”をほのめかされたら公明党が“浮気の虫”を押さえられなくなって、自民党に「ちょっとだけね」とばかりに、民主党に会いに行くことも予想される。国民新党代表の亀井静香も「小政党に優先的に議席を配分する連用性に変えるべきだ」と主張しており前向きだ。
 しかし、本格的な選挙制度改革がこの“急場”で成し遂げられるかどうかは微妙な上に、周知期間が必要となるから次の衆院選挙には間に合わないだろう。従って公明党を引き込む道具とはなっても、実現性は乏しいとみなければなるまい。そこで民主党が考えている最終作戦が、数を頼みに衆院で合計85人削減法案を可決させる強行突破策だ。参院に送付すれば、参院は野党が多数で成立は不可能と言ってもよい。そのままたなざらしで、解散・総選挙になだれ込み、選挙で「定数削減にまじめな民主党。削減をしない悪い野党」を訴えて、有利に導こうという魂胆だ。
 誰が描いたか知らないが巧みな硬軟両様のシナリオだが、ここでも事業仕分けと全く同じのパフォーマンスがまたまた露呈している。「定数是正だ、公務員給与削減だ」とかしましい「自らの身を切れ論」に迎合しての“演技”だが、1000兆円に達する赤字や、消費税5%アップの巨額な歳入に比べればいずれも雀の涙ほどの効果でしかない。「身を切れ論」は本質的には消費増税へのアリバイ作りなのだ。身についたパフォーマンス体質は、民主党政権から死ぬまではがれないのだろう。いずれにしても80議席削減の裏を読まれるような国対では、国会運営も行き詰まりが不可避だ。それにこれほど国民を馬鹿にした国会対策も珍しい。もともと実現不能と分かり切っているからだ。


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◎「小沢燕雀」が描く解散阻止戦略は無理

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◎「小沢燕雀」が描く解散阻止戦略は無理
 民主党元代表・小沢一郎が、消費増税を掲げ解散も辞さぬ構えの首相・野田佳彦を「政治感覚が分からない」と批判した。分からないのも無理もない。理由は落語家みたいだが「小沢燕雀(えんじゃく)」だからだ。史記にはちゃんと「燕雀安(いずく)んぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」と書いてある。ここ数年では初めて消費増税をあえて世に問うという、希有(けう)の志をもった「政治家」が出現したのであり、目先の餌を突っつくことしか知らない「政治屋」では確かに理解の範ちゅうを超える。
 高崎市での会合での発言は久しぶりに本音が見える。小沢はまず野田が解散も辞さない姿勢を見せていることに言及した。「野田総理大臣は、消費税増税を掲げて、『衆議院の解散も辞さず』とまで言っているようだが、どういう政治感覚をしているのか本当に分からない」と述べた。分からないのは小沢の生き様がそうさせているのだ。小沢は基本的には数の論理の信奉者である。恩師と仰ぐ田中角栄のまねだが、田中は少なくとも首相になったら日中国交だけは片付けるという志があった。
 しかし小沢政治は同じ数の論理でも政局と権力闘争のための手段に使っているにすぎない。田中はそうそうたる政治家たちを配下にもったが、小沢は「村会議員並み」と言ったら村会議員が怒るような“チルドレン”など有象無象の集まりの上に立っているに過ぎない。それでも数は数で力を発揮できるのだ。そこが政治家と政治屋の違いであって、政治屋は政治家の志を理解出来ないのだ。野田は明らかに「背水内閣」(経済同友会代表幹事・長谷川閑史)だ。背水の陣を敷いている。もちろん解散すれば、消費税が焦点となって大敗するかも知れない。しかし政治家というのは選挙大敗も辞さずに、ことに臨まなければならない時がある。そのときを理解しているのが野田鴻鵠で、数を減らすことを理解出来ないのが小沢燕雀なのだ。
 小沢はさらに「野田総理大臣で衆議院の解散はできないと思うが、今のままだと行き詰まる可能性が非常に大きい。そうなると、トップが誰かは別にして、選挙管理内閣のような形で、ことし中に衆議院の解散・総選挙があるのではないか」と述べた。これは野田には解散をさせないで、首をすげ替えたうえで新首相に解散させるという意思表示でもある。しかしそれが可能だろうか。まず不可能だと思う。過去の例が物語る。解散は天皇の国事行為であり、形式上は、天皇が国会に提出する解散詔書によって行われる。それを政府が閣議で事前に決定することになる。
 過去にその閣議決定を阻止しようという動きが数度あった。顕著なのは三木内閣と小泉内閣の例だ。1976年、自民党反三木勢力の挙党協は、三木を退陣に追い込むための田中戦略に基づいて、副総理・福田赳夫、外相・宮沢喜一、蔵相・大平正芳らが解散反対ののろしを上げた。これに対して三木は閣僚罷免で対抗しようとしたが、反対閣僚が15人にも達して罷免しきれなかった。結局野党に追い込まれる任期満了選挙となった。もう一つ対照的な例が2005年の小泉純一郎の郵政解散である。農水相・島村宜伸が署名拒否して辞表を提出したが、小泉はこれを認めず島村を罷免、自ら農相を兼務して署名し、解散を断行した。三木と小泉の場合決定的な違いは反対閣僚の人数である。
 野田の置かれた状況は小泉の例が酷似している。例え小沢グループの新閣僚らが詔書に反対しても、罷免すれば済む数にとどまる方向だ。そもそも首相の持つ特権で解散権ほど強いものは無い。明らかに小沢は三木方式での解散阻止を狙っていることになるが、閣僚の大半が署名拒否するような事態にはならない。むしろ副総理・岡田克也以下解散論に固まる可能性の方が大きい。したがって解散に関する主導権は野田が維持し続ける方向だ。小沢が阻止できる幕ではないだろう。小沢は今年で70歳になる。まだぼけるには早いと思うが、ピントがずれ始めた。
 


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◎野田発言は“小泉流”刺客擁立の脅しだ

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◎野田発言は“小泉流”刺客擁立の脅しだ
 独眼竜正宗のような切れ味鋭い16日の首相・野田佳彦の解散発言について、新聞は消費税法案での野党に対するけん制ととらえているが、果たしてそうか。折から仙台伊達藩では「新党きずな」に参加した候補に「刺客候補」を立てる話が進んでいる。むしろ野田発言は「小泉郵政解散」を意識した、小沢一郎へのけん制だろう。これ以上離党者を出さないことを狙ったものだ。そう解釈すると野田の「眼帯」まで意味深長に見えてくる。
 消費増税一筋にまい進する野田は、改造で岡田克也を副総理に起用、小沢一郎の神経を逆なでしたが、今回の党大会発言はかってなく気負い立っていた。野田は「各政党に政策協議に応じてもらうよう心からお願いをしていく。野党にどうしても理解してもらえない場合は、法案を参議院に送って、野党に『この法案をつぶしたらどうなるのか』と考えてもらう手法も、ときには採用したい」と、開き直った。おまけに「『出直しをして解散をしろ』という野党に対しては、やるべきことはやって、やり抜いて、民意を問うことをはっきり宣言したい」と、解散を断言した。
 問題は発言の「参院でこの法案をつぶしたらどうなるのかと考えてもらう」の意味するところだが、野田が「野党」と数回言及したにもかかわらず、野党はほとんどが早期解散を主張している。首相が解散するといえば「ありがとうございます」ということになる。とてもけん制にはなるまい。「解散求める自公けん制」(読売)の側面は極めて薄いのだ。逆効果だからだ。そこで野田の狙いが意味するところは、「野党」に名を借りた党内消費増税反対派へのけん制という解釈が成り立つ。おりから小沢は党大会にぶつけるように109人も集めて勉強会を開き、野田をけん制する動きを露骨にさせている。一部小沢グループの離党、新党結成は既に実現しており、さらなる離党も予想されている。
 この状況下であるからこそ、「参院でつぶしたらどうなるか」なのだ。野田の気負いぶりは郵政解散断行の際の小泉そっくりだ。小泉は会期中から郵政法案が否決された場合は衆議院を解散して総選挙を行うことを明言していた。参院で否決されるやいなや解散を断行、同時に衆議院で反対票を投じた全議員に自民党の公認を与えず、郵政民営化賛成派候補を擁立することを命じた。刺客である。野田が党大会であえてこうした発言をしたのは、むしろ小沢グループへのけん制なのだ。冒頭述べたように宮城県連では刺客の話が着々と進んでおり、他の県連にも波及しつつある。新党きずなに参加した議員らは刺客を立てられれば、ただでさえ厳しい選挙情勢が絶望的となり落選確実だ。
 しかし野田の小沢けん制には、論理矛盾もないではない。独眼竜の「視界不良」だ。増税法案を参院に送れない事態もあり得るからだ。同日小沢が109人を集めた意味合いはそこにある。109人のうち60人程度が造反すれば、法案は衆院を通過しないのだ。逆に自民党などが提出することが予想される内閣不信任案に離党覚悟で同調する動きが出てしまう可能性もある。もっともそうなれば野田のいう参院段階での“血戦”は、衆院段階での“血戦”に前倒しになるだけだろう。
 まあ、いずれにしても野田が小泉そっくりに伝家の宝刀を抜くぞとばかりに高揚していることは確かである。幹事長・輿石東も同日の全国幹事長・選挙責任者会議で「衆院は常在戦場の態勢を作っていかねばならない」と述べ、小沢の早期解散反対戦略と逆行する発言をするに至った。解散への流れはイグアスの滝に向かう水流のようなもので、もう止めようがない段階に入った。野田も小沢も巻き込んで滝壺へと向かう。せめて消費増税だけは“生存”可能な岸辺にたどり着かせるべきだろう。


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◎野田は新聞論調と“同期”戦術

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◎野田は新聞論調と“同期”戦術
 消費増税に「政治生命を賭ける」という首相・野田佳彦の姿勢は、その弁舌と相まって極めて説得力が出てきた。消費税推進論のマスコミがはやしている。これに比べるとばかの一つ覚えのように「マニフェスト違反」を繰り返す自民党総裁・谷垣禎一の主張の何と精彩に欠けることか。ここは長年政権を担当した政党として「器量・風格」を示すべき時だが、そのかけらもない。しかし各社の世論調査による内閣支持率は、横ばいか下落。やはり一般大衆は古今東西を問わず、増税で懐に手を突っ込もうとする為政者を理屈抜きで受け入れ難いのだ。
 最近の野田の発言は新聞の社説と“同期”している。顕著な例が朝日が11日付で「捨て身で野党呼び込め」との見出しで「言葉にいくら力を込めても、現実は動かない。衆参ねじれのもと、政権与党は、国民の支持を求めて捨て身の対応をするしかない」と主張したのに答えるかのように、14日に“捨て身”発言。「私の政治生命をかける。民主党政権がうんぬんではない。この国を守るため、未来を残すために、一体改革は貫いていく」と力んで見せた。最近の大新聞の社説は、マニフェスト違反一点張りの自公両党に批判的なものが多い。読売も5日付で「消費税を政争の具にするな」と、小沢一郎と野党の両方を叩いている。
 野党と党内小沢グループの挟撃にあっている野田にしてみれば、地獄に仏のように見えるのだろう。野田はこの新聞論調に気づいているだけ立派だが、野党に至ってはどこ吹く風のなりふり構わぬ主張を繰り返している。谷垣が税と社会保障の与野党協議について「嘘の片棒を担ぎ、事前の談合で解決することなど受け入れられない」と門前払いをすれば、みんなの党代表の渡辺善美に至っては「増税に狂う増税暴走内閣」と口汚くののしっている。そこには、大局的な判断などはかけらもない。むしろ解散・総選挙を目指した政局への思惑が露骨であり、野党がこれほど卑しげに見える時期もめづらしい。
 しかし、野田にとっての問題は、社説が“支持率”を稼いでくれないし、国会対策もやってくれないことだ。改造後の世論調査では、とても政権浮揚などとはほど遠い結果が出た。朝日が前回の31%から29%とついに20%台に割り込んだ。読売も42%から5ポイント下がって37%となった。共同通信も横ばいだ。何故かと分析すれば、おそらく消費増税が足を引っ張っているのだろうと推察できる。朝日の調査では賛成は34%で、反対の57%を大きく下回っている。消費税は次の選挙で争点となるが、このままの比率でいけば民主党は大敗だ。
 加えて改造への評判がぱっとしないのは防衛相に田中直紀を起用したことだろう。「素人の次に素人」と永田町で驚きをもって迎えられている評価が、国民レベルまで伝搬した。読売の調査によると岡田克也の副総理起用は52%が評価したが、田中は19%の評価にとどまっている。野田は「輿石命」の田中を幹事長・輿石東が「ういやつじゃ」とばかりに推薦したのをそのまま受け入れざるを得なかったのだろうが、どうも野田は、人事でポイントを外しがちだ。 いずれにせよ野田はいまのところ新聞論調だけを頼りにせざるを得ないようである。新聞論調が消費税協議に乗ってこない野党にもっと強力な矛先を向けるようひたすら念じているにちがいない。しかし、いくら批判されても、解散の好機とばかりに、はやりにはやってしまっている野党を、新聞論調が叩いても限界があるだろう。野田は14日のテレビで解散を聞かれて「衆院解散以前に、まず一体改革と、自分たちが身を削る行政改革、政治改革を実現していく。それができるかできない暁には、いろんな判断があるかもしれないがまずは野党に呼びかけることからスタート」と微妙な発言をしている。「いろいろな判断」とは解散の決断か、話し合い解散の決断が考えられるが、結局問題の落ち着く先が分かってきたようでもある。野田の好きな新聞論調も与野党激突を経れば、話し合い解散による決着に傾斜するだろうと予測する。


