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◎俳談

俳壇
【新酒】
コップより升に落ちたる新酒かな 杉の子
 「おっとっとっと」と酒飲みが喜ぶのはコップから升にあふれるつぎ方である。銀座の焼き鳥屋では升がなくて、銀のやかんで表面張力でコップがあふれるすれすれまで注ぐ。客は口から先にコップに近づく。新酒は新米で醸造した酒で秋の季語。傍題に今年酒がある。
新酒はうまい。20年前に胆石をとって六腑が五腑になったがやめられぬ。
一つ欠き五臓と五腑にしむ新酒 杉の子
友ら皆白髪か禿げよ新酒汲む 読売俳壇入選
鷹羽狩行の句に
とつくんのあととくとくとくと今年酒
オノマトベが見事に季語と響き合っている。

◎前代未聞の高裁“杞憂”判断

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◎前代未聞の高裁“杞憂”判断
 裁判官も売名をするのか
 天が落ちてくると心配するのを杞憂という。 杞憂の「杞」は中国周代の国名、「憂」は憂えること。杞の国の人 が、天が落ちてきたり、大地が崩れたりしないかと、あり得ないことを心配して、夜も眠れず食事も食べられなかったという『列子』の故事に由来する。今度の広島高裁による来年9月までの伊方原発運転差し止め命令はまさに杞憂判断と言うしかない。裁判長野々上友之は判断の理由を「阿蘇山に1万年に一度の破局的な噴火が起きれば火山灰などの噴出物が大量に飛来して火砕流が到達する可能性がゼロではない」としているが、裁判長の空想性虚言症という症状を初めて見た。この論理に寄れば40年の耐用期限にあと5年で到達する伊方原発が1万年に1度の噴火を前提に稼働出来ないことになる。判決はそのゼロに近いリスクに偏執するものであって、あまりのも極端で到底容認できるものではあるまい。そのような噴火があれば九州全体が灰燼に帰する事態だ。例えば航空機が原発に墜落する可能性はゼロではない。世界中でそれを理由に停止する事態があったか。北朝鮮のミサイルに狙われる可能性も1万年に1度のリスクごときではない。
 原発訴訟に対する司法判断は既に確立している。最高裁の1992年判決は以後の原発裁判を左右する重要なものだ。やはり四国電力伊方原発訴訟で原告側の主張をを全面否定した内容は、「原発問題は高度で最新の科学的、技術的な知見や、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」としている。高度な専門性が求められる原発の安全性の判断は政府に任せて、科学的知見のない司法がかかわりすぎるべきではないとしているのだ。全国で起きている原発訴訟で、大半の地裁、高裁はこの判例に基づいた決定を下している。もっともこの判断に楯を着いた馬鹿な裁判長が過去に二人いる。大津地裁裁判長・山本善彦と福井地裁裁判長・樋口英明だ。大津地裁の停止命令は、稼働中の原発をストップさせるものであり、悪質極まりないとされた。原子力規制委員会による世界最高水準の厳しい基準をクリアして、やっと稼働し始めた原発を、科学的知見に乏しい山本の独断でストップさせたのだ。また樋口は高浜3,4号機の「運転再開差し止め」を命じており、これが原因で名古屋家庭裁判所に左遷されたが、継続審理のため職務代行が認められて再び「再稼働など認めぬ」という決定を下したのだ。まるで今回同様に最高裁の判例に楯突くような決定である。弁護士として退官後に活躍するための売名行為とされた。これまでに地裁が原発稼働を差し止めた例は3回あり、今回の高裁で4回目だ。いずれも「原発停止」判断は多分に裁判長個人の“特異な性格”が反映されたものという見方が定着している。
 これらの判決は全国的に見れば極めて少数派の裁判長による異例の判決である。だいいち、原子力規制委員会の自然災害に関する審査は非常に厳しく、専門家が数年かけて審議し認められた結果が、裁判所のいわば素人判断で否定されるのは全くおかしい。活火山帯にある日本は裁判長野々上が指摘する「約9万年前の阿蘇山の噴火で、火砕流が原発敷地内まで到達した可能性」のある地域など枚挙にいとまがない。だいいち四国電力は、阿蘇山の火砕流の堆積物が山口県南部にまで広がっているものの、四国には達していないと断定している。約130キロ離れた阿蘇山の火砕流到達を“杞憂”するならば日本に原発を造れる場所はなくなる。そもそも6万年前に1度あった「破局的噴火」を想定していては、あらゆる建造物を建設出来なくなるではないか。そういう“杞憂裁判官”は日本に住むべきではないのだ。
 まさにここまで来るとろくろく証拠調べも行わず、たった4回の審理で重要決定をした高裁の判断にはあきれるばかりだ。今回の仮処分は効力が直ちに生ずるが、極めて高度な判断を要求される原発訴訟への適用は控えるのが裁判官の常識であるはずだ。野々上は過去の2人の裁判官同様に田舎の判事が一生に1度全国紙のトップを飾る判断を出して、有名になりたいのだろうか。今月下旬に定年での退官を迎える時期を狙って、次は弁護士として活躍しようとしているのだろうか。いずれにしても仮処分の弊害だけが目立つ判断であった。四国電力は決定を不服として執行停止を高裁などに申し立てるが当然だ。

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本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!浅野勝人

本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

安保政策研究会理事長 浅野勝人


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。
ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日~8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。
会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。
フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。
従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。
中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。
仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。
アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。
今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。
北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。
「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【反戦は時事句でなくなった】
ちよい悪で反戦爺で酢橘かな 月刊俳句入選
 60年安保の時は慶応大学に入学したばかりであった。従って安保闘争で校旗である三色旗が銀座の大通りに初めて翻ったときにもデモで参加していた。「慶応ボーイまでがデモ」と新聞は報じた。国会へのデモは暴徒化したから参加せず、現場を見に行った。東大の学生であった樺美智子が、警官隊とデモ隊に挟まれて死亡したその日である。革命前夜のようだったが、死亡事故を機に、それまで煽っていた新聞が急旋回してデモは引き潮のように下火になった。その安保世代が喜寿となったのだから、「やになっちゃう」。安保世代は生粋の反戦だが、その後にぐれまくって暴徒化した全共闘運動とは一線を画する。正義感が強く、常識派だ。戦争は反対の爺さんたちだ。だから
反戦で神田の生まれ唐辛子 産経俳壇1席
のような爺さんも友達にいる。その前の戦争で命の危険にさらされた官房長官・後藤田正晴のような世代は、根っからの反戦派であるが、いまや生きていれば古希どころか生身魂の世代だ。
反戦で張りのある声生身魂 朝日俳壇1席
とこれも、反戦を語らせれば元気がいい。時事句は新聞選者が一番嫌う俳句だが、「反戦」を織り込んでもいまや時事句とはならない時代となった。時の流れであろう。

◎専守防衛から先制攻撃含む積極防衛へ

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【筆者より=明日より恒例の年末年始休暇に入ります。重要ニュースは解説します】
◎専守防衛から先制攻撃含む積極防衛へ
  政府、敵基地攻撃能力を保有
 極東軍事情勢に衝撃的影響
  政府が空対地長距離巡航ミサイルの導入などで敵基地攻撃能力の保有に踏み切ったことは、明らかに朝鮮半島情勢の緊迫化を背景としている。大きくいえば戦後一貫して維持してきた「専守防衛」の姿勢を維持出来なくなり、先制攻撃を含めた積極防衛の戦略しか成り立たなくなったことを意味する。「ミサイルの長射程化と戦闘機のステルス化」は現代戦における国防の基本であり、日本のような大国が保持しないままであったことが奇跡であった。この日本の防衛戦略急旋回は、極東情勢に大きなインパクトとなる。中国からの島嶼防衛は一段と強化される。金正恩は、藪をつついて蛇を出したことになり、軍事的に日米韓の完全な包囲網に遭遇することになった。ただし政府は官房長官菅義偉が、「日米の役割分担の中で米国に依存しており、今後ともその役割分担を変更することはない。専守防衛の考え方には、いささかも変更はないことははっきり申し上げたい」と述べて慎重姿勢だ。しかし“能力の保持”が意味することは、情勢が「非常事態」になればいつでも方針転換が可能であることだ。要するに専守防衛は“建前”となる。
 敵基地攻撃能力の保有については61年前の1956年に鳩山一郎内閣が「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」と合憲判断を打ち出している。憲法上の問題はクリアされており、後は政治判断だけだった。既に自民党の安全保障調査会も3月に、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を踏まえ、敵基地攻撃能力の保有を政府に求める提言をまとめ、首相・安倍晋三に提出した。調査会の座長を務めた防衛相小野寺五典は敵基地攻撃能力が必要な理由について、かつて「何発もミサイルを発射されると、弾道ミサイル防衛(BMD)では限りがある。2発目、3発目を撃たせないための無力化の為であり自衛の範囲である」と言明している。
 北朝鮮は通常軌道に比べ高高度に打ち上げ、短い距離に着弾させる「ロフテッド軌道」で発射するケースが多い。ロフテッド軌道だと落下速度がさらに増すため、迎撃が非常に困難になる。専門家は「現在の自衛隊の装備では撃破は難しい」としている。迎撃ミサイルSM-3搭載のイージス艦は、防衛庁の公表資料によると、これまでの試験で20発の迎撃ミサイルのうち16発が命中した。しかしこの確率でいくと、単純計算では200発の日本向けのノドンが発射された場合、40発が到達することになる。政府に国民の生命財産を守る義務がある以上、専守防衛では十分な対応は不可能だ。基本戦略を積極防衛へと転換し、巡航ミサイルや新型戦闘機F35やF15に敵基地攻撃能力を保持させるという抑止力が不可欠なのだ。日本もなめられたものである。ミサイルをグアム周辺に撃てば米国の撃墜が必至とみて、金正恩は、襟裳岬東方や排他的経済水域を選んでいる。
 導入を検討している巡航ミサイルは、米国が開発した「JASSM(ジャズム)―ER」(射程900キロメートル超)とノルウェーが開発した「JSM」(同300-500キロメートル超)。JASSM-ERは、日本本土から朝鮮半島や中国、ロシア南部にも届く。ミサイルを搭載する主力戦闘機F15の改修に向けた調査費の計上を検討している。射程数百キロのJSMは空自が配備するステルス戦闘機F35への搭載を念頭に置いている。いずれも戦闘機から発射するタイプだ。
 敵基地攻撃には弾道ミサイル、巡航ミサイル、ステルス性のある戦闘機F35と空対地ミサイルが必要だ。将来的には、敵基地を特定できる人工衛星などの情報や、戦闘機の長距離飛行を支援できる空中給油機、これらのすべての作業をコントロールする早期警戒管制機(AWACS)などの装備体系が必要となる。高い金を出してF35を配備する以上、敵基地攻撃能力を備えるのは必然であった。これらの装備を備えるには防衛予算を対GDP比1%の上限を突破させる必要があるだろう。自民党や専門家の間では当面はGDP比1.2%を追求するのが得策との意見がある。米国は北大西洋条約機構(NATO)に2%目標の早期達成を促したが、これをテコにやがて日本にも要求してくる可能性がある。先手を打って1%を突破する方がよい。
 立憲民主党の代表代行長妻昭は6日、政府が敵基地攻撃も可能となる長距離巡航ミサイルの導入を検討していることについて「こういう姑息(こそく)な形で防衛政策を進めては国益に反する。是非も含めて国民の前できちんと議論することが重要だ」と述べ、国会でただす考えを示した。この発言には驚がくした。長妻は北が核・ミサイル実験を繰り返し、朝鮮中央通信(KCNA)が、「日本列島は核爆弾により海に沈められなければならない。日本はもはやわが国の近くに存在する必要はない」と公式にどう喝していることに対して、防御態勢を取ってはいけないというのだろうか。「座して死を待て」といっているのに等しい。平和は天から降ってくるとした先祖の社会党ですら発言を避けるような発言である。まさに「姑息な政党の存在が国益に反する」のだ。先祖返りどころか先祖を超越している。
 こうした中で極東の一触即発状況は一段と高まってきている。3日放送されたFOXテレビの番組で、大統領補佐官マクマスターは北朝鮮の核に対抗して日本や韓国なども核兵器を保有する可能性があると指摘し「それは中国とロシアの利益ではないはずだ」と述べ、両国に対して北朝鮮への圧力を強化するよう改めて求めた。さらに5日には同補佐官は、ニュース専門放送局MSNBCのインタビューで、米国の北朝鮮に対する「予防戦争(preventive war)の可能性に関する質問を受けると、「北朝鮮が核兵器で米国を威嚇するのを遮断するための予防戦争のことか」と問い返した後、「もちろんだ。我々はそのためのあらゆるオプションを提供しなければいけない。そこには軍事的オプションも含まれる」と述べている。国連制裁で年末から来春にかけての北朝鮮の経済的状況や食糧事情悪化が予想される中で、米国と北朝鮮のどう喝合戦が続く。

