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◎俳談

◎俳談
【動物の描写】   
一茶には動物を詠んだ句が多く、猫だけで330句余りも詠んでいる。蛙、雀、蚤、虱に至るまで、詠んだ句は膨大な数に及ぶ。母に三歳で死に別れて、自分は子供を亡くすなど家族に恵まれない人生を送った。一茶はその欠落を埋めるかのように小動物を愛した。
吾と来て遊べや親のない雀
は寂しかった幼少期回顧の句でもあった。
痩蛙負けるな一茶是に有り
は、弱者に対する優しい眼差しが感じられる。
筆者も動物の句はよく作る。新聞俳壇の成績もいい。
秋の日に考へているゴリラかな 産経俳壇入選
動物園でゴリラの思慮深そうな姿を描写した。
羽抜鳥人見るたびに一驚す 東京俳壇入選
本当に良く驚くのがニワトリだ。一歩歩く度に驚いている。
千の蟻一匹頭痛の蟻がいる 東京俳壇入選
ふとそう感じたのだ。 
雨蛙目玉回して飛びにけり 毎日俳壇入選
雨蛙は本当に目玉をくるくる回す。
題材を動物に求めれば、周囲に山ほど転がっている。活用することだ。
嫁が君天井裏の自由かな 東京俳壇入選
嫁が君は鼠の別称で新年の季語。鼠は大黒様の使いで正月に米や餅を供えるなどの風習があった。 

◎「ダースベーダー」を潰すか、米政権が潰れるか

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◎「ダースベーダー」を潰すか、米政権が潰れるか
  今をときめくバノンの運命やいかに
 古くは孝謙天皇の寵愛を受けた弓削道鏡か、それともロシア帝国崩壊の一因をつくった怪僧ラスプーチンか。どうもトランプの懐深く入り込んだスティーブン・バノンの有様を観察すると、その種の陰謀請負人のような感じがする。とりわけトランプがホワイトハウスになかった首席戦略官の地位を与えた上に、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーに抜擢するという異例の人事を断行したことに驚く。別名「極右の火炎放射器」に、戦争と平和を左右しかねないパワーを付与してしまったのだ。バノンにとって目の上のたんこぶだった国家安全保障担当のマイケル・フリンを失脚させたのはCIA情報だが、バノンが陰で暗躍したというのは常識のようだ。しかし、トランプ政権1か月を見ると、国務・国防両長官は世界中を駆けずり回ってバノン主導による過激な「トランプ発言」の“火消し”に懸命になっている。フリンの後任になった「物言う軍人」陸軍中将ハーバート・マクマスターはバノンの“強敵”になり得る。米政権内はスターウオーズではないが、邪悪なる別称「ダースベーダー」に対する正義のヒーローには事欠かない。しかしバノン潰しは容易ではない。
  62歳のバノンは昨年8月にトランプの選対本部長に就任、自らの過激発言を口移しでトランプに発言させ、勝利を得た。メディアはみな選挙判断を間違ったが、バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わいしばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にした。トランプがこのところよく使う「メディアは野党だ」のフレーズも、バノンの受け売りだ。バノンは、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、排外主義、アンチグローバリズムなどを中核的な思想としている。
 トランプは負けると思った選挙に勝ったのはバノンの過激戦略であるから、ちやほやするのは無理もない。大統領執務室に最も近い部屋を与え、いつ何時でも接見を許している。もともとトランプは売ってナンボの世界に生きてきた“商売人”であり、政治信条などさらさらなかった。というより国家の命運を左右する安全保障に関する基礎的なノウハウや、人種のるつぼである米国統治の基礎的な知識などゼロと言ってもよかった。これに「思想」というものを、吹き込んだのがバノンであった。バノンの右翼ポピュリズム的な思想が、砂漠に染み入る水のごとくトランプの脳内を右寄りに活性化させ、その口からバノンの言葉をおうむ返しのごとく発言し続けたのだ。
 米国民はこの異質な大統領候補をまるで西部劇のヒーローのごとく受け止め、当選させたのが実態だろう。「メキシコ国境に壁」「在日米軍引き揚げ」「NATOは古い」の“3ばか発言”もバノンからの受け売りだ。さすがに官僚組織は、これを国家的な危機の到来と認識した。日米同盟、米欧同盟は国家の成り立つ基本であり、これを毀損しては対中、対北、対露、対中東戦略が全く成り立たない。だから真っ青になったマティスが最初に日本を訪問、トランプ発言の打ち消しに懸命になったのだ。国務長官ティラーソンはNATOとの関係を修復。今度はティラーソンと国土安全保障長官ジョン・ケリーが22~23日にメキシコを訪問し、大統領ペニャニエトや外相のほか、内務、国防相ら複数の関係閣僚と会談する。明らかに「壁」発言で生じた亀裂を再構築しようというものだ。
 さらに重要なのはバノンが、そのアンチ・グローバリズムの極みである、中東7か国からの移民差し止めの大統領令を出させたことである。結果は、行政は大混乱、司法は違憲と判断して大統領令を差止め、
西欧諸国から総スカンという結果となった。まさに大失態であり、大失政である。日本なら首謀者バノンは真っ先に国会やマスコミに追及されて、辞任に追い込まれるケースだろう。
 こうしたバノンによるトランプ操縦の失策はニューヨークタイムズをして、痛快にも「スティーブン・バノンほど、自身の権力基盤を厚かましく強化した側近は、これまでいなかった。そして、ボスの名声や評価をこれほど早く傷つけた人物も、かつて見当たらなかった」と書かしめるに至ったのだ。まさに「君側の奸」の実態が明らかになった。トランプはこうした事態に至ってもバノンを重用し続けるのだろうか。おそらく当分重用し続けるだろう。なぜならいままだ“夢心地”であるからだ。バノンの“催眠術”にかかっている可能性もある。しかしバノンは次第に政権内部で孤立化してゆくだろう。ティラーソン、マティス、マクマスターら正常なる方向感覚を持っている政権幹部も、バノンの尻拭いに甘んじているようなヤワな人種ではない。双方の激突がやがて始まるのは火を見るより明らかだ。加えてメディアの対バノン戦も一段と苛烈さを増すに違いない。だいいち早く切れば切るほどトランプ政権は長続きするのであり、これに早くトラさんが気付くかどうかにかかっている。


◎俳談

◎俳談
【忌日の句】
 著名人やとりわけ俳人、歌人などの忌日に、その故人を偲ぶ俳句を忌日の句という。西行忌、芭蕉忌、一茶忌、子規忌、漱石忌などが有名だ。忌日を詠むこつは何気ない日常を詠むことである。故人にゆかりの強いことを詠むと、即(つ)きすぎとなりやすい。せいぜい故人とは“かする”ていどの関係が良い。
浅酌をして大石忌過ごしけり 日経俳壇2席
大石内蔵助の切腹した2月4日を詠んだ。大石と全く関係のない私事を詠んでいるが、かすかに「酌」が“かする”程度である。大石は幕府の目をごまかすために京都で茶屋遊びにうつつを抜かしたといわれるが、掲句を深読みすれば茶屋での「酌」がイメージが醸し出されるのだ。触れてもこれくらいにすませると嫌みにならない。
同様に陰暦11月19日の一茶忌は
雪降れば馬の目濡らす一茶の忌 毎日俳壇入選
と詠んだ。当たり前の自然現象であるが、一茶に「馬」の俳句が多いことから、これもさりげなく「馬」を入れた。
鴎外の墓にも花を桜桃忌 毎日俳壇入選
太宰治の6月19日の忌である桜桃忌を詠んだが、太宰の墓の前には森鴎外の墓もある。森鴎外を尊敬してやまなかった太宰治は、生前三鷹の禅林寺にある鴎外の墓について、「ここの墓所は清潔で、鴎外の文章の片影がある。私の汚い骨も、こんな小奇麗な墓所の片隅に埋められたら、死後の救いがあるかもしれない」と書いている。
その意を汲んで、美智子夫人が太宰をこの寺の鴎外の墓の側に葬ったものだ。
太平洋戦争の敗戦を記念した忌日もある。沖縄忌と原爆忌だ。
捻子まけば動くヒコーキ沖縄忌 毎日俳壇入選
6月23日。太平洋戦争の終わりの頃、沖縄は日米の最後の決戦地になり、多くの民間人が犠牲になった。沖縄の日本軍が壊滅したこの日を、沖縄忌という。
原爆忌は広島、長崎に原爆が落ちた忌日だ。
真夜中の北斗のひかり原爆忌 杉の子

◎自民は、特例法で早期に退位を実現せよ

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◎自民は、特例法で早期に退位を実現せよ
 民共は「皇室典範」で“引き延ばし”をするな
 天皇退位問題はまさに船頭多くして船山に登るがごとき状態に立ち至った。新聞を読んでも誰も分からないその構図を分かりやすく説明すれば、自民党政権プラス読売Vs民主・共産両党プラス朝日の構図が浮き出てくる。焦点も自公維が特例法による一時的措置を目指しているのに対して、民共は皇室典範による永久的な対応を主張していおり180°異なる。背景には政権与党のすることは何でも反対の社会党に先祖返りしたような民進党と、「天皇制」そのものを綱領で否定する共産党の連合による自民党政権との対決の姿勢がある。民共は退位を支持しながらも、その実は難癖を付けて「引き延ばし作戦」を展開しているとしか思えない。ここは国民の選挙によって「船頭」と決まった、自民党が主導して特例法を軸として、ちょっとだけ民主党の顔を立てつつ今国会中の法案成立を図るしかない。ご高齢の天皇のお言葉に添うにはこれしかない。
 まず、皇室典範の改正がなぜ難しいかといえば陛下の82歳というご高齢にある。皇室典範改正の迷路に立ち入れば、10年たっても決着のつく話ではない。民間なら「オレも年じゃで家督をせがれに譲る」で済む話だが、ことは天皇の存在そのものを規定する憲法と皇室典範の解釈の問題が絡む。そもそも人間の「引退」の要件を恒久立法で規定することは極めて困難だ。なぜなら、時代によって変化するからだ。高齢者の定義一つとっても江戸時代は50にもなれば高齢だが、今は「40,50は、はなたれ小僧」で後期高齢は75だ。職務遂行能力にしても、会社なら上司が部下の能力を判断すれば済むことだが、天皇の場合その理由を法律に書くことが可能かということになる。このような議論を延々と始めることは昨年8月に「第二の人間宣言」をされた、天皇の引退表明の意向に背くことになるのだ。
 反対論を唱える民主党幹事長野田佳彦が自信ありげな理由はどこにあるかと考えていたが、どうも朝日とツーカーである感じが濃厚となった。朝日の“教育的指導”を受けているとすら思いたくなる。朝日は社説で「天皇の退位の意思と皇室会議などの議決を併せて必要とすれば、進退を天皇の自由な判断に委ねることにはならず、憲法の趣旨に反するとは思えない。」と主張しているがこれは民進党の主張と全く同じである。皇室会議は、日本の皇室に関する重要な事項を合議する国の機関である。皇族、衆参議長、首相、最高裁判事などで構成されるが、問題は天皇のご意思と会議の議決が相反した結果となったらどうするかということだ。退位という極めて人間的、個人的な意思を会議で決められるものだろうか。天皇の退位の意思は会議とは別格なのだ。
 さらに朝日の社説は特例法に対して「一代限りの退位に道を開けば、この先、政権や多数党の意向で天皇の地位が左右される恐れが生まれ、禍根を残すことになる」と反対している。これも意味不明である。一代限りは一代限りのことで、将来への禍根とならないのではないか。例えば100年後に今回の例のように天皇が退位したいとの意思を表明すれば、そのときの状況に応じて対処すればよいことであり、制度化して縛る必要はない。それに100年後には今回の例を先例としてスムーズな退位が実現するかもしれない。第一自民党が100年後に多数党であるかどうかは予知できることではない。この主張には民進党が多数党になった場合ならその意向を反映してもよいのだという、政党のエゴイズムが垣間見える。一方で読売は社説で「仮に、天皇の意思を退位要件とすると、『天皇は国政に関する権能を有しない』と定めた憲法4条に違反しかねない。こうした理由で、制度化に否定的な自民党の姿勢には、うなずける」として、自民党案支持だ。
 問題は民進党が明らかに引き延ばし戦術を取ろうとしていることだ。同党の長浜博行はテレビで「各党の国会議員はもう一度象徴天皇制の意義とか、憲法とか、皇室典範とかに真正面から取り組んで議論する必要がある」と主張しているが、このような基礎的な問題からとりかかっていては、再び「船山に登る」のは必定である。議員立法による処理も主張しているが、事は天皇の退位問題であり、政府の責任において法案を作成し、国会の議決を経て実施に移すのが憲政の常道だ。
 こうした中で日本維新の会幹事長の馬場伸行は「皇室典範そのものを改正するのではなく、『特例法を設けて決める』旨を皇室典範の付則として付ければよい」と提案している。皇室典範はいじらないが付則で処理するという案は筆者もかねてから指摘していたが、民進党のメンツも立つのではないか。ことは自公維で軽く3分の2を超える勢力が推進する問題であり、民共も突っ張ったり、引き延ばししたりする場面ではない。そもそも民共朝による“共闘の構図”は過去の例を見ても概ね失敗に終わるのが政治の宿命だ。  