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◎「岡田副総理」でも政権浮揚はあるまい

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◎「岡田副総理」でも政権浮揚はあるまい
 「岡田副総理」は、2閣僚への問責決議で追い込まれた首相・野田佳彦が、その印象を払拭するために打った起死回生策だが、果たして実効はあるだろうか。どうも両刃の剣のように見える。筋金入りの消費増税論者だから、野田にとっては中央突破への強い援軍だろうが、党内的には小沢グループを敵に回した。それに幹事長時代の岡田の実績はたいしたことはない。
 野田の最近の政治姿勢は、「消費増税一辺倒」に徹している。野田は「消費税のためには障害になるものはすべて取り除かねばならない」と漏らしている。そのために防衛相・一川保夫、国家公安委員長・山岡賢次を“除去”するのだ。加えて、行政刷新相・蓮舫も切る。蓮舫は鳩山内閣以来民主党パフォーマンス政治の象徴であり、最近は鼻についてきた感が濃厚だ。事業仕分けに続く「政策仕分け」なるものも湿った花火に終わった。おまけに脱税事件で逮捕歴のある男性と食事をしたり、祭りに出かけるという「不適切交際」がばれて臨時国会で追及された。“除去”しなければ、通常国会国会でも絶好の攻撃対象となってしまう。
 もっとも幹事長・輿石東が「改造には大義が必要だ」と野田に進言したとおり、資質に欠ける閣僚を交代させるだけでは、世間体が悪すぎる。そこで野田は「今後の態勢をしっかり強化するために」改造することにしたのだ。5人程度を交代させる中規模改造で「更迭人事」の印象を薄め、消費税シフトを強調しようとしているわけだ。焦点の前幹事長・岡田克也は、副総理兼行政改革、税と社会保障一体改革担当で入閣する。野田にとっては強力な味方と感ずるのだろう。事実、「不退転の決意」で消費増税に取り組もうとしている野田にとって、自らの主張に固執する「原理主義者」の岡田は、またとない援軍と映るのだろう。野田はあきらかに“中央突破”を目指しており、そのための起動力を期待しているに違いない。
 しかし、岡田の起用は、野田にとって当初からの党内融和路線から、大きくかじを切って、小沢との対決も辞さぬ構えに転じたことを意味する。小沢系の2閣僚を切って、幹事長時代に小沢の党員資格を停止させた岡田を起用するのだから、相当な神経逆なで人事だ。案の定小沢サイドからは「もう戦争状態だ」という声が漏れ聞こえる。ただでさえ野党の攻撃にさらされようとしているときに、挙党態勢でなく、分裂も辞さない態勢で、激動の通常国会を乗り切れるか。これが「岡田人事」の第1の問題点だ。小沢グループの田中直紀の防衛相起用くらいでは帳消しに出来まい。田中の防衛相としての能力にも疑問符が付く。
 さらに岡田を起用して、このまま行けば20%台に突入しかねない内閣の支持率が上がるなど政権浮揚効果が生ずるかだ。筆者は支持率下落が瞬間的に踊り場状態になっても、なお下がり続けると思う。岡田では人気は沸かない。その証拠には幹事長時代に統一地方選挙をはじめあらゆる重要な選挙で敗北を喫しているではないか。
新鮮味もない。野党対策で自民党副総裁・大島理森とのパイプが期待されるようだが、大島も総裁・谷垣禎一同様に民主党政権による消費税増税反対で凝り固まっている。パイプは通じても、野田が「話し合い解散」へと大転換でもしない限りは効力を発揮しない。もし話し合い解散をするなら「岡田・大島ライン」は効力を発揮するかも知れない。いずれにしても岡田人事はプラス効果よりマイナス効果の方が大きいような気がする。やがてそれが判明するだろう。
 加えて国民新党との連立が維持できるかどうかだ。消費増税絶対反対の代表・亀井静香はこの重要な時期に、ハワイで“すねた”ように静養している。改造を前にした与党党首会談には出席しないで、幹事長・下地幹郎が代行する。下地は既に、同党の金融担当相・自見庄三郎の続投を要請、自見の留任が固まったが、亀井は野田が消費増税を強行した場合連立を離脱するつもりなのだろうか。野田は国民新党も“除去”しかねない勢いであることは確かだ。総じて政権は改造の度に味方より敵を作る要素の方が大きいが、どうも野田改造内閣も遠心力の方が目立ち始めるような気がする。
 
 


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◎小沢裁判、深まった「疑惑の心証」

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◎小沢裁判、深まった「疑惑の心証」
 民主党元代表・小沢一郎の弁護団は、2日間にわたる被告人質問について「証言がぶれなかった」と無罪への手応えを感じているようだが、何を聞かれても「記憶にない」「秘書がやった」を繰り返させておいて「ぶれなかった」もないものだろう。焦点は事件への小沢の関与を浮かび上がらせることが出来たか、裁判官に「疑惑の心証」を深めさせたかにある。その点では小沢は土俵際徳俵で体勢を辛うじて維持している状態だろう。
 「語るに落ちた」と言う言葉があるが小沢の場合は「語らずに落ちた」という側面が濃厚だ。知らぬ存ぜぬまではいいが、いくらなんでも、今現在に至るまで「収支報告書は見たこともない」はあり得ないだろう。過剰防衛が裁判官の心証に作用することは間違いない。追及側の指定弁護士にしてみれば、もともと小沢が「秘書任せ」で逃げ切ると踏んできたのであり、裁判長以下3人の裁判官に「クロ」へと傾かせる材料を提供できれば十分な成果であったと言える。結果はどうかと言えばカネの流れの不透明さは一段と深まり、4億円もの大金の扱いを「すべて秘書任せ」であることの不自然さを浮き彫りにさせることに成功している。
 被告人質問で重要な点は裁判官が何を聞くかであろう。何を聞くかで裁判官の“気持ち”を推測できるからだ。裁判官の質問を分析すれば、事件のポイントとして感じているところは、市民感覚と同じと感じざるを得ない。3人の裁判官がそれぞれ順番に質問し、合計の質問時間は1時間を超えたが、その質問内容は土地購入資金4億円の原資に関する供述の二転三転、多額の現金を手元に置いておく理由、秘書に4億円をいつ返してもらえるか心配でなかったかなどであった。
 これに対して小沢は事前の弁護士との打ち合わせ通りに、「秘書任せで自らは関与していない」で押し通そうとした。途中「私の関心は天下国家の話で、それに全力で集中している。それ以外はすべて秘書に任せている」発言が飛び出したが、まずこれが裁判官の心証にマイナスの影響を与えたに違いない。いくら政務に多忙とはいえ、4億円もの巨額なカネの操作を秘書の独断で行わせることはないと逆に思わせる虚飾性をもった発言だからだ。
 また裁判長・大善文男が「元秘書が深沢の土地の登記を平成16年から平成17年にずらしたと証言している。深沢の土地の登記をずらすという秘書の行動についていまはどう思うか」と質したのに対し、小沢は「よかれと思ってやったことだと思う。彼らに対して叱るというたぐいの感情は持っていない」と答えた。あくまで「秘書独断」を貫いたが、大善はおそらく、小沢の指示なしには出来なかったと感じたに違いない。また大善の「元秘書の石川さんから経理処理の方法について報告は受けていないということだが、石川さんを呼んで経理処理について詳しく説明を求めたことはなかったか」との問いに「特別、石川や池田を呼んだりはしなかった」と答えている。これも大金を扱う常識とは明らかに矛盾する。
 さらに4億円の原資について前日、印税や議員報酬などを挙げたが、指定弁護士の指摘によれば、印税や議員報酬の払込口座から億単位の出金はなかった。加えて自分が原資を用意したにもかかわらず、利子を支払ってまで銀行から4億円の融資を受けたという、怪訝(けげん)きわまりない行動についても、小沢自身が自ら融資書類にサインしていることが明らかになった。これらの新事実は小沢の関与を濃厚に印象づけ、冒頭述べたように「語らずに落ちた」ものと推定しうることであろう。こうして、小沢の秘書一任戦略と知らぬ存ぜぬ答弁は“馬脚”を現していると見ざるを得ないのだ。こんごは2月に、焦点の元秘書らの調書を証拠採用するかどうかを経て、3月の論告求刑、4月の判決へと進むが、小沢にとって土俵際のうっちゃりは極めて困難になってきたと推測する。


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◎「天下国家」が泣く小沢被告人質問

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◎「天下国家」が泣く小沢被告人質問
 どうも民主党元代表・小沢一郎は「国家」という言葉がお好きなようだ。初公判では検察を「国家権力の乱用」と決めつけたかと思ったら、10日の被告人質問では「私の関心は天下国家の話で、それに全力で集中している。それ以外はすべて秘書に任せている」と宣った。政治資金など秘書に任せっぱなしで、タッチしていないと言いたいのだ。
 そして今度は「国家」に「天下」をつけて“格”を一段と上げた。古墳時代に倭国王は「治天下大王」と自らを称していたと言われるが、小沢も自らをそう称したらいい。野党は証人喚問して現代版「治天下大王」の御託宣を聞いたら良い。いやもう、多数決ででも参院で証人喚問を実現すべき段階ではないか。あまりに不自然な発言を放置しては法治国家ならぬ放置国家となりかねない。
 小沢がその発言通りに、果たして天下国家に全力集中しているかどうかだが、被告人質問でのやりとりを聞く限り、そうでもない。むしろ裁判対策に余念がないと言ってよい。基本的な法廷戦術は「秘書が秘書が」という、あまたの政治家が秘書のせいにして疑惑を乗り越えてきた裁判手法をとっている。それも巧妙だ。まず大型ダム工事をめぐるゼネコンからの裏金疑惑となっている4億円の出所について「相続財産など、手元にある金を用立てた」と説明。両親から相続した東京・湯島の自宅を売却して現在の自宅を購入した際の残金、相続した現金、著書の印税、四十数年間の議員報酬などを挙げた。しかしこれらはいずれも確認のしようがない事例ばかりだ。これまでの発言の「政治資金」や「銀行融資」では馬脚を現す公算が強いが、「個人の資産」では、あいまいすぎて確認のしようがない。まさに「天下国家に集中」していてはできない用意周到な発言だ。
 加えて「天下国家」発言と明らかに矛盾する証言もしている。それは銀行からの融資のサインについて「秘書からサインを求められたときに現金を担保に融資を受けるのかなと頭の片隅にあった」という点だ。4億円もの額である。実際には頭の中央にあったに違いないが、片隅にあったというだけでも、天下国家集中論の“まやかし性”が垣間見えるのである。そもそもいくら小沢が政治資金が潤沢でも「政治資金収支報告書を提出する前に内容を確認したことは一度もない」などという発言が、政治団体代表として不自然きわまりないものであることは明白だ。
 練りに練った法廷戦術であろうが、ほころびは見えるのだ。全部を秘書のせいにして監督責任はどうなる。政治的には当然これが求められる。野党が証人喚問を求め政治的、道義的責任を追及することで一致したのは当然だ。11日の被告人質問ではさらに核心部分に迫るだろう。「国家権力の乱用」発言にせよ「天下国家に集中」論にせよ、その根底には小沢の飽くなき復権への野望がみられる。4月の判決で無罪となれば一挙に復権して、9月の民主党代表選に臨む構えなのだろう。実現性はともかくとしてその構えがなければチルドレンを引っ張ってゆけない。
 しかし一部議員らの離党を食い止められなかったこと自体が物語るように、小沢の力の低下は覆うべくもなくなってきた。菅直人との代表選で国会議員票の半数に近い200票を獲得した力などとっくに失せているのだ。有罪か無罪かの判断は、元秘書の石川知裕が報告書の虚偽記載について、「小沢被告の報告と了承を得た」と述べている供述調書が証拠採用されるかどうかにかかってきたようだ。もし有罪となればさらなるチルドレンの離反、総選挙での小沢グループの激減が目に見えている。また無罪でも、秘書3人の有罪判決が重くのしかかっているし、控訴も行われるだろう。小沢はもがいても絶対外れることのない「疑惑のトラバサミ」にはまっているのだ。
 