            

◎俳談

◎俳談
【日常の中の闇】
葱刻む平穏いまだ続きをり 毎日俳壇1席
 我々は日常の中に非日常がいつ起きるか分からない世に生を得ている。事故とは限らない、人間と人間が接触してどのような摩擦が発生するのか、自然がもたらす災害がいつ来るのか。どのような危機に遭遇するのか。年を取れば取るほど、良くこの人生をすり抜けてこられたと思う毎日である。「葱刻む平穏は」はそのことを指す。そしていまだに続くことを安堵しているのだが、その背景にはきっと何かが起きるという予感が常に存在するのだ。
中村汀女の
あはれ子の夜寒の床の引けば寄る
は、母と子の間にあふれ出る感情の高まりを描写して見事である。秋の夜寒に末っ子の寝る姿に憐憫を感じて布団を思わず引き寄せる。そして布団の軽さ、子の軽さを改めて知りその不憫さは一層募る。平穏の中にあるこの子の人生の起伏を思うと抱きしめたくなる。人間は日常の中に存在する暗黒を常に予感するのだ。

◎制裁強化は「臨検と海上封鎖」しかあるまい

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◎制裁強化は「臨検と海上封鎖」しかあるまい
  中露は「けんか両成敗」という無為
 極東冷戦越年、長期化
 米国は北朝鮮に対して「経済制裁以上で武力行使未満」の行動を取ろうとしていると言われるが、その内容はどのようなケースが考えられるのだろうか。米国が9月に国連に提出した制裁決議案には、公海での臨検を主張する事項が盛り込まれていた。おそらくトランプの脳裏には「臨検」を伴う「海上封鎖」が去来しているのではないか。平和時に行う最強の制裁措置である。対北圧力を極限まで高めるには有効な手段であり、今後年末から来春にかけて動きが生ずるかも知れない。                
 米韓両軍は4日から合同演習に入った。北朝鮮報道官はこれをとらえて、例によって悪態の限りを尽くして“口撃”している。「一触即発の朝鮮半島を暴発へと追い込もうとしている。朝鮮半島と全世界が核戦争のるつぼに巻き込まれた場合、その責任は米国が負うべきだ」といった具合だ。しかし、北の核・ミサイル実験と米韓軍事演習は、根源となる目標が全く異なる。北は水爆実験に際して「水爆の爆音は、ふぐ戴天の敵アメリカの崩壊を宣告した雷鳴であり、祝砲だ」として、およそ1年ぶりに強行したと称賛、そのうえで、「下手な動きを見せれば、地球上からアメリカを永遠に消し去るというわれわれの意志だ」と言明している。実験が米国を壊滅させるための手段であることを明言しているのだ。これに対して米国が軍事演習をするのは、国家生存をかけた当然の防御措置であり、国際法上も何ら問題はない。
 この立場の違いに関して中露は「けんか両成敗」の立場を維持している。中国外相王毅は、北を国連の安全保障理事会の決議を無視していると批判する一方で、安保理決議以外の行動は国際法上の根拠がないとして、アメリカを念頭に単独での制裁の強化や軍事力の行使に反対した。ロシア外相ラブロフも、平壌の核・ミサイル開発の火遊びを非難する一方で、「米国の挑発的行動も非難しないわけにはいかない」と指摘している。まさに中露一体となって米国をけん制している感じが濃厚だ。
 こうした中で米国は着々と対北制裁案の強化策を検討している。ウオールストリートジャーナル紙が伝えるその内容は、①北朝鮮からの核攻撃を抑止するため、韓国に戦術核兵器を再配備する②地上配備型ミサイル迎撃システム「THAAD(サード)」を韓国に追加配備する③米国と韓国は共同で、脱北を促すような取り組みを広げるーなどである。
 さらに米政府が検討しているのが「臨検」を伴う「海上封鎖」だ。臨検とは、交戦国の軍艦が、特定の国籍の船ないし出入りする船に対し、公海上で強制的に立ち入り、警察・経済・軍事活動することを指す。米国の立場は、9月に国連安保理事国に提示した北朝鮮に対する追加制裁決議案を見れば明白だ。同決議案は石油の全面禁輸などに加えて、公海での臨検を許可する事項も盛り込まれている。公海上で制裁指定された船舶を臨検する際には「あらゆる措置を用いる権限」を与えると明記し、全ての加盟国に対し、公海において制裁委員会が指定した貨物船を阻止し、調査する権限を与える。加えて、「全ての加盟国がそのような調査を実施し適切な港に寄港させるなど指示し、国際人道法および国際人権法を順守する範囲で必要とされるあらゆる措置を用いる権限を持つことを決定する」となっている。
 海上封鎖と言えば武力行使と受け取られがちだが国際法上は戦時封鎖と平時封鎖に分類される。戦時封鎖の場合は機雷などによる封鎖が想定されるが、平時封鎖は非軍事的措置の一環とみなされ、海軍による臨検が主となる。しかし、封鎖を突破しようとする船舶が現れた場合には攻撃もあり得る。
 こうした緊迫した情勢の中で米韓合同の軍事訓練「ビジラント・エース」には、対北戦争を想定した具体的な作戦がこれまでになく明確に織り込まれている。まず、F22やF35によって北国内のミサイル基地や関連施設など700個所の目標を一気に破壊する。さらに北の空軍戦力を3日で無力化させる事などが含まれている。
 北側は金正恩が火星15号の試射について「国家核戦力の歴史的大業を成し遂げた」と胸を張ったが、実験は事実上失敗との見方が強い。米CNNテレビは2日、北朝鮮による火星15号の発射の弾頭部が、大気圏に再突入する際に分解していたと報じている。この分析によれば、米本土攻撃能力の獲得に不可欠な大気圏再突入技術が、まだ確立されていないことになる。
 こうして北は「空白の75日」を破って、再び核・ミサイル実験を繰り返す兆候を示し始めた。次回は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験となる可能性が高い。焦点の中国による石油供給は依然として継続され、ロシアも交易のペースを変化させていない。極東冷戦の構図は再び、緊張段階に入り越年はもちろん長期化する様相だ。

「相撲協会、横審 有って、力士無し」でいいのか! 浅野勝人

「相撲協会、横審 有って、力士無し」でいいのか!

大相撲九州場所(2017/11月12日~26日)

初日、白鵬上手出し投げで琴奨菊 転倒。

「まったく不安なし。このまま平常心で前進! 前進! 浅野勝人」

「メールありがとうございます。心が落ち着きます。白鵬翔」

場所前の10月25日、夜、巡業先の鳥取市内で行われたモンゴル出身力士の懇親会の席上、横綱・日馬富士が幕内貴ノ岩をビール瓶で殴打して怪我を負わせる事件が起きました。
被害届を受理した鳥取県警が捜査に着手しました。
同席していたモンゴル・グループの「長」の立場にある白鵬の対応はどうであったか、問われます。

「和田さん、警察の捜査で事実が明らかになりますから、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ”という態度がよろしいのではないでしょうか。それ以外、場所中でもあり、白鵬は事件についてしゃべらない方がいいと思います。浅野勝人」(11月16日)

「ビール瓶では殴っていないとマスコミに話したようですが、今後は沈黙を守ると思います。
報道が先行して事態を複雑にしています。事実関係が肝心な点で報道とは異なるようです。
ビール瓶を握ったけれども滑り落としてしまったようです。ビール瓶で殴っていたら、血だらけになって頭蓋骨を骨折しかねない。カラオケのリモコンと平手で何発も殴ったが、馬乗りになったということもないらしい。白鵬は暴行を止めて、日馬富士を別の部屋に連れ出して事態を収めたようです。どうであれ、暴力は許されません。和田友良」(註:和田友良は白鵬の義父、浅野の友人)

白鵬翔に

「各種の取材に対しては、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ” これ以外のことは何も言わない。もっぱら取組、勝負に集中する。この対応がよいのではないでしょうか。浅野勝人」(11月17日)

「正(まさ)しくその通りです。そう思います。白鵬翔」

14日目、40回目の優勝決める。自らを信じていっさい動ぜず。不動の取り口。

「おめでとう!今場所の優勝はことのほか意義が深い。
☆力士としての限界(再起をかけた場所でした)を無限にしました。
☆力士からの“ 物言い ”(嘉風との一戦)の正当性を、優勝することで示しました。浅野勝人」

ところで、日馬富士暴行事件で影が薄くなってしまいましたが、11日目、< 関脇 嘉風 寄り切り 横綱 白鵬 > 奇妙な取り組みがありました。
組んだ直後、嘉風の突きに白鵬が客席のど真ん中まですっ飛ばされました。その直前、土俵上の白鵬は右手で「待った」の合図をして、相撲を取るのを止めていました。嘉風自身「横綱は力を抜いていた」と述べています。そうでなければ、今の白鵬が小柄な嘉風のひと突きで突き飛ばされることはあり得ません。

白鵬は、土俵下で立ち合い不成立を主張して、物言いのしぐさをし、得心のいかない取組を行司と検査役に「相撲が成立していない」とアピ―ルしました。
相撲協会は、物言いを付ける権利の無い力士が自分の勝手な判断で抗議をして、負けを認めない態度は潔くないと審判部から横綱に厳重注意をさせました。

競技選手がゲーム中、審判の判定や相手選手のプレーに誤審ないしは強い不信を抱いて抗議し、プレーの見直しをアピールするのを一切禁止しているスポーツがあるでしょうか。どのスポーツでも、審判が抗議を採択するか、拒否するか、その場で明示して選手の納得を得る努力をしています。ボクシングでも重大な誤審の疑義があれば、再試合を指示しています。

あの場合、白鵬に対して、立ち合いは成立しており、物言いは不成立と検査役の判断を会場で説明すれば済むだけのことです。もし、判定に従わなかったら、退場を命じ、厳しい処分の対象にすればいい。そのくらいの選手(力士)の気持ちに沿う制度改革をしてもよろしいのではないかと思います。力士は命がけで勝負しているのですから「力士重視」は当然の配慮ではないでしょうか。
相撲協会は、何事、旧態依然のままと見受けられます。

優勝力士インタビューで、白鵬が暴力事件に関連して「膿(うみ)を出し切って、日馬富士にも貴ノ岩にも土俵に戻ってきてもらいたい」と胸の内を述べ、合わせて連日の満員御礼の盛況に感謝して、大相撲の一層の発展を願って観客と一緒に万歳をしました。この行為について、横綱審議委員会は力士ごときの出過ぎた言動と決めつけて、理事会に処罰するよう求めました。これでは暴力を振るった日馬富士を厳罰に処するよう諮問したのと同じではないですか。横綱審議委員会は何を考えているのか、横審は大相撲の旧(ふる)き良き伝統を守る一方、時代にそぐわなくなった相撲協会のシステムを改革するのが使命のはずです。これでは「無用の長物」だ。
白鵬の言動は、優勝力士としての個人の思いに過ぎず、警察の捜査や理事会の判断とは異なります。白鵬が何を言おうが、日馬富士は引退したし、それに関係なく警察は厳正な捜査を徹底します。
大相撲を背負っていると内心自負しているアスリートの慈しみの表現を汲んでやるわずかばかりの思いやりが、協会にも横審にもまるでないのは誠に残念なことです。