◎俳談

◎俳談
【幻想の句】
山姥の出刃となりたる二日月 東京俳壇入選
時には夢幻の世界を逍遙するもよい。心を俗世間の外に遊ばせるのだ。現実にはあり得ない世界に読者を感性を持って誘うのである。掲句は二日月を見て山姥の世界に遊んだものだ。幻想の句で大切なのは勝手な幻想を並べないことだ。読者の共感を呼ぶ範囲内で幻想の世界に導かなければならない。
春昼の折り鶴崩れ初めたる  産経俳壇入選
棚に飾った折り鶴が突然崩れ始めたような感覚に陥った。現実には折り目正しく折られたままであり、崩れてはいないが、異次元の世界をふと感じたのだ。
十六夜の天空からの高笑ひ  東京俳壇特選
十六夜の月を見ていたら、こんな時鬼が高笑いをしそうだと思ったのである。それをそのまま高笑いしたことにして一句に仕立てた。
幻想句で有名なものは
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉  三橋鷹女
だろう。作者は燃え上がるような紅葉に囲まれ、夕焼けにでもなったなら木に登って鬼女の如く振る舞ったらどんなに精神が解放されるだろうと思ったに違いない。願望と幻想が入り混ざった名句である。

◎安倍は敵基地攻撃能力保持を決断する時だ

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◎安倍は敵基地攻撃能力保持を決断する時だ
  狂気の北指導者の前に躊躇している時か
 「疾きこと風の如く」は、今金正恩のお家芸だ。ミサイルと核兵器の開発で孫子の兵法を実践しつつある。叔父殺しに次いで異母兄を殺りくして、狂気の独裁者の本性を現し、ミサイルと原爆小型化は佳境に入った。これに対して日本の防御態勢は整いつつあるものの、同時多発の飽和攻撃に耐えられるのか。一発でも撃ち漏らせば確かに金正恩が公言するごとく東京は火の海だ。その一発が致命傷となるにもかかわらず、日本はいまだに平和は天から降ってくるとばかりに、米国に敵基地攻撃を全面的に頼っていてよいのか。敵基地を殲滅(せんめつ)しない限り、極東の平和は維持出来ない。専門家によれば敵基地攻撃能力の環境は既に8割方機が熟しており、憲法上可能との見解も61年前から確立している。後は首相・安倍晋三の判断に委ねられているのが実態だ。金正恩に日本攻撃を断念させるためにも早期実施による抑止の確立に踏み切るべきだ。もう国連決議など、北を支える中国がある限り何度繰り返してもムダだ。
 政府は国民に迅速に情報を伝える体制を整えるため、23日と24日に、都道府県の担当者らを対象にした説明会を開く。説明会では、ミサイルが日本の領土・領海に落下するおそれがある場合、Jアラート=全国瞬時警報システムなどを使って、推定される落下地点などの情報を発信することを説明し、機器の取り扱い方法を確認するよう要請することにしている。国民の尊い命を守るためには必要な措置であるが、なにやら狂った野良犬を放置して、かまれたらどうするを説くようで情けなく感ずる。
 問題は金正恩が核ミサイルを発射する場合、日本を最優先する可能性があるだろうかということだ。おそらく、対韓攻撃が先行する可能性が大きいが、日米韓を同時に攻撃する可能性もないわけではない。韓国は防ぎようがないから自分で守ってもらうしかないが、日本到達までには最短で約7~8分とみられ韓国よりは余裕がある。迎撃ミサイルSM-3搭載のイージス艦は、防衛庁の公表資料によると、これまでの試験で20発の迎撃ミサイルのうち16発が命中した。しかしこの確率でいくと、単純計算では200発の日本向けのノドンが発射された場合、40発が到達することになる。
 また肝心なのは米国が日本を完璧に守ろうとするだろうかということだ。まず本国へ向かうICBMを処理するのに専念し、日本は二の次になる可能性も否定出来ない。一発ぐらいの日本への着弾は仕方がないと考えないだろうか。しかし、日本にとってはその一発が致命傷なのである。国家としてはたった1人でも日本国民から北ミサイルの犠牲者を出してはならないことは、国の有りようの鉄則である。飽和攻撃の際にそれが可能かと言うことだ。おそらく自信のある専門家は皆無であろう。
 これでは対北ミサイル戦略は成り立たない。ほぼ完全にブロック出来る態勢が確立するのは早くても5年はかかるといわれる。昨年6月のムスダン発射は、通常軌道に比べ高高度に打ち上げ、短い距離に着弾させる「ロフテッド軌道」で発射された。ロフテッド軌道だと落下速度がさらに増すため、迎撃が非常に困難になる。専門家は「現在の自衛隊の装備では撃破は難しい」としている。また昨年9月にはノドン3発を同時に発射し、日本の防空識別圏内に400キロ以上入って日本海に落下したという。まさに飽和攻撃の予行演習を誇示したことになる。
 こうして傍若無人の核戦略は指導者と同様に増長の一途をたどる。技術は日進月歩だが、矛と盾の原理があって、盾を突き通す矛は常に製造可能と見なければなるまい。そこで誰が考えても必要なのは、矛そのものを殲滅させる戦略であろう。それには敵基地攻撃能力を日本自らが身につけるしかないのだ。もちろん専守防衛の方針は逸脱するが、いまどき専守防衛の空理にしがみつく国は日本以外にない。攻撃こそ防御なのだ。よく「やられたらやりかえす」(元外相前原誠司)というが、この戦略は核ミサイル時代には成り立たない。「やられる前にやる」しか、国家が生き延びる道はないのである。ただし「やられた」が韓国や米国を指すなら、やがては日本にも発射されるから「やられたらやりかえす」概念は成り立つ。
 元首相中曽根康弘が会長の世界平和研究所が1月12日に発表した提言は、敵基地攻撃能力の保有を政府に求めており注目される。日本が第三国から武力攻撃を受けた場合、「さらなる攻撃を防ぎ、反撃するため、巡航ミサイルなどを保有し、もって日本独自の抑止力を持つべきだ」と提唱した。同報告書の発表を主導した東京大学名誉教授北岡伸一は安倍の外交・安保分野の「家庭教師」と呼ばれる人物であり、政府とはツーカーの報告書であろう。もともと政府は、自衛のための敵基地攻撃能力の保有について、憲法上は容認されているとの立場だ。1956年には国会で首相鳩山一郎が「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは、どうしても考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」との統一見解を示している。なんと61年前からこの見解があるにもかかわらず、社会、共産両党などの反対で実施に踏み切れなかったのだ。敵基地攻撃には弾道ミサイル、巡航ミサイル、ステルス性のある戦闘機F35と空対地ミサイルなどが必要だ。加えて、敵基地を特定できる人工衛星などの情報や、戦闘機の長距離飛行を支援できる空中給油機、これらのすべての作業をコントロールする早期警戒管制機(AWACS)などの装備体系が必要となる。高い金を出してF35を配備する以上、敵基地攻撃能力を備えるべきだ。でないと宝の持ち腐れになる。これらの装備を備えるには防衛予算を対GDP比1%の上限を突破させる必要があるが、中曽根研究所は「当面はGDP比1.2%を追求すべきだ」としている。米国は北大西洋条約機構(NATO)に2%目標の早期達成を促したが、これをテコにやがて日本にも要求してくる可能性がある。先手を打って1%を突破する方がよい。マスコミの論調も読売と産経が敵基地攻撃能力保持論であり、政党も維新が積極的だ。自民維新で推進すれば、公明党の山口那津男や民進党の一部は後から付いてくるだろう。場合によては安倍は夏に解散・総選挙を断行し、民意を問えばよい。自民党は圧勝するだろう。


◎俳談

◎俳談
【そんなことあるかい句】
 「そんなことあるはずがない」といいたくなる季語が二つある。春の季語の「亀鳴く」と秋の季語の「蚯蚓(みみず)鳴く」だ。筆者もこれらの季語は気にも留めなかったが、心の片隅にはあった。それがある春の日の午後、こんな日和の日は四天王寺の亀が鳴いているのではないかと思って、自然に一句出来た。
この昼は四天王寺の亀鳴けり 毎日俳壇2席
大阪勤務のころアパートから隣の四天王寺がよく見えた。池には亀がいっぱいいて長閑な風景を醸していた。この一句で俳人には、一般人の聞こえぬ亀の鳴く声が聞こえるのだと思ったものだ。実際には亀が鳴くことはなく、情緒的な季語である。藤原為家の「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなり」の歌が発端で、古くから季語として定着している。
桂信子が
亀鳴くを聞きたくて長生きをせり
と詠んでいるが、聞こえた筆者は早熟だろうか?
蚯蚓鳴くもそうだ。秋の夜、道ばたの土中からジーと鳴く声が聞こえてくることがある。実はケラの鳴く声であるが、昔の人はそれを蚯蚓が鳴いているものと信じていた。そして蚯蚓には発音器がないので鳴かないが、蚯蚓が鳴くと感じる感性が、だんだん俳人の心に育つのだ。そして秋の夜のしみじみとした情緒にであうと、「蚯蚓鳴く」で一句を詠みたくなってしまうのだ。
蚯蚓鳴く六波羅蜜寺しんのやみ 川端茅舎
平家の六波羅探題のあとに出来たのが六波羅蜜寺である。その「真の闇」を語るのに茅舎は蚯蚓の鳴き声を“増幅”させた。闇の深さが一層伝わってくる。