 


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◎自民党は「政局亡者」の道を選択するな

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◎自民党は「政局亡者」の道を選択するな
 永田町には「政局亡者」が二人居る。自他共に許す亡者が言うまでもなく小沢一郎だが、もう1人は自民党総裁・谷垣禎一だ。すべての事象を政局に結びつけようとしている。谷垣は何が何でも消費税での3月解散に固執しているのだ。しかし自民党は野田の「2015年10%引き上げ」のいわば元祖だ。その元祖が“賛成だが反対”では、一般国民にはわけが分からない。野田が事実上問責2閣僚を更迭する以上、与野党協議に応ずるのが責任政党としてのスジだ。「2015年10%」が大局そのものであり、自民党は見誤ってはならない。
 13日の改造で2閣僚を切る方針を固めた首相・野田佳彦は、あきらかに消費税のためには障害物をすべて除去する姿勢を示している。久しぶりに信ずるところに向かって、ひるまず、ぶれずにまい進する首相を見る思いだ。その野田が「政局より大局」として提唱するのが消費税をめぐる与野党協議であり、今週幹事長・輿石東が野党側に申し入れる。これまでのところ自民、公明両党は棒をのんだように協議に応ずる構えを見せていない。その理由は、虚偽のマニフェストで政権を取った民主党が、マニフェストに矛盾する消費増税を訴える資格はないし、聞く耳持たぬというものだ。
 しかし、野田は2閣僚を明らかに更迭する方針であり、野党はまず国会審議には応ぜざるを得まい。問題は与野党協議だが、自公両党は消費増税をとっかかりに、解散・総選挙に追い込むのが基本戦略であり、応ずる構えを見せていない。しかし、一般国民は長年続く「政局」にはもううんざりしており、全国紙の論調も消費税の政局化を強く戒めている。2閣僚を交代させても与野党協議に応じない場合は、全国紙は一致して批判の矛先を自民党に向けるだろう。
 一方で自民党内も元首相・森喜朗が「野田さんが言うからダメというのでは、自民党は公党として恥ずかしい」と真っ向から執行部の方針に反対を唱えている。前政調会長・石破茂も「自分の選挙とか自分の党がどうなるかとか言うことではなく、虚心坦懐に話し合いをしなければならないのだと思う」と与野党協議に前向きだ。執行部の姿勢は国民の共感を呼ばないとみる空気が強いのだ。たとえ消費税を廃案に追い込み解散・総選挙を“獲得”して、政権の座につくことが出来ても、次に消費税を処理するのは自民党に他ならない。民主党は反対に回り、またしても消費税をめぐる“10年戦争”が続く。しかし、ヨーロッパの金融危機は待ったなしで日本に襲いかかる。日本の消費増税にめどが立っていれば、極東に世界の金融危機を回避できる礎(いしずえ)が出来ることになると言っても過言ではない。歴代政権が延ばしにのばしてきた消費増税は、世界的な視点からも焦眉の急の課題となっているのだ。これが大局そのものなのだ。
 これを総選挙で勝てそうだからと言って政争の具に使おうとしているのが“谷崎流”なのだ。そこには党利党略があって大局がない。輿石は、幹事長として申し入れる以上些細なことを協議しないという立場を表明しているが、これももっともだ。そもそも「暖簾(のれん)分け10%」が「元祖10%」と協議すると言っても、大枠は既に決まっているようなもので、細かい協議の必要はない。
 それでは協議に入って何を話すかと言えば、法案の取り扱いと連動した解散・総選挙を話し合えば良いのだ。要するに自公両党は協議を通じて「話し合い解散」に引きづり込めば良いのだ。野田にしてみれば、消費税を廃案にしてしまっては、元も子もないのである。突っ張って無駄なエネルギーを使うより、消費税と引き替えに解散して、一か八かの勝負に出るしかない。このままでは民主党政権は野垂れ死にが目に見えている。消費税を成し遂げれば、有権者の大半は不満を政権側にぶつけるだろうが、マスコミや心ある有権者は野田を応援するだろう。
 ここで妥協点を考えれば、例えばは「話し合い解散」は必ずしも通常国会末にこだわる必要はないのではないか。8月か9月の臨時国会冒頭解散で決着をつける手もあるのだ。8月か9月ならば先の総選挙後3年となり、民主党議員らも元は取った気分になるだろう。公党として首相として野党に確約して対処するのだ。自民党にしてみても、しゃにむに政局路線を突っ走れば確実にマスコミの総攻撃を受け、虻蜂取らずになる。ここはいきり立たずに落ち着いて与野党協議を、知恵を出して“活用”するくらいの寛容さが責任政党として必要なのだ。政局の泥沼化をやっている余裕など、もはやこの国にはない。


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◎「小沢新党」では展望は開けない

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◎「小沢新党」では展望は開けない
 最近の小沢一郎の政治行動をみると「解散・総選挙恐怖症」の一語に尽きる。小沢にとっての総選挙は小沢グループの総崩れに他ならないからだ。しかし政局の流れは通常国会中の解散にあり、いくら小沢がもがいても抗し切れないものであろう。大震災以来10か月も放っておいた地元岩手を正月早々回ったのも、早期解散を意識した自分自身の選挙対策に他ならない。それでは新党を結成して総選挙を乗り切れるかというと、有権者はだれも沈む泥舟を“はやす”ことはあるまい。政局をろう断してきた小沢はここに来て袋小路に入ったのが実情だ。
 小沢の解散・総選挙恐怖症はまず異常なまでの消費増税反対に象徴される。政局が読める者なら消費増税法案が必然的に政局の激動を呼び、首相・野田佳彦が解散に踏み切らざるを得なくなる核心であることが分かる。小沢にとって消費増税反対は解散反対に他ならないのだ。何故反対かと言えば、虚飾のマニフェストで獲得した民主党議席が総崩れとなるからだ。とりわけ「風」だけで当選した小沢チルドレンは目も当てられない惨状と化すだろう。これは小沢の力の論理が総崩れとなることを意味する。
 小沢グループが「野党が野田内閣不信任案を提出すればこれに乗る動きが生ずる」とすごんでいるが、これは「小沢新党」を意味することになる。しかし展望は開けるか。今年70才になる「政局の小沢」が新党を作っても、有権者は「またか」と言うだけで、何の希望も見いださないだろう。どんな政策を打ち出しても、崩壊したマニフェスト作りの“主犯”の言動を信ずる者はいまい。小沢が大阪都構想の大阪市長・橋下徹に接近しているのも、橋下の起こす「風」に便乗しようとしているに過ぎない。他人頼みでしか、新党のエネルギーは出ないと踏んでいる証拠だ。
 だからといって「新党ー政界再編」の動きが可能かというと、これも極めて難しい。野党は小沢が不信任に同調すれば歓迎するだろうが、自民党も公明党も「悪魔と手を組んで」まで政権を獲得しようとするだろうか。疑問だ。なぜなら不信任が可決されれば野田は間違いなく総辞職でなくて解散を選択する。小沢の一番恐れる事態となり得るのだ。選挙後、小沢新党は惨敗して相手にされなくなるだけだ。だから小沢の最近の行動は「新党」への流れにブレーキをかけるのに懸命なのであろう。
 年末に急きょ3つの小沢グループを統合して106人の「新しい政策研究会」を作ったのも、離党者を増やさないよう“たが”をはめるのが主目的だ。それでも先の見えない連中が解散を恐れる余りに、理念も主義主張もなく政党交付金だけが目当ての「新党きづな」なるものを作った。人間の権力欲とは恐ろしいもので、「風」で当選したことが分からない議員が、代議士を2年半もやると、「まだやりたい」と、うろたえるのだ。小沢は連動を恐れて懸命の阻止行動に出たが、力及ばずといったところだ。要するに小沢はグループの数と結束力が低下する連鎖が起きることを警戒しているのだ。
 これはとりもなおさず、「民主党あっての小沢」を意味する。民主党があるからこそ“内弁慶”が通用するのだ。民主党が分裂崩壊しては小沢の存在感は政界から喪失しかねない。小沢周辺は最近4月の政治資金規正法違反事件の判決に関して「無罪を獲得したら、9月の代表選に立候補する」という情報をしきりに流しているが、これこそ捕らぬ狸の皮算用だ。逆に有罪判決となれば一切の身動きが取れなくなることを忘れている。希望的観測で政治を引っ張るしかないのが実情なのであろう。
 こうして「小沢政局」の実態は袋小路にあるが、小沢が106人を確保している現実は無視できない。新党は無理でも党内でぎりぎりのせめぎ合いをする数は一応ある。今後、消費税法案作成と提出をめぐって、盲目的な反対の動きを展開するだろう。ここに来て消費増税実現に向けて目の色を変えて突き進み始めた野田とは激突のコースをたどるだろう。野田は5日、野党に対して「政局より大局で」と訴えたが、これはまず最初に小沢に対して言うべき言葉だろう。