肝心のマスコミも、
「負けた後に取組をした力士には権利のない“物言い”を付けるしぐさをし、なかなか負けを認めず土俵から下がらなかった。他の力士は横綱の行為をまねるものだ。反省を求める」(朝日新聞)
まったく真意を理解していないコメントです。
勝負に命を懸けている選手が、誤審や納得しがたいプレーについて質すスポーツ選手としての「力士の権利」を主張したかったことがまったくわかっていない。負けたのを認めない潔さに欠ける行為としか理解していない。これでは相撲協会の旧い体質を外から改革するオピニオン・リーダーとしての期待はもてません。

白鵬は、また一人横綱で大相撲を背負い、自分との果てしない戦いの旅を続けることになるのでしょうか。
私一人くらい「心の理解者」がいてもいいでのではないかと淋しく思っています。
(2017/12月1日、元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
豊作や山野豊かに稲光    NHK俳壇入選
 稲妻は稻の夫(つま)の意味で、稻が雷光と交わって実るとの言い伝えから生まれた。掲句はそれを意識して作った。まず豊作と置いて実りの秋を強調し、続く中、下の句で稲光が山野にいっぱい生じている様を詠んだ。気をつけねばならないのは雷(かみなり)は夏の季語で、稲妻とは全く性格を異にするということである。稲妻は鑑賞の対象になる。現に、「稲妻観賞会」をする粋人を知っている。秋になって海と空が雷雲に覆われ、真っ暗になった頃。冷たい缶ビールと枝豆なんぞを用意し、部屋の灯りを消し、準備万端で待機するのだ。今日の稲妻は60点などと点をつける。ワシントンにいたころ、マンションの高層の部屋から、バージニアの大平原に走った集中爆撃のような稲妻の光景は忘れられぬ。一方雷の方は、慌ただしくてそのゆとりはない。
中村汀女も稲妻を楽しんでいたのであろう。
稲妻のゆたかなる夜も寝べきころ 中村汀女
がある。橋本多佳子の句は名句中の名句だ。
いなびかり北よりすれば北を見る 橋本多佳子
ごく当たり前のことを言いながら稲光の本旨を貫いている。

◎朝鮮半島、冬から春にかけ激動の様相

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◎朝鮮半島、冬から春にかけ激動の様相
  飢饉に近い食糧難発生の可能性も
 既に国内で動揺の兆候
 ワシントンを射程に入れたと称する北朝鮮のICBMの実験は、断末魔の悪あがきかもしれない。その合い言葉は「厳しい北の冬」だ。首相・安倍晋三が29日の参院予選委で度々使ったこの言葉を分析すれば、国連制裁決議が効果を現すのは冬以降ということになる。どんな効果かと言えば「飢饉に近い食糧難」ではないかと思う。朝鮮半島は歴史上何度も飢饉に見舞われており、最近では1996年から99年までの間に餓死者300万人を出した「苦難の行軍」の例がある。このところ頻繁に日本の海岸に流れ着く木造漁船が、何を意味するかと言えば、金正恩政権が漁船の能力を超えた漁業を強制的に行わせているからにほかならない。食糧難で漁民を追い出すように冬の日本海に向かわせているのだ。沿岸の漁業権を中国に売り渡した結果、日本の排他的経済水域で豊かな漁場の大和堆(やまとたい)まで遠征せざるを得なくなったことを意味する。外相河野太郎も、「これから冬に向けて制裁の効果が現れると認識している」と述べた。食糧難発生となれば過去に中国、ロシアが行った食料援助が考えられるが、少なくとも中国は金正恩政権のままで援助するかどうか疑問だ。特使に金正恩が会わず、こけにされた習近平が激怒しているとの情報もある。金正恩の破れかぶれの暴発もありうる。朝鮮半島情勢は冬から春にかけて激動の状態に突入する可能性がある。
 参院予算委員会はこの緊迫する情勢の中で野党の愚かな質問者が愚にもつかぬモリカケ論争を延々と仕掛ける場面があったが、民進党の增子輝彦や自民党の山本一太など心ある質問者は焦点を北朝鮮に絞った。安倍は手の内を北に知られては元も子もないためギリギリの範囲で答えたが、分析しなければ分からない抽象的表現が多かった。その内容は「これから北朝鮮は厳しい冬を迎える。習近平主席とは厳しい冬を迎える中、北朝鮮における制裁の効果を注意深く見極めて行くことで一致した。トランプ大統領も同じだ。厳しい冬を迎えるという中において制裁の中身を十分に考えたらどういう意味を持つかと言うことで理解いただきたい」というものだ。1回の答弁で「厳しい冬」を3回も使うのは異例だが、首相の言わんとするところは推理を働かせるしかない。
 安倍はこれに加えて中国と北の貿易について「9月10月の輸入額は38%減。輸出額は8%減。石油製品も国際社会が3割絞る。日本なら3割絞られたら立ちゆかなくなる」とも言明した。一連の答弁からは、金正恩がこの冬を乗り切れるかどうかに焦点が合っていることが分かる。石油や食料がストップすれば、ただでさえ栄養不良の状態でかすかすの生活を送っている国民は飢えと寒さという二重苦に直面する。逃亡兵の腸から大量の回虫が発見された事実は、日本の戦争直後の状態を思わせる。人糞を肥料にしている結果、回虫が人から人へとめぐっているのだ。朝日によると、国内数カ所の市場で商人が集団で「核兵器だけが問題解決の答えなのか」「第二の苦難の行軍だ」などと抗議し、逮捕されたという未確認情報もある。
国内の動揺が始まった感じが濃厚である。
 こうした状況を見て韓国の統一相趙明均(チョ・ミョンギュン)は10月30日、国際社会による経済制裁により、北朝鮮の経済事情は1990年代に数百万人ともいわれる餓死者が発生した「苦難の行軍」当時よりも悪化する可能性に言及した。講演で「北が1990年代半ば、金日成主席が死亡してから食糧難で非常に苦労したが、場合によってはその時より経済事情が悪化するかもしれないとみている」と述べた
のだ。亡命した元駐英北朝鮮公使太永浩(テ・ヨンホ)はかつて「民衆蜂起による金正恩政権の崩壊もあり得る。監視態勢が発達しているため軍のクーデターは起こりにくいが民衆が蜂起すれば監視委員も蜂起に加わる」と予言している。
 その際、破れかぶれになった狂気の独裁者金正恩の暴発はどのようなケースが考えられるかだが、米国へのICBMに核弾頭を載せることは再突入の技術が確立していないため無理だが、日本の米軍基地には200発あるノドンが届く。核や、VXガス、細菌兵器を搭載したノドンを東京が食らえばそれで日本は崩壊する。この特殊事情についてトランプに説明しているのかを問われて安倍は「トランプ大統領とは相当踏み込んだやり取りをしている。北が様々な選択肢を使った場合のそれぞれの国への影響について当然話をしている」と言明した。これを有り体に言えば「日本がミサイル攻撃を受けるような事態は絶対避けてくださいよ」という、ダメ押しをしていると推測できる。
 山本は核保有を容認して対話に入ったり、米韓合同演習中止と事実上核保有を認める核開発の凍結などという「ダブルフリーズ論」が米国にあることについて質した。安倍は「ロシアと中国がダブルフリーズの考えを示しているが、その考え方は採らない。日本はノドンの射程距離に入れられているから核ミサイルを完全に検証可能な形で廃棄するよう求めていく」と約した。
 今後注意しなければならないのは、北の工作員が日本でテロなどで蜂起する事態や、北からの難民が大挙押し寄せる事態だが、安倍は今こそテロ等準備罪の適用をちゅうちょなく断行するべきだし、安保法制に基づく米軍との密接な連携を推進すべきだ。安倍が法案を強行して成立させたのは先見の明があった。野党は今更ながらに致命的に重要な法案に真っ向から反対したことを恥じ、国民に陳謝すべきだ。政府は不即の事態に備えて迎撃能力のさらなる強化を図ると共に、専守防衛の姿勢を極東自体の急変に合わせて転換し、敵基地攻撃能力の保持を早急に実現すべきだ。

◎俳談

◎俳談
【平易か難解か】
子を殴(う)ちし長き一瞬天の蝉 秋元不死男
 悪さをした子を叩いた後味の悪さが「胸に刺さってとれない」ことを不死男は詠んだのだという。後悔の気持ちや寂しさ哀しさが入り交じった気持ちであるという。しかしこれらの生の表現は一切無く、その思いを中七から下五にかけての言葉に賭けた。読者に対してお願いだから「長き一瞬」と「天の蝉」で思いを感じ取って欲しいというのであろう。俳句を詠む読者はまずその詩情よりも、言葉を意味でとらえようとする。従って一瞬にはこの俳句を理解できない。しかし繰り返し読み、理解しようと努力するうちに、作者の思いがじんと伝わってくるのだ。俳句の表現とはそういうものだ。作者の思いが言葉を介して一呼吸置いて伝達されるのだ。
逆に説明なしで理解出来る句がある。
擦り傷に唾つけてやる夏野かな 杉の子
どこの句会でも万点近い点を取った。子どものころへのノスタルジアを描き出していて、分かりやすい。一般の作句で真似すべきは後者である。不死男のように難解な句、読者が努力しなければ分からない句は作るべきではない。作るべき句は、誰もがすぐ分かる句であり、判じ物のような句はやめた方がいい。難しい言葉を使い、読者に判断を委ねるような上っ面だけの句を独善最低句と称する。

◎自民質問は議会制民主主義にプラス

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◎自民質問は議会制民主主義にプラス
 ただし若干“八百長”気味
 例えば「四国にコドモトカゲが生息する」ということを証明するとしたら、四国でコドモトカゲを一匹捕まえて来ればよいが、「四国にコドモトカゲは存在しない」ということの証明は四国全県を探査しなくてはならない。事実上不可能なことを求めることを悪魔の証明という。この悪魔の証明を森友・加計問題に関して衆院予算委で持ち出したのは自民党の田村憲久。「赤いカラスはいないという証明をしようとすると、全てのカラスを捕まえないと証明できないから非常に難しい。首相は悪魔の証明だが天使のように謙虚に答えてほしい」と発言した。立憲民主党代表代行の長妻昭も「悪魔の証明の努力をしてほしい」と求めた。首相・安倍晋三は「真摯な説明を丁寧に行う」と約したが、もともと不可能なのは悪魔の証明。結局森友・加計問題の質疑はこれまで通りの平行線をたどった。とりわけ野党の質問が鋭さを欠いた。本来なら短期で終わる特別国会を39日間という長期にわたって開かせて、国費を1日3億円も費やすことへの疑問を抱かせた。こんな追及の有様では税金の無駄遣いだ。
 新しいことと言えば会計検査院が森友学園への国有地の売却経緯をめぐって8億円の値引きをした問題について「根拠が不十分だ」との報告を国会に提出したことが取り上げられた点だ。しかし同報告は、肝心の8億円の値引きの正当性については踏み込んでおらず、根拠不十分という客観的な記述にとどめた。従って長妻が追及しようとしても限界があり、追及は政権への致命傷にはほど遠いものとなった。長妻は「官僚に忖度がなかったか」など、旧態依然の質問を新たな証拠や証言もないまま繰り返し、鋭さに欠けた。逆に北朝鮮問題に関して「総理に強い意志を持って臨んでいただくようお願いしたい。専守防衛については積極的に議論したい」と国の安保政策への“すり寄り”が目立った。「立憲民主党も自衛隊を合憲と思っている」とも述べた。安保反対の社会党に源を発した民進党が信用出来ないから、有権者が3分裂させた脳しんとうの“後遺症”が残っているかのような質問であった。
 一方自民党はこれまで与党2対野党8の割合の質問時間を5対9に変更させたことから、質問形態をこれまでの政権同調型から対峙型への変更をマスコミに印象づけようとした。自民党幹部は質問者に「是々非々の姿勢で厳しくやってほしい」と要望したという。自民党の政権“追及”は三木内閣末期に例が見られるが、久しぶりであった。しかし、核心にはあえて迫らぬ傾向が見られ、足元を見透かされて朝日の社説から「議論深まらぬ与党質問」と指摘され、野党からは「よいしょ質問」(長妻)と揶揄(やゆ)された。
 自民党質問の収穫は、菅原一秀が森友学園の音声データで財務省職員が学園側に「ゼロに近い金額まで値引きの努力する」と発言したことを取り上げ、真否を質した結果、財務省があっさりと認めた点だ。同省は「価格交渉でないから問題はない」と付け加えたが、このやり取りは、事前に調整積みであった匂いがふんぷんと感じられた。
 さらに菅原は加計学院の問題を取り上げ「朝日はフェイクを載せた。野党は半年もフェイクに基づいて質問し、国民を間違った方向にミスリードした。猛省してほしい。」と野党を一刀両断した。
 総じて予算委第一日目は野党が質問のための質問をしたのに対して、自民党が質問で独自性を打ち出して、若干“八百長”気味ながら面白かった。朝日は社説で「質問時間を元に戻すべき事は当然」と主張しているが、発想が古い。野党をけしかけても議席激減もあって能力的に無理な状況に立ち至っている。お追従質問をするような状態からは、何も生まれてこない。逆に自民党の若手議員には励みとなって、勉強して政権に厳しい質問をするようになれば、国民の信頼度も増し、国会は活性化して議会制民主主義にプラスの作用をもたらすだろう。