◎「Madman理論」の恐怖政治が佳境に入った

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◎「Madman理論」の恐怖政治が佳境に入った
  金正恩は残酷性と冷静な計算が併存か
 カインの末裔(まつえい)とは、旧約聖書に登場する兄弟殺しという人間の罪深さを諭すものである。アダムとイヴの息子の兄カインが、弟アベルを殺害した神話だ。有島武郎が同名の小説を書いている。日本の古事記にも海幸彦と山幸彦の骨肉の争いがあるが、最終的には兄と弟は仲直りした。しかし兄源頼朝が弟義経を殺害した例もある。金正恩による尊属殺人は、叔父張成沢殺しに始まって、ついに異母兄弟の長男金正男へと至った。政権樹立以来殺害した朝鮮労働党や軍の幹部は140人あまりに達しており、スターリンによる処刑は約68万人といわれ遠く及ばないが、極東では戦後まれにみる殺りくである。
ニューヨーク・タイムズは、昨年5回目の核実験の後、この金正恩の「恐怖政治」を「狂人理論」(Madman Theory)と説明した。
 金正恩の殺害指示の状況証拠は数限りないほどあるが、決定的なものは最高人民会議常任委員長金永南が、15日の金正日生誕75周年式典で発言した内容につきる。「偉大な将軍様は後継者問題を完全に解決した。最も偉大な業績である」という発言が、「確信犯」金正恩の全てを物語っているのである。殺されたマレーシアでは北朝鮮と韓国の「遺体争奪戦」が展開されている。米国の中央情報局(CIA)も絡んでいるが、マレーシア政府は副首相が「北朝鮮に引き渡す」と言明した。マレーシアは、北と外交関係を樹立しており、ビザなしで北朝鮮に渡航できる唯一の国だ。しかし米韓の巻き返しは強く、どうなるかは予測は困難だ。北がクアラルンプールでの殺害を意図したのは、遺体の確保まで計算に入れた可能性が強い。しかしいくら親北朝鮮でもマレーシアは徹底的な調査、分析を国際社会から求められることは必定であろう。
  NYT紙によるとMadman Theoryとは「好戦性と予測不可能性で武装し、敵に狂人と見せることで交渉を有利な局面に導こうとするという論理」だという。NYTは「残酷性と冷静な計算は矛盾するものではなく、互いに協調関係にある」と解釈した。また「朝鮮半島を一触即発の戦争危機状態に追い込むことが、北朝鮮が体制維持のための唯一の方法として見ているという指摘が多い」と説明し、「力の弱い国家が大国を敵として向かい合ったとき、平和を実現するための理性的な方法」と分析している。さらに米学者の「北朝鮮の指導者たちの国内外での行動が嫌悪感を抱かせることがあっても、理性的に自国の利益をよく考えている」という見方を紹介している。確かにNYTは冷静で当を得た政治分析である。
 まさに金正恩は冷徹なる殺りくを繰り返しており、その立場は小国の政治家が大国のはざまで、生き抜く知恵とでもいうことになる。Madman Theoryはなぜ、権力掌握以来金正男を偏執狂のようにつけ狙ったかの問題も解ける。頼朝がそうであったように、家督相続人は少ないほど自らの安全が保てるのであろう。金正恩は金正男を就任以来つけ狙い続けた。なぜ狙い続けたかと言えば、政権を狙うと見ていたからだ。本人が狙わなくても韓国在住の脱北者は昨年11月に3万人に達しており、祭り上げるには絶好の人物であった。金正男が日本のメディアに「3代世襲には反対だ」と述べたことが金正恩の怒りに火を付けたといわれる。殺害指示は就任早々から始まり、2012年には北京で実行されそうになったが危うく逃れた。朝鮮日報は、金正男を救うため韓国大統領李明博が12年に正男に対し、韓国への亡命を打診していたことが16日までに分かったと報じている。元高官が「当時、正男氏に対する暗殺未遂があったため『韓国に来た方が安全なのではないか』と打診した。しかし本人が、そのまま海外に滞在することを望んだため、その話は消えた」と述べているという。
 叔父の張成沢が13年12月に、金正男を担ぎかねないとして「国家転覆陰謀行為」で処刑されてからは、まさに風前の灯となった。金正男はそのころ金正恩に命乞いの書簡を送っている。その内容は「将軍様、私と家族を殺さないでください。私には行くところも逃げるところもありません。自殺するしかありません」という切々たる内容であった。今後は金正男の長男金漢率(キム・ハンソル21歳)が狙われるとの見方が中韓両国で高まっている。金漢率は2012年フィンランド公営テレビでのインタビュウで「韓半島(朝鮮半島)を二つに分断しているのは政治的な問題にすぎない。だから僕はどちらかの肩を持つということはしない」と発言。さらに「北朝鮮に戻って人々の暮らしを楽にしたい。また、(南北)統一を夢見ている」と将来の夢を語っている。利発な青年のこの発言は金正恩の神経を逆なですることが予想されるものだ。しかし、家族は現在中国の保護下にあるようであり、護衛をしやすい北京に向かいつつあるとの見方もある。
 最大の焦点は今後日米韓3国がどう動くかだ。とりわけトランプの反応が注目される。Madmanにmaddogマティスがかみついたら大変だ。トランプはオバマと異なり挑発を我慢するタイプではない。こちらも予測不能だ。日米韓外相は日本時間17日未明ドイツ・ボンでの20カ国・地域(G20)外相会合で会談、北に対して3国が連携する共同声明を発表した。暗殺問題も協議したとみられる。岸田文雄、国務長官ティラーソン、尹炳世による話し合いの内容が注目される。いずれにせよ傍若無人の殺人を国際社会は看過すべきではない。米国は1988年に北朝鮮をテロ支援国家に指定、2008年に解除しているが、当面はこうした政策で圧力をかける可能性がある。また国連でも対応をリードするものとみられる。一方で、北の暴発に中国首脳は怒り心頭に発していると言われ、今回の場合は国連などでかばうことは難しい者とみられる。


◎俳談

◎俳談
【安易に作らない】
 俳句は常に丁寧に作る必要がある。時間をかけて作った俳句か、句会に間に合わせのために作った俳句かはすぐに分かる。言葉使いが安易であるからだ。
牡蠣フライ味わいのよき夕餉かな
牡蠣フライがうまいなどとは誰でも言える。ここから一歩踏み出さなければ俳句にならない。
牡蠣フライこんがり揚がる夕餉かな
こんがり揚がっているのを見れば味まで分かるのだ。
晩冬の何かを焼ける煙かな
遠くの煙だから何を焼いているか分からないから、「何かを焼ける」と表現したのだろう。しかしこれは正直すぎる。
晩冬の落ち葉を焼ける煙かな
見ていなくても落葉と置き換えればよいのだ。そこまで詮索する人もいない。晩冬と落葉と季重なりだが、この場合は主たるテーマの晩冬を落葉が補っているパターンだから問題ない。
縁日の焼き烏賊(いか)食べて春惜しむ
「食べて」が言わずもがなの言葉だ。動詞は二つあってもいいが、この句の場合は動詞がバッティングして目線を股裂き状態にする。
縁日の烏賊焼く匂い春惜しむ 東京俳壇入選
が正解。

◎中韓、安倍訪米で牽強付会(けんきょうふかい)の論調

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◎中韓、安倍訪米で牽強付会(けんきょうふかい)の論調
   中国は「朝貢外交」と批判、韓国はひがむ
 どうして中韓両国の論調はかくまでも牽強付会なのであろうか。日米首脳会談をめぐるメディアの論説が15日までに出そろったが、世論を誘導するマスコミが道理をねじ曲げ、都合の良いように理屈を無理にこじつけている。中国が首相・安倍晋三の訪米を「朝貢外交」と決めつければ、韓国の場合はひがみ根性丸出しの論調すらある。中国の論調は誤解、誤認の山だ。これら感情丸出しの論調がいかに自国の民度を低く押し下げているかが分かっていない。
 まず公的な見解を披露すれば中国外務省の耿爽・副報道局長は13日の定例会見で、トランプが尖閣諸島を日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認したことに対し、「誰が何を言おうと、何をしようと、釣魚島が中国のものだという事実は変えられない。国家主権と領土を守るという中国の意志と決心を動揺させることもできない」と全面否定。「日本が不法な領土を主張し、安保条約を名目に米国を抱き込むことに反対する」と言い切った。東シナ海で古来実効支配もしていない島々を自分のものだと主張し、虎視眈々(こしたんたん)と領土領海を広げようとする自らの主張を棚上げにしてよく言えたものである。
 中国共産党機関誌人民日報のニュースサイト人民網は15日、「まるで朝貢外交?安倍首相の訪米、経済面で譲歩」との見出しで、「首脳会談の結果、安倍首相は今回の訪問の核心的な目的を達成したようにみえ、米日同盟が変化するのではないかとの外部の懸念をある程度払拭することができた。だが実際の得失を考えると、安倍首相の今回の訪米で採用したまるで『朝貢』のような外交政策は、日本国内からの批判にさらされてもいる」との分析を掲載している。
 まず「よく言うよ」と言いたいのは、「朝貢外交論」だ。筆者は14年の中国におけるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、習近平が各国首脳を出迎える姿を「APEC史上見たこともないけばけばしい朝貢外交的な演出は国内対策である」と看破したが、「朝貢」とは中国王朝時代に外国人が来朝して、皇帝に三拝九拝して貢ぎ物を奉ることであり、共産党一党独裁国家にはあり得ても、民主主義国間ではあり得ないことである。トランプは自動車も為替も言及はなく、日本側も提示しなかった。問題は日米の「枠組み」に先送りされたのであり、事実誤認も甚だしい。さらに「日本国内からの批判にさらされてもいる」との指摘は全く当たらない。その証拠に共同の調査によれば日米首脳会談を「よかった」と評価する回答が70.2%、「よくなかった」は19.5%だった。内閣支持率も前回1月より2.1ポイント増えて61.7%となっている。こんな批判のない首脳会談は佐藤・ニクソンの沖縄返還実現会談以来のことである。
 さらに人民網は14日「同盟関係を盲信、日本は道を誤った」と
題して「在日米軍の駐留経費の負担問題はひとまず話題に上らなかったが、トランプ大統領は日本に負担増を求めることを示唆しており、日本を含め同盟国が負担を求められることは確実だ」と大きく誤報している。なぜ誤報かと言えば、トランプは駐留費問題に関して日本が75%を負担していることを指して「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と述べている。米国はさっそく日本の高負担を参考に北大西洋条約機構(NATO)にも負担増を求めている。米国防長官マティスは15日からのNATO国防相理事会に出席、負担問題を協議する。事前の根回してNATO諸国は国防支出拡大に応える方針だ。日本にこれ以上の負担増を求めるというのは誤報だ。
 一方韓国は朝鮮日報が「北ミサイル発射に米日が蜜月演出、韓国は置いてけぼり」と社説で嘆いた。ミサイル発射と同時に安倍とトランプが共同記者会見に臨んだことについて「トランプ大統領の安倍首相に対する際だった配慮と二人の緊密な関係を目の当たりにするとき、本来韓半島(朝鮮半島)でわれわれが当事者のはずの一連の問題がどこか他人ごとのようにも感じられる。それはわれわれにとってより心配すべきことかもしれない」と論じた。これも偏狭なる“ひがみ”の分析である。そもそも朝鮮半島の防衛は「日米蜜月」があってこそ成り立つ問題である。日米どちらが欠けても成り立たない構図であることが分かっていない。韓国は「置いてけぼり」と嘆く筋合いではない。
 この点中央日報は大人の論調を掲げている。社説は「安倍首相の対米外交をめぐる解釈が分かれている。『朝貢外交』やら『屈従外交』やらと批判する面々があるかと言えば、『実利外交」とは何かを見せてくれた』という評価もある」と韓国内の空気を正直に書いている。そして「韓国の大統領が安倍首相のようにしたら、どのように評価されただろうか。屈辱外交などとさんざん非難を浴びたかもしれない。名分に捕われて外交の基本も逃してしまうのではないか、考える時だ」と結んでいる。韓国も同様の外交をしなければならないと言いたいのだ。しかし、誰が大統領になっても「安倍外交」ほどの成果を上げあれるかは別だが、まずは釜山の慰安婦像撤去から始めることが外交成果へのカギと心得るべきであろう。


◎俳談

◎俳談
【季語はつけたりでは駄目】
例えば
縄跳びのひらりと着地今朝の冬
という俳句があったとしよう。新聞選者は100%採らないだろう。なぜなら季語が動くからだ。季語が動くということはどういうことかと言えば、今朝の冬でなくても、今朝の夏でもいいからだ。今朝の冬に必然性がないのだ。季語などどうでもいい俳句であるからだ。
 俳句の場合はこう考えた方がいい。すべては「季語様」のためにあるのだと。例えば
山茶花の白の浮き出る薄暮かな 毎日俳壇入選
山茶花という冬の季語のために中七も下五も下部(しもべ)となって働いているのだ。白の浮き出ると形容し、薄暮という白花の一番美しい環境を演出している。
 このように俳句は季語そのものを活かすために作るくらいに考えた方がよい。
スリッパに妻の体温日脚伸ぶ 毎日俳壇入選
掲句も冬至を過ぎればだんだん日脚が伸びることを、スリッパに残った妻の体温で言い表している。季語あっての俳句なのだ。