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◎消費税政局で民主政権存亡の攻防へ

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◎消費税政局で民主政権存亡の攻防へ
 太筆書きで展望するなら今年の政局は、民主党政権が野党の攻勢と内乱で危急存亡の事態に直面するということだ。内閣不信任案可決なら首相・野田佳彦はおそらく解散・総選挙に踏み切らざるを得ないだろう。どうしても消費増税法案を通すなら話し合い解散しか手はない。しかし選挙に勝つ展望はゼロに等しい。政局は大展開して自民・公明両党を軸とした政権に復帰する公算が大きい。
 4日の記者会見で野田は高揚感あるトーンで、チャーチルの言葉を引用して「ギブアップ」(屈服)しない姿勢を打ち出したが、状況をよく掌握していない。案の定、野党は総反発だ。ただでさえ激突含みなのに、簡単に与野党協議が動くとみる方が甘い。当面の展望を切り開くために野田は、月内にも内閣改造に踏み切らざるを得まい。防衛相・一川保夫と消費者相・山岡賢次に対する問責決議問題がペンディングになっているからだ。このままでは通常国会の日程協議にすら入れない。消費増税法案をめぐる与野党協議など不可能に近い。両相を事実上更迭することしか道はないのだ。改造して通常国会の開会にこぎ着けるしかない。更迭せずに中央突破なら、確実に行き詰まる。
 しかし通常国会では、野田が「不退転の決意」で取り組むことを公言した消費増税が、野党の反対と与党内の造反で、激動要素として存在し続ける。いやしくも本質的には政党交付金目当てで民主党を離党して新党を作った議員らが4日、「新党きづな」を届け出たが、薄汚い上におこがましい。「きずな」は大震災からの復旧・復興を目指す神聖なる合い言葉だ。今後受け皿的に若干増えるかも知れないが、罰が当たって選挙で雲散霧消する。
 こうした中で消費税政局は、野田政権に第一波と第二派の危機をもたらすだろう。第一波は3月末、それで打開しなければ第二波が6月末に襲来する。3月末危機は何故起こるかというと、野田が公約した消費税法案の同月提出が実現できるかどうかが焦点となるからだ。まず消費税に反対する小沢一郎グループが、法案作成の段階から攻勢を仕掛けるだろう。素案は暮れにまとまったが、法案がまとまらない可能性がある。野党はそこを見込んで消費税をめぐる与野党協議は、「民主党内をまとめるのが先決」として本腰を入れないだろう。まとまらなければ野田のリーダーシップがまともに問われる問題である。加えて野党は予算関連法案をめぐっても、その成立を引き延ばし政権を揺さぶるだろう。政権内部の動きと野党の動きが複雑に絡んで、野田を追い込む。これが3月危機だ。
 何とか消費増税法案をまとめて、国会提出しても、成立させるのはラクダを針の穴に通すほどに難しい。まず、衆院が通るかというと小沢グループ100人余が造反すれば通らない。60人の反対で可決できないのである。よしんば衆院を通過させることが出来ても、参院はねじれており可決成立は不可能に近い。野党は解散に追い込むために早ければ3月危機の時点で、遅くとも6月末までには内閣不信任案を提出するだろう。同不信任案は小沢グループが離党覚悟で賛成に回れば可決される。たとえ不信任案が否決されても、参院に首相問責決議が出されれば可決となる公算が大きい。参院から首相が否定されても、法的には無視すればよいが、野田は無視できない状況に追い込まれるだろう。結局解散・総選挙となる公算が高い。
 従って野田がまさに命がけで成立を図る消費増税法案は成立しないまま選挙突入となり得るが、これを回避する道はただ一つある。筆者が昨秋から指摘している話し合い解散である。どっちみち解散に追い込まれる状況に直面して、野田は消費増税実現を条件とする話し合い解散の誘惑に駆られる可能性が予見できるのだ。自民党にしてみても、政権交代を達成しても消費税の重荷を抱えていては政権は持たないという判断があろう。自民党幹部は「本当は野田に片づけさせるのが一番いい」と漏らしている。野田が消費税法案成立を条件に話し合い解散に応ずれば、後は国民の審判にすべてを委ねれば良いことになる。
 総選挙になった場合は、民主党が大敗するだろう。小沢の言うように100議席を大きく割るかも知れない。よく現段階の世論調査で自民党が伸びていないことを理由に、民主党の大敗はないという見方があるが、通常の世論調査では総選挙の帰趨(すう)は判断出来ない。3年前の総選挙も、自民、民主は支持率が拮抗していたが、総選挙ぎりぎりになって、大きく民主党が自民党を上回って圧勝となった。浮動票が動いたのだ。今度の浮動票は、偽まんのマニフェスト政治の崩壊、2代にわたる失政首相に次いでの消費増税一筋首相を嫌気して、野党に動くだろう。前回は「今度だけは民主党に入れさせてもらう」という層が、民主党政権の体たらくで猛省を促されているのだ。自・公・みんなの各党が議席を伸ばす可能性が高い。大阪市長・橋下徹が政界に進出しようとしても、ノックを当選させたような「大阪のムード」は特殊であり全国的に波及しまい。したがって自公政権にみんなの党が加わるような政権形態が予想される。今年の政局を大きく俯瞰(ふかん)すれば政権交代ありの流れだろう。
 
 


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◎「福祉なくして政局あり」の小沢の反消費税

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◎「福祉なくして政局あり」の小沢の反消費税
 基本的にはエゴの極みである政治家の言動にも幾ばくかは国家・国民への目線があるものだが、いまや消費税反対の中核となった民主党前代表・小沢一郎の姿勢だけは「質が悪い」の一言に尽きる。端的に言えば「福祉なくして政局あり」であり、政治姿勢としての国民不在がここに極まった。小沢に扇動されて深い思慮もなく消費税反対署名に乗り出す民主党議員らも度し難い。
 2012年度税制改正大綱の決定を受け、民主党は週明けから消費増税を巡る論議を本格化する。首相・野田佳彦は増税素案を「年内めどに決定」と述べており、政権内の論議は本格化する方向だが、局面は緊迫の一途をたどる流れだ。何故かと言えば「消費増税小沢の乱」が待ち構えているからだ。
 小沢は11月中旬から、観測気球的に消費税反対発言を繰り返したが、次第にエスカレートさせている。しまいには「今消費税を上げれば党は2つに割れる」とまで言ってすごんでいる。11日も「消費税などの増税は、少なくとも政権交代のときに我々が言っていたこととは違うので、強行するなら『それはちょっと違うのではないか』と言いたい」とのべ、公約を盾にした反対論をぶった。しかしこれは建前論であり、誰が見ても破たんしたマニフェストに固執するのはおかしい。小沢の狙いについては当初から、消費増税の実施が早期解散に直結し、小沢支持グループの雲散霧消につながることにあると指摘してきたが、この見方は今も微動だにしていないと思う。総選挙イコール小沢陣営の壊滅であり、小沢の政治家としての生命が危うくなる瀬戸際なのだ。
 もともと小沢は消費税増税論者であったはずだ。忘れもしない1994年2月3日、当時の首相細川護煕がもの狂いでもしたかのように突然未明に記者会見して、消費税の税率を当時の3%から7%に引き上げて国民福祉税にするという構想を打ち出した。まさに「殿ご乱心」だが、振り付けたのは当時大蔵事務次官・斉藤次郎に理論付けさせた小沢に他ならない。
 それが、民主党政権になると、政権交代狙いで消費増税などはかなぐり捨てて、2年前の選挙公約で消費増税を否定して、政権を奪取したのだ。しかし、財政の実情は小沢が増税を必要とみた94年とは比較にならないほど窮迫しており、現段階での反対論は、まさに根拠がない。小沢は口を開けば「党が割れる」「民主党員を無視し、ばかにすると必ず大きな鉄槌(てっつい)が下されると」と大げさだが、それではいかにして社会保障を維持するかについては全く語らない。要するに消費税を自らの政治権力維持の道具としてのみ使っているのだ。
 小沢の唯我独尊路線を突き詰めれば、国家財政はギリシャ、イタリアのように破たんし、年金の縮小、医療制度の崩壊、福祉事業の後退は目に見えている。問題は一知半解の小沢チルドレンだけでなく、中間派を含めた一般民主党議員の中にも、小沢の扇動に乗って盲目的な反対論が台頭してきていることだ。小沢側近は200人は集まると言うが、200人と言えば昨年の代表選で小沢が獲得した数字に他ならない。しかしいくら民主党内でも消費税で小沢の手のひらで踊るような議員が200人にも達すれば、まさに責任政党としての立場の放棄に他ならない。
 いずれにしてもこれまでは少しは愛嬌のあった小沢政治だが、今回ばかりは邪道へと踏み込んだ。問題は党の要の幹事長・輿石東が野田と小沢の間でどう動くかだが、野田がまとめようとする消費増税素案を、党ではまとめずに先送りして対応することを検討しているという。触らぬ神に祟りなし戦術だが、党内は収まっても野党の猛反発は必至だ。
 野党は政府だけが素案を作って与野党協議に提示しようとすれば、確実に「味噌汁で顔を洗って、おとといおいで」とはねつけるだろう。このような政治情勢を見る場合は単純化した方がよい。正義か邪悪かの戦いで見るのだ。そうすれば小沢の邪悪ぶりが鮮明に浮かび上がってくるのだ。紆余曲折はあっても、最後には正義が勝つ。
【筆者より】旅行のため今年はこれで最終稿とします。新年5日から再開します。どうぞよいお年を。


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◎石破旗揚げでポスト谷垣は“石石対決”の様相

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◎石破旗揚げでポスト谷垣は“石石対決”の様相
 民主党の場合は54才の首相・野田佳彦がつぶれれば49才の政調会長・前原誠司への流れであり、世代交代は定着する。自民党はどうかというとまだ古色蒼然たる派閥の長が幅を利かせているが、66才の総裁・谷垣禎一がづっこければ、いずれも野田と全く同年齢の石破茂か石原伸晃へと変わる流れだろう。「石石対決」がささやかれるゆえんである。民主党政権の体たらくから言って政権交代はあり得るから、自民党内の確執は首相の座を目指したものになり得る。
 昔から永田町では「人が良いは馬鹿の代名詞」と言われる。谷垣を馬鹿と言ってはかわいそうだが、人が良いことは確かだ。これで政権を簒奪(さんだつ)出来るかどうかだが、それは野田を解散に追い込めるかどうかにかかっている。解散に追い込めれば、増税法案成立の前であろうと後であろうと「消費税選挙」となり、政権交代の可能性が強い。功労者である谷垣が官邸の椅子を仕留めるだろう。
 しかし、追い込めない場合は来秋の総裁選挙で確実に交代となる。もはや古賀誠(71)、伊吹文明(73)、額賀福志郎(67)、町村信孝(67)の時代ではあるまい。町村だけは若干残っているような気もするが、後継は「石石対決」が軸となりそうだ。石破と石原のどっちが強いかだが、折から、石破は自らの政策集団を38人集めて旗揚げし、事実上総裁選への名乗りをあげた。38人という数は総裁選出馬条件の推薦人20人を軽くクリアしており、玄人から見ると足がかりをつかんだことになる。石原は有利な幹事長ポストを握っており、基本的には谷垣からの禅譲路線であるという。
 10月の自民党人事でもっとも奇異に見えたのが「石破外し」だろう。マスコミへの好感度で政界トップクラスの論客を外して、辛気くさい政調会長に変えた結果、自民党の発進力と破壊力は半減した。これから民主党を追い詰めなければならないという肝心なときにやる人事ではない。石破本人は「政調会長職を続けて3年やったケースはない」というが、腹に据えかねていたことは確かだ。その証拠に政策集団旗揚げの動きが人事の直後から表面化した。石破は消費税にしても環太平洋経済連携協定(TPP)にしても、煮え切らない執行部に対して歯にきぬを着せない批判を展開しており、谷垣も煙たい存在だったのであろう。 
 これに対して幹事長に勝ち残った石原は、言うなれば“爺殺し”的だ。父親で“専制君主”の慎太郎への対応でなれているのか、長老に取り入るのがうまく、派閥の長らの覚えもめでたいのだ。しかし、その発言たるや場当たり的で優柔不断に見える。石破がTPPで明白に「推進」の立場をとったのにもかかわらず、石原は最初はAPECでの参加表明反対、その後「ステージからは動いた」と事実上の方向転換。重要ポイントでこれでは他は推して知るべしだが、9.11テロを「歴史の必然」、放射線測定を「市民に線量を計らせないようにしないといけない」、反原発を「集団ヒステリー」といった具合だ。何でもしゃべればいいと言うものでもない。一方、石破は理路整然としすぎていて、返って危うさを感ずるが、石原はテレビのタレントやコメンテーター的で、軽くてその場限りの発言が多い。
 石破も石原も政治家2代目だが、石破が野人的な側面があるのに対して、石原は2代目的な優柔不断さが随所に現れている。石破は線が太く、石原は細い。そもそも政権を目指すなら戦い取る姿勢が不可欠だが、若いのに“禅譲狙い”が本当なら情けない。やるなら石破のように“旗揚げ”すべきだろう。長老の覚えがよくても、国家は担えない。こう見てくると「石石対決」は石破の方が勝ちそうな気もするが、政局は「不条理劇場」。まだまだ分からんのだ。総選挙で石破、石原がそれぞれ何人当選者を増やせるかにもかかっている。