◎俳談

◎俳談
【昼寝】
富裕にはいささか遠し三尺寝 産経俳壇入選
 年寄りに昼寝ほどありがたいものは無い。若いころは他社の記者から「あいつはいつ寝てんだ」と言われたほど働いたから、当然の“報酬”だ。おまけに今は世のため人のために、夜中に目をらんらんと光らせて、4000字の政治ブログを毎日書いている。昼寝は当然だ。朝飯食っちゃ寝、昼飯食っちゃ寝の毎日だ。
  掲句の三尺寝は夏の季語「昼寝」の傍題の一つ。語源ははっきりしないが、、昔の労働者である職人や大工や左官が、狭い職場で仮眠を取ることから言われるようになったという説があり、これが本筋情報。日の影が三尺移る程の短い時間の仮眠を表すとする説もある。面白いのは、人間の体の中に棲むといわれる「三尺(さんし)の虫」が人の眠気を誘って仮眠をさせ、天帝にその人間の行った愚行を告げ口に行くことから出来たという説だ。天帝は告げ口を聞いて、寿命を縮めるのだげな。この説が眉唾ながら一番面白い。
  昼寝の傍題にはもう一つ「昼寝覚(ざめ)」がある。
昼寝覚雲を目に入れまた眠る   大野林火
はるかまで旅してゐたり昼寝覚  森澄雄
筆者の句もまた掲げる
恐ろしき唱和を見たり昼寝覚 朝日俳壇1席

◎米、北へのテロ国家指定で対中圧力

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◎米、北へのテロ国家指定で対中圧力
  標的は中国企業193社
 米朝緊迫化は不可避
 核・ミサイル実験の準備を続ける北朝鮮に対して米トランプ政権が最終的外交戦略の火蓋を切った。北がもっとも“痛み”を感ずる「テロ支援国家」再指定は、行き詰まり状況を打破するための切り札であり、包囲網の輪はひしひしと金正恩に向かって狭まりつつある。加えて中国に対して“行動”を迫るものでもある。北との取り引きを続ける中国企業193社に対して取引中止の圧力をかける。一見、国連制裁決議と重複するように見えるテロ国家再指定だが、米国はこれをテコに北と外交関係がある160か国に対して協力を要求する。多くの国は、北をとるか米国をとるかの選択を迫られ、最終的には米国に同調するだろう。米朝緊迫化は避けられない方向だ。
 政府筋によれば、トランプはさきのアジア歴訪の際に首相・安倍晋三には早期再指定の方針を伝え、安倍もこれを了承したという。各国首脳に先だって安倍が「圧力を強化するものとして歓迎し支持する」と表明したのは当然である。そもそも再指定はトランプが就任早々から考えていた問題である。昨年12月の安倍トランプ会談で安倍が極東情勢を説明した中で、キーポイントとして指摘したとみられている。米国は1988年に大韓航空機爆破事件を契機にテロ支援国家に指定。ブッシュ政権が2008年に核計画の断念との取り引きで解除したが、北は核・ミサイル開発を再開して、完全にだまされた結果となった。ならず者国家を信用する方がおかしいのだ。
 過去において北のテロはやり放題の状況であった。日本人の拉致はまさにテロ行為であり、2月の金正男の殺害、北に拘束された米国人留学生の事実上の“殺害”など枚挙にいとまがない。トランプはアジア歴訪から帰国して再指定を実行に移す段取りであったが、習近平が共産党対外連絡部長宋濤を特使として北に派遣したことから、いったん様子見となった。トランプは「大きな動きだ」と歓迎する発言をしている。しかし20日に帰国した宋濤は、結局金正恩に会えずに終わり、中国による対北圧力の限界を見せた。その直後の再指定であった。
 問題は、再指定で何が制裁対象になるかだが、ホワイトハウスのブリーフでは武器禁輸、経済援助の禁止、金融取引の規制などの措置が取られる。これは国連決議ともダブる。しかし再指定は各国を動かすテコの役割を果たす。米国が主導して今後各国への働きかけが行われる。米国のメンツに関わる問題であり、その外交力をフルに発揮することになるだろう。
 とりわけ北を野放図にのさばらせてきたのは中国であり、中国を制御しなければ北問題は解決しないと言ってよい。どう取りかかるかだが、米国は北との取り引きがある193社の中国企業のリストを保有しており、これらの企業の対米取り引きに対して事実上禁止につながる制裁を科して行くものとみられる。国務長官ティラーソンはテロ支援国家指定の意義について「北朝鮮や関係者にさらなる制裁と懲罰をかけることになるし、北と関わろうとする第3国の活動を途絶えさせる結果を招く」と語っている。
 トランプは訪中で2500億ドル(28兆円)の「商談」を習近平からもらって、目くらまし状態となって北問題を詰めないままに終わった。しかし、今回の制裁は北との貿易の9割を占める中国を狙ったものと言えるだろう。習近平は対米貿易を“人質”にとられた形となる。もともと金正恩を嫌悪している習近平は特使派遣が空振りに終わってよほど頭にきたとみえて、中国国際航空の北京ー平壌便の運行を停止する措置に出るようだ。北京と平壌を結ぶのは高麗航空だけとなる。
 また軍事面でも効果はなくはない。テロ支援国家再指定は国家が他の国家を経済的に束縛することになるが、その禁を破る行為に対しては、米国が先制攻撃を北に対して断行する口実となり得るからだ。
 ただでさえ年末年始にかけて北朝鮮は国連制裁が利きだして行き詰まるという見方が強かったが、今回のトランプの“本気度”は相当なものがあり、ダメ押しの制裁となる。金正恩は暴発に出るか、制裁に屈するかの二者択一を迫られることは確かだ。

◎俳談

◎俳談
【一字が一句の生死を決める】
東京の娘の部屋や紙の雛 朝日俳壇3席
 切れ字は俳句の命である。切れ字があるから五七五で宇宙を表現することもできるのだ。切れ字とは、読んで字の如くそこで一句が大きく切れる表現だ。代表的な切れ字が「や」「かな」「けり」である。先に挙げた中村汀女の<さみだれや船が遅る々電話など>を再び例に挙げる。切れ字が入ると<さみだれや/船が遅る々電話など>と切れる。読者は「さみだれ」で情景を脳裏に描き、それに続く下の句で平和な家庭の情景を思い浮かべる。切れ字「や」の持たらす余韻は限りなく大きい。掲句は一人暮らしの娘の部屋を詠んだが、この場合の「や」は心配している父親の有様すら想像させる。
王手打ち指迷わずに西瓜へと 杉の子
 掲句は「王手打ち」で軽く切れる。この場合の「ち」は切れ字の効果と同時に英語の「and」の意味を伴って、一句を滑らかにする。余韻をもたらすのである。最初、筆者は「王手打つ」とすべきか迷ったが「ち」とした。なぜか。「ち」を「つ」に変えると切れがなくなりすべてが「指」にかかってしまって、一句の雰囲気がぶちこわしになるのだ。一語が陳腐なものになってしまう。「つ」と「ち」の違いは、俳句の生死を決める決定的な意味を持つ。「句観」の違いどころか、熟達か稚拙かの差がある。

◎岸田が「ポスト安倍」意識の代表質問

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◎岸田が「ポスト安倍」意識の代表質問
 安倍に「上から目線」と苦言
「禅定路線」も捨てがたく“ごますり”も
 衆院代表質問の場でもあらばこそ、自民党政調会長岸田文男が、「ポスト安倍」といういわば“私闘”に属する問題を取り上げた。いささかあきれたが、野党の“ふんどし担ぎ”のちまちました質問より面白かった。政権奪取に向けての政治信条も「正姿勢」と打ち出し、所属する派閥宏池会の元祖池田勇人の「低姿勢」から脱皮した。もっとも、一方では安倍政治を賃金や雇用において「大きな成果」と褒めるなど、なお“禅定路線”捨てがたしの心境もちらつかせた。演説終了から席に着くまで25秒間万雷の拍手が鳴り止まなかったが、これを誤判断して突撃する時期ではあるまい。ポスト安倍のライバル石破茂には大きな差を付けた感じだが、来年9月の総裁選挙に出馬するには、首相安倍晋三が相当弱体化しなければ無理とみる。
 岸田はまず「総理はアベノミクスをはじめとする政策の先にどんな姿を見ているのかお示し願いたい」と安倍に政治信条の明示を求めた。安倍はこれには全く答えず、あえて無視して答弁書の読み上げに終始した。ついで岸田は「池田首相が自らの政治姿勢として寛容と忍耐をスローガンとして提唱したことが低姿勢と受け取られた」として「責任ある政治の姿として疑問が指摘された」と述べた。しかし「低姿勢」は「受け取られた」のではなく、ブレーンの大平正芳や宮沢喜一が勧めて池田自らが言及したこともある事実であり、事実誤認がある。岸信介の安保条約改定で見せたタカ派姿勢のアンチテーゼとして、池田は低姿勢を自ら打ち出したのだ。
 しかし、その間違った論拠に立って岸田は池田が師として仰いだ陽明学者安岡正篤が「低姿勢、高姿勢のいずれも間違いである。自分の政治信条をはっきり持っていれば自ずから正姿勢になる」と助言したことを指摘。「相手の顔色を見て右顧左眄(うこさべん)するようでは国民への責任を果たせない。同時に野党や国民に上から目線で臨むようでは国民の支持を失い、真っ当な政治を行えない」と信条を述べた。この「上から目線」発言は安倍への苦言とも受け取れるが、岸田は重要ポイントを見逃している。それは今回の総選挙の大勝が、北朝鮮に毅然として対処する安倍自民党の路線を有権者が圧倒的に支持したからにほかならない点だ。北への対処方法は一見タカ派に見えるが、世界標準から見ればハト派に属するくらいのレベルである。そして岸田は「選挙において多くの議席をいただいたからこそ、正姿勢の3文字を胸に公約実現のために日々前進してまいりたい」と結んだのだ。今後、岸田の政治信条は「正姿勢」と固まったが、自ら正しいと信ずる姿勢が往々にして唯我独尊につながることは政治の常であり、このキャッチコピーには危うい側面もある。
 さらに加えて岸田は安倍の神経逆なで発言をした。森友・加計学園問題に言及したのだ。「国民に疑問の声がある以上丁寧な説明が必要」と迫った。これに対して安倍は「私自身は閉会中審査に出席するなど国会で丁寧な説明を積み重ねてきた。衆院選における各種討論会でも質問が多くありその都度丁寧に説明した」と突っぱねた。岸田は総選挙のテーマの一つがモリカケにあったことを無視している。安倍のモリカケへの関与の虚偽性を有権者は看破して、大勝につながったことを岸田はどう考えるのだろうか。野党の目線で政調会長たるものが追及する問題ではない。また改憲問題で岸田は「憲法論議は改正のための改正であってはならない。丁寧な議論が必要」と首相をけん制したが、安倍は「国民的な理解が深まるのが重要」と深入りを避けた。
 自民党内ではタカ・ハト論争が絶えてなかったが、これは小選挙区制への移行で中選挙区制のような党内対立が必要でなくなったことが大きな理由だ。岸田の宏池会はハト派で、タカ派とされて安倍も会長を勤めた福田系派閥清和会と対峙してきたが、あえて岸田がぶり返した背景には総裁選への思惑があることは間違いない。このまま安倍を来年3選させて、今から合計で4年間の政権に協力し続けるべきか、それとも来年岸田自らが出馬して勝負に出るかの思惑が錯綜しているのが代表質問に現れたのだろう。派閥を率いるにも“やる気”を前面に出す必要があった。
 野党は立憲民主党代表の枝野幸男と希望の党代表の玉木雄一郎の立ち位置の違いが鮮明となった。枝野は先祖返りして左傾化を鮮明にさせた。しかし論理矛盾を露呈させた。日米安保条約を恥ずかしげもなく「不可欠」としながらも、集団的自衛権の限定行使を可能とした安保関連法の廃止を要求したのだ。北朝鮮の存在が安保関連法なくしていまや国の安全保障は成り立たないという事態に至らしめているイロハノイを理解していない。逆に玉木は外交安保で現実路線だ。政権への補完勢力の色彩を強めたが、希望の党内部が持つかどうかだ。