◎安倍は朝日に「勝った」、トランプはNYTに負けた 杉浦正章

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◎安倍は朝日に「勝った」、トランプはNYTに負けた
   リスクの伴う対メディア戦
   首相・安倍晋三とトランプの会談を評して、前原誠司が「猛獣に従うチキン」と評すれば、脇から後藤祐一が「ポチだ!」と野次る。
前原は続いて「近づきすぎるとリスクがある」と指摘した。民主党は誰が見ても成功裏に終わった日米首脳会談をこの程度にしかとらえられない政党であったか。猛獣にチキンは従わない。逃げる。「近づきすぎ」と言うが、虎穴に入らずんば虎児を得ずの格言を知らないのか。北のミサイルや中国の軍事挑発は、より大きなリスクではないのか。衆院予算委の追及は、浅薄でどうもやっかみが先に立つ。「負け犬の遠吠え政党」そのものだった。それにつけても産経の「私は朝日新聞に勝った」「俺も勝った!」のスクープは見事であった。安倍とトランプの意気投合ぶりを端的に言い表している。リークした方も、他の新聞でなく産経を使ったのは、産経しか大きく扱わないからだろう。狙いを定めた「リーク」であろう。
 産経が11日付けの2面トップで報じた記事の内容は、「大統領選で日本に対しても厳しい発言を繰り返してきたトランプが、これほど安倍を厚遇するのはなぜか」と問いかけ、「実は伏線があった」と続く。以下は、昨年11月の米ニューヨークのトランプタワーでの初会談で、軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出した。「実はあなたと私には共通点がある」。怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」。これを聞いたトランプは右手の親指を突き立ててこう言った「俺も勝った!」と。トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。というものだ。
 問題は、ここで安倍が「勝った」と胸を張った理由は何かということになるが、直感的には慰安婦強制連行をめぐる安倍と朝日との10年戦争を指すものと推定される。安倍は第一次安倍内閣の2007年に
「政府発見の資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定した。朝日はこれをを無視し続けたが、14年になってついに慰安婦報道をめぐり、朝鮮人女性の強制連行の虚偽を認め、記事を取り消した。社長以下陳謝の記者会見に臨んだものだ。安倍はその後「閣議決定は批判されたが、改めて間違っていなかったことが証明されたのではないか」と強調した。さらに「報道によって多くの人たちが悲しみ苦しむことになったのだから、そうした結果を招いたことへの自覚と責任感の下、常に検証を行うことが大切ではないか」とも述べた。まさに対朝日戦は安倍の圧勝に終わったことになる。
 一方トランプの対NYT戦だが、これは選挙中の戦いが選挙後も白熱戦を展開した。朝日などの報道によるとNYTは大統領令で中東・アフリカの7カ国の国民が米国に入るのを禁止した問題を大きく報じ、1月28日の社説では「臆病で危険」と断定した。また、別の社説では「トランプ氏が真実に耐えられるのか」と、迫った。これに対してトランプは29日朝には、NYTを「偽ニュースで経営不振」とこき下ろし、「誰か適性と確信を持つ人が買収し、正しく経営するか、尊厳をもって廃刊させるべきだ」とツイッターで発信した。トランプはこれを称して「勝った」と唱えたのだろう。もちろん大統領選で勝ったことも確かだ。しかし、NYTは逆に購読者数を伸ばし、昨年11月の大統領選後わずか7日間で約4万人を獲得。電子版の有料購読者は昨年10~12月期に27万6000人増え、5年ぶりの大幅な伸びとなった。これが物語るものは、その実トランプは勝ってはいないとも言えることになる。おそらくトランプ支持層ではなく、国論分断でインテリ層がNYTに付いたものとみられる。
 安倍の発言は昔1960年代末から1970年代にかけて日本で発生した言論出版妨害事件を若干ほうふつとさせる「危うさ」がないわけではない。同事件は、新宗教団体・創価学会と同団体を支持母体とする公明党が自らに批判的な書籍の出版、流通を阻止するために、著者、出版社、取次店、書店等に圧力をかけて妨害した事件だ。当時の日本のマスコミは戦前戦中の軍部による言論抑圧へのアレルギーがなお後を引いており、こぞって批判を展開、公明党がその路線を大きく転換するきっかけとなった。これを他山の石として自民党政権は言論抑圧と受け取られることに細心の注意を払ってきた。
 安倍のようにメディアの報道を勝ち負けで判断する発言は、ともすれば民主主義にとって「危うさ」が大きいと受け取られやすい。憲法のうたう言論の自由に抵触しかねないからだ。しかし、安倍にそこまでの意図はない。ことの本質は長年の“宿敵”朝日に対する意趣返しであろう。ヒトラーや日本の軍部なら批判などせずに、弾圧を実行に移す。安倍からはその気配など全く感じられない。一方朝日は報道機関としての中立性を社是で標榜しながらも、実態はそれを否定している。安倍は14年に国会答弁で「安倍政権打倒は朝日の社是」と発言している。この発言は同社の元朝日新聞主筆の故・若宮啓文が、評論家から「朝日は安倍というといたずらに叩(たた)くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか」と聞かれて「できません。社是だからです」と答えたことに立脚している。朝日がなすべき事は、この「社是」を見直し、自民党政権への“偏見”から脱却することだろう。まあ、無理だろうが。


拍子抜け!極く当たり前の日米共同声明 浅野勝人

拍子抜け!極く当たり前の日米共同声明
(社)安保政策研究会  理事長 浅野勝人

年初、今年の特徴は、大方の予想が外れる一年だという触れ込みでした。
安倍晋三とドナルド・トランプとの丁々発止のやり取りの結果、“鬼が出るか、蛇が出るか” 
世界がかたづを呑んで見守る中での日米首脳会談でした。

期待と不安を抱いて注視していた日米共同声明は、当たり前の事柄が当たり前のまま羅列されています。歴代の日米共同声明でこれほどインパクトに欠ける無難なコミュニケは前代未聞でしょう。
激変を予想した大方の「予測が外れる」という今年の特徴に沿った政治劇の第1幕でした。予測が外れて安堵しました。

当面、日米両国を縛るのは、共同声明です。ポイントは安保と経済。
☆日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認した。尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。

これって当たり前のこと。
そもそも57年前に締結された日米安保条約には、前文で「日米両国が極東における国際の平和と安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結する」と記されています。
当時、「極東」とはどこを指すのか「極東の範囲」をめぐって国会はもめにもめた挙句「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の区域であって、韓国及び台湾地域も含まれる」という統一見解に落ち着きました。従って、日本の施政権下の尖閣諸島が条約の適用範囲内に入るのは当然です。

ですから、今回の共同声明は、57年前に決めた内容を確認しただけのことです。アメリカが中国に配慮して「尖閣諸島が含まれない」といったら、日本にとっては驚天動地の大ニュースです。日米同盟の破棄を意味するからです。
今回の確認によって、領有権をめぐって日中が軍事衝突したら、条約の取り決めに従って、アメリカは日本に味方すると明言したことになります。もっとも、そんな事態が起きそうになったら、アメリカは米中関係の重要性を重くみて、必死になって紛争防止のため日本に圧力をかけ、同時に中国を止めにかかるに違いありません。ですから、日中米トライアングルの軍事および経済関係を推量すれば、私は尖閣諸島で軍事衝突が起きることはないと確信しています。

☆自由で公正な貿易のルールに基づいて、日米両国間および地域における経済関係を強化することに完全にコミットする。この目的のため、アメリカがTPPから離脱した点に留意し、日米間で2国間の枠組みに関して議論を行う。

トランプが気違いのように叫んでいた「アメリカ、第一」は世界の自由貿易ルールには通用しないことが認識されて、通商、貿易は従来通りに自由、公正に行うという当たり前のことが確認されました。

2/5のブログで、安保政策以外の重要課題は「事務レベル協議の開始に合意」に留めるべきだと指摘した通りとなって、ひと安心です。
従って、経済、財政、金融、為替、雇用の重要課題は、閣僚間の事務レベルで話し合うことになりますから、すべてのネゴは今後に委ねられました。
これからは、不当に押し込まれないよう妥当な結果をめざして、日米双方テクノクラートの腕の見せ所となります。少なくとも、大統領特権を嵩にきたトランプの常識外れの横やりは、ひとまず防ぐことに成功しました。その意味では、完全に日本側の作戦勝ちです。

トランプから多額なグリーン・フイの付け回しが来たら、事務レベル交渉で突っ返したらいい。(元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【俳句と感性】
秋の空露をためたる青さかな  子規
俳句は短詩である。したがって何よりも感性が求められる。表面には出なくてもその句の根底にある感性である。子規の掲句は秋の空が露をためているかのように、詩人子規の目に映った。そう映らなければ出来ない俳句である。つまり子規の感性そのものが現れた俳句なのである。
寺山修司が
マッチ擦るつかの間海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや 
と詠んだが、これも感性の固まりのような短歌である。読者を霧の深い海でマッチを擦るという感性の世界にひきづりこんでおいて、身を捨てるほどの祖国があるのかと問いかける。マイクでがなり立てる反戦論者より、百倍の訴求力がある。
爽やかや四角のビルより退職す 東京俳壇1席
評には「四角のビルという平凡な言葉が抜群に生かされて作者の生涯が見渡せる」とあった。職場を「四角のビル」と称する感性を感じてもらえたのであろう。この感性は持ち前のものだろうか、それとも育てられるものであろうか。筆者は両方あると思う。生まれながらに詩的感性を持つ人間はそれほど多くはない。しかし俳句は作句の技術とは別に多作すれば感性も自ずと育つものなのである。素地としては歌謡曲に感動する感性があれば十分だ。後は育つ。
春寒の夜に空襲のありしかな 日経俳談1席

◎日米会談は安倍優勢勝ちの様相 杉浦正章

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◎日米会談は安倍優勢勝ちの様相
   トランプ、経済ナショナリズムを封印
 「聞く耳を持つ」側面が出た
 たった30数分の首脳会談が物語るものは、首相・安倍晋三もトランプも事務当局の作った文書を確認しただけということだろう。従ってアジア太平洋の安全保障では、満額回答。貿易経済に関してはトランプがあえて持ち出さず、新たに作る「財務相麻生・副大統領ペンスらの枠組み」への先送りで激突は回避。欧州、メキシコ、豪州首脳から総スカンで四面楚歌のトランプは明らかに安倍との会談に活路を求めたことになる。この結果首脳会談から見る限り、6対4で安倍が優勢勝ちした。トランプは選挙中の過激な発言を修正した結果となった。トランプは経済ナショナリズムを封印し、日米安保重視の共和党の姿勢を踏襲したことになる。今後安倍に“つけ”が回ってくることはあっても、日米関係は好調な滑り出しとなった。
 といっても、尖閣に安保条約適用など極東安保関係はオバマとの合意が踏襲されただけだ。従ってこれはトランプ流の高値をふっかけ、値引きする交渉の術中にあったといえる。しかし、トランプが「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と言明したのには驚いた。歴代大統領の基本姿勢は「日本を防衛してやる」であり、トランプ自身も選挙戦で米軍撤退に言及するなど、一番強硬であった。おそらく歴代の安全保障政策を踏襲する国防長官マティスや国務長官ティラーソンが極東情勢の重要さをトランプに進言し、これをを聞いたことが最大のポイントだろう。つまりトランプは「聞く耳」を持っているということだ。加えて緊迫感を増す極東の情勢への対処は、米国の世界戦略の礎であり、トランプはようやくこれが分かって来たことを意味する。
 さらに安保関係で重要な点は前日トランプが習近平と電話し、「一つの中国」を確認したことだ。ホワイトハウスによると、両首脳の電話会談は「非常に和やか」なもので、幅広い話題について長時間にわたり意見交換したという。トランプは、昨年12月、台湾総統の蔡英文と異例の電話会談を行い、米メディアに対して「一つの中国」政策を疑問視する発言をしたが、これを明確に修正したことになる。これは歴代米政権が維持してきた「一つの中国」政策に戻ったことになり、米中関係ののどに刺さったとげは、いとも簡単に抜いてしまった。おそらくキッシンジャーが影響しているのだろう。ということは日本にとってはニクソンの悪夢「日本頭越しの米中接近」がいつ起きるか分からないことを意味している。警戒する必要がある。トランプとしては安倍と安保上の接近をすることで、中国が「誤解」して暴発することを避けたとも言える。こうしてトランプは選挙でのドラスティックな発言から現実路線へと舵を切りつつあるということになる。
 一方貿易経済問題は経済閣僚の議会承認が遅れており、本格的に動き出すのはまだ先であろう。安倍の提案した「枠組み」はその意味でトランプの独断専行を阻止することでもきわめて有効な一打であった。「枠組み」は、誰も気付いていないが池田内閣で1961年に発足した日米貿易経済合同委員会と酷似する構想だ。両国閣僚による同委員会は佐藤内閣では日米繊維交渉が最大の議題になった。当時の通産相田中角栄が、アメリカの主張に譲歩し、繊維業者の機織り機を政府のカネで買い上げて廃棄するという奇策に出てまとめた。その後休止状態にある。「枠組み」は自動車問題、金融為替問題、インフラへの事業協力などを話し合うことになる。日本側としては時間稼ぎになるが、なかなか安倍の目指す「日米の相互利益の追及」というわけにもいくまい。会談後トランプが「貿易関係では自由で公平を重視し、日米両国が恩恵を受けなければならない」と発言したが、これはかつての赤裸々な保護貿易主義からの明らかなる転換を意味する。会談では円安批判も出ないし、自動車輸出への批判も出なかった。ディールの先送りで安倍、トランプ双方の利益が一致する。安倍にしてみれば時間を稼げるし、環太平洋経済連携協定(TPP)にしても、トランプを翻意させるよう根回しが可能となる。一方で、トランプは、日米激突の構図を避けることにより、世界的な孤立無援の状況に突破口を開くことができるのだ。今年中と決まったトランプ来日までにめどを付けるよう迫られるかもしれない。
 こうした中で米国のマスコミは、トランプに“荷担”した安倍にかんかんだ。中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一時禁止した大統領令ついて安倍は「入国管理や難民政策は内政問題なのでコメントを差し控えたい」などと突っぱねたのが気に入らなかったとみえる。朝日によると、 NBCニュースの政治担当ディレクター、チャック・トッドはツイッターで「メイ英首相よりもさらに、日本の安倍首相はトランプ大統領に取り入ろうとしている」と投稿。米タイム誌(電子版)は「首相は記者会見で大げさに大統領をほめた」などと皮肉った。ニュース専門局MSNBCのアナリスト、デビッド・コーンもツイッターで「こんなに大統領におべっかを使う外国の首脳は見たことがない」と述べているという。これは坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの類いで、他国の首相に対して失礼千万であり、極東の緊迫した情勢下での日米蜜月は米国の利益に直結するという大局など全く頭に入っていないうつけの類いだ。ホワイトハウス記者団も質が落ちたものだ。
 一国の首相のフロリダの滞在費まで問題にした。問題が提起された背景には、トランプの不動産ビジネスが大統領職と利益相反を起こさないかとの懸念がある。米メディア記者は八日の大統領報道官スパイサーの定例会見で追及したが、ホワイトハウス側は、安倍夫妻の滞在費はトランプが負担し、日本側が支払うことはないとの考えを示した。一国の首相の滞在費まで問題として追及するとは、あきれかえる。大局を見よといいたい。少なくとも日本の記者はこれほど失礼な発言は恥ずかしくて出来ない。まるで何でも扇情的に報道する米国伝統のイエロー・ジャーナリズムの復活のようだ。