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◎野田は“3重苦”で「姑息のどつぼ」にはまった

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◎野田は“3重苦”で「姑息のどつぼ」にはまった
 根本的な解決をしないで一時しのぎをすることを「姑息」というが、最近の首相・野田佳彦は「姑息のどつぼ」にはまった感が濃厚だ。閣僚への問責決議、消費増税、普天間移設問題の“3重苦”を抱えて対応が本筋を外しているのだ。臨時国会終了後は自ら選んで“五里霧中”の海域に突入してゆくようでもある。
 姑息の第1は、9日上提される問責決議への対応。同決議は、防衛相・一川保夫と消費者相・山岡賢次に対して行われるが、一川は確実に可決され、山岡も可決の方向だ。野田は両相を「襟を正して職責を果たしてもらう」と一応擁護の姿勢をみせている。しかし、一院の意志として閣僚の存在を否定したものが、例え法的拘束力がないにせよ、放置して済むものではあるまい。野田は昨年末の2閣僚問責可決後の経緯をつぶさに見て分かっているはずだ。
 放置すれば「不退転の決意」で望むはずの消費増税をめぐる与野党協議が動かなくなる上に、通常国会も冒頭からの空転が避けられない。その前の日程協議にも野党は応じまい。一番よいのが2閣僚が自ら辞任してくれることだが、それもしそうもない。そこで姑息なる小幅改造説が野田周辺から台頭しているのだ。改造の形で「死に体2閣僚」を切るというのだ。改造なら自らの任命責任を直接的に問われないし、小沢一郎も黙認するだろうという思惑も見え隠れする。
 その消費増税も、野田の発言は勇ましい。年末までに時期と上げ幅を決定しようとしている。その内容は2013年秋以降にまず税率を7~8%に引き上げ、15年以降に10%にする案が有力だ。これに対し、増税反対に凝り固まっている小沢が待ったをかけている。小沢は7日グループの会合で、出席者約40人を前に「財源が足りないから消費税率を上げるというのでは国民は納得しないし、次の選挙では支持されない」と真っ向から反対の意思を表明した。同グループは近く増税反対の署名活動を始める構えだ。
 こうしたなかで出てきている構想が、消費増税法案に景気に配慮して凍結できる条項を盛る構想だ。野田が、消費増税法案に景気が悪ければ増税を中止できる「景気条項」を盛り込む方針を固めたというのだ。もともと 政府・与党が6月に決めた「社会保障・税一体改革成案」に増税の前提として「経済状況の好転」と明記されており、その線上にあるものだが、明らかに小沢ら反対派を意識した対応だろう。妥協をほのめかしつつ成立を図るという姑息な手段であり、いったん成立してしまえば、行け行けどんどんとなるのは目に見えている。
 普天間移設問題も、オバマに公約した年内の環境評価書提示も、実態は手続き論であり、県知事がこれに応じて辺野古埋め立てを認めることはもはやあり得なくなった。それでも年内提示にこだわるのは、米議会もにらんだその場しのぎでしかない。度重なる民主党政権の失政で、沖縄は県ではなく「沖縄国」の様相を呈しだした。それももっとも勢力的な「首脳外交」を展開しなければ微動だにしない状況に陥っている。このままでは流れは「普天間固定」であろう。したがって事務手続きを行うこと自体が本質的解決につながらない時間稼ぎの姑息な手段となっているのだ。
 野田はこれほどの重要懸案を抱えながら訪沖しようとしない。一川などを訪沖させても、現地を激高させる効果しかない。この自ら動かない傾向も野田政治の特色だ。小沢が消費税反対を述べるなら、小沢と会談して説得すべきだ。党員資格停止中の人間に首相が手も足も出ないのでは嘆かわしい。小沢の方から「野田君が会いたいというなら、別に僕は拒まない」と言われている始末だ。消費税をめぐっても与野党協議もさることながら、テーマが大きい。自民党総裁・谷垣禎一や公明党代表・山口那津男に党首会談を持ちかけて、堂々とイニシアチブを取るべきではないか。手練手管はすぐに見抜かれることを忘れない方がよい。


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◎「致命的」と思わぬ一川の存在が「致命的」

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◎「致命的」と思わぬ一川の存在が「致命的」
 暗愚もここまで来ると「馬鹿に付ける薬はない」ということになる。防衛相・一川保夫が自らの責任について6日、「致命的なものは無い」と弁解したが、「致命的なものがないと思う発想が致命的」であることが分かっていない。自らの発言が及ぼす影響をこれほど理解していない閣僚は、はじめてお目にかかった。ただでさえ不可能な普天間移転など、かすみの彼方に飛び去ったと言わざるを得まい。
 防衛省は閣僚も幹部も伝統的にまさに「失言のデパート」だ。背景には、保守対革新の安保論争や憲法9条論争があった。従って過去には理念・信条に根ざす発言が問題となるケースが多かった。93年の中西啓介の「半世紀前に出来た憲法に後生大事にしがみつくのはまずい」発言や、07年の久間章生の「原爆投下はソ連の参戦を防ぐためにしょうがない」発言がその典型であろう。しかし一川の場合は自らの「防衛素人」発言が物語るように余りに安っぽくて、まるで「失言の100円ショップ」だ。
 沖縄防衛局長の発言は書くだけでもペンが穢れるから書かないが、一川の失言シリーズは、就任早々から始まった。まずは「安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロール」発言。次いで、国賓のブータン国王夫妻の宮中晩餐(ばんさん)会を欠席して、政治資金パーティーに出て「こっちの方が大事」。局長の暴言に関連して、「重荷を背負った」。普天間移設の原点にある米兵の少女暴行事件を「ランコウ事件」といった具合だ。
 問題は政府・与党首脳が一川をかばうことに原因がある。首相・野田佳彦が「一川氏と一丸となって沖縄の理解を得る努力をする」と“過剰擁護”すれば、幹事長・輿石東は「辞める必要ない」と断定。これでは一川も「野田総理らから激励を受けた」とますます自信を持ってしまうのだ。「豚もおだてりゃ木に登る」となる。「致命的なものがない」発言もここから出た。
 しかし、致命的なものはありすぎて困るのだ。まずルーピー鳩山が毀損した沖縄との関係にダメ押しの一撃を加えた。一川が陳謝に訪れても知事がわずか8分しか会談せず、名護市市長の稲嶺進からは、「担当閣僚の任にあるべきではない」と更迭論が出るほどである。沖縄はもはや感情的な反発で凝り固まっており、何を言っても聞く耳を持たなくなったと言ってよい。したがってもともとアメリカ向けのアリバイ作りに過ぎない環境評価書を、たとえ年内に沖縄県知事・仲井間弘多に提出できても、仲井間が受け取るかどうかが問題となる。受け取っても意見書は「ノー」となることが確実であろう。それにもかかわらず、辺野古埋め立を強行すればどうなるか。ピケを張った老人に死人でも出ればもう終わりだ。
 要するに普天間移転は実現しない方向にむけて、一川の存在が決定的な材料となったのだ。一川が「もともと駄目だから致命的なものではない」と思っているとしたら度し難い。南スーダンへの自衛隊の派遣が決まったが、自衛隊員にしてみればこのようなトップの激励を受けて、命がけの任務に就くのではたまるまい。
 すべては野田の“邪心”に根ざすことでもある。一川を守れるところまで守ったふりをすれば、消費増税でおかんむりの小沢一郎の覚えがよくなるという一点に尽きる。問責決議が成立した場合には、自らの手を汚さずに早晩辞任させることが出来ると踏んでいるのだ。ことはアメリカへのアリバイ作りだけでなく、小沢へのアリバイ作りとなっており、これではまっとうな御政道は成り立たない。


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◎野田は対小沢の二正面作戦を避けた

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◎野田は対小沢の二正面作戦を避けた
 さすがの野田も、かつての大日本帝国のように中国戦線と太平洋戦線の二正面作戦ではたまらないとみたのであろう。野田は消費税増税と防衛相・一川秀夫更迭のうちまず消費税を正面に据えたのだ。閣僚更迭は後回しにしたのであるが、いずれにしても「引くも地獄進むも地獄の様相」を帯びる。一川と消費者相・山岡賢次は、当分“死に体”のままさらしておくしかないのだろう。
 先週末からマスコミが一川の問責決議前の辞任説で突っ走っていたが、結果は間違った。政調会長・前原誠司が「少し勉強不足が過ぎる」言ったことなどがきっかけだが、野田の党内戦略から言えばもともと無理がある。野田はかねてから消費増税に関して年内に素案をまとめる方針を明らかにしていた。しかし小沢一郎が目の色を変えて反対しており、幹事長・輿石東も内心では消費増税反対とみた。野田は消費増税では、その小沢に対して真っ向から対決せざるを得ないのだ。5日に野田は、「不退転の決意」を表明した。消費税率10%への引き上げ時期や税率を明記した「素案」を年内をめどに取りまとめるよう政府・与党に指示したのだ。年末に向けてはこの超重要課題の処理で、閣僚更迭などやっていられないのだ。
 一方で、いくら暗愚でも一川と、「疑惑がスーツを着て歩いているような大臣」(自民党・稲田朋美)山岡賢次は、よりによって小沢グループだ。とりわけ一川は輿石が推した人事であり、山岡は小沢が推挙している。その2閣僚を直ちに切ったら、間違いなく小沢は臨戦態勢に突入する。今のところは野田に寄り添っている輿石も離反するだろう。したがって、野田は問責決議が可決される前から一川を罷免しても何の得にもならないと判断したのだ。
 それより、事態の成り行きに任せた方がよいとみたのだろう。折から自公両党は一川に加えて、山岡の問責決議案も国会最終日の9日に提出する態勢を整えた。提出されれば可決となる流れだ。通常、辞任をしなければ可決と同時に参院の審議はストップするが、野田は国会を延長をするつもりはないから、両相共におそらく辞任しないまま宙ぶらりんの状態で推移させるのだろう。それに現段階で辞任させれば野田の求心力ががたがたになりかねず、消費増税とりまとめにも影響する。
 ここは何としてもしのいで、野田としては消費増税素案を年内にまとめ上げるために全力を傾注したいのだ。しかし過去5人の首相と閣僚は問責を受けて、いずれも“死に体”となり、結局は辞任に追い込まれている。とりわけ消費増税の素案がまとまれば、消費増税準備法案作成に向けて野党との交渉をテーブルにのせなければならない。したがって通常国会まで2閣僚を辞任させないまま推移させるわけにはいくまい。去年の仙谷由人、馬淵澄夫の例とそっくりの事態に陥るのだ。
 前首相・菅直人と同様に小幅の内閣改造を断行するか、更迭・補充の形を取るかは別として、「暗愚と疑惑」の2人は切られる方向であろう。一川は精神的にぷつんと切れて、自ら辞任するかも知れない。はっきり言えば野田は小沢を意識して、“外圧”を活用して2閣僚を辞任させるわけだ。しかしドミノ倒しの2閣僚辞任となれば、政権に与える影響は大きい。菅の場合は、あわや3月危機で退陣か解散かという事態が待ち受けていたが、大震災が発生して九死に一生を得た経緯がある。野田の場合は、当然任命責任を追及されることになる。閣僚への問責可決で首相問責で追い込まれる“下地”が出来、次第に解散・総選挙を視野に入れざるを得なってくるだろう。 