◎俳談

◎俳談
【嬉い、悲しい、寂しい、美しいは使わない】
夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣
 使わないと言いながらなぜ例句に使った句を掲げたかである。「寂しさ」を使って人生の寂寞感をこれだけ語る句は珍しいからだ。
人生における諦観すら覚える。しかし初心者が感情を表す言葉を使うとそうはいかない。概して下手の見本のような句になる。コツをつかむまではやめた方がいい。嬉しいもそうだ。
雪熔けて雪踏(せった)の音の嬉しさよ 正岡子規
なぜプロが使うと秀句になるかと言えば、寂しさ、嬉しさをくだくだと説明していないからだ。拙句の
淋しさも茶柱と呑む炬燵かな 東京俳壇入選
も許される部類だ。
寂しいという言葉を使わずに現した拙句を挙げれば
ときめきてすぐあきらめて石鹼玉 読売俳壇1席
帰りくる霜夜の妻の肩小さし 東京俳壇入選
といった具合となる。言わなくても寂莫感が十分に伝わると思う。

◎愚かなる新聞の首相演説批判

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◎愚かなる新聞の首相演説批判
   分量多きが故に尊からず
  ゲティスバーグ演説は2分
 一刀両断で首相・安倍晋三をグーの音も出なくする記事は一本もなかった。所信表明演説に関する全国紙全ての記事を詳細に分析したが、全紙が重箱の隅をつついて、まるで小姑の嫁いびりみたいな記事ばかりで、愚かであった。地に落ちた。最近の全国紙の記事はどの社を見ても“金太郎飴”記事ばかりだ。切っても切っても同じ顔しか現れない。記者クラブ制度の悪弊でもある。毎日や日経などネットにかなり先行露出する記事がリードする場合もあるのだろう。若い政治記者諸君に告ぐ。いいかげんに「交差点みんなで渡れば怖くない」から脱せよ。
  まず記事や社説で全紙が批判しているのが、所信表明演説の北朝鮮をめぐる部分が総選挙での首相演説と同じだというものだ。朝日は「外交成果を誇る大半が、衆院選や一連の外交行事ですでに語ったことの繰り返しに過ぎない。」と宣うた。読売も「北朝鮮問題など衆院選で取り上げたテーマが大半で、新味に乏しかった」という。毎日は「北朝鮮問題、少子高齢化の克服という、衆院選で訴えた『二つの国難』をほぼなぞった」だそうだ。この論調から見れば、間違いなく全紙が、新しいことを言わなかったからけしからんと言っている。佐藤愛子のエッセイ「九十歳。何がめでたい 」風に開き直らせてもらえば、「衆院選と同じ。何が悪い」だ。それとも衆院選での発言を低く見ているのか。ばかも休み休みに言え。衆院選での発言は政治家の命がかかっているのだ。本気なのだ。若い記者共は一体所信表明演説を何と心得ているのだろうか。国の重要政策を国会議員に訴え、その賛否を問うのが基本だ。北朝鮮で安倍は「日本を取り巻く国際環境は戦後もっとも厳しいと言っても過言ではない」と述べたが、それ以上に何を言えというのか。新聞が喜ぶことを首相に言えというのは筋違いも甚だしい。「戦争するぞ」とでも言えば一面をぶち抜くような大見出しがとれるが、そんな“新鮮味”などは御免被るのだ。近頃の政治記者よセンセーショナリズムと唯我独尊もいいかげんにせよと言いたい。逆に衆院選と同じ事を言わなければ公約違反と叩くのは目に見えている。
  もう一つの嫁いびり記事が「分量が少ない」だ。読売が「分量は安倍の国会演説としては過去最低」。朝日が「30年間で(小泉純一郎についで)2番目に少ない」と鬼の首を取れば、毎日は「演説の文字数は約3500字で、昨年秋の所信表明演説の半分にも満たない。目新しい政策もなく、第4次内閣となって最初の国会演説がこれでは物足りない」だそうだ。日経に至ってはしゃれたつもりか「省力化が目立った」だと。古今東西国家のトップの議会や国会演説を「短い」
といって批判した例を知らない。「人民の、人民による、人民のための政治」で知られるリンカーンのゲティスバーグ演説は、たったの272語、1449字で約2分間で終わった。カメラマンは演説に気づかず、ようやく気づいた時には演説が終わっていたという。若い記者たちよ、演説は中身であり、長さではないことをこれからは勉強するのだぞ。デスクもデスクだ。「こんな記事書くな」と言う見識がない。唯一日経の社説が「選挙後の特別国会であり、街頭演説の繰り返しのような中身だったのはやむを得まい。長さも、21世紀に入ってからの首相の国会演説では2番目に短かった。掲げた政策をどう具体化するのかなどは、2カ月後の施政方針演説で詳しく語ってほしい。」と主張しているが、これが唯一の常識論だ。
  新聞のとんちんかんな論調は、見識のない野党代表質問者に受け継がれる。「選挙で言っていたことと同じ」との質問に対して安倍は決して「野党は選挙で言っていたことに訴求力がないから大敗した」などと切り返してはならない。ここは「信念を持って選挙での発言と同じ答弁をする」が正しい。分量に文句がついたら「ゲティスバーグ演説は2分弱」と答えるのが正解。そもそも今国会の会期の39日間は特別国会の会期としては異例の部類だ。過去10回の特別国会の会期は3日から9日間が7回で圧倒的に短い。そもそも特別国会などは通常、院の構成と首班指名が目的だ。それを長くとったのは所信表明演説を懇切丁寧に説明するためであり、批判は全く当たらない。
 さらに野党はまたまたモリカケ論争を挑もうとしている。朝日、毎日など新聞やTBS、テレビ朝日など民放テレビが取り上げるのはモリカケしかないからだが、もう国民はうんざりだ。モリカケ論争は総選挙の安倍圧勝で国民の信任を受けて、政治的にはけりを付けたのだ。共産党が9議席減らしたのはモリカケばかりにこだわったからだ。ノーテンキに緊迫する極東情勢をそっちのけにするときかと言いたい。一方、小泉進次郎が党内野党と化して総選挙の「九仞(じん)の功を一簣(き)に虧(か)く」ような発言を繰り返しているが、失望した。だれか忠告してやる政治家はいないものか。親父は諫めないのか。困ったものだし、ここでぽしゃってしまうのは惜しい。

◎俳談

◎俳談
【オノマトペの俳句】
ぱつかんと開く缶詰開戦日 東京俳壇入選
 動物の音声や物体の音響を現した言語をオノマトペと言う。掲句は缶切りの不要な缶詰の開く様を詠んで開戦日と響かせた。古来オノマトペは俳句と密接なつながりがある。芭蕉にもオノマトペ俳句がある。<梅が香にのっと日の出る山路かな>である。一茶のオノマトペ俳句は<うまさうな雪がふうはりふはりかな>が有名。近代でも多くの俳人がオノマトペと取り組んでいる。中でも秋元不死男の<鳥わたるこきこきこきと罐切れば>は秀逸である。オノマトペが何とも言えない哀感をもって秋の季語「鳥渡る」と響き合っている。
 坪内捻転もオノマトペで新境地を開いた。<たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ><三月の甘納豆のうふふふふ>といった具合だ。これを下手に使うととんでもない破たんを来すから要注意だ。しかし勇気を持ってオノマトペを使おう。注意点は片仮名を使うより平仮名を使った方が俳句としっくり合うことだ。小学館の「日本語オノマトペ辞典」が参考になる。
しゃりしゃりと薄氷鳴らし舟通る  毎日俳談入選
ざつざつとバターを塗りて立夏かな 産経俳壇入選 
おろおろと吾もかぎろふ人となる  東京俳壇入選

◎安倍外交「対北包囲網」強化で結実

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◎安倍外交「対北包囲網」強化で結実
  トランプは歴訪で指導力発揮できず
 外交安保そっちのけの「商談」固執
 トランプ「商談大統領」の欠陥を首相・安倍晋三が補完して、北朝鮮に対する国際世論を盛り上げ、包囲網実現へとつなげたというのが一連の外交の舞台裏の実態だ。トランプは外交・国際政治に無知という弱点を露呈した。疲弊したのか、国内政局が気がかりなのかトランプは最重要会議である東アジアサミットを欠席して帰国、アジア諸国首脳らの落胆とひんしゅくを買った。複雑な利害の錯綜するアジア外交への対応能力の限界を見せた。米最大の発行部数の高級紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「トランプ氏が中国による重商主義拡大を米国の犠牲の下に放任した」と警鐘を鳴らした。
 逆に安倍の活躍が目立った。安倍の基本戦略はまずトランプの訪日で、核・ミサイル開発に専念する北に対する圧力を最大限に高め、日米共同歩調を確認する。その上でトランプに中国を説得させて北への圧力を強化。次いで東南アジア諸国への働きかけで国際世論を盛り上げる算段であった。ところが肝心のトランプが中国で習近平の手のひらで踊ってしまった。2500億ドル(28兆円)の「商談」で舞上がって、対北問題をお座なりにしてしまった。一応は北への圧力を最大限高める方針を主張したが、習近平は国連決議の履行以上の言質を与えず、軽くいなされてしまった。効果への疑問が指摘されている2500億ドルの「商談」に目がくらんで、毎年2700億ドル規模のの対中貿易赤字が発生している問題などは素通りしてしまったのだ。
 一方安倍は、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国首脳と精力的な会談を行い、北朝鮮問題の実情を説明した。これが14日の首脳会議に結実した。ほとんどの首脳が北の核・ミサイル開発に対する懸念を表明するとともに、国連安保理決議違反を指摘した。総じて北朝鮮包囲網が出来上がった感じだ。さらに重要なのは多くの首脳から中国が実効支配を進める南シナ海の問題に関して「航行の自由に抵触しかねない」などの懸念や指摘が出されたことだ。東アジアサミットは議長声明で北朝鮮による核・化学兵器など大量破壊兵器やミサイル開発を非難し、核・ミサイル技術の放棄を要求するに至った。これは北朝鮮の兄貴分である中国をけん制するものでもある。
 一方でトランプは、米政府がこれまで中国の人口島造成による軍事拠点化に、「待った」をかける役割を果たしてきたことなど念頭にななかった。結局南シナ海問題で中国への強い姿勢を打ち出せないままとなり、強い指導力を発揮させることは出来なかった。オバマや歴代大統領が打ち出してきたインド太平洋地位域に関する自らのビジョンを示さないで歴訪を終わった。15日付読売によるとベトナム外交筋は「米国が南シナ海問題で抑制的に対応する間にも、中国は軍事拠点化を着実に進める。遠くない将来、中国の南シナ海支配を追認せざるを得ない時が来るのではないか」と述べているという。
 経済問題でもトランプは「インド太平洋地域のいかなる国とも2国間貿易協定を結ぶ。われわれは、主権放棄につながる大きな協定にはもう参加しない」と発言した。これは米国が戦後作り上げた多国間貿易システムを否定し、輸出のための市場を自ら閉ざすことを意味する。TPPの離脱で米国の輸出業者はGDPで世界の16%を占める市場で不利な立場におかれるからだ。トランプはいまや2国間協定で米国が個別に圧力をかけようとしても、貿易構造の多様化で多くの国が痛痒を感じない状況であることを分かっていないのだ。WSJ紙は「米国の最大の敗者になるのは、農業州と中西部にいる大統領支持者だろう。TPPは米国にとって、アジアの成長から恩恵を得られる絶好のチャンスであり、トランプ大統領の抱く不満の種を是正する部分が少なくない。」と批判している。しかし、かたくななまでに2国間貿易に固執するトランプの方針は覆りそうもなく、世界は次の政権を待つしかすべがないのが実情だろう。
こうしてトランプのアジア歴訪の旅は、指導力を発揮するどころか、事態をますます流動的なものにしてしまった。逆に共産党大会で独裁体制を確立した「習近平の強さが浮き彫り」(ワシントンポスト紙)になった形となった。国連制裁の結果北朝鮮情勢が年末から新年にかけて激動含みとなることが予想されている中で、世界は「トランプ問題」を抱えることになる。