◎俳談

 ◎俳談
【炬燵(こたつ)のドラマ】
淋しさも茶柱と呑む炬燵かな 東京俳壇入選
 長い人生の内には炬燵はドラマ展開の場ともなる。部屋の中に炉を切り、その上に木製の櫓(やぐら)を掛けたのが切炬燵。床に深く掘り下げて腰掛けられるようにしたものが掘炬燵。持ち運びできるものは置炬燵でいずれも燃料は炭か練炭だった。そして電気炬燵へと変わる。炬燵はもちろん切炬燵、置炬燵、掘炬燵などみな冬の季語だ。年配の人はすべてを経験しているかも知れない。従って昔の炬燵を詠めば自ずと時代が分かる。
芭蕉の時代にも置炬燵はあった。
住みつかぬ旅のこゝろや置火燵
と詠んでいる。
キシリトールが歯の健康によいことは広く知られるようになった。筆者はキシリトールガムが好きだから原稿を書きながらかんでいるが、おかげで32本全く虫歯がない。歯医者から表彰されたほどだ。
炬燵猫キシリトールの口を嗅ぐ 産経俳壇入選
猫は珍しい匂いを確かめようとする。
裏情報知り尽くしたる炬燵猫 杉の子
古い猫は寝たふりしてその屋の家族の話を皆聞いている。一番の情報通に違いない。
だから時々猫めは追い払われる。
茶を出しぬ炬燵の猫を押落し 金子伊昔紅
といった具合だ。医者で俳人の金子伊昔紅(いせきこう)は、当代随一の俳人・金子兜太の父。

◎ 首脳会談の“陰の主役”は中国

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◎ 首脳会談の“陰の主役”は中国
 日米同盟は対中抑止力強化で一致 
 南シナ海のさらなる侵略は米中激突を生む
  10日の日米首脳会談の“陰の主役”はどう見ても中国だ。トランプ側近らの対中強硬発言はただ事ではない。対中戦争を公然と口にしてはばからない。来日した国防長官ジェームス・マティスは“狂犬”と呼ばれる紳士だが、ホワイトハウス側は“極右の火炎放射器”スティーブン・バノンを始め“対中主戦論者”が占めている。トランプは今のところその主戦論に乗っているかに見える。対ソ冷戦における“極東の番犬”と日本を位置づけ岸信介を安保改定に駆り立てたのはアイゼンハワーだが、同じドイツ系移民の子孫トランプも首相・安倍晋三をけしかけ、日米同盟を対中牽制色の強いものとするだろう。その思惑にどこまで安倍が乗るかだが、中国と北朝鮮を意識した場合、懸念の共有は当然であり、東・南シナ海をにらんだ対中抑止力の強化での一致は確定的であろう。
 誤解を避けるためにマティスの日米安保に関する姿勢を分析すれば、きわめて落ち着いたものだ。記者会見で「外交官による解決がベストであり、今のところ劇的な軍事行動をとる予定はない」と対中戦には否定的だ。しかし「中国は南シナ海で、この地域の国々の信頼を引き裂いた」と批判、オバマの「航行の自由作戦」を引き継ぐ考えを強調した。また北朝鮮に関しては「アメリカと同盟国に対するあらゆる攻撃は撃退され、あらゆる核兵器の使用も圧倒的な攻撃に遭う」と、強い牽制色を打ち出している。
 威勢がよいのはホワイトハウス側だ。まずバノンは「米国が5年から10年の間に南シナ海で戦争をすることになると思わないか」と発言した。5年から10年とは遠い先のことで、トランプ政権がまだ続いているかどうかは分からない。しかし、南シナ海での戦争に直接言及した大統領側近は初めてであり、いかにもダイナミックな構想を抱いているかのようである。中国がパラセル諸島、スプラトリー諸島にに続いて最後のとりでとして狙っているフィリピン沖のスカボロー礁の軍事基地化に乗り出せば、トランプは黙っていないだろう。バノンと双璧をなすのが反中国のばりばりで大統領補佐官のピーター・ナバロだ。外交専門誌「フォーリン・ポリシー」で、南シナ海におけるオバマの無策が中国の進出を許した点を強調「アジアの同盟国を支援するためレーガン政権時代の『力による平和構築』に回帰すべき」と主張している。さらに目をみはるのは、著書『米中もし戦わば-戦争の地政学』で、「世界史を概観すると、1500年以降、中国のような新興勢力がアメリカのような既存の大国に対峙した15例のうち11例において 戦争が起きている」と分析、超大国と新興大国の激突は避けられないとの見通しを述べている。またナバロは「歴史を振り返って分かることは、中国共産党が政権獲得以来60年以上にわたって武力侵略と暴力行為を繰り返してきたという事実である」と看破。チベットやウイグル、中ソ国境紛争、台湾海峡危機、沖縄県・閣諸島をめぐる日中の緊張などを紹介した上で、軍事力など「力による平和」で日本などの同盟国を守る必要を訴えている。トランプと台湾総統蔡英文との電話会談を実現させ、トランプに「一つの中国」政策の見直しを示唆させたのもナバロであるようだ。怒り心頭に発した中国が厳重抗議したのは言うまでもない。
 中国側はこれらの発言に関して外務省報道官が「一つの中国の原則は中米関係の政治的基礎であり、交渉は不可能だ」と発言。英字紙チャイナ・デイリーは「トランプ氏が一つの中国の見直し発言を繰り返すなら、中国は本気で立ち向かう」と警告している。しかし習近平以下首脳らは「唖然(あぜん)」として見守っているかどうかは別として、一切沈黙を守っている。まだ、トランプ独特のディールの可能性があると見ているようでもある。トランプが中国がもっともいらだつ問題をあえて取り上げるのは、貿易、為替などで成果を勝ち取るためのディールであるという判断があるのではないか。事実、中国側が怒れば怒るほどディールは成功へと導かれるのであり、商売人トランプの真価はここで発揮されるというわけだ。米国の貿易赤字の47.3%が中国に対するものであり、日本は8.4%で5分の1にすぎない。「貿易赤字が二番になった」と日本のマスコミや経済界が騒いでいるが、トランプの最大のターゲットは中国にあると見ておいた方がよい。
 しかし、ディールとだけ軽々に判断することは、読みを間違えるかもしれない。トランプの対中包囲網作りは並大抵ではない。就任前後から欧州諸国首脳やプーチン、蔡英文らとの電話会談などを繰り返しているが、中国とは何の接触もしない。これは無言の対中包囲網へと動いていると見ることが可能だ。中国首脳はひしひしと無言の重圧感を感じているはずだ。そしてトランプは安倍との会談にその流れを収れんしようとしているのだ。英国首相のメイ、ヨルダン国王のアブドラに次いで3人目の首脳会談だが、その厚遇ぶりはゴルフ会談が象徴しているように並大抵ではない。丸2日の会談は、明らかにメイを大きく上回る待遇だ。この安倍への大接近は、確実に対中戦略での安倍取り込みにある。米戦略は祖父岸を冷戦で取り込み、孫の安倍を対中戦略で取り込むというわけだ。その危険性を左翼や一部マスコミは指摘するが、中国の軍事大国としての膨張路線の方がもっと危険で現実味がある。日米が親密に結託して初めて抑制できることは言をまたない。北の核ミサイルを事実上容認し、野放しにしている中国の戦略に対抗するためにも日米同盟強化は不可欠の流れであろう。


◎俳談

 ◎俳談
【高齢者向け季語】
年寄りをユーモアたっぷりに茶化す季語に「着ぶくれ」と「懐手」がある。着ぶくれとは言うまでもなく何枚も重ね着して、体が膨れて見えることを言う。懐手は和服の袂の中や胸元に両手を差し入れる状態。両方とも冬の季語だ。年寄りは何しろ肺炎になったらいちころだから、昔は着ぶくれる一方だった。しかし最近では洒落たダウンジャケットが大流行しており、若者たちも着ぶくれて朝の満員電車の混雑を一層ひどくしている。しかし句になるのはやっぱり年寄りだ。それも退職して所在なげな年寄り。哀れなのは会社人間だった年寄りだ。特に幹部経験者は命令口調が癖になってしまっているから
着膨れて命令口調直らざる 東京俳壇入選
ということになる。もっともこれが好好爺に突然変わったりすると、ぽっくり逝ったりするから気をつけた方がよい。      
着膨れて支那そば食べに来たわいな 東京俳壇3席
こんな調子が達観していてよい。
久保田万太郎は
着ぶくれのおろかなる影曳くを恥ず
と詠んだ。着ぶくれた自分をおろかなどとはなかなか言えるものではない。粋な万太郎のダンディズムだろう。
懐手も、毎日となると苦痛になる。仕事人間は何もしない毎日が、「自由の刑」を受けているように感ずる。これは自分でやることを見つけて体勢を立て直すしかないが、なかなか簡単にはいかない。
毎日が自由の刑や懐手 読売俳壇入選
ということになる。しかし俳人はそうした日常も俳句にしてしまう。
懐手あたまを刈って来たばかり 万太郎
「うまい。座布団3枚!!」