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◎オフレコ破りには取材源が“逆襲”する

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◎オフレコ破りには取材源が“逆襲”する
 クビになった前沖縄防衛局の田中聡の発言は言語道断だが、これも表に出なければ「発言」にはならない。記事にしたのは琉球新報記者であるが、発言はオフレコを前提にしたものであり、結果的にはオフレコ破りとなる性格のものであった。この経緯を観察してあえて言わしてもらえば、筆者だったら絶対にオフレコを破って書くことはない。なぜなら記者の財産は取材先との信頼関係であり、それを破ることは自らの存在を否定し、国民にとって不可欠なより一層重要な情報へのアクセスを不可能にする可能性があるからだ。多数で懇談する場で得た情報を書くには出席者全員の同意が必要だ。
 琉球新報が「『犯す前に言うか』田中防衛局長 辺野古評価書提出めぐり」と報じたのは先月29日。記事の末尾に「田中局長は非公式の懇談の席で発言したが、琉球新報社は発言内容を報じる公共性、公益性があると判断した」とオフレコを破った理由を説明している。確かに沖縄タイムズ紙との激しい競争がある中で、この記事を書けば、県民の感情を刺激して、大きな共感を買うことは間違いなく、あえてオフレコを破ってでも報道したくなるテーマであろう。報道すれば確実に政権を直撃する“英雄”にもなれるテーマである。表に出てしまえば公共性も公益性も確かにあるし、その場に居合わせた記者の感性が「県民として許しがたい暴言」と受け取ったであろうことも十分理解出来る。
 しかし冒頭述べたように書いてはじめて「公共性、公益性」の論議が「始まる」のであり、琉球新報の理由づけはあえてオフレコを破る真意については語っていない。職業には「掟」と言うものが必ずある。例えは悪いが「指詰め」が象徴する暴力団のそれから、ホワイトハウス詰め記者団の紳士協定(a gentlemen's agreement)にいたるまで様々だ。ホワイトハウス詰め記者の場合も少数によるオフレコ懇談があるが、ウオーターゲート事件の激しい政局取材合戦の最中でもオフレコ破りがあったという例は皆無であった。防衛局長の懇談に出席していた朝日新聞の那覇総局長が3日付朝刊の〈記者有論〉で「いまこう書くのは大変気が重いが、たぶん記事にしなかったのではないかと告白せざるを得ない。酒の席で基地問題を男女関係に例え、政府が意のままに出来るかのように表現するケースは、防衛局長に限らず、時々聞いたことがあるからだ」と述べていることは注目される。出席者の大半がこうした考えであったことを物語るからだ。しかしこの種の発言はいったん外に出ると「正義」としてまかり通る。事実上解禁となり、他の記者も追いかけざるを得ない。
 なぜオフレコは守らなければならないかだが、まず「小の虫を殺して大の虫を助ける」ということがある。政治記者の場合大の虫とは政局の動き、外交・内政とその帰趨、国会の展望など、国家の命運に関わる超重要課題を重要視する。酒の会などでの取材対象の失言は、その重要課題の「傍証」とはなるが、決定打とはならないケースが多く、オフレコを破ってまで書かない。その代わりより重要なニュースで勝負するのだ。オフレコなら本音を聞けるケースが大きいのだ。次に重要なことは、古い言葉だが、他社との“仁義”がある。1人だけ抜け駆けをして、他の仲間の記者を裏切ることはやるべきではないし、やれば絆は切れる。どうしても記事にしたいという問題が生ずることがあるが、その場合は幹事社にアピールする。幹事社は出席者全員に図った上で解禁かどうかを判断する。琉球新報の場合はこの手続きを踏むべきだった。
 よく言われるオフレコ懇談会批判に「記者は書くために働いているのであり、聞いたことはすべて書くべきだ」と言うものがあるが、これは多様な情報収集の現場を知らない。ゴミ記事に至るまですべてを書いて、重要ニュースが欠落する羽目になれば、それこそ国民共通の知る権利は達成されないのであり、ジャーナリスト失格ではないか。独自取材ならもちろん書くか書かないは自由だが、多数の場を間違いなく“利用”して得た情報を、勝手に書くのは“仁義”に反するのだ。
 新聞、通信社にはオフレコ懇談会や夜討ち朝駆けの内容を記者がメモにしてデスクに提出するのが通例だ。メモにした情報を政治部記者全員が掌握して、判断に誤りを来さないように期するためである。これには全く問題はない。しかし、最近はこのメモが政界などに出回っている。自民党前政審会長の山本一太が、自らのブログでこの傾向を分析している。山本によると「今の永田町には、マスコミ関係者との『オフレコ懇談』などというものは存在しない。懇談の相手が政府高官や党幹部なら、必ず『発言メモ』が本社に上がる」と実態を暴露している。
 したがって山本は「この記者に言えば、あそこらへんには伝わるだろうなと考えながら、言葉を選ぶ」のだそうだ。しかし自分のオフレコ懇のメモが回ってくることもあるようで、あきれている。山本は「今後はやけに詳しい記者メモが出回った時は、このメモを作った記者の実名を書かせてもらう」と警告している。取材源からの警告は初めて見たが、山本が読者数トップクラスの自らのブログで叩けば、その記者は永田町から総スカンを食らう可能性がある。もっともメモを書いた本人が流布することはまずあるまい。今後取材源が泣き寝入りするどころかwebを武器に反撃に出るケースが想定されて面白い。山本は「信頼関係のあるプロフェッショナルから、情報が漏れたことは一度もない。そういう人じゃないと、ディープな意見交換なんて出来るわけがない」と強調している。まさにいつの時代も記者と取材源は信頼関係だけでもっているのだ。


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◎野田Vs小沢がコリジョンコースに入った

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◎野田Vs小沢がコリジョンコースに入った
 このところ民主党元代表・小沢一郎による消費増税反対の発言が尋常ではない。1日は「鉄槌が下る」とまで言い切った。一方首相・野田佳彦は同日の記者会見で並々ならぬ決意を表明、「先頭に立つ」と宣言した。西部劇なら単線を遠くから二つの機関車が正面衝突のコースを走り始めたことを意味する。これを「コリジョンコース現象」という。おそらく激突して火花を散らすか、どちらかが急ブレーキを掛けるかのぎりぎり勝負となるだろう。
 観察していると11月15日の小沢と幹事長・輿石東の会談がきっかけとなっているように見える。会談内容は分からないが、以後小沢は環太平洋経済連携協定(TPP)や消費増税で野田批判を繰り返し始めた。TPPでは「古くさい卑屈な言葉の使い分けを外交で演じたのは、日本にとって大変なマイナスだ」と正面切って批判。30日夜には「いま消費税率を上げれば党が二つに割れる。このまま衆院解散になれば、戻ってくるのは50人ぐらいだ」と脅しをかけた。そして1日に至って「政府から消費税の問題も含めいろいろアナウンスがある。皆さんを無視し、ばかにすると必ず大きな鉄槌(てっつい)が下されると非常に心配している。政権交代の原点に返り、初心を取り戻さなくてはいけない」とまで言って脅しをかけた。
 せきを切ったように攻勢に出た小沢だが、輿石の方は消費税での発言を自ら封じてしまっている。しかし輿石はかねてからの消費増税反対論者である。1月の通常国会の代表質問では「『民主党は衆議院の任期中に消費税率を上げることはない』ということを一貫して主張してきており、果たしてそれが守られるのか、不安の声が聞かれるのも事実だ」と首相・菅直人を追及している。小沢・輿石会談はその後の動きを見ると「野田が消費税で目の色が変わっているのは困ったモンだ。痛めつけるか」くらいのことであったのだろう。小沢は「ボクがやるから君は黙っていてくれ」というところだ。輿石を温存して、いざというときの調停役または決め手に使おうということではないか。
 しかし小沢の発言を分析すると、危険な側面がちらついているのが分かる。「50人しか戻れない」がその典型だ。当選した308人のうち50人しか戻れないとなれば、小沢チルドレンは全滅だ。「お前ら、野田を捨てておくと消費税解散に追い込まれて、大変なことになるぞ」と言外に煽っているのだ。その煽りが利いてきて、党内はTPPの比ではないほど反消費税の声が満ちてきた。小沢は床に油をまいて回っているのだ。しかし「党が割れる」とは言っても「割る」とは言っていない。時事通信によると側近の元参院議員・平野貞夫が29日の講演で、小沢が「党から出ると簡単に言うな」と周囲に語っていることを明らかにしたという。さらに小沢は平野に「国民の生活が第一ということが守れる政権を続けることだ。今の政権にそれができないなら、そうさせることだ。その意見を多数にすることが(新党結成より)優先される」と語ったという。これなら条件闘争であり、新党結成の動きではない。いくら何でも裁判闘争中の刑事被告人が新党を結成できるかということでもあろう。「新党、新党」とうるさい亀井静香との会談も牽制球であることになる。しかし、こればかりは激突の“弾み”があるからまだ断定は出来ない。
 こうした小沢の動きについては野田は十分承知の上で1日の発言に至ったのだろう。何と「私が先頭に立ち、年内をめどに取りまとめるため政府内、与党内の議論を引っ張っていく」と発言したのだ。「先頭に立ち与党の論議を引っ張る」という“宣言”は、野田がはじめて投げ返した小沢に対する牽制球に他ならない。小沢の脅しに脅してぎりぎりのところで妥協を迫る政治手法には、あえて屈せずに無視して突っ張ったのだ。野田は側近に「私が一歩でも引いたら総崩れになる」と漏らし、ともすれば腰が引けている閣僚や側近らの奮起を促しているのだ。いずれにしてもコリジョンコースであることには変わりがない。年末までに素案がまとまるのか、それとも、あえなく野田が小沢に降伏するのか。民主党政権の正念場が到来しつつある。


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◎党首討論で野田がなぜ勝ったか

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◎党首討論で野田がなぜ勝ったか
 大震災で嫌々お見合いしていた与野党が、ついに“破談”に立ち至った。それも首相・野田佳彦と自民党総裁・谷垣禎一の党首討論は軍鶏(シャモ)のけんかのように、不毛の蹴飛ばしあいに終始した。総じて、谷垣の追及に迫力を欠き、6.5対3.5で野田が勝った。勝敗を分けたのは、野田が焦点である環太平洋経済連携協定(TPP)参加と消費増税で世論の支持を背景に地歩を築いたにもかかわらず、正面切って反対と言い切れない谷垣が手続き論に終始した結果だ。
 本来党首討論は大政党のリーダーらしく、じっくりと国政の在り方を双方向で議論する場であったはずだ。ところが谷垣は対話どころか内容に欠ける揚げ足取り質問に終始した。これでは一般議員の予算委の点数稼ぎ質問と変わらず、野田に作戦負けをした。無理もないTPPでは幹事長・石原伸晃が参加に前向きの姿勢を見せているように最終的には参加を是認するしか道はなく、消費税では参院選で10%への増税を公約しており、本質的な差異がないからだ。従って核心を突けず、勢い手続き論に傾斜せざるを得なかったのだ。 民主党がマニフェストに事実上消費税反対と書いて総選挙に勝って、今度は推進することがけしからんと言っても、消費税導入が必要であるという大局の認識では変わらない。結果として重箱の隅を突っつく追及となったのだ。早期解散・総選挙で政権奪回に持ち込みたいという焦りが、質問を上滑りさせたのだ。マニフェスト違反の政権の欺瞞(ぎまん)性は国民が審判すればよいことであり、消費税の是非とは本質的に違う。政権が自党と同じように消費税に前向きに転じたのであれば、これを是認する大人の寛容さが必要だ。
 そうした自民党の抱える矛盾を野田は逆襲した。TPPに関しては野田は谷垣が当初は「交渉に参加することまで反対できない」と述べていたにもかかわらず、その1週間後にAPECでの参加表明に反対したことをとらえて「立ち位置を示せ」と迫った。消費税に関しても自民党の財政健全化法案に「超党派会議で政府の素案を検討するとある」と指摘、素案の段階での与野党協議を求めた。TPPに関して谷垣は、政府から情報が全然伝わってこないと反論したが、これは自業自得だ。外務省も経産省も何でも反対野党化した自民党に情報を渡すわけがないではないか。いまや官僚も自民党を「情報を渡しても安心な政党」とみなさなくなったに違いない。
 最後に谷垣は「国民との信頼関係なくして国家の大事を成し遂げられるはずがない。だから信を問うて足腰を鍛え直して出てこなければならない」と取って付けたように解散・総選挙要求したが、野田に無視された。逆に野田は「同じ思いがあるのなら国民のために成案を得るようお互いに努力しよう」と呼びかけたが、確かにに「賛成だが反対」という谷垣の主張には無理がある。
 党首討論の傾向は一貫して党首が言いっ放し、けなしっぱなしの風潮が定着してきたが、とりわけ今回はその傾向が目立った。背後に解散綱引きへの思惑があるのだが、これでは進歩がない。問題は質疑の時間が少なすぎることだ。谷垣の場合も持ち時間が40分では、相手を切ることに精一杯となり、じっくり本質をえぐるところに至るまい。すくなくとも3時間は時間を取って、怒鳴り散らすのではなく対話形式で問題の本質をえぐり出す形が必要だ。
 結果的に党首討論を通じて鮮明になったのは国の命運を左右するTPPと消費増税において、民主、自民両党に大きな差異がないという点であろう。谷垣はそこを、手続き論で攻めようとするから無理がある。もし自民党が政権に復帰したらどうするのかを考えるべきだ。ここは潔く国家百年の大計を優先させて、対決と協調を是是非非で判断すべき時ではないか。谷垣は消費税を「素案でなく成案を閣議決定せよ」と言うが、素案の段階から与野党協議に応じて、自民党の主張を取り入れさせる方がまっとうな政治だ。民主党内で小沢一郎が邪悪な消費税反対論をぶち始めており、谷垣は野田のお手並み拝見といきたいところだろうが、むしろ逆に野田サイドに立ってはどうか。いずれにしてもTPPも消費税も総選挙の焦点になっても争点にはなりがたい。議論としては双方痛み分けなのだが、捨てておいても次の総選挙では消費増税が影響して、政権政党であるが故に民主党が有権者の腹いせにあって負けるのだ。谷垣はそこに理解が至らない。ドジョウに食われるようでは、討論後のドジョウ屋の酒もさぞや苦かったことだろう。