◎俳談

◎俳談
【帰省の句】
帰省子の峠越えれば母の待つ 毎日俳談入選
 帰省子は帰省する者。帰省は普通旧盆の休みに行われる。俳句の世界では旧盆は秋に入るが、帰省は夏の季語である。俳句では正月の帰省には使わない。正月の帰省には里帰りなどを使い、別に季語をたてる。まだ母が若く、筆者が幼かったころ、実家が近づくと母の足が速くなり、ついて行くのが大変だったことを思い出す。帰省の句のバリエーションはいくらでもある。今は帰省を受ける側だ。家には老犬がいて、子の帰省を喜ぶ。
帰省子に尾を振る力残りをり 杉の子
帰省子は近道を知っているから、裏木戸を開けて入ってくる。
裏木戸を開けて帰省子戻りけり 日経俳談入選

◎日中、「対立」から「接点」構築へ

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◎日中、「対立」から「接点」構築へ
 来年にも習近平来日働きかけ
  亀裂要因棚上げ「ガラス細工」の側面も
 2012年の野田政権による尖閣国有化以来、中国公船の侵入で険悪化してきた日中関係に一筋の光明が差し込んできた。新聞紙面でも「対中改善」「首相・習氏友好ムード」と活字が踊るが、果たして「本物」か。たしかに習近平にとっても安倍にとっても、「本物」とするには、障害となる難問が山積している。まず、基本的に言って、習近平の主導する「一帯一路」戦略が、安倍・トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」と対峙するのか融合するのかは流動的だ。まだまだ矛盾要素は多く、「ガラス細工」の危うさを感ずるが、このチャンスを両国とも逸するべきではない。出来るだけ接触の機会を増やして、“接点”を見出し、来年にも首脳の相互訪問を実現して、方向を「地域の安定化」に向けて確たるものにしなければならない。安倍は2020年オリンピックの円滑なる運営まで視野に入れた対応をしているかのように見える。
 関係改善の芽は生じていた。5月に自民党幹事長・二階俊博らは、訪中で「一帯一路の」会議に出席。9月には外相・河野太郎と王毅が会談したが、なぜか河野はこれまでの外相が言及してきた南シナ海への懸念伝達を“封印”した。6日の日米首脳会談後の記者会見では安倍が「インド太平洋戦略」に関して「賛同する国があればいずれの国でも共同してやっていく」と微妙な発言をした。安倍は「一帯一路」と対峙する方向ではなく、「インド太平洋戦略」と融和させる方向で強力関係を築く姿勢に転じたかのようである。一帯一路が中国のアジア全域に対する軍事支配確立への突破口とならないように、参加して内側からけん制することも不可欠だ。アベノミクスの総仕上げにも「一帯一路」を“活用”して行く構えであろう。日本企業の間には、一帯一路をチャンスととらえて、積極的に参加すべきだとの声が強まっている。
 その上で11日の安倍・習近平会談が「かってない良好な雰囲気で開かれた」(首相側近)という状況に至った。安倍が、打って変わってニコニコ顔になった習近平に首脳の相互訪問を提案、習も心よく応じた。年内に懸案の李克強との日中韓首脳会談が開催される下地が整った。そして13日の安倍・李克強会談である。首相李克強は「最近の日中関係には積極的な変化が現れているが、一部に敏感な要因も存在する。双方の努力で日中関係の改善を強化しなければならない」と発言した。 一連の発言と動きは、かつて尖閣諸島の領有権については「棚上げにする」という「密約」が成立したことを想起させる。これを裏付けるように1978年、副首相とう小平(当時)が日本記者クラブで尖閣問題で「中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束した」と発言している。今回も事実上の「亀裂要因棚上げ」ではないかと思う。安倍が李克強に「来年は日中平和友好条約締結40周年だが、戦略的な互恵関係のもと関係改善を強く進めたい」と発言したのも、関係改善最優先のなのであろう。この流れは東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも同様であり、各国とも南シナ海問題を「封印」して「対中接近」を際立たせた。共同声明にもこれまであった中国進出への「懸念」の文字が消えた。スカボロー礁への中国進出を懸念しているフィリピン大統領ドゥテルテですら、「中国と戦争するわけにはいかない。今は触れない」と言及を避けた。東南アジア諸国の大きな潮流は「対立を避け実利を求める」方向へと大きく蛇行し始めたかのようだ。
 こうした緊張緩和の傾向は中国が主張する「一帯一路」を、加速させざるを得ない状況となっている。背景には、日の出の勢いの中国と比較して米国の存在感の低下が著しいことが挙げられる。今後米国は南シナ海で「航行の自由作戦」をより頻繁に推進する方針だが、トランプが習との会談で中国の2500億ドル(28兆円)の「商談」に飛びついて、大喜びしている姿をみて、アジア諸国は「バスに乗り遅れるな」と対中傾斜が一段と強まったのだ。
 しかし、北朝鮮問題一つをとっても日米が「対中対話のための対話では全く意味がない。いまは 最大限の圧力をかけるときだ」(安倍)としているのに対して習は「平和的対話で朝鮮半島の核問題を解決する」と真っ向から対峙している。これは極東戦略という安全保障上の基本中の基本について根本的な対立要因を日米と中国が抱えていることになる。ガラス細工たるゆえんである。しかし、気がついたときには中国の「覇権主義」が東・南シナ海を席巻していたという事がありうるのであり、「用心」は不可欠だ。習近平の微笑外交の裏には冷徹な計算があることを夢にも忘れるべきではあるまい。習近平は安倍との会談後「日中関係の新たなスタートとなる会談であった」と言明したが、「新たなスタート」は、日本の「対中追随」路線への幕開けとなる危険性を常に帯びている。


◎俳談

◎俳談
【孫】
児は起きて団扇の母の眠るかな 産経俳壇入選
 古来「孫」の句は大げさに言えば俳壇から排除されている。なぜかと言えば余りに陳腐であるからだ。もちろん孫を可愛いと思い、いつくしむ爺さんや婆さんの気持ちは貴い。しかし、これはごく日常的、個人的な感情であり、“ありきたり”過ぎるのだ。詩情もない。これを逃れる唯一の方法は「孫」をあきらめ「児」とすることだ。「児」で一般化してしまうのだ。手っ取り早く入選句を挙げる。
拝むこと覚えたる児の花祭り 東京俳壇入選
春満月電池で点くといふ児かな 産経俳壇入選

◎TPPは暗にトランプ早期退陣を“期待”

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◎TPPは暗にトランプ早期退陣を“期待”
  「火種」は残るが、消費者は歓迎
 6か国が議会承認すれば発効へ
 環太平洋経済連携協定(TPP)は2015年10月、米国アトランタで開催されたTPP閣僚会合において「大筋合意」に達して以来、会合のたびに「大筋合意」を繰り返している。今回も「本当に本当」の大筋合意かどうかが疑われるが、とにかく米国抜きの11か国では遠心力より求心力が勝っていることは確かだろう。少なくとも保護主義を臆面もなく前面に出すトランプの「圧力」を受け流す「安全弁」になったことはたしかだ。日本は先に欧州連合(EU)とも経済連携協定が合意に達しており、日本主導のTPPが加わって保護主義を排除して自由貿易を推進する態勢は一層強まった。今後日本は一層TPPの結束を固め、この立場をフルに活用して中国主導の巨大経済圏東アジア地域包括経済連携協定(RCEP)を、より質の高い自由貿易の枠組みに発展させるよう尽力すべきだろう。
 TPPは米国が復帰する日を夢見て、米国の主張する20項目をあえて廃棄せずに“凍結”した。それではトランプが方向を転換するかといえば、しない。しないどころかトランプは10日にTPPからの離脱を改めて正当化した演説をしている。トランプにしてみればTPP参加は自動車業界など支持企業や、選挙で公約を支持した有権者のコアの部分を失う可能性があり、ただでさえ30%台と言う支持率確保には欠かせない政策なのだ。トランプは常に“私利私欲”優先なのだ。それでも米国が復帰するのをTPPイレブン(11か国)が期待しているのは、米国の政局を見ているのだ。
 その米政界は、ロシアゲートが佳境に入っている。ロシア政府による米大統領選干渉疑惑の捜査が進む中、新たなロシア疑惑が台頭している。トランプの娘婿など側近や商務長官ロスと関係の深い海運会社と、プーチンの側近が実質オーナーの石油化学大手との取り引きの疑惑だ。これが外遊から帰国するトランプを直撃する。ニクソンのウオーターゲート事件をほうふつとさせる「大統領の犯罪」が暴かれかねない状況なのである。米政権はいったん成立すると大体2期8年の任期をまっとうしているが、まっとうしなかったのはニクソンだ。議会の弾劾成立直前に辞任している。トランプの場合は3年後の選挙で惨敗する可能性があり、TPP11はそれを待っているかのようである。3年などすぐに過ぎる。
 さらに11内部でも火種が残っている。カナダに新政権が誕生して“手のひら返し”に動いたのだ。トルドーが新協定の署名に慎重なのは選挙基盤の中道左派自由党が反対であり、賛成すれば支持基盤が崩れかねないからだ。加えて北米自由貿易協定(NAFTA)の改定で米国との厳しい交渉にさらされており、TPPの合意がNAFTA交渉への実害を生じさせかねないという危惧がある。ところがTPP会合でカナダの国際貿易相シャンパーニュは先陣を切って賛成している。完全なる閣内不一致を露呈した結果をもたらしており、日本なら野党から退陣を求められる事態だ。ニュージランドは政権を奪還した労働党が「外国人による中古住宅の購入禁止」を打ち出して、TPPでごねたが、最終的には推進に回った。さらにベトナムは共産党政権が労働者の権利拡充に反対、マレーシアも国有企業の優遇禁止の凍結を要求、継続協議的な対応をせざるを得なかった。
 こうして「火種」を抱えながらのスタートとならざるを得ない結果となっているが、参加6か国が議会で批准手続きを終えればTPPは正式に発効する。従って発効することは間違いない。日本は対米説得もTPP内部の調整も自らリードして行く必要があるが、ここは長期スパンで物事を考えるべき時と言えよう。なぜなら長期的には自動車など工業製品や農産物の輸出促進につながることは間違いないからだ。工業品目では国ごとに70-100%と差はあるものの関税が即時撤廃となり、輸出産業に依存する日本にとっては大きな利点となる。農産品の日本への輸入に対する撤廃は95%となり、農業への打撃はあるが、一般消費者にとっては選択肢の幅が広がる。総じて歓迎すべき流れとなる。対米交渉においても日本にとって有利なのは、たとえトランプが2国間交渉を迫ってきても、日本は追い詰められることはなくなった。TPPを盾にとって「TPP以上の譲歩は応じられない」と主張することが出来る。逆に米国に対して「TPPに復帰すべきではないか」と逆襲も可能とになる。