◎日米ゴルフ会談は極東安保の基軸となる

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◎日米ゴルフ会談は極東安保の基軸となる
  首脳会談の最重要ポイントで快挙だ
 民放のコメンテーターなる者どもが口をそろえて首相・安倍晋三のトランプとのゴルフ会談を批判しているが、方向音痴で浅薄だ。大状況を見失っている。日米ゴルフ会談は祖父岸信介がアイゼンハワーと行って以来の快挙だ。岸はゴルフ会談で日米安保条約改訂の基礎を築いたのだ。日本を取り巻く安保情勢を見るがよい。国防長官マティスが就任早々日本に駆けつけたのは、中国と北朝鮮による極東の危機がそれだけ切迫していることを意味する。安倍がたとえ短期で終わりそうな不人気大統領でも接触を深めるのは、日米同盟を最重視するからにほかならない。たとえゴルフでも接触時間が長いということは、肝胆相照らす仲になり得るということであり、安保上の問題が発生したときに、この個人的な関係がいかに役立つかは今後の歴史が証明するだろう。
 ゴルフ会談批判は、中東7か国の移民受け入れ問題批判と絡めたものが多いが、筆者が前から述べているように、移民問題は受け入れている西欧諸国と米国に限定された問題である。おまけに米国内で訴訟の応酬が続いていることが物語るように国内問題である。国内問題を一国の首相が批判すれば内政干渉になる。コメンテーターらは、批判してシリア難民を日本が受け入れよというのか。冗談ではない。中東の権益で歴史的にあまたの利益と繁栄を享受してきた米欧と、日本とは自ずと異なる対応があってしかるべきなのだ。
 そこでゴルフ会談だが、安倍が最初の会談でゴルフクラブを贈呈したことが端緒になっているのだろう。四面楚歌のトランプにとっては「安倍はういやつ」との感情が芽生えてもおかしくない。安倍から働きかけたようなことをトランプは言っているが、そうではあるまい。しかしこればかりは鐘が鳴ったか撞木がなったかの類いかもしれない。ゴルフクラブ贈呈には、“布石”があったであろうからだ。官房長官菅義偉も「最初に会談したときに安倍総理大臣からゴルフクラブをプレゼントした。そういう中で『今度やりましょう』ということになった」と説明している。安倍は、首脳会談のあと、トランプとともにアメリカの大統領専用機・エアフォース・ワンで、大統領の別荘があるフロリダを訪れ、ゴルフや夕食会に臨む。1957年の岸訪米の際と酷似している。違うのが岸のケースはサープライズであったことだ。産経によると、会談後アイクは「午後は予定がありますか?」と尋ね、岸が「別にありませんが…」と答えると、アイクが、「それではゴルフをしよう!」と誘ったという。昼食後、岸とアイクらはワシントン郊外の「バーニング・ツリー・カントリークラブ」に向かったが、岸の体格にぴったりあったベン・ホーガン製のゴルフセットも用意されていたという。スコアはアイク74、岸99、だった。1ラウンド終えてロッカー室に行くと、アイクは「ここは女人禁制だ。このままシャワーを浴びようじゃないか」と誘い、岸と2人で素っ裸でシャワー室に向かい、汗を流した。アイクは記者団に「大統領や首相になると嫌なやつとも笑いながらテーブルを囲まなければならないが、ゴルフだけは好きな相手とでなければできないものだ」と最大のリップサービスを行ったという。
 まさに破格の歓待であった。時は米ソ冷戦時代の初期であり、極東の備えを重視したアイクは、岸の取り込みに好きなゴルフを最大限活用したのだ。これが岸を勇気づけ、不平等条約であった日米安保条約の改訂に乗り出す端緒となったのだ。そこで、孫の安倍が受ける歓待はまずエアフォース1での同乗である。筆者はフォードによる米大統領初来日の際に日本人記者代表としてただ一人エアフォース1に同乗したが、内部はホワイトハウスの機能がそのままだ。進行方向向かって左の窓際に廊下があり最後尾に記者や随行が数人座れるスペース。テレックスが所狭しと置かれて作動していたが、いまはIT機器の進歩でおそらく別室にこじんまりとしているだろう。右が大統領の使用する空間だが最前列に会議室、次いで応接室、寝室、浴室などがある。最近写真で内部を見たがほとんど変わりはないとみられる。この応接室で安倍は打ち解けた雰囲気の中でトランプと会談するのだろう。
 次いでゴルフ会談だ。NHKによるとトランプは5日、アメリカのスポーツ専門のラジオ局のインタビューに答え日米首脳会談のあと、みずからの別荘がある南部フロリダ州で安倍とゴルフを行うことを明らかにした。そのうえで、「すばらしいことだ。ゴルフのほうが昼食以上に親しくなれる」と述べ、ゴルフを通じて安倍と親睦を深めたいという考えを示した。これはアイクの岸に対する対応と酷似している。また、「安倍総理大臣はいいゴルファーか」と質問されたのに対し、トランプは「わからないが、安倍総理大臣がゴルフを好きなことは知っている。私たちはおおいに楽しむだろう。うまいかどうかは問題でなく、安倍総理大臣は私のパートナーになるだろう」と述べた。これはトランプが、娘のイバンカと同様に安倍に好感を抱いていることを物語る。トランプはイバンカから「あなたは安倍晋三首相に従っていればいいのよ」と忠告を受けたとの話を、日米電話会談で安倍に紹介したという。イバンカが安倍を「非常にクレバーな人だ」と評価していたとも話したという。一方安倍は側近に「トランプ大統領は民主的な手続きで選ばれた唯一の同盟国の正当なリーダーであり、敬意を持って対応するのは当然だ」と語っている。菅も「少なくとも選挙によって当選した大統領だ。その大統領と信頼関係を築くことは極めて重要だ。」と意義を強調している。
 日米関係を長年観察しているが、最初の首脳会談前にこれほど、大統領と日本の首相の“対話の環境”が整った例を知らない。安倍がいち早く就任前のトランプと会談したことが奏功したことは言うまでもない。加えて最重要の安保上の問題も安倍・マティス会談でおおむね処理された。大統領との個人的な関係樹立と安保での合意は、トランプ政権下での日米緊密化の方向を確かなものにしたと言える。もちろん自動車問題、米国の雇用問題、公共事業への参画の問題など通商経済問題の難問は横たわるが、対話の環境が確立した限り、問題の解決策は「後から貨車で来る」くらいのものであろう。言うべきことを言える仲を作るのが先なのである。


“前のめり”の印象は避けた方がいい!安保政策研究会理事長 浅野勝人

“前のめり”の印象は避けた方がいい!
(社)安保政策研究会理事長 浅野勝人

 ドナルド・トランプは、誤認の疑いのある権力を平然と行使している点で大領領の資質に欠ける。ないしは大統領の資格がないという指摘をあながち無礼な言いがかりとは反論しにくい。
トーマス・ジェファーソンがアメリカ第3代大統領に就任する3年前の1798年に「権力者が、権力を嵩に悪さをしないよう憲法という鎖で縛るのがよい」と言っています。トランプにとっては馬耳東風(李白)だとしたら、多くの人の懸念を一層深めます。 

言いたい放題ののしるだけだった選挙キャンペンーンの品位に欠ける言動から、劇的な変身を見せるにちがいないと思った大統領就任演説は、期待に反して選挙演説の焼き直しで唖然としました。
理想主義を掲げて格調の高い演説が上手だった上品なバラク・オバマが、ノーベル平和賞にふさわしい大統領だったと引き立てられました。

アメリカ・エール大学教授の歴史家、ポール・ケネディが指摘するトランプの反知性主義には決定的な要因がふたつあります。

ひとつは、専門家としての官僚の存在、テクノクラートを軽視あるいは無視している点です。何事も自分が決めて、それを押し通すのが政治主導だと勘違いしています。
総選挙に大勝した民主党が、「政策を決めるのは我々政治家だ。官僚は決られたことに従っておればいい」というのが政治主導と思い込んで、政権の運営にしくじった記憶は新しい。まるでそっくりです。
政治主導とは、政治が誤りなき国家の道標を示し、政策の決定過程に携わる高級官僚の専門的知見と能力を引き出して、より優れた政策を構成する手段だと私どもは思っていました。
ポール・ケネディ教授の「公約を政策として具体化するには、専門家の叡智が必要だ。無知から来るトランプの自信過剰は、早晩つまずくだろう」(情報誌「選択」)という指摘にトランプが早く気付き、変身して歴史家の予見が外れることを期待しています。

もうひとつは、異様なマスコミ対応です。
自分を批判するメディアは、全てウソを報道して自分を陥れる“獅子身中の虫”と決めつけて、一流メディアの記者に質問さえさせないのは異常です。
メディアから指摘されている所得税の脱税問題。モスクワでの女性スキャンダル。その他の疑惑を強引に封じ込めるための威圧かと勘繰りたくなってしまいます。
ジャーナリズムは、中立公正を求めて、不偏不党を掲げ、時の権力と是々非々で対峙するのが務めです。それが存在意義です。
批判は一切許さず、下品なギャグで批判に対抗するトランプ式マスコミ操縦が続くと、「ポスト・トゥルース」が現実となって、ホントとウソの区分けがつきにくくなります。そこから発生するアメリカ国家の二極化をさらに深める深刻な姿は世界の不安を助長します。

私のように1/4世紀、取材・報道する側。1/4世紀、取材・報道される側を体験しますと、誤報すれすれの記事で痛めつけられると、わが身の越し方が思い返されてホトホトまいったものでした。
最高レベルにある大統領にとって、マスコミほど癇に障るものはないだろうと同情しますが、それほど厄介な存在だからこそ何よりも重要だと気付くべきです。そもそも、国民との間を繋ぐ唯一のパイプです。いつまでもツイッターに頼って行政を進めていては、早晩、行き詰ります。

安倍首相は、現在の世界の中で優れて長期安定政権の主(あるじ)です。もっとも経験豊かな政治指導者のひとりです。その上、フットワークの軽さは目を見張るものがあります。性善説の安倍晋三さんが、「私が真剣に話せばわかってくれるはずだ」と思い込むのはもっともです。

首脳外交にとって、トップ同士の親密さの度合いは極めて重要な要素です。ですから、会う回数は多いほどいい。そうはいっても、KGB長官あがりや生き馬の目を抜くやり手の不動産王は、容易ならぬ相手と分析した方が無難です。

トランプの出方を見極めたいと、世界がかたずをのんで安倍・トランプ首脳会談を見守っています。重要な政治課題の扱いについては、利害の対立を意に介せず、突っ込んだ話し合いをして、「事務レベルの協議開始に合意」に留めて、日米両国のため、世界経済のために範となる会談をしてほしいと期待します。

だから、一緒にゴルフはまずい。早過ぎる。世界中が疑心暗鬼で見守る人とのゴルフ”は「日本はポチ第1号」と誤解され易い。当分、前のめりと映る印象は避けた方がいい。(元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【儚(はかな)きもの】
冬の虹すぐに消えたり妻呼べば 東京俳壇入選
 自然現象の中でも儚いものの象徴が冬の虹だろう。かかっても小振りですぐに消えてしまう。
虹は夏の季語であり、その夏の虹は雄大さと華やかさと儚さが共存すると言ってもいいが、冬の虹は儚さだけで成り立っている。だからかかるとすぐに人を呼びたくなる。人に知らせたくなる。 
声寒く入り来て虹を知らせたり 産経俳壇入選
「うー寒い」と言いながら帰宅して、茶の間を開け「今虹がかかっているよ」と伝えるようなイメージだ。冬の虹は珍しい季語でもあるが、珍しい季語にも時には挑戦してみることだ。儚いという本質をとらえつつ作句する。
安住敦の
冬の虹消えむとしたるとき気づく
は、まさに本質を突いた一句だ。 

◎マチス、中国・北の「誤算」回避を狙う

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◎マチス、中国・北の「誤算」回避を狙う
 安倍は“切れ者”を味方に付けた
 日米関係の急所である安全保障問題が、マッチポンプのごとき米国の対応急転でオバマ政権の方針継承で落ち着いた。首相・安倍晋三にとっては米国防相マチスとの会談は10日の首脳会談に向けて、大きなブレークスルーとなる。まず安保で合意しなければ、経済も通商も進まないからだ。トランプにしてみれば、安保に無知なるが故に核の傘の否定と米軍撤退示唆という高値を吹きかけ、値引きして元のさやに収めただけのことだ。期せずしてか、それとも狙ったか、一銭もかけずに日本に恩を売る形となった。だから政府はもちろん、マスコミも「尖閣、日米安保適用」などと諸手を挙げて喜ぶ話ではあるまい。人がよすぎる。もっとも、より重要な側面がある。それは中国と北朝鮮の誤算による武力行使を未然に防ぐという意味だ。極東に「力の空白」ができたという誤算をさせないことが必要なのだ。国防総省は全世界を見渡して、トランプ発言修正の優先度を北大西洋条約機構(NATO)でなく、日米同盟に置く緊急性があったのだ。加えて日本の軍事大国化を未然に防止する意味合いも大きい。
 日米合意は要約すれば①日米が同盟の強化を確認②マティスは、対日防衛義務や核の傘による拡大抑止提供などを明言 ③マティスは尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であると再確認④北朝鮮の核・ミサイル開発への対応では、日米、日米韓の安全保障協力が重要との認識で一致、といったところだろう。国防長官が政権発足2週間で来日した例はない。最近ではオバマ時代にゲーツが9か月後、ブッシュ時代にラムズフェルドが2年10か月後といった具合だ。政府筋によると来日を早めたのは極東情勢に緊急性があったからだ。同筋はマチスが「日米関係は試すまでもない。米国の政権移行期に乗じて、中国や北がつけ込んでくるのを防ぐためだ。」と漏らしたと言うが、その通りだろう。事実、北はICBM の実験を行おうとしており、中国は尖閣への接近、領海侵犯、空母による示威行動を繰り返している。
 もともと米国は尖閣問題でのコミットメントを明言してこなかったが、オバマ政権になってから、中国は首相・野田佳彦の尖閣国有化発言への反発とオバマの安保政策の“やわ”なところに目を付けてか公船の尖閣接近が頻繁となった。この結果、安保条約5条の適用を国務、国防両相も、オバマ自身も14年になって初めて明言せざるを得なくなった経緯がある。尖閣を失うと言うことは米国の極東戦略の拠点を失うに等しい象徴性があるのであり、トランプ政権も継承せざるを得ないのは火を見るより明らかなことであった。
 マチスによるトランプ発言修正のポイントは「日米がともに直面しているさまざまな課題、そして北朝鮮の挑発などにも直面し、私としては1年前、5年前と同じく、日米安全保障条約第5条が本当に重要なものだということを、とにかく明確にしたいと思った。それはまた5年先、10年先においても変わることはないだろう」と述べた点だろう。そこには長期にわたり日米協調で極東、ひいては南シナ海から中東にかけての安全保障の「礎」を確保したいという思惑がある。トランプの言うように、駐留経費を理由に米軍を撤退させ、日本の核武装が進めばこの基本戦略が成り立たなくなるのだ。とりわけ、日本の核武装は米国にとって極東に軍事大国が出現することを意味しており、米国の基本戦略に甚大な影響をもたらす。だからこそ「5年先、10年先」においても変えたくないのであろう。
 トランプの「日本の防衛を続けるにしても公平な支払いが必要」という、駐留米軍経費の増額要求については、マチスは言及しなかったといわれる。訪日の狙いはトランプ発言への日本の懸念を掌握するところにあり、米国からの具体的要求は避けたいという気持ちがあったものとみられる。しかし、今後米国が駐留経費の負担像を要求してくるかと言えば、まずないだろう。年間7600億円の分担と負担割合が74.5%は世界の中でもぬきんでており、要求の根拠に欠けるからだ。もっとも日本の軍事費は世界第8位だが、対GDPの防衛費の割合が1%で世界で102位という現状を、今後米側が指摘してくれば、弱いところを突かれることになる。今後トランプが“禁じ手”の貿易と安保を両天秤にかけて、ディールを求める可能性は依然残っていると見なければなるまい。
 懸案の普天間基地の辺野古移転についても、トランプ流理論でいけば不要と言うことになるが、マティスは方針を変えなかった。「解決策は二つしかない。一つは辺野古、もう一つも辺野古だ」と明言している。これも米戦略の重要な要(かなめ)を失いたくないのであり、当然だ。こうしたマチスの姿勢をトランプが支持するかどうかだが、トランプは就任後もマティスを「専門家」として信頼する発言をしており、おそらく極東安保の大きな俯瞰図を変更する可能性はないだろう。いずれにせよ、安倍は切れ者マティスを“味方”に付けた感じが濃厚であり、会談そのものは成功と見るべきであろう。