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◎全国紙は「消費税で共同宣言」の渡辺提言に同調せよ

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◎全国紙は「消費税で共同宣言」の渡辺提言に同調せよ
 何と28日付の朝日新聞で読売会長・主筆渡辺恒雄の、矍鑠(かくしゃく)たるインタビューを読んで、いつもながら波長が全く同期しているのに気づいた。「清武の乱」が主要テーマだが、こんな話は雑魚が鯨に噛みついているようなものでどうでもいい。太筆書きの政論が絶妙なのだ。「野田佳彦首相はいいんじゃないかな。うちの社論に80%近い感じがする。正直だし、やる気がある」「若手なら小泉進次郎君がいいね。中堅では林芳正君や石破茂君もいい 」など全く筆者と同じだ。自民党幹事長・石原伸晃や総裁・谷垣禎一は名前すら出してもらえなかった。「政治が劣化し小型化している」もその通り。大阪市長・橋下徹如きに振り回されているのを見ればよく分かる。
 白眉は経済危機へのとらえ方だ。「このままだと、1929年の世界恐慌の比じゃない。経済パニックになるかもしれない。僕は朝日や毎日など他の新聞も巻き込んで、新聞社が一緒になって共同提言をするべきだと思う」と、60年安保の時の「七社共同宣言」と同様の提言を唱えたのだ。60年安保は左翼の革命思想と結びついて、デモがちまたに溢れ、新聞はこれを煽り、革命寸前まで行った感があった。新聞の「流血事件は、その事の依ってきたる所以を別として、議会主義を危機に陥れる痛恨事であった。いかなる政治的難局に立とうと、暴力を用いて事を運ばんとすることは断じて許されるべきではない」とする七社宣言で、潮が引くように収まった。そして渡辺は小沢の名前こそ挙げなかったが「政局にとらわれている場合じゃない。政争を1年休戦して、経済政策を片っ端から法律にする。TPPも、税と社会保障も片付ける。災害復興もどんどんやる。がれきがいまだに片付かないなんて、こんなばかなことがあるか。国家じゃないよ。それらをまともにやろうと思えば、まず消費税を上げること。ここは、朝日新聞と一致しているんじゃないかな」と消費税増税で政治休戦の宣言を提唱したのだ。
 ライバル紙を使ってナベツネ節の言わんとするところは、「清武」問題ごときではなく、まさにここだったのだ。折からナベツネの褒めた野田が消費税で突っ張り始めた。29日、消費税の税率や引き上げ時期をできるだけ具体的に記した大綱を、年内をめどに取りまとめるよう、近く指示する考えを示した。これは小沢の主張とは真っ向から対立する。消費税解散でグループ消滅を危惧する小沢は「強行すれば政権運営が不安定になり、党運営も厳しくなる。野党に攻撃の種も与える」と相変わらずの独善的な発言を繰り返している。なんとオオカミ老年・亀井静香とまでわざと会談してみせて「新党やるぞ」とばかりにすごんでいる。政治家は今こそ己を捨てるときなのに全く分かっていないで、また政局だ。
 これに野田周辺はまともに乗せられて理念も何もない先延ばし論が出始めた。こういうときに小沢に秋波を送って妥協しようとするかしないかで政治家の大小が決まるが、「小」を露呈したのが財務相・安住淳、国家戦略相・古川元久、幹事長代行・樽床伸二だ。一番大事なポジションの安住が「国会が風雲急を告げてくると、年内といかなくなる事情もある」と逃げ出した。古川も「年内にここまで決まっていなければいけない、というものが具体的にあるわけではない」。樽床が「政府の考え方を尊重するが、党の結束と両立しないといけない」と言った具合だ。このままでは、野田の消費増税路線そのものが危ういと感じていたが、野田はここにきて踏みとどまった。国会答弁で「まもなく政府・与党の改革本部を設け、改めて方向性を提示したい。すでに社会保障については、政府・民主党内で議論が進んでいるが、税についても年内をめどに具体化し、今年度中に法案を提出する運びで考えている。大綱の内容には、なるべく具体的なものを入れ込んでいきたい」と路線に変わりがないことを明言したのだ。
 野田は消費増税に失敗したら鳩山由紀夫、菅直人の両食言首相と全く同じことになると気づいているのであろう。そのぶれない姿勢があるからナベツネも評価するのだろう。今日の党首討論でもこの方針は明確にするだろう。小沢がかっとなって何をするか分からないが、ここまできたらガチンコ勝負も辞さない覚悟とみた。消費増税はまだとっかかりだ。ここでぶれたら一挙に政権基盤が液状化現象に突入する。消費税が出来ないとみれば海外のハゲタカ共が日本売りを浴びせかけることは目に見えている。ナベツネの言うようにここは各全国紙も野田を応援して「共同宣言」を出すべきだ。朝日の社長はどうした。自らの紙面で提唱されているのだゾ。毎日、日経、産経、東京も消費増税では異存ないはずだ。一番の頃合いを見計らって経済危機克服と消費増税と政治休戦の宣言を出せ。それにつけても渡辺は骨太で最後の言論人だ。長生きしてもらいたい。


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◎橋下は「市政」を固めてから「国政」に物を言え

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◎橋下は「市政」を固めてから「国政」に物を言え
 内容も実現性も不明の「大阪都」構想なるものを国に突きつけて、「年内にやらなければ衆院選候補を擁立する」という。新大阪市長・橋下徹が国政の脇腹にドスを突きつけた形だ。反対の立場を取ってきたはずの民主、自民両党も毅然(きぜん)と反応するどころか、「おたおた」として、世論や利害得失を計算し始めている。官房長官・藤村修にいたっては、自分の選挙を意識してか“すり寄り”姿勢まで見せ始めた。しかし、「市長さんよ冗談ではない」と言いたい。国に性急な期限を切る前に、自分の頭のハエを追うのが先ではないか。都構想自体が自治体レベルをクリヤしていないでないか。市議会の議決など問題は山積しており、それを無視してまず先に国の対応を求める。これではだだっ子市長だ。
 まるで総選挙で政権を握った鳩山由紀夫そっくりでもある。“民意、民意”と夏の蝉のように鳴き続けて外交・内政をろう断して、侮蔑と共に去った。そっくりな閣僚もいた。厚生官僚を真っ向から批判して厚労相となり、官僚から拍手ゼロで迎えられて、ほとんど何も出来ずに寂しく去った長妻昭だ。橋下の場合はもっと厳しい反応を受けるだろう。当選早々「政治に介入したり民意を無視した職員には去ってもらう」と、早くも市職員に対して人事権を振りかざして全面戦争を仕掛けている。目が据わった顔つきや発言ぶりから見るとまるでヒットラーだ。これでは真の政治は出来ない。
 そもそも大阪都構想なるものが、府と市を再編して2重行政を避けること以外に何か内容があったかということだ。橋下は小泉純一郎の「郵政改革」と酷似したワンフレーズ・ポリティックで選挙を行い、勝利をおさめたが、具体論がない。政令指定都市である大阪市・堺市と大阪市周辺の市を廃止して20もの特別区を作ると言う。大阪市内だけでも11の特別区をつくって区議会も設置する。明らかに膨大な財源が必要となるがどこから出すのか。2重行政どころか「財源多重行政」にならないか。区割り自体もどうするのか。大阪と堺とは文化も伝統も違う。水と油の側面があり融合できるのか。
 ハードルは枚挙にいとまがない。まず大阪市議会だ。維新の会は過半数がなく、他の政党は全党が都構想に反対している。橋下は議会が反対なら得意の「民意作戦」で、議会を解散するという。しかし解散するには有権者の3分の1の署名と、その後の住民投票で過半数を獲得しなければならない。筆者は選挙での「民意」は都構想だけに選択基準を合わせたとは思えない。なぜなら橋下が上記の区割りや財政問題などの具体論に踏み込まず、焦点をあえてぼかしたからだ。しかし2重行政が大阪の発展を阻害しているという主張には有権者が飛びついたのだろう。既成政党への批判票もあったに違いない。したがって都構想の内容が区割りを含めて明示された上での住民投票で過半数を得られるかは疑わしい。そしてその後の市議会選挙で過半数を取れるかどうかはもっと可能性が少ないのではないか。ビールのコマーシャルのように最初のうまさは持続しないのだ。また議会を解散しなくても都構想の実施には住民投票が必要だ。
 橋下は自らこうした問題を処理したうえで、国に法改正を求めるのが本筋ではないのか。国の立場からすれば生煮えの都構想なるものを、みんなの党のようにあやかろうとして「はいはいそうですか」と受け入れられるわけがないではないか。今や政令指定都市は19に達しており、愛知県でも「中京都構想」なるものが存在する。大阪だけ認めれば全国で安易な「疑似都構想」が走り出して収拾がつかなくなる。それでも衆院選に維新の会を近畿圏で擁立するというならやるがよい。確かに藤村をはじめ幹事長代行・樽床伸二、国会対策委員長・平野博文ら大阪府内選出議員はあえない最期を遂げるかも知れないが、国政を左右できる議席数確保は無理だろう。橋下の言う「70議席」などは夢のまた夢だ。そのミニ政党でどうやって大阪都実現のための地方自治法改正案などを通せるのか。
 民主党内は「地方分権の目指す方向と逆行する」とする反対論が強く、自民党も父親・石原慎太郎の影響下にある幹事長・石原伸晃が賛成しているほかは、慎重論が根強い。要するに選挙勝利の高揚感で、橋下はおごっているのだ。一週間休みを取ると言うが、頭を冷やせと言いたい。国政は一市長が振り回せるほど安易ではない。2重行政は府と市のトップを維新の会が占めたのだから、今こそ連携を密接にして解消へと動くべきではないか。まずその手腕が問われなければなるまい。出来るかどうか分からない派手な構想を振りかざして市政を停滞させる前に、維新の会の“実行力”で2重行政解消を実現するのが先決だ。それにしても全国紙は危うい「橋下政治」に発行部数を気にしてか、警鐘を鳴らさないのは問題だ。