◎俳談

◎俳談
【句会に棲む魔物】
 俳句は「座の文学」であり、句会と共に発展してきた。句会では作者名の定かでない句を、投票で決めるから、極めて公平である。しかしそのレベルはピンからキリまである。ある句会で最下位だった俳句が、他の句会で最上位というケースはしょっちゅうある。ある句会で最下位だった俳句が、新聞俳壇でトップというケースもある。句会には魔物が棲むのだ。いくら自分がいいと思う句を作っても、高い点数を取れないケースがほとんどだ。思い込みがあるのに加えて、句会の空気が左右する。しかし概して句会で上位にいく俳句は、意外性があり、明るく、前向きな句が多い。陰うつで考え込んだような句は採用されにくい。句会ではマイナス思考よりプラス思考が勝つ。従って句会で高得点の句が必ずしも秀句とは言えない。なぜなら選句時間が短く、じっくり判断するひまがないからだ。上位入選を目指すにはこうした句会ごとに異なる雰囲気を考慮して、その句会のレベルにあった俳句を出句することだが、これが難しい。150歳くらいにならないと名人の域には達さない。しかし年寄りの健康に句会が良いのは、闘争心をいつまでも保てることだ。人間多かれ少なかれ闘争心をなくしたら、棺桶が近いと思った方がいい。

◎米中首脳会談は7対3で習近平の勝ち

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◎米中首脳会談は7対3で習近平の勝ち
  商人トランプは覇権的行動を事実上黙認
 「巨額商談」に目がくらんだ
 さすがにことわざの国中国だ。今度は荘子の朝三暮四でごまかした。中国、宋の狙公(そこう)が、猿にトチの実を、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという寓話だ。トランプは「俺はゴリラだ」と怒るかも知れないが、似たようなものだ。トランプが中国の2500億ドル(28兆円)の「商談」に飛びついて、大喜びしているが、その実態は巨額の貿易赤字をベールで覆い、焦点の北朝鮮対策を現状のままにするという習近平の罠にトランプが見事にはまったということだ。商売人の大統領らしいその場しのぎの計算だが、「商談」の本質は一過性であり、本筋の年間2700億ドルに達しようとしている貿易赤字解消への効果は薄い。「商談」に目がくらんでトランプは自由主義陣営の基本戦略をなおざりにした。7対3でトランプの負けだ。
 この商談はまずマスコミを操作する事から始まった。同行記者らはAPも米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も商談を90億ドル(1兆円)と報じていた。機中での米側のレクにミスリードされたのだ。米側も明らかにサプライズ効果を狙ったフシがある。さすがに気が引けたか米商務長官ロスは「もっと多くの合意があるかも」と増額の可能性を示唆していた。それが何と28倍の商談合意である。トランプはかねてから中国の赤字に対して「アメリカは中国に陵辱されている」「中国は史上最悪の泥棒だ」とまで言い切っていた。しかし会談後は自慢げに「今の貿易不均衡で中国に責任はない。不均衡の拡大を防げなかった過去の政権を責めるべきだ」と語り、何とオバマ前政権などに原因があるとの見方を示したのだ。定見のなさも極まれりというところだし、オバマは激怒し、米国内でも反発が生ずるだろう。
 米マスコミの反応は驚くどころか冷静で厳しいものであった。WSJ紙は「米中企業が結んだ総額28兆円規模の契約も巨額の貿易赤字を解消する効果は薄い」「中国は貿易問題ではほとんど何もしていない」などと看破した。確かにそうだろう。2700億ドルの対中貿易赤字は構造的なものであり、毎年発生している。そこに場合によっては10年もかかるような商談を持ち込んでも、貿易バランスにとって効果は画期的なものにはなりようがない。WSJ紙は「米中大型商談の落とし穴、通商問題は先送り」と題する10日付の記事で「一見すると、米企業が勝利を収めたように見えるが、この巨額の数字には裏があった。その大半が完全な契約の形をとっていないのだ。 専門家からは、解決が難しい米中間の通商問題には何ら対処していないとの指摘が上がっている」として、合意項目の個別にわたって詳細な“フェーク合意”の中身を分析している。同紙も指摘しているが例えばボーイングの旅客機300機購入などは、15年にオバマが習近平と合意したもので、新しさなどはない。
 中国は貿易赤字問題ではほとんど何もしない一方で、トランプを世界遺産の故宮でもてなすなどケバケバしい演出で目くらましを食らわし、貿易赤字問題を“封印”することに成功したのだ。習近平は商談成立以外は経済面で新たなカードを切ることもなく、譲歩も全くしなかった。習近平は相手のメンツを立てたふりをして、実利を取る戦略であり、トランプは敗退したのだ。習近平は記者会見で、「商人の道は善意なり」ということわざを引用して「両国の貿易関係は平等互恵に基づいて成功の物語が続く」と臆面もなく言ってのけた。これまで通りでやりますよということだ。それにしても「善意」などかけらもなく、冷徹なる計算があるだけだ。相手が商人ならそれなりに対応する術を身につけているということだ。かつて池田勇人をドゴールは「トランジスタの行商人」と名付けたが、日韓では武器購入を促し、中国では政治そっちのけで商売。まさにトランプは藤子不二雄ではないが「笑ゥせぇるすまん」だ。
 一方政治面でも、敗北臭が漂う。ニューヨーク・タイムズ紙はコラムで「トランプ氏は20世紀後半以来の自由な国際秩序を習近平氏に明け渡すかのようだ」と警鐘を鳴らしている。確かに国際政治の側面はトランプが習近平の“毒まんじゅう商談”を食らって、忘れ去られた一帯一路構想を軸に東・南シナ海に進出し、南シナ海に大型浚渫船まで新たに建造して埋め立て工事を推進、戦略拠点としようとしている問題や、それを共産党大会で自慢げに披露する習近平に対して、トランプは発言らしい発言はしなかった。覇権的な行動をトランプは黙認したのかと思いたくなる。北朝鮮問題にしても、制裁に関しての新たな言質を習近平から取ることなく終わった。トランプは「アメリカは北朝鮮の完全かつ永続的な非核化に取り組む。文明社会は一致して北朝鮮の脅威に立ち向かわなければならない」と一応は軍事力行使も辞さない姿勢を示した。これに対して習近平は「両国は対話や交渉を通じて北朝鮮の核問題を解決するよう努める」と意に介さぬがごとくこれまで通りの主張を繰り返した。背景にはトランプがすごんでも軍事行動など出来ないという“読み”がある。非核化を目指すという総論では一致したが、トランプは「圧力強化というどう喝」、習近平は「話し合いという無為」という戦略を選んでいるのだ。北の政権を崩壊させて米国の力を中国国境まで至らしめないというしたたかな中国の戦略が歴然として存在する。手を叩いて喜んでいるのが金正恩だろう。米軍は11日からトランプの意を受けて空母3隻が日本海で大演習を行うが、大統領がこの体たらくでは、“すごみ”は利かない。北が一時的に核やミサイルの実験を控えるだけだろう。政治外交に素人の大統領を選んでしまった米国民にツケがまわったのだ。


◎俳談

◎俳談
【カワセミ】
翡翠の阿修羅の如く狩りにけり NHKフォト俳句特選 
 翡翠の日本画は多くの画家が描いているが、20年間もひたすら翡翠を撮りつづけているとどんな名画でも難点があるのに気付く。どこか実際と違うのである。姿勢も違う、飛ぶ姿も違う。昔の画家が精密に描けるのは、鳥刺しから買って描いたためと言われる。鳥刺しとは江戸時代鷹匠の下で鷹の絵となる小鳥を捕る職業の者。従って生きた翡翠を描いていないのだ。ましてや水中の翡翠の姿など想像もつかなかったであろう。筆者はどうしても水中の写真を撮りたくて、一計を案じて撮影に成功した。恐らく北斎なら飛び付いて描いた垂涎の姿であろう。デジタルで見る画像は悪鬼そのものであった。最初は<翡翠の悪鬼の如く狩りにけり>とやったが、悪鬼よりも阿修羅の方が恐ろしさを感じると推敲した。

◎韓国の「コウモリ外交」が極まった

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◎韓国の「コウモリ外交」が極まった
 エビと慰安婦の文に「ルーピー賞」を差し上げる
 「トランプは安倍に相談」と韓国紙
  朝鮮日報が、韓国大統領文在寅の外交を批判した。6日の社説で「このままだとトランプ大統領は北朝鮮問題で何か行動するときはまず安倍首相と相談するようになり、韓国とは完全に順序が入れ替わってしまうだろう。これは安倍首相の一言が米国の対北朝鮮政策に大きな影響を及ぼすことを意味する。なに故このような状況になってしまったのか到底納得できない」と見事な論調を展開している。確かに
トランプ訪韓で鮮明になったのは、文在寅の「コウモリ外交」だ。コウモリ外交とはイソップの寓話集に収められた「卑怯なコウモリ」に由来しており、国の外交で、見解や利害が対立している国のどちらに対してもいい顔をして、おもねる。そうかと思えば、寝返るような態度を指す言い方である。それもそうだろう。文在寅はやはり「コウモリ外交」と批判された大統領盧武鉉の秘書時代に、そのスローガンである「バランサー外交」の演説を書いた張本人だからだ。
 文在寅自身も「米国との関係を重視しながら中国との関係も一層堅固にするバランスのよい外交を目指したい」と発言しており、最近それを実践している。まさに仏壇の奥からはたきをかけて「バランサー外交」を引っ張り出した感が濃厚だ。11月31日に戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)導入で極度に悪化した対中関係をようやく修正した。対中合意の柱は①アメリカのミサイル防衛システムに参加しない②日米韓の安全保障協力を軍事同盟に発展させない③THAADの追加配備はしないーであり、中国側の要求をそのまま飲んだような内容だ。ところがその舌の根も乾かぬうちに、トランプと防衛力の強化に向けてミサイル弾頭重量制限を解除することで合意した。原子力潜水艦と先端偵察機能の獲得・開発に向けた協議も直ちに開始することになった。こともあろうに国の安全保障を米中のバランスに利用するのはあきれるばかりである。なお、米国が本当に原潜を売るかどうかは疑問だが、もし売れば対中戦略のみならず日本の防衛にも影響が生ずる。
 米韓会談の内容を見ても、文在寅は一応トランプに対して最大限の制裁と圧力に協力する姿勢を見せた。しかし、その実態は別だ。文在寅のかねてからの主張である「いかなる場合でも朝鮮半島での武力行使は許されない。韓国の事前の了承を得ることなく軍事行動を起こしてはならない」と、トランプ発言は見事なまでに食い違った。トランプは「必要であれば米国と同盟国のために比類なき戦力を投入する。北の独裁者に対してメッセージを伝える」と、軍事行動も辞さない姿勢を鮮明にさせている。「両首脳が朝鮮半島戦略で対立」と書いてもおかしくない会談内容だった。おまけに北に対して世界各国が国連決議に基づく制裁を推進しようとしているときに、文在寅は800万ドルの人道援助を承認した。米国防長官ジェームズ・マティスが、強い懸念を表明、圧力をかけているのはもっともだ。要するに俯瞰すれば、文在寅の安保政策は日米韓の連携よりも、明らかに中国に傾斜し始めている。
 こうした関係についても前述の朝鮮日報は「今、世界で米国の力を最もうまく活用すべき国は日本ではなく韓国だ。まず何よりも北朝鮮の核問題を実際に解決できる国は米国以外にない。また東アジアで厳しい緊張状態が続く中、韓国を覇権欲なしに守ってくれる国も米国だけだ。ところが日米両国は米英関係を思わせるほど最高の親密さをアピールしているのに対し、韓米関係は非常に形式的で儀礼的なものへと変わりつつある。」と嘆いている。文在寅にはこうした国際外交への認識が欠如しており一国の指導者として致命的な欠陥であろう。
 その好例が対日姿勢にも現れた。晩餐会の食卓に竹島でとれるという「独島エビ」を出させ、常に反日宣伝材料として使っている元慰安婦を招いてトランプに抱擁させた。独島エビは、まるで昔のしゅうとめの嫁いびりであり、日本人はあきれこそすれ、いびられたとはいささかも感じないだろう。一方強制連行はなかったというのが常識だが、元売春婦を国際的に重要な晩餐の席にわざわざ招くという前代未聞の対応は、「えげつない」の一言に尽きる。いずれも韓国内への人気取りが見え見えだが、事もあろうに米国大統領の公式晩餐会の席を“活用”して、他国をおとしめなければならないほど自らの人気がないのかと思わざるを得まい。第三国との外交の場で行うことかと言いたい。日本政府が抗議したのは当然だ。
 この2例は日本人の国民感情を逆なでして、一朝有事の際の日本の行動心理に影響を及ぼす。もちろん北の軍事行動が始まれば日本は米国の軍事行動を支援する方向は変わりはないが、危急存亡の時に対韓支援に躊躇(ちゅうちょ)を生じさせるのだ。戦時には手を差し伸べるのが早いか遅いかで、人命の損失度に決定的な差を生ずるのだ。たかがエビと売春婦で韓国の受ける損失は甚大なものになりかねない。そこが分からないのでは文在寅に「哀れでますますいかれた」を意味するルーピーの称号を贈らざるを得まい。ワシントンポスト紙が名付けた「ルーピー鳩山」と同様に「ルーピー文」といわざるを得まい。「ルーピー特賞」を差し上げたいくらいだ。韓国民にとってはこういう指導者の存在はまさに悲劇である。