◎俳談

◎俳談
【新酒を詠む】
友ら皆白髪か禿げよ新酒汲む 読売俳壇入選
 昔田中角栄の家に夜回りすると、酒はオールドパーであった。ロッキード事件の後などは昼間から一人で一本開けることもあったようだ。「なんで越後の酒でなく洋酒なんですか」と聞くと「日本酒はうますぎてついのみすぎてしまう」だそうだ。それでも正月は3升も入る越乃寒梅の大瓶で祝った。一緒に夜討ち朝駆けした友も皆白髪か禿げとなった。
 新酒は秋の季語。かつては収穫した新米をすぐ醸造したため秋の季語となったが、現在はほとんど寒造りで、2月に出荷される。
一つ欠き五臓と五腑に染む新酒 杉の子
胆石の手術で胆嚢を取ったが、医者はのんでもいいと言うから遠慮なくのんでいる。しかし昔のようにがぶ飲みをしない。楽しむ習癖が年と共に備わった。
がぶ飲みはもはやせぬ歳今年酒 杉の子
酒を詠んだ名句は何と言っても李白だろう。杜甫が「李白一斗 詩百篇」と詠んだようにたいへんな酒豪であった。たしかに一杯やりながら俳句を作ると面白いようにどんどん出来る。せきを切ったように出来るのだ。しかし翌日覚めてから見ると駄句の山を築いていたことが分かる。李白は「山中にて幽人と対酌す」に
両人対酌すれば山花開く 一盃一盃復(ま)た一盃
 自然の中で酒を酌み交わし、 気ままに語り合う自由を詠んでいる。

◎安倍は硬軟両様で“トランプ調教”に臨め

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◎安倍は硬軟両様で“トランプ調教”に臨め
  切り返せば耳を傾ける習性も
 トランプを理解させるために首相・安倍晋三は子供の絵本のような数枚のペーパーを渡し、やさしく図解して説明する必要があるのではないか。まるでかみつき犬のように手当たり次第に牙をむきだしているトランプが、今度は認識を誤り、筋違いの対日為替政策批判に出た。安倍は予算委できっぱり「円安誘導は当たらない」と全面否定した。これが10日の会談前に伝わる事は言うまでもない。安倍は硬軟両様を使い分け、自動車、為替、環太平洋経済連携協定(TPP)ではゲーリー・クーパーのごとく毅然として「友情ある説得」を展開すればよい。一方で、ウインウインの関係樹立を目指した前向きの提案を、安全保障、新幹線、橋梁建設技術などの公共事業の面で行うことが必要だ。首脳会談は知性対感情の戦いになりそうであるが、トランプはごまをすれば馬鹿にして、切り返せば耳を傾ける習性がある。またイスラム圏と「特別な関係にある」西欧諸国首脳の「トランプの移民排除はけしからん」論に同調する必要などさらさらない。安倍とトランプがゴルフをすることは日米連携の大局からはいいことだが、発言に気をつけないと目立ちすぎて、世界のマスコミが“皮肉る”危険性がある。
 トランプは人の意見をすぐに採用するたちである。誰も気付いていないが対日為替批判もフォードCEOの入れ知恵だ。トランプは先月24日、ホワイトハウスで米自動車メーカー大手3社の首脳と会談した。この席でフォードCEOのフィールズが、自社の対日売り込み努力の欠如を棚に上げて、「TPPは貿易相手国による為替相場への介入に対処していない」と指摘、大統領の脱退決定を高く評価。その上で「すべての貿易障壁の根源は為替操作だ。TPPはこの問題に適切な対応を取っていない。悪い取引からの撤退を決めた大統領の勇気に感謝している」とお追従をしたのだ。これにトランプは悪乗りして対日批判となったに違いない。だからトランプが「中国や日本がやってきたことを見てみろ。米国が黙って座っている間に為替を操作した。日本は円安に誘導して、われわれはばかを見た」と発言したのであろう。通貨問題は総じて国家主権の問題であり、他国首脳が異例の口先介入すべき問題ではない。
 安倍は予算委で「通貨安誘導は当たらない。必要があればそういう説明をする」ときっぱり否定した。もしトランプに日銀の異次元の金融緩和を否定する意図があったとなれば、アベノミクスの根幹の否定であり、デフレ脱却という国家目標にまで切り込んだ内政干渉ということになる。世の中には黙認できることとできないことがあることをトランプに“よく分かるように”知らさなければなるまい。一部でささやかれるように貿易協定の中に為替制限条項など挿入すれば、まさに貿易・為替戦争になりかねない事態であり、論外である。
 安倍は絵本でドイツ車が日本でいかに売れているかを説明する必要がある。15年の数字ではフォルクスワーゲンが前年比4.4%増の68万5,669台、メルセデス・ベンツが5.3%増の28万6,883台、アウディが3.7%増の26万9,047台だ。なぜ売れるかと言えば高級志向が日本の国民性に合致するからだ。だいいち日本の関税はゼロで、米国の関税は2・5%だ。加えて欧州車に比べてアメリカ車のメーカーは日本で全然広告を出していない。米国は最大の自動車市場であり、米国メーカーはわざわざ日本向けに右ハンドルの小型高級車を製造して販売するまでに至らないのだ。ペイしないと見ているのだ。デザインも日本人好みではない。日本車も米国好みのデザインのものは日本でも全く人気が沸かない。デザインも高級感も日本車や欧州車に劣るものを製造しておいて、為替操作のせいにするフォードの根性はあきれる。筆者はフォードのムスタング・マッハ1で音より早くワシントン市内を駆け回っていたが、70年代のアメ車のような魅力はもう日本人は感じない。ひとえに米国メーカーの努力不足だ。安倍はこの実情を諄々(じゅんじゅん)と説けばよい。自動車メーカーが米国で作り出した雇用は150万人だ。
 また安倍はトランプにTPPの重要性、とりわけ対中包囲網という戦略的色彩の濃い協定であることを絵本で説明する必要がある。国会で安倍は「1対1のFTAではなく、成長著しいアジア地域においてマルチのルールを作ることの重要性を説く」と説明した。トランプは「永久に離脱」と意気軒昂だが、安倍が「腰を据えて説明する」としており、長期戦でよい。その間英国との自由貿易協定(FTA)やEUとの経済連携協定(EPA)などを、TPPを参考にどんどん推進して、米国を置いてけぼりにしてしまえばよい。やがてトランプも自らの立脚点が保護貿易でなく自由貿易であることに気付くであろう。途中で政権がつぶれれば新政権に働きかければよい。
 同盟関係については、電話会談でトランプが国防長官ジェームズ・マティスの訪日について「よろしく」と述べたことが物語るように、かつての核保有論は影を潜めた。おそらく75%を超える日本の米軍基地の負担をさらに求める非常識さも薄れているだろう。問題は防衛費をGDPの1%以内とする三木武夫が決めた方針の撤回を求める可能性があるが、これには柔軟に応じた方がよい。極東をめぐる環境悪化はそれを必要としているのではないか。
 また朝日が「トランプ国会首相守勢」と報じたのに乗じてか、民主党が、トランプの7か国移民の入国禁止を安倍が欧州諸国首脳のように批判していない点を、鬼の首を取ったように追及している。しかし、問題の実相をとらえていない。米欧はもともとイスラム圏との結びつきが強く、それこそ「特別な関係」にあるから、トランプを批判するのであって、日本までが同調する必要などさらさらない。難民受け入れが世界の安定につながるように、日本のアジア、中近東、アフリカなどへの政府開発援助(ODA)や各種援助がどれほど難民流出防止に役立っているかを知るべきである。日本の支出総額は過去10年間で10兆4000億円に達し、対中ODAは、1979年に開始されて以来6兆円を上回る額である。中国難民やフィリピン難民などが発生しなかったのは日本の貢献によるところが大きい。そもそも中東難民は日本では生きていけない。イラン人の日本への渡航が80年代末期から急増して社会的な混乱を招き、ビザ相互免除協定を終了させて減少させた事は記憶に新しい。難民が生じる前に、経済的に手を打って防止するのがイスラム諸国の住民にとってももっとも幸せなのであって、安倍が明言したようにシリア難民を受け入れる必要などない。


◎俳談

◎俳談
【時事俳句は軽い】
 新聞投句だから、新聞やテレビの報道を基に作った時事俳句が入選するだろうと考えるのは甘い。選者は真っ先に捨てる。句会でも時事句は上位に入賞することはない。例えば<天安門テロ発生し秋の空>などという、テレビを見て詠んだような駄句は100%採られない。初心者はどうしても入ってくる情報で俳句を作ろうとする傾向があり、メディアの報道に踊らされるのだ。従っていきおい表面的で一過性の句になる。古来一過性の俳句は俳人がもっとも忌避するものである。
 どうしても時事句を作りたかったら、起きた事象をニュースのように俳句にせずに、一呼吸置いて一般化して作ることだ。笠智衆が死んだときに作った俳句を例示すれば
猿山の笠智衆らの日向ぼこ  産経俳壇入選
笠智衆ばかり集ひて新茶汲む 東京俳壇月間賞
と言った具合だ。笠智衆が死んだなどとは一言も言わずに、故人の懐かしい感じを出した。
恐ろしき昭和を見たり晝寢覚   朝日俳談1席
も、元号が平成に変わった時期に詠んだ句だが、戦争、原爆などと言わずに「恐ろしき昭和」だけの表現で時代をえぐって成功した。
反戦で張りのある声生御魂(いきみたま)        朝日俳談1席
反戦運動が盛んでも全学連などを詠んでも成功しない。生身魂(いきみたま)ほどの高齢者が反戦を唱えることに感動して、そこに絞った。
 通学児童に話しかけたら警戒された。子供に対する痴漢行為が社会問題になったころだ。
人見れば痴漢と教え赤とんぼ      朝日俳談入選
親にとっては必死の防御教育だろうが、なにか現代社会の情けなさを感じた。