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◎カメ発「幽霊新党」が総スカン

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◎カメ発「幽霊新党」が総スカン
 真夏の幽霊ならゾクゾクと寒気がするが、真冬の幽霊ではもともと寒いからゾクッともしない。国民新党代表・亀井静香が「幽霊新党」を語って、政界から総スカンと侮蔑を受けている。政党助成金目当てのうさんくささが原因だ。 
 政治家にも器量の大小があって、器の小さい政治家が発言すると総じて永田町がむかつく問題が二つある。一つは「解散」。他の一つは「新党」だ。お前にだけは言われたくないという感情が先に立つのだ。よい例が鳩山邦夫の新党発言だ。鳩山は去年の3月、「私は政界再編の坂本龍馬をやりたい」と述べて、この指とまれと動いたが、誰もとまらず、いまは尾羽打ち枯らしつつある。今の政界で「新党」と発言すれば、永田町がピリピリと反応するのは小沢一郎一人くらいのものだろう。亀井が集めて第3極を目指せるなどという判断はおこがましいのだ。小泉進次郞が郵政での親の敵とばかりに「新党新党と言うが、言う人が新しくない」と言い切った通りだ。
 にもかかわらず、亀井がひろげた大風呂敷に飛びついたのが産経新聞。なんと25日付朝刊トップで、でかでかと「亀井代表が新党構想、石原知事を党首」とやったのだ。筆者は瞬時に「カメに乗せられたな」と思ったが、その後の永田町の反応を見れば歴然。クソミソなのだ。まず、みんなの党代表の渡辺喜美が「政党助成金欲しさというのが露骨。助成金ありきの新党はすぐに飽きられ、必ず失敗する」と狙いを暴いた。名前を亀井に出された、たちあがれ日本代表・平沼赳夫は「彼の一人芝居だと思う。カリスマ性がないから石原慎太郎を呼んでこようとしている」と手厳しい。当の都知事・石原も「アイム クワイト オールド マン」と年をとりすぎていることを理由に拒絶の弁。大阪府知事・橋下徹は25日夜「新党に参加することはない」と断言。肝心の小沢グループも、小沢から若手に「乗らないように」とのお達しが届いていると言われている。
 かくして産経の報道は一夜にしてつぶれたのだ。朝日の扱いを見れば政治記者の判断力が分かる。朝日は26日朝刊4面のベタ扱いだ。無視すれすれくらいの判断が正しいのだ。それにしても亀井の最近の発言は常軌を逸している。「消費増税なら連立離脱」「TPPやるなら覚悟がある」など、ざっと数えただけで4回「政権離脱」発言を繰り返し表明している。それでいて今度は新党発言。まるで「オオカミ老年」と化している。狙いと原因はどこにあるのだろうか。一つは前首相・菅直人と比べると首相・野田佳彦が御しにくい点だろう。消費増税にしても亀井の言うことなど全く聞かない。TPPも亀井の反対を押し切って事実上の参加表明だ。これでは亀井が「命」とする郵政改革法案の成立などとてもおぼつかない。野田にしてみれば、消費税やTPPに反対する国民新党は、連立相手としての存在価値がなくなってきており、むしろ自公を説得する方が大切なのだ。
 加えて自民党筋は「菅の時は参院議員を自民党から10人引き抜くと言って、官房機密費をジャブジャブ使ったが、野田からは1銭も出なくなった」と解説する。たしかに亀井の一本釣りも6月に「雑魚」が1匹かかっただけで、後はなしのつぶてだ。亀井はその菅にも新党を働きかけたと言われている。しかしさすがに菅は名前が出されると悟って、その場で断ったようだ。
 ようするにカメさんは自分の出番がない上に、国民新党も依然支持率がゼロと行き詰まった。野田もよいしょをしてくれないし、面倒を見ようという財界人もいない。切羽詰まって空想性虚言症的な「新党」説を流したのだ。しかし名前に上げた主要人物すべてが拒絶反応を示すようではお終いだ。だいたい根回しもなしにイチかパチかの新党構想など、政党党首たるものが軽々しく口にすべきものでもあるまい。こけにされた国民新党幹部の1人は「はらわたが煮えくりかえっている」のだそうだ。そのうちにカメは裏返しにされて、日干しになるのがオチだ。
 


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◎解散への最大の武器は問責可決だろう

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◎解散への最大の武器は問責可決だろう
 案の定「話し合い解散」の石原伸晃発言に対して「幹事長失格」(伊吹文明)と厳しい反応が自民党内で生じた。「軽い」のだ。それはともかくとして、自民党は「解散」要求の掛け声だけは高いが、問題は嫌がる馬を水辺でいかにして水を飲ませるかにある。首相・野田佳彦は自殺行為に等しい「消費税解散」を避けるため、最後までじたばたするだろう。マスコミも自民党執行部もまだ解散への道筋を全く読めていないが、結局最大の武器は参院における問責決議可決しかあるまい。
  まず今後の政局の鳥瞰図を描くと次のようになる。野田は焦点の消費税増税案を年内にまとめて、準備法案として来年3月末までに国会に提出する。一方、今臨時国会は終盤で一挙に対立が盛りあがり、おそらく消費者相・山岡賢次の問責決議案が可決されるだろう。山岡は辞任を拒否するが、可決されれば遅かれ早かれ辞任に追い込まれるだろう。これが野党による政権攻撃の突破口となる。通常国会では冒頭から解散をめぐって対決ムードとなる。来年度予算案は衆院を多数で通過し成立するが、問題は予算関連法案だ。野党は予算を裏打ちする特例公債法案を人質にとって、野田を追い詰めようとするだろう。昨年の菅直人政権への攻勢と同様の手順だろう。菅は3.11大震災があって生き延びたが、通常の場合は予算関連法案が通らなければ政権は退陣か解散かの、ぎりぎりの段階まで追い詰められる。しかもその最中に野田は消費増税準備法案を提出するのだ。これはまぎれもなく3月危機であろう。
  ここで野党は解散・総選挙に直結する手段を講じなければならない。一番手っ取り早いのは内閣不信任案の可決だが、衆院においては圧倒的に与党が多く不可能だ。総選挙恐怖症の小沢一郎も今度は賛成に回ることはないだろう。成立させて解散を野田が選べば、小沢グループは壊滅する。小沢の言う「出撃しても戻れない特攻隊」となるからだ。不信任案が駄目となれば野党は問責決議を可決するしかあるまい。問責の材料は現段階でも山ほどある。野田が環太平洋経済連携協定(TPP)で“二枚舌”を使い、消費税では4年間導入しない公約を破って増税準備法案を提出したことを突くしかない。「法案は増税したことにならない」などという詭弁は通用しない。外交・内政にわたっての“二枚舌”をテーマとするのだ。
 過去の例を見てもこれほど格好な問責のテーマはない。首相への問責決議が可決された例は二度あるが、福田康夫に対しては後期高齢者制度の廃止に応じないこと、麻生太郎に対しては解散引き延ばしと発言のぶれがテーマだ。全くいいかげんな材料である。だいたい後期高齢者制度など政権が変わっても、いまだそのままではないか。それに比べれば“二枚舌”ほど簡潔にして明確な材料はあるまい。問責決議は不信任可決と異なり法的拘束力はない。しかし過去に成立した5例のすべてが結果的に閣僚は辞職、首相は退陣につながっている。福田の場合は3か月間持ちこたえたが、結局ぷっつんと切れた。麻生太郎の場合は解散・総選挙での与党敗退により、2か月後に退陣した。首相は、「ぷっつん」か解散・総選挙に追い込まれるのだ。
 問責の戦術としては3月下旬か4月に上提して一挙に解散に追い込むのがまず第1の手段だ。それでも野田はごねるだろうが問責さえ成立させれば主導権は野党にある。問題はマスコミが「参院の審議拒否はけしからん」と一週間後くらいから野党に矛先を向けるが、これに持ちこたえられるかどうかだ。自民党が死んだ気になってマスコミの攻撃から目をつむり、耳をふさいで、1,2か月間拒否し続ける度胸があるかということだ。続けられれば野田も音を上げる。解散を勝ち取るにはこれしかない。しかし固い契りがあるはずの公明党あたりが耐えられなくなって裏切る可能性もある。一方、野田が音を上げた場合に実現し得るのが、消費税、特例公債法案を成立させることを前提とした「話し合い解散」だ。これが実現する場合は6月の会期末となろう。通常国会ではこの3月危機と6月危機の二つのチャンスしかない。これを逃せば、その後の解散・総選挙の予想など「鬼が笑う」から出来ない。
 


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◎消費税での政界再編は机上の空論

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◎消費税での政界再編は机上の空論
 どうも最近大政党の幹事長としては発言に重みがないのが自民党の石原伸晃だ。環太平洋経済連携協定(TPP)のAPECでの参加表明に反対して首相・野田佳彦の問責決議案上提に言及したかと思うと、180度軌道修正して「日本の農業が壊滅するから参加すべきではないという議論をしているステージからは動いた」と事実上の参加表明だ。おまけに野田が離党すれば政界再編だという。自民党の論客というが、話が場当たり的で支離滅裂だ。ではその政界再編が消費増税を軸にあり得るかというと、まず困難だろう。出て行くとすれば小沢一郎だが、“沈む泥舟”に果たして何人乗るだろうか。
 石原の政界再編発言は「野田首相らが民主党を割ってでも消費税を10%にするんだと言い、私たちも割れるかもしれないが、自民党もそうやるんだと言えば、新しい政治体制ができるかもしれない」というものだ。しかし時局認識があさってを向いている。「野田が民主党を割る」ことはあり得ないのだ。野田は政権サイドで消費税を実行に移そうとしているのであり、割る場合にはこれに反対する勢力が割るしかないのだ。その勢力とはにわかに消費税反対で旗幟鮮明にした、小沢サイドでしかあり得ない。やる場合は「新生党」結成方式の踏襲だ。93年にすべてを「政局化」して、小沢らが宮沢改造内閣不信任決議案に賛成、自民党を離党して新生党を結成。非自民7党1会派による38年ぶりの政権交代を実現したのだ。
 しかし、小沢が20年前の政局方程式にはたきを掛けて持ち出しても、果たして実現へのうねりが台頭するだろうか。筆者はしないとみる。やろうにも出来ないのだ。93年当時の小沢はまだはつらつとして新鮮味があった。しかし、現在は公判中で刑事被告人の身で、党員資格停止処分中でもある。度重なる政局の中心として満身創痍(そうい)なのだ。この傷だらけの“灰色度”の高い政治家が、「この指とまれ」と言っても、展望のない新党に勢いが出るだろうか。おまけに新党に政党交付金が払われる要件である、「年末までの新党結成」が間に合うわけがない。1人1億円はかかる新党結成費用を捻出できるか。いくら側近の輿石東が幹事長でも、小沢が幹事長時代に「組織対策費」としてジャブジャブ使った政党交付金も使えなくなった。と言うのも、前首相・菅直人がイタチの最後っ屁のように、組織対策費のような不透明な支出は、監査法人のチェックが入り認めないことを決めているからだ。
 だから小沢は、離党しようにも出来ないのである。それではなぜ政局に直結する消費増税反対を唱えるかというと、発言が語るに落ちている。「追い込まれて最悪の状況で選挙になるのではと心配している。次の選挙で自分1人が戻ってもしかたがない。皆が戻らないと力を発揮できない」というのだ。詰まるところが、消費税選挙では小沢陣営の“壊滅的打撃”が予想されるからである。何も小沢は政界再編が可能とみて発言しているのではあるまい。グループを“落選”の脅しで、早期解散反対へとあおり始めたのだ。
 石原のもう一つの誤算は「私たちも割れるかもしれない」であろう。消費税をめぐって自民党が割れるようなことが起きるとでも言うのであろうか。麻生内閣で改正所得税法の付則104条により消費税導入の路線を敷いたときにも、去年の参院選で10%への増税を公約としたときにも、党分裂の動きが生じたとは寡聞にして聞かない。最近TPPをめぐって執行部批判を強めている石破茂が党を割るだろうか。割らない。石破は「10%増税が嫌だというなら党を出て行くべきだ」と全く逆であり、ポスト谷垣へも意欲を見せている。石破は勉強会を来月1日にもを立ち上げるなど、ポスト谷垣をめぐって世代交代への動きも台頭させている。石破の対抗馬は石原で「石石対決」などとはやされるが、石原のこの体たらくでは勝負は戦う前からついている。いずれにしても小沢を軸とする古色蒼然たる政界再編論は言うまでもなく困難だ。ましてや野田が離党してまでの再編は、机上の空論でしかあり得ない。折から与野党は解散を軸に対決姿勢が強まる一方だ。政界再編とはほど遠い状態に向かいつつあるのだ。


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