T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」

ご要望に応えて<付録>付き再録 Name:浅野勝人 NEW! Date:2017/11/08(水) 09:33 
 
総括 ―  総選挙!
T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」
(2017/10月5日、安保研ネット掲載。総選挙公示5日前)
安保政策研究会理事長 浅野勝人

T君、総選挙いよいよ10日、公示ですね。
東京都議選で自民党が惨敗した後、お目にかかってお昼に天丼食いながら、「都議選の小池百合子は怖かったが、国政選挙の小池は怖くない」と申し上げた私の見解が当たりそうな気配ですね。

都議選の折、多くのマスコミが世論調査、その他の情勢を分析して、自民党は減っても30議席台と踏んでいたのに、T君ご承知の通り、私は20議席そこそこと予測しました。結果は19議席でみんなびっくり仰天でした。
種明かしをしますと、「都民ファースト」が全員当選すると予測して、民進党も減る。共産党が増える。公明党は現状維持。これを総合して逆算すると自民には20議席位しか残らない。結局、「都民ファースト」で落選したのは1人だけだったので、大当たりしたという仕掛け。

都議選で勝利の女神だった小池百合子が、国政選挙で輝くのは無理と推測した理由(わけ)は、
あの方は、どの選挙も「大統領選挙」と勘違いしている。
だから、小池人気が、全国津々浦々、衆議院小選挙区に行き渡り、特に比例区では圧勝して、都議選の再現となる。総理大臣就任も夢ではないと錯覚してしまう。

自民党内では、外交・安保政策に関して右派の論客だったから、時間の経過とともにその地金が滲(にじ)み出る。そうなると、右派の安倍晋三と同質なことが改めてわかってしまうので、「政権選択選挙」という唯一の訴えが売り物にならない。小池を支える膨大な無党派層が失望して離反する。
その証拠に、党公認に際して民進党リベラル派を除外する表現を「全員公認するつもりはさらさらない」と失言して馬脚を現した。

このひと言は重い。選挙戦を左右する重大なミスショットと予言しておきます。いや、ミスショットではなくて、「本音」を最悪な言葉使いで表現した。有権者は容易に「小池百合子の本音」と見破るから、このひと言で「希望の党」は失速する。非自民の有権者に、「第2自民党」は要らないと映るからです。

つまりは、安倍自民党と対峙することによって人気を倍増するつもりが、まるで補完勢力と映って当初の意図が崩れてしまいました。
だから、出馬の可能性を匂わしていた姿勢から一転して「不出馬」を明言して逃げました。どうやら思惑が外れかねないとみて「私自身は出ないと最初から言っている」と苦し紛れのウソを言わざるを得なくなりました。
与党をめざして「希望の党」を立ち上げた政党の代表・党首が、自身は出馬しない。国会の首班指名を目指さないという人がいたかどうか、憲政史上の事例をどなたか調べて教えて下さい。( 選挙の結果 ― 235人立てて当選50人。当選率20%。惨敗 )

これに比べて、安保法制、憲法9条改正に反対する基本姿勢を堅持して筋を通し、自民党との対決を鮮明にしている「立憲民主党」の候補者と「希望の党」への参加を避けて「無所属」で出馬する前民進党の候補者が、非自民票の受け皿になる可能性が強まります。( 選挙の結果 ― 立憲民主: 55人当選。当選率60%。躍進)(無所属:21人立候補して18人当選、当選率85%)

選挙後の野党再編は、立憲民主党を立ち上げた枝野幸男を軸に小ぶりな勢力からの再出発になると思われますが、候補者を降ろして立憲民主党に選挙協力をした共産党は無視できない存在になります。
現役時代、議員会館の部屋が隣同士だったから褒めるわけではありませんが、小池晃が書記局長になってからの共産党は柔軟でいい。


T君、安倍自民党の不人気は、君の想像をはるかに超えています。私の周りでも、まさかと思う方が「今回は自民党には投票しない」と明言して驚かされます。
T君も当初は肝を冷やしていたでしょうが、小池百合子のおかげで、野党が「馬糞の川流れ」(政治勢力がバラバラになって求心力を失う様子を金丸信らしい表現で言った)となりました。
自民党が、近年、厳しく批判されている傲慢な政治姿勢を反省して、国家、国民の平穏と繁栄に真摯に取り組む姿を示せば、情況は好転。わずかな減ですみそうです。( 選挙の結果―284議席で解散して284人確保。マンガみたい )

二階幹事長は、大軍の将ですから、自信を持ってもっとはっきり発言した方がいい。
「世の中のために政治家が要(い)る。政治家のために世の中があるのではない」(思いあがるな)と明確な小池批判をする。
「国会で戦争法案反対と言っていた人たちが、政党を変わったら賛成という。我が党にとっては有り難いが、有権者の方々がそれを許すだろうか」とはっきり批判して、野党の中では一番強いと予測されている「希望の党」の票を離散させる戦術が重要です。(結果は野党第1党にもなれず)

私は、来週から中国です。11回目になった北京大学での講義。それに北京外国語大学大学院、首都師範大学へ講義にまいります。選挙前に決まっていた日程ですから出かけますが、投票日前には戻ってまいります。
T君、加油! 加油! (2017/10月5日)

(22日、台風の中で総選挙終了)
T君、お互い予測はドンピシャリでしたが、何のためにやった選挙だったのか私には今でも理解不能です。勝つためにやって、小池百合子と前原誠二のミスショットで勝ったから、安倍晋三は結果オーライだったと理解すれば、それでいいのでしょうか。 

莫大なお金とエネルギーを費やして選挙をやって、世の中のために何がどう変わるのか、変わらないのか、何も無い。立憲民主党の当選者54人の内30~40人が前職以外の元職と新人だったというだけで、無所属を含めて各党とも、ほぼ全員選挙前の顔ぶれがそっくり再選されただけのことです。政策も顔ぶれも何も変わらない。野党に「馬糞の川流れ」現象が起きて、日本の政治を退化させただけでした。

T君、自民党は、現状維持をして自・公与党で2/3議席を確保して事実上の大勝利でした。但し、競争相手の票が二分され、比較多数で有利な情況が造られた敵失による勝利に過ぎないことを忘れないでください。
自・公vsオール野党の争いなら、議席はフィフティ・フィフティです。日本の世論は結構バランスが取れています。

それにしても 議会制民主主義、主権在民の根幹を理解していないほどの政治家の劣化。政党助成金をめぐって右往左往するほどの政党政治の退化を招いたのは「落選候補救済制度付き衆議院小選挙区比例代表制」によります。今回改めて証明されました。世界に類のない悪法です。選挙は1票でも負けたら負けです。これでは政治に対する厳しさが生まれません。しめしが付かない。

安倍政権は、ことによったら佐藤栄作政権を越える長期政権になると思われます。
安倍首相のやるべき第1の課題は、実は選挙制度の改正を強行してでもやり遂げることでした。衆議院を定員3人の中選挙区、全国100~120選挙区に改正する。公明党を含めて、賛否が政党によって入り乱れますが、自民党の過半数で押し切ることができる。2/3は要らない。
安定した政治と何よりも有能な新人議員が、選挙ごとに1/4を占めて、もう一度、人々の求める人材が政界に集まります。

安倍首相は、相変わらず憲法改正にご執心のようです。
総選挙後、10代の若者の声を集めた特集の中に、札幌の19才、男子が「憲法改正は戦争につながる恐れがあるので反対だが、(国民投票)過半数で阻止できるから、自民党に投票した。バラバラで頼りにならない野党より、安定した政治勢力を選んだ」(毎日新聞)
この見解は“少数者の意見”だと思わない方がいい。19才の予言通りになったら、安倍長期政権の功績は全て水泡となって消えます。
(2017/10月23日、元内閣官房副長官)


<付録 ― 総選挙アラカルトから一遍>

笹川陽平ブログ

「山尾志桜里」 : 一戦を制して当選― [2017年11月08日(Wed)]

一線を越えたか否かで話題を提供してくれた山尾志桜里氏が、先の衆議員選挙で一戦を制して辛勝した。まずは祝意を表したい。

落語の世界でも、ご隠居さんと長屋の熊さんが、この一線?論争に参加していましたよ。

【熊さん】
「ご隠居!! 最近女性政治家が一線を越えたかどうか、話題になっているそうですが、この一線とは何のことですかねぇ」

【ご隠居】
「ようするに、夫のある身で別の男とホテルに泊まって、一線を越えたかどうかということが問題なのよ」

【熊さん】
「へえ、ホテルの部屋に一線が引いてあるんですか?」

【ご隠居】
「バカだね。そんなものあるわけないじゃないか。二人が重なったかどうかが問題なんだよ」

【熊さん】
「検事まで勤めたエライ政治家でも、そんなことをするんですか?」

【ご隠居】
「人間だからね。魔がさすこともあるさ。しかし、脇が甘いんだよ」

【熊さん】
「週四回も魔がさすんですか。それに脇が甘いんではなくて股が甘いんじゃないの、ご隠居さん!!」

【ご隠居】
「熊さん!! 今日は冴えてるね。確かに股が甘くて一線を越えたんだろうね」

【熊さん】
「一線は確かに越えて、これは二線ですぜぇ」

【ご隠居】
「どういうことだい熊さん、二線目とは?」

【熊さん】
「だって一線目は夫と越えて、浮気相手は二線目ですぜぇ」

【ご隠居】
「熊さん!! あんたはこういう話になると、普段のとんちんかんと違って偉いものだね」

【熊さん】
「へえ、ご隠居さんにほめられると嬉しいね。俺なんぞ吉原通いをしてるからもう30線は越えていますぜぇ」

【ご隠居】
「やっぱり、熊さんはわかってないね」

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