◎「トランプ政局」はニクソン政局と酷似

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◎「トランプ政局」はニクソン政局と酷似
 米紙、「側近バノン」で破滅に向かうと予測
 半世紀前のウオーターゲート事件によるニクソン辞任をホワイトハウス記者団の端くれとして実際に取材した経験から言わせてもらうと、「早くもトランプ政局か」ということになる。さらに加えれば、ニクソン同様にトランプは死んでも国葬にされないのではないかとすら思いたくなる。移民排除の大統領令に端を発した政局は役者には事欠かない。ニクソンを辞任に追い込んだなつかしい「院内総務」という政党トップの名称も使われ始めた。民主党院内総務チャック・シューマーが活躍し始めた。ニクソンは副大統領にやはり共和党下院院内総務のジェラルド・R・フォードを任命したが、側近は「彼が次期大統領になると思うと追及の手も緩むだろう」とうそぶいたものだ。ところがニクソン政局は「後任は誰でもいい」というところまでに至り、ニクソン辞任・フォード就任となったのだ。トランプの場合ニクソンと根本的に異なるのは怨嗟の声が米国内だけにとどまらず、西欧、中東、アジアにまで広がり、内外呼応した政局に発展しつつあることだ。さらに異なるのは政権発足早々という異例の政局であることだ。この流れは増幅しこそすれとどまることはないだろう。
 世界中に高まる批判、そして米国内では違憲訴訟が各地で相次ぐ。司法省ではトップから批判の声が上がり、トランプは同省長官代行イェイツを音より早く「You're fired」とクビにした。イェイツは「大統領令が合法かどうかは確信が持てない」として、省内に「大統領の弁護をするな」と通知したのだ。さらに火の手は国務省にも及ぶ。省内で大統領令に反対する職員が数百人の署名を集め、反対の声明を打ち出そうとしているのだ。政権内部からの造反は、ウオーターゲート事件と相似形をなす。政権中枢からディープスロートとして、ワシントンポスト紙ににリークし続け、ニクソンを追い詰めた例と似ているのだ。米国の民主主義は衰えていない。ワシントン州では司法長官・ファーガソンが、違憲訴訟を提起した。同州知事ジェイ・インスリーは「移民の人々が苦しんでいる惨状をトランプ氏が『ナイスでビューティフル』などというのは許せない」と訴えた。異例なことに前大統領オバマまでが我慢しきれないとばかりに、「大統領令は基本的には賛成しない」と、批判の火ぶたを切った。
 前述の院内総務・ チャック・シューマーは上下両院の議員100人余りとともに並んで演説し、「この大統領令でアメリカはより危なくなり、アメリカらしさも失われる」と厳しく非難したうえで、「すべての力を使って大統領令を無効にする」と述べ、トランプ政権との対決姿勢を鮮明に打ち出した。シューマーは目に涙を浮かべて演説したが、トランプの反応はゲスの極みのようであった。「誰かが演技指導したのじゃないか。シューマーを知っているが泣き虫ではない。あれは嘘泣きだ」と毒づいたのだ。他人の愛国の涙を臆面もなく「嘘泣き」と批判する神経は異常だ。このトランプの政治姿勢はきわめて興味深い。なぜなら、その反応は確実に国民やマスコミを挑発して「倍返し」に遭うからだ。普通の正常な政治家はこうした場合は、挑発に出れば批判を増幅してしまうから損だと判断する能力があるが、トランプは逆だ。その判断能力がなく、政治家にとって最大の欠陥となる“感情丸出し政治”を予感させる。
  移民排除の大統領令はいみじくも首席戦略官で大統領最側近のスティーブン・バノンの存在を改めて浮き上がらせた。トランプはまるでヒトラーの最側近ハインリヒ・ヒムラーのごときバノンによって、まさに自分こそ“演技指導”を受けているようだ。バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わいしばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にしており、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、右翼ポピュリズム、排外主義などを中核的な思想としている。移民排除の大統領令はバノン独走という見方が強い。本来は国土安全保障長官ジョン・ケリーが担当する問題だが、発表当日はマイアミ主張中で、知らされていなかった。次期国務長官ティラーソンや国防長官ジェームズ・マティスも発表まで知らされていなかったという。いわばクーデター的に大統領令を打ち出したのだ。君側の奸のごとくバノンがホワイトハウスで頭角を現し、米国の政治を牛耳ろうとしているのだ。
 ウオール・ストリート・ジャーナル紙も社説でバノンを取り上げ「米国の民主主義にとって最悪なのは、白人寄りの不満政治を正当化することだろう。トランプ氏が約束したように、大統領は全国民を代表するべきなのだ。バノン氏が示す政治的傾向を注意深く見守る価値はある。こうした勢力を好きなようにさせておけば、トランプ政権は破滅に向かうだろう」と警鐘を鳴らしている。このバノンとメディアの戦いは、最終的にはメディアが勝つだろう。邪悪対正義の戦いであるからだ。
 今後の焦点は議会がマスコミと並んでニクソンを辞任に追い込んだように、議会の動きが注目される。議会共和党も、2年後の中間選挙を考えたら、トランプでは勝てないことを早々に悟るだろう。まず大統領令を阻止するには①大統領令に反対する法律を成立させる②関連予算を認めない③まだ4人しか承認していない閣僚の承認手続きを先延ばしにするーなどの対抗策が考えられる。最終的にはimpeachment
(弾劾)に至るかもしれない。ニクソンは弾劾が成立すると分かって、事前に辞任を表明した。また、最高裁が違憲の判決を下すかどうかも注目点だ。
 ニクソンはウオーターゲート事件が発覚して辞任に至るまで2年間かかった。ホワイトハウス記者団の追い込みが本格化したのは1974年の1月頃からだから、それから8月の辞任まで半年以上かかった。トランプも容易には辞めない。しかしニクソンの場合、突っ張りに突っ張ったが、辞めるときは押している記者団がつんのめるほどもろい崩れ方であった。どうも似たようなことになるような気がする。米国のマスコミの執拗さは尋常ではない。


◎俳談

◎俳談
【二物衝撃の句】
 二つの要素・句材をあわせて作る句を「取り合わせの句」と言う。
全然別々な事柄を合わせることにより、ある種の「響き」を生じさせるのだ。二物衝撃の句とも言う。初心者のうちは難しく、全然響き合わない場合が多い。次の句は二物衝撃句の典型だ。
夕花野亡き子を探すごとく佇つ  産経俳壇入選
「夕花野」で読者を美しい風景に誘って、中七からどんでん返しをしてみせる。「亡き子を探す」で読者をどきりとさせて、秋の夕方の花野の寂しさを際立たせるのだ。
反戦で神田の生まれ唐辛子 産経俳壇1席
掲句も「神田の生まれ」のあとに唐辛子と続け、異質のものどうしで全体として「ぴりっと辛い江戸っ子」の風景を醸し出している。
蝸牛(かたつむり)駆け込み寺を守るなり 毎日俳談2席
は、蝸牛が寺を守るという意外性で成り立つ。異質なものの取り合わせで成功したケースだ。
取り合わせの名句は西東三鬼の
露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す
であろう。妻をなくした隣家のロシア人が異様な叫びと共に手当り次第にザクロをたたき落していたのを描写した。その異様さと訴求力において右に出るものは無い。

◎見えてきたトランプの“本性”

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◎見えてきたトランプの“本性”
  ディールの“弱点”も露呈
 世界中がトランプの“本性”を探ろうと躍起になっている。外交ルートはもとより諜報機関を通じて情報を得て、その“真の姿” を描き出そうとしている。CIAのスパイ活動は公になった情報の分析が97%であると聞いたが、それなら筆者の手法と同じだ。筆者は公開情報を数日かかって集めて、その上で“推理”を働かせる。したがって、記事の90%は推理である。しかも書く記事は情報量の10分の1である。情報収集には1つの記事で7時間から12時間かけている。そこでまず就任前と就任後10日間のトランプの言動を分析・推理すれば、そこに見えるのは浅ましいほどの商人根性である。多くが「高くふっかけて値引きする」ところにある。それが英国首相メイ、メキシコ大統領エンリケ・ペニャ・ニエトとの会談に如実に表れている。これは早くもトランプの“弱点”が露呈したことになり、首相・安倍晋三を始め各国首脳は、今後この駆け引きの掛け値に引っかからないだろう。なぜなら世界の名だたる指導者たちは、“政治駆け引き”でぬきんでているから存在しているのだ。ディールは、政治ど素人のトランプの専売特許ではない。まだいかなる会談もしていない中国とのディールが最大の焦点だ。
 それでは米外交防衛の要である国務長官レックス・ティラーソン、国防長官ジェームズ・マティスら政権中枢は何をしているのだろうか。議会の公聴会を聞く限り、正常な感覚の持ち主だ。この米国の超エリートが、事態を掌握する能力がないはずはない。おそらく今のところは“ご乱心の殿”トランプに世界・国内の「反発」を実感させて、「方向を転換」を悟らせるような対応を基本としているのではないか。両者共官僚組織の進言を重視している。とりわけマティスは国防総省からのアドバイスで最初の訪問国を日本とした可能性が高い。誰が見ても膨張政策の中国をにらんだ在日米軍基地は、米国の世界戦略の第一の要であり、これを毀損するような発言をしたトランプ路線を引き継げば、より窮地に立つのは日本ではなく米国であるからだ。横須賀の米第7艦隊は中東までをにらんだ存在なのである。
 それでは、トランプ流「値引き」である譲歩の手法を実際の会談から分析する。まずニエトとの会談である。トランプはニエトに対して国境の壁の建設資金を要求したうえに、譲歩しなければ「会談しない」と脅しをかけていた。しかしハンサムな上に反トランプで世界的に男を上げているニエトは、会談しなくて結構とけつをまくった。トランプがどう出たかと言えば妥協である。両者は電話会談で「壁の負担については協議を通じて解決を目指す」事で合意した。ここにトランプの弱点が露呈した。強く反発すれば折れるのだ。
 同様に値引きはメイとの会談でも如実に表れた。トランプはかねてから北大西洋条約機構(NATO)の存在を批判し続け、「NATOはテロに対応できていないから古い」などと表明し続けた。しかし、メイはおそらくトランプにNATOの軽視は自殺行為などと警鐘を鳴らしたのだろう。メイが記者会見で暴露した「大統領、あなたはNATOを100%認めると言いましたね」という言葉は、おそらくトランプの本音であろう。それを公の記者会見で暴露するメイも相当な女だ。トランプがホワイトハウスの回廊で手を握ったくらいでは、“落ちない”のだ。トランプはメイ発言におたおたしていたが、熟練の政治家は単純なトランプを手玉に取るくらいわけもないことを知らされた一幕であった。
 さらにトランプの変節を挙げれば、日本の核武装論である。選挙中トランプは在日米軍の撤退を示唆したかと思うと、北に対抗して核武装を勧めるといった具合だったが、最近では一切口にしなくなったばかりか、「そんなこと言っていない」と打ち消している。淺知恵で思いつき発言をしたが、日本の核武装は、世界戦略の激動を意味すると、専門家などから忠告を受けたフシがある。忠告したのはキッシンジャーあたりかもしれない。
 また水責めなど拷問についてトランプは「拷問は間違いなく効果的で有用だと考えている。IS(イスラム国)が中世以来誰も聞いたことのないような行いをしているという時に、水責めがなんだというのか。私としては、『毒をもって毒を制す』べきだと考える」と意気軒昂だったが、マチスが否定的な発言をした。これに対するトランプの反応は「マチス氏は専門家なので尊重する」であった。ここで露呈した弱点は専門家の言辞には左右されるという側面だ。
 では対日関係でどう出るかだが、トランプは選挙中二つの重要な発言をしている。その第一は「日本が攻撃を受ければ米国は軍事力を全面的に行使しなければならないが、米国が攻撃を受けても連中はテレビを見ている」と発言した点だ。この誤謬はどこから来ているかと言えば、やはり70年代80年代の「安保ただ乗り論」からだろう。しかし安保条約には5条で米国の日本防衛義務、6条で日本の基地提供義務が明記されており、日本はその線に沿って対応しているだけだ。さらに昨年成立した安保法制で、米国に向かうミサイルの阻止など大きく戦略が転換されたことが分かっていない。無知という弱点をここでも露呈している。第二は「公平な駐留経費の支払いが必要だ。さもなければ軍を撤退させる」発言だが、これも無知から来る弱点の最たるものだ。日本が駐留経費の75%を分担しており、これが、衰退気味の米国の世界戦略の要になっていることを知らない。これも無知の弱点だ。NATOや韓国が「100%重要」なら、「日本は180%」と言えといいたい。
 さらにトランプは日本の規制が米国制自動車の輸入を制約していると繰り返すが、無知の弱点もいいところだ。米国製は大きすぎる上に、日本の消費者の精密指向にそぐわない。その証拠には日本車に匹敵する精密指向のドイツ車は売れまくっているではないか。15年の数字ではフォルクスワーゲンが前年比4.4%増の68万5,669台、メルセデス・ベンツが5.3%増の28万6,883台、アウディが3.7%増の26万9,047台だ。買ってほしかったら他国に文句を付ける前に、米国メーカーに製品向上を指導すべきだろう。関税はゼロで門戸は開かれている。トランプは克明にメモを取って人の話を聞くタイプであるらしい。見えてきたものは話せば理解出来る能力があると言うことでもある


2017-01-26

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池の早朝はサギ類の天下


◎俳談

◎俳談
【俳句は一点豪華主義】
俳句は色々言い過ぎないことが肝心だ。初心者は17文字のうちで2つも3つも言おうと欲張るが、それ故に失敗する。一点豪華主義で行きたい。悪句を挙げれば<苔むせる御堂の階段緑濃し>だ。苔むしているのだから緑濃しなどとは言う必要は無い。
蜆汁目玉映して啜るかな 毎日俳談3席
うまい蜆汁を一生懸命啜っている姿をひたすら描いた。余計なことは一切言っていない。
どんど焼き火の針となる松葉かな 東京俳壇1席
松葉が火の針になることだけに集中している。
孑孑(ぼうふら)を食べる仕事の金魚かな 読売俳壇3席
拙宅の場合金魚を庭の鉢で飼っているのは孑孑を食べてもらうためだけであり、そのことだけを「食べる仕事」と表現して強調した。このように一点豪華主義の俳句は2つ以上の事象を取り合わせる「取り合わせの句」に対して「一物仕立ての句」というケースが多い。一つのテーマで言い切ってしまうのだ。最近の句界の風潮は一物仕立てで言い切るのが流行っている。
団栗の己が落葉に埋れけり  渡辺水巴